残されたU/遺【いらい】


イーヴィルテイル事件から数日後。

ゼロとリインフォースの自室。
時間は午前7時。

「・・・・・・・・・・・・」

ゼロはリインフォースより先に起き、亀裂の入りに入った自分の身体を見ている。
昨晩から日の出にまで及ぶ情事ゆえに服を着ておらず、首から下の部分を全て確認できていた。

「・・・・・・ん、ふあぁ〜」
「ッ・・・」

そこへリインフォースが起床し、ゼロは急いで身体に入った亀裂を消した。
魔力はそこをついているものの、それくらいのことはまだできるらしい。

「おやゼロ・・・先に起きていたのか、おはよう」
「・・・あぁ、おはよう」

ゼロは短く返事する。
もっとも、表情は晴れやかではない。

「どうかしたのか?そんな暗い表情で・・・」
「どうでもいいだろ」

何時も通りを演じるべく、冷たく一蹴した。

「そうか。・・・じゃあ、どうだ?今日はなんの予定もないことだし、久しぶりに・・・・・・一日中//////」

リインフォースは顔を赤らめながらそういった。
しかし、ゼロは真剣な表情を崩さない。

「・・・・・・いや、今日もまた忙しくなりそうだ」

それはある意味、虫の知らせだったかもしれない。

「はぁ・・・ここのところ、そればかりだな(もう少し、閨で私にかまってくれてもよいのでは・・・///)」

心の中でリインフォースは拗ねた。

「リインフォース」
「はい?」
「一つ頼み事がある」
「珍しいな。一体なにを?」

するとゼロは、真っ直ぐにリインフォースの瞳を見て告げた。

「これから、なにがあろうと、私と共に戦ってくれるか?」
「今更なにを・・・」
「答えてくれ。きちんとな」

若干はぐらかすように聞こえたのか、ゼロはリインフォースの再三と返答の要求をする。

「ゼロ・・・・・・勿論、私と貴方が共に戦えば、私はどんな困難にだって立ち向かえる」
「・・・・・・ありがとう」
「ん?今日は本当に珍しいな・・・」


この時の私は、まだ気付いてもいなかった。ゼロの言葉に隠された真意を。
今迄も、そしれこれからも、永遠に二人で一人。
共に戦い、幸せに生きていくと思っていたが・・・・・・まさかあんなことになるとは、予測さえできなかった。・・・・・・・・・なぁ、ゼロ?





*****

さてここは、とある製薬工場。

「CHARMING RAVEN。表向きは製薬工場。メモリ開発に必要な機材も、無理なく揃えられる」

加頭と大地はこの場所を新たな拠点として、上司であるネオン・ウルスランドから与えられた。
因みに、大地の服装は着崩しているものの財団Xの制服だ。

「時間がないから、簡潔にいうわよ。加頭、園咲」

ウルスランドは白いストップウォッチで時間を測りながら話し始める。

「我が財団Xは、投資対象から、ミュージアムを外した」

三人はCHARMING RAVENの地下に広がるミュージアムの研究施設に入り込む。

「また新たな投資対象の模索が必要ね」

ウルスランドは端末を操作してデータをみる。

「不死兵士・・・NEVER。そして、新しい血族」

端末からはエターナルとイモータルの変身メロディが流れると同時に、NEVERのリーダーである大道克己と、新しい血族の首領であるシックスの顔写真が並んで映る。
勿論、他の詳細データも一緒に。

「三年前には新しい血族に期待したが、少数人のせいで台無しにされ、NEVERもまた、ミュージアムには及ばず、投資は打ち切られた」

ウルスランドは端末の画面を変更する。
そこには、赤・黄・緑・白・青・銀・紫のメダルが映し出され、名称覧にも”CORE MEDAL&CELL MEDAL”と記されている。

「局長、ミュージアムは未だに、滅びていません」
「辛うじて確保した切札と、この俺自身を使えば、ガイアインパクトは勿論のこと、ワールドインパクトも可能ですよ」

加頭と大地は主張する。
そして、ベッドの上で昏睡する若菜を見る。

「まずは俺の嫁さんの中で御休み中のクレイドールメモリの再起動が必要ですがね」
「ミュージアムは仮面ライダー達によって、組織体としては崩壊したのでは?」
「新たな組織のトップは我々が準備します。是非、続行を」

