Gの可能性/許【いし】
「「「「うわああぁぁぁぁ!!」」」」
Rナスカの破壊光弾は四人のライダーを襲う。
アクセルとホッパーは避け、Wとイーヴィルは武器で防いだ。
『凄い・・・!直にメモリを挿すとこんなに気分が良いなんて』
「待ってくれ!こんな戦いに、一体何の意味がある!?」
Wがそう問うと、
『自分の存在を証明する・・・!』
Rナスカは破壊光弾を精製し始める。
【PRISM・MAXIMUM DRIVE】
「「プリズムブレイク・・・!」」
Wはプリズムソードを構えた。
『ハァッ!!』
「「タァァ!!」」
破壊光弾とプリズムブレイクの斬撃波が衝突し、爆発が起こる。
「もう止めてくれ・・・・・・貴女だって、僕の姉の筈じゃないか!?」
Wがそういうと、その場にいた者全てが変身を解く。
「・・・姉さん・・・」
「笑わせないで。お前は物なのよ、家族じゃない」
「・・・最低だな、貴様」
冴子の物言いにゼロが嫌悪感をこめて吐き捨てる。
「なんとでも言いなさい。・・・興が冷めた。また来るわ若菜、村木。どんな時でも、精々油断しないようにね」
冴子は立ち去った。
「・・・・・・チッ」
「キッツいねー、オレの義姉は」
若菜は舌打ち、大地は愚痴りながら帰っていく。
「園崎、姉妹・・・」
「悪魔の女・・・だな」
「無理だ・・・・・・彼女達の眼を覚ませるのは・・・」
翔太朗と照井が述べ、フィリップは打ちのめされる。
一方、
「ボキュの大事なカメラちゃんが!!」
ウォッチャマンが騒ぎ立てていて、真倉は十字を描いていた。
亜樹子はそれに眼もくれずに川相に近寄る。
「・・・ジーンを返せさなんて、ダメだよ透君。メモリなんかに頼らなくても、皆で頑張れば映画は撮れる!・・・あいちゃんにも、気持ち伝えられるようになるよ」
すると川相はスケッチブックに書き込む。
――勘違いしないで。彼女に対する恋愛感情はない――
「うえぇぇぇぇ!!?」
大混乱?
*****
風都ホテル
「ナスカメモリとの脅威的な適合率がでましたね。貴女に惚れ直しました」
加頭は冴子を褒めちぎる。
「もういいわ。うんざりなのよ、男とのそういうの・・・」
「では、ビジネスパートナーになりましょう」
加頭は平然と食い下がる。
だが冴子は席を立った。
「どちらへ?」
「散歩よ。今日はものすごく機嫌がいいの」
*****
探偵事務所。
プロデューサー亜樹子による川相透の映画作りに、意外な妨害者が現れた。
園崎若菜・・・彼女の目的はなんなのか?
そして、それでもあいつはまだ、諦めていなかった。
「よくもう一度見る気になったな。そのクッソ長い映画」
「それが役立つとは思えんぞ」
亜樹子が見ていたのは透の勢作した映画だった。
「なにか透君の心の中が掴めると思ったんだけどな・・・。間違いないのは、ジェシカが透君の理想の女性だってこと」
「でもあいさんに惚れてるわけじゃねーんだろ?」
「うぅーん、わっかんないよ。またジーンが無いとダメだって言い出すし・・・・・・このままじゃ透君、変われないよ。あの、無限さん?」
亜樹子は深く考え、ゼロに尋ねてみる。
「手を貸してやりたいのは山々だが、魔界生物の私でも、人間の脳髄を完璧に操作するのは未だに至難の極み。今回は余り口をだすことはなさそうだ」
「珍しいな、ゼロがそんなことをいうとは」
リインフォースがゼロの言葉に驚いていると、亜樹子はこういいだす。
「・・・でも、やっぱり彼の心を拓くことができるのは、映画作りしかない。よしッ!撮影続行よ!」
亜樹子はそういって事務所をでた。
「川相透を変えるなんて、絶対に不可能だ」
「お前はまだ、ウチの所長の凄さを理解していないようだな」
フィリップが否定的な態度をとると、翔太朗はそれをさらに否定する態度になった。
「さていくか、人間が人間を進化させる様子を見せてもらおうではないか」
ゼロは亜樹子の態度に、人間の進化がどういうものなのかを見届けるべく、撮影現場に赴く。
*****
「彼方へ!私の道を、切り開く!」
「・・・・・・カット」
川相がか細い声で指示する。
(ノッてない!なにが不満なのよ・・・!?)
