―――認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを。
ちょっと待て。
作者の突発的な思いつきで、話の最初に格言や名言などを入れる慣習が出来たのは分かる。
だが、これはないんじゃないか?
名言っちゃ名言だけど、アニメの名言だぞ。
しかもシャア・アズ○ブル。赤い○星。
なに?細かい事は気にするな?
……………ま、いいか。
SIDE:レナード
「おはよう!新入り君!」
俺の目の前には、サングラスを付け、ライオンが描かれたシャツにアクセサリをジャラジャラつけている見るからに怪しい男がいた。
ラウンズが使用するインバル宮の近くで……。
素早く状況を把握。
この男の正体は?
変態。
この男の目的は?
変態。
この男の性根は?
変態。
この男の頭脳は?
変態。
…………結論。
変態には正義の裁きを。
「衛兵!不審者がいるぞーーーーーーーーーーーーッ!」
「ええぇっ!」
報告を聞いてやって来る衛兵。
衛兵は変態の姿を確認すると、
「レナード卿、御下がりください!
この男は我々が!」
「よし、任せた!」
「イエス、マイ・ロード!」
襲い掛かる衛兵。
しかし驚くべきことに変態は強かった。
取り押さえようと迫る衛兵を軽く投げ飛ばし、或いは受け流し、そしてこちらに迫ってくる。
まさか………狙いは、俺?
じゃあなんだ。
こいつが噂に聞くゲ○ってやつなのか!?
ふざけるな!誰がおホ○達になんてなるか!
自分自身の純潔の危機を察した俺は、変態に向かって飛び蹴りを喰らわす。
倒れる変態。
「今だ!その男を取り押さえろっ!全力で!」
「イエス、マイ・ロード!」
衛兵達が倒れた変態を押さえ縛り上げる。
途中で「俺は変態じゃない〜」みたいな声が聞こえたような気がしなくもないが、どうでもいい。
あんな格好をしてインバル宮の近くをうろついている奴の誰が変態じゃないのだ。
…………ちなみに。
実は、その変態がナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグだと知ったのは、衛兵の一人がサングラスの下の顔を見た時であった。
「いや〜、まさかいきなり変態扱いされるとは思わなかった。」
「ジノの格好は誰がどう見ても変態。」
「おっ、キツイこと言うなぁ、アーニャ。」
どうやら、この男は本当にナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグらしい。
確かヴァインベルグ家の四男だか三男だと聞いた事がある。
ボンボン気質とでも言うのだろうか。
「それで君が新入り、レナード・エニアグラムだったけ?
よろしく、私はジノ・ヴァインベルグ。」
「こちらこそ。
お噂はかねがね。レナード・エニアグラムだ。
宜しく頼むよ、ヴァインベルグ卿。」
「かーっ!硬い!硬すぎるぞ!
ラウンズには番号の順番はあっても身分の上下はないんだぜ?
っていうか、番号の順番だってそっちが上じゃないか。
尤もバルトシュタイン卿は例外だけどな。」
悪戯っぽく笑うジノ。
ビスマルク・バルトシュタイン、ナイトオブラウンズの一角にして帝国最強の騎士ナイトオブワン。
血の紋章事件で彼以外のラウンズが全滅した事もあって、たった一人でラウンズの称号を守り続けた豪傑にして武人。
帝国における大功労者。
彼がいなければ、今のブリタニアは存在しなかっただろう。
確かに彼と他のラウンズでは、その功績にも実績にも遠く及ばない。
そんな偉人に対して俺は「嫁の貰い手がいない、強面のおっさん」呼ばわりしたのも懐かしい想い出だ。
「というかさ。」
ジノが徐に言った。
「レナードには"ブリタニアの魔人"って異名があるじゃないか?」
「まあな。俺自身、一体何時の間にそんな呼ばれ方をされていなかったか分からないんだけど。」
「あと、ルキアーノの野郎も"ブリタニアの吸血鬼"ってやつがあるよな。」
ルキアーノの奴。
ジノに何かしたのか?
言葉に少し棘があるぞ。
俺が疑問に思ってると、モニカが「ジノは御前試合でルキアーノに負けたの」と教えてくれた。
成る程、ルキアーノもあんな性格だし、ジノとは相性が悪いかもしれない。
「ビスマルクのおっさん………じゃなかった、バルトシュタイン卿にはそれこそ"帝国最強"っていう通り名があるし、仮にもラウンズの三席に座る俺も、異名の一つくらい持っておこうかな〜っと。」
「ようするに、俺達に格好良い渾名を考えてくれ、と。
そう言いたいのか、ジノは?」
「おおっ!分かってるじゃないか、レナード。」
嫌な予想が的中してしまったらしい。
隣に居るモニカも面倒くさそうな顔をしている。
アーニャに到っては相変わらずだ。
まあ特に今は仕事やら何やらもないし、付き合ってやるか。
「それでジノとしては、どんな異名がいいんだ?」
「そうだな。やっぱこう……聞いただけで相手が震え上がるような感じが。」
「赤い○星みたいな?」
「おう!」
メモ帳に『赤い彗○』とメモっとく。
しかし赤○彗星か〜。ならこんなのはどうだろうか。
「ジノの機体の色ってなんだ?」
「トリコロールだけど。」
「それじゃあ、トリコロールの彗星なんてどうだ?
赤い○星に匹敵する格好良さだぞ。」
「いや、格好悪いだろ、それ。」
なんかジノにつっこまれた。
やっぱり適当過ぎて駄目か。
「なら赤い○星繋がりで"先読みのジノ"なんていうのはどうかしら?」
「駄目。ジノ、そこまで頭が良くない。」
「それじゃあ、"女殺しのジノ"はどうだ?
一応ルックスは良いし、これなら。」
「同感。でも、戦場の異名としては失格。」
「変態の彗星?」
「いや戦場じゃなくて日常生活で恐れられるんじゃないか、その異名?」
「ん〜っ。ジノは金髪だから、黄金の彗星、とか?」
モニカの提案した異名を聞いたジノが、顔を明るくさせる。
「いいな、それ。
それじゃあこれに……」
「ちなみにブリタニア語に訳すとゴールドコメット。」
「うん、彗星から一旦離れようか。」
アーニャからの的確な指摘に、ジノが彗星止め発言をした。
仕方ないじゃないか、彗星って英語にするとコメットなんだから。
「たっく面倒だな。
いっそのこと、ジノ・ヴァインベルグをもじって、血のヴァインベルグなんてどうだ?」
「………………………」
なんだ?
ジノが固まってる。
何か可笑しな事でも言っただろうか。
「それだよ!」
こうしてジノの暫定的渾名が『血のヴァインベルグ』に決まった。…………。
ただこの渾名で呼ぶ物は、この世で唯一人ジノしかいなかったが。
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