『やめたまえアオイ君。君は士官候補生なんだぞ!?』

アオイ・ジュンは、愛する人と引き離され(忘れられ)地球に反旗を翻したナデシコに搭乗している大切な人を救うために第3防衛ラインに来ていた。

だが、そこに問題が発生した彼がナデシコの進行を阻止するにもIFSを持っていなかった。

その為のナノマシーン手術を受けようとするがそれをミスマル・コウイチロウと医療スタッフによって遮られる。彼は、士官候補生・・・もはや将来を約束され た彼がIFSという下級兵士が成り上がる為の物を付けようと愚かな行為をしているのだ。

「くっ、貸せ!!」
「あっ。」
プシュッ!
軽い音を立て苦しげな表情をする。やはり、体の中に異物を入れるという抵抗感からくる表情。

しかし、そんな顔をしながら彼の愛する人の笑顔が見えた。


「アオイ君・・・。」

モニターから見ていたミスマル・コウイチロウは、彼の決意を見た。

そして、地球軍の豪傑とも言える彼は、彼アオイ・ジュンにデルフィニウム隊を任せようと考えた。そこに新しく通信が入る。

「私だ。」

「提督準備整いました。」

「そうか・・・ナデシコには、私の娘がいる。公私を混ぜる気はないが頼む。」

「了解しました。我々『天照隊』にお任せください。」


機動戦艦ナデシコ〜MACHINERY/DARKNESS
第7話『必死で生きろ!!』


ドォォン!!

「うわっと!」

今現在ナデシコは、攻撃を食らっていたその瞬間に急な衝撃によってカイトは、手に持っていた中華鍋を引っくり返してしまった。

「イテテ・・・。」

第3防衛ラインのミサイル攻撃を受けているがデイストーションフィールドにより全て遮れてしまい衝撃だけがナデシコを揺らしていた。

「何やってるんだい?テンカワ?」

「あ、すんませんホウメイさん。」

「まぁ、こんな揺れじゃねぇ。それはそうと・・・熱くないのかい?」

「へっ?」

「いや、手。」

「手?」

おそる、おそる自分の手を見ると中華なべの中身の具材をしっかりと手で握り締めていた。

「あっ。」

「あ?」

「アッツィィィィーーー!!!」

必死に手に息を吹きかけながらアタフタと慌てているのを見てホウメイは、苦笑していた。

「ったく、サユリ!片付け頼むよ。テンカワは、さっさと医務室に行ってきな。」

「は、はひぃぃぃ。」

涙を浮かべ顔を真っ赤にしながら全速力で走っていった。


爆音が響き続けるフィールドで2機のエステバリスが戦闘を行っていた。だが、その差は、歴然。

猪突猛進に突っ込んでくる機体をヒラリと避け確実に一撃で仕留める。1分もかからずゲームオーバーと宣告されなすすべが無かった。

「あーーー、何故だ!?なぜ勝てん!!俺の何がいけない!!」

シュミレーターが開いた途端にヤマダ「ダイゴウジ・ガイだ!」が大きな声で不満を言う。

「全て同じタイミングで同じ攻撃方法、そんな愚考と言える技で俺に挑む。愚かを通り越して無謀だな。」

「ぬっ、ならばどうしろと?」

「ふむ。そうだな・・・操縦技術に関しては、言うこと無いが戦闘方法は、雑。」

「ざ、雑!?」

「ああ、とても、雑で単純で大雑把で分かりやすい。」

「むむっ!それで?」

「他に言うことは無い。あとは、自分で何とかしろ。」

面倒な表情をしながらアキトは、飲み物に手を伸ばしゴクゴクと飲み物を飲み始めた。

「俺がお前に俺なりの操縦を教えるのは、簡単だがタイプが違う。お前は、近距離タイプだ。俺が教えることでお前の可能性が潰れでもしたら足手まといになり そうだしな。」
失礼なことを振り向きざまに呟くとガイも少しムッとした顔をするがガイは、何かに気づいたように質問する。