――ピッ――

6分6秒

「次があるの。後ほど詳しく報告して」
「委細承知」
「・・・・・・・・・」





*****

若菜姫は、屋敷が崩壊する直前に連れ去られた可能性が高い。
俺たちは現時点でもっとも怪しい人物を追った。
もしものことを考えて、無限にも協力を要請した。

そして、ウォッチャマンに情報をきくと、

「勿論、見つけたよ、園咲冴子。ここ最近はサーキットで走り回ってるそうだよ」
「なんでそんなになんでもかんでも知ってるの?」
「フフン♪こんな美人が一人で走ってれば、すぐにバイク乗りたちの噂になるってば」
「貴様も情報網も意外と侮れんな」
「職業はなにしてるのかは謎だが。というか活かせてるのか?このスキルを」
「・・・・・・厳しいね」





*****

サーキット。

(私の証明。それは私が若菜達より優れているということ。でも認めさせるべき父はもういない。・・・若菜・・・)

その時、
幾台ものバイクのエンジン音が聞こえた。

聞こえたと思った途端、二つの影が冴子のバイクを追い越した。
ハードボイルダーとイビルホイーラーだ。

三者は暫しの間、平行線を描くように走っていたが、ゴールが見えてくると、真正面からはディアブロッサとテンペストが見えてくる。

そして、五人のバイクはゴール通過と同時にバイクを止めた。

「ゲームセット、ってことかしら」
「そういうこったな・・・・・・レディ」
「取りあえず、知ってること、全部はけ」
「・・・・・・あんたらみたいな冴えない男とドSな化物が、父を倒してしまうなんて・・・・・・最悪ね」

ヘルメットを取り、皆は真剣な面持ちになる。

「冴子姉さん」
「園咲若菜」

そこへ、フィリップとリインフォースが尋ねる。
となりには亜樹子もいる。

「教えてくれ。若菜姉さんをどこへやった?」
「園咲大地も、焼け跡から見つからなかった」
「へ?・・・まさか、あの二人が生きてるの?」
「知らなかったのかい?」

フィリップは意外そうにする。
リインフォースも同じだ。

「若菜姉さんが危機に晒されてる!・・・僕には感じるんだ」

――ガタンッ――

ケースが落ちる音。

「酷いですよ冴子さん。勝手に何処かへ行くなんて」
「そういうな加頭。義姉さんには、良い土産話があるんだからよ」
「大地?あんた、本当に・・・!」

冴子は驚いた。
大地が生きていたことに、加頭と一緒に登場してきたことに、財団の制服を着ていることに。

「貴様どこかで?」
「財団Xの、加頭順と申します」

照井の言葉に、加頭は名乗る。

「財団X?」
「ミュージアムのスポンサーよ。闇の巨大投資企業」
「ほう、ネウロや吾代から噂はかねがね聞いていたが、そこに園咲大地がいるとはな」

「といわれても、俺は最初から財団の一員でね。管理局もミュージアムも、俺の宿願成就の為に利用した。だけど義姉さん、加頭のきっとの頼みだし、あんたも俺達の仲間になれるぜ。そして、ガイアインパクトとワールドインパクトが実現する」

大地は悠々と説明する。

「まさかあんた達が若菜を!?」
「その通りですよ、冴子さん。彼女は尊い犠牲となるでしょう」
「若菜姉さんを返せ!」
「お断りします」

すると、加頭と大地はメモリドライバーを装着し、ガイアメモリを取り出す。

「ッ!?園咲家にしか使えない、ゴールドタイプのメモリ!それに、大地のメモリは、まさか噂には聞いていたけど・・・!?」
「質問は一つにしてくれ」
「まずは私から。これはスポンサー特権というやつです。このメモリは私と適合率98%です」
「そして俺のメモリは大蛇から、”死を司る蛇の王”へと進化したメモリ。こないだの一件で適合率は100%に上昇だ」

二人は自慢するように語る。

「正に、運命」

【UTOPIA】
【BASILISK】

起動したメモリは手元を離れ、自我を持つかのように、ドライバーのバックルに自動挿入された。

「「ッ!」」
「「ッ!」」
「ッ!?」
「「「ッッ!?」」」

その時、ユートピアメモリの特性なのか、加頭と大地以外の全員は、宇宙空間にいるかのような無重力状態を体験する。

そうしていると、加頭と大地はにやけた表情で姿を変える。
その際二人から発せられた夥しいオーラによって、皆は吹っ飛ばされる。

そしてオーラがおさまると、加頭は”理想郷の記憶”を宿したユートピア・ドーパント。
大地は全身に牙が生え、右目には眼帯をした紫と漆黒の異形、バジリスク・ドーパントとなった。

