仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事は!
一つ!七実がオーメダルに関する情報を話す!
二つ!グリードの一人リュウギョクが、新たなヤミーを誕生させる!
三つ!ブライは新しい力を手に入れた!
欲望と火影と裏麗
ナナフシヤミー戦から一週間後。
数百枚に及ぶセルメダルと、新装備を手に入れたブライ。
七実も漸くこちらの生活に慣れてきた頃、刃介は一つ疑問に思うことがあった。
「んー」
「どうしたんです?」
「妙だな」
「妙、とは?」
刃介は新聞やテレビを見ながらそういった。
確かに、妙なことはある。
「此間の戦いが全然話題になっていない。あれだけの被害が出た上に目撃者も大勢いたんだぜ。普通なら今でも新聞やニュースの一面を飾ってるはずだろ」
刃介の言った言葉は決して間違っては居なかった。
「誰かが情報操作したってことでしょうか?」
「だろうな。大方メダマガンを持ってきた体育会系野郎の雇い主あたりが怪しいな」
刃介は断言する。
「ま、考えても仕方ない。その内向こうから接触してくるだろうしな」
刃介は予測する。
「七実、飯食ったばかりで悪いが、残りの技のほうを見取らせてくれねーか?」
「いいでしょう。今日で虚刀流の技は全部見せられるでしょうし」
そうして二人は道場に向った。
*****
トライブ財閥。
「ホント今回は色んな人脈・金・権力を振りかざすことになっちゃったわね」
『いやいや!ブライの戦闘データを得られたというのなら、このくらいは安いものだよ!』
シルフィードは誰かとモニタリングし合いながら話している。
それゆえか、服装もきちんとした女物のビジネス・スーツになっていた。
「今回は力添えのほう、ありがとね♪」
『気にすることはない。我々は同志じゃないか!』
モニターに映っているのは、自分の机でケーキを作っている男だった。
「・・・・・・そうね。今度も宜しくお願いするわ」
『任せたまえ!』
「それじゃ、また何かあったら話し合いましょう・・・・・・鴻上光生会長」
『あぁ。ではまた会おうルナイト・ブラッドレイン・シルフィード君』
そうしてモニタリングの会話は終了した。
「同志・・・ねぇ?」
シルフィードは右手に血錆色をしたジュース缶・・・・・・カンドロイドを持っていた。
*****
我刀流道場。
「虚刀流――『七花八裂』」
虚刀流に伝わる七つの必殺奥義を連続で繰り出し、敵を八つ裂きにする奥義。
それは一人であろうと、七人であろうと有効な技である。
七実の使ったそれは、あっと言う間に七枚の分厚い木材を全て破壊していた。
「おー、中々便利なもんだな」
「えぇ。一つずつ奥義を見せるのは面倒だったので、思い切って七花八裂をお見せ致しました」
七実は汗ひとつかくこともなく、そういった。
「奥義でない技も二回ずつ見せてもらったし、後は奥義をもう一回で済むな」
「それでは今度は、改良したものをお見せします」
七実は再び構えない構え、自然体そのものともいえる零の構え『無花果』を行う。
「虚刀流最終奥義――『七花八裂(改)』」
*****
片やその頃・・・・・・。
「・・・・・・時は満ちた。我が此の世の全ての頂点となる「時」がな・・・・・・」
前々回において、リュウギョクにヤミー生産の為に利用された男・森光蘭は、これでもかというほどに偉ぶった態度で椅子に座っていた。
その隣には長髪で黒衣を纏った十代後半あたりの美少女と、額にはバンダナで顔に包帯を巻いた男が立っている。
そして前方には五人の男女が立っていた。
