Jの迷宮/女【ほうせき】


映画撮影の一件から数日後、無限家に一通の手紙と郵便物が届いた。

「一体だれだ?」
「奴しかいないだろ」

送り主が不明だったが、ゼロは誰が送りつけたのかが一発で判断できた。

中身を開けてみると、その中に入っていた物には驚かされた。

携帯電話、短眼鏡、ビデオカメラ型のメモリガジェット。
カマキリ、ハチ、ハヤブサのギジメモリ。
別スペースには、別種の携帯電話とイナゴのギジメモリが入っていた。

そして手紙があった。
手紙にはこう綴られていた。



今回のバニティーメモリの件について説明する。
まずハッキリ言わせてもらうと、貴方達の使い方に問題があった。

元々バニティーメモリはヘルが愛用していたものを私がバニティーボックス起動キーとしてカスタマイズしたものだ。それを変身の為に何度も使えばあんなことになるのは当然だ。

しかし、これは貴方達がエクセリオンに進化するのにどうしても必要なことでもあった。
ゆえに今迄の間、このことを報せなかったことについては深く謝罪する。

代わりのメモリガジェット、それとヴィヴィオ専用の物を含めて四種類送る。
そして、新しいガイアメモリを同封した。

使用方法は取り扱い説明書に全て書いてある。



「新しい力、新しいガジェットか・・・・・・」
「私だけのガジェットかぁ・・・」

リインフォースとヴィヴィオが腕を組んでいると、

「おい、まだ続きがあるぞ」
「あらホント、追伸がある」

ゼロと御霊が気付く。



追伸
近い未来、エクセリオンメモリはイーヴィルの超究極形態への進化を導く。それに見合った性能を発揮させるべく改良中なので、こちらからの報告がない限り、エクセリオンメモリは使用できないと思って欲しい。

プレシア・テスタロッサより



「全く、面倒だ」

そういいつつも、ゼロの表情は笑顔だった。
イーヴィルの新たな進化に期待に満ち溢れる、そんな笑顔だ。

そして、授けられた黄金のメモリのガイアディスプレイには、Wの文字が映し出されていた。

「…ところで今日はネウロと桂木を招いている。早速出迎えの準備をせねば」

ゼロが立ち上がると、

――ピリリリリリ!ピリリリリリ!――

テーブルに置いてある携帯電話型ガジェット・マンティスフォンから着信音が…。
少々不審に思いながらも電話にでた。

「もしもし」
「無限、手を貸してくれ」

翔太朗だった。

「悪いが今日は大事な客人がくる」
「そう言うなって!色々と謎が多い事件なんだ!」
「…『謎』?」

ゼロの頭にそれが引っ掛かった。

「左、これから最強の助っ人を連れて行く。待ち合わせ場所を教えろ」
「あ、あぁ」

ゼロは翔太朗から場所を聞きだすと、通話を終える。

「これは楽しくなってきた。二重な意味で…♪」





*****

冤罪によって牢屋にいれられたジンさんを助けるべく、街で聞き込みをしている内に、妙な噂を耳にした。怪物が人間を宝石に変えるという。
その現場では必ず、帽子を被り、ダイヤの指輪を輝かせた女が目撃されていた。それがジンさんを罠に嵌めた、謎の女なのか?
そして、無限が連れてきた最強の助っ人とは…。


