004 台湾危機とそれがもたらした戦い3 あるいは巨人たちの戦い そして訪れる黙示録
アメリカ合衆国。今ではアメリカおよび太平洋諸国連邦の玉座に君臨する超大国は、中華連合が指定した期日までに台湾から退去しなかったことを受け、中華連合に宣戦を布告。世界最大最強とも呼ばれる巨人がいよいよ台湾解放に向け、本格的な軍事行動を開始したのである。
対峙する中華連合もまた巨人と呼ぶにふさわしい存在であった。かつて眠れる獅子と畏れられながらも、欧米列強の干渉を防げなかった昔とは違う。急激に肥大化した軍事力は、装備の質を高め、またそれを運用する能力も遥かに向上している。決して侮れる敵ではない。
冷戦終結以降、起こり得ないと言われていた巨大国家間の正規戦がここに台湾を巡り勃発しようとしていた。
台湾解放に向け動き出したアメリカ合衆国がまず手がけたのは、台湾海峡の制海権の確保である。この時既に日本には、アメリカ本土より増派されたアメリカ陸軍・アメリカ海兵隊の地上戦力が集結しており、その数はまさしく暴力的だった。それを支える補給物資も膨大極まりないものだった。この戦力は、台湾を占領している中華連合軍陸軍の制圧に用いられる。
航空機が戦争に投入された黎明の頃、戦略爆撃に分類される航空攻撃のみで戦争を完遂できると述べた軍人がいるが、その理論は完全な誤りではないが間違いにすぎなかった。確かに航空攻撃は、陸海の戦いを優位に進めるのに役立つが、敵国を完全に屈服させるとなればやはり地上戦を挑まなければならなかった。
とりわけ、隅々まで制圧するのに歩兵が欠かせないのは人類普遍の理である。台湾解放のために地上戦は避けて通れず、そのために莫大な兵力をアメリカ合衆国は投入した。占領を実施している陸軍部隊が比較的近代化が進んだ部隊でかつ増援や十分な補給物資を得ていることもこれにますます拍車をかけていた。市街地に陣地を構築している中華連合軍陸軍との戦いは、激烈なものとなるだろう。
とはいえ、熾烈な地上戦が生じるためには地上戦力を台湾に上陸させなければならない。台湾海峡には、中華連合軍海軍東海艦隊が海上封鎖に当たっており、まずはこれを撃破し、地上部隊を送り届けねばならなかった。それもかなり有力な敵艦隊をである。
封鎖に当たっている東海艦隊は、空母を含んでいた。それも遼寧と名付けられたロシアから入手した空母ヴァリヤーグではなく、同艦を参考に建造された国産空母である。中華連合製というと侮ってしまいそうだが、ヴァリヤーグの運用データをもとに開発されたことで相応の能力を持っていると予想され、一つの脅威だった。また空母護衛も役割に含む随伴艦も昆明級駆逐艦を含むなど極めて強力だった。昆明級駆逐艦は、蘭州級駆逐艦に次ぐ新鋭艦であり、イージス能力を持つとも考えられる。日本侵攻には蘭州級駆逐艦のみが充てられていたことを踏まえると、こちらを虎の子とみていることは明らかだ。
地上部隊の揚陸。それを達成するための制海権を確保するべく、アメリカ合衆国海軍もまた世界最強の名に恥じぬ強大無比な戦力を東海艦隊攻略のために派遣した。当初は、日本に展開するニミッツ級原子力空母『ロナルド・レーガン』とその艦載部隊である第5空母航空団を使って反撃する予定だったが、これにもう一つの巨艦が合流することとなった。ジェラルド・R・フォード級。ニミッツ級原子力空母に次ぐ最新の原子力空母であり、基本的にニミッツ級を若干上回るサイズを誇る巨艦である。その4番艦である『ネイサン・ジェームズ』が母港であるノーフォーク海軍基地を出港。駆逐艦、巡洋艦による護衛の元一路日本を目指した。ニミッツ級にジェラルド・R・フォード級という原子力空母2隻が合わさればそれがもたらす破壊力は、絶大なものとなるだろう。