スリッパは発動・・・・・・
(っていかんいかん!スリッパは当分の間封印よ。心に訴えかけることが重要なんだから)
しなかった。
そして、あることを思いつく。
「こうなったら荒療治しかないわ。竜くーん!」
「・・・なんだ所・・・亜樹P」
「次、ジェシカとカカシのキスシーンに変えるから」
「なんだと・・・!?」
これには回りに色めく。
「透君のあいちゃんへの想いを刺激しないと」
「監督は恋愛感情はないと言っていた筈だが」
「恋する男の子は皆そういうのよ。・・・さあ、振り切れ!こうズバッと!ブチューっといけ!」
そして、
「絶望が俺のゴールだ」
――バッ!――
逃走した。
「あっ逃げた!あたし聞いてない!マッキー、奴を捕らえろ!!」
「え?へ・・・」
「確保ォォォ!!」
「は、はい!待ちなさい!止まりなさい!ずるいですよ照井警視!逃げる気ですか!?」
真倉は照井を追った。
「クハハハハハハハ!」
それを見たゼロは腹を抱えて笑っていた。
「・・・・・・・・・」
そして川相は、なんともいえない表情であった。
*****
ディガルコーポレーション屋上。
「許されない。私がお姉さまに劣っているなんて許されない!クレイドールにもっと力が欲しい・・・!」
一人愚痴を零していると、
――シュガァァァァ!!――
青いナスカウイングで天空を舞うRナスカが現れる。
『油断するなと言った傍から、成長しないこと』
Rナスカはメモリを抜いた。
「ずっと隠し持っていたのねナスカメモリを!」
「えぇ、このビルの中に」
「・・・・・・ッ」
冴子は一つの帽子を地面におとし、それを見た若菜は社長室にいた清掃員を思い出す。
「死んだ男達の未練に縛られた亡霊よ貴女は!」
「クレイドールなんて護身用の玩具みたいなメモリしか与えられていないお子様に、大人の女のなにがわかるの?」
「なんですって!!」
【CLAYDOOL】
【NASCA】
ドーパントに変身した二人は戦いを繰り広げる。
だが、クレイドールは余り戦闘向きの能力を持ち合わせておらず、破壊光弾を発射してもRナスカは超拘束で巧みに避け、ナスカブレードでクレイドールを連続斬りする。
『うあっ・・・あぁぁぁ!!』
クレイドールは木っ端微塵になってしまう。
下に落ちたクレイドールの破片が再生する様子を眺めたRナスカは、
『唯一の取得が再生能力か。もはや貴女は敵ではないわ若菜。アハハ、アハハハハ!』
*****
社長室。
疲労した若菜は机にもたれかかる。
「大丈夫か若菜?」
「大丈夫じゃないわよ」
心配して声をかける大地すら邪険に扱われる。
「・・・認めるしかない。半端な覚悟じゃ今のあの人には勝てない」
若菜はそういって机の上にあるケースを開けた。
「有機情報制御器官試作体」
若菜はそれを手に持ち、ガイアメモリの根源・泉での出来事を思い出す。
――エックストリィィィーーーーーム!!!!――
「この光・・・!そうか、奴が・・・ジーンがいればそれが可能」
狂気の笑顔となった若菜。
大地はととくさと社長室からでると、携帯電話を取り出す。
「・・・・・・もしもし、局長。・・・・・・わかってますよ。引き続き、任務続行で」
――ピッ――
短い会話を終え、電話を切った。
*****
撮影現場。
そこそこ順調に作業してると、川相が亜樹Pの肩を叩く。
――亜樹P、二人だけで相談が――
それを見た亜樹Pは、
「キタキターー!!うんうん、行こう行こう!!翔太朗君、代わりに作業進めといて、風景とか」
テンションMAXで翔太朗にメガホンを渡して行ってしまった。
「俺、監督!?」
*****
雑木林。
「なーに透君?本当の気持ちを聞かせて」
