Gの力!それは希望と祈り/宴【ばんさん】
「フィリップが死んでる・・・?」
それは余りにも信じられない真実だった。
「そこにいる来人は人間じゃない。データの塊よ。人類の未来を変えるのに必要な」
追い討ちをかけるように、若菜が付け足した。
『もう、終わりにしよう』
『ヴアアアアアアアアアア!!』
そこへテラーは、テラードラゴンを呼び戻す。
その際、噛み付きをくらっていたアクセルはようやく解放される。
そして、テラードラゴンはテラークラウンとして帰還する。
「くっ・・・!クソ!」
『はいよっと!』
さらにはキングコブラもホッパーをあしらう。
「て、手強過ぎる・・・」
アクセルもホッパーも、大したダメージこそは負っていないが、かなり悔しそうだ。
「照井竜・・・ヴィヴィオ・・・」
フィリップはそれを空っぽな声音で呟きながら見た。
『ハッハッハッハッハ!さあ、来るんだ来人!』
『リインフォース、お前もだ』
テラーとキングコブラは、催促するようにいった。
「僕たちは、僕達は物じゃない!!」
「相棒は決して渡さんぞ!!」
激昂する二人。
「翔太朗・・・・・・変身だ」
「うっ・・・・・・あぁ」
「リインフォース、いけるな?」
「・・・やって、みる」
相棒の言葉に、恐怖にかられた二人は怯えながら肯定した。
【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/WISEMAN】
【XTREME】
【XCELION】
一気にCJXとMWXになる二組。
『無駄なことを』
『悪足掻きって言葉、知ってるか?』
「「うっ、うああああああああああああ!!!」」
テラーとキングコブラの言葉を無視して、翔太朗とリインフォースは恐怖を無理やり押し殺すため、叫びながら突貫していく。
――バンッ!――
――バシュ!――
しかし、テラーの衝撃波、キングコブラの光弾によって弾き飛ばされてしまう。
『これが、真の恐怖だ』
テラーは大量のテラーフィールドを一気に放出し、Wとイーヴィルにぶちまけた。
結果として、変身は強制解除される。
『ようこそ私の世界へ』
それを皮切りに、翔太朗もリインフォースも、踏み入ってはならない、闇の領域に、無理矢理足を踏み入れさせられた。
そしてテラーは変身を一旦とき、二人を指差す。
「一生君達は、恐怖の中で生きる」
「うわぁぁああああああああああ!!!!」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・・・・!!」
翔太朗もリインフォースも、もはやまともな言葉さえだせていない始末。
それを尻目に琉兵衛はしっかりとイーヴィルテイルを回収し、響子にこういった。
「ああなりたくなかったら、もう私のことは忘れたまえ轟君」
「待て!相棒もフィリップも、貴様ら如きに・・・!」
『強がるな強がるな。変身はおろか、まともな魔力さえ残ってないくせに』
ゼロの必死な抵抗を、キングコブラは・・・。
――ドガッ!バギッ!――
暴力で黙らせた。
無論、弱体化しているゼロを気絶させるには十分過ぎるほど。
「さあ来人、帰るわよ」
『さて、お姫様をお送りするか』
若菜は気絶したフィリップを、キングコブラは恐怖にかられたリインフォースを抱える。
【TERROR】
そして再びテラーに変身した琉兵衛は、テラーフィールドを発生。
『ハハハハハハハハ!!』
家族達とα1を、どこかへと連れ去っていった。
*****
風都ホテル。
そこには冴子宛に一通の招待状が届いていた。
「父が私にこれを?一体なんのために?」
「さあ?勝利宣言ではないでしょうか。行けばわかるのでは?」
そう言われて、冴子は席を立つ。
「それから冴子さん」
「・・・・・・なに?」
「私は今晩から用事があって少し遠出します。多分明日の昼間では帰らないでしょう」
「あ、そう」
冴子はむげに一蹴し、部屋を出た。
*****
探偵事務所。
「・・・・・・リイン、フォース・・・」
「パパ・・・」
ベッドで眠りながらも、相棒のことを思い、魘されるゼロを心配そうにみるヴィヴィオ。
「――ガクガクブルブル――」
そして翔太朗は毛布に包まり、表情を恐怖で凍りつかせている。
「翔太朗君、ココア飲む?」
「それともコーヒーか?」
「あぁ・・・っ!!」
亜樹子と照井が気を遣うも、それにすら恐怖している。
「・・・しっかりしてよぉ」
「いや、無理もない」
すると、
――ガチャ――
「祭りだ花火だぁ!」
「いやー楽しかったな〜」
トンデモないタイミングで真倉と刃野が登場した。
二人とも祭り帰りなのか、浴衣姿だ。
「お、どうした翔太朗?夏風邪か?」
「此間は老人にされるし、お前ロクな目に遭わないなぁ」
「おいお前ら、好い加減に「う、う、うああああああああああああ!!!!」
照井の言葉が終わるまえに、翔太朗は発狂したように叫び、壁際にまで逃げる。
「おい、これってかなり、ヤバいんじゃないのか・・・?」
「・・・私のせいで・・・」
響子は、翔太朗達を巻き込んだ自分に、自責の念を感じ始めた。
*****
園咲邸のとある一室。
フィリップはその部屋のベッドで眼を覚ました。
部屋をでると、屋敷中を駆け巡る笑い声に導かれ、自然と体が動き、園咲家が一同を会する場所、食堂に辿り着いた。
「遅かったな来人。今日は私の手料理を振舞おう。若菜と大地君の門出を、家族全員で、祝おうじゃないか」
琉兵衛がそういってると・
「・・・母さん・・・」
招待状をテーブルの上に無造作においたシュラウドが現れる。
(父と母、二人の姉、義理の兄。僕の家族が、全員揃った・・・!)
