COUNT THE MEDAL!
現在、ブライが使えるメダルは!
リュウ・コア×4
オニ・コア×4
テンバ・コア×4
ハヤブサ・コア×2
ホウオウ・コア×2
ヤタガラス・コア×2
カブト・コア×2
ハチ・コア×2
イナゴ・コア×2
ヤマネコ・コア×2
ジャガー・コア×2
スミロドン・コア×2
バク・コア×2
マンモス・コア×2
イノシシ・コア×2
ゼウグロドン・コア×2
メガロドン・コア×2
タチウオ・コア×2
ヤイバ・コア×4
ツバ・コア×4
ツカ・コア×4
デートと新コアと植物ヤミー
あれから数日後、刀剣組は残ったことには残ったが、色んな意味で奔走した。
まずは他の組織との会合、榛原の亡骸の葬り、傷ついた組員らの治療など・・・・・・正直言って丸三日はフル稼働することとなり、全てを仕事を終えた本山の眼の下には濃いクマが出来たりしていて―――
「大変だったが、お前らのお陰で、大事な物を取り返せた気がする」
かなり気疲れしていたが、その時に浮かべた笑顔と優しい声音は本物だ。
刃介も七実も金女も満足した表情で、
「どういたしまして」
「不悪――良い笑顔ですね」
「取り戻したモノ、大切に持ってろよ」
と、言い返した。
んでもって坂木了はというと、この世界での『お宝』を見られたという言葉を吐き、さっさと別の世界へと行ってしまった。
「いいモン見せてもらったぜ。俺さ、ちょいと忘れかけてたよ。掛け替えの無い『仲間との絆』ってやつをさ」
「そうか。だったらその『お宝』はあの場に居た者全員の物であり、あの場にいた全員一人一人が持つべきモンだな」
お互いに決して演技ではできない表情を顔にして、彼はこの世界から居なくなった。
そして・・・・・・
*****
トライブ財閥。
それは鴻上ファウンデーションと同盟関係にある世界屈指の巨大企業の一つ。
受け持つ分野は大きく分けて三つに及ぶ。
一つ目は地球上に存在する多種雑多な生物達の研究。
二つ目は高性能バイクやロボット工学の研究開発。
三つ目は多種多様な娯楽施設の運営などである。
そんなトライブ財閥が近日中にオープンする予定である大型遊泳施設・マリンブルーに、トライブ財閥会長のルナイト・ブラッドレイン・シルフィードと我刀流二十代目当主の鋼刃介は二人っきりでそこに居た。
白髪の無造作ヘアに鮮血のような赤い瞳。黒い着流しにゆったりとした黒いカーゴパンツ。
金髪に緑色の瞳。服の一部分を思いっきり盛り上げる爆乳とそれに見合う抜群のプロポーションと美貌。
既に建設工事も完了し、各種プールの準備も万全。
後はこの二人がモニターして問題なければ、予定通りの日程に開園することとなる。
「さーてと♪今日は全力全開で楽しんじゃうわよ!」
「あぁそう」
刃介と腕を組みようにして自慢の爆乳を押し当てつつ歩くシルフィード。
刃介は何時ものように冷静沈着な態度である。
どうしてこのVIP二人組が直々にこんな場所のモニターをやっているかというと、それはシルフィードの心情に大きく関わっているのだ。
ただ単に描写的な説明だけでは少々味気ないので、本格的回想にて説明する事にする。
*****
回想場面。
昨日の昼間において、刃介は会長秘書のバット・ダークに呼び出されていた。
場所はトライブ財閥本社ビルのロビーだ。
最早カード云々の身分証明をせずとも顔パスで出入りできるようになった刃介の存在は社員たちからすれば名物化間近の人物だったりする。
「珍しいな。シルフィードではなくお前が俺を呼ぶとは。しかも部屋ではなくロビーで」
「まあ、今回の話は個人的なものですから」
女物のビジネススーツでバッチリと決めたダークブルーの頭髪をした麗人のバット・ダークは、何時も通りの表情で話し出す。
「実は会長、ここんトコ元気ないんですよ」
