Rの彼方に/雨【きょうふ】


とある管理外世界。
地下・150メートルの奇妙な施設。

「此処は…?」
「此処は、私が普段開発した物の実験を行う場所」

プレシアに導かれたヴィヴィオは、新たな力を手に入れるべく、この場をおとずれていた。
心に巣くった迷いを断ち切る為にも。

「さあ、この部屋が貴女の修行の場」

プレシアは周囲全体に異様な模様が描かれた部屋を見せた。
そして、懐からある物を取り出してヴィヴィオになげわたす。

「このメモリは…?」
「サンクチュアリ。それを使いこなせば、決して揺らぐことの無い”絶対防御の精神(こころ)”を会得できるわ…!」

プレシアから渡された、穢れの一切ない水晶(クリスタル)が埋め込まれた装置(デバイス)型のガイアメモリ。ディスプレイには”S”のイニシャルが緑色に神々しく映し出されている。

「ホッパーに変身して、メモリチェンジするのよ」
「は、はい…」

【HOPPER】

ヴィヴィオは言われるがままホーリードライバーを装着してホッパーメモリを起動。

「変身」

【HOPPER】

ヴィヴィオはホッパーに変身すると、サンクチュアリメモリを起動させる。

【SANCTUARY】

ホッパーメモリを抜き取ると、代わりにサンクチュアリメモリを挿入。

【SANCTUARY】

聖域の記憶が産声を上げると、ホッパーの姿形は著しく変貌する。
複眼は緑と赤のオッドアイ、腕や脚には重厚な鎧、触覚の間にある眉間からは長く鋭い一本角が生え、体色もメタリックグリーンに変色した。