因みに同時刻、轟が持ち前の行動力ゆえか、屋敷に侵入していた。
(これが、家族の食卓・・・)
こんな殺伐とした食卓があっていいのかが、はなはな疑問である。
「この日がくるまで、永かったねえ」
琉兵衛はスープをすする。
「憶えているかな?あの、皆で発掘をしていた日々のことを」
そう、それはまだ全てが幸せに満ち溢れていた頃のこと。
十二年前の出来事さえなければ、風都を守護する仮面ライダーは誕生しなかっただろう。
しかし、多くの血が、涙が流されることもなかっただろう。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
そんな昔の記憶を、文音・冴子・若菜は思い出す。
もっとも、記憶喪失のフィリップと、婿養子の大地には無縁のことだが。
「私はちょっと怖かったですわ。あの暗い”井戸”が」
「あぁ、若菜はそんなこと言ってたねぇ。でも大丈夫、これがある」
琉兵衛はイーヴィルテイルの箱をポンポンと叩いた。
するとフィリップが立ち上がる。
「皆!・・・今までのことは兎も角、折角家族全員が揃ったんだ。これを機に、争いを止めるべきだ」
フィリップは園咲来人として、皆にそういった。
が、
「アハハハ!ハハハハ!・・・家族?笑わせないでよ。死人は黙ってなさい来人。こんな呪われた家族に、仲直りなんかできるものですか!」
冴子はフィリップの思いを全否定する。
「お姉さま。貴女だって園咲からすれば死人みたいなものでしょう?散々私達を妬んで、家を掻き回したくせに」
「なんですって!?」
「冴子!!」
――バンッ!――
琉兵衛はテーブルを叩いた。
ハッキリと言っておこう。この晩餐会は、今日限りに、人間を越えて髪に近い存在となる若菜と大地君に、お前と文音が、懺悔をする為のケジメの席だ」
「ふざけないで!!」
【NASCA】
【CLAYDOOL】
冴子と若菜はゴールドタイプのメモリを起動する。
「止めろ!止めるんだ姉さん達!」
フィリップの制止も虚しく、二人はドーパントとなって戦う。
「結局メモリで戦い合いか。我が家族らしいといえば・・・ハハッ、らしいか」
「頑張れよ若菜」
能天気にいう琉兵衛と、これまた悠長に若菜を応援する大地。
すると文音が席を立つ。
「文音。もう帰るのかね」
「私はとっくに、負けを認めている」
「待って!待って母さん!家族を放っておくんですか?」
フィリップは帰ろうとする文音に食い下がる。
「お前の家族はもう、園咲ではない、左翔太朗よ。・・・忘れないで。切札は、左翔太朗」
それだけいうと、文・・・・・・シュラウドは邸宅からでていく。
ちなみにこの時、響子がこっそりとイーヴィルテイルを盗み出していたのだが、この場の面々はそれに一切きづいていなかった。
「左翔太朗か。彼はもうなにもできない。再起不能だよ」
(翔太朗が切札・・・)
翔太朗をあざ笑う琉兵衛。
考え込むフィリップは、ふと思いついた疑問をぶつける。
「大地義兄さん」
「ん、なんだ?」
明らかに皮肉混じりなのが丸解りだが、大地は当たり前のように返事する。
「リインフォースはどこですか?彼女は関係ないはずだ」
「ところがどっこい、あの女は必要不可欠なんだよ。俺が”次元の神官”となる為に。そして、ガイアインパクトの終局”ワールドインパクト”の達成のためにな」
「ワールド、インパクト・・・・・・」
*****
一方屋外では、Rナスカとクレイドールの戦闘が行われている。
もっとも、勝負は明らかにクレイドールが有利なのだが。
『私には勝てない。この場で悔い改めるぅ?お姉さま』
『死んでも、御免よ!』
「なら死ぬのね』
――バシュゥゥゥゥゥ!!――
『ウアアアアアアア!!』
クレイドールは冷血に言い切り、零距離でRナスカに光弾を発射する。
『エクストリィィィィィイイム!!』
さらにはクレイドールエクストリームとなりえる。
『ハッ』
Rナスカは空を飛ぶも、クレイドールの触手がRナスカを墜落させ、Rナスカを自慢の巨体で踏み潰した。