「血でも足りなくなったのか?」
「それだけなら直に貴方を会長の寝室に呼んで会長と乳繰り合わせます。しかし今回はそれだけではダメなのです。最近の会長はやたらと溜息ついたり遠い目をしたりする始末」
妙に真面目な口調で語るがゆえ、なんだか反論しにくい。
「率直に言います。鋼さん、会長とデートしてあげてください」
「・・・・・・はひ?」
素頓狂な声が漏れた。
あまりに意外な注文で。
「あ、七実さんのことでしたらご心配なく。既に私の方で許可を得てますから」
「おい、待て「それから”どうぞお互い、気が済むまで”とまで仰っていました」コラ待たんかい!!」
なんか自分の意見を無視するバットに刃介が怒鳴った。
「それじゃあ何だ!?既に逃げ道は無いのか!?デートするしかないのか!?逃亡すればヘタレ決定か!?」
「少なくとも会長ほどの爆乳美女を一日中侍らせられるんですからね。逃げたらもう男じゃありませんよ」
バットのどこまでも冷静な声音が胸の表面にチクチクと刺さってくる。
「それから、此間得たセルメダルは全部で30000枚でしたね」
「それがどうした?」
セルメダル30000枚。
それは変体刀強奪事件と刀剣組事件で倒したメッキヤミー一体とツルギヤミー千体を倒して得たメダルの総量だ。契約に従い、ブライ陣営が18000枚、トライブ財閥が12000枚ということになった筈だ。
「セルメダル2000枚でどうで「是非遣らせて貰おうじゃないか!」・・・・・・宜しくお願い致します」
あっさりとメダルの魔力に惹かれた刃介。
何処までいってもやはりこの男は我欲の塊である。
*****
場面回想終了。
要するに今この二人は業務という名の逢瀬の真っ最中なのだ。
勿論オープン前なので今この場所には二人以外の人影は無い。正に貸切状態もいいところである。
しかもシルフィードはこれだけのシュチュエーションで想い人と二人っきりでデートを堪能できるとあって普段以上にハイテンションだ。
しかも今日は雲ひとつ無い快晴で日差しも強い方だ。
例え水着で泳ぎ回っても一切合財問題ない気候条件である。
「なあシルフィード?」
「何かしら?」
未だ刃介の腕に抱きついて柔らかな爆乳を押し当てるシルフィードに刃介自身が訊いた。
「今日の格好は水泳とは無縁なんじゃないか?」
「あら、貴方の好みに合わせたつもりよ」
簡潔に述べると、シルフィードは巫女装束姿だ。しかもブロンドロングヘアも見事なポニーテールにしている。
「知ってるのよ。貴方が巫女萌え且つポニテ萌えだって事くらい♪」
「何時知ったんだよ!?つーかどうやって俺の性癖リサーチしやがった!?」
「好みなのは否定しないのね」
シルフィードはくすくすと妖艶に笑う。
刃介は何気にこの女の微妙な怖さを今更ながらに知るのであった。
「まあ此処の調子を測るには、やっぱり施設で泳ぐしかないでしょ!」
「やっぱそうなるのか。つーかお前水着持ってきたのか?見たところ今着てる巫女装束しか持ってないようだが」
言われてみればシルフィードは完全に手ぶらだ。
手荷物はおろか装束のうちに何かを忍ばせている様子すらない。
まあ、巫女装束なんかをノーパンノーブラの爆乳美女が着たら、袖以外の隠し場所などないのだが。
「大丈夫大丈夫。ちゃんと水着販売店も完備してあるから」
「流石に用意がいいな。伊達や酔狂で会長はやっちゃいないと言う訳か」
「いいから早く行きましょ!お互いに似合う水着で、思う存分遊びましょ♪」
*****
トライブ財閥の重要資料室。
そこにはバット・ダークがいた。
それから白いライダースーツを着込んだ長身の青年、凍空吹雪が居た。
そして虚刀流の神業的異端児、鑢七実がいた。