「そういうお前も近距離じゃないのか?」

「ん?俺か?俺は、万能だからな。何にでも対応できる。」

そんな自信に満ちた言葉を言い張り外に出て行った。

「さて、お嬢様に頼まれたものを持っていくか。」

思い出したようにアキトは、廊下を歩いていった。

「あー、火傷だよ・・・。どうしよう。」

自分の手を見ながら水膨れができた掌を見つめるとため息をついた。その曲がり角で黒い物体がヌッと姿を現した。

「うわっ!」

「半端者か・・・。」
会って早々の言葉にカイトは、こけそうになった。

「誰が半端者ですか!?」

「お前だ。お前以外に誰がいる?コックにもパイロットのどちらにも操を立てられない未熟者の半端な奴だから半端者。いけないか?」

「そ、そりゃそうかもしれないですけど。半端なんて言われたくないですよ!どうせならテンカワとか・・・。」

「すまないな。ハッキリ言ってお前を苗字でも名前でも呼びたくない。」

それ以降会話も無く二人は、無言で歩いていった。どこまで行くのか分からない無言でのプレッシャーにカイトは、参り始めた。

「あ、あの・・・。」

「なんだ?」

「どこまで行くんですか?」

「・・・・医務室だ。」

無言のプレッシャーは続く。


静かな医務室に少女が二人コーヒーを啜っていた。

「どうユリカさん美味しい?」

「う〜、もう少し甘い方が嬉しいなぁ〜。」

「はい、それじゃお砂糖ですよ。あ、ミルクにしますか?クリープにします?」

「それじゃミルク。」

カップを手に取り砂糖を何杯も何杯もカップの中に入れミルクをたっぷり入れると舌じゃなく直接に脳に響きそうな甘いミルクティーをグイッと飲み始めた。

「う〜ん、甘い〜〜。」

「あ、あはは。」

そんなコーヒーを飲んでいるユリカを世の中の不思議を見たような表情をしながらカップに手を付けられなかった。

「失礼します。」

「し、失礼します。」

二人しかいない医務室に男達が入ってきたのに気づくとアカリは、ニッコリと笑顔を向けた。

「いらっしゃいアキトに・・・えっとテンカワさん?」

「あ、はい。」

「えっカイト!?」

彼の声にいち早く彼女は、反応し一気に距離をつめた。

「げっ、ユリカ。」

「どうしたの?どうしたの?ユリカに会いにきたの?でも、どうしてここがそっか!二人の愛のブロードバンドが繋がってるからだね。」

「あ、あのな・・・。」

「コイツは、怪我をしてる。」

「いっ、ナナシさん!」

「怪我・・・たいへん、どうしたの?どこが痛いの?」

「大丈夫だか「この手だ。」うわっ。」

火傷を隠そうとしていた手をグッと引っ張られユリカの手を握り締めさせた。

「ちょ、ナナシさん?」

「大丈夫かテンカワ?お前の大切な恋人に優しくっ!手当てしてもらうんだな。」

「そ、その「そうよ!ナナシさんの言うとおりよ。さぁ、恋人の私に怪我を見せて!」ちょ、ちょっと待て!!」

グイグイと引っ張られユリカは、手に持った消毒液を構えた。

「なっ、まさか・・・お前・・・。」

「大丈夫・・・私を信じて。」

そのまま蓋を開け勢いよく無色の液体がカイトの掌にかかる。

「!!!!!」

この世と思えぬ顔に変貌し目から涙の雫がポロポロとこぼれてきた。

「カイト!?どうしたのまだどこか痛いの!!」

「手が痛いんだろ。軽く揉んでやれ。」

「はい!!」

そのままカイトの手をギュッと押した。

「ぐあぁ!!」

「カイト!?」

そんな二人の光景をアキトは、面白そうに見ていた。

「アキトも酷いね。」

「そうでもありませんよ。」

「酷いよ。悪乗りもほどほどにね。」

「了解しました。あっ頼まれた物を用意してきました。」

懐からデイスクを取り出してアカリに手渡すとニッコリと笑った。

「いつもありがとう。」

「いえ、この程度ならいつでも・・・そうだエステの整備を・・・おい、そこの半端者・・・いつまでじゃれあってる?」

疲れた様子で目線を移すと包帯でグルグルのミイラ男といっていいほどの格好にされたカイトがムゴムゴと何かを言っていた。

「仮にもパイロットだ。いくら整備員の腕がいいといっても自分の機体の世話くらいはしておけ。」