「800年前に存在し、封印されたグリードが現代に甦った今、遂行すべきことはより早急に進めなければならない」
やはり森は、グリードのことをある程度知っているようだ。
「第一に・・・”彼の地”に眠る最強の魔導具、天堂地獄!! 私はこれを煉華と共に探しに行く」
煉華とは黒衣の少女のことだ。
実は彼女はクローンであったりする。
「第二に・・・行方のわからぬ紅麗の生死を確かめること――捜せ!!死体を見るまでは安心できん!」
紅麗とは烈火の異母兄弟で、彼と同じ炎術士の力を持つ青年だ。
とある理由から森の養子になっていたが、煉華の誕生によって用済み扱いされ、彼女に殺されかけたが、寸でのところで紅麗の部下・音遠の尽力によって、逃げられてしまったのだ。
「第三!火影、治癒の少女の監視だ」
第三に挙げられた少女については追々説明する。
「ヒヒヒ・・・紅麗が万が一生きていたところで何もできはしないがな。奴の「麗」にはもう誰もいない」
森は紅麗をあざ笑う。
「元、十神衆『螺閃』、今は私、森光蘭率いる「裏麗」の首領」
森は自分の前方中心にいる青年をみた。
その青年は、表情はおろか感情さえも完全喪失したかのように無表情だった。
「螺閃、君は賢いぞ・・・・・・紅麗に義理立てしても、命を落すだけだ。火影をマークしろ!隙あらば一人ずつ殺してゆけ!」
この時、森はまだ気づかなかった。
裏麗のメンバーのうち数人がイレギュラー要素と遭遇することに。
*****
森との話が終了し、裏麗のメンバーはこぞって集まった。
「さて!とりあえず、ここには五人いる訳だけど。・・・まァたクセの強い奴が揃ったわねェ」
グラサンをかけ、髪をポニーテールにした女・鬼凛はそういった。
「双角斎・・・」
全身を黒マントで隠し、大きな壺を背負った男。
「神威・・・」
モヒカンヘアーで、眼にバイザー的なものを装着した男。
「牙王・・・」
恰幅のよい長髪の男。
「そして・・・我等を束ねる―――螺閃!!」
「人の事など言えるのか?おまえこそクセだらけではないかよ、鬼凛!」
双角斎が笑い混じりに言う。
「他の裏麗はなにやってんだ。葵とか・・・ヤベえ奴はまだいるだろ?」
「紅麗を捜したり、裏切り者捜したりさ」
牙王の疑問に鬼凛が答える。
「裏切り者?・・・ああ、抜け忍三人衆か」
そんな不名誉なことを言われている人物の名は、餓紗喰・月白・火車丸である。
「あんなのほっといていいじゃない。どーーせ、裏麗の中でも端っこな奴等よ?関係ないわ」
神威は女口調でいった。
というか、こいつ絶対オカマだ。
「とりあえずてめェらのターゲットは火影だ!そろそろ行動に移せ!!いつまで遊んでやがるんだ!!」
バンダナと包帯を巻いた粗暴な男、永井木蓮がそう怒鳴ると、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
螺閃はただなにもせず、死んだような眼つきで木蓮を見出した。
「ヒッ!!?な、なんだよ!!」
木蓮は植物そのものとなった左腕をだして警戒する。
というか怯えているのだ。
「口の利き方には気をつけなよ木蓮。君に言われんでも”時は来た”のさ」
鬼凛は木蓮に注意し、代弁するかのごとく喋る。
――フッ・・・――
そして木蓮を残し、五人は一瞬で姿を消した。
*****
時刻はもう既に夜。
刃介と七実はというと・・・。
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
能天気に夕食を済ませていた。
しかも、七実が作った夕食だ。因みに和食である。
「お前ホント、なんでもできるんだな」