刃介とシルフィードが視察に勤しんでいる頃、三人は800年前より続くオーズやブライとグリード達の戦いの記録。それにオーメダルについての資料が数多く並ぶこの場所で何やら重要そうな話題をすることとなった。
三人は些か薄暗い部屋の中央にある大きな円形のテーブルを三つの椅子に座って囲んでいる。
テーブルには大きくて分厚いケースが置かれてあり、明らかに『重要』な物が入っているのが丸分かりだ。
「それで、わざわざ私達二人を分断してまでするお話とは一体なんなのでしょうか?」
七実は何時もの丁寧な態度で訊いた。
「いえ、訊くまでもありませんね。大方その大事そうな箱に入っている中身のことなのでしょうね。それも私にとっては『重要』な何かが」
「・・・・・・相変わらず鋭い指摘ですね。ほとほと恐れ入りますよ」
バットは両手をあげて降参しました、とでも言う風にする。
「ま、ハッキリ言っちまうと、この中には会長が四百年前にとある刀鍛冶から貰ったものが入ってるんすよ」
吹雪はケースを指差しながらそう言った。
「四百年前。我刀流十代目当主の鋼劉十が死闘の末に真庭竜王を封印した数日後、会長はソイツとであったらしいんすよね」
「それでこれの中身を貰い、今の今までこんな場所で神様みたいに特別扱いしていたというわけですか」
七実はその程度の説明で何となく悟り――はぁ、という溜息を吐き出す。
「そうつんけんしないで欲しいっすね。確かに鋼の旦那の恋人であり、刀を務めてるからには、他の女と逢瀬をされるというのはムカツクやもしれませんけどね」
吹雪は宥めながらも話を本題に持っていこうとする。
そして話を一気に進行させるため、ケースを開封して中身を見せた。
ケースの中にはある物が八枚封入されていた。
飛翼竜と悪竜の姿と頭が描かれた紫のコアメダル。
「・・・・・・・・・・・・」
七実はその八枚のメダルをただじっと見ている。
見て、見切り、見抜き、見極めていく。
「成る程。そういうことですか」
そうして一人で納得する。
「グリードは本来九枚のコアによって形成される存在。ですか貴方のような例外の如く、それを越えた枚数のコアを秘めた者、竜王のように複数種類のコアを宿す者もいる」
バットは静かに口を動かす。
「我々の見方で言えば、この八枚のコアは、貴方が取り込んで初めて最大の効果を発揮する者と考えています」
「オニコアとテンバコアが肉体、ワイバーンとドラゴンが能力―――そしてリュウコアは肉体の能力の懸け橋と、俺っち達は思ってるっす」
七実はそう言われると、自分が完全復活できない現状に更なる理解を得る。
そしてコアを半分手に取り、キョトウとなった。
『では、試しに四枚ほど入れてみますね』
七実は掴んだワイバーン二枚とドラゴン二枚をそのまま胸板に押し込み、体内に吸収した。
すると、七実の身体からは異様とさえ言えるほどのオーラが不気味な色を帯びて現れる。
そのオーラの様子から見て、キョトウの身体と上手く同調しているのだろう。
『確かにこれは私が宿すべきコアのようですね』
これで七実の中にあるコアメダルは、自身の九枚と竜王の十五枚、そして今取り込んだのを累計して28枚ということになる。
これだけのコアメダルを収めて尚暴走せずにいるのは流石というべきだろう。
もっとも、同じように二十枚以上のコアを体内に隠し持っている刃介も相当のものだが。
『さて・・・・・・』
キョトウは残りの四枚を手に持った。
『残るは四枚』
その時の声音は、グリードの姿に吊り合うほど、邪悪じみたものだった。
*****
所は戻ってマリンブルーの水着売り場。
刃介は早々にゆったりとした丈が長めの黒い海パンに着替えていた。
一方でシルフィードは未だ水着の選択及び試着などで決めかねているようだ。
些か退屈な時間を刃介は過ごしていた。
(あの御人好し、今頃どうしてるのやら?)