透は無言で亜樹Pの肩を掴む。
「えぇ!?もしかして、本命あたしだった?ヤだ〜聞いてない〜」
身体をくねらせている亜樹Pを他所に透は、
――ガサゴソ――
「・・・・・・あった」
ジーンメモリをカバンからだしていた。
「ってそっちかい!この根性無しがぁーー!!ってダメダメ!心で説得を・・・!透君、止めなさい。ストーップ!!」
メモリを没収しようと揉め合ってるいると、
――ピューン――
勢いあまってジーンメモリはどこかへ飛んでいき、
『おやおや』
『・・・・・・』
キングコブラとクレイドールの足元に落ちた。
「あっ若菜姫・・・あと、誰?」
『Need not to know』
知る必要のないこと。
英語で答えると、キングコブラはメモリを拾い、クレイドールが川相を持ち上げて去ってしまった。
「待って、待ってよぉ!」
*****
一方コイツらは・・・。
「カットー。カットカットカットカットォー。違うなぁフィリップ。ミラーの角度はもっとこう・・・」
「ヤレヤレ、こうかい?」
なんかノリ気になった翔太朗によって仕切られていた。
ゼロに至っては退屈の余り本を読み出す始末。
『ファーストキーワード・キングコブラ。セカンドキーワード・園崎家。サードキーワード・ガイアメモリ』
リインフォースも次元書庫で大地のことを検索していた。
*****
ディガルコーポレーションの撮影スタジオ。
そこで川相は目覚めた。
「映画、撮るんでしょ?私の頼みを聞くならここを使ってもいいわよ」
「そしてその頼みはたった一つ」
若菜と大地は川相の目の前にたち、ガイアプログレッサーとジーンメモリを持つ。
「貴方の能力で、コレを、私の全身の隅々まで融合させなさい。二度と離れないように」
「んじゃ、頼むぞ」
大地は川相にジーンメモリを返した。
「断れば命は無いわ。この二択を迷うバカはいないわよね?」
「・・・・・・」
川相は立ち上がると、ジーンメモリを持ってスイッチを押した。
【GENE】
「じゃあ、始めてくださるかしら」
【CLAYDOOL】
二人がドーパントになるのを、大地はニヤけながら見ている。
そして、ジーンのDNAミキサーの力でガイアプログレッサーをクレイドールの細胞に混ぜ込んでいく。
その際に起こるエネルギーが緑色の光となって天空にまで伸びていたため、川相を追っていた亜樹子もすぐに場所がわかった。
だが、亜樹子が駆けつけたときには・・・。
――パチパチパチパチ――
大地は拍手をし、ジーンは満身創痍の状況、クレイドールは活力が沸きに湧き上がっていた。
「何コレ?・・・何してるのよ?」
『エステのようなものかしら。フンッ!』
クレイドールはジーンを殴り、変身解除させる。
『私をミュージアムの女王にするためのね』
「そんなことに手を貸したの透君?」
「・・・・・・・・・・・・」
聞かれても川相はダンまり。
亜樹子は川相に近づき、
――パコン!――
「バカッ!」
スリッパで叩いた。
さらに、
――パコンッ!!――
『えっ!?』
「ありゃ?」
クレイドールも叩いた。
大地も少しだけ驚く。
「なにがミュージアムの女王よ。どいつもこいつも、流されてばっか!それ、ホントにあんた達がやりたかったことなの!?」
「「『・・・・・・・・・』」」
「透君は、映画が撮りたいんでしょ?何してんのよ?自分の意思はどこに行ったのよ!?・・・それ見せてよ」
「・・・・・・亜樹P」
今度はクレイドールに話す。
「若菜姫もだよ!本当の若菜姫は、今もフィリップ君が大好きな若菜姫は、風都の皆に130%の元気をくれる歌姫だよ。・・・お願い、貴女も心を開いて。そこにいる貴方も、コレでホントに良かったんだって思ってるの!?」
