イーヴィル・ビギンズナイト


人間から言わせれば地獄という言葉がよく似合う魔界。
人類を陰で救った『謎』喰い魔人・脳噛ネウロと、数多の次元世界の中枢たるミッドチルダを救った『欲望』喰らいの魔人・無限ゼロの故郷である。

獰猛で禍々しき生物が生息し、地面には腐った百合が乱れ咲き、天空から陽光を放つ太陽さえも自らの輝きを拒絶した上、そこに住む魔人達はルールに縛られずに暮らす無法地帯である。

そんな魔界で、”新しい血族”の首領たる男「シックス」を倒した代わり、衰弱を極めてしまったネウロが療養の為に帰属してから一年後、再び人間界にやって来る二年前に、”彼”はこの魔界(せかい)から居なくなった。

「兄上、行くのか?地上へと」

ゼロがそう聞いたのは、その昔に人間から金毛玉面と怖れられた九尾の狐と酷似した魔人。
兄上と呼ばれた魔人は、ゆっくりと立ち上がってこう答える。

「御主も聞いたじゃろ、ゼロ?ネウロの話を。…ワシは確めたいのじゃ。人間達が秘めた可能性を……この眼でな」
「……そうか、ではもうなにも言いませぬ。達者でな、兄上。魔界の『欲望』を喰い尽し、尚私の追い求めるモノが無ければ、何時かは私も…!」
「フ…、また会おう。我が弟よ」





*****

現在。

「…………夢か」

眼を覚ましたゼロは呟く。

「ゼロ、漸く…起きたか……」

その腕のなかには、リインフォースがいた。

――ギシギシ、ギシギシ…!――

なにかが軋む音。

「ところで…ゼロ」
「なんだ?」
「…もういいか?」

すると、ゼロは清々しい表情で言った。

「却下♪」
「そんな横暴なってイタッ!」

――ギシギシギシギシ!!――

音が強くなる。

「イダダダダダ!!」

悲鳴をあげるリインフォース。

「背骨!背骨折れる!」
「そうか、では落とす」

――スッ……ズドン!――

「イッタ〜!…もうちょっと丁寧に扱ってくれても……婚約者(フィアンセ)だというのに……」
「ハッハハハ!だからといって、貴様を弄る趣味を改めるつもりは毛頭ない」

天井で張り付いているゼロに抱き締められたままというか、もう完全にベアーハッグをきめられていた彼女が抗議の声をあげると、ゼロは一度却下したものの気が変わったのか、天井から落とされて床に叩き付けられちゃったリインフォースであった。

そんでもってゼロのドSも相変わらずだった。

「まあでも、新メモリと十二種のギジメモリ、そして改造ガイアドライバーを完成させたんだ。今日はゆっくり休もう」

そう、部屋の机の上にはZODIAC(ゾディアック)のメモリと十二種類のギジメモリと改造されたガイアドライバーがおかれている。

「そうだな。では、リインフォースよ」
「はい?」
「ナンバーズの戦闘服の性能を調査・実証してくれとの依頼があるので――――」
「まさか私に着ろと?」
「当然だ」

リインフォースは焦った。
何しろナンバーズの戦闘服は身体にピッチリ張り付くので、女性だとバスト・ウエスト・ヒップなどのボディラインがくっきりとでてしまう。しかも着るする際は恐らくノーブラ・ノーパンにならねばならないので、着るには色んな意味で抵抗感があった。

こんな下らない依頼が高難度の事件を請け負うゼロのところにまで回ってきたのも、女性局員の殆どがナンバーズスーツを着ることをイヤがったというのが実状だ。しかし、ゼロならドS精神が命ずるままに親しい女性に強制着用させるであろう。

「……(汗)」
「さあ…!」

”最早これまでか…!?”とリインフォースが諦めかけた瞬間、

「御二人とも、郵便受けにこんな物がはいってましたけど」

そこへドアを開けて御霊が報せをもってくる。
ゼロは舌打ちしながらそれを手にとった。

中身をあけると、それは海鳴市で三日後に行われるパーティーの招待状だった。
それを見た途端、ゼロは御機嫌斜め状態から、普段通りの状態に戻った。

「ほう、実に興味深い。…いってみるか」

しかし、この招待状が一転して、ゼロとリインフォース=仮面ライダーイーヴィルの始まりの夜・ビギンズナイトに隠された秘密のベールの謎を明かすものになろうとは、この時に気付くことのできた者は皆無だったろう。





