とある魔術の未元物質
SCHOOL122 現実を右手に込めて
―――富者の快楽は貧者の涙によってもたらされる。
貧富の差。それは何処の世界にも依然として存在しているものだ。そう現実世界においても例外ではない。例えば日本人や欧米人が肥満などの問題で苦しんでいる時、発展途上国の子供達は明日の食事がなくて苦しんでいる。人は平等ではない。悲しいほどに。
一方通行という格上との戦いは決して無駄ではなかった。
失ったものも大きかったが、新たなる力を――――――いや、今までも内包していたものの正体不明で扱いきれぬ力を扱えるようにしてくれた。
普段、垣根が超能力を最大出力で行使しようとした際に何故か背中から生えてしまう天使のような純白の翼。
しかし今、垣根の背中から噴出するように生えているのは白翼ではなく、目を焼くほどに輝きを放つ光翼だった。
ロシアでのアックアとの戦いでは、垣根自身の意識は朦朧としていて自分でも何をしているのか認識できていなかった。だが今は違う。
この光翼の莫大なエネルギーを掌握している感触がある。
自由自在に操れる自信がある。
「nvianiongiowinagaongeiojewgnajigjaijenngangioen」
垣根は理解不能な言語を発音する。
人間に理解出来なくて当然だ。
これは本来天上世界に住まう○○が使うべき言語。人間より上に位置する上位次元の存在の言語を通常の人間が理解できる筈がない。
それが例え神の子の身体的特徴をもつ『聖人』であろうとも。
「な、何を言っているんですかっ!」
神裂が化け物を見るような目で垣根を見る。
いや、その例えには語弊があった。
化け物のような、ではない。真実として垣根帝督は化け物だった。普通の人間にはどう足掻こうと打倒不可能な天才。
英雄を倒したのは同じ英雄か民衆だった。そして化け物を倒したのは何時だって人間だった。
垣根帝督は『英雄』ではなく『怪物』。ならば垣根帝督を打倒する者とは、
「……それがお前の切り札か、垣根」
そしてヒーローはいた。
誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者。彼の名は上条当麻。史実において『禁書目録』の傍らに立っていただろう少年だ。
ある者は言う。ヒーローとは強きをくじき弱きを救うものだと。またある者は言う。ヒーローとは悪い奴を倒す者だと。またまたある者は言う。ヒーローとは常に前向きに前進し続ける者だと。
ヒーローの種類は様々だ。
しかし、もしヒーローになる最低条件というものがあるのだとしたら、それは『未来へ進む意志』がある事なのではないだろうか。
意志すらないものに、何かを為すことは出来ない。
「――――――怯えはねえようだな。じゃあ、最終チェックだ。テメエの『幻想殺し』は神のシステムだろうと殺せるらしいが、ここまでデカい力を消せるのかどうか……見せて貰おうじゃねえか!」
光翼が垣根の意を受け上条当麻へと向かってく。
上条は何時ものように右手を突きだし光翼を消そうとするが、
「う、うぉおおお!」
『幻想殺し』に触れても光翼は消え去らない。だが完全に効いてない訳ではないらしく、光翼は上条の幻想殺しによって押しとどめられていた。しかし上条の右腕は光翼を抑えているせいで、バチバチと傷ついていきこのままでは右手首が圧し折れそうだった。
『幻想殺し』のキャパティティを超えたエネルギーに、さしもの右手も完全には消せないようだ。
「イノケンティウス! 垣根帝督を潰せっ!」
ステイルが従える炎の魔人が上条への攻撃を止めさせるべく垣根に突進してくる。
魔術や破壊力云々以前に、イノケンティウスは摂氏3000℃の炎の塊だ。ただの人間が触れれば燃えるを通り越して溶解するだろう。しかしながら、垣根はただの人間のレベルを嗤いたくなる程に超越していた。
イノケンティウスの対処法は頭の中にしっかりと残っている。
「第11項43、プランD――――発動」
小さく垣根は呟く。
上条には理解出来なかっただろうが、魔術師である神裂とステイルは気付いた。それが魔術の詠唱だということを。
垣根の小さな声に反応して、ポケットに入っている機械仕掛けの魔術礼装が数瞬のうちにディスプレイの画面に絵やルーン、数字を羅列する。