結果、ナスカメモリは無残な姿にメモリブレイクされてしまった。
ただし、冴子自身に大したダメージはなく、命からがらその場を脱出する。
『さようなら、負け組さん♪』
*****
翌日の早朝・探偵事務所
――ピリリ、ピリリ!ピリリ、ピリリ!――
「えーっと・・・・・・はい、もしもし」
着信音のするマンティスフォンにヴィヴィオが応答した。
ちなみに、翔太朗のほうではフィリップからの連絡によってスタッグフォンは鳴っていたが、読者の大半はフィリップの言葉を知っているだろうから省略させて頂こう。
「えっ・・・!パパ!ママから電話だよ!」
――バッ!――
「相棒!!」
ゼロは間髪居れずに電話をとった。
気絶していたのが嘘のように。
『ゼロ・・・・・・すまない』
「・・・・・・?」
『私は今、怖くて怖くて仕方ない。だがこうしていられるのは、貴方との幸せな思い出のお陰だ』
「リインフォース、どこにいる!?今すぐ私が・・・!」
『無理だ。私にもここがどこだかわからない。今こうして話せているのは、もうじき途絶える。だから、言っておきたいことがある』
「・・・なんだ?」
ゼロはリインフォースの口調にこの上ない危機感を持ち始める。
『私達は、魂が滅ばない限り、世界が消えない限り、永遠に相棒だ。私達の心に、かつていったあの言葉・・・・・・「魔人と相乗りする覚悟」が、刻まれているなら』
「相棒、オイ――プツッ――・・・・・・クソォォ!」
*****
一方、どこかに監禁されているリインフォースは、手にもっているマンティスフォンを没収されていた。
「終焉に相応しい、美しき遺言でしたよ」
皮肉混じりに彼女を褒める、加頭に。
「・・・・・・・・・・・・(プレシア、これで良いんだな)」
リインフォースには秘策があった。
一世一代の大博打。
それは、プレシアが通信不可能に近いこの環境へ、アルハザードのオーバーテクノロジーを遣ってまで託してくれた奇策。
――よく憶えておきなさい。無限ゼロは、貴女を心から愛している。例えどんなことがあろうと、決して貴女を手放したりはしない――
プレシアが通信の最後に託した言葉を、リインフォースは忘れることはなかった。
*****
「相棒・・・・・・そういうことか」
「え、どういうこと?」
ゼロは、リインフォースの意思を僅かに嗅ぎ取った。
もっとも、尻尾の先端を触った程度だが。
――ガシャン――
「響子さん!」
そこへ、袋を手に、汗ビッショリになって、響子が事務所に訪れる。
「箱の中身よ!・・・evil tail」
「園咲家から、持って来ちゃったの?・・・どんだけ行動力あんのよ。・・・ってことは、ガイアインパクトとやらは阻止した?」
亜樹子の言葉に首を横に振る響子。
「勘違いだったみたい」
――ダンッ!――
響子はテーブルを叩く。
「だって、それが何かの役に立つとは思えないもの!!」
亜樹子は試しにと、袋の中にあるイーヴィルテイルを確認した。
「翔太朗君、無限さん、見て」
そして、それを翔太朗とゼロに見せる。
「これは・・・?」
「どういう意味だろうね?」
イーヴィルテイルの正体。
それは余りにも、悪の組織の計画とは無縁としか思えず、しかしながらも園咲家にとっては宝物となりえる代物だった。
「あ、それから左君に、これを渡すよう言われたんだけど」
響子はポケットから黄金のガイアメモリをとりだす。
「これ、誰が・・・?」
「名前は言ってくれなかったけど、帽子とマスクとサングラスとコートをした女の人と、長い黒髪をした美人な女の人が・・・」
「なるほど、あの二人か」
それは明らかにシュラウドとプレシアの特徴と一致していた。
「これは、俺の・・・いや、俺たちの?」
翔太朗は恐る恐る、メモリを持った。
「ッ!・・・・・・いくぜ!亜樹子、無限」
「しょ、翔太朗君!」
メモリに触れた途端、翔太朗はどこからか勇気を分け与えられたかのように、何時もの勇敢な表情を取り戻した。