「…これが新しいホッパー……サンクチュアリ!」





*****

風都野鳥園。

そんな場所に照井はいた。
一見場違いなものを感じるだろうが、照井にも此処へ来るそれなりの理由があった。



回想

「ねぇねぇね、見てお兄ちゃん!スッゴク綺麗な鳥がいるよ!」
「あぁ」
「…なぁに?その気の無い返事?テンション低過ぎ!」
「いい歳して子供みたいにはしゃげるか」

まだ竜がガイアメモリの存在すら知らず、平凡な幸せを享受していたころ。
妹の春子とは、よくこの野鳥園にきていたらしい。

「こういう場所には恋人(かれし)と来い」
「余計なお世話!…それに今日は……特別なの」

春子はバッグから小さな箱をだした。

「はい!昇進、おめでとう!」

そう、竜へのプレゼントだったのだ。
中を開けてみると、ハート型のシルバーアクセサリーがはいっていた。

「お兄ちゃん、このブランドお気に入りでしょ♪」



回想終了

「………」

真顔で、今もなお持ち続ける妹からの最後のプレゼントをまじまじと見て、照井は今現在も脳裏によぎってしまう。

一年前の夏、家族全てが氷の欠片となって砕け散ったあの、”アクセル・ビギンズナイト”の切っ掛けを。

「春子」

呟く照井。
すると、一人の女性に視線を向いた。
本来なら一瞬視線が向いた程度で終わるだろう。



彼女に…春子と…なにか通ずる面影のようなものさえ無ければ。



「お姉さん、今日も面白い鳥の御話聞かせて♪」

そこへ小学生あたりの少女が、彼女に話かけてくる。

「……来ないで」

彼女はいきなり、少女を突き飛ばした。
それを見た照井は少女を身体を持ち上げて立ち上がらせる。

「おい、どういうつもりだ?」

照井は問いただすも、冷たくあしらわれるばかり。
仕方なく腕を掴むと、

「ッ!?」

そこには、通常では有り得ないと言い切れる程に拡大した生体コネクタが刻まれていた。

「君、ガイアメモリを持っているのか?」
「あたしに構わないで。あたしに近づいたら、死ぬかもしれないよ」

彼女の意味深な言葉に、照井はさらに問いただすも、彼女は一行に話すことはなく、それどころか照井を痴漢だと騒ぎ立てる始末。

周りの人達が照井を非難しながら群がる中で、彼女は逃げてしまった。

「待て!」

照井は後を追おうとした、が。

「待ちやがれ、この痴漢野郎!」
「女の敵め!」

――パコン!――

後ろから男に腕を掴まれ、傍にいた女性から”どスケベ!”とかかれたスリッパで叩かれる。
無論、この二人が翔太郎と亜樹子であるのはいうまでもない。

「慌てるな、所長」
「りゅ、竜君!?」
「なんだ、お前等も痴漢の仲間か?」

亜樹子が竜の名前を口にしたことで、野次馬の一人が亜樹子達も共犯者ではないかと疑いの言葉をなげかける。

それを機に、色々とメンドくさい弁解の嵐となったが、その原因たる照井は更なる原因である彼女の後ろ姿をみていた。





*****

天国の音楽のような鳴き声を奏でる鳥達。
そんな平和な場所で起きた小さな出逢いが、あんな結末に繋がるとは……。
この時は少しも想像してはいなかった。この俺も、そして照井も……。

「おい照井。なんだってこんな場所に?」
「俺に質問するな」

照井は何時ものように返答を拒絶する。

「…あぁそうかよ」
「そういうお前等も何しに来た?」
「…仕事だよ。実は、近所の子供達がうちの事務所に来て――――」





*****

「鳥のお姉さんを元気にしてください」

その子らが言うには、野鳥の解説をしてくれていたお姉さんが、ある時以来急に元気を失くし、子供達を遠ざけるようになったらしい。

子供達はブタ型の貯金箱を差し出す。

「クラスの皆で集めたお小遣いです」
「お願いします」
「お願いします!」

事情を聞き、翔太郎は貯金箱を一旦受け取り、

「……話はわかった。だがこの金は受け取れないな。…君達の優しい心で十分だ」
「流石ハーフボイルド」

依頼の報酬の受け取りを拒否した翔太郎にフィリップのこの一言。
ほんの数分間、喧嘩になったのはいうまでもない。





*****

「俺達が会いにきたのはこの娘、名前は島本凪」

渡された写真をみて照井は、

「さっきの娘か」
「「え?」」





*****

無限家。

「……ン?朝か……」

リインフォースは己の裸体を布団で隠しながら寝床から起き上がり、傍らで安らかにねむっているゼロの寝顔を愛おしそうにみると、今度は時計を見た。現在時刻、十二時前後。

朝どころかお昼である。

(昨晩は徹夜してしまったからなぁ…///)

魔界の婚約指輪による将来の誓いを交わしてして以来、この二人の関係はより一層親密さを増しており、ゼロのドSもリインフォースに大しては極端に少なくなった。しかし、代わりに度々セクハラされるようになったが、仮にも夫婦一歩手前の仲なので、リインフォースとしては恋人同士でのスキンシップとして捉えていた。

「………昼か」

そこで漸くゼロも起床する。
すると、じっとリインフォースを見詰める。

「……なんだ?」
「寝起き姿も案外色っぽいな」
「ッ!!//////」

前触れという前触れが一切ないこの一言に、リインフォースは顔を真っ赤に染め上げてしまう。

「そ…それにしても、ヴィヴィオは何所にいってしまったんだろうか?」

無理矢理に話の方向性を転換するリインフォース。

「さあな、置書にも”強くなる為に暫く修行してきます”……これだけだからな」
「心配ではないのか?」
「…あいつも好い加減自分のことを自分で判断し、決断する年頃だ。横からゴチャゴチャ言うのは、野暮というものだ」

娘を溺愛しつつ、信頼もしているゼロ。

「貴方がそう言うなら、私にも異存はない」
「それはそうと、リインフォース。服を着たら早速次元書庫に入れ。昨日仕上げられなかった作業をするぞ。試作品(プロトタイプ)ながらも、良作になりそうだからな」