*****

三日後、海鳴市、午後八時半。
市営ホールのパーティー会場。

「ほえー、人で一杯だ」

清楚な純白のドレスをきたヴィヴィオ。

「そりゃまあ、各界の著名人があつめられた社交パーティーですもの」

メイド服(ネコ耳と尻尾なし)の御霊。

「だが、我々がこんな華やかなパーティーに招待される理由などあったか?」

青紫のイブニングドレスを着たリインフォース。
薄らと化粧もしているので、その美しさにも磨きがかかっている。

「さあな。しかし、あの招待状には『欲望』のニオイが染み付いていた」

ネウロのそれと同デザインのブラックスーツを着用したゼロ。

「おや、あいつらは……」

周囲をみてみると、小柄な女性と青いスーツ姿の長身の男、黒服を着たチンピラ風の男がいた。

「ネウロではないか」

ゼロは気さくに声をかけた。

「おぉ、ゼロ。奇遇だな」
「無限さん。お久しぶりです」

ネウロと弥子は愛想よく返事した。

「あん?なんだこいつは?」
「黙れ吾代。我が輩の親友に失礼ではないか」
「ハッ!?テメーに親友とかいたのかよ!マジ有り得ってイデデデデデデデ!!!!」

元ヤクザ運営の闇金融社員にして現在は望月総合信用調査副社長たる男、黒服のチンピラ・吾代忍が喋ってる途中で、ネウロは彼の耳を引っ張った。

「ダアァァァア!耳千切れるゥゥゥゥゥ!!」
「ネウロ、もういいぞ。そやつの小汚い悲鳴でこの優雅な雰囲気を壊したくない」
「それもそうだな。折角招待されたのだしな」

とりあえず、この場はなんとかなった吾代であった。

(こ、このドSコンビ……いつか一泡ふかせてやる…!!)

吾代よ、その願いは永遠にかなわない。

「流石同郷者。二人揃っただけで半端ないな」

弥子、お前も吾代の心に助け舟を出してやれ、無駄だろうが。

「あのー、ちょっといいですか?」
「はい、なにか?」

御霊が気まずそうに尋ねる。

「そのケータイのストラップ、蠢いて見えた気が……」
「(ゲッ!)…あ、アハハハ!玩具ですよ、玩具!」

弥子は取り繕う。それも必死になって(笑)

「ほう、ネウロ。こいつが”あかね”か」
『そうですよ、ゼロさん』

ゼロが彼女の名前を言った途端、ストラップだと思われていた者はいきなりケータイのメモ機能によって筆談してきた。
彼女の名前は”あかね”。ネウロ達の魔界探偵事務所のコンクリの壁の中に生き埋めにされていた死体だったが、ネウロが吐きだす魔界の瘴気の影響を受け、髪の毛だけという中途半端な形で蘇った。

弥子は「あちゃ〜〜……」とかいっている。

「お、探偵に……仮面ライダーの御二人さん!!」
「先輩、御静かに」

すると今度は…オタクなダメ刑事・石垣と、生真面目刑事・等々力が登場した。
どうやら仕事でパーティーの警備役になったようだ。

「わー!また会えて光栄っすよ!サイン下さい!」

ハイテンションに色紙とペンをだす石垣。

「ウザい」

――バキッ!――

「あああぁぁぁぁぁ!!」

ゼロは遠慮無く色紙とペンを壊した。

「自業自得ですね、先輩」
(ッ!…くぉんのガキがぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

すると、司会者から立食の時間から舞踏時間(ダンスタイム)への移行が知らされる。
招待客は次々とパートナーと共に社交ダンスを踊り始める。

「さて、私達も踊るか?」
「はい、喜んで」

ゼロが手を差し延べると、リインフォースはその大きく暖かい手に優しく触れる。
そして二人は華麗な踊りのステップを踏み始めた。
その踊りは片方が欠ければ決して完成することのない、不完全さ故の美しさがあった。

「わー、あの二人ってあんなにダンス上手だったんだ…」
「無論だな。ヤコ、あの二人の指を見ろ」
「指?………あッ」

弥子は気付いた。
ゼロとリインフォースの左手の薬指に同じ指輪がしてあるのを。

「あれは魔界の婚約指輪(エンゲージリング)だな」
「えぇー!ということはあの二人、婚約したってこと!?」

弥子は驚きを禁じ得なかった。
基本的に上級魔人は人間のことを食糧を生産する手駒としか見ていないと、ネウロと一緒にいた影響でそう考えていた。しかし、ゼロとリインフォースは種族を越えた絆で結ばれたのだ。

「仲人は我が輩。…出席客はそこら辺から掻き集めて、式場は…」

ネウロはブツブツ言い始めた。
大方、二人の結婚式のことを考えてるのだろう。

「周囲に魔界生物を配置、料理や酒にも……クククク!」

しかし、ドSスマイル。

そこへ…!