そのまま包帯を掴みギュッと首が絞まりカイトは、苦しそうにもだえ始めた。

「むごっ、むごっ!!」

「それじゃ失礼だが連れて行ってよろしいですか?艦長。」

「えっ、はい。」

そのままフッと表情を一瞬変えそのままカイトを連れて行った。

「むがぁぁ〜〜〜。」


その頃・・・防衛線では、デルフイ二ウム隊が準備されていた。

「隊長準備はできましたか?」


しかし、その中でアオイ・ジュンは、緊張していた始めての実戦とはじめて手にした機械の感触に緊張していた。

「あ、ああ・・・いくぞ。」

「「「了解!!!」」」

指示に従う彼らだが顔の表情からは『いいところのお坊ちゃんがなにを考えてるんだか』という見下した表情をしていた。

そのころ別の格納庫では、数人の部隊が準備をしていた。

「デルフイ二ウム隊が出撃したようです。」

「了解した。我々『天照隊』も2分後出撃する。」

『了解!』

3人の女性が漢字で天照と書かれたエステバリスの瞳が輝いた。

「それで・・・あなたは大丈夫?」

「はい、絶対に止めましょう。今は、少しでも戦力が必要です。(それに・・・あの船にいる先生を敵にしたくない。)」

彼女ら全員がエステと同調し4体のエステバリスが勢いよく飛び出していった。

「第3防衛ラインからデルフイニウム部隊の出撃を確認しました。」

「艦長!・・・あれ?艦長は?」

「どうやら医務室にいるようです。」

「なんで?病気?怪我?」

「わかりません。ただ、艦長も副長もいません。まぁ、誰でもいいけど指示を。」

ルリは、ちょっと投げやりに言う。何故なら今ブリッジにいるのは、お茶を飲んで役に立ちそうに無い名だけの提督にムッツリして何も言わないゴートだけだか らである。

「それでどうしましょうか・・・。」

「エステバリス隊出撃だ!!」

「えっ。」

「はぁ?」

「・・・・・。」

ビシッと人差し指を彼方の方向を指しゴートが吼えていた。

「あの〜ゴートさん?キャラが・・・。」

「これでもオブサーバーだからな。」

「あれ?そうだったけ?」

「むっ・・・。」

設(略)忘れ去られるほど彼は、影が暗いのか・・・しかし、それよりもメグミは、連絡を入れた。

「エステバリス部隊出撃してください!!」


「出撃してください!!」

放送を聴いた途端にカイトの顔は、青ざめた。相手は、無人兵器でなく有人なのだ。そのために人間と戦うということにカイトは、抵抗を感じていた。

「そんな人間と戦えって言うのか?」

「そうだな。だが、それがどうした?」

「どうしたって・・・人と殺しあわなくちゃいけないんですよ!?同じ地球人じゃないか・・・。」

彼の表情は、暗さが映えていた。それをかき消すようにアキトが鼻で笑った。

「そんな考えじゃ奪われるぞ?大切なものも必要なものも全てな。もし、守りたいものがあるなら・・・必死になれ。」

彼が身を翻し自分のエステの方に歩いていった。

「必死になれ・・・わかったよ。やってやろうじゃないか。」

真剣な表情に変わりカイトは、エステの方に向かって走っていった。

アキトがエステに乗り込むと男が機体を叩いてきた。

「よぉ!ナナシ!!」

「ウリバタケか・・・なんのようだ?」

怪しげな表情をしながらウリバタケが近寄ってくる。それに対してアキトは、鬱陶しそうな顔に変わった。

「どうだ?折角の出撃だ。アレを使いたくないか?」

「アレか・・・半端者にでも持たさせてやれ。」

「半端者?誰だソレ?ヤマダか?」

「いや、テンカワだ。アイツの方が火星で蓄積された経験は、多いが不安定要素が多すぎる。足手まといは必要ないからな。」

冷たく言い切ると彼も「そうか。」と言うとアシビは、ライフルを手にとるとカタパルトにセットした。

「エステ部隊。ナナシアキト『アシビ』でるぞ。」

ローラーダッシュしながら紫の期待が漆黒の宇宙の中に飛び入った。それを応用に一つ目のエステが次にセットされた。

「ナナシだけにいい格好されて堪るか!ダイゴウジ・ガイ!GO!!」

一つ目のエステが出撃した。今回は、ライフルをしっかり持たされながら(アキトが接近戦以外に何もできないのかと言ったから)

