機動戦艦ナデシコ
〜光明は遠い世界から〜
外伝 「答え探しと決意?」
「「「ありがとうございました!!」」」
ここはとある公園。そこにはユリカとアキト、ルリにナオトとラピスが加わりあの頃のように屋台をやっている。ちなみにマリとマサキはちょくちょくそこへ
ハーリーを(無理やり)連れてくるが手伝いはしていない。今の仕事はルリは宇宙軍のまま、ユリカとアキトとナオトはネルガルで例のナオトのデータから『対
抗手段』を造ったり、SSとして仕事をしていたりする。だが休日にルリとユリカのたっての希望で屋台をするようになっていた。今、料理を担当しているのは
ナオトだ。アキトは皿洗いなどの雑用はしてもけして料理をしようとはしなかった。
「ナオト、今晩暇か?」
「ああ、暇だけど?」
「・・・少し付き合え。」
「「え!!」」
アキトとナオトのやり取りを聞いたルリとユリカはぎょっとして2人を見た。
「だ、ダメです!何か辛いことでもあったんですか、お父さん!?アキトさんもすぐに断らないと!!」
「そうだよ、アキト!!いくら真っ赤なバラが魅力的でも道を踏み外しちゃダメ!アキトには私がいるんだから!大丈夫、今日はちゃんと満足させてあげるか
ら!」
「何を勘違いしてるんだ、お前らは!!」
アキトは2人の勘違いを必死に否定する。
「俺はナオトに話しがあるだけだ。それで、いいか?」
「もちろんだ。だがお前が誘うなんて珍しいな。」
「・・・俺もいろいろ考えると言うものだ。」
「・・・なるほどな。」
ナオトには今のやり取りでアキトが何を言いたいがわかったようだ。屋台が終わるとアキトとナオトはネオン街に消えていった。
2人はしばらく歩いて小さなバーを見つけるとそこに入って話すことにした。そこはクラシックな雰囲気のバーで落ち着いて話をするにはもってこいだった。
「さて、話はなんだ?」
「・・・わかってるだろう?」
席に着くとさっそくナオトが切り出した。
「まぁな。だが候補が結構ある。まず何を聞きたいか教えてくれ。」
「あいにく俺も聞きたいことはたくさんある。だがまず聞きたいことはお前の考えだな。」
「考え?」
ナオトは怪訝そうな顔をする。
「そうだ。お前は俺から見て幸せそうに見える。確かに今のお前は目的の半分は達成し、守りたい者も守れた。だが1つ忘れてないか?」
「・・・いいたい事はわかる。俺がルリちゃんやユリカを助けると決めて最初にぶつかったのはそれだ。もっともその時は悩んでいられなかったし、保留した。
もちろん今は答えを出している。」
「答え・・・か。つまりお前は自分のために犠牲にした無関係の者たちへの謝罪はすんだということか?」
アキトが声のトーンを落として言う。ナオトにはアキトがいらだているのが手に取るようにわかった。
「違う。元々謝罪なんて出来るものではないし、したとしても自己満足どまりだ。」
「じゃぁどういうことだ?」
「お前がいう犠牲は火星の後継者からユリカを救おうとしたときの事だと思うが、犠牲者のことをその最中に考えたか?」
「それはないな。考えているようでは救うことは出来ない。もっとも知っての通り1人では助けられなかったがな。」
アキトは自嘲気味に笑った。
「その通りだ。そして俺の答えは俺の戦いはまだ続いている。ただ戦い方が違うだけだ。さっきお前は俺の目的は半分終わったと言ったな。とんでもない、俺の
目的はまったく終わっていない。いや終わることはない。」
「どういう意味だ。わかるように言え。」
「俺はルリちゃんとユリカを救うといったよな。ただ死なせないだけでは救ったとはいえない、俺はルリちゃんとユリカが幸せを感じられる環境を作ってこそ
救ったことになると思う。」
「・・・それで?」
アキトは続きを促す。
「それで彼女らが幸せを感じるときは何か?その中に答えがあった。これは受け売りだが、2人が幸せを感じるのはテンカワアキトを言う存在と幸せを共有する
ことだ。俺もこれは半信半疑だった。だがこの数ヶ月それを実感した。俺はルリちゃんが見ている俺の中のテンカワアキト、ユリカが見ている俺の中のテンカワ
アキトとして彼女らと幸せを共有することで彼女らは確かに幸せを感じているとわかった。」
「・・・。」
アキトは無言だ。ナオトはさらに続ける。
「だから俺は戦いを続ける。・・・確かにこちらのほうがよっぽど自己満足かも知れない。俺はただ自分の罪から逃げているのかも知れない。もちろん俺は自分
の醜さ、卑怯さ、弱さを自覚してるさ。だがどんなに醜くても、卑怯でも、自分が弱くても俺は彼女らの幸せを望む。それだけだ。」
「つまりお前は2人の幸せのために自分の罪を忘れると言うのか?」
「・・・それが出来ればどんなに楽か。俺はこの答えを出してから常に自己嫌悪に落ちいてる。情けないが俺は今感じている幸せが本当の幸せなのか虚偽の幸せ
なのかわからない。いっそのこと虚偽の幸せだと言い切れれば自己嫌悪も弱くなるだろう。だがそうできないほど俺は弱いのさ。」
沈黙。まるでその場からそこだけ隔離されたように重々しい雰囲気が流れる。
「・・・わかった。俺はもう帰るな。」
「待てよ。せっかく来たんだ。少し飲もう。」
「・・・わかった。」
ナオトはブランデーを頼んだ。アキトも同じものだ。
「俺は元々この答えをお前に強要する気だった。だがルリちゃんもユリカも俺を家族だと認めてくれた。それにお前は限りなく俺に近くてもイコールではな
い。」
ナオトはグラスのブランデーを口に運ぶ。
「だから強要はしない。だが少なくとも2人の前では幸せを感じて欲しいという願いもある。自分で言うと自己正当化のように聞こえるがこの生き方はつらい。
だが全てが終わったら何か大切なものが見つけられる気がする。気がするだけかもしれないがな。」
「・・・。」
「俺が言いたいのはそれだけだ。勘定はここに置いておく。先に帰るからゆっくり飲むといい。」
ナオトはカウンターにお金を置くとそのバーを出ていった。アキトはその日、閉店までそこで飲んでいた。
次の日は日曜日、いつもなら今日も屋台をするのだが今日は急遽中止になった。
「お邪魔します。」
ルリとナオトがアキトとユリカの家にはいった。実はルリは今、ナオトの家に(2人で)住んでいる。中をみわたすと当然アキトとユリカ、他にはマリとマサ
キ、ラピス、そしてなぜかハーリーがいた。もちろんつれてきたのはマリとマサキだ。マリ曰く、まずはラピスに身近な存在として位置づけることからはじめる
らしい。
「やっときたね!なんでも今日はアキトがテンカワ特性ラーメンを作ってくれるんだよ!!」
「それを聞きたから来たんですから言わなくてもわかりますよ。それにしてもお父さん、突然どうしたんですか?」
ルリがアキトに疑問をぶつける。
「・・・変か?」
「い、いえ、がんばってください。」
ルリの言葉を聞くとアキトは厨房に入っていった。20分後お盆に人数分のラーメンをのせてアキトがリビングに帰ってきた。
「伸びないうちに食べてくれ。」
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
アキト以外の7人がいっせいに食べ始める。
「どうだ?」
アキトな全員に味を聞いた。
「さっすが、アキト!!おいしいよ!!」
「・・・おいしい。」
「塩加減が少し多いですが久しぶりにしてはかなりの出来ですね。」
「おいしいですよ。」
「・・・アキト、上手。」
「テンカワさんって料理もお上手なんですね。」
ナオト以外が口々に感想を言う。
「・・・そうか。」
アキトはそんなみんなを見てかすかに微笑んだ。
「あ!今アキト、笑った!!」
「ええ、確かに見ました。多分お父さんが笑うのを見るのは6年ぶりですよ。」
一同はアキトが笑ったことでの話題で盛り上がった。そんな中1人食べ続けていたナオトがおわんを置くと、
「・・・ありがとな。」
「俺は俺で結論を出そうとしているだけだ。」
「・・・そうか。」
2人の声は周りの者には聞こえなかった。
後書き
こんにちは、RYUです。外伝3作目も完成。今回はキャラコメは中止です。今度から不規則に入ります。
さて今回のお話。アキトの決意というか答えというかというお話しですが、アキトの答えはまだ確定していないので(話の中では)また少し何かあるかも。ただ
アキトが帰ってきてもそのまますんなりじゃ不自然と思ったりユリカやルリのためにただいるだけになるので(今のナオトの考えではナオトも同じですが)この
話がいりました。
それともう1つ。このお話(〜光明は遠い世界から〜全体)のコンセプトの1つハーリー×ラピス、確かにこのままでは不自然です。ここにも結構設定があるん
ですが、簡単に言うと、