亜樹子の赤裸々な心の叫び。
『・・・言ったでしょ?私は女王になるの。姫は卒業よ』
そういって拒絶の意思をみせたクレイドールは、体中に力を入れ始める。
【KINGCOBRA】
大地はクレイドールから流れ出る緑色の波動による被害を回避するため、キングコブラに変身する。
それほどまでにこの波動は凄まじく、川相のスケッチブックが燃えるほどなのだ。
「透君逃げて!!」
「えっ・・・でも・・・」
「皆を呼んで!!」
亜樹子に説かれ、川相はビクついた足を動かした。
『ウゥゥアアアァァァァァァ!!!』
『ククク・・・!』
*****
「頼む、見逃してくれ!」
方やこちらでは、照井が未だにキスシーンの件でゴネていた。
「心配するな、口付けのしかたなら、私と相棒が手本を見せてやる」
「え、ちょ・・・ゼロ!?//////」
そうこうしていると、
「ハアハアハア・・・!!」
川相が荒息しながら駆けてくる。
「川相くん!」
「透・・・亜樹Pはどうした?」
そう聞かれて筆記をしようにも、スケッチブックは燃えてなくなっている。
「ひょっとして所長になにかあったのか?」
「・・・・・・・・・」
「黙ってる場合じゃないでしょ!ハッキリ言いなさいよ。川相君!川相君!」
そのとき、川相の脳内で・・・。
――自分の意思はどこに行ったのよ!?・・・それ見せてよ――
そして、
「ダァァァ!!好い加減にしてよ虹村さん!イメージが違うんだよ!君は、君は元気良すぎなんだよ!ジェシカはもっとこう、ダークなイメージなんだよ」
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
川相の豹変ぶりに皆は黙り込む。
「・・・・・・言えた。やっと本人に」
「そんなことなの?私に言いたかったことって?」
「うん、言えなかった。勝手に姿使って、ゴメン」
川相は虹村に頭を下げた。
「川相透が変わった。いや、アキちゃんが変えた?」
フィリップも驚きを禁じえない。
「そうだ、亜樹Pが危ないんだ!」
*****
ディガルコーポレーション。
「アキちゃん!」
皆は一斉に駆けつけると、そこには緑色の波動の中心のクレイドールと、それを間近で楽しげにみるキングコブラ。そして近くの箱に亜樹子が頭から突っ込んだ状態になっていた。
「助けてー!」
取りあえず助けると、
「フィリップ君、大変だよ!若菜姫が、透君になにかさせて、グニュ!ピカーンって!!」
すると、緑色の光は収まっていく。
「そうか。ジーンの能力を使って、クレイドールに新しい力を加えたのか」
『その通り。今、完全に馴染んだわ』
『さーてさてさてェェ!お楽しみのバトルタイムといこうか?』
クレイドールとキングコブラはヤル気満々である。
「行くぜ、皆」
翔太朗の呼びかけに、他の五人が並び立つ。
【JOKER】
【CYCLONE】
【ACCEL】
【VANITY】
【DARKNESS】
【HOPPER】
「変・・・身!」
「変身!」
「「変身」」
「「変身」」
【CYCLONE/JOKER】
【ACCEL】
【DARKNESS/VANITY】
【HOPPER】
四人の仮面ライダーが並び立った。
無論、五秒と経たずに戦いが始まり、屋外へと飛び出す六人。
クレイドールはガイアプログレッサーと融合した所為で能力値が向上し、Wとアクセル相手に全くヒケをとっていない。
キングコブラも元々備わっていたスペックが高かったのか善戦する。それもイーヴィルとホッパー相手に。
「確かに強くなってる」
『押し切るしかない』
「よし、いくぞ」
『今度こそコイツらを倒す』