寝室に置いてある机の上には、此間点検と改造をしていたガイアドライバー。
そして、製作途中と思える一本のガイアメモリがあった。
イニシャルは……Z―――――




*****

園咲家。

「今朝気付いたのだが……私が保管していたメモリが、一つなくなっている」

昼食の合間、琉兵衛はこの話題を井坂と堺を見ながら話す。

「盗んだのは……井坂君に堺君…、君達かね?」
「さあ…どうでしょう?」
「御自分で確かめてみては?」

食事を終えた二人は悠々とそう述べた。

「否定は、しないということかね?」

琉兵衛がそう問い詰めると、二人は立ち上がった。

「園咲さん。私は十年前、堺君は三年前、ある誓いを立てました」
「十年前と三年前?」
「まあ、貴方は十年前のことなどお忘れでしょうね」
「三年前のこともね」

井坂と堺は琉兵衛を見据えた。

「その誓いを果たす日が、近づいています」
「面白いことになりますよ…、きっと」

二人が部屋をでると、冴子も食事を切り上げ、二人の後を追う。

「先生、堺君。一体どうなさったの?父にあの態度は不味いわ。あれじゃあ「冴子君」

冴子の言葉を遮り、井坂が話始める。

「覚悟はできていますか?」
「え…?」
「僕達三人が”恐怖の帝王”を打ち倒し、貴女が女王になる覚悟ですよ」

「……本当に勝てるの?私の父に」
「勝てますよ。漸く手にいれたんです。私を最強の存在へと変えてくれる………勝利の鍵を」

井坂が懐から取り出したのは、二枚の風都野鳥園のチケットだった。





*****

風都野鳥園、裏方。

「やっと見つけたぞ」

此処で一息ついていた凪に、照井達が現れる。

「なんなの?何であたしに付き纏うの?」
「君を心配した子供らが、俺の探偵事務所に来た」
「ねえ、なんで急に元気を失くしちゃったの?」
「関係ないでしょ。ほっといて……」

凪は頑なに他人との接触を拒む。

「なんに脅えている?」
「………」
「君はわざと子供達を遠ざけている。……何故だ?」
「………だって…、お父さんが――――」

語り始めた直後、唐突にも激しい雨が降り始めた。

「な、なんでこんな急に土砂降り!?」

亜樹子がプチレベルだが混乱する。

「怖い…!」
「どうした?」
「…あの夜もそうだった…。突然、強い雨が降りだして」





*****

「逃げろ凪ッ!!」

この上ない土砂降りの夜。
凪の父は、娘を護ろうとして……。

「うあぁぁぁぁぁあああ!!!!」

命を落とした。

「お父さん!お父さん!!しっかりして!お父さんっ!!」

必死によびかけるも、最早父に届く言葉はない。彼の命を奪った異形は、
生体コネクタ設置手術器こと……。

Living(リビング) Connector(コネクタ) Setting(セッティング) OperationGUN(オペレーションガン).

通称L.C.O.Gという銃型の機械に特殊な形状をした黄金のメモリを装填し、凪の腕に銃口のような端子を押し当てて引き金を引くと、彼女の腕には生体コネクタが刻まれてしまう。

