第5話『有害アニマルバスターズ』


 アークシティ西区、集い荘。

時刻は午前6時前、シオンは洗面用具を持って1階への階段を下りる。

集い荘は2階が住人部屋、1階に食堂やトイレ、洗面所と浴室がある。

きちんと男女別々に設けられている為、鉢合わせになるというハプニングは無い。

ちなみに、その事実を知った時―――。

「僕はバスタオル巻いた女の子との鉢合わせを期待してたんだよォォォォォオオオオオオオオ!」

と、叫ぶアホが居たらしいが、誰なのかは割愛させて頂く。

彼がここで生活する様になってから、1週間が過ぎようとしていた。

現代文化を吸収する為に書物を貪り読み、様々な知識を得たものの、実際に現代技術で作られた物に触れた時に受けるカルチャーショックは計り知れなかった。

まずは水道、これ自体はさして驚くことはなかった。

500年前の時点で、蛇口を捻って水が出る水道はある程度存在していたのだ。

シオンが驚いたのはお湯が出る蛇口が存在したことだ。

彼が生きていた時代の水道は水だけしか出なかった。

初日、間違って水ではなくお湯の蛇口を捻って湯気が立ったのを目の当たりにした時は、思わず後ずさってしまった。

一緒について来たアヴェルが額に手を当て、溜息を吐いたのは言うまでもない。

「アヴェル!俺は水道の怒りに触れてしまったのか!?」

「いいから、さっさと洗顔と歯磨きして下さい。後がつっかえますんで」←棒読み口調

いやはや、便利な世の中になったもんだと感心する。

元の時代、湯は沸かさないといけなかったので。

他には照明器具の明るさや自動扉等―――驚いた時のリアクションを奇異の眼で見られることがしばしばある。

これから先、どんな未知との遭遇があるのやら。

洗顔と歯磨きを終え、洗面所を出ると前髪に赤いメッシュを入れた青髪の男と鉢合わせる。

同じく集い荘の住人であるソラス・アルフォードだ。

「おはよーさん、早ぇえな」

「そっちこそ早いな―――そういえば、今日だったな」

「おう、今日はオレとコンビを組んでもらう日だ」

この時代でセイバーとして活動するにあたり、身近なセイバー達とコンビを組まされていた。

今日はソラスと組む日。

そういえば、彼の得物や戦闘技術はまだお目に掛かっていない。

彼は如何なる戦闘スタイルなのか。

昨日、アヴェルに聞いてみたところ、腕っぷしが強く格闘戦は得意だがあくまでブレイカーに接近戦に持ち込まれた場合の時だけとのこと。

つまり、ソラスは接近戦主体のセイバーではない。

おそらくは中距離か遠距離を得意とするタイプなのだろう。

しかし、シオンとソラスは知らなかった。

今回の仕事がブレイカー討伐ではないことを。

―――数時間後。

「ハァ、犬捜しィ〜!?」

セイバー総本部、ミーティングルームにソラスの素っ頓狂な声が響く。

隣には眉を顰めるシオンの姿も。

彼らが座る席、テーブルを挟んで前方の席に座るのはリュー・トライアングル。

ザッシュとは同期で、奴をシメることに関して彼女の右に出る者は存在しない(笑)。

彼女は溜息交じりに説明を始める。

「おいおい、ブレイカー討伐はどうしたんだよ?」

「それが……そっちは他のセイバーの人達が引き受けちゃったのよ。で、残った依頼がこれしかなくて」

「ガキのお使いじゃあるまいし、断れなかったのかよ?」

「ま、これも仕事だから。それで……その」

「「?」」

リューの様子がおかしい、目が泳いでいる。

体調が悪いというワケではなさそうだ。

困惑しているといえばいいのだろうか。

彼女は手元にあるファイルから、一枚の写真を取り出す。

「こ、これが捜索対象よ」

「ふむ、これが俺達が捜す―――」

シオンは写真に写る“ソレ”を目にした途端、石化した。

どうかしたのかとソラスも写真に目を移す。

直後、彼もシオン同様に石化する。

写真に写っている犬―――いや、それは犬と呼べるシロモノではない。

写っていたのは、犬の姿を模した全身タイツに身を包んだ中年男性だった。