それを見たゼロは、一言呟く。
「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」
*****
園咲家の礼拝堂。
そこには、若菜と大地が正装姿でたっていた。
【CLAYDOOL】
【KINGCOBRA】
二人はドーパントとなり、奉られるようにされている、イーヴィルテイルの小箱を静観する。
もっとも箱の中身は空っぽなのだが。
*****
ガイアゲート「泉」
「風都の人間をドーパントにして集めた膨大なデータが、この制御装置の中にある」
「街の人達は、実験台だったんですね・・・」
端末を操作する琉兵衛に、フィリップがとうようにいった。
「そうだ。地球の全ての記憶を、「泉」の真上にいる若菜に流し込む。そして、全ての次元の記憶を”ワールドプログレッサー”と融合すると同時に「根源」とリンクした大地君に与える」
「ワールドプログレッサー?「根源」?なんの話ですか?まさか、そのためにリインフォースを・・・」
「正直にいうと、そうだな。・・・・・・お前らは、若菜達の為、制御プログラムとなるのだ。エクストリームやエクセリオンに到達した今のお前らなら、可能だ」
「・・・・・・僕らは消えるんですね」
フィリップは階段を登り、「泉」の真正面にたった。
「それであの二人は、生きたガイアメモリ製造機――地球の巫女と次元の神官となる」
「貴方はそれでいいんですか?・・・僕が消えても・・・」
「お前は一度死んだ。最早私の力では、救えない」
「僕は貴方を救いたい・・・・・・・・・・・・父さん」
フィリップの言葉に、琉兵衛は些かながらも反応するが、
「二度目のお別れだな」
感情を押し殺し、フィリップの肩を掴む。
「さらばだ来人」
そして、フィリップを「泉」の中に落とした。
フィリップの肉体データは、「泉」の莫大なデータ群の中に混じり、分解されてしまった。
結果、
「エックス、トリィィィィィィィイイイム!!!!」
「泉」からはデータが滝のように流れ出す。
とは言っても、その流れは真上にいるクレイドールに向っている。
*****
ワールドゲート「根源」
「それでは、短い間でしたが、さようなら」
「それは、どうかな?」
身体中を縛られ、抵抗することすらできず、加頭によって「根源」に落とされようとしているリインフォース。
「虚勢を張っても無駄です」
――ガシッ――
加頭は乱暴にリインフォースの長い銀髪を掴み、これまた乱暴な動作で、リインフォースを「根源」の中に落とした。
「これがミュージアムと財団Xの、新たな一歩となるでしょう」
当然フィリップのように分解された彼女のデータによって、「根源」からは凄まじい量のデータが、白銀の光を伴って、次元を超えてキングコブラに向う。
「エクセリオン・・・、ですか」
*****
『エクストリィィィィィイイイム!!!』
『エェェクセリオォォォォォオオン!!!』
莫大なデータを浴びたクレイドールは一気にエクストリームとなり、
キングコブラはその手に持ったワールドプログレッサーを肉体に融合させる。
『あぁ・・・感じる・・・来人から、地球の全てを』
『これがエクセリン・・・!これがぁ、次元の全て・・・!』
そしてキングコブラの肉体は、隅から隅までひびが入り、今にも新しい中身がでてきそうだ。
琉兵衛はガイアゲートから礼拝堂に登ってくると、小箱に手をかける。
「全て、上手くいく。あと、数分もすれば・・・」
「そうはさせない」
そこへ、若い女性の声が聞こえてくる。
それは勿論亜樹子の声だ。
礼拝堂に、翔太朗、亜樹子、ゼロが入ってくる。
『邪魔する気?』
「あぁ、そうだ!」
翔太朗は活力満ちた声で返事する。
「ハハハハ!よく私の前に立てたな左君」
「なに、簡単なことだ」
「こいつの謎を知りたかっただけさ」
翔太朗は一本の古びた刷毛をとりだす。
「イーヴィルテイル!?」
琉兵衛は確認のため、小箱を開ける。