ふと思い浮かんだのは、自分と同じような境遇にある男のこと。
欲望のなんたるかを知りながら、彼自身は欲望を持たない。
(まぁいい。どっち道、何時か出会いそうな予感がするしな)
「おっ待たせ〜〜♪」
考えが途絶えた直後にあのお気軽な声が聞こえてくる。
「大人水着」
それが刃介の真正直な感想という名のコメントである。
シルフィードの水着は黒いビキニだ。そこまではいい。
―――だがしかし、水着の形状には大いに問題がありまくりだ。
通常ビキニという水着は乳房と股間を覆い隠す布とそれを身体に固定する為の紐で構成されている。
けれどもシルフィードの場合はその紐部分がかなり細く出来ている。
ブラ部分は面積が極小の三角形で乳首や乳輪をギリギリ隠す程度であり、パンツ部分もGストリングのように恥部をギリギリ隠す程度でTバックのようにお尻を露出させている。
一言で水着の種類を述べてしまうとマイクロビキニと呼ばれる種類のものだ。だがしかし、露出具合は凄まじい為、この場合はヒモビキニとも言えるかもしれない。
構造が構造なので下手に激しい動きをすればポロリは当たり前だったり結んである紐が簡単かつ一遍に解けて全裸になる恐れがあるトンデモ水着だ。
おまけにシルフィード自慢の爆乳と括れた腰と淡く実ったお尻がより一層エロさを倍増させている。
もし今此処が貸切状態でなければ全力を持って着替えさせたい格好である。
(・・・・・・もう何も言うまい・・・・・・)
シルフィードの淫乱コスプレ趣味をこの上なく熟知している刃介は文句を述べる気力さえ萎え出していた。
「ねぇねぇ!最初はどこで遊ぶ?」
最早彼女の頭の中ではデートが90%で仕事が10%な感じになっていることだろう。
「・・・・・・んじゃあ、ここはセオリー通りに―――」
刃介は超ドエロ水着のシルフィードと一緒に歩きながら冷静な思考を保っていた。
出来る限りこのデートを楽しもうという気持ちはあるが、何故か興奮するという感情は沸き難い。
普通の青年ならこんな格好をしたシルフィードに劣情しそうなものだが、刃介は違った。
七実の存在というストッパーがある所為か、それとも刃介自身の精神力的なものなのか。
(そういえば俺・・・・・・七実と出会うまでは、女に欲情したことなかったな・・・・・・)
と、何だか『戦い』以外は無色透明に近いバトル全開な青春時代を思い出しつつ、刃介は溜息を吐き出す。
いや、青春時代を終えて尚、ただただ損得に拘って来たガメつい生涯だったような気がする。
「ちょっと、何一人で考えてるのよ?折角のデートなのに・・・・・・」
シルフィードは不満そうに頬を膨らませて抗議する。
「ああ、悪い悪い。・・・・・・にしてもさ」
「ん・・・・・・?」
「お前さ、案外なことに可愛いトコもあるじゃねぇか」
「にゃ・・・//////」
予想も無く自分の心を射止めに掛かってくる刃介の無自覚な一言。
(って、私が魅了されてどうするのよ!ダメよ私、こんなんじゃ!今日は積りに積ったモノ全てを打ち明ける為に来たのに!)
自分に対する叱責を行うシルフィード。
普段は色香タップリのお姉さんでも、惚れた男の前では可愛らしい小猫ちゃんとなんら変わらないようだ。
例え齢800越えだろうと、ルナイト・ブラッドレイン・シルフィード―――その本心は恋に一途な乙女である。
「あ、そうそう」
「ん・・・?」
シルフィードは何かを思い出したように後ろを振り向いて少し歩き、近くの売店からある物を拝借してきた。
「オイルか?」
「正解よ」
「・・・・・・俺に塗れってか」
「御名答♪」
何となく定番のイベントを察する刃介にパチパチと気軽な拍手をする。
妙に期待の篭った瞳で見つめてくるのは恐らく気のせいではないだろう。
シルフィードは刃介の手にオイルを手渡し、彼女自身はうつ伏せの状態で寝そべる。
勿論、刃介がオイルを塗りやすいようにと、ブラとパンツのヒモを解いている。
「はぁ」
刃介は溜息をつきつつも、キャップを外してオイルを手につけてシルフィードの背中に塗り始める。
ただし、この先を語るとこの小説は確実に場違いな事態に直面する為に割愛するが、ただ言えることは一つだけ。
シルフィードは自慢の身体と色香で誘惑する筈が、逆に刃介のオイル塗りテクニックに骨抜きにされてしまったという。しかも今までに無い喘ぎ声つきで。
*****
刃介とルナイトが本格的にデートを開始したころ、とある花屋で一人の古風な美青年が花を買い求めに来ていた。
店員の女性も見惚れてしまうような端正な顔立ちは、見様によっては女と見違い兼ねない中性的な美貌だ。着ている者も江戸時代の髣髴とさせる和装で、長い髪を総髪にしている。
そして何より、華奢な体付きに反して、その美青年からは明らかに超一流の剣士の雰囲気が漂っていた。未だその腰に刀を一本も帯刀していないというのにだ。
「その黒いのと白いのを頂戴するでござる」
喋り方まで古風だ。
「は、はい!ありがとうございます!」
店員は若干テンパりながらも美青年が指差した黒百合と白百合の代金を受け取って品物を渡した。
「では、拙者はこれで失礼するでござる」
美青年はそういって立ち去っていった。
だけど、店員を含めた大半の人間は見当がつかなかっただろう。
その美青年が二種類の花を買い求めた本当の理由など。
美青年は誰の目にも付かない寂れた場所にまで辿り付くと、買った花を地面に置き、懐から有る物を二枚取り出した。
それは、セルメダルだった。
「欲望に、ときめいてもらうでござる」
すると、黒百合と白百合には硬貨投入口が現れた。
――チャリン――
美青年は二種の花に一枚ずつセルを投入した。
するとどうだろうか?