すると、エクストリームメモリとエクセリオンメモリが現れ、Wとイーヴィルの手中へ。
【XTREME】
【XCELION】
「「プリズムビッカー」」
「「グレインノヴァ」」
【PRISM】
【GRAIN】
二人はソードを抜刀し、クレイドールとキングコブラを押し始める。
――ザシュ!ザシュ!――
「出番ね。また歯軋りをするといいわ、若菜」
戦いの様子を冴子が少し離れた場所で観戦していた。
『フフフ・・・!アハハ・・・!』
『クックック・・・!』
しかしクレイドールとキングコブラは笑っていた。
「今度こそメモリブレイクだ」
「一気に決めるぞ」
【PRISM・MAXIMUM DRIVE】
【GRAIN・MAXIMUM DRIVE】
「「プリズムブレイク・・・!」」
「「グレインデストラクション・・・!」」
パワーがソードの刀身に集中する。
「「「「ダアァッッ!!」」」」
放たれた一撃は交わり、X字型となって直撃する。
それでクレイドールは粉々、キングコブラは胸に大きな傷をうける。
だが・・・・・・。
「メモリは・・・?」
そう、メモリが排出されず、クレイドールは再生してキングコブラは脱皮で回復した。
「バカな、プリズムとグレインでもブレイクできないだと!?」
リインフォースは大いに驚く。
『残念だったわね、私はもう昔の私じゃない。今見せてあげる。お姉さまもそこでよく見てると良いわ』
『んじゃ、全解放といくか』
するとどうだろうか?
クレイドールの身体は正中からどんどんヒビ割れていき、キングコブラも脱皮を何十回何百と繰り返して姿を変えていく。
『エェェクストリィィィィィィィイイイム!!!!』
『ウォオオオアアアアアアアア!!!!』
*****
同時刻、どこぞの礼拝堂。
「真のクレイドール?」
「如何にも。クレイドール=土人形とは、古来より人間が、神への祈りを篭めて作り出した物。それを極めた今こそ、若菜は”地球という神の巫女”足りえる」
クレイドールに秘められた真なる力、それは余りにも凄まじいものだった。
「そして、蛇は古の時代から、神々や悪魔の遣いと信じられてきた。若菜が地球の巫女なら、大地君は”次元の神官”と言ったところだろう」
琉兵衛が得意になって話していると、
「クレイドールエクストリーム、キングコブラ・レベル2」
加頭がこれから二人がなる姿の名を告げる。
「Wとイーヴィルの戦いが、良いデータになってくれた。ここまで、泳がせておいた甲斐があったな」
「最初から若菜さんを神の巫女としてお選びになり、大地君もそれを見越して彼女に花婿に?」
「あぁ、君が冴子を焚き付けてくれた御陰で、若菜にも火がついたよ」
*****
そして、クレイドールの表面はドンドンドンドン剥がれていき、遂には一気にその姿を劇的に変化させて、3・4mを楽勝で越えた体躯を誇った上、不気味な女の顔と遮光土器のような下半身をした”クレイドールエクストリーム”となった。
キングコブラも数百回の脱皮を繰り返し、神話に登場する蛇の王・バジリスクと呼ぶに相応しい大蛇の姿となった。これこそがキングコブラのレベル2なのだ。
クレイドールは両肩の部位を触手のように伸ばし、片方をライダーへの攻撃、もう片方は冴子に。
「ッッ!!」
【NASCA】
とっさにRナスカに変身したが、触手によって壁に激突させられた。
『な、なんてパワー・・・』
已む無く退散させられる。
Rナスカが退散すると、クレイドールとキングコブラは標的に向かい、一方的な攻撃を始める。
自由自在に伸びる触手や舌。
破壊光弾に牙の弾丸。
どれもこれも以前とは比べ物にならないものになっている。
