俺はどこかの、建物の屋上に立っていた。俺の視線の先にはフェンスに寄りかかった女が見える。


「新しい世界が生まれるためには、世界は一度死ななくてはならないの。」


(これは夢だ。)


女の顔を見てとっさにそう思った・・・いや・・・そう思いたかった。

それは、終わってしまったはずのあの世界の時の光景だから。

いつも笑顔を絶やさずみんなに好かれていた人、だけど今は悲しげな顔をして静かに東京を見下ろしている。


「祐子先生?」


自分の口が知らない間に声を発している、ドラマの筋書きをただ淡々とこなすように。


(これは夢だ、現実であるはずが無い・・・・だってあの世界は・・・・祐子先生は)


冷静な頭とは裏腹に鼓動がどんどん早くなっていく。


「分ってくれ、とは言わないわ・・・・・ただ、知っておいて。このままでは世界はいずれ滅びてしまう、人々が力というものを失ってしまったから・・・・・ こうするしかなかったの。」


黒いイナズマが各所に落ちて時が止まったように何も動かなくなる、そして地平線がせり上がり内向きな空間を形成していく。

先生が振り向いて悲しそうな目で俺を見る。


(それは違う!あの世界じゃ悲しみしか生まれない!それじゃいけないんだ!)


夢である事も忘れて、叫ぼうとするが身体は固まったように動こうとしない。


「今は分らないかもしれない・・・・・約束して。この世界を生き延びて私に会いに来て、その時に全てを話すわ。」


先生の周りが光を放ち始め、身体が消えていく。


(行っちゃ駄目だ祐子先生!)