「こんなの知識さえあれば大抵の人ができますよ」
七実は山菜や獣肉以外の料理スキルを身につけた。
『リュアアア!!』
『ルァァアアア!!』
奇妙で奇怪な機械チックな鳴き声がした。
しかも二つ。
「窓の外になんかいるぞ」
「血錆色の・・・・・・龍?」
そう、窓の外でやかましい鳴き声をだしていたのは龍を模した二体のロボット・リュウカンドロイドだった。
刃介が窓に近づくと、リュウカンドロイドは遠くにいくかと思われたが、雑貨店の入り口近くで待っていた。
「ついてこいってことか」
「どうします?」
「行くしかねーだろ」
刃介は迷わなかった。
「でも二体とも別方向にいるんですけど、別行動でいいですか」
「勿論だ」
そうして、この二人はさらに歴史の裏に関わっていくのだ。
*****
そこは不良達のたまり場となっていた廃屋。
そこで今、一人のモヒカン頭の巨漢学生がピンチに陥っていた。
「オイオイ。石島・・・土門っていったけか?本気で来いよォあぁ?」
腐乱犬と渾名されるモヒカン学生・石島土門は、裏麗の一人である牙王に追い込まれていた。
牙王は口にチョコボールを放り込んでいる。
「何者だ、てめェ!!」
土門は仮にも裏殺陣武闘会決勝戦で、優勝候補チーム”麗(紅)”の呪という魔導具そのものともいえる相手に対し、強靭な精神力で打ち破った男だ。
平凡な一般人が自分を圧倒できるわけがないというのは重々に承知していた。
「牙王。てめえにゃちょっとした縁のあるモンだ」
「一体どんな縁なのですか?」
「そりゃおまえ・・・・・・」
牙王は周囲を見渡した。自分と土門しかいないこの空間で若い女の声がハッキリと自分に質問してきたのだから。
「オイ誰だ?出て来い!」
牙王は声を荒げて叫ぶ。
(だ、誰なんだ?)
土門も気になってきた。
この状況で登場しうる人物を。
ストストといった重みのない足音が暗闇のなかから近づいてくる。
「こんばんわ。鑢七実と申します」
そして、鑢家の歴史上において最強過ぎる最強の天才が現れた。
「女の子・・・?」
「はッ!なんのようだ小娘!?」
牙王は荒っぽく聞いた。
「ちょっとお尋ねしたいことがあったんですけど、この状況を見る限り必要なさそうなので止しておきます」
「だから何の用だってんだよ!?どいつの回し者だ!?」
「質問は一度ずつでお願いします」
七実はあくまでも冷静な態度を決して崩さない。
「フン!答えるきが無いってんなら、ぶち殺す!!」
牙王は自分の豪腕を七実の細い体躯に振り下ろす。
「危ねぇ嬢ちゃん!!」
土門は必死に叫んだ。が、その必要はなかった。
「虚刀流『雛罌粟』」
七実は一瞬で牙王の懐に入り、手刀を下から上にはらうことで――
――ブシュッッ!――
「ぶはッ!」
牙王の腹を切り裂いた。
しかし、出血量が少ないところを見ると、寸前でかわしたようだ。
「こいつ・・・!もう容赦しねぇぞオイ!」
牙王は一個の玉が嵌め込まれた一本の長い棒を取り出す。
「こいつはな、魔導具『石棍』といってな、周囲にある石や岩を自由に操れる。使いようによってはこうもなるんだぜ!!」
牙王は自慢げにいうと、周囲にある石という石を全て身に纏い始め、首から下を全てを石の甲冑で覆い尽くしたのだ。
「どうだ!これなら幾らてめェの手刀が鋭くとも、意味はないんだよ!」
自分の勝利を確信する牙王。
だが、甘い。虚刀流の前では、鎧など意味をなさないからだ。
「虚刀流四の奥義」
七実は再び牙王へと接近。
「柳緑花紅」
前触れなく繰り出された七実の拳。
それは牙王の鎧に直撃し、周囲には衝撃が走る。
「がッ・・・!!て、てめェ、小娘が、なにを・・・!」