「仕方ない、こうなればこれを使う」
――ジャラ――
イーヴィルは一つのシルバーアクセサリーを取り出す。
「なんだそれ?」
「見てれば解る」
イーヴィルはそのアクセサリーに魔力を注ぎ始めた。
するとアクセサリーは一人でに震え始め、それを機にイーヴィルはアクセサリーを投げ飛ばした。
そして投げ飛ばされたアクセサリーはキングコブラの眼前で、
――ビカッッ!!――
激しい閃光。
その中から出てきたのは、
『ガルァァァァァ!!!』
日本の感覚だと白蛇、西洋の感覚では白龍と呼ぶに相応しい、巨大なドラゴンが現れたのだ。
「「行け!ドラゴニクス!!」」
イーヴィルが命じると、ドラゴニクスはその蛇のような長い身体でクレイドールに巻きつき、鋭い爪と牙をキングコブラの身体に食い込ませる。
「おぉ、これならもしや!」
「いけるかも!」
アクセルとホッパーも歓喜の声を上げる。
だがその時、
――バチバチバチバチッッ!!――
「「うぅっっ!!」」
「パパママ、どうしたの?」
突然、イーヴィルのバニティーサイドから電流のようなものが走り、片ひざをつかせた。
それに呼応するようにドラゴニクスの力も弱まっていく。
『退けェェ!』
『鬱陶しいぞ・・・!』
何時のそれでは考えられないほどに、低くなった声で叫び、ドラゴニクスは弾かれてしまった。
地面に伏せさせられたドラゴニクスは再び、シルバーアクセサリーに戻っていた。
いや、そんなことは今はどうでもいい。
今は・・・。
『『消えるがいい・・・!!』』
クレイドールとキングコブラの巨大な破壊光弾をどうするかが問題だ。
さらには近辺に亜樹子と川相がいるのだ。
Wはクリスタルサーバーを輝かせ、検索する。
「照井竜!二人をここへ。ヴィヴィオちゃんは防御に徹してくれ」
「わかった」
「任せて」
【TRIAL】
【SANCTUARY】
アクセルトライアルは自慢のスピードで亜樹子と川相が連れて来て、ホッパーサンクチュアリは研ぎ澄まされた精神によって高密度かつ高出力の魔力障壁を展開する。
【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【HEAT・MAXIMUM DRIVE】
【LUNA・MAXIMUM DRIVE】
【METAL・MAXIMUM DRIVE】
Wはビッカーシールドのスロットにメモリを挿していき、最後にはジョーカーではなくメタルをインサートした。
「「ビッカーファイナリュージョン!!」」
使用メモリの組み合わせゆえか、シールドからは巨大な光の盾が現れ、ホッパーの魔力障壁共々に巨大破壊光弾を防いだ。
しかし余りに威力が強すぎたせいで、光弾は飛び散って周囲を破壊していた。
『『フフフフフ・・・!』』
クレイドールは空間に奇妙な赤黒い裂け目を現出させて立ち去り、キングコブラも地面に潜って帰っていく。
「翔太朗君!フィリップ君!大丈夫?」
「あぁ、なんとか。・・・防御に徹したメモリの組み合わせで、耐え切れた」
*****
その頃冴子は、
「あれが真のクレイドール。お父様は最初から最強のメモリを若菜に与えていたのね。見てなさい若菜・・・必ず貴方を玉座から引き摺り下ろしてあげる」
ナスカメモリを握り締める冴子の眼には深い憎しみの念がこもっていた。
*****
戦いが終わると、川相はジーンメモリをさしだした。
「透君・・・・・・」
「もう要らない。仲間がいるし」
メモリを受け取った亜樹子は、そのままWに渡す。
「あぁ・・・良し」
――グシャ!――
こうして、ジーンメモリは砕かれた。
*****
地球の本棚。
「クレイドール、エクストリーム・・・」