『これは大切な印です。…また会いましょう』





*****

「あの男が来る。そう思うと、怖くて仕方なかった。でも誰にも相談できなかった……誰にも」
「よく話してくれた」

照井はそういうと、首にかけていた春子からの贈り物であるシルバーアクセサリーを凪に見せる。

「これは?」
「お守りだ。とても良く効くぞ」

優しい笑顔となり、照井はそれを凪に手渡す。
凪も親身になって接してくれたのが嬉しいのか、自然と笑顔になる。

『御揃いですね』
『しかし、そこまで』

そこへ其の場のムードを気にしない声。

『約束通り、会いに来ましたよ。お嬢さん』
「あの時の……怪物」
「やはり貴様等の仕業か。井坂深紅郎!堺蒼助!」

ウェザーとエレメンタルの姿をみるやいなや、凪の表情は恐怖一色となる。

「怖い、怖い……怖いよ」
「大丈夫。君は俺が守る」

照井は震える凪を庇うように立ち回る。

「フィリップ」

照井と翔太郎はドライバーを装着してメモリを起動。

【JOKER】
【CYCLONE】
【ACCEL】

「変…身!」
「変身!」

【CYCLONE/JOKER】
【ACCEL】

二人は仮面ライダーに変身。

「仮面、ライダー……」

凪はアクセルの変身と姿を見て、内心驚く。

「私達も混ぜてもらうぞ!」

【MAGICAL/LEADER】

そこへイーヴィルまでもがバイクに乗って参戦してくる。

「『欲望』の気配がすると思ったら、やはり貴様等か」
『今回のことは、我々にとって重要極まるものでね』

悪態をつくイーヴィルに、エレメンタルがしれっと答える。

そして、アクセルがエンジンブレードでウェザーにむかっていくと、Wもウェザーに、イーヴィルはエレメンタルと対峙する。

ウェザーは一人一人を確実に仕留める為なのか、気象を操作する。

「晴れた?…ていうか、Wの上にだけ雨!」
「どうなってるんだ!?」

Wの周囲に集められた豪雨は、容れ物があるかの如く円錐状に溜まっていき、Wの身動きを封じる。

『照井竜君。君は私に復讐するため仮面ライダーになったらしいがッ!』

ウェザーはアクセルの腹を殴る。

『なんと弱い復讐鬼(リベンジャー)…。話にならない』

ウェザーはアクセルの周囲に雷雲を発生させる。
しかも、アクセルの動きに反応して動いて雷で攻撃する追尾型。

「なにあの雲!?あの雷!?」

亜樹子は立て続けに無茶苦茶な芸当をやってのけるウェザーの力に驚く。

「………」

凪はその様子を、無表情かつ真顔でみていた。

するとウェザーは一番厄介なイーヴィルをエレメンタルがおさえている内に、凪に近づこうとする。

「ダメだってば!来るな!」
『さあ、その印を見せてもらうよ』

亜樹子を無視して、というか無理矢理退かしたウェザー。

「怖いです!!」

凪は逃げようとするが、そうは問屋が卸さない。

『実に良い具合だァ…!君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれる程、コネクタはより早く成長する。あぁ、早くこのメモリを挿したい…!』

ウェザーは凪の成育したコネクタをみると、翼のオブジェが施されれ、Qをイニシャルとする黄金のガイアメモリを取り出す。

『なんだ?あの奇妙な形のメモリは?』

フィリップの意識はウェザーの持つQのメモリに注目する。

「その娘から離れろ!」

アクセルがそう言った瞬間、雷雲が全開の雷を発生させて、変身を強制解除させる。

『わかったでしょ?貴方は私に近づくことすらできない。復讐どころか、誰一人としてまともに守ることができない、虫けらです』

ウェザーは照井を見下してそう述べる。

『どうやら、ただのメモリとは比べ物にならないようだ』
「ならば、とっととこの場を切り上げなくてはな。相棒、ダークネスバニティーだ」
『だが、通常9形態から、あの形態になるのは時間がかかる』