無論、中華連合軍も手をこまねいてみていたわけではない。最大の脅威であるアメリカ空母を仕留めるべく開発を推し進めてきた対艦弾道ミサイルーDF−21DとDF−26Bによる攻撃を射程内に入ると同時に攻撃を開始した。しかし、この攻撃は中華連合軍とその政府が望んだほどの効果を発揮することはなかった。
確かに対艦弾道ミサイルであるDF−21DとDF−26Bは、巨体を誇る空母でさえ命中してしまえば撃沈あるいは大破するほどの威力を秘めていたが、それはもちろん命中すればのことである。威力的には空母の撃沈を期待できはしても肝心の命中率といえば疑問符があった―――というよりも洋上を移動する艦艇に精密に命中させる能力についてはまだ開発の途上か今後の改善が必要な水準であり、命中を確実に期待できるものではなかった。この命中精度の問題に加え、アメリカ合衆国艦隊の防空能力が鉄壁といえる高さにあったことが拍車をかけた。
ギリシャ神話の絶対無敵の盾にちなむ最強の防空システムであるイージス。同時に数百以上の目標の探知を可能とし、十数もの目標への同時攻撃を可能とする防空システムであるイージスシステムを開発したのはそもそもが誰あろうアメリカ合衆国である。そして厳密に言えば種類は異なるものの弾道ミサイル対処のためにシステム構築してきた国でもある。空母護衛であるイージス能力を備えたアーレイ・バーク級駆逐艦やタイコンデロガ級巡洋艦の迎撃によって、弾道ミサイルは悉く撃墜された。実際には危ない場面もあったのだが、空母に損害を生じさせはしなかった。
またこの戦闘では新型の兵器も投入されている。DARPAとイギリスのBAEシステムズとの共同開発によって開発された艦載用レールガン。ステルス能力を持つズムウォルト級駆逐艦に搭載される予定だったその新兵器は、開発時期がずれ込み砲弾に搭載したロケットモーターによる射程の延伸や誘導能力を有するAGS155mm砲が代替として搭載されることになったものの、今度こそ無事に開発を終え本来収まるべき主の鞘に収まっていた。
レールガン。それは通常の砲が炸薬、とどのつまりは火薬といえなくもないものによって砲弾を発射するのに対し、電磁気的な力であるローレンツ力を使って砲弾を発射する兵器である。創作作品(例えばMGSシリーズ)によっては、磁気の力(コイルガン)で砲弾を撃ちだすと説明している作品も存在しているが、それは間違いだ。莫大な発電装置から2本のレールに電流を流し、それによって発生するローレンツ力で砲弾を撃ちだす。
この兵器の概念時代は古くからあり、実際に第2次世界大戦当時のドイツでも開発が試みたことがあるほどだが、実用化には単純な原理のようでいてかなりの困難を要する。まずローレンツ力を発生するに足る大電力の発電装置。速度表皮効果。たとえ大電流を流したとしてもその電流に見合ったローレンツ力を結果として発生させなくする作用。砲そのものの耐久性。レールガンは、その発射の途上でプラズマを発生させてしまい、そのプラズマの作用によってレールガンの砲塔部に損傷を与えてしまう。
これらの問題からレールガンの実用化は簡単なようでいて難題であり、それを実用化にこぎつけたのは各国の中でもアメリカ合衆国が最初であった。実用化したレールガンの初速は、マッハ7にも達し射程の従来の火砲に勝る。元々レールガンの開発に踏み切ったのは、その高初速による運動エネルギーに基づく破壊効果と長射程であることから艦砲での対地攻撃をより安全な距離から地上に対して行えるとの考えからだ。
それのみならず、レールガンによる航空目標への攻撃、水上艦への攻撃、そして弾道ミサイルの迎撃も想定されていた。