無論、変身完了と同時に、皆は地面に叩きつけられるのだが。

【ACCEL】
【HOPPER】

「変・・・身!」
「変身!」

【ACCEL】
【HOPPER】

しかし、照井とヴィヴィオは力を振り絞り、変身する。

「フィリップ、俺たちも変身だ」
「ゼロ、今こそ一緒に!」
「・・・・・・まだできない」
「今はダメだ」
「なに?」
「どうして?」

相棒からの変身拒否。

一方、アクセルはエンジンブレードを振り下ろすも、ユートピアは”理想の杖”をかざし、アクセルの動きを止める。

そしてホッパーも、バジリスクが左目から放つ怪光線を避けて攻撃しようとするも、バジリスクは掌をかざし、念動力を発動させてホッパーを浮かせる。

「なんでだよ!?」
「なぜ変身を?」
「今度のWへの変身は、若菜姉さんを確実に助けられる瞬間にとっておく必要がある」
「あぁ、それはあの二人を確実に倒せる瞬間でもある」

ゼロとフィリップは重々しい口調だ。

「今度Wに変身したら・・・・・・僕の身体は、消滅してしまう」
「私も、次のイーヴィルへの変身が、最後の時だ。そして、塵となる」
「「この地上から、永遠に」」

フィリップの手はデータに還元されかけており、ゼロも手袋を外して今にも塵になりそうなボロボロの手をみせた。

「「ッッ!!?」」
「あたし・・・聞いてない・・・」
「なに言ってんだよフィリップ?出鱈目いうなよ・・・」
「嘘だろ?嘘だと言ってくれ!」


一方、アクセルはユートピアが起こした雷付きの暴風に巻き上げられ、一気に地面に叩きつけられた。

「なんだこのパワーは!?」

困惑するアクセルに、ユートピアは理想の杖でアクセルの身体を浮かばせる。

『貴方とは、次元が違う』

そしてユートピアはアクセルを地面に思い切り叩きつけた。

「うあぁぁぁぁぁあああ!!」
「きゃあああああ!!」

アクセルの変身が解けると同時に、ホッパーも吹っ飛ばされてくる。
どうやらバジリスクの超能力攻撃の洗礼をくらったらしい。
そして、変身が解ける。

「竜君!ヴィヴィオちゃん!」

心配する亜樹子を他所に、冴子はこういった。

「来人。今頃きっとお父様は御墓で泣いてるわ。お墓でね」
「え・・・?」

その瞬間、ユートピアが冴子を引き寄せ、捕まえた。

「加頭!離しなさい!」
『行きましょう。我々が、貴方が輝けるところへ』
『じゃあな、ライダー共』

ユートピアは杖で地面に大きなひびを入れると、バジリスクは敵の混乱に乗じて三人一緒にテレポートした。

「「・・・・・・・・・」」
「「・・・・・・・・・」」

ただそこには、なんともいえない何かが漂い残った。





*****

CHARMING RAVEN・地下

そこで冴子は昏睡した若菜と対面する。

「・・・若菜・・・」
「園咲冴子さんです。新生ミュージアムのトップです」

感傷に浸る冴子に構いなく、加頭は冴子をウルスランドに紹介する。

「彼女が後継者として、今後の計画を実行すると?」
「えぇ。メモリ適正のない人間を瞬時に消滅させる人類選別の儀式。我々はそれを、地球全域に行います」
「そしてガイアインパクト完了後、全次元世界においてそれを実行します」

加頭と大地は淡々と説明した。

「どうやって?」
「まずは若菜さんをデータ化して、財団の人工衛星にインストールします」
「その後、その際の情報をもとに今度は、俺自身を媒介にワールドインパクトを実行するのです」
「成る程。上層部に投資再開をかけあってあげてもいいわよ」
「「是非」」
「成功したら、だけど。次があるから行くわ」

ウルスランドはそういって出て行った。

「・・・遂に貴女が、ミュージアムのトップですよ」

加頭は笑顔で冴子に近づき、あるものを渡す。

「タブー・・・!」

没収されたタブーメモリだった。
冴子はそれに、無意識に手を伸ばす。

それを見た大地は、

(さて、後はライダーを始末すれば・・・!)