タイツがピッチピチ、キリッとした眉毛が気持ち悪さを倍増させている。

数秒後、石化したふたりが再起動。

数歩後ずさり、踵を返してミーティングルームから去ろうとする。

「待って、何も言わずに行かないでェェェェェェェェェェ!」

半泣きになったリューが、ふたりの腕をすかさず掴んだ。

「リュー姐さん、見損なったぜ。アンタ、何時から人をおちょくる女になっちまったんだよ」

「病院で脳を診てもらえ。腕のいい先生に頼むんだぞ」

可哀想なものを見るような目で、彼女を見つめるふたり。

しかし、その瞳に宿る温度は絶対零度。

見るもの全てを凍てつかせる勢いだ。

「絶対零度の眼差しで見つめないでぇぇぇぇ!私だって最初にコレ見た時は同じ心境だったんだからァ!!」

「おい、マジに“コレ”を捜せってのか!?」

「この写真で聞き込み調査なんぞしたら、間違いなく引かれるぞ……」

げんなりした表情で、写真に再び目を移すふたり。

何故にこんな変質者を捜索しなきゃならんのだ。

どこのバカだ、こんな捜索依頼を出したのは。

文句の一つでも言わないと気が済まない。

―――と、ミーティングルームの扉が開いた。

「その姿に惑わされてはいけない!」

「あ、貴方は―――ケインさん!」

「「誰だ?」」

ミーティングルームに突如現れた来訪者。

年齢は40歳くらい、髭が似合うナイスミドルな男性だ。

「この方が今回の依頼主のケイン・オルロットさんよ」

「アンタか、こんなふざけた依頼をしたのは。一体どういうつもりなんだよ」

「見てくれに騙されてはならん、そやつは恐ろしい悪魔なのだ!私の娘はそやつの所為で―――」

「娘?」

「娘は、まだ9歳になったばかりだというのに……!」

「まさか、こいつが貴方の御息女を手に掛けたとでも言うのか?」

シオンがケインに問うと、彼は厚手のハンカチを目元に当てる。

「その通りだ、あれは数日前の赤い満月の夜だった―――」

「数日前に赤い満月なんて夜空に出てなかったぞ」

「出ていたのだ、私の脳内設定ではあの日は赤い満月の夜だった!」

「妄想じゃねぇか!おい、リュー姐さん!このヤベェおっさんを早く病院に搬送してやれ!!」

「病院の先生が迷惑だからこっちで処理してって」

面倒な患者は診察したくないとのこと。

早い話が押し付けである。

おい、病院がそれでいいのかとふたりはジト目になる。

「ソラス、とりあえず話だけは聞いておこう」

「……あんま聞きたくねぇけどな」

仕事前から既に疲れた顔になるふたりをよそに、ケイン氏は語り出す。

数日前の赤い満月の夜(ケイン氏はあくまで数日前は赤い満月だったと語る)。

ケイン氏の屋敷に、写真に写る犬タイツの不審者は出現したという。

ちなみに、彼は会社経営者―――つまり、社長だ。

「私達が座ってる椅子やこのテーブルもオルロット社製なのよ」

「ほう、有名な企業なんだな」

「色々と手広くやっているよ。で、話を戻すが―――」

深夜、ケイン氏の屋敷内を警備員が巡回している時だ。

警備員は窓の外を何かが横切るのを見たという。

―――強盗か!?

警備員は窓を開け、周囲に見回すが人の姿はない。

気のせいだったのか、窓を閉めようとすると―――。

ワン、と犬の鳴き声が聞こえた。

犬、何故に犬の鳴き声が?

この屋敷では犬など飼っていない。

野良犬が敷地内に迷い込んだのだろうか。

とりあえず、見つけて追い払うことを決める警備員。

懐中電灯を片手に屋敷の外に出る。

敷地内を照らしながら歩いていく。

と、何者かが駆けていくのを目の当たりにする。

誰だ、止まれ―――そう叫ぶも、何者かは軽い身のこなしで屋敷に張り付くと、あっという間に屋根まで登っていく。

なんという身軽さだ、明らかに素人ではない。

やはり、さっき窓の外に見えたのは強盗の類に違いない。

はっとなり、視線を動かす。

何者かはある部屋の窓に張り付いている。

あの部屋は確か―――そうだ、お嬢様の部屋!