ジェラルド・R・フォード級に随伴するズムウォルト級駆逐艦は、初となる弾道ミサイルの迎撃戦を実戦で行い、そして弾道ミサイルの迎撃を見事に成功させてのけた。実戦での運用に耐えうると自ら証明して見せたのである。
これらの迎撃網によって対艦弾道ミサイルによる接近阻止という目論見は、水泡に帰した。弾道ミサイルに頼るのみでなく潜水艦による攻撃も試みられたが、それも果たされることはなかった。水上艦と対潜哨戒機、通常動力型潜水艦を投入した対潜哨戒網を海上自衛隊は張り巡らし、中国潜水艦の行動の阻止に出た。
まだ怒りが冷め切っていない日本は、アメリカ合衆国の積極的な支援を踏み切った。かくして太平洋戦争の通商破壊戦への反省から対潜哨戒能力を磨いてきた海上自衛隊の働きにより中華連合海軍の潜水艦は、空母への攻撃を果たすどころではなかった。最もこの戦いにおいて海上自衛隊は最新鋭のそうりゅう型潜水艦2隻を戦闘で失うなど無傷ではなかったのだが・・・。
中華連合にとっては不幸なことにジェラルド・R・フォード級『ネイサン・ジェームズ』は、無事にニミッツ級『ロナルド・レーガン』との合流を果たし、原子力空母2隻による攻撃という悪夢の出現を許してしまった。この2隻を中心とした艦隊を持ってアメリカ合衆国海軍は一路台湾海峡を目ざし航行を開始、制海権の確保にうってでた。当然ながら進出を阻まんとする東海艦隊はこれを迎え撃った。
アメリカ艦隊。東海艦隊。この2つの艦隊の間では、熾烈な戦闘が繰り広げられ正に一進一退の攻防だったが最後に健在だったのはアメリカ艦隊であった。艦隊すべてが無傷ではなかったが、戦闘能力を維持した状態でアメリカ艦隊は依然洋上に存在していた。
東海艦隊は、国産空母である甘寧級航空母艦『遼東』をも投入していたが対するアメリカ合衆国が投入したのは、全長300メートル級もの原子力航空母艦。航空機展開能力に元々大幅な差があり、その上ニミッツ級こそ従来の蒸気カタパルトであったが、ジェラルド・R・フォード級で使用されていたのは、所謂電磁カタパルト。これによって艦載機を展開する能力は、アメリカ側艦隊が優位に立っていた。
また搭載している航空機もアメリカ側が有利だった。『遼東』の搭載している航空機は、殲15
。本来は、ステルス性を有する殲31が艦載機として搭載される予定だったのだが開発は配備時期より遅れ、いまだ更新されてはいなかった。それに対してアメリカ側は、2艦とも新鋭のマルチロールステルス機F-35Cに更新しており、機体になれるほどの十分な訓練を積んでいた。台湾本土の基地から殲20が支援に飛び立ったものの、非ステルス機とステルス機との戦闘能力の差がどれほどかは言うまでもない。
アメリカ艦隊は、制空権の確保に成功し、航空戦力と洋上戦力を組み合わせた戦闘によって東海艦隊を撤退―――撃沈こそ避けたものの旗艦の役割を果たしていた『遼東』を大破、艦載戦力が戦闘不能であった状態からさらに戦闘不能状態に―――に追い込むことに成功した。航空機による対艦攻撃のみならず、対峙した東海艦隊にとってはズムウォルト級のレールガンによる対艦攻撃も極めて脅威だっただろう。熾烈を極めた海戦は、アメリカ艦隊の勝利に終わったのだ。
勝利といっても艦隊全てが無傷に終わったわけではないということからも分かるとおりアメリカ艦隊も深くはない傷を負っていた。アーレイ・バーク級やタイコンデロガ級の中には、大破・撃沈している艦もおりそれ以外の艦の中にも小破・中波といえる損害を被っているものもすくなからずいた。F-35Cも制空権を確保する争いの中、ステルス機である殲20との空戦の中で撃墜されたものや昆明級駆逐艦の防空能力によって撃ち落されるものさえあった。流石に原子力空母2艦の撃沈こそなくとも、敗退していたのが一歩間違えればアメリカ艦隊であっても不思議はなかった。