「まさか、お前が世界一の探偵と知り合いだったとは……」
「あたし、聞いてない!…あ、サイン下さい!」

そう、ゼロの言っていた最強の助っ人とは、

「サインですか?」
「良かったじゃないですか先生」

弥子とネウロのことだったのだ。
助っ人しに来た理由は勿論、この事件から漂う『謎』と『欲望』の匂いゆえだった。

「にしてもさ、翔太朗君」
「なんだ?」
「狙われたのは皆若くて美しい女性ばかりだよ。それがなんで、ファ〜…冴えない中年男の刃野刑事を狙われるわけ?」

欠伸しながら毒を吐いた亜樹子。

「おい亜樹子。確かにジンさんは冴えない中年だけど、ホントは凄い男なんだぜ」
「どう凄いんですか?」

弥子が聞くと、

「ズバリ!騙され上手だ」
「なんですかそれ?」
「……あっ!UFO!!」
「え!どこどこどこ!?っているかそんなもの」

――パコン――

亜樹子は翔太朗はスリッパで叩いていた。
ちなみに弥子は本気で探してしまった自分が恥ずかしくなった。

「ま、それが普通の反応だ。ところがジンさんの場合……」

それは不良学生の頃、自分をよく追い回した刃野に対して、






――あっ!UFO!!――
――え、どこ?――



――あっ!UFO!!――
――え!どこだ!?――

梅雨

――あ!UFO!――
――どこどこ!?――



――あ、UFO――
――どこだよ!?――




などと同じ手に何度も引っ掛かり、

「挙句の果てには…」

――UFOォォォォオオ!!――
――……UFO……――

チャネリングさせられたり…。

「余りに見事に騙されてくれるお陰で、逆にこっちが嘘に付き合う羽目になる。まぁでも悪い気はしないっつーか……ま、それが騙され上手だ」
「成る程、つまりその方は他人を自分のペースに巻き込むというわけですね」
「そんなとこだな」

ネウロがここで初めて会話に参加した。
そこへ、

「メリークリスマース!!」
「うわ!?」

サンタの登場に弥子は驚いた。

「おぉサンタちゃん。例の噂について、なにかわかったか?」
「うん。襲われた七人の女性は全員モデル。しかも同じクラブのメンバー。ただの偶然とは思えない思えなーい!」
「確かにな。んで、そのクラブの名前は?」

サンタはプラカードをだした。

BLUE(ブルー) TOPAZ(トパーズ)
「よし、行くぜ皆」

翔太朗は仕切りながらそこへ向った。

ゼロは移動途中でマンティスフォンで、フィリップ共々ガレージに待機しているリインフォースに連絡をとった。

――ピッ!――

「もしもし、相棒」
「あぁ、ゼロ」
「これから私達はとあるクラブにいって情報収集してくる」
「わかった。…あ」
「なんだ?どうかしたか?」
「いや、ちょっとフィリップの元気がなさそうだったから」
「そうか。ではまたな」

――ピッ!――





*****

風都ホテル

「若菜が地球の記憶に?」
「進化した妹さんは、無限アーカイブとコンタクトする能力を得ています。その空間で何れ弟さんと接触できる。となれば…」
「先に来人を奪われる」

冴子は焦り始めた。

「えぇ。レベル3ナスカの力を持ってしても、貴女の勝利する確率は限りなく0に近い」
「無神経なことをサラリと……本当にムカつく男ね」

――ガシャン!――

加頭は飲み終えたカップを皿に落した。

「ところで、貴女の勝利の確率を高めてくれるメモリがあります。手に入れれば、反撃のチャンスがあるかもしれません」
「……教えなさいよ、そのメモリの名前を」





*****

BLUE TOPAZ
そこには選ばれた美男美女が次々と足を運んでいた。

「ハッハハー!流石に美人揃いだぜ!」

――パコン!――

「デレデレし過ぎ!翔太朗君には、はやてちゃんがいるでしょ!」
「ハッ!そうだった…」

この漫才はほっとこう。

「会員制か…ネウロ」
「あぁ。魔界777ッ能力…魔界偽称(イビルフィクショネス)

ネウロは奇妙なイヤリングを取り出した。
しかもこのイヤリング、どうやら生きているようで、二人の耳に噛み付いた途端に身体を逆上がりのようにして、どうにか足と手を耳に届かせようとする。

ゼロとネウロはそのまま黒服の前に立つ。

「通らせてもらうぞ」
「どうぞ、ごゆっくり」

すんなり通った。

「あれ?なんで二人が通れるの?」
「まさか、あの二人…イビルフィクショネスを使ったんじゃ…」
「弥子さん、まさかそれって、魔界能力?」
「あぁ、やっぱり知ってましたか」