着々と、邪魔者排除を狙っていた。





*****

地下ガレージ。
皆は実に意気消沈としていた。

が、フィリップは検索をしていた。

『知りたい項目は、若菜姉さんの居る場所。キーワードは、ミュージアム、財団X、施設』

本棚が十個以上残った。

『風都内にある秘密施設は、大小合わせて27ヵ所もある』
「虱潰しに探すしかないのか」
「いや、園咲冴子がヒントをくれた」

ゼロが口を挟む。

「園咲琉兵衛は埋葬できるような状態じゃないはずだ。にも関わらず、あの女は・・・墓・・・といった」
『成る程。追加キーワード、墓』

絞り込めたらしく、フィリップはホワイトボードになにか書き出す。

「CHARMING RAVEN。そこにメモリ製造工場がある」
「なぜ墓でわかった?」
「社名はCHARMING RAVEN。墓は英語でGRAVE」
「もしかしたら、あの女も消極的に、我々に協力するきになったのやもしれんな。よし、いくぞ」

ゼロは話をズカズカと進める。

「ちょっと待て!その前にさっきの話だ」
「貴方達が消える、とは一体?」

「まずは僕から話すよ」

フィリップが語り始める。

「知っての通り、僕は一度死んでいる。この肉体は、地球の本棚の力を得た事により、奇跡的に再構成されたデータの身体だ。それが今、加速度的に消滅しかかっている」
「此間若菜姫と融合した所為か?だったらなんでリインフォースは!?」

翔太朗は疑問をぶつけにぶつける。

「僕らは地球と次元の記憶に近づきすぎたんだ。もっともリインフォースは、無限ゼロがみっちりとフルメンテをしたお陰で、どうにかなったようだけど、僕の肉体にはそれが通じない」

フィリップは言い聞かせるようにいった。

「今度Wになれば僕は完全に消滅し、地球の記憶の一部となるだろう。だが若菜姉さんを救ったあとなら!・・・後悔はない」

フィリップは自分に用意された運命を語る。

「さて、次は私の番だ」

そこへゼロが説明にはいる。
というか、説明するまでもないかもしれないのだが。

「何故データでもない貴方が塵になる・・・?」

リインフォースは冷めた声でとう。

「・・・・・・魔人の肉体は、食料を得る事で魔力を、瘴気を吸うことで体力を補給できる。どちらかが満たされていれば、魔人はある程度生存可能だ。しかしAtoZ事件で私はシックス一人に対し、魔帝兵器を連発した。二度と奴が甦らないよう、細胞一つ残らずな。その時に、一番の回復手段である魔界電池をうしなった」

ゼロは忌々しそうに語る。

「そしてイーヴィルテイル事件で魔界能力を一度使い、相棒を救出するために大量の魔力を使い果たし、今の私は生物学上では常人となんら変わらない状態になっている」
「だから言ったじゃないか。私の魔力を使えば・・・!」
「だからそれはダメだ。魔力とプログラムで構成された貴様から魔力を吸い取れば、私は誤って貴様を殺しかねない」

ゼロはそういった。

「次へのイーヴィルへの変身の際、一気に高濃度の瘴気を吸えば、今や人間同様私の身体は耐え切れず、塵になって終わる。しかしながら、やつらの計画を阻止できたのならば・・・」
「お前ら、覚悟を決めたということか」
「それ、避けられないのかな?」
「パパ、どうにかなんないの!?」

「これはもう、回避不可能だ。僕たちではもうどうしようもない」
「私の肉体も、ここまで弱っては回復の兆しすらみえん」

二人はトドメにこういった。

「諦めてくれ」
「後のことは頼む」

それと同時に、翔太朗はフィリップの胸倉を掴み、リインフォースはゼロにビンタした。

「馬鹿野郎!!!!」
「ふざけないでくれっ!!!」
「簡単に諦められるかよ!!」
「ゼロ、朝の会話を、こんな形で成立させてなるものか!!」

二人はガレージからでてしまった。

「翔太朗君!!」
「ママ!!」

「「・・・・・・・・・・・・」」






*****

雑木林。
バイクでここにきた翔太朗とリインフォースは、

「シュラウド!!」
「プレシア!!」
「いるんだろ!でてきてくれ!シュラウド!!」
「頼むプレシア!!・・・ゼロを、ゼロを助けてやってくれ!!」
「シュラウドォォォオオ!!!!」
「プレシアァァァアア!!!!」