身体の自由が戻り先生に駆け寄り手を伸ばす。

あと少しで先生に届く!そう思ったとき辺りが暗くなり夢が終わる。

意識が覚醒していき目を開いてみると、見たことの無い天井だった。



「・・・・う・・・あ・・・・夢・・・だったのか・・・」



震える右手を抱え込みながら、外の風景に目をやる。



「・・・あの世界はもう無い・・・先生も居ない・・・・」



右手には先生に触れた感触が残っているような気がした。
















修羅から人へ〜第三話〜


『謎多き隣人』














あるビルの一室で携帯が鳴り響く、サングラスをかけた男が携帯を取ると相手は流暢な日本語で話し始める。


『フィネガンさん仕事を頼まれてほしいのですが。』

「ゲイツか。ふっ、科学者風情が何を言うかと思えば、貴様にはあの玩具があるだろう?」

『・・・・・その玩具の事で少し調査してもらいたい事があるんですよ。』

「なにがあった。」

『ネルフ本部に進入する工作員に試作品を渡したのですが・・・・・工作員達は全滅、例のシステムからの発信も途絶えてしまいました。』

「ふん、所詮は機械と言うわけだな。」

『いえ、試作品とはいえ、あれは完成型にかなり近い精度を持っていますから自然に壊れると言う事はありえません。』

「では、人為的に壊されたと言うのか?」

『ええ、それもかなり強力なサマナーか、クズノハが関っているのか定かではありませんが・・・・』



フィネガンの気配が変わり、獣のような荒々しい殺気を放ち始める。



「それで日本に居る俺に頼んだのか。」

『・・・・受けていただけるでしょうか?・・・』

「いいだろう、だが俺のやり方に口を挟まないで貰おう。」

『わかりました・・・・・ああ、それともう一つ、ネルフにゼーレの工作員が入っていますのでご自由に使ってください。名前は・・・・・・です。』

「了解した」



携帯を切ると腕の部分に付いているCOMPと呼ばれる特殊なコンピューターを起動させる。



「サマナーか・・・・俺を失望させてくれるなよ。」

















リツコがカズヤの検診をしながら呆れた顔をしている。


「まったく、便利な体ね。・・・・・運ばれてきたときは重傷だったのに三日と経たずに治るなんて医者泣かせもいいとこだわ。」

「まぁ、それだけが取り柄みたいなもんだからな。大概の怪我ならすぐ治って助かる。」


こめかみに少し青筋を浮かべながらリツコが笑顔になる。


「人がどれだけ心配したと思っているのかしら?あんまりそんな事ばっかりやってるとホルマリンに漬けるわよ。」

「は、はは、それは勘弁だな。・・・・・ところで使徒とか言う生物はどうなったんだ?」


カルテを書き込む手を止め目だけをカズヤに向け答える。


「シンジ君とレイが何とか殲滅したわ。・・・・・上の被害は甚大だけどね。」

「・・・・・ゴメン、俺が油断しなければもっと被害を減らせたかもしれないのにな。」


はぁ、とため息をつきながらカルテに視線を戻しカズヤに言う。


「なにいってるの、あなたは良くやってくれてるわ。これがネルフ職員だったら今頃アスカは国外か天国にいるわよ。」

「ありがとう・・・・で、その惣流はどうしてる?」

「静かなものよ、最初はあれだけパニックを起こしてたのに、今は不気味なくらい静かね。・・・・まぁ覚悟しておく事ね。」

「やっぱり?・・・・・ごまかせると思う?」

「さぁ、・・・・・ところであなたにあれだけの傷を負わせるなんて・・・・何があったのいったい?」

「・・・・俺にも良くは分らない・・・ただ、突然悪魔が出た。殺したはずの人間が悪魔になったとしか言いようが無いな。」

「そんなことがあったの・・・・・この件は他言無用よ、私のほうでも調べてみるわ。」

「ああ、頼む。・・・・・じゃ、俺は帰るよ。」

「まぁ、いたって健康体なんだから・・・・いいでしょう。ところであなたの正式な家が決まったわ、コンフォートって言うマンションよ今日は護衛はいいから 生活用品をそろえてらっしゃい。」