弥子は想像通りだとでもいうように言った。

「イビルフィクショネスというのは、簡単にいうと身分を偽れるんです」
「そんな物使うとは…」
「じゃあ、あたし達はお留守番?」

三人が軽く絶望していると、

「あれ?貴女は確か…」

後ろから聞こえてきた男の声。
後ろを振り返ると、そこには大きなダイヤのはまった指輪をしている爽やかイケメンだった。

「やっぱり、食いしん坊名探偵・桂木弥子さん!」
「キャー!超人気モデルの上杉誠だわ!…サイン下さい♪」

亜樹子はブリっ子してサインをねだり、上杉は快くサインを書いた。

「ところで、なんで桂木さんがこんなところに?」
「実はですね…」

弥子は事の経緯を話した。
それを聞いた上杉は快く捜査に協力し、弥子達がクラブに入れるよう取り計らった。

中に入ってみると、そこには音楽に合わせてステップを踏んで踊る者や、酒を酌み交わす者もいた。

「ダイヤモンドの女、ですか…」
「なにかご存知で?」
「……いえ。…それじゃ、僕はこの辺で」

上杉はととくさに店の奥に行ってしまう。

「絶対なにか知ってるよ」
「我が輩らもそう思うぞ、ヤコ」
「全くだな。匂うぞ、プンプンとな」

弥子の言葉にゼロとネウロがさらりと登場してくる。

「二人とも何所行ってたんだよ?」
「あっち」

翔太朗が聞くと、ゼロは階段のある方向を指差す。
そこには帽子を被り、サングラスをしたスラリとした体型をした長髪の女がいた。

「あの人かな?」
「そうだよきっと!」

弥子と亜樹子はその女のほうに近づく。

「あの、お話があるんですけど」
「………」

女は無視して行こうとする。

「ちょっと、待って!」

亜樹こが止めると、

――ドガッ!――

女はいきなり二人を突き飛ばした。

「「イタッッ!!」」

女はその後、2・3発ほど二人に食らわせ、そのまま二人を踏みつけた。
この状況には他の客も騒ぎ出す。

女は弥子と亜樹子に、自分がしているダイヤの指輪を見せつけこういった。

「ダイヤの価値ってわかる?」
「えーと……値段?」
「なんか綺麗で美味しそう?」

二人が返答すると、

「美しく、そして傷つかない。この私みたいにね」

女は二人を蹴り飛ばした。

「待てコラ!!」

翔太朗も我慢できず、乱入する。
しかしなぜかゼロとネウロは静止している。

「…私は美しい物が好き。皆ダイヤになって、この私を飾るといい」

階段の中盤にまで登ると、そこで店中の明かりが十数秒ほど消えた。
そして、一つのスポットライトだけがいち早く回復する。
しかし、その光が照らし出したのは…。

「「「「「「キャアアアアアア!!!!」」」」」」

女性達は騒ぎ出す。
照らされたのは、全身が宝石で構築されたドーパントなのだから。

「ドーパント!」
『ッ!』

ドーパントは右手からガスのようなものを放出し、女性達に浴びせた。
翔太朗達が回避している間に、ドーパントは店中の人間の殆どをダイヤモンドに変えていく。

「フィリップ!」
「リインフォース」

二人はダブルドライバーとイーヴィルドライバーを装着。





*****

ガレージ

「あぁ」
「出番か」

【CYCLONE】
【MAGICAL】





*****

クラブ

【JOKER】
【LEADER】

「「変身」」
「「変身」」

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

Wとイーヴィルが姿を現す。
さらには変身の際に発生する疾風と瘴気がドーパントのダイアモンドミストを防いでくれた。

「フム、我が輩も少し働くとしよう」

ネウロはガイアドライバーを装着。

『頼むぞ、脳噛ネウロ!』

フィリップはネウロにそういった。

「変身」

【ZODIAC】

ネウロはゾディアック・ドーパントに変身した。

「なんか凄いことになってるけど…。皆!そんな奴コテンパンにやっつけちゃって!」
「任せろ」

亜樹子の言葉にWは快く引き受ける。

『私は美しいダイヤ。誰にも傷つけることはできない』
「どうかな?試してみるか」
「そうだな」

Wとイーヴィルは試しにドーパントの胸部を殴ってみた。

――ガギィィィィン!!――

金属音が鳴り響いた。

「ゆ、指が…」
「ほう、中々だな」

Wは指を痛め、イーヴィルは感心しながらも、しっかりと攻撃を続ける。
しかし、その攻撃は意味を成さない。

「なんて硬い身体だ…!」
『フフフ…♪』
『ダイヤモンドは地球上で最も硬い鉱物だ。戦法を変えよう』

「ネウロ、バトンタッチ」
『任せろ』

【HEAT/METAL】
【TAURUS】