二人は肺が潰れそうなくらい、大声をだす。
すると、

「・・・・・・・・・シュラウド!」
「プレシア!」

姿が見えたシュラウドとプレシアに、急いで駆け寄った。

「本当なのか?あいつらが消えるって!」

シュラウドもプレシアも頷いた。

「教えてくれ!どうすればあいつらを助けられる!?」
「来人のことは予測がついてたけど、無限ゼロについては、全くの予想外だった」
「どの道、私達は正解を持ち合わせていない」

「そんなのあるか!!フィリップを救う事は、俺おやっさんから託された一番デカイ依頼なんだ!!なのにっ!!」
「鳴海壮吉に、来人を救うよう依頼したのは、この私」
「・・・・・・あんたが依頼人?」
「まさか・・・」

翔太朗もリインフォースも驚く。

「今や来人は救われた。最早来人は、復元されたデータの塊などではない。・・・・・・お前達のお陰だ」
「でも消えちまうんだろ!!」
「せめて、最期には、あの子を笑顔で消えさせてほしい。それがあの子を救うということ。頼む、左翔太朗」

プレシアが続く。

「リインフォース。私は嘗て、アリシアの父親、つまりは夫を失った。だから貴方の気持ちはよくわかる。だけど、夫を最期の時まで、笑顔で送り出してあげるのも、妻の役目よ」