制海権の確保に成功したアメリカ艦隊は、その後作戦を第2段階に移行した。無傷の航空隊による地上への空爆。レールガンを含む艦砲による対地攻撃。これらの地上への攻撃を持って揚陸を阻む中華連合陸軍の陣地を一時的に破壊し、強襲揚陸艦で待機していたアメリカ海兵隊が上陸を一躍開始した。上陸用舟艇、LCACが歩兵や戦車を積載した状態で上陸を開始し、水陸両用車両もそのあとに続いた。
残存の中華連合軍陸軍も激しい抵抗を行ってきたが、その抵抗を上陸した海兵隊部隊は排除し、上陸作戦の拠点となる橋頭堡の確保にアメリカ側は成功した。
その橋頭堡を元に更にアメリカ海兵隊・アメリカ陸軍の上陸部隊が後続として続き、台湾解放に用いられる地上戦力が無事に展開を終えた。
それからは台湾解放を目指すアメリカ海兵隊・陸軍からなる地上部隊と中華連合軍陸軍との大規模な戦闘が繰り広げられた。中華連合軍の中にあって陸軍は比較的近代化が遅れているとされるが、台湾に投入されていた部隊は比較的近代化を遂げていた部隊である。
その上、訓練によって近代的な武装に習熟しており、急激な近代化がために武装をまるで扱えないという滑稽な出来事を起こす恐れはなかった。
中華連合、アメリカ合衆国双方の兵士の流血が台湾の街路を朱に染め上げた。基本的に双方が戦った戦場は市街地ー数多の建築物が立ち並び構造が入り組んだ複雑な地形のエリアである。故に大軍の行動は制約があり、機動性を発揮できないがために絶大な火力を持つ戦車なども意味をなしはしない。そんな市街地での戦闘は、攻守によらずそこで戦うものにとって地獄である。
正面からの戦いのみならず、物陰に潜んだ中華連合軍陸軍の歩兵が奇襲を仕掛け、また敵との不意遭遇戦によって攻め手であるアメリカ側にも大勢の犠牲が出た。即席爆弾の類が使用されなかったたのが救いだが、狙撃手による見えない攻撃が否応なしに恐怖を誘った。しかも台湾はアメリカ及び太平洋諸国連邦の加盟国、まがりなりにも自国領域内とあっては民間人の
巻き添え被害を防ぐために砲兵隊による砲撃も近接航空支援をはじめとした航空攻撃も制限せざるを得なかった。
上陸したアメリカ海兵隊・アメリカ陸軍にとって実時間はともかく、長く厳しい戦いが続いた。その厳しい戦いの果てに待っていたのは、勝利だった。厳しい戦いを経てアメリカ海兵隊・陸軍は、台湾全土の占領に成功し、中華連合軍陸軍は全面降伏した。捕らえられていた台湾政府首脳も、身柄拘束場所をアメリカ陸軍特殊部隊が急襲し無事に身柄を解放された。
これでこの戦いに区切りはつくかと思われた。アメリカ合衆国政府にしてみれば、台湾を解放しこれまで通りの主権を維持できればいいのであって、中華連合そのものを滅亡させようなどとは考えてもいなかった。
一方の当事者である中華連合もこれ以上の戦争の継続は、望んでいなかった。誰もがこのまま講和交渉に繋がると判断していたが、残念ながらそうはならなかった。
中華連合は戦争の継続を選択し、アメリカ合衆国もなし崩し的に戦争を継続するほかない事態に陥ったのである。この愚かな決断を後押ししたのは、どの国にとっても厄介な病巣ーナショナリズムにほかなからなかった。
アメリカ合衆国が重要な利害のみならず、報復を望む民意も理由に含みながら開戦したように中華連合もまた民意によって戦争の継続を余儀なくされた。きっかけは些細なものだった。過激な反米思想を持つものの呼びかけ。確かにそれなりの数であるにせよ、その声自体は圧倒的多数派ではなかった。しかし、その声に同調するものが1人2人と徐々に増え始めた。
それは、なにも本当の意味で反米思想を持つものではない。ただ過激な思想や言葉を発することにファッション的な感覚でみせられたものたちだ。ただ情報技術の発達した現代では、その声が広まるのも早く過激な論調が燃え広がるのにさして時間はかからなかった。