【EVIL/MAGICAL・MAXIMUM DRIVE】

「じゃあ、こうすればいい!!」

――ドゥガン!!――

『うおぉぉぉぉああ!!』

イーヴィルは多大極まる魔力の籠った右拳でエレメンタルを吹っ飛ばす。

「よし、今だ」

イーヴィルはメモリを取り換える。

【VANITY】

スロットにバニティーメモリを挿入すると、足元にミッド式でもベルカ式でもない未知の魔方陣が現出。その魔方陣から清く済んだ光が現れ、イーヴィルの体内に吸収された。

融合(ユニゾン)完了』

今度はダークネスメモリが現れる。

【DARKNESS】

そしてメモリモードにしてスロットに挿入。

【DARKNESS/VANITY】

多少手間はかかったものの、ダークネスバニティーとなったイーヴィル。

――ガシャン!――

【TALON DARKNESS】

右手にタロンブラッカーが装備され、敵に飛び掛っていく。

『おっと、今はまだ君と戦うタイミングではない。堺君、引き上げますよ』
『あ、はい』

濃霧が発生し、ウェザーとエレメンタルは度その場から消えた。

「逃げられちまったか」

漸く豪雨から解放されたWがそういっていると、照井に「大丈夫か?」と尋ねる。

「嘘つき」

凪の声には失望の念がこもっていた。

「守ってくれるって言ったけど、全然かなわなかったじゃない!!」

凪はそう叫び、走り去ってしまった。





*****

その後、フィリップは地球の本棚で検策をおこなっていた。
そして、得た情報をホワイトボードに残さず書いた。

「井坂がもっていたのは、QUETZALCOATLUS(ケツァルコアトルス)のメモリだ」
「け、ケツ…あ、アル?」
「古代アステカ文明で、蛇の神と崇められた、史上最大の飛行生物」

ホワイトボードには、そのケツァルコアトルスの絵や細かい情報が忠実に描かれている。

「島本凪は、そのメモリの過剰適合者だ。翔太郎、インビジブルメモリの事件を憶えてるだろ?井坂は過剰適合者である、リリィ白金の身体にメモリを埋め、そのパワーを最大限に増幅しようとした。最後にはメモリを奪い、自分が使用するために」

「凪ちゃんも、リリィと同じだってのか?」
「でも、今回違うのは、井坂はまだ彼女にガイアメモリを挿してはいない。その理由は…」



――君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれるほど、コネクタはより早く成長する――



「コネクタが完成するのを待ってる、ってことか」
「そういえば、聞いたことがある。ガイアメモリは勿論のこと、生体コネクタもまた、使用者(ユーザー)の精神状態によって変化を遂げると」

ゼロはそこで口を挟んだ。

「となると、奴らはコネクタ完成の為に、これからも彼女に付き纏って恐怖や絶望を徹底的に……植え付ける気でいるのか」


――ガンッ!!――


リインフォースが結論を述べた瞬間、照井は鉄柱を殴った。
そして、無言でガレージと事務所からでていく。

「何所いくの?竜君!」

亜樹子は心配になって、照井を追い掛けた。





*****

その頃、井坂と堺は…とある部屋で優雅にワインをのんでいた。

「冴子君。私は昔、自分が何故この世界に生まれてきたのかがわからず、答えを求めていました。医者となり、生命の研究に没頭したのもそのためです。だが答えが見つからず、虚しさだけが積り、完全に生きる意味を見失っていた。でも、偶然見かけたあの光景が私を変えた」

十年前、井坂が眼にしたのはヘドロのような恐怖の空間・テラーフィールドによって人々に死の恐怖を与えるテラー・ドーパントだったのだ。

「我を失って立ちつくした。怖ろしかったが…いや、違う。その圧倒的な恐怖のパワーに私は魅入られ、感動していたのだ。…瞬時に理解した。その紳士が手に持つ物こそ、私を虜にした力の根源なのだと…!」



――なあ、教えてくれ!…それはなんだ?――

――………――

当時の琉兵衛は無名の医者に過ぎなかった井坂を無視しようとする。

――待ってくれ!私は、それがが欲しい。その力が…!――

――君にその資格があれば、何れ出逢うだろう。ガイアメモリに…――



「その時に私は誓ったのです。あの絶対的な闇の力…!君の御父さんがもっているテラーのメモリを……何時か必ず私の物にしてみせると」

井坂は心の内に潜む野望を曝け出す。

「僕も三年前、ただの医大生であった。しかし、シックスことゾディア=キューブリックが新しい血族を率いて頻繁に活動していた頃に連中がミュージアムの人間から無理に強力なメモリを買い、それを取り込んで自滅した場面に遭遇した。そこから全てが始まり、独自にメモリの研究をしていると僕は院長と出会い、エレメンタルメモリを手に入れることができたのです」