牙王は口から吐血し、ひざまづく。
そしてダメージゆえか、石棍による石の鎧を解除する。
「これは鎧通しといわれるもので、拳が命中した物質の内部に全ての衝撃を伝導させます」
「くうっ!」
牙王は心から屈辱を感じた。
パッとでてきた素性不明の女にここまで圧制されているのだから。
「す、すんげぇ・・・」
土門は七実の実力に素直に感心した。
すると、
「なんだと!!?「退け」とはどういうことだ鬼凛!?こんな恰好悪いざまのまま帰れるか!!」
突然牙王が叫びだす。
まるで通信をしているかのようだ。
「!!」
が、なにかを伝えられたのか、顔色が激変する。
「わ、わかったよ・・・言うとおりにする・・・・・・そう螺閃に伝えてくれ・・・」
牙王はそういうと、
「石島土門!鑢七実!次こそは死を!!」
其の場から消え去った。
「はぁ、疲れた」
七実は退屈そうに呟いた。
「おい嬢ちゃん!」
「はい?」
「あんた何者だ?」
土門は至極もっともな質問をした。
「・・・・・・次にお会いしたときに、お話いたします」
そう返して、七実も消えた。
*****
とある高校の校舎の屋上。
前回に登場した炎の少年、花菱烈火は自分が主と認めた佐古下柳の絵本作りに付き合っていたら帰りが夜になっていて、いざ一緒に帰ろうと思ったら、裏麗の螺閃と鬼凛に遭遇して現在絶賛交戦中である。
「・・・・・・・・・・・・」
「なんとか言え固羅!!」
<無理よ・・・>
先ほどから無口であり続ける螺閃に烈火が怒鳴ると、みなの頭の中に声がした。
<螺閃はある事によって・・・表情と言葉を失ってしまった人だから・・・・・・>
それは紛れも無く鬼凛の声のはずだ。
<だからって彼は意思も伝える事のできない、孤独な人間じゃないわ・・・>
「なに・・・この声・・・?頭に直に聞こえる・・・・・・」
柳も困惑に困惑を重ねる。
<彼には彼の理解者が存在する。彼の口となり、表情となり、彼の心を代弁する者・・・>
そこで心の声は途切れる。
「「心眼」の、鬼凛」
鬼凛は右腕に砲鬼神(ほうきしん)という魔道具を装着した状態で、螺閃に抱きついていた。
「この指輪型魔導具「心眼」で、私は人の心を読み、心を読ませることができる。烈火君は途中で気付いたみたいだけど」
一旦鬼凛は区切る。
「「頭が悪い」って前情報の割には結構鋭いじゃん!!あっはっはっは♪」
「誰だぁ!?言った奴は!!」
戦闘中であるにも関わらず、雰囲気がコミカルになった。
だが直ぐに烈火は雰囲気をシリアスに引き戻す。
「・・・・・・下がってな、姫。固羅、鬼凛とかいったなぁ?」
ここで烈火は宣言する。
「別に俺は追い込まれて屋上に出た訳じゃねぇぞ。校内で一番広い場所――――」
烈火は右腕から炎を出して、力強くいうのだ。
「ここなら戦えるからだ!」
「そいつは良い心がけだな」
「「「ッッ!!」」」
「この声、確か・・・・・・」
突然聞こえた男の声。
耳を澄ませば、屋上へとつながる階段をのぼってくる足音がしてくる。
――ギィィ・・・――
そして、男はトビラを開けて、月光の元に自分の姿をさらした。
「貴方、誰?」
「俺か?俺は「あん時の変身ヒーロー!!」・・・・・・(怒)」
折角カッコよく決めようとしたところに、烈火の叫びが妨害した。
「烈火君・・・あの人知ってるの?」
「知ってるもなにもねぇぜ!トンデモなく強ぇぞ!」
「お前らなぁ、自分らが置かれてる状況わかってるか?」
刃介はすこしコメカミを押さえながら二人にいった。
「まあいいや、メンドくせぇし。・・・自己紹介はあとだな」
「いきなり乱入しといて随分余裕ぶっこいてくれてるね」