そして、次にカイトの機体が出撃しようとしたがそれに対する武器が無かった。

「あの・・・武器が・・・。」

「おうっ!待ってろ。」

カイトのエステにシールドの様な物を付けられた。だが、それには、鉤爪のような爪を付けられた。
それこそまるで一回り大きな腕が装備されていた。それは、まるでゲキガンガーのような。

「あのこれ・・・なんすか?」

「まぁ、対デイストーションフィールドの『フィールド・クラッシャー』だそうだ考案は、ナナシだがな。」

「ナナシさんが?でもなんで・・・。」

一瞬だけ戸惑いの表情を見せるとウリバタケは、軽く息を吐いて

「そのまんまだと足手まといなんだと。」

と言った。

「ははは・・・。」

それを聞いた彼は、苦笑いするしかなかった。

そんな雰囲気の中戦場では、攻撃、攻撃!!の嵐!

飛び交う銃弾がデルフィ二ウムの脚部を破壊して無力化していった。

「どうやら腕は一般レベルだな。本気を出すまでも無いが・・・しかし、ヤマダの奴・・・驚いたな。」

チラリとヤマダの方を見ると一つ目の機体が敵の機体のライフルで相手を無効化させていった。

「一応射撃も可能なら色々と方法もあるが・・・やはり問題は・・・。」

「ガァァァァイィィィ!!スーーーパァーーーナッパァァァーーー!!!」

ライフルを捨て拳をデルフィ二ウムに一撃を決めると1機落とした。

「へぇ、結構やるぅ。」

「単なる熱血さんじゃなかったんですね。」

がその隙を突いてデルフィ二ウム達がガイを取り囲んでしまっていた。

「うが〜〜!しまったーー!助けろ、カイト、ナナシ〜〜。」

それを見た彼女らは・・・。

『かっこ悪〜〜。』

ブーイングの嵐を。

「精神的にむらがあるところか・・・ちっ、また尻拭いか。」

アキトの機体がガイに近寄ろうとするとアキトは、何かに気づいたように後退した。

その瞬間・・・数機のエステバリスがアキトの機体を取り囲んでいた。

「ちっ、新手か。」

舌打ちしながらアキトは、両腕の爪を構え応戦体勢にはいった。


そのころ・・・

「ただいま〜〜!」

ブリッジに艦長が帰ってくる。だが、緊張感に包まれたブリッジは、ユリカのハイテンションが空振りしていた。

「ど、どうしたの?」

「モニターをどうぞ。」

映し出されたモニターを見るとエステが捕まえられ一人は、エステに囲まれてしまっていた。

「ぬおおおお!!動けん!!」

必死にエステを動かそうとするがデルフィ二ウムに取り押さえられ動くこともできなかった。

そのときナデシコの方にデルフィ二ウムが前に出てきた。

「敵からの通信です。どうしますか?」

メグミの言葉にユリカが一瞬考えすぐに顔を上げた。

「お願い。」

「了解。」

モニターを開くとそこには、見知った顔が・・・。

「ユリカ」

「ジュンくん!?」


続く


あとがき
お久しぶりです。ちょっと無理している部分が多々ありますがご容赦下さい。
更新が停滞する場合もありますのでそこもご容赦ください。




感想

NEOさん狙ってきたのでしょうか? むぅ、分りません…

でも、カイト君はユリカ嬢と引っ付きそうな感じですね。

アキト君はなにやら連合宇宙軍に弟子がいる様子ですね〜女の子4人の部隊ですか〜

新規のヒロイン続出か?

でもアカリさん以外になびくように は見えませんけどね、あのアキトさんは(汗)

ははは…確かに…(汗)

彼はアカリ嬢のお世話役を自認しているけど、過保護な父親なのか、恋人なのか分らない所があるね

どうしようもないほど根本的にアカリさん中心で生きていると言う事でしょう。

アキトさんとしてのアキトさんらしさと言うものは微妙な気はしますが、新しいアキトさんの形なのかも知れませんね。

この先アキトの行動は火星に向かう事で定まっていくんだろうけど、一体どれくらいの人が生存しているのかそういった意味でも期待してしまうところですね。

頑張ってもらいたい所です!



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