――メキメキメキメキ・・・・・・!!――
黒百合と白百合は凄まじ過ぎる激的スピードで成長し、一気に怪人の姿に突然変異したのだ。
それは正しく、クロユリヤミーとシラユリヤミーと呼ぶべきだろう。
因みにクロユリヤミーは男性的でシラユリヤミーは女性的だ。
「まずは小手調べ・・・・・・行って来るでござる」
『『仰せのままに』』
二体のヤミーは全力で跳躍し、主からの命令を執行しに向った。
美青年はそれを暫し眺めて何処かへ去ろうとしたが、
「おい小僧」
一人の男の声が後ろから聞こえてきた。
「どうだ首尾は?」
「まだ判らんでござるよ」
後ろから出てきたのは和装で編み笠を被った男だ。
「それにしても、お主を含めた拙者らの紛い者を造ってまで完全としたい物なのかが、些か疑問に残るのでござるが」
「抜かりはねぇさ。完了作が側についてることだし、俺の選んだ血刀に間違いは無い」
「それならば、拙者だけが失敗作のようでござるな」
「そう文句垂れることはねぇ。きっと面白いモノが見れるぜ」
欲望の渦がまた、勢いある螺旋を描き出す。
「それよりも、何時になったら拙者の腰に刀を差す日が来るのでござるか?」
「さり気に自虐ネタに走ったな。まぁ心配すんな。そう遠く無い――近い内に取りに行けば良い」
編み笠の男はその後、ある刀の名前を口にする。
「お前の薄刀『針』をな」
*****
再びデート場面。
一言で述べると、シルフィードは膨れっ面でプールサイドに寝そべっていた。
どう考えても機嫌を良くするどころか悪くした者のする態度だ。
「おい、どうしたんだよ?」
「フンッ」
原因は刃介にあった。
流れるプール、ウォータースライダー、津波プール、洞窟探検アトラクションといった各種の場所を回った二人だが、シルフィードの度重なる色仕掛けにも刃介の反応は妙に薄く、彼女は結果としてこんな膨れっ面状態なわけだ。
ついでに言うと、逆に刃介が優しい笑顔を言葉を直球に放ってきたために、胸をキュンとさせられてしまったのも一因している。
「全くよぉ。まだ此間の報酬さえ貰ってないと言うのに」
「・・・・・・・・・・・・」
シルフィードは刃介が呟くと顔をそむけてしまう。
「一体なにが不満なんだよ?ちゃんとエスコートしてやってるだろ?」
確かにエスコートは完璧にこなした。
しかし、完璧すぎるエスコートは逆に気を萎えさせるものだ。
「もういいわよ」
「はい・・・・・・?」
「貴方には理想の人が傍にいるんだし、こんな厚手がましい女の体を見ても興奮さえしてくれそうにないし」
「お前、何言ってるんだ?」
刃介よ。お前は好い加減気付け、鈍感な刀野郎めが。
「・・・・・・だったら全部、何もかもぶちまけてあげるわ」
シルフィードは寝そべった状態から一気に立ち上がった。
その際に彼女の瞳にはヤケクソ染みた眼光がギラギラとしていたのが見えた。
そして、息を軽く吸い込んで思い切って言い放つ。
「私は惚れてしまったのよ。貴方の全てにね//////」
顔を真っ赤にして堂々と愛の告白をぶちかましたシルフィード。
刃介は意表を突かれたかのような表情だが、直ぐに真剣極まる表情に切り替えた。
彼は彼女を傷つけまいと、歩み寄り、静かに暖かく抱き締めてやった。
「ありがとよ、ルナイト」
初めてファーストネームを呼ばれ、恋する吸血鬼の女は、薄らと瞳を潤ませて抱き着き返す。