Wはヒートメタルにハーフチェンジ。
ゾディアックは金牛宮の記憶を納めたタウラスメモリをサイドバックルのスロットにインサートして斧剣・タウラスアックスを装備。

――ガギン!!――
――ガギィィン!!――

メタルシャフトとタウロスアックスの重量を伴った攻撃を何度も命中させる。
だが、ドーパントは悠々としている。

『高熱のシャフトでも通用しないとは…』
『確かに、この硬度は素晴らしいな』
『言ったでしょ。私は決して傷つかない』

ドーパントは自身の能力に絶対の自信があるようだ。

「調子に乗りやがって…!」

Wはメモリチェンジする。

『ゼロ』
「わかってる」

ゾディアックと交代するイーヴィル。

【LUNA/TRIGGER】
【MAGICAL/BLASTER】

ルナトリガーとなったWはビームタレットを連射するが、ドーパントは自身を守る為に展開した宝石状のシールドで防ぎ、ビームタレットを全てWに反射させた。

「光弾が、跳ね返された…」
『ダイヤの微粒子を瞬時に結晶化させ、ミラー状のシールドを展開した。凄い…!』
『噂の仮面ライダーも、その程度か?』
「そいつはどうかな?」

【BEE】

イーヴィルは単眼鏡型のメモリガジェット・ビースコープをギジメモリで起動。
バーストキャノンを合体させる。

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「『ブラスタービースナイパー!!』」
『無駄なことを、ってグアアアァァァァ!!』

驚いたことに、イーヴィルの攻撃は通った。

『ダイヤモンドのように高硬度な宝石の原石を加工する際、レーザーカッターを使うのは業界の間では常識。宝石好きにしては、知識が浅かったな。シールドを張っても、高出力の魔力を高密度かつピンポイントで発射すれば問題ない』

リインフォースが説明する。

『く、クソッ!!』

ドーパントは攻撃を命中させられた片腕を抑えながら逃げさる。

ライダー達は変身を解いて後を追うも、奴はとっくに逃げていた。

「どこ行ったんだ?」
「いない……逃げられちゃった」

翔太朗と亜樹子が残念そうな顔をする。

「それにしてもあの女性は…?」
「城島、泪です」

弥子が疑問に思っていると、片腕を怪我した上杉がでてきた。

「昔からの大切な仲間…親友でした」
「親友!?」

亜樹子は上杉と泪の意外な接点に驚く。

「…泪はすっかり変わってしまった。…僕のせいで…」
「貴方のせいで?」
「だから僕は、彼女を救ってやりたい…!…イツッ!」
「………」

上杉の説明に、翔太朗は無言だった。

(ネウロ)
(あぁ。この一件、少し待つ必要がある)

ゼロとネウロは、念話で会話していた。





*****

ガレージ

ネウロがゼロと同じ上級魔人であることが翔太朗に話終えると、

「イテテテテテテ!!沁みるゥゥ!!…あの女、風都史上最悪の悪女よ!フィリップ君、検索!」

消毒に痛みに耐えながら、亜樹子は検索命令をだす。
ついでに弥子は消毒などしていない。

何故かって?
普段から鍛えられているからだ。

「まずはあのドーパントの特性を探ろうぜ」
「わかった」

フィリップは早速、地球の本棚にアクセスする。

「硬さ、反射、結晶化」

翔太朗がキーワードを述べると、本はあっと言う間に”JEWEL”という本一冊となる。

『絞れた』

早速閲覧しようとすると、その本は何者かによってパッと上方に持っていかれる。
上を見てみると、

『…姉さん!』
『来人、貴方がここに来ると私も感じるの。だから会いに来たわ』
『もう、本に触れるようになったんだね』
『えぇ。前来た時は50%。つまり半分だけの存在だった。でも、今は……』

――スッ――

若菜はフィリップの顔に触れた。

『ッ!!?』
『貴方を連れ戻すこともできるわ』

それだけいうと、若菜は去っていく。
フィリップの意識も現実に戻ってきた。
しかし、かなりに冷や汗をかいている。

「どうかしたの?」
「本棚に、また姉さんが…」

亜樹子が聞くと、フィリップは混乱しながら答える。

「すまないリインフォース。代わりに、検索してくれ」
「…わかった」

リインフォースは次元書庫にアクセスした。
そしてさっきと同じキーワードを当てはめた。

『…メモリの名称はJEWEL(ジュエル)。身体の原子結合を操作して硬度を激的に上昇させたり、あのガスを使って人間の炭素結合度合を変更し、ダイヤモンドに変える能力があるようだ』
「弱点は?」
『鉱物や岩石には、特定の割れやすい部分の石目がある筈だ。そこを正確に攻撃できれば上手くいく』