警備員は持ち前の俊足で屋敷に戻り、お嬢様の部屋に急行する。

お嬢様、危険です―――そう言って部屋に駆け込んだ警備員が目の当たりにした光景。

部屋のカーテンは閉め忘れていたのか、部屋の中は赤い満月の光で照らされていた(しつこい様だが、ケイン氏はあくまで数日前は赤い満月だったと語る)。

そこには異様な光景が広がっていた。

はっはっと荒い息遣いをする、犬の姿を模した全身タイツに身を包んだ中年男性が窓の外からお嬢様を見つめていたのだ。

お嬢様は魘されていたのか、うーんうーんと声を出していたそうな。

「(うわぁ、なんじゃそりゃ。想像もしたくねぇよ、んな光景……)」

「(正に真夜中の悪夢だな……)」

完全にドン引きするセイバー両名。

今の話の光景は、変態(ロリコン)が窓の外から幼女を眺めて興奮している以外の何物でもない。

頭に思い浮かべるだけで嫌になってくる光景だ。

異様な光景に慄く警備員。

無理もない話だ、まだ強盗の方が現実味があるのだから。

犬タイツの変態の瞳が光った(警備員の報告書にはそう書かれていた)。

窓を割って、変態が部屋の中に侵入。

警備員がまずいと、お嬢様を守ろうと駆け出す。

しかし、犬タイツは見た目の変態さとは裏腹にかなりの手練れだった模様。

軽快なステップで警備員を翻弄、ハイキックを叩き込んで壁際まで蹴り飛ばした。

意識が朦朧とする警備員が最後に見たのは、魘されるお嬢様に近付いていく犬タイツの後ろ姿だったという。

「娘は、娘はその日以来……!」

「その日以来、どうしたんだよ?命に別状はなかったのかよ?」

「幸いにも……だ、だが―――う、うぅ!」

ケイン氏の嗚咽が室内を支配する。

命が無事なら、一体どうしたのだろう。

困惑するシオンとソラス。

―――と、ミーティングルームの出入り口から。

「ワン」

舌足らずな声が聞こえた。

いや、声というよりも鳴き声?

犬の鳴き声が聞こえた。

視線を鳴き声がした方角へ向ける。

メイドらしき女性が立っていた。

おそらくはケイン氏の屋敷のお手伝いさんだろう。

いや、それはこの際どうでもいい。

メイドさんは少女と手を繋いでいる。

少女は犬タイツ姿だった。

どっと滝の様な涙を流すケイン氏。

「ああ、マリィ!あれ以来、娘はこんな姿になって……」

「いや、どういう状況だよこりゃ!?」

「……ケイン氏、御息女は何故こんな姿に?」

「私が駆け付けた時、娘はこの姿にされていたのだ!このタイツはまるで身体に吸い付いているのか、脱がせられんのだ!!おまけに言葉は全て犬の鳴き声で、意思疎通もままならんのだ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「お願い、ふたりとも!ケインさん達を助けてあげて!!」

