―――月月火水木金金。
エリア11となる前の日本では、太平洋戦争中このような言葉が流行したそうだ。
なんでも戦争中なのだから休まず働け的な意味だとか。
よく分からないが、休み無しで働くのは御免被る。俺はそれほど国に魂を捧げてはいない。
(あの日から俺はずっと望んでいたのかもしれない。
あらゆる仕事と軍務… そう、戦いの前には休養が必要だ。
そのために心が邪魔になるのなら消し去ってしまえばいい。
そうとも…俺はもう休むしかない…!!)
だから
「久し振りの休暇だぜ!いえーーーい。」
おっといけない。人が見てる。
俺とした事が嬉しくて道端で叫んでしまった。
「だが、ホントに長かった……!
もう人事局に訴えようかと思ったよ。」
思い出される仕事の日々。
襲ってくるテロリストと大量の書類。
そして暑苦しいジェレミア卿………。
それらから解放されて今!俺は!
こうして休暇を満喫しているッ!
「さて………なにしよう?」
そう、興奮の余り全力で外へと着てみたが、生憎俺に一緒に遊ぶような友人はいない。
やべっ…また涙が…。
ヴィレッタ卿を誘ってみたのだが、軍務があるとかいって断られた。
また…涙が…。
客観的にみれば、灰色の青春送ってるよな、俺。
軍人になんて成らなければよかったかもしれない。
「…………ホント、どうしよう?」
トウキョウ租界、男一人。
………中々、寂しいものがある。
以前は悪友とはいえ友人のルキアーノが、街に遊びに行くときは一緒だったので、一人で遊ぶというのは慣れてない。
「ちょっと、君。大丈夫?」
「ほへ?」
うっかり"ほへ"なんてマヌケな声を出してしまった。
おいおい初対面の人に"ほへ"はないだろ、俺!
しかしそんな自分自身に対する怒りは、目の前に聳えるモノを見た瞬間に吹っ飛んだ。
その胸、正にメロンの如し。
ああ、そうだ。
俺はこの胸に出会う為に今日、休暇をもらったんだ。
フフフフフ、アハハハハハハハハハハハ!!
最高に「ハイ」ってやつだぁああああああああああああ!!!
「ほ、本当に大丈夫ですか!?」
むむっ!
いかん、いかん。
俺とした事がつい自分の世界に入ってしまっていた。
「ええ、問題ありません。」
シャキッとそう返す。
こういうのは第一印象が大事だ。
服とか乱れてないかな……?
「ならいいですけど……。
どうかされたんですか?
随分と悩んでいたようですけど。」
「ええ、実は久し振りに休暇が貰えたのでトウキョウ租界で遊ぼうと思ったのですが………。
何分、まだ此処に来て間もないので途方にくれていたのですよ。」
ナイス、良い訳だ俺!
流石に『遊びに来たはいいが、友達いなくて困ってました』
とは格好悪くて言えない。
「そう。なら私が案内してあげようか?
租界、分からないんでしょ。」
「おおっ!いいのですか!」
まさかこんなに上手くナンパ成功するとは……。
この前も一回だけ声をかけたら一発OKだったし、もしかして俺ってナンパの才能有り?
いや、ないな。
現にヴィレッタ卿は何回誘っても断られてばっかだし。
「それじゃあ、何処へ行く?」
「そうですね―――――――――――――」
結局、俺は具体的な行き先を、全て彼女任せにする事になってしまう。
出会った女性、ミレイ・アッシュフォードはノリが良く、俺をショッピングスモールやらゲームセンターやらに連れ回してくれた。
貴族として余りそのような物に触れる機会が少なかったので、行くところはどれも新鮮で面白かった。
そして、最後にやって来たのは―――――――――――。
「ここって、学校?」
「そう、私が生徒会長を務めるアッシュフォード学園よ!」
「アッシュフォード?
というと、もしや……。」
「そう、この学校。
私の祖父が創ったのよ。」
思い出したぞ。
アッシュフォードという姓、どこかで聞いた事があると思った。
嘗てアッシュフォード家は、マリアンヌ后妃とその子息(ルルーシュとナナリー)の最大の支援貴族にして、マリアンヌ様と共に第三世代KMFガニメデの開発を行っていた。
しかしマリアンヌ様は暗殺されルルーシュ達も日本へ留学という名目で人質に送られると、アッシュフォードの没落が始まる。
開発していたガニメデは次期主力KMF争いから脱落し、その他の企業も失敗。
爵位は没収され、今では学園経営でなんとか体裁を保っていると聞いたが……。
「そっか。……いい学校なのか?」
「勿論よ!なんだったら貴方も入学してみる?