「何時の間に・・・?返せ!私の家族だ!」
「家族?これが家族だっていうの?」
亜樹子の呆れた表情とは裏腹に、翔太朗とゼロは刷毛の取っ手に書かれた文字。
園咲家の人間の名前が書かれたそれをまじまじと見る。
琉兵衛もまた、十二年前を思い出す。
――これはね、外国で見つけた魔除け、「悪魔の尻尾」だぁ。これに自分の名前を書いて。・・・さぁ――
過去の琉兵衛は、妻に、息子に、娘に、それぞれの名前を書かせる。
――家族全員で祈れば、ずっとずっと、皆一緒だ――
「そうか。貴様は今迄目的を果たす為、家族との絆さえ切り捨ててきた。しかしながら、内心ではそんな自分の豹変に恐れたんだ。其れ故に全てが幸せだった頃の象徴であるこのハケを使って、己自身の本音さえも欺き続けた」
「貴方にも、怖いものがあったんだ」
「馬鹿を言うな。そんなことはない」
ゼロの推測と亜樹子の言葉を、琉兵衛は否定する。
「さあ、それを寄越せ。もはや、どんな抵抗も無駄だ」
【TERROR】
『ハハハハ!来人もリインフォース君も消えた。若菜と大地君と共に在る!』
テラーのそんな言葉にも耳を貸すことすらなく、ゼロと翔太朗は思い出していく。
――でも忘れないでくれよ、相棒。僕は消えない。君の心に・・・・・・「悪魔と相乗りする勇気」が、ある限り――
――私達は、魂が滅びない限り、この世界が消えない限り、永遠に相棒だ。私達の心に、かつて言ったあの言葉・・・・・・「魔人(バケモノ)と相乗りする覚悟」が、刻まれているなら――
「わかってるさ相棒。お前が俺を相棒と呼ぶ限り、俺は折れない――約束だからな」
「相棒。覚悟が刻まれているのは心だけではない。この身もまた、貴様との幸福(しあわせ)な記憶(おもいで)にて、満たされている」
二人はイーヴィルドライバーとダブルドライバーを装着。
ただし、ダブルドライバーの左腰には、新たなマキシマムスロットが増設されている。
【JOKER】
【WISEMAN】
メモリをレフトスロットにインサートする。
「さあ来い・・・、相棒!!」
「帰って来いリインフォース。・・・・・・我が最愛の妻よ!!」
その時!
『うっ・・・お、お父様』
『ば、バカな、どこにこんな・・・!?』
『どうした、二人とも?』
苦しむ我が子に、テラーが問いかける。
『来人が、来人が生意気なことを!』
『つーか、無限!テメー、これだけの魔力を放出して、タダで済むと・・・!?』
「相棒を失うくらいなら安いものだ。寧ろ喜んで差し出すぞ・・・!」
魔力の行使によって、眼光が著しい状態となるゼロ。
そして、マジカルメモリとサイクロンメモリが転送される。
「「変身」」
【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/WISEMAN】
風都を守護せし、風の切札――仮面ライダーW・サイクロンジョーカー。
『欲望』を追い求める魔法の賢者――仮面ライダーイーヴィル・マジカルワイズマン。
『そ、そんなバカな・・・!?』
テラーも驚きを禁じ得ない。
『見事に僕らを呼び寄せたね、翔太朗』
『ゼロ。先ほどの言葉、しかと受け取った』
「「・・・相棒・・・」」
「フイリップ君!リインフオースさん!!」
歓喜の声。
『どういうことなんだ!?』
戸惑いの声。
『プレシアとシュラウドが託してくれた、最後の逆襲策のお陰だ』
『Wとイーヴィルの変身システムは知ってるでしょ?僕たちの意識をメモリに載せて、翔太朗達に飛ばした』
『そんなことをすれば、若菜達はメインプログラムを喪失した状態になる!』
その説明どおり、
『うわああああああああ!!ああああああああああ!!』
『ク、クソッ!グアアアァァァァァアアアアアア!!』
クレイドールたちは苦しんでいた。
『そう、バグる』
『おおぉ、なんと愚かな・・・』
テラーは失意満ちた声を出す。
「街を泣かせてきた諸悪の根源――園咲琉兵衛!」
「貴様の『欲望(ねがい)』も、ここまでだ」