「でも、すまない」
「いいのよ―――でもね、刃介。だとしても私は貴方のことしか、見えてないのよ//////」
今のシルフィードの恋心には刃介の魂しか無い。
同じ怪物同志とはいえ、あれ程までに自分を易々と受け入れてくれた男。
「今はただ、私の想いが伝わればそれで良いの」
ルナイト・ブラッドレイン・シルフィードは今、吸血鬼として、魔術師として、会長としての全てを一瞬だけ忘れて一人の女として恋焦がれる男に胸のうちを打ち明ける。
そして実に自然な流れで、二人の唇が重なったのだ。
互いに互いの口腔内を舌と舌で蹂躙し合い、厭らしい水音が口から漏れ出し、二人が唇を離すと互いの下には唾液の橋がかかっている。
ルナイトは少しの間だけ刃介と距離をつくり、彼の瞳を真正面で見ながらこう言った。
「貴方が七実ちゃんとは一番に愛し合っていることは重々承知してる。だけど私も貴方のことを諦めたくないの・・・・・・だから「おっと。その先は倫理的にも社会的にも立場的にも拙いぞ」
刃介は指でルナイトの口を塞いで一方的に自分の意見を述べ始める。
「確かにお前の想いは受け取らせて貰った。だけどな、あくまで俺達は同じ目的ゆえに結び付いてるビジネスパートナーなんだぜ?それが一線を越えて愛し合ったら、色々と不都合が出るだろ?」
「刃介・・・・・・」
「まあ、くっ付き過ぎず離れ過ぎず・・・・・・ってトコが今の俺らにとって丁度いいんだ。まぁ時折だが、こうして一緒に居てやるがな」
刃介はあくまでも一人の女への愛を貫きたいが一心で、目の前の女の肩を抱きながら少し距離を開かせるように腕を伸ばした。
この状況で報酬がどうのというほど刃介は業突く張りではない。寧ろ差し出して状況の沈静に当たるタイプだ。
「兎に角血でも吸って気持ちを落ち着けろよ」
「・・・・・・ごめんなさい。私、色々と無理言っちゃって」
「気にすんな。俺の器はそこまで矮小じゃないっつーの」
「ありがとう。・・・・・・カーップ!」
小さい牙が首の皮膚を突き破り、ルナイトの口に血の味を充満させる。
小さく一口ずつで時間をかけて飲んでいくルナイト。
一分もすると漸く満足したのか、彼女は自分から牙を離した。
傷跡から幾らか血が出ているが、刃介はあまり気にも留めずにいる。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
二人は薄らと微笑み合い、さっきまでの空気をさっさと取り払った。
すると刃介は思い出したようにこんなことを言い出した。
「そういえば、お前最近さ、調子がでてなかったと聞いたが」
「ああ、そのことなら大丈夫。今さっき解決したところだから」
「そう、か。んじゃ、とっとと着替えて帰るか」
「うふふ、そうね。また機会があればデートしましょう♪」
ルナイトは何時もの妖艶な雰囲気を纏い直して色っぽい声音でそう宣言した。
今回は仕事以上恋愛未満的関係に押し留まったが、
「次回こそは絶対にね♪」
完全に諦めた訳ではない。
もし正妻になれずとも側室の位置を狙う勢いにあることは、何となく刃介も悟っているがゆえ、そのルナイトが浮かべた極上な満面の笑みに、つい嬉しそうな零し笑いをしてしまった。
(俺って、もしかしたら望む望まないに問わず、意外と幸せが転がり込んでくるタチなんかなぁ?)