超能力と魔術、二つの異能を扱う異端が垣根帝督ならば。
科学技術と魔術式、二つの法則を融合したものがこの魔術礼装だった。
イノケンティウスが垣根のもとに到達する前に、地面に炎が奔る。咄嗟に神裂が反対魔術を行使するが、炎がステイルや上条などに危害を与えない様にするのが精一杯だった。
地面を走る炎はあっさりと周囲にあるルーンを焼き尽くし、イノケンティウスという魔人を消し去ってしまった。
「魔術を扱う、超能力者か。後方のアックアとかいうゴリラに話だけは聞いていたけど、実際に目にするとなると悪夢以外のなにものでもない。しかも、それが学園都市にも七人しかいない超能力者ともなると猶更だ。――――なにより、垣根帝督。君が扱っているのは」
「ああ、『禁書目録』を参考にしている。気に喰わねえが、術式に合わせて最適な術式を使うには便利な礼装だったからな。さーて…………んっ」
ふとした違和感。
自分の体が引っ張られているような感覚を覚えた。
何を馬鹿な。自分の両手も両足も、頭にだって誰も触れてはいない。引っ張る者なんている訳がないのだ。
だというのに、これは。
「まさか……貴様ッ!」
引っ張っているのは足でも手でもない。
翼だ。光り輝く翼を引っ張っている者がいる。
「へへっ、殺せねえなら殺せねえで……やりようはあるみてえだな」
上条が不敵に笑う。
そう。幻想殺しをもってしても光翼のエネルギーを完全に消し去ることは不可能だった。それならば逆転の発想だ。消し去れないことを不利だと思うのではなく、有利だと受け取ればいい。
消せない事を利用すればいいのだ。
上条はその右手で光翼を掴んでいた。手が傷つくのもお構いなしに強く掴んでいた。
「うぉ!」
上条がそのまま翼を引っ張り、垣根を地面に叩きつける。
突然の出来事に垣根の反応が一手遅れた。その間に上条当麻は自分自身の射程距離に垣根を捕捉していた。
上条にとっての武器は『右手』。つまり上条当麻の射程距離とは右手の届く範囲に他ならない。
「俺はお前が今までどんな思いで世界と戦ってきたのかは知らねえよ。だから俺は偉そうな事は言えねえ。だけどな、あの子は……インデックスは苦しんでたんだよ! お前のことを止めたくて、お前にクーデターなんて馬鹿な真似をして欲しくなくて! あんな小さい子が、クーデター最中の国なんて危険な場所を一人で歩いて、俺達の所まで来たんだよ! お前を、垣根帝督を止めて欲しいってなぁ! これは俺のものじゃねえ。インデックスっていう一人の女の子が死ぬもの狂いで叫んだ願いだ。この現実を、噛みしめやがれぇぇえええええええええええええ!」
上条の右手が垣根の顔面に突き刺さる。
芯まで響く一撃だった。
そして――――耳元に第一王女リメリアの声が響き渡ってきた。
本日二度目のそげぶ。しかし垣根は死なない。垣根は何度でも立ち上がるさ! アックアとかにぼこぼこにされまくった垣根のタフネスさは既に超一級。腕がもげようと戦い続けられる……かも。
さて、それでは本題に入ります。先ずは今日の日付を見て下さい。その後に「とある魔術の未元物質」の初掲載日を見て下さい。……分かりましたか? 後四日、6月5日をもって「とある魔術の未元物質」は一周年を迎えます。これまでの道のりは長かった。まだ完結してないけど。
折角の一周年なのでこういう機会でも出来ない様なイベントをやろうと思います。そのものづばり……人気投票です。よく主人公が一位から転落する魔の投票、キャラを人気と不人気に色分けする戦場、それが人気投票です。
投票の手順は感想欄の一番下にキャラの名前を書いて下さい。御一人三票まで。一人に三票全てを投票するのも有り。例をあげると、垣根、オリアナ、アレイスターとやるのもアレイスター×3とやるのも有りということです。
そしてここからが本題なのですが、人気投票で上位七位に入ったキャラ全ての短編を書きます。上位七人全ての短編を書きます。大事なことなので二度言いました。
流れとしては6月5日の一周年記念時に結果発表、結果が分かり次第、短編執筆開始となります。
七位までと中途半端なのは超能力者の序列に肖りました。
それでは今後とも宜しくお願いします。
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