その論調が絶頂に達したのは、東海艦隊が壊滅した際である。その知らせを聞いた中華連合の支配的な国民は、誰もが報復を叫んだ。その声は、もはや一党独裁体制をとる共産党にも制御できるものではなかった。
過去の民主化運動のように武力でその波を抑えようとすれば、その波は共産党に矛先を向けるだろう。中華連合政府は、苦渋の決断を下す他なかった。すなわち、戦争の継続である。本土決戦を行えば、民衆も熱から覚めるという判断をくだしたのだ。この愚かな決断により、本来終わるはずだった戦争は延長戦を迎えた。
台湾解放により、中華連合との戦争が終わる。そう判断していたアメリカ合衆国にとってこの決断はショッキングなものだったが、中華連合が下りない限りアメリカ合衆国も下りるわけにはいかなかった。
そもそも下りようとすれば、台湾の再度の陥落は免れず、中華連合との戦争から下りてしまえばアメリカ合衆国の求心力の低下にもつながる。
こうして舞台を広大な中華連合に移し、米中の激突は続いた。その戦いは、アメリカ合衆国にとっても
苦戦を免れぬものだった。台湾で苦しめられた市街地戦が、規模を拡大した形で地上部隊を襲った。華連合陸軍は、不均衡な近代化で部隊ごとに装備の質が著しく異なっていた。近代化の進んだ部隊にせよ、それを取り扱う練度が不十分だった。その差を補うために人海戦術がとられた。
流石に督戦隊はおかず、近代化の進んだ部隊を犠牲にすることはなかったが、質や練度の差を補うために物量に任せた突撃の敢行があいついだ。現代戦では、物量は必ずしも役にたたないとされるが、これは一定の効果を収めた。誇張された感もあるが、大日本帝国陸軍の万歳アタックのように死を恐れずにということこそなかったもの、それはアメリカ人の将兵を震え上がらせた。
もはや戦争は、消耗戦の様相を呈していた。戦況自体はアメリカ合衆国が優位に立っていたが、その優位と引き換えにおびただしい人命と兵器がいけにえとしてささげられた。対する中華連合は、本土決戦という愚行のために幾つもの都市を犠牲にせざるを得なかった。もはや戦いの勝者は、どちらともいえぬ段階にその戦争は差し掛かっていた。
そして戦争が消耗戦を呈するようになったころ、漸く米中の和平交渉が開始された。中華連合の国民も払った犠牲の大きさ故に頭をさまし、和平交渉を始めることが可能となっていた。アメリカ合衆国にとっても過酷な消耗戦と成り果てた今、最終的な勝利にこだわりはしなかった。かくして両国は、利害の一致から和平交渉のテーブルにいよいよつくこととなった。
最もその和平交渉を前にして筆舌に尽くしがたい悲劇が日本を襲うこととなる。中華連合の健在な地上施設から発射された数十発に及ぶ弾道ミサイル。その弾道ミサイルは、迎撃こそされたものの尚10数もの弾道ミサイルが日本の各地に降り注いだ。幸運だったのは、大都市圏ではなく相応の人口を有していたにせよ地方都市だったことか、いや当事国である日本とそこに住んでいた住民にとっては悲劇であることに変わりはないが。
この弾頭ミサイルによる攻撃は、中華連合政府の意思ではなく反乱部隊、弾道ミサイルを運用する地上基地の責任者が過激な反日思想の主だったために独断で行われたものだ。日本は引き続き本土を狙う弾道ミサイルについて警戒をしていたが、和平交渉が始まる矢先だったために警戒を緩め、本来ならば全弾迎撃することが夢ではなかった弾道ミサイルの着弾を許してしまった。それに弾道ミサイルの発射の兆候を衛星情報などで察知できなかったこともこの悲劇を許してしまった一因といえる。