もっとも、その代償に人を捨て、平穏を捨て、戦いに身を投じているが、それを差し引いても刃介は今の暮らしに満足している。
その理由は今述べはしないが、鋼刃介という人間は、仮面ライダーブライという剣士は、平穏の隙間を縫うようにして在る戦いの中でこそ、最大の輝きという欲望を発揮する存在なのだから。
*****
トライブ財閥重要資料室。
キョトウは残る四枚のコアメダルを手に持っている。
観察でも診察でも見物でも無さそうな視線でただただメダルを見ている。
吹雪とバットも今一彼女の真意が掴み切れないのか、緊張感を張りながらそれを見守っている。
すると、
――ヴゥオォォン・・・・・・!――
四枚のコアメダルが紫色の禍々しい光を自発的に放ちだしたのだ。
『どうやらコレ等は、あの人に託すべき物のようですね。メダル自体もそれを望んでいる』
キョトウは指の力を抜き切ってコアメダルを手放す。
そうすると四枚の紫に光るコアは自らの意思を持ったかのように飛び回り、部屋の外へ―――遂には建物の外へ、さらに遠い場所へと。
「こ、コアメダルが、勝手に・・・?」
「こんな現象が・・・・・・!?」
吹雪もバットも目の前の出来事に驚きを隠せないで居る。
唯一、ことの状況を完璧に理解しているキョトウは、自らの姿を七実に戻して呟く。
「近いうちに見られそうですね。―――龍神のコンボが」
*****
刃介とルナイトは元の服に着替える為、水着販売店に再び足を運んでいた。
更衣室にそのまま入れ替わるようにして服を置いてきたこともあり、二人はそのままスムーズに着替えを終える。
刃介は何時もの服装である黒い着流しに黒いカーゴパンツという格好に微妙に久しい感覚がするという何ともいえない心境である。
―――んでもって、
「ごめんごめん、遅くなっちゃったわ」
と、黒い大人(バカ)水着から巫女装束姿に着替えたルナイト。
何故かはわからないが、身体に帯びた水気がどことなく彼女を何時も以上に淫靡的な色香を漂わせているし、素肌と装束がピッタリと張り付き合って胸の形が服の上からでも見当がついてしまうような状況なんだが、刃介はそれを一々ツッコム気にはなれなかった。
「では帰るとしようか」
刃介は足早に歩いて出入り口のゲートに向った。
だがしかし、そこには新たな戦いを齎す者が二体、佇んでいた。
そこには黒百合と白百合の怪人が居た。
「ヤミーか。しかも植物ってのは初めて見る種類だ。ルナイトは何か知ってるか?」
「解らないわ。少なくとも、私たちが造ったコアのグリードでないことは確かでしょうね」
(となると四季崎って線が強くなるな)
刃介は両腕をグリード化させてブライドライバーと三枚のコアを取り出す。
そして何時もの動作を流れるようにして行う。
「変身!」
≪RYU・ONI・TENBA≫
≪RI・O・TE!RIORE!RI・O・TE!≫
仮面ライダーブライ・リオテコンボ。
両手に魔刀を握り締める。
『ブライ。コアメダルの力にて戦う者』
『メダル。欲望の塊であり我等が力の源』
クロユリヤミーとシラユリヤミーは能面のように声音をのっぺりとさせている。
「さて、オメーらみたいのは色々と面倒そうだし、手間隙かけずに一気に刈り取らせてもらう」
ブライはメダルを取り換えるとスキャナーを手に取り、バックルに沿って滑らせる。
≪YAIBA・TSUBA・TSUKA≫
≪YABAIKA・YAKAIBA!YAIBAKA!≫
そこから金色に輝くヤイバカコンボにメダルチェンジ。
左腕のヤイバスピナーへと間髪入れずにスキャナーをセット。回転するメダル達が自動的にスキャンされていく。
≪GIN・GIN・GIN!GIN・GIN・GIN!≫
≪GIGA SCAN!≫
セルメダルだけで発動したギガスキャンによってヤイバスピナーは銀色の波動を渦のように纏っていく。
ブライは左手を一旦引いてから。
「チェストォォォ!!」
一気に前に対して正拳突きの要領で押し出した。それによって七枚で形成されたメダルの円環が発射された。その攻撃は二体のヤミーに直撃するかと思いきや、
『『セルメダルもまた欲望。我等の糧となりしモノ』』