リューの必死の嘆願に、言葉が詰まる両名。

正直、関わりたくもない。

だが、年端もいかない少女の不幸な境遇、無視するのは良心が痛む。

乗り気はしないが、幼い子供の為に両名は犬捜しを受諾した。









アークシティ西区、とあるカフェテラス。

街の巡回をしていたアヴェルは、渋い顔をして歩くシオンとソラスに遭遇。

ふたりの様子がおかしかったので、ワケを聞いてみた。

犬の捜索依頼、捜索対象の犬の写真を見せられた彼がシオン達同様に石化したのは言うまでもないだろう。

再起動したアヴェルは、カフェで注文した紅茶を一気に飲み干す。

そして、憐みの眼差しでふたりにこう告げた。

「ふたりとも、病院に行って下さい」

「「ほう、いい度胸だな小僧(怒)」」

握り拳を作り、骨を鳴らすシオンとソラス。

「ぼくは正論しか言ってませんよ。こんな変態が徘徊してる現実なんて受け入れられません」

「オレだって受け入れたくねぇよ!こんな変態を捜索する現実なんざよォ!!」

「というよりも、よく写真なんて撮れましたね」

「屋敷から逃げていくコイツを、偶々仕事が長引いて帰宅が遅くなったカメラマンのおっさんが目撃して撮影したんだとよ。そのおっさんも目を疑ってたみてぇだぜ」

そりゃそうだ。

こんな変態と夜中に遭遇するなど、夢にも思わないだろう。

寧ろ、夢か幻であって欲しい。

「でも、何でこんな格好してるんでしょうか。この人には犬タイツを身に纏う習慣でもあるんですかね」

「んな習慣あるわきゃねぇだろ……」

「そもそも、手掛かりが写真だけで何処を捜索しろというんだ。この街や郊外に至るまでを調べるのは骨が折れ―――」

「うわー!」

「何あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「へ!?」

「何だ、騒がしいな」

「行ってみるか」

何やら騒ぎが起きている模様。

3人は会計を手早く済ませ、騒ぎが起きている場所に急行。

場所は西区の百貨店クラウン。

百貨店の前に多数の人だかりが。

何かの野次馬か?

野次馬のひとりに声を掛ける。

「セイバーだ、何があったんだ?」

「あ、あれを見て下さい!」

「あれ?」

3人が野次馬の指差す方向に視線を向けた。

硬直するセイバー一同。

百貨店の4階辺りの外壁を張り付く様な大勢で移動する犬タイツの不審者の姿が。

「「い、いたァァァァァァァァァァァァ!?」」

「ま、まさか本当にあんな変態が徘徊してるなんて……」

あっさりと目標を発見。

アヴェルはあの様な変態が徘徊する現実を受け止め切れずにいる模様。

「こうしちゃいられねぇ、捕獲するぜ!」

ソラスは腰に手を掛ける。

腰にあるホルダーから抜かれる彼の得物。

シオンの時代には存在しない武器―――銃だ。

「(あれが銃か。この時代の文献で見ただけで、実物を目の当たりにするは初めてだな)」

「ソラスさん、あんな変態でも人間です……多分。射殺しないで下さいよ」

「正直そうしてぇ気で満々だが、目的は捕獲だ。オレが持ってんのは麻酔銃だ」

「ふむ、相手の動きを止める為の物か―――よし、頼む。あまり乗り気はしないが、奴が落下したら俺が受け止める」

「よっしゃ、任せたぜ!」

銃を構えるソラス。

脚に意力を集束するシオン。

ふたりを見守る野次馬(アヴェル含む)。

狙いを定め―――引き金が引かれる。

響く銃声、発射される麻酔弾。

麻酔弾は犬タイツの足に命中、バランスを崩した犬タイツが落下する。

機を逃さず、駆け出すシオン。

だが、予想外の出来事が発生。

何と、奴は1階下の外壁にしがみ付いたのだ。

地面に落ちてくる物がある。

弾丸―――おそらく、ソラスが撃った麻酔弾だ。

「んな、馬鹿な!?あのタイツ、弾を通さねぇのか!?」

「奴はバランスを崩しただけか、こうなれば直接捕獲するしかないな」

跳躍しようと、シオンが意力を両脚に集束し始めたのと同時だった。

ワォォーーーーーーーーーーーーーーーーン!

犬タイツが遠吠えした。

するとどうだろうか、遠くからも―――。

ワォォーーーーーーーーーーーーーーーーン!

アオーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

遠吠えが聞こえてきた。

百貨店の屋上辺りに人影が現れ、一斉に飛び降りる。

外壁にしがみ付く犬タイツの元に、新たな犬タイツが―――およそ10人ほどやって来た。

唖然とするシオン。

ソラスとアヴェル、野次馬達もだった。

「―――は?お、おい……何の冗談だありゃ!?あんな変態がもっといるってのか!?」

「げ、現実は狂ってる!ぼくは何を見てるんだ!?」

「落ち着け、アヴェル。こんな現実を認めたくない気持ちは俺も一緒だ」

錯乱するアヴェルを宥める。

いや、錯乱するなという方が無理かもしれない。

あんな変態集団が存在する現実なんぞ認めてたまるか。

犬タイツ集団がシオン達と野次馬を一瞥した後、一斉に壁を蹴った。

連中は隣の建物まで跳躍、その後も同じ様に建物から建物へと跳躍移動しながら離れていく。

「奴ら、意外と動けるな」

「追うぜ!アヴェルも―――無理か」

アヴェルは頭を抱えている。

どうやら、まだ混乱している模様。

人手が欲しいのは山々だが、こんな状態の彼を連れて行くのは無理だろう。

アヴェルを近くの野次馬に任せ、シオンとソラスは犬タイツ達を追跡する。

30分が経過、ふたりは人気のない廃墟の前に立っていた。

犬タイツ連中はこの中に入っていった。

明らかに罠があるとしか思えないシチュエーションである。

「どうする?どう考えても罠しかないと思うが」

「行くしかねぇだろ、ここまで来たら」

廃墟に足を踏み入れる。

暗くて、犬タイツ達の姿は見えない。

だが、連中が何処に居るかは把握している。

意力による感知、索敵を行っている為、敵の位置は既に掴んでいるのだ。

目的はあくまで捕獲。

攻撃を受けない限り、反撃はしない。

と、頭上から落ちてくる物が。

廃墟に轟音が響く。

落ちてきた物の正体は檻、ふたりは檻に閉じ込められたのだ。

檻に近付いてくる複数の人影―――言うまでもなく、犬タイツの変態集団だ。

自分達を閉じ込め、してやったりという顔をしている。

ふたりのイラつきゲージが上昇したのは言うまでもないだろう(笑)。

「フフフ……掛かりおったな。我らをコソコソと嗅ぎまわる野良犬共」

「そんなふざけた格好で言っても説得力がないぞ、糞犬共」

「誰が糞犬か!我々を何と心得る!!」

「知るかよ、犬になりたかったけどなり損なった可哀想な集団じゃねぇか?」

全くもってその通り。

シオンもソラスの言葉にうんうんと頷く。

リーダーらしき犬タイツが高らかに叫ぶ。

「我々は秘密結社―――犬っ子倶楽部!」

「「―――は?」」

「全世界の人々を犬タイツにするという野望成就の為に生きる犬大好き人間の集まりなのだ!」

「単なる迷惑集団!?つーか、秘密結社じゃなくて同好会じゃねぇか!」

「ケイン氏の御息女を何故あんな目に遭わせた?」

「そ、それは……あまりにも可愛かったから」

「「やはり変態(ロリコン)か……」」←憐みの眼差しをしている両名

「う、うるさーい!あの可愛さが理解出来んのか野良犬共!!邪魔立てするなら容赦は―――」

一瞬、閃光が奔った。

廃墟に再び響く轟音。

ふたりを閉じ込めていた檻が破壊された音だ。

シオンは剣を、ソラスは二挺拳銃を手にしている。

足を前にドンと出すふたり。

「「我ら―――有害アニマルバスターズ」」

「……へ?」

「人に仇なす有害アニマルを取り締まるが、我らの生業」

「は、はい?」

「貴様らは罪を犯した。ひとつ、不法侵入。ひとつ、幼子への嫌がらせ。ひとつ、人々を不快にさせたこと―――」

「え、えーと?」

「そして、最も許し難いのは……オレ達にてめぇらを捜索させるという無駄な時間を費やさせたってことだコラァァァァァァァァァ!」

「貴様らの生皮(タイツ)を剥いでくれるわァァァァァァァァァァァァァァ!」

『キャ、キャイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!?』

悪鬼さながらの形相で犬タイツ達を蹂躙するセイバーふたり……否、有害アニマルバスターズ。

数時間後、廃墟の屋根にはタイツを剥がされたおっさん達が吊るされていた。

連中を脅迫し、ケイン氏の娘は無事元に戻り、依頼は終了した。

集い荘1階、食堂。

依頼を終えたふたりは、心底疲れた表情で夕飯にありついていた。

「あー……今日はしんどかったぜ」

「ブレイカー討伐よりも疲れた……主に精神面の疲労だがな」

「全くだぜ―――ん、何か変なニュースが流れてるな」

食堂のテレビから流れるニュースに視線を向けるふたり。

そこには、猫タイツを纏った中年男性の姿が。

椅子から立ち上がるふたりのセイバー―――否、有害アニマルバスターズ。

この世に有害アニマルという変態が存在する限り、彼等の戦いは続く……かもしれない。

その頃、集い荘2階にあるアヴェルの部屋では……。

「うーんうーん、あれは現実じゃない。幻なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

犬タイツが存在する現実が受け入れられず、魘されるアヴェルの姿があるのだった(笑)。



・2023年2月17日/文章を修正



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