戦争が終結に向かう直前に日本は、夥しい犠牲者を生み出してしまった。この攻撃で死亡した死者の数は、数十万名を数えるとされ今もって正確な死者は不明だ。そしてその都市に住んでいた生き残りの住民は、さらなる悲劇を襲う。日本政府による復興の中止である。使用された弾道ミサイルの弾頭は、核弾頭ではなかったが、通常弾道でありながらもその威力は従来の弾道ミサイルを上回っていた。新型の化学炸薬による弾道ミサイルであったとのことだが、反乱部隊の巣窟となった弾道ミサイル基地で開発・運用が進められており、鎮圧部隊との交戦時に開発チームが死亡し、実験データも破棄されたために詳細は一切不明だ。
広範囲に広がる多大な年月と莫大な予算を必要とする都市復興。日本政府はその現実を前に復興を放棄することを選択した。またこの選択を選んだ理由には、件の新型化学炸薬が絡んでいる。その化学炸薬がどのような化合物で構成されていたかは不明だが、どうも遺伝子に影響を及ぼす因子が潜んでいたらしく、元々その都市に住んでいた生物が映画の中としか思えぬ突然変異を起こし、凶暴な怪生物が無数に発生した。
この事実が復興放棄を決定づけたという。以後、この攻撃を受けた都市は廃棄都市と通称されたという。
終戦直前に日本は悲劇に直面したが、米中の和平交渉自体はつつがなく進んだ。アメリカ合衆国にとってこれ以上、利益にならない消耗戦を続ける理由はなく、同盟国の悲劇から報復を選択することはなった。
アメリカ合衆国の世論も中華連合と同じく過激な論調を収めていたために、報復の声はあまり叫ばれなかった。
こうしてアメリカ合衆国と中華連合との間に交わされた戦争は終わりを迎えたが、それは黙示録の始まりを示していた。この戦争が終結しても流血は止まることはなかった。
むしろこの戦争を契機に血で血で争う戦争が黙示録のように各地で勃発した・・・。
後書き
つたない文章におつきあいただきありがとうございます。まず述べますが、ジェラルド・R・フォード級と勿論ニミッツ級は実在します。第5空母航空団も実在する部隊で、普段は厚木と確か最近は岩国で普段は地上基地に展開しています。ただネイサン・ジェームズは、アメリカのドラマであるザ・ラストシップにでてくる架空のアーレイバーク級駆逐艦からです。同様に中国の国産空母、現実に建造していますがその一番艦か山東であり001A型となっていてもアルファバットではない艦級は甘寧ではありません。三国志の英雄からとりました、呉の武将のはず。恋姫は残念ながらやってません、一騎当千はリミックス版を一応。
ズムウォルト級のレールガンは実話です。ただし、共同開発は実在する組織ですが、DARPAではなくアメリカ海軍の研究機関です。BAEシステムズは開発に実際に参加。早ければ今年にも搭載される予定。試射で実用レベルなのがすでに開発済みだとか。レールガンはSFの産物ではなくなったのだ!
ズムウォルトの大電力を発生する原動機から複数のコンデンサーを組み合わせたといった感じの蓄電装置に電力を貯蔵し、そのうえでレールガンに電力を供給するとか。HVP弾なる弾丸を発射に使用。レールガン以外にも転用できる砲弾だとか。空母で電磁カタパルトが使われているも本当です。蒸気カタパルトよりも航空機を撃ちだす時に生み出す力がロスなく伝わるのだとか。
鉄壁の防空網云々言いつつ日本本土に着弾させてしまい、申し訳ありません。ただし、言い訳をさせていただくと世界観を共有している作品で中華連合の弾道ミサイルが日本に命中し、廃棄都市ができたとなっているので。弾道ミサイルの着弾でできたのは一つだけ(おい!)のはずですが、ここではそれを拡大したものとします。
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