堺もまた語りだす。

「しかし、僕はもっと多くのメモリの力を持った強大なメモリをつかってみたい。だから僕は、琉兵衛さんを倒した暁には、彼の秘蔵している全てのメモリを頂戴し…それら全ての力を収めた究極にして完全なるガイアメモリを創造して、己の物としたいのですよ…!!」

そして堺も野望を明かす。

「それで私に近づいたわけね」

冴子に質問されると、二人は黙ってソファーに座った。

「答えて」

それでもなお追及する冴子。

「……そうですよ。嫌いになりましたか?」
「僕達のことを…?」
「………いいえ。貴方達の本心に触れて、やっと不安が消えたわ。…貴方達ならきっと、父を倒せる」





*****

何処かの雑木林。

「ちょっと竜君!どこなの此処?」
「初めて俺がシュラウドと出逢った場所だ」

照井は簡潔に答える。

「聞こえるか!?シュラウド!!」

照井が叫ぶと、前方にある地面の草が燃え始めた。

「私に何の用?」
「で、出たー!ミイラ女!」

登場してきたシュラウドに驚く亜樹子。

「俺は力が欲しい。もっと強い力が…!」
「断る」

シュラウドはキッパリといった。

「私はプレシアのように甘くはない。…これまで私が力を貸してきたのは、貴方の戦う理由が復讐だったから。でも、今は違う。その眼に、以前のような憎しみの炎はない。だから…あの男には勝てない」
「待てッ!」

【ACCEL】

立ち去ろうとするシュラウドに、照井は変身してエンジンブレードをつきつける。

「俺の中の炎は…、消えちゃいない!」
「…………ついてきなさい」





*****

一方凪は、野鳥園にいた。
そこへ、

「よお」

翔太郎が話しかける。
隣にはゼロとリインフォースもいる。

「その鳥、なんて名前?」
猩々朱鷺(しょうじょうとき)のヘンリー君。ホントは、マングローブの林のなかなんかで大きな群れをつくる鳥」

凪は分かり易く説明した。

「へ〜、やっぱ詳しいんだな」
「お父さん飼育員だったの。だから私も、自然と鳥が好きになった」
「そっか」

翔太郎達は短く返事すると、凪のいるコーナーの入口に歩く。

「ねえ、あの人、どうして私を守ろうとしたの?」
「彼もまた井坂深紅郎(ウェザー・ドーパント)によって、家族を殺された」

リインフォースがそういうと、凪は「え?」といった。

「だから、同じ境遇にある貴様を見捨てることができんのだろう」
「そんな、勝手に重ねられても困るよ。もしそれで死んじゃったら……」
「奴は死なない。守るべき者がいる限り、男はどこまでも強くなれる」
「それもまた、貴様の師匠が遺した言葉か?」
「まあな」

ゼロ達は扉を潜って凪の眼前へと。

凪は照井から受け取ったアクセサリーを手に持つ。

――お守りだ。とても良く効くぞ――

照井のことを思い出し、凪はアクセサリーを握りしめる。

その時、園内の鳥達が一斉に騒ぎ始めた。

「おはよう。昨日はよく眠れましたか?」
「それとも、ドキドキして眠れませんでしたか?」
「ふざけんな!」
「貴様らの愚策の程は、とっくに解っている」
「でしたら話は早い。院長、見せてやりましょうよ」
「そうですね。その娘がどんな異形となるかを」