――ブツ…!――

なにかが切れる音がすると、会場の証明が全て消えた。

「なんだ?ブレーカーでも落ちました?」
「誰か早く灯りをつけてください」
「暗くて仕方ありませんよ」

客達は一斉に不満の声をだす。

――バッ!――

証明がついた。
しかしながら、その光は会場のある一点のみに降り注いでいた。

「「「キャアアアァァァァァ!!!!」」」

そこにいるのは、鋼色のドーパントだった。

「皆さんおちついて!慌てずに、この場から避難してください!」
「ふ、風都署ですか!?ドーパントが出現しました!」

客たちを避難させる等々力と、風都署に通報している石垣。

「フムフム、やはりドーパント絡みだったか」

ゼロは呟き、イーヴィルドライバーを装着。

【MAGICAL】
【LEADER】

「「変身!」」

【MAGICAL/LEADER】

ゼロとリインフォースは仮面ライダーイーヴィルに変身。
変身の際に発生する瘴気は嵐のように渦巻く。

「ネウロ、私と相棒が作った物だ。使ってみろ」

イーヴィルはゾディアックメモリ&ガイアドライバーとギジメモリ十二種を渡した。

「ほほう、興味深い。是非使わせて貰おう」

ネウロは早速ガイアドライバーを装着。
しかしこのガイアドライバー。園咲家の物と違ってサイドバックル部にスロットがあった。

【ZODIAC】

「変身」

ドライバーのバックルにメモリを差し込み、ネウロは”十二宮の記憶”を宿したゾディアック・ドーパントに変身した。

「ま、マジかよ……!?」
「ね、ネウロがドーパントになった…!」
『ッ!!?』

吾代や弥子、あかねは三者三様の反応を示す。

「いくぞネウロ」
『アァ』

イーヴィルとゾディアックは早速ドーパントに嗾けた。
ドーパントはそこら辺に転がっていたイスやテーブルの金属を吸収して、腕に巨大な刃を形成する。

巨大な刃を振り回すドーパントに対してイーヴィルとゾディアックは、

【KNIGHT】
【MAGICAL/KNIGHT】
【SCORPIO】

イーヴィルはマジカルナイトにハーフチェンジ。
ゾディアックはギジメモリ・”天蠍宮の記憶”を収めたスコルピオメモリをスロットにセットし、固有武装の一つたる突撃槍”スコルピオランス”を装備した。

しかし、ドーパントは二人の装備変化をみるやいなや、突然にも会場の舞台袖に逃げた。

『ん?なんのマネだ?』

リインフォースが複眼を光らせていると、その疑問は更なる疑問となって返ってきた。

――コツ…、コツ…、コツ…、コツ――

舞台袖から聞こえる足音。

『ゼロ、あれは……!!』

現れたのは口にキセルを加えた和服姿の白髪の男。

『あいつ、レイズではないか』
「そんな、こんなバカなことが…!?」

イーヴィルの困惑にお構いなく、男は二本の緑色のガイアメモリを同時に起動させ、ダブルドライバーと同型の黒いメモリドライバーを装着した。

「…変身…」

【MULTI/WARRIOR】

二重の記憶が、静寂に包まれた空気を掻き乱すような旋律(メロディ)が響き渡らせ、男……”無限レイズ”の身体は激的に変化した。
黒いセントラルパーテーションを境とし、身体の両半身共が緑色。首に巻いた赤いマフラーをズリ上げて口部分(クラッシャー)を隠し、鬼のような二本角を生やした黒い複眼の仮面ライダー。