「負ける要素がないからな」
「そんなの強がりだよ。今から君の心を覗け――ッッ!!」
その瞬間、鬼凛は気持ち悪そうに口を抑えた。
「な、なに今の・・・!?ドス黒くて、不気味で・・・グロテスクなものが・・・本心を覆い隠して・・・・・・」
「もしかしたら、それって俺の欲望かもな」
「・・・欲望・・・」
鬼凛は心眼でなんどとなく人の心を覗いてきた。
しかし、本心を覆い隠すというだけでも稀有だというのに、そればかりかこちらの気分を害させるほどの強烈な欲望を持つ人間など聞いたことすらなかった。
「変身するまでもないか」
刃介はナナフシヤミーを倒して以降は、ブライドライバーとリュウコア・オニコア・テンバコアを常時携帯していたが、今は使わずにすみそうだ。
「とっとと、済ませるかな」
刃介は零の構え『無花果』から一気に駆け出し、まずは鬼凛に向った。
「虚刀流五の奥義『飛花落葉』!」
合わせた両手を花が開花するように突き出して掌底を繰り出した。
この技は鎧崩しの一種で、柳緑花紅とは真逆の奥義である。
要するに、衝撃云々を外側にのみ伝導させる技で、虚刀流奥義のなかで足止めの要素を持った奥義だ。
「うあッ!!」
勿論、多少手加減されているとはいえ、刃介は右腕をグリード化させてこれを使っている。
致命傷とはいかなくとも、ダメージも相当なものだ。
「さて、あとはあの無口野郎潰して洗い浚い吐かせるか」
拳をゴキゴキと鳴らして、螺閃に近づく刃介。
が、
――瞬ッ!――
――ガッ!――
螺閃は一瞬で刃介の背後をとって後頭部を殴ろうとするも、刃介はいとも簡単に受け止める。
そして、投げ飛ばすことで、螺閃をフェンスに叩きつける。
「えっと、お前の名前は確か・・・?」
<『自己紹介するよ、拳法家君。私の名は裏麗の螺閃だ』>
螺閃の心の声が聞こえる。
流し目で見てみると、鬼凛が少しずつだた立ち上がってきているのがわかる。
「『君を消すのは冗談抜きで骨が折れそうだ。なので次回は万全の状態で君を待ち受けることにする。君との戦いに相応しい場所においてね』>
螺閃の心を鬼凛が口にしていく。
「一応訊くが、どこでだ?」
「『じきにわかる。ここまで関わった以上、自ずと君もその場所に来ることになる』」
「・・・・・・以上、螺閃の言葉を私、鬼凛が代弁しました♪」
喋り終わる頃には、鬼凛も大分回復していた。
<あなた達が来なくてはいけない場所・・・・・・ヒントは・・・>
心眼による声が一度途切れた。
「「天堂地獄」!!烈火君のママならきっと意味わかるよ。ぢゃね♪」
そうして鬼凛も螺閃も立ち去っていく。
<また会える日を楽しみにしてるわ――火影に、拳法家さん!>
そうして、鬼凛の心音が聞こえ終わると、二人の気配が完全に消えた。
「いや、拳法家じゃなくて、戦士なんだけどな・・・・・・」
刃介は間違った認識をされて、少し呆れ顔をしていた。
そして、烈火と柳のほうに顔を向けた。
「そういえば、まだ自己紹介がまだだったな」
「あ、はい、そうですね。・・・私は佐古下柳っていいます!」
「火影忍軍七代目頭首・花菱烈火!」
「俺は我刀流二十代目当主の・・・鋼刃介だ」
こうして、火影忍軍と我刀流は、歴史の中で交わることとなったのだ。
*****
同時刻。
森光蘭と煉華の前に一人の人物が現れていた。
「誰だ貴様?」
「ふふふ、この声に聞き覚えはないか?」
「ッ・・・ま、まさか!?」
初めて会ったときは異形だったが故に気付ける要素など皆無だった。
森と煉華の前にいるのは、全身に鎖を巻き、袖を切り落とした覆面すらない忍び装束を着込んだ女忍者。・・・・・・リュウギョクだった。