「わかった、じゃ俺は行くよ姉さん。」

「ええ明日はネルフに直接来てくれればいいから。」

「わかった。」


いつもの黒いスーツを着て病室を出る。


「惣流か・・・・・・やれやれ、面倒だなぁ。」

















「まぁ、こんなもんかな。」


マンションに家具を一式揃え終わり一息ついているとインターホンが鳴る。

ほいほいといった感じでドアを開くとアスカが不気味なほどの笑顔で立っている。


「そ、惣流?なんで?」

「あ〜ら、お隣さんが引っ越してきたのになかなか挨拶に来ないもんだから、こちらから伺ったんですのよ。」


「ほほほ」というジェスチャーをしながらカズヤをジト目でみている。


「と、となり?」

「そ〜ゆ〜こと、いろいろ聞きたいことがあるから勝手に上がらせてもらうわよ。」


そう言いながらさっさと靴を脱いで部屋の中に入って行ってしまう。


「はーまたこれは殺風景な部屋ねぇ。」


新しい家具しかない辺りを見回しながらカズヤに話しかける。


「だから来たばっかだって言ってるだろ。」

「ここに来る前の荷物はどうしたのよ。」

「あー、まぁその辺も含めて説明してやるからそこらに座ってろ、お茶入れて来るから。」


少しムッとしたアスカだったが素直に従ってソファーに座ってテレビをつける。

しかしテレビの内容なんかまったく入ってくる事はなくカズヤがどんな話をしてくるかということしか頭に無い。

しばらくするとカズヤがマグカップを二つ持って来て片方をアスカの前に置く。

ソファーに腰掛けそれを一口飲むとアスカに向かって話し始める。


「一言で言うと俺はこの世界の人間じゃない、いや・・・・・正確には人間でもない。」

「はぁ!?馬鹿にしてんのあんた?」

「はぁ〜、やっぱりそうだよなぁ。」

「真面目に話しなさいよ!次くだらないこと言ったら殴るわよ。」

「真面目な話し・・・・・悪魔なんだよね。・・・・・あたっ!」


アスカは拳を震わせながら思いっきりこっちを睨んでくる。


「ちょっと待てって、今証拠見せるから。」


カズヤは立ち上がるとリビングの端に行きアスカの方に向き直って呟き始める。


「こっちでも呼べるかな?・・・・・こい!ケルベロス!!」


カズヤの周りに青い光が浮かび上がり一箇所に集まって獣の形を取り始める。




「グルゥ、ヒサシブリダナ御主人。ナニカヨウカ?」




その獣は身体に鋼のような白い毛をたずさえ地鳴りのような声で人語を喋る。


「いやな、俺が悪魔だと言ってるんだがその娘が信じてくれなくてな。」


ケルベロスが振り向くとさっきの格好のまま口をあけて固まっているアスカがいた。


「ホウ、人間ジャナイカ。ヒサビサニミタナ。」


ガウッと小さく吼えるとアスカの身体がビクッと震えて叫びだす。


「わっ、分ったから早く戻してよ!」

「くくっ、だってよ。悪かったな戻っていいぞケルベロス。」

「ベツニカマワン、ツギニキタトキハナニカ喰ワセロヨ。」


少し喉を鳴らせて再び光の粒へと還っていく。その光が完全に消えるのをみるとアスカは脱力してテーブルに突っ伏す。


「さて、これで分ってくれたかな?」

「・・・・・分ったから続きお願い。」

「よろしい、・・・・・元々俺は人間だったんだけど、ある事件が起きて悪魔になったんだ・・・・いや・・・・ならざるをえなかった。・・・・その事件は東 京受胎といってこの世界で惣流達が使徒と戦う理由・・・・・サードインパクトみたいな事が起こったんだ。一部を除いた全ての人は消えて・・・・その中で生 存競争が始まった。・・・・人が人として生きていけない・・・そんな処だった。」


今度は真剣な顔で文句を言わず食い入るようにカズヤをみている。


「まぁ、その世界でややあっていつの間にかこの世界にいて、今は姉さんにいろいろ世話してもらってる。こんなもんかな。」


しばらく神妙な顔で聞いていたアスカだったがしばらく考えて口を開く。


「・・・・リツコはアンタの正体知ってるの?」

「ああ、と言うか姉さん以外じゃ知ってるのは惣流だけだな。」

「私が誰かにそのことを話すとは思わないの?もっとましな嘘なんてたくさんあるでしょ。」

「・・・・そうだなぁ、誰が信じるとは思わないし、それにさっきの顔見たら惣流なら喋らないと思ってな。」

「ふ〜ん、まぁいいわ。ありがと・・・・ホントの事話してくれて、私・・・・もう行くわ。」


と言って玄関に歩いていくアスカに声をかける。


「・・・・・ありがとな惣流。」


アスカは足を止めて振り返らずに答える。


「アスカでいいわよ・・・・・惣流なんて呼ばれるのはなんか合わないわ。・・・そうだ・・・今日ミサトの昇進祝いがあるのよ、あんたも来なさいよ。その代 わり買い出し手伝う事・・・・いいわね!」


カズヤは笑いながら「りょーかい」と答えると満足したように部屋を出て行く。


(少しひねくれてるけどいい娘じゃないか・・・・まったく、年下に気を使われてどうすんだよ。)


少しネガティブな事を考えていたがその顔は笑顔だった。



















俺は両手にジュースやらビールやらスナックの入った袋を持って前を歩いている少女達についていく、

重さはたいした事無いがいい加減退屈だ。


「大丈夫ですか?私も持ちましょうか?」

「ははは、大丈夫だよこの程度なら。」

「そうよヒカリ、こいつは力だけが取り柄みたいな奴なんだから。」


このやろう・・・ケルベロスを見て思いっきり腰抜かしてたくせに生意気な・・・・この、俺に気を遣ってくれてる娘は洞木ヒカリ、アスカの友人だ。シンジ君 並に細かいとこに気が行く実にいい娘だ。

まぁ、最初にアスカの隣にいた時は「不潔よ〜!!」と叫んで大変だったが話してみれば真面目を絵に描いたようないい娘だ。保護対象にも実に見習ってほしい と思う。



ゲシッ!!