その名は、仮面ライダーデュアル!
そして今のフォーム名は多才な戦士の記憶を宿したマルチウォリアーである。

「ッ…!」
「トオッ!」

デュアルは掛け声と共にジャンプし、イーヴィルに組み付いた。

「あ、兄上!?」

戸惑うイーヴィルに、デュアルは遠慮の無い猛攻を続ける。

『なにをしているゼロ?そいつが本物のわけがない』

ビギンズナイトのことをゼロから聞かされたネウロは、デュアル=無限レイズが本物ではないと判断する。

「どうですかね?」

デュアルは喋った。
しかしその声は…。

「貴様、堺か?」
「御名答」

なんと、デュアルから聞こえた声の主は堺=ドーパントだったのだ。

「貴様、どうやって兄上の力を!?」
「ちょっと、この御方の身体を拝借してるだけですよ」
『身体を拝借!?』

堺のあり得ない返答にゼロとリインフォースはこの言葉を半信半疑で聞いた。

『ほう、ではレイズの身体は返却してもらおう』

ゾディアックはスコルピオメモリの挿入されたスロットのスイッチを入れる。

【SCORPIO・MAXIMUM DRIVE】

『スコルピオウェアー』

スコルピオメモリのマキシマムを発動しようとすると、

「待てネウロ!」
『邪魔をするな。今此処にいるレイズが本物だとしたら尚更、こんな下賤な輩の好き勝手にさせるわけにはいかんだろ』

制止するイーヴィルを押し退け、ゾディアックはデュアルに必殺技を叩きこもうとする。

「魔界777ッ能力…目潰し目薬(イビルドロップ)

デュアルは奇妙な目薬を複眼に注すと、

――ビガァーーーーン!!――

なんか凄い破壊光線を発射して、イーヴィルとゾディアックにダメージを与える。。

「私、下手したらあんなビームを目から出してたの?」

弥子はヒストリア事件のことを思い出す。

「クソ、こうなればやるしかないな」

イーヴィルはデュアルの魔界能力使用に、漸くヤル気になった。

「ネウロ、時間を稼いでくれ」
『良かろう』

ゾディアックに時間稼ぎを頼むと、イーヴィルはメモリを取り外して別のメモリを起動させた。

【VANITY】

バニティーメモリを起動させると、リインフォースの身体は魔方陣の展開と共に魔力の塊となってイーヴィルに取り込まれた。

【DARKNESS】

そこへダークネスメモリも現れ、メモリモードにしてスロットに挿入。

【DARKNESS/VANITY】
【XCELION】

ダークネスバニティーにハーフチェンジすると同時に、エクセリオンメモリを使ってDVXになった。

「「グレインノヴァ!」」

【GRAIN】

グレインメモリをソードの柄に挿入して抜刀する。

イーヴィルはたどたどしい手付きで六本のメモリを持ち、六つのマキシマムスロットにいれた。


【MAGICAL・MAXIMUM DRIVE】
【SONIC・MAXIMUM DRIVE】
【TRICK・MAXIMUM DRIVE】
【BURST・MAXIMUM DRIVE】
【KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】
【LEADER・MAXIMUM DRIVE】


六本のメモリの力はグレインメモリによってグレインソードに結集する。

「「エターナリティ…スーパーノヴァ!」」

イーヴィルの掛け声と同時にゾディアックがデュアルから離れた瞬間、

――ヒュン…!――

「「ッ!?」」

イーヴィルは驚いた。
なにしろデュアルが必殺技を受ける直前に変身を解除したのだから。

流石のイーヴィルも攻撃を中断せざるを得ない。
そんなイーヴィルを、レイズはあざ笑ってこういう。

「甘いですね」

【LIGHTNING/SABER】

レイズは電撃の如き金色の右半身と闘魂の如き赤い左半身をした”雷光の剣士”・ライトニングソードに直接変身。背中に背負った大太刀・ソードセイバーの柄のマキシマムスロットにソードメモリを挿入。

【SABER・MAXIMUM DRIVE】

「セイバーボルテージ!」

――ザシュァァァアア!!――

「「うおおぉぉぉぉぉ!!」」

必殺技によって吹っ飛ばされたイーヴィル。

『ゼロ!…おのれ!』

ゾディアックは怒り心頭なご様子で、デュアルに駆ける。

「そうはいきません。魔帝7ッ兵器…!」

――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!――

朽ちる世界樹(イビルツリー)