ルリを殺してユリカが消えたことでアキト(ナオト)が自分の殻に閉じこもるというか重度の自閉症のようになって、リンクをしていた(この世界でアキトの五
感が治るのはずっと先)ラピス(マリ)はそれを感じて必死に看病する。
一方ハーリー(マサキ)はアキトがルリを殺したことを知り、いくら操られていたとしても納得できず、アキトを責める。
このことでハーリーとラピスは完璧に対立。この状態がしばらく続く。
その後、イネスの研究で例のボソンジャンプの新理論を考え始める。本当ならばA級ジャンパーのアキトには異世界のではあるが、ルリを救える事をハーリーは
知る。
ハーリーは悩むがアキトにルリを助けることを頼むことにする。(イネスはまだ理論が完璧ではないので言っていない)ハーリーがこのことをアキトに話すと今
までどんな言葉にも反応しなかったアキトが救うことを目的にまた動き出す。
ラピスはハーリーはアキトを嫌悪していたのに(結果的とはいえ)アキトを助けたと思い、その矛盾に疑問を覚え、また単純にアキトを助けた人としてアキト以
外に初めて(恋愛感情とかではなく)興味を持つ。
それからはいろいろあって普通に付き合い始めて結婚。
という感じです。ここで重要なのは〜光明は遠い世界から〜は劇場版の1年後から始まりますがその1年でラピスはアキトとの生活である程度、心の傷は癒え始
め、自分のアイアンティディーを確立しようとしていたということです。・・・じゃないとラピス→マリみたいにならないのでだからラピスとマリは今は正確か
なり違います。(2章の始まるまでの半年でかなり影響はされますが)
それとマサキも確かに元はハーリーですがルリの死を乗り越えたり、火星の後継者の残党(世界義勇軍)との辛い戦争をのりこえたりといろいろあって結構しっ
かりしてます。ようはまず興味を持ち始めることが大切です。
こっちのラピスはアキトとユリカたちと家族として暮らすことでマリとは違い普通にアキト以外の人も意識しだしています。ハーリーも今は家族未満、他人以上
くらいに。
こっちのハーリーにも本編でいろいろあったりして成長させる予定なので本格的にハーリー×ラピスはその後ですね。
まぁ要するにこじつけだったりしますが。ついでにラピスはアキトに独占欲はあっても恋愛感情はないです。(というより今の段階では恋愛感情を理解していな
い)
それでは次で会えることを願ってます。
感想
アキトの心理と互いの思いの確認、色々大変ですね〜
平和な時間は戦争などの時間より大切なうえに、維持するのが大変です。
その上に、自己嫌悪が重なっていると、平たく言って平和のなかで生きていくのが辛いということは分りますね。
平和に浸っている自分に腹が立つ、死んでいった人々も幸せになりたかったろうに…
アレだけ殺した自分が、そんな人々を無視して幸せになっていいのだろうかと言うことですね。
この心理は容易に心の均衡を崩してしまいます。
アキトはこれを内包して生きているからこそ、格好いいわけですが…
それだけに、平和や幸せのなかにいられない人間になってきているのは事実ですね。
ほほう、駄人間も語りますね。
確かにアキトさんが私から逃げる本当の理由はそれです。
他にもあるでしょうが、主軸はまさにそこですね。
なるほど、最初がアキトとの追いかけっこから始まる作品が圧倒的に多いのはそのせいですね?
そうなりますね。
アキトさんは、元が繊細な少年ですから。
ちょっと穿った言い方になりますが、アカツキさんが言っていた事を憶えているでしょうか。
確か、「恋愛下手の言い訳にプラトニックを云々」と言う部分です。
その辺りで感じさせるのは、アキトさんが友人を作るのが下手な内気少年だという事です。
まあ、あの頃のアキトはかなり無理して明るく振舞っています。
後半はゲキガンガーに染まってきますから、みんなのノリがそっちに行きますけどね…
周りに影響されやすいのも初期のアキトさんの特徴ですけど…
結局作者側もアキトさんに不幸を植え付けるのは毎度の事でしたからね。
むしろ、TVでは良く歪まなかった物です。
ははは…確かに…
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
RYU
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