Wとイーヴィルは、左手の指と右手の指で、テラーを指差し、
「『さあ、お前の罪を数えろ・・・・・・!!』」
「『さあ、貴様の欲望を差し出せ・・・・・・!!』」
この二組にとって、忘れる事を許されない、決意と覚悟を秘めた決め台詞がきまる。
*****
超常犯罪捜査課
――バンッ!――
ここに、一人の少女がはいってきた。
「お、ヴィヴィオちゃん。どうしたの?」
「こんな朝っぱらから」
ヴィヴィオは真倉と刃野を無視して、課長の椅子に座る照井に詰め寄る。
「照井さんお願い!力を貸してください!」
勿論、それに対する照井の答えも決まっていた。
「あぁ、わかっている」
*****
園咲家庭園。
『裁きを受けるが良い・・・!』
「あんたがな・・・!!」
Wはテラーに対し、殴りかかって良くも、テラーは衝撃波にてWを吹っ飛ばす。
『うぅぅおああああ!!』
『ヴアアアアアア!!!!』
そして、テラークラウンから変貌したテラードラゴンが、Wとイーヴィルに襲い掛かろうとすると、
――バギィィィィン!!――
リボルギャリーがテラードラゴンに突っ込んできた。
そして、車体が開くと、、そこにはアクセルガンナーと、テンペストに跨ったホッパーがいた。
「俺が操り人形?上等だ!それを悪を砕けるなら、人形でもなんでも構わん!!」
「そして私はもう二度と迷わない!この体を包んでる力は、皆を守りたいから使うんだ!!」
「照井・・・」
「ヴィヴィオ・・・」
「竜君!ヴィヴィオちゃん!」
アクセルガンナーとホッパーはテラードラゴンに砲撃や魔力攻撃を行うも、効果はどれもこれも今ひとつ。テラードラゴンが反撃にとアクセルガンナーに噛み付いて持ち上げると、アクセル本体は緊急脱出した。
「セイグリッドクラスター!!」
『ヴィアアア!!ヴェアアアアア!!』
ホッパーがテンペストから勢いよくジャンプし、テラードラゴンの眼球に直接攻撃すると、流石のテラードラゴンひるみ、ガンナーAを離してしまう。
アクセルはその隙にバイクフォームのまま、リボルギャリーのタービュラーユニットと連結し、アクセルタービュラーとなって空を飛ぶ。
「よし、私もいくよ!」
意気込むホッパーは、テンペストのハンドルについていたスイッチを押した。
するとテンペストは一気に変形し、ボード型の”テンペスター”となった。
そしてホッパーを乗せたテンペスターは、ホッパーの足をがっちりと固定し、主を空へと導く。
*****
一方クレイドールとキングコブラは、
『『うぅっ、うぁあ・・・・・・!!』』
苦しみもだえる二人に対して追撃とでも言わんばかりに、
――ウェッ!――
――ギガガァ!――
エクストリームメモリとエクセリオンメモリが宙を舞い、二人の体を貫いた。
『『うあああああ!!ああああああああああ!!』』
それによって、クレイドールとキングコブラのダメージは倍増し、周囲をも含めての爆発が起き始める。当然、二人と密接にリンクしていた「泉」と「根源」にも影響がでないわけがない。
そしてそれをテラーは感じ取る。
『ッ!若菜・・・!大地君・・・!』
そして、二機の大型ガイアメモリが、主人のもとへと飛びつく。
『エクストリームとエクセリオンが、僕たちの肉体のデータを取り戻した!』
Wとイーヴィルは迷うことなく、メモリをインサート!
【XTREME】
【XCELION】
極限まで進化された記憶によって、CJXとMWXが降臨する。
『許さん・・・!』
「園咲琉兵衛、よく見やがれ!風都の皆の、希望と祈りの力を!」
ジョーカーハンドが黄金のメモリをとりだす。
「翔太朗、そのメモリは?」
フィリップも疑問に思うが、構うことなく、ジョーカーハンドは黄金のメモリを増設されたマキシマムスロットにインサートする。
【GOLD】
【GOLD・MAXIMUM DRIVE】
それは見間違えようがなかった。
エターナルとイモータルとの決戦で、風都の住民全ての希望が風に乗り、Wに力を与えたその姿を!