「貴方達と同じ力よ、来人」
「っ!!?」
フィリップは驚いた。
自分しかアクセスできない地球の本棚に若菜が現れたのだから。
「何故ここに?」
「これからはここで会えるわね。まだ貴方に触れることも、本を読むこともできないけど・・・・・・その内」
若菜は笑みを浮かべる。
「若菜さん、本心を言います。今でも僕は思っている。貴女は大事な家族だと。だから僕は諦めない。必ず貴女を救う・・・・・・僕は、僕の家族を取り戻す!」
「フフフ♪・・・バカな子」
若菜はフィリップの身体をすり抜けた。
「地球1頭が良いクセに」
そして、地球の本棚から消えた。
「・・・・・・・・・」
*****
園崎邸。
「はー、思ったより手応えがなかったな」
そこには大地が帰ってきていた。
「まあ良い。我が先祖が創り上げた最高傑作、夜天の魔導書。その元管制人格を得た時・・・!フフフ、アーッハハハハハ!!」
*****
事件は終わり、透は随分変わった。最近あいさんやシネコンの仲間と一緒に新しい映画を撮り始めたらしい。今度こそ完成しそうだな。90分くらいでキリのいい、ヒロイックファンタジーがさぁ。
「私達、意外と未来の名監督を救ったのかもよ」
「そうかな?」
その時、
――バっ!!――
両手になにか持つ照井が現れた。
「おぉ照井。どうした?また新しい事件か?」
「俺に質問するな・・・!覚悟を決めてきたぞ、亜樹P」
「ん・・・?」
照井が両手に持っていた物、それは恋愛映画のDVDだった。
「あの時逃げてしまった自分が許せない・・・!研究を重ねた。どんなキスシーンでも受けて立つ。今度こそ振り切るぜ!」
そういうと照井は亜樹子の肩を掴み、
「いや・・・・・・振り切らせてください」
亜樹子にキスを迫った。
「喧しいぞ貴様ら!」
そこへゼロがガレージから現れて照井の後頭部を殴ると、その勢いで・・・。
――チュ・・・ッ――
照井と亜樹子の唇が重なり、完璧なキスシーンとなってしまった。
「ハニャ・・・・・・んぁぁぁ」
「亜樹子ォォォォ!!」
顔が真っ赤になって気絶した亜樹子を必死に呼びかける翔太朗。
フィリップをその様子を見て笑っていた。
しかし、ただ一人照井だけは真顔だった。
なぜなら、その視線の先には、ガレージの中に置いてある”砕けたバニティーメモリ”があったのだから・・・!
次回、仮面ライダーイーヴィル
Jの迷宮/女【ほうせき】
「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」
これで決まりだ!
ドラゴニクス
イーヴィルがMOVIE大戦2010の際にシルバーアクセサリーとして封印したエラスモテリウムオルフェノクを、ゼロが自らの眷属化させた存在。その姿は白蛇とも白龍ともとれる。主であるゼロと相棒であるリインフォースの言う事しか聴かない上、途轍もなく凶暴な性格をしている。普段はシルバーアクセサリー形態で待機しており、ゼロかリインフォースの命令が出た時だけに実体化する
長い体や鋭い牙や爪、口から吐き出す火炎や吹雪、眼から放たれるレーザーなどを使って戦う。しかし、ゼロの体調に不備が生じると、主と密接にリンクしているドラゴニクスにも悪影響がでる。逆にゼロが好調だとそれに呼応してドラゴニクスのパワーも上昇する。
融合騎と同じユニゾン能力を有しており、ゼロだけがユニゾンできる。
ドラゴニクスとユニゾンすると、ゼロの姿は漆黒の巨大な龍となる。
全長:20m
体重:240kg
飛行速度:時速120km
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