リインフォースはジュエル・ドーパントの特徴を説明した。

「よし、それじゃ、ジンさんのところに行こう。調査の中間報告だ」





*****

風都暑・取調べ室

――ドンッ!!――

「吐けよ!!」

真倉は刃野に対し、責め立てるような取調べをしていた。
ちなみに、真倉はイチゴ味のカキ氷を食べていて、刃野にはメロン味だ。

「金に困ってやったか?駅前の飲み屋に二万円のツケがあるよな?」
「オメーな、そんなの調べる暇あんなら、俺を罠に嵌めた女を探せよ」
「そんな女、最初っからイネーよ。ベロベロベロベロバーー!!」

この様子を間近で見て、照井が少々呆れていたりするが、どうでもいいので省く。

「いや、居たぜ」
「探偵…」

そこへ翔太朗がでてきた。
ネウロと弥子も一緒だ。

「アァァァ!!本物の桂木弥子!?俺ファンなんです、サインください!!」
「は、はい…」

勢いに負けてついサインしてしまう。
学生時代、弥子をストーキングしていた浅田忠信のお陰もあって。サインには慣れていた。

サインし終えると、弥子は早速話を戻す。

「刃野さん。女性の名前は、城島泪さんです」
「城島泪…?いや、まさかな。名探偵さんでも、冗談言うんだな」
「いえ、泪です。刃野さん」

そこへ上杉までもがやってくる。

「上杉」
「僕と智とでツルんでいた、あの泪です」

上杉は悲しそうにいった。

「超人気モデルの上杉誠!!…知り合い?」
「昔のな。コイツら、街の平和を守る為と言っちゃー。しょっちゅう色んな所で大喧嘩だ」

刃野は制服警官時代を思い出す。
上杉も真倉にサインを書いて渡しながら、若かった学生時代を思い出す。

「うっしゃぁぁ!!今日は人生最良の一日だ!!」

真倉のうざったい声は無視しよう。

「あの頃は楽しかった…皆青臭くて…」
「なにがあったんですか?」

ネウロが聞くと、上杉は刃野に頭を下げた。

「すいません!僕のせいなんです。泪が、刃野さんを、こんな目に遭わせたのは…」
「どうしたんだよ急に?」
「前にも、そう言ってましたよね」

翔太朗と刃野が聞くと、上杉は懐から一枚の写真をだした。
そこには上杉、泪、悟の三人が映っていた。

「僕ら三人は、親友でした。でも一ヶ月前、突然智が僕にこう言ったんです。…”泪を愛していると”…二人はお似合いだと思った。僕は智の気持ちを泪に伝えました。でも泪は智ではなく、僕を好きだと言ったんです。僕はこの友情を壊したくなくて、泪に”君とは付き合えないよ”と言いました。それが彼女を傷つけ、可笑しくしてしまったんでしょう。…あんな怪物にまでなって…」

上杉は後悔と自責に満ちた表情をする。

「怪物…ってことは」
「城島泪は、人間を宝石にするドーパントだ」

ここで初めて照井が会話にはいった。

「まさか、そんな筈はない。…おい、智はどうした?」
「行方不明です。…泪が怪物になって間もない頃に…」

それを聞いた翔太郎・弥子・ネウロは昨日のことを思い出す。

「行方不明…」
「ダイヤモンド…」
「『謎』が少しずつ、熟れていく」





*****

園崎家。

加頭は用あってここにきていると、偶然若菜と廊下で擦れ違った。

「加頭さん、お姉さまは元気?」

――ガタン――

加頭はケースを落した。

「何でもご存知なんですね」
「私は地球の記憶と繋がったのよ。解らないことなんて何もない。手に入らない者もね」





*****

とあるバー

そこでは照井と真倉が写真をもとに聞き込みをしていた。

「この女性、よくここに来るそうだが?」
「えぇ。今日もいらっしゃってますよ」

ボーイは普通に答えた。

「どこに!?」
「洗面所ですけど」

二人は早速洗面所に向った。
しかし、その洗面所では……泪だけでなく、もう一人の悪女がいた。

「城島泪。派手に暴れてるそうじゃない」
「誰?」

いきなり登場してきた冴子に泪は聞く。

「貴女のガイアメモリ、物凄い防御力だそうね。私に見せてくれる?」
「ダイヤの価値ってわかる?」

泪は唐突に聞いた。

「なにそれ?」

――ガシ!バッ!――

泪がいきなり足蹴りしようとするも、冴子は受け止める。

「なにするの?」
「美しく、決して傷つかない。この私みたいに」

――バッ!――

泪は喧嘩で鍛えた腕前、というか足前で冴子を退こうとするが、冴子も一応富豪の長女として護身術は学んでいるようで、ある程度は対抗するも、すぐに押し切られ、肩を踏みつけられる。