「「勝手なこと言うな!!!!」」

翔太朗とリインフォースは、シュラウドとプレシアに掴みかかるも、二人は煙のように消えてしまった。
ただ二人の焦燥感だけが残った。





*****

探偵事務所に戻った二人。
中に入ると、



「「「「「「バンザーーーイ!!」」」」」」

――パンッ、パンッ!――

風都イレギュラーズや、真倉と刃野が、クラッカーを鳴らしてハイテンションになっていた。

「なんだこれ?」
「なんの騒ぎだ?」
「私が皆を呼んだの。フィリップ君の海外留学と、ゼロさんの超絶栄転を祝した、サプライズパーティー」

「「「「「「イエェェェェェェエエエ!!!」」」」」」

亜樹子の説明に、六人のメンバーは否応なく盛り上がる。
もっとも、祝われているはずのフィリップとゼロは勿論、ことの真相を知っている者達はローテンションだ。

翔太朗とリインフォースは呆れ顔で亜樹子に近づく。

「おい亜樹子・・・!なんだよサプライズパーティーって?」
「というか、ゼロの超絶栄転とはなんだ?どんな設定だ?」
「色々考えたんだけど、これが私の決めたこと」

なんだが空気がギクシャクしてくる。

「さあ皆、プレゼントを用意してるんだ」
「ありがたく受け取るがいい」

そんな三人のことを気付かせまいと、フィリップとゼロが注意をそらさせる。

「戦いに行くのは明日として、本番だけいいでしょ?フィリップ君とゼロさんに、想い出沢山あげなくちゃ」
「「・・・・・・・・・」」

皆は二種類のプレゼントをあけていく。

「フィリップと無限からもらった」
「私も、だけどね」

照井とヴィヴィオもプレゼントをあけていた。

「はい皆!では、主役の二人から、ご挨拶がありまーす!」
「え、アキちゃん?」
「貴様・・・ッ」
「「「「「イエェェェェエエ!!」」」」」
「よ!待ってました!」

いきなりのことに、二人は少し戸惑うが・・・。

「昔の僕は、人との付き合いに興味がなかった。・・・・・・悪魔みたいな奴だった。でも翔太朗に連れられて、この風都に来て――」
「今では、どうなの?」

エリザベスがそれとなく訊いた。

「大好きさ。街も、皆も」

フィリップは確かにそういった。

「ではでは、次はゼロさんお願いします!」
「はぁ・・・・・・かつての私は、他の人間どものことを、タダの三下な虫ケラと思っていた」

ゼロはビギンズナイト前後の自分を思い出す。

「だが相棒やヴィヴィオ、多くの強き意志を秘めた中間達と出会った」
「それで、今はどう思う?」

御霊はそう訊いてみた。
彼女もまたことの真相に触れているので、少々ローテンションだが。

「実に悪くない。相棒やヴィヴィオ、仲間達がいなければ・・・今の私はなかった」

「やっぱカッケーな!」
「普段はドSだけどな」

真倉と刃野はそういった。

「よし皆、乾杯しよ。乾杯!」

亜樹子が皆と乾杯で盛り上がっていると、ゼロとフィリップは、プレゼント用に包装した箱を、所長椅子に座る翔太朗と、ベッドに腰掛けるリインフォースの近くに置いた。

「翔太朗・・・・・・プレゼントだ」
「受け取り拒否は認めんぞ」
「後でいいから、あけてみてくれ」
「我ながら良い出来の物ができた。期待してくれてかまわん」

「「・・・・・・・・・・・・」」

ゼロとフィリップの声に返答せず、ただただ沈黙する二人。
贈られたプレゼントに隠された言葉に、二人が気付くまで、もう少しの時間を要する。





*****

翌朝。
皆が騒ぎ疲れて未だに眠っていると、それを狙って、ライダー一向は出発する。

「所長。敵のアジトに乗り込むんだぞ。君には危険すぎる」
「行くよ。・・・最期の別れになるかもしれないし・・・」

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

「俺の傍を離れるなよ」
「・・・モチッ!」

そして、一同は出動する。




*****

CHARMING RAVEN。

施設内に侵入した一同は、途中にいた黒服や研究員達を殴り倒しながら進んでいく。
なかにはマスカレイドとなっているものもいたが、所詮は使いッパシリの最下級ドーパント。
変身せずとも倒せた。

「この先に若菜姉さんがいる!」
「よし、一気に進むぞ!」

しかし、先へ進むごとにマスカレイドが集結していく。

「左、リインフォースここは任せろ」
「ここは私達で、十分過ぎるほど十分だよ」
「わかった」
「頼む」

照井とヴィヴィオはメモリを起動させる。

【ACCEL】
【HOPPER】

「変、身!」
「変身!」

【ACCEL】
【HOPPER】

二人はアクセルとホッパーに変身し、マスカレイド達を簡単にあしらっていく。

そしてゼロたちも少数のマスカレイドを蹴散らし、辿り着いた。

「若菜姉さん!」

五人は急いで駆け寄る。

「来人・・・、来人・・・!」

うわごとのように弟の名を呼ぶ若菜。

「とっとと連れて逃げるぞ」
「待って!」

若菜の額には・・・。

「何かの計測器・・・、一体なにを測ってるんだ?」
「彼女の能力(メモリ)の発動数値です」
「考えればわかるだろ」
「加頭・・・・・・!!」
「園咲大地・・・・・・!!」

大地と加頭は悠々と階段を下りてくる。

計測器(ソイツ)は、この端末と直結してるんだ」

すると、計測器は若菜の肉体にとりこまれた。
もはやこの場では取り外せない。

「クレイドールエクストリームを100%としたとき、今は・・・・・・43%」
「姉さんをプログラム扱いするきだな。それでも夫婦なのか!?」
「だからこそ、尊い犠牲になる」
「それにしても流石は元祖データ人間。理解が早い」
「ふざけるな・・・!」
「これがふざけてる顔に見えますか?」