――ズシャァァァァァアア!!――

『ッ!』

【CANCER】

ゾディアックは咄嗟に”巨蟹宮の記憶”を収めたキャンサーメモリをもう一つのスロットに挿入して、蟹の甲羅をモデルにした分厚い盾・”キャンサーシールド”を出現させる。

【CANCER・MAXIMUM DRIVE】

『キャンサープロテクト』

さらにマキシマムドライブを発動し、イビルツリーへの防御に徹した。

「フハハ、フハハハハハハ!素晴らしいですねぇ、魔人の力!」

デュアル…いや堺はお気に入りの玩具が見つかったかのように大きく笑った。

「暫く間、この肉体お借りしますよ♪魔界777ッ能力…虚栄の兜(イビルフルフェイス)

デュアルは煙幕を起こして逃げ去った。

「う、うぅ…!…うぅぅおおおあああああああ!!!!」

――バギィィィン!!――

イーヴィルは心底悔しがり、グレインソードを床に叩き付けた。





*****

戦いが一旦区切られ、事件は始まった。

無限家。

「………」
「あの、ゼ「話し掛けるな」…はい」

ゼロの機嫌は最高潮なまでに悪かった。

――ピンポーン――

ベルの音。

「はいはーい」

御霊が招き入れる。

「無限!堺の変身したドーパントが現れたんだって!?」
「通報した石垣巡査長から聞いたぞ」

Wの肉体(ボディ)・左翔太郎と加速(アクセル)の刑事・照井竜。

「うるさい」
「なに…?」
「うるさいと言った」

ゼロは無愛想な態度だ。

「そう言うなよ。お前の兄貴が利用されてるんだろ?だったら俺達「うるさいと言ったろ!!」…む、無限…」

翔太郎の意見を踏みつぶすかのような声量で、ゼロは怒鳴った。

「これは我等魔人が解決すべき問題だ。人間(キサマら)の助力など必要ない!さっさと消え失せろ!」
「…そうか」
「邪魔したな」

ゼロの強い拒絶の言葉に翔太郎と照井は、陰鬱とした表情ででていった。

「ゼロ、いくらなんでもあんな言い方はないだろ!」
「黙れ…!」

抗議するリインフォースに、ゼロは地の底から響くような声で喋る。

「貴様らの意見など求めてはいないぞ」

ゼロは屋外へとでていってしまった。





*****

園咲家・庭

「そういえば、若菜」
「なんですかお父様?」
「最近海鳴市で、堺君が一騒ぎ起こしているようだ。エレメンタルとは別に隠しもっていたガイアメモリでね」

それを聞いた若菜は驚く。

「一体なんのメモリを!?」
「……この私ですら聞いたことも見たこともないメモリだ。どうやって手に入れたのか、皆目見当もつかんよ」

琉兵衛は空を見上げながらそう言った。

「ところで若菜。冴子が席を外した以上、お前の今後の働きに期待させてもらうぞ。我々、園咲家(ミュージアム)のために」
「………」

この話に、若菜は返答できずに、ただ沈黙するだけだった。





*****

とある管理外世界。
湿地帯と砂漠しかない文化レベル0の世界。
その世界のなかで一際目立つのは何者かによって造られ、そして破壊された建造物。

「……一年ぶりか」

ゼロはその建造物跡の前に独りでたっていた。
まるでなにか、思い出に浸るかのように。

すると、

「そうだな。…此処で私達、イーヴィルの物語は始まった」

後ろからリインフォースの声。

「……随分とまあ、ゾロゾロと引き連れてきたものだな」

そう、此処にきたのはリインフォースだけではない。
Wコンビ・照井・ネウロ&弥子もいたのだ。

「そう邪険にすることもないだろう。確かにこいつらはクソ虫だが、役立つ時もたまにある」

ネウロはサディスティックな発言を交えてゼロを説得する。

「話してください、ゼロさん!一年前、貴方とリインフォースさんに何が遭ったのかを!」
「僕も是非聴きたい」
「無限、話せば楽になるぞ」
「教えてくれ無限。俺達は仲間だろ?」

弥子・フィリップ・照井・翔太郎も説得に乗じる。

「ゼロ!私達は二人っきりじゃない。こんなにも素晴らしい仲間がいる!」

止めにリインフォースの一言。

「…………わかった」

長い沈黙の後のゼロの一言。

「語って聞かせよう。イーヴィルが誕生した始まりの夜……ビギンズナイトを」





そしてとうとう、ゼロとリインフォースの口から語られるイーヴィル誕生の秘密。
始まりの夜・ビギンズナイトの謎が解き明かされる…!


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.