「パパ、この女誰?」
「お前は黙ってなさい!!」
「うぅ・・・・・・」
森に怒鳴られ、煉華はシュンとなる。
それを尻目にリュウギョクは怪人態となってこういって見せたのだ。
『永遠の欲望を秘めし者、森光蘭よ。私と手を組んでみないか?』
それを耳にした森は、表情こそは恐怖で染められていたが、心の中では笑顔になっていた。
*****
トライブ財閥会長室。
「会長。例の物、鋼刃介の家に送っておきました」
「ありがとう」
バットの報告に、シルフィードは素直に感謝する。
「貴女が開発したこのリュウカンドロイドも中々良い出来ね」
「それはどうも」
「そろそろ我々も、彼に本格的な接触が必要ね」
シルフィードはカンドロイドを弄り回しながらそういった。
「あのゲス野郎とグリードとの戦いには、我々のメダルシステムが役に立つことは実証済みですもの」
「だからこそ、あれを彼にというわけですね。にしてもおまけが多すぎるのではないですか?」
「契約で得られる物に比べれば安いものよ」
そしてここにおいても、着々と進行するものがあった。
*****
翌日の朝。
鋼家にはあるものが届いていた。
それは最新式のスマートフォン二台と最新式のノートパソコンが二台に、綺麗に装飾された箱だった。
「一体誰がこんなものを?」
「身に覚えが全くありませんね」
二人はそういうも、疑問なんてものは箱を開けた瞬間に解けた。
「これって、昨晩の龍だよな?」
「多分そうだと思いますよ」
中に入っていたのはリュウカンドロイド・1ダースだった。
箱の中にはそれだけでなく、一通の手紙があった。
開けてみると、それは実際には手紙ではなかった。
「招待状?トライブ財閥会長、ルナイト・ブラッドレイン・シルフィードからだってよ」
「行ってみたらどうですか?花菱くんのほうには私が代理として行きますので」
実は昨晩、烈火とはきちんと話し合うため、『火影隠れ屋敷』の場所を教えてもらっていたのだ。
「・・・・・・あぁ、頼む」
こうして、烈火たちの所へは七実、トライブ財閥へは刃介が行く事となったのである。
*****
――ブゥゥゥゥゥウウウン!!――
刃介はシェードフォーゼに乗って、トライブ財閥の本社ビルの前にやってきた。
みちのく人は、刃介の異色な身形に好奇の視線でジロジロ見回していたが、刃介はそれを殺気を飛ばすことで散らした。
そして受付嬢に招待状を見せて会長と会わせるようにいうと、
「ッッ!は、はい!ただいま直ぐに!」
なんか凄い慌てた様子でパソコンを打ち込み始めた。
そして端末から出てきたカードを刃介に渡した。
「どうぞごゆっくり!」
「あぁ」
刃介はカードを持ってエレベーターに乗っていった。
近くにいた女子社員は、受付嬢に近寄って聞いてみる。
「なんかあったの?随分と慌ててたみたいだけど?」
「あの人、超VIPクラスの招待状を持ってたのよ」
「はぁ!?あのプラチナペーパーを!?あんな人が!?」
「信じ難いけど、ね」
「会長も何考えてんのかしら?」
この二人が話している間にも、刃介の乗るエレベーターはどんどん上昇していき、会長室に直結している階層に到達する。
「会長、お客様がお見えのようです」
「らしいわね」
「どんな展開になるかが不安っすよ」
三人はそれぞれ言っていると、
「よう、呼ばれたから来てやったぜ」
刃介が偉ぶった態度で登場してくる。
「ようこそ、鋼刃介くん♪私がこのトライブ財閥会長を勤めている、ルナイト・ブラッドレイン・シルフィードよ♪」
シルフィードはウインクしながら自己紹介する。
「なあ、一つ訊いていいか?」
「なんなりと」