クリアシルバーに輝く体の正中が、輝くような黄金へと色を変えた。
背中からはやした六枚の翅が三対をなしている。
これこそ、仮面ライダーWの最終最強形態!
サイクロンジョーカーゴールドエクストリーム!
「いくぜ、相棒!」
「あぁ、わかったよ、相棒!」
「「プリズムビッカーゴールド!!」」
【PRISM】
*****
片や、アクセル&ホッパーVSテラードラゴン。
【LOCUST】
ホッパーはライブモードとなったローカストフォンを脚に接続。
アクセルもエンジンブレードをしっかりと握り締める。
【HOPPER・MAXIMUM DRIVE】
【ACCEL・MAXIMUM DRIVE】
「ホッパーローカストキィーック!!」
「絶望がお前の・・・!ゴールだぁあ!!」
足のロックが外されると同時に、今まで飛行していた勢い全て乗せ、ローカストフォンの力さえも加えた必殺の跳び蹴り。
そして、エンジンブレードを前方に突き出した体勢で突っ込み、身体に纏った炎がまるで巨大なAの字をかたどり、敵へと突貫していく”アクセルタービュラーフェニックス”。
その同時攻撃の前に、テラードラゴンに対抗策は何一つとしてなかった。
*****
そして、こここでは・・・!
【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【HEAT・MAXIMUM DRIVE】
【LUNA・MAXIMUM DRIVE】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】
【METAL・MAXIMUM DRIVE】
【TRIGGER・MAXIMUM DRIVE】
W・CJGXは、プリズムビッカーゴールドに六本のガイアメモリをインサートし、ゴールドプリズムソードを抜刀する。
「「ビッカー!ゴールドブレイバー!!」」
Wの強大な六つの記憶を宿した突きは、テラーを吹っ飛ばす。
そこへさらに、
【XCELION・MAXIMUM DRIVE】
白銀と黄金の暴風が吹きすさび、その中から繰り出される両足キック!
「「ファイナライズエクセリオン!!」」
その一撃はテラーを再びWのいる方向へと吹っ飛ばした。
【CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER/METAL/TRIGGER・MAXIMUM DRIVE】
そして、
「「ビッカー!ゴールドストリーム!!」」
『うおああああああああああああ!!!!』
ゴールドビッカーシールドより放たれた超絶の光線は、テラーを邸宅前にまで吹き飛ばし、メモリブレイクにまでいたった。
変身が強制解除される琉兵衛。
陥落し、屋敷に落ちるテラードラゴン。
勝負の結果に誤審の生じる余地など皆無だ。
「・・・勝った。テラーのメモリを、砕いた」
テラーメモリの残骸をみて、Wが言う。
「やった!・・・あ、竜君にヴィヴィオちゃん!大丈夫?」
「大丈夫だ」
「心配ないよ」
何時の間にか変身解除していた二人に、亜樹子がかけよる。
「お屋敷が・・・」
だがその瞬間、屋敷が一気に炎上しだした。
あれだけのことがあったのだから、無理からぬことではあるが。
Wは変身をとく。
「・・・・・・・・・」
フィリップはおぼつかない足取りで屋敷に近づこうとするも、それを翔太朗がとめる。
「やっと・・・・・・やっと悪魔のメモリから、皆を引き離せた」
フィリップは涙ながらにそういう。
そしてイーヴィルも変身を解いた。
「ゼロ、今ならまだ間に合う。早く『欲望』を!」
「・・・・・・いや」
しかしゼロは首を横に振った。
その頭髪は全てを失ってしまったかのように、消しゴムで消された絵のように、真っ白だった。
「何故だ!?」
「・・・・・・最期くらい、幸福な記憶のなかで死なせてやれ」
「・・・ゼロ・・・」
「まったく、折角の決め台詞が、空回りになってしまったな」
*****
琉兵衛は、重大なダメージを負った身体を引き摺りながら、食堂部屋に向う。
食堂のほうも、激しい炎で燃え盛っていた。
しかし、琉兵衛はみた。燃え上がる炎のなかにあるものを。
「若菜・・・ッ!」
それは幻影だったのか?