熱烈な歓迎をするわよ。」
「ははっ。気持ちだけ受け取っておくよ。
年齢は兎も角、軍務を放り出して学園生活を洒落込む訳にもいかないでしょう。」
もう直ぐ日が沈むな。
……そろそろ、帰らないと。
「それじゃあ。また。
今日は楽しかったですよ、ミレイさん。」
「ええ、私も今日は楽しかったわ。またね。」
しかし、学校か。
もしいけたら、面白いだろうな。
俺は手を振って、今日出会った女性。ミレイ・アッシュフォードと別れた。
SIDE:ミレイ
私がふらっと街に行くと、偶然面白い子に出会った。
ブリタニア人らしい金髪の男性、いや、もしかしたら少年と表記するほうが正解かもしれない。
たぶん、年は同じ生徒会のルルーシュやリヴァルと同い年くらいだろう。
だが二人よりかは、筋肉質でガッチリしている。
何かスポーツでもやっているのだろうか?
何やら、その人は頭を抱えて悩んでいるようで、思わず声を掛けてしまった。
普通なら、私も見知らぬ相手に対し少なからずは警戒心を持つのだが、その少年?はどことなく放って置けない雰囲気をもっていたのだ。
「ちょっと、君。大丈夫?」
「ほへ?」
思わず噴出しそうになる。
いきなりマヌケに口を空けて"ほへ"なんて言うとは思わなかったのだ。
だが笑い出しそうになったのも束の間。
少年(仮)は苦しそうに身を捩られながら呻き始めた。
「ほ、本当に大丈夫ですか!?」
つい大声を出してしまう。
もし病気とかだったらどうしようか。
確か携帯は持っていた筈だが。
「ええ、問題ありません。」
幸い病気ではなかったようで、シャキッとそう返答する少年。
「ならいいですけど……。
どうかされたんですか?
随分と悩んでいたようですけど。」
「ええ、実は久し振りに休暇が貰えたのでトウキョウ租界で遊ぼうと思ったのですが………。
何分、まだ此処に来て間もないので途方にくれていたのですよ。」
なんだ、そんな事か。
ほっとした私は、自分でも驚くほど積極的な事を言ってしまった。
「そう。なら私が案内してあげようか?
租界、分からないんでしょ。」
「おおっ!いいのですか!」
まさか即答とは。
仕方ない、こちらから誘ったのだから案内しなくてはならない。
幸い今日は予定もないし。
「それじゃあ、何処へ行く?」
「そうですね―――――――――――――」
結局、私があちこち連れまわす事になった。
驚いたのは彼の名前を聞いた時だった。
レナード・エニアグラム。
つまりナイトオブナイン、ノネット・エニアグラム卿の弟にして、ブリタニア有数の大貴族であるエニアグラム家の長男。
騎士達の憧れであるラウンズを排出したエニアグラム家は軍部において強い発言力がある。
それは名家とはいえ没落したアッシュフォード家とは比べ物にならない。
そんな大貴族の長男にこんな所で会うとは………色んな意味で驚きだ。
しかし大貴族の子息だからといって、レナードが高飛車かというとそうでもない。
寧ろ、ゲームセンターなどの庶民的遊びを見て、目を輝かせていた。
ついつい私の方も連れまわしてしまい気付けば夕方になってしまっていた。
「ここって、学校?」
気が付いたら、ここに来ていた。
「そう、私が生徒会長を務めるアッシュフォード学園よ!」
自信満々に宣言する。
何で最後にここに連れてきたのかよく分からないが、こういう事は大事だ。
「アッシュフォード?
というと、もしや……。」
「そう、この学校。
私の祖父が創ったのよ。」
尤も、今ではアッシュフォードの大事な大事な生命線。
この上学園経営まで失敗したら、アッシュフォードは完全に没落する。
「そっか。……いい学校なのか?」
「勿論よ!なんだったら貴方も入学してみる?
熱烈な歓迎をするわよ。」
自分で言ってみて、漸く気付いた。
そう、私はレナードを、学園に入れたかったのだ。
彼が入ればもっと楽しい学園生活になると思って――――――。
「ははっ。気持ちだけ受け取っておくよ。
年齢は兎も角、軍務を放り出して学園生活を洒落込む訳にもいかないでしょう。」
だが彼の返答は拒否だった。
当然だ。彼は軍人なのだ。
軍の仕事を放り出すわけにいかない。
もう直ぐ日が沈む。
……そろそろ、帰らないと。
「それじゃあ。また。
今日は楽しかったですよ、ミレイさん。」
「ええ、私も今日は楽しかったわ。またね。」
そう言って別れる。
レナードの背中はだんだんと小さくなっていった。
「会長。」
「うん―――――――ルルーシュ。どうしたの?」
振り返るとそこには、ルルーシュがいた。
何時の間に此処に居たのだろうか?
私としたことが全然気付かなかった。
「誰と話してたんです?
見たところ男性のようですが?」
「うぅんとねぇ…………秘密にしとこ。」
決めた、今、決めた。
「秘密?……また、何か企んでるんじゃないでしょうね。」
「だ・か・ら。秘密!」
そう、これは秘密。
そして彼が何時の日か――――そんな奇跡はないと思うけど――――この学園に来たら盛大に秘密をばらそう。
数日後。
アッシュフォード学園では、生徒会長に恋人発覚!?
という噂が流れる事になる。
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