「どうして”着流し一枚”なんだ?」
「貴方とお揃いでしょ♪」
シルフィードはまた、妖艶でいやらしい笑顔でウインクする。
刃介の言うとおり、シルフィードは今、黒い着流し一枚だけを羽織った状態だ。
しかもかなり着崩しまくってる為、このまま変な体制になったり、転んで仰向けになりでもすれば、間違いなく刃介にあられもない姿をみせかねない。
「・・・・・・・・・とりあえず、俺をここへ呼んだ理由を言え」
刃介は勝手にソファーに腰掛けて訊いてみた。
「いいわよ、教えてあげる」
シルフィードもシルフィードで軽率そうな口調のままで喋り続ける。
「鋼刃介、私達と契約してみない?」
「契約・・・・・・メダルか」
「察しが良くて、助かるわ」
つまりシルフィードは、鴻上がオーズとアンクに持ち掛けたのと同じ取引をするつもりでいるのだ。
「契約が成立すれば、私達トライブ財閥は貴方と七実ちゃんに対しては最優先にメダルシステムを提供するわ。そして貴方達は契約して以降からは、ヤミーを倒して得たセルメダルを何割か私達に渡す」
「へぇ」
シルフィードの説明に刃介が相槌を打つ。
「悪くない取引でしょ?」
「確かにな。・・・でも」
「でも?」
「メダルを渡す度合いは未決定だよな?」
この時、刃介の眼が煌き始めた。
刃介はソファーから立ち上がってこう宣言した。
「さあ、交渉を始めよう!」
強欲漢、鋼刃介の趣味、値切り交渉が始まる。
しかし、その様子は余りにも地味で退屈なので、省略することとする。
三十分後
「じゃ、じゃあ・・・40%でどうかしら?」
「よし、乗ったぜ!」
こうして刃介は、メダルシステムの提供の代わりに今後得たセルメダルの40%をトライブ財閥に譲渡することになった。
ちなみに、そこまでするのに刃介がかなりねちっこい話術を用いたりしたのだが、そのへんの話はこの際おいておこう。
ただし、刃介は後にこんな名言紛いなことを言っちゃったりするのだ。
――この世に値切れないものはない――
何時言うかは未だ皆目見当がつかないが。
「んじゃ、俺帰るぜ」
「ちょっと待った」
「なんだよ?」
シルフィードは刃介を呼び止めると、シルフィードはバットと吹雪にアイコンタクトを行い、部屋から退場させた。
「30%なんて破格モンにしてあげたんだから、少しくらいは私のお願いを聞いてもらえないかしら?」
「なにをお願いする気でいる?」
「うふふ♪」
シルフィードは刃介に抱きつき、自慢の爆乳を胸板に押し付けた。
しかも、抱きつく直前に刃介を上半身裸にし、自分も着物をさらにはだけさせたので彼女も上半身裸の状態で抱きついている。
「「/////////」」
つまりは、上半身裸の男女が抱き合う絵面と化していた。
ある意味シルフィードだからこそできる大胆極まる行動だ。
双方がお互いに赤面しあう中で、シルフィードはこう呟いた。
「貴方の血を週一でちょうだい」
「・・・・・・はい?」
「だって私、吸血鬼だから♪カァープ♪」
「ッ!?」
シルフィードの牙が刃介の首筋に突き立てられると、刃介の意識はどんどん遠のいていき、意識を失う直前に、眼にして耳にしたのは・・・・・・。
「美味しかったわ、ご馳走様//////」
顔を赤らめ、自分に感謝するシルフィードの笑顔だった。
その後、刃介は週一でトライブ財閥に足繁く通うこととなり、社員達からは”会長の恋人説”が囁かれ始め、羨望と嫉妬の的になるのは、何れ先のお話である。
次回、仮面ライダーブライ!
魔導具と紅麗と戦いの理由
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