井坂はケツァコアトルスメモリに似た、基盤剥き出しのメモリをとりだす。

「複製した、御試し品ですがね」

【QUETZALCOATLUS】

ガイアウィスパーが鳴ると同時に投げられた複製(コピー)メモリは近くにいたオウムの身体に挿され、その姿形を大きく変貌させる。

「拙いな」
「逃げろ!」

そういっても時既に遅し。
オウムはケツァコアトルス・ドーパントとしての巨体を誇っていた。

ケツァルコアトルスは空へ飛翔すると、一旦低空飛行して凪の身体を足の爪でガッチリ掴みながら飛行する。

「イヤ!降ろして!!」
「しまった!」
「リインフォース!」
「わかってる!」

【CYCLONE/JOKER】
【DARKNESS/VANITY】

「助けて!!イヤーーー!!」

絶叫する凪を掴んで飛ぶケツァルコアトルスを、Wとイーヴィルがそれぞれのバイクに乗って追い掛ける。

『クェーーーー!!』

ケツァルコアトルスは翼からエネルギー弾のようなものを発射するが、メモリも使用者も紛い物なせいか、攻撃の威力や精度はそれほどではなかった。

途中、リボルギャリーが駆け付け、二人の盾となる。

『敵は空だ。ハードタービュラーで倒そう』
『なら、我等は一足早くいっている』

【EVIL WHEELER・FLIGHT MODE】

イーヴィルはイビルホイーラーをフライトモードにチェンジして空中へ!
Wもタービュラーユニットに換装しようとすると、リボルギャリーにいたのは、

「これ照井のガンナーユニットじゃねぇか。なんだってお前がここに?」
『そういえば、前にも一度突然ガレージに……』
「まあいい。こいつで撃ち落とすぜ」

Wはガンナーユニットとバイクを接続させた”ハードガンナー”を発進させる。
そして狙いを定め、

「今だ!」

――バンッ!――

ガイアキャノンからの一発が見事命中して凪が振り落とされると

「おっと」

イーヴィルは受け止めて地上に降ろした。

「ここに隠れてろ。すぐに終わらせる」
「絶対にここを動くな」

Wとイーヴィルはマシンから一旦降りて、ケツァルコアトルスに向かう。
そして、ケツァルコアトルスの攻撃で起こった爆炎のなかで、

【XTREME】
【XCELION】

CJXとDVXに強化変身。

「「プリズムビッカー」」
「「グレインノヴァ」」

【PRISM】
【GRAIN】

【CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE】
【MAGICAL/SONIC/TRICK/KNIGHT/BLASTER/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルはグレインソードを抜刀すると、すぐさまイビルホイーラーに乗った。
Wはビッカーシールドを投げ、ハードガンナーの砲撃を受けたシールドを空飛ぶ足場として使う。

『クェーーーー!!』
「ビッカー!チャージブレイク!」
「エターナリティスーパーノヴァ!」

ケツァルコアトルスに対し、二人のライダーは縦と横・X字を描くように切り裂く。

――ボガーーーーン!!!!――

大爆発が起こると、ケツァルコアトルス・ドーパントはメモリブレイクされ、元通りのオウムとなった。

「やったぜ」
「いや、まだだ」

イーヴィルの言うとおり、井坂と堺は抵抗する凪に構わず……。

「テメーらぁ!!」





*****

その頃、照井は。

「此処は……」
「モト、クロス…。あたし、聞いてない」

そこは郊外にある寂びれた場所で、シュラウドはオフロードバイクのヘルメットを竜に投げ渡して、こう言ったのだ。

「さあ、乗るのよ…照井竜」
「………」





*****

そして、ヴィヴィオは…。

「うっ……あぁ………ッ」
「ダメよ。雑念を消して、”無我の境地”とならねば、サンクチュアリメモリは使いこなせない」

疲労困憊・満身創痍なヴィヴィオに、プレシアは冷静にそう述べる。

「さあ、もう一度やりなさい。例え失敗しても何度でもやるのよ。……己の中にある、貴女に巣食う邪な心を再現した、この幻想を全てを打ち破るまでね…!」



サンクチュアリの力を治めるべく、辛く厳しい修行に臨むヴィヴィオ。
いや、仮面ライダーホッパー。
次回、”聖域”に辿りついた者の力を……アナタ達は知る。

次回、仮面ライダーイーヴィル

Sの守護者/心【せいしん】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

これで決まりだ!

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.