そこへ照井達は乱入する。

「園崎冴子…」

二人の注意が冴子に向いていると、泪は逃げ去る。

「ま、待て!」

それを真倉が追う。

「……園崎冴子。ガイアメモリ流通の容疑で、お前を逮捕する」
「フン、笑わせないで。やれるもんなら、やってみなさいよ」

【NASCA】

冴子はRナスカに変身。

【ACCEL】

「変…身!」

【ACCEL】

照井もアクセルに変身した。





*****

「待ちやがれこのヤロー!」

一方真倉は泪を袋小路の場所に追い詰めていた。

「へっへっへ!行き止まりだ!」

悪役な台詞を吐いた直後、

――ゲシッ!!――

泪の壁を利用した反転跳び回し蹴りをくらい、気絶した。
役立たずなことこの上ない。





*****

その頃、アクセルとRナスカは屋外で戦っていた。

――ザシュ!ザシュ!ザシュ!――

Rナスカはその俊敏さを活かし、ナスカブレードでアクセルを斬る。

『あの化物への仇討ちの前に、景気づけと行こうじゃない…!』

さらに斬りつけるRナスカ。
勿論アクセルも黙っては居ない。

「全て…!」

【TRIAL】

「振り切るぜ!」

【TRIAL】

アクセルトライアルにメモリチェンジし、そのまま高速世界の戦闘が繰り広げられた。





*****

港を見渡せる場所。
潮風漂うその場所で、泪は独り、サングラスを外して景色を眺めていた。

「待っていた甲斐があったぜ」
「…ここにもいるんだ」
「上杉からの情報だ。貴様のお気に入りの場所だとな」

翔太朗とゼロの後ろには亜樹子と弥子がいた。
ネウロは現在ガレージに待機し、調べ物をしている。

「あいつ、余計なことを…!」

サングラスをかけなおし、忌々しそうに立ち去ろうとする泪。

「ちょっと!上杉さんはね、友達だったあんたのことを、今でも本気で心配してるんだよ!!」
「あいつが心配?…フンッ」

泪は構わず去ろうとする。

「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

弥子は泪の正面に立ち、写真を見せた。

「武田智さん。一ヶ月前から行方不明らしいですけど、まさかダイヤモンドにされたんじゃ?」

弥子がそういうと、亜樹子と翔太朗の目線は泪のしているダイヤの指輪に注目する。

「そうよ。それがなに?」
「教えてください。何故そんなことになったかを?」

弥子がさらに聞き出そうとすると、泪は風を切るような音をする程の中段回し蹴りを食らわせようとする。

だが、それは通らなかった。

――バシッ!!――

「イタ…ッ」

弥子のケータイストラップが意思を持つかのように動き、泪の足を弾いたのだ。

「ありがとう、あかねちゃん」
『どういたしまして』

あかねはメモ機能で返事する。

「…ねえ貴方、ダイヤの価値ってわかる?」

泪は視線をゼロに向けて聞いた。

「わかるな。少なくとも貴様のような弱虫には似合わん」

キッパリといった。

「そう…」

泪は短くそういうと、走って逃げた。

「逃がさないぜ!」

皆は一斉に泪を追った。

数分程走り、少し離れた場所にまでくると、立ち止まっている泪の姿を見つける。
しかし、泪は左手でなにかを持ち、それを右手に挿し、結晶の光に包まれてジュエル・ドーパントとなった。

