―――フランス革命の指導者たちは、金持ちを敵として貧乏人を扇動した。これによって、金持ちは貧乏人に転落したが、貧乏人が金持ちになることはなかった
つまりこれは、革命が如何に難しいかを明確に表している。
何故なら、例え被征服者が征服者を打倒し独立を果たしたとしても、残ったのは荒廃した自国と疲れきった民衆という事もあるのだ。
ならば本当の意味で革命を成功させるなら、それは――――――――
最近、日本解放戦線のような組織だけじゃなく、弱小テロリストまでKMFを使うようになってきた。
しかも使っているナイトメア、それは無頼というブリタニアの一般兵が乗るグラスゴーを改造した機体だ。
全く、どこでそんなものを手に入れたのだか……。
上層部はなにやってるんだ?
しかし、そんな不満を言ったところで現状は変わらない。
そう俺がレジスタンスの掃討に行くという事実は…。
くそう。折角ナンパに成功したのに!!
「どうした、緊張しているのかね?」
最近やたら付きまとってくるようになったジェレミア卿が話しかけてくる。
心配してくれるのは、嬉しいのだが、
出来ればヴィレッタ卿に心配されたかった……。
「いえ、そんな事はないのですが、ただイレヴンのナイトメアはどこから来たのかと思いまして。」
今までテロリストの使っていたKMFは、中華連邦から密輸されてきたガンルゥや、ブリタニア軍のグラスゴーを鹵獲したものだった。
しかし今回俺達が討伐しに行くテロリストの使っているKMFは『無頼』。
グラスゴーの改造機とはいえ、これはイレヴンが自らKMFを自作する技術を持っているといっても過言ではないかもしれない。
「なんだ?そんなものを心配しているのか。
あんなグラスゴーもどき、我がサザーランドには敵わん!」
豪快に笑うジェレミア卿。
確かに彼のKMFはまだ配備の進んでいない第五世代KMFサザーランド。
第四世代KMFグラスゴーの改造機である無頼よりも性能は全体的に上だろう。
だが俺の聞きたいのは、そんな事じゃない。
「いえ、ジェレミア卿。そういう事を聞きたかったのではなく、KMFは我が軍が始めて採用した、全く新しい陸戦兵器です。
そのナイトメアをあまつさえ改造出来るほどの規模と技術力を持った組織が、このエリア11にあるのですか?」
「うーむ、私はそういう細かい事は全てヴィレッタに任せているのだ。
なのでヴィレッタに聞かなければ分からん!」
……なんでこういう事を堂々と言うかなあ〜。
しかしジェレミア卿も知らないのか。
これでも、わりと軍でも高い地位にいるから、もしかしたらとも思ったんだけど。
まあいいや。
どうせやる事は変わらない。
相手が無頼だろうとグラスゴーだろうとガン○ムだろうと、命令通り戦うだけだ。
さて、もう頭の整理は終わり。
これからは怖くてドキドキする何があるか分からない戦闘のお時間だ。
戦場でゴタゴタした考えを引っ張るわけにもいかない。
ジェレミア卿の前で言った事などを、一度綺麗さっぱり忘れる。
………………………………
……………………………
…………………………
………………………
………よし!
『テロリスト共はヨコハマゲットー内に潜伏している模様。
包囲内のイレヴンは一人残さず抹殺せよ!繰り返す。テロリスト共は――――』
抹殺、か。
いえいえ、命令とあれば従いますよ、俺は。
しかしこういう作戦は、俺よりルキアーノのような殺人狂にやらせて欲しい。
『レナード卿』
「ジェレミア卿?どうしたのですか?」
『君に純血派の者を二人つけよう。
存分に戦いたまえ。』
俺に部下が二人、か。
士官学校ではそういう経験もした事もあるけど、実戦では初めてだな。
つまり"初体験"というやつか!
・
・
なんて馬鹿なこと考えてる場合でもないか。
「イエス・マイロード!」
『良い返事だ。
では、武運を祈るぞ!』
そうして通信は途絶えた。
続いて、即席で部下となった二人と少し話し、
実戦が始まる。
「レナード・エニアグラム!グラスゴー出撃する!」
言い切った瞬間、身体にGがかかる。
開ける視界、辺りは廃墟―――ゲットーだ。
俺のKMFに続く形で二機のナイトメアが続く。
これが日本解放戦線などの強敵相手ならば、まだ実戦で兵を率いたことのない俺に、部下を預けるというのは、賢い選択ではないが、今回は大した規模ではないテロリスト。
ジェレミア卿も、俺に経験を積ませる為にこの二人を付けてくれたのだろう。
だがそうなると、この二人は、ジェレミア卿と俺の面子に賭けて殺される訳にはいかない。
俺達の前に現れる二機のKMF。
報告にあった無頼だ。
しかしまだ動きが弱弱しい。
どうやらナイトメアは用意できても、パイロットは手に入れられなかったようだな。
これならば――――――――。
「二番機、左側より回りこめ。
三番機はここに留まれ、俺は右側から攻める。」
『イエス・マイロード』
『イエス・マイロード』
敵の無頼二機はアサルトライフルで応戦するも、そんな甘い照準ではそう当たるものではない。
そして俺を含めた三人で囲み、
「よし、撃て。」
三方向からの攻撃を受けた無頼は、あっさりと沈黙した。
…………他に襲ってくる様子もない。
「これで、終わりか?」
呆気なさ過ぎる。
しかし通信を繋げても、聞こえてくるのはブリタニア軍の勝利の雄叫びだけ。
こちら側の不利という情報は全くない。
『どうしますか?
我々も本体と合流を?』
「いや、ちょっと待ってくれ。」
なにか気になる。
なんだ、この呆気なさは。
いや、まてよ………。
このゲットー、住民が少なくないか?
情報収集用カメラ"ファクトスフィア"を使いゲットーの建物内などを探る。
しかし住民は人っ子一人見当たらない。
もしかして、これって……………。
――――――瞬間、大地が震えた。
「な、なんだ!?」
その答えは直ぐに出た。
大爆発、それはもうビルが軽く吹っ飛ぶ大爆発が起こったのだ。
これほどの爆発を起こせる代物と言えば、このエリア11で思いつくものは。
「まさか、流体サクラダイトを爆発させたのか!?」
その問いに答える形で現れたのは、日本解放戦線の無頼の群れだった。
……………やばい、これ死んだかも。
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