【UTOPIA】
【BASILISK】

無重力状態が発動する。

「翔太朗!今がその時だ!こいつを倒す!!」
「今が好機だリインフォース!!」
「その後は、頼んだよ」
「上手くやっといてくれ」

【CYCLONE】
【WISEMAN】

「「・・・・・・・・・」」

しかし、相棒は・・・。

「翔太朗!!」
「リインフォース!!」
「翔太朗君・・・リインフォースさん・・・」

「うるせぇよ!」
「言われなくても・・・」

メモリを取り出した。
しかし起動を戸惑っている。

そしてまごまごしているウチに、加頭と大地の変身が完了し、無重力が消える。

ユートピアは理想の杖を使い、若菜を引き込む。

「若菜姉さん!!」
『大事な生贄です。返してもらいますよ』
『別の場所で待ってるぜ』

そうしてユートピアとバジリスクは、壁を壊して移動していると・・・。

【TRIAL】

「させるか!」
「行かせない!」

アクセルとホッパーが突っ込んできた。
もっともアクセルは、トライアルにメモリチェンジしている。

だがそれでも結果が同じであるかのように、状況は劣勢極まる。

「クソ・・・トライアルと互角の速さとは・・・」
『フフフ・・・・・・種明かしには、まだ早いですね』
『早くくたばれよ』
「こんな、ところで・・・!」

「竜君!ヴィヴィオちゃん!」
「翔太朗!!」
「リインフォース!!」
「「・・・・・・・・・」」

しかし、変身をしようと思っても、実行できない二人。

【OVER】
【SANCTUARY】

アクセルオーバーとホッパーサンクチュアリが現れると、ユートピアは若菜を壁に張り付かせた。

「若菜姉さん!・・・翔太朗!!」
「なにをしてる相棒!!」


一方、こちらでは、

「まさか、オーバーのパワーまで!」
『すぐに私が勝ちます。というより君が遅くなる』
「こっちも、幾ら先読みしても、かわされちゃう」
『なーに、数秒先やコンマ数秒先を、軽く予知しただけだ』

『今度じっくり、わかりやすくお見せしましょう』
『その機会があればの話だがな』

二組は取っ組み合いの状態で屋上の窓を突き破り、屋外へ出てしまう。
なおその際にバジリスクはしっかりと若菜を片手に持っていた。

ゼロたちは急いで後を追う。

そして、ホッパーとアクセルは、上空から一気に落とされ基本形態に戻ってしまう。

「な、なぜだ・・・?」
「どうして、力が・・・?」
『ユートピアとは希望の力のメモリ。君の生きる希望の力をもらい、私のモノとした』
『俺もそれを真似てみた』

状況はあまりに悪い。

「拙い!翔太朗早く変身だ!!」
「迷ってる時間はないぞ!!」
「・・・・・・・・・」
「私は・・・、私は・・・」

しかし、翔太朗とリインフォースはいまだに戸惑う。

「翔太朗!!」
「リインフォース!!」

そして、ユートピアとバジリスクはアクセルとホッパーに近づく。

『その結果を味わいなさい』
『さあ、見ろ。直死の眼光をな』

――ドゥガァァァァァァァン!!――

「グアアアアアアア!!」

ユートピアにキックされたアクセルは、炎上しながら苦しむ。

――ギラン・・・ッ――

「ッッ!!?」

眼帯を外したことであらわになった、バジリスクの放つ虹色の眼光。
それを真正面から直視してしまったホッパーは、無機物のように肉体が固まるのを感じ取り、動けなくなった。

結果、

「うぅ!うあああああああああああ!!!!」

アクセルは変身が解けても尚、身体が炎上し続ける。

「・・・・・・・・・・・・」

ホッパーに至っては、変身さえ解除されずに固まるばかり。

「照井竜!!」
「ヴィヴィオ!!」

フィリップとゼロの悲痛な叫び。
すると、若菜の身体が緑色の光を帯び始めた。

『あれ?若菜の能力発動係数が高まったな』

「ううおおおおおおおおおおお!!!!」
「貴様!許さん!!」
「翔太朗!!リインフォース!!」
「無茶だ止せ!!」

制止もロクに聴かず、翔太朗とリインフォース生身のままで特攻する。
もっとも、リインフォースは騎士甲冑を纏っているが。

「穿てッ!ブラッディダガー!!」
『無駄なんだよ!』

しかし魔法攻撃さえも意味を成さない。

「止めろ!止めるんだ翔太朗!!」
「相棒!!好い加減にしろ!!」

だが、彼と彼女は決してきかない。

「止めろリインフォース!!」
「止めろ・・・!止めろ止めろ止めろ!!!」

若菜の光が勢いを増していく。
それに気付いたバジリスクとユートピアは、翔太朗とリインフォースの首を掴み、身体を持ち上げる。

『素晴らしい!彼女の意識は今、園咲来人とシンクロしている』
『一番手っ取り早い若菜の復活方法は、来人の精神的苦痛。ならば話は早いな』

そう、この極悪人二人のとる方法もまた、一つ。

『ちょっと死んでみてください。来人君のまえで』
『無限ゼロへの嫌がらせにも、最高ってもんだろ?』

バジリスクとユートピアは握力を強めた。

「ひ・・・・・・左ぃ・・・」
「マ・・・マ・・・」

ホッパーは身体を固められながらも、照井は全身に大火傷を負いながらも、必死に声を出す。
だが一番声を叫び散らしたのは、

「「止めてくれぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!」」



最愛の相棒と親愛なる相棒の脳髄の中枢にまで届かんと必死になる、フィリップとゼロだった。

次回、仮面ライダーイーヴィル

さらばZ&P!/永【あいぼう】

「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」

これで決まりだ!


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