「キマリか。フィリップ」
「………」

【CYCLONE】
【JOKER】

「行くぞ、相棒」
「了解だ」

【MAGICAL】
【LEADER】

「「変身!」」
「「変身!」」

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

W・サイクロンジョーカーとイーヴィル・マジカルリーダーに変身。

『緑と黒じゃ、幾らやっても同じ』
『なら私達がやろうか?』

イーヴィルがジュエルに攻撃しようとすると、

【KINGCOBRA】

『シャァァァァアア!!』

蛇の鳴き声が聞こえると同時に、エネルギーの弾丸が飛来してきた。

「「うわッ!?」」

間一髪で避けたものの、命中した地面は抉り取られている。

『いやー、惜しい』
「貴様は村木大地」

攻撃してきたのはキングコブラ。・ドーパントだった。

「なんでお前がここに?」
『ちょっとしたアフターサービスってやつさ。良いデータがとれそうだからねー』

キングコブラはゆっくりとこちらに近づきながら理由を述べた。

「仕方ない。左、貴様らはジュエルを、私達は村木をやる」
「わかった」

やりとりを終えると、エクストリームメモリが飛来する。

【XTREME】

WはCJXとなり、プリズムビッカーを生成。

「今度こそ決めるぜ」

【PRISM】

プリズムソードを抜刀し、ジュエルに刃を叩きつけるも…。

――カキィーーン!!――
――カキィーーン!!――

「プリズムソードでも、傷一つつかない!?」

フィリップはジュエルの頑丈さに驚く。

Wは一旦距離をとる。

【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【HEAT・MAXIMUM DRIVE】
【LUNA・MAXIMUM DRIVE】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

「「ビッカーチャージブレイク!!」」

Wは四つの記憶の力が極限まで篭められた剣をジュエルの腹部にある宝石に突き立てた。

――カァァーーーーン!!――

結果は…。

「ッ!チャージブレイクを防がれた!?」

そう。ジュエルは片腕を剣先にわざとむけてビッカーチャージブレイクを防いだのだ。

『フン!簡単に弱点を突かせると思う?』

――ドガッ!――

驚く間にWはジュエルに殴られ、踏みつけられてしまう。

『フフフフフ…!』



一方、イーヴィルは。



【WISEMAN】

『ん、新しいガイアメモリか』

そう、それはプレシアがメモリガジェットと一緒に送りつけてきた黄金のメモリだった。

【MAGICAL/WISEMAN】

イーヴィルは左半身が黄金、右半身は白銀の”魔法の賢者”。
マジカルワイズマンにハーフチェンジしたのだ。

「行くぞ、リインフォース」
『あぁ、ゼロ』

イーヴィルは構えると、前方に魔方陣が展開する。

「『プラズマスマッシャー』」

掛け声とともに片手を魔方陣に突き出し、雷撃を伴った魔力の砲撃を行った。

『危ねッッ!!』

キングコブラは咄嗟に身を柔軟にくねらせて避けた。

『へー。フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの魔法を使うとは。ワイズマンメモリの特性かい?』
『あぁ。厳密にいうと、私の使える魔法を無制限に使えるといったところだ』
『はー、相も変わらないチートだな』

リインフォースがキングコブラに説明すると、キングコブラはため息をだす。



そして、Wとジュエルは…。



【XTREME・MAXIMUM DRIVE】

エクスタイフーンから溢れだす緑と黒の疾風に乗って上方に行くと、

「「ダブルエクストリーム!!」」

必殺の両脚キックをジュエルに直撃させた。

――ドゥオカァァァァァァン!!!――

激しい爆音。
Wの必殺技は決まったかのようにみえた。

「うぅぅ……」

しかし、ジュエルの硬度は、80トンにも及ぶダブルエクストリームに耐え切ったのだ。
二つの技を破られたWを、ジュエルは容赦なくふみつける。

『ダイヤは美しく、決して傷つかない!ハハハハハハハハ!!』

ジュエルは優越感に入り浸り高笑いをする。

そんなジュエルの様子を見ていた弥子は一言だけ呟いた。

「なにか、違う…?」





*****

そして刃野は。

「…あの泪が上杉のこと好きだったとはなぁ…」

それを呟いた瞬間、かつて泪が零した言葉を思い出す。

――好きになればなる程、最後には壊したくなる――

思い出した瞬間、刃野の顔は真っ青になった。

「上杉が、上杉の命が危ねぇ!」

刃野は牢屋の鉄格子の間近にまでいき、一番信頼できる男の名を叫ぶ。

「翔太朗!!翔太朗ォォォ!!」


この祈りは届くのか?
そして弥子の感じた違和感は?

次回、仮面ライダーイーヴィル

新たなXの導き/神【ましん】

「この『謎』はもう、我が輩の舌の上だ…」

これで決まりだ!


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