と口にして、体から多数の蔓を伸ばして円環攻撃(セルメダルたち)を見事に捕らえた。
そればかりじゃなく、メダルの攻撃エネルギーを己の物として吸収してしまったのだ。
「ッ・・・・・・成る程な。流石は植物―――根に近づく栄養は残さず吸収するってか」
ブライは感心した風にするが、ショックを受けたようではない。
寧ろより効果的な攻撃を編み出そうとしている。
赤い鳥系メダルを三枚、リュウコアを一枚、カブトコアを一枚、ヤマネココアを一枚セットして―――あとは一枚のセルメダルを嵌め込めば準備完了。
「今度は火炎をベースに属性のごちゃ混ぜだ」
≪HAYABUSA・HOUOU・YATAGARASU!RYU・KABUTO・YAMANEKO!≫
≪GIGA SCAN!≫
ブライは植物型ヤミーといえど、属性上は防ぎ切れないであろう効力を持ったメダルを選んでスピナーにかけた。
彼自身、これで片方のヤミーを片付けられると確信していたが・・・・・・が。
それは不発に終わった。
――ビュンビュンビュンビュン!――
突然にも四枚もの紫色のコアメダルがブライめがけて飛んできたのだ。
(あのメダル・・・・・・七実ちゃん、自分で取り込まずに・・・・・・)
それを見たルナイトは事の顛末を高精度で悟った。
しかしブライは技を発動するタイミングでいきなり見たことも無いメダルが自分に向って来たこともあって混乱していた。そのせいでヤイバスピナーも上手く作動せずに停止してしまう。
「なんだよ・・・?この紫色のコアメダルは・・・!?」
――ズブン、ズブン、ズブン、ズブン!――
そして、四枚のメダルはブライを中心に回転するのをやめ、勢いに乗ってローグラングサークル・・・・・・否、ブライを媒介として刃介の体内に侵入したのだ。
「んあ・・・・・・ッ!!?」
それにより紫電が体中に走るブライ。
そのまま片膝をついてしまい、変身まで解けてしまう始末。
「じ、刃介!」
ルナイトは刃介に駆け寄って身体を支える。
如何にグリード化しているといえど、かなり無茶苦茶な方法で強力なコアが四枚も入り込んで来たこともあり、刃介の体力はある程度ながらも消耗させられていた。
――ビリビリ!バチバチ!――
未だ全身に紫電が走るこの状態でヤミーに攻撃されれば最悪の結果しか残らない。
だがどういうわけか・・・・・・。
『・・・・・・今回は此処までだ』
『また合間見えよう、ブライ』
と言ってどっかへと跳び去ってしまった。
ルナイトは戦闘続行という事態が降り掛からなかったことに心底安堵させられた。
「チッ――ちょいとコイツは、ヤベぇかも、しんないな・・・・・・」
刃介は見るからにフラついた足でよろりと立ち上がる。
「取り合えず病院で検査くらいした方がいいわよ?」
「いや、別にいい。オーメダル関連のことが現代医学で如何にかなるとは思えん。それならお前に治療してもらうほうが遥かに気が楽だ」
「ご指名してくれるのは嬉しいけど・・・・・・」
ルナイトは少々表情を渋らせた。
確かに回復や治療関係の魔術も会得してはいるが、メダル絡みの特殊なダメージまでは癒せるかどうかは判断しづらいところだ。
「でもね、やっぱり念を押して一応検査くらいはしましょうよ。あくまでダメージの回復は私や七実ちゃんがするから」
「・・・・・・・・・・・・(はあ、仕方ない。まあ休息場所くらいにはなるか)」
刃介は黙りつつも、それでいて内心ではルナイトの気遣いも考慮しておくことにした。
「一応言っとくが、患者のあれこれを詮索しないトコで頼むぞ」
今から一日足らずのうち、その病院でかつて共闘した男に再会することなど、現時点において刃介は未だに知る由すらなかった。
物語の歯車がまた一つ加わっては回り、そして歴史の一説がまた一字一説が増えていく。
渦巻く欲望によって際限なく人の世は様々な在り方を見せては変える。
そこには例え、英雄であろうと怪物であろうと、例外はないのである。
次回、仮面ライダーブライ!
恐竜と対極の器と荒ぶるコンボ
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