今は問いただすときではないだろう。
「若菜はまだ・・・・・・そうか。今地球の未来は、確かに女王へと託されたのだ!!ハハハハハハハハ!!」
琉兵衛は何時も通りに高笑いする。
「私の人生に後悔は無い。踊ろう、母さん。あの日のように!ハハハハハハ!!アーッハハハハハハ!!」
崩壊していく屋敷の中、幸溢れる家族とのメモリーに入り浸りながら、傍から見ていても、実に幸せそうに踊りながら――園咲家当主、ミュージアム首領、園咲琉兵衛は・・・・・・その焔にて燃える屋敷で、その生涯を閉じた。
そして、完全崩壊した屋敷を見るものがあと二人いた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
屋敷の崩れ落ちるさまに、ただただ、喪失感に支配された冴子。
そして、夫の最期を静かに看取った、園咲文音(シュラウド)。
*****
報告書。
事件は終わり、俺たちは響子さんに事の顛末と、園咲琉兵衛の最期を話した。
園咲琉兵衛は怪物だったかもしれないが、最期にあのイーヴィルテイルを見て、家族を想う優しい心を取り戻しただろう。
「・・・・・・彼女を慰めるために付け加えた、俺の勝手な推測か・・・」
「ううん。それ、きっとその通りだと思うよ」
「俺もそう思う」
「翔太朗。今回のことは、本当にありがとう」
事務所のメンバーはお互いにお互いを笑顔で称え合う。
追伸
しかし、一つ府に落ちない点がある。
若菜姫と園咲大地が、焼け跡から見つからなかったのだ。
*****
???
とある所の某所。
そこでは加頭が、意識不明状態の若菜を抱えていた。
「手酷い目に遭いましたね」
加頭は後ろから歩み寄ってくる人物に話しかける。
「まあな。おーイテテ!予想よりキツいぜこりゃあ」
その人物は怪我をしているのか、身体中をさすっている。
「しかし、これで貴方の・・・・・・否、ミュージアムの目的が潰えたわけではない」
「あぁ、これからさ。あの状況で、メモリの進化が上手くいっただけでも奇跡だからな」
取り出された一本のガイアメモリ。
そのガイアディスプレイに映し出されたアルファベットは、Kではなかった。
「唯一、進化によって名称を変えるメモリ・・・・・・楽しくなってきやがった」
【BASILISK】
それは死を司りし蛇の王を示す言葉だった。
*****
同時刻。
ゼロは自宅の自室にて、カタカタカタカタと、忙しなく端末を操作している。
その眼前には、巨大なカプセルの中で、一糸纏わぬ全裸姿で眠るリインフォースの姿があった。
「かなり無茶な融合をさせられたな。身体中のプログラムが酷く不安定になっている」
――カタカタ、カタカタ――
ゼロは眼と指を再び忙しなく動かし始める。
そして、呟いてからかなり時間が経過したころ、漸くリインフォースのフルメンテナンスが終わったようだ。
「はぁ・・・、三時間もかかったが、これでもう安心――ピキッパキッ――・・・・・・・・・」
休息の一時にと、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲もうと手を伸ばすと、嫌な音が聞こえた。
「・・・・・・・・・・・・」
自分の身体から聞こえたその音。
ゼロは袖の部分を捲くると、手腕を蹂躙するように伸びた亀裂が走っていた。
(・・・限界、か・・・)
次回、仮面ライダーイーヴィル
残されたU/遺【いらい】
これで決まりだ!
サイクロンジョーカーゴールドエクストリーム
NEVER=エターナルとの決戦で発現した特殊形態をゴールドメモリの力で完全再現したフォーム。このフォームになる際は、CJXの状態で、左腰のマキシマムスロットにゴールドメモリをインサートしてマキシマムドライブを発動し、強化変身する。
キック力/20トン パンチ力/15トン
ジャンプ力/190メートル 走力/100mを2.5秒
ゴールデンエクストリーム/200トン
ゴールドメモリ
WがAtoZ事件以降でCJGXになる為に必要不可欠な黄金のガイアメモリ。
特定の記憶を秘めているわけではないが、初めてCJGXになった時における全データが入力されているので、風都の人々の希望の願いや祈りの力さえも篭められている。その力はかなり強力で、触れただけでテラーへの恐怖に陥れられていた翔太朗の状態を持ち直させたほどである。
プレシアとシュラウドの共同開発の賜物である。
プリズムビッカーゴールド
CJGX専用武器。ゴールドプリズムソードとゴールドビッカーシールドに分離する。基本的な構造はプリズムビッカーと同じだが、攻守ともに桁外れに強化されている上、ガイアメモリの六本同時マキシマムを可能にする。
ゴールドプリズムソードでの必殺技は、プリズムゴールドブレイク。
六本同時マキシマムでの必殺技は、超必殺剣・ビッカーゴールドブレイバーと、超絶光線・ビッカーゴールドストリーム。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