「あたっ!いきなりなにすんだお前は!」

「あんたの顔見てるとなんかバカにされてる気がすんのよ!」


とか言っていきなり蹴ってくる・・・・・実に嘆かわしい。

しばらくそんなやり取りをしながら歩いていくとジャージの少年とメガネを掛けた少年が洞木さんに話しかけてきた。


「い、いいんちょ、碇んとこ行くんか?う、後ろん人はどちらさんや?」


妙にどもったり視線が泳いでたり動揺しすぎだな、原因はやっぱ俺か、この容姿も考え物だな・・・店に入っても店員の態度がおかしいし・・・・・はぁ、まっ たく。


「あっこの人は赤木カズヤさん、アスカ達の護衛の人だって。」

「護衛と言うよりもあたしの召使と思っていいわよ、ねぇカ・ズ・ヤ・さん。」


くっこいつ前より図々しくなりやがって。もう一回呼んでやろうか。


「ワ、ワシは、いや僕は鈴原トウジいいますっ、よろしゅうお願いします!」

「じ、自分は相田ケンスケといいます!よろしくお願いします!」


二人は兵隊のようにビシッと背筋を伸ばして自己紹介をしてくる。・・・はっきり行って異様だ。


「あ、ああよろしく、そんなに硬くならなくてもいいよ、かえってやり辛いしな。」


そう言うとトウジくんは俺の手を見て叫ぶ。


「碇んとこの荷物ですよね?ワシが持ちますさかい、いや・・・持たせて下さい!」


あまりにも熱く訴えてくるので片方を「重いよ。」といって渡してやる。


「大丈夫ですわ。ワシ、これでも力仕事には慣れてますから・・・・うおっ!!」


予想どうり大袋に缶が目いっぱい入った袋が重力に従って下に下がる。


「や、やっぱ俺が持つよ重いだろ?」

「だ、大丈夫ですわ、こ、この位へでもありませんわ。」


と言って前に進んでいく、実に熱い漢だ・・・・ぜひ見習ってみたい。

相田君は・・・・・うーん、アスカ達と話しているが被害を受けない程度の絶妙な受け答えだ。一歩引いて醒めてるって感じだな。ま、思春期の中学生てところ かな。

帰り道いろいろ話しながら歩いていきマンションに行く道と高台に行く道との交差点につく。


「あ、悪い。俺ちょっと行くとこあったんだわ、先に帰っててくれるか?」

「相変わらずまぬけねぇ〜とっとと行って早く帰って来なさいよ。」

「分った・・・じゃあな。」


アスカ達と離れ高台に向かう、高台に着くと袋を下ろしタバコに火をつけ振り返る。





「いい加減出て来いよ・・・・・あとを付回すなんて趣味が悪いぜ。」





直後、木々がざわめき大地に影を落としながら一匹のカラスが舞い降りてくる。

そのカラスは首から三つの勾玉を下げて、普通のカラスではありえない三本の足で街灯に止まる。


「我ガ名ハ霊鳥ヤタガラス、赤木カズヤ殿トオ見受ケスルガイカガカナ?」


はっ、見たことも無い悪魔が俺を知ってるとは俺も有名になったもんだな。


「だったら何のようだ?」


俺は目の前の悪魔に向かって殺気をむき出しにする。


「今、貴殿ト争ウ気ハナイ、ワレハ主ノ伝言ヲ伝エニ来タダケダ。」

「伝言だと?」

「左様、明日正午コノ場所ニテ待ツ。来ナイ場合ハ貴様ノ周リノ者ノ命ハ保障シナイ。」

「人質かよ、やってくれるじゃねぇか。・・・・・そいつに言っとけ『手を出したらぶっ殺す!』てな。」

「フフ・・・・イイ目ダ。貴殿ナラバ必ズヤ我ガ主ノ期待ニ添エルダロウ。デワ・・・・・サラバダ。」


悪魔はそう言い残して黒い翼を羽ばたかせ空に飛び立つ。


「はぁ、また面倒なことを・・・・やれやれ。」


タバコをもみ消し袋を持ち上げて来た道を戻っていく。

余計な手間を取らせやがって・・・・まったく。






















「シンちゃーん、お酒の追加おねがーい。」

「あ、ちょっと待っててください、お酒がちょっと切れてるんで買ってきます。」


エプロンをはずして買出しに出て行こうとするシンジをアスカが止める。


「ちょっとまってなさいよ、あいつがそろそろ来るわよ。」

「あいつって・・・・・カズヤさん?」

「そ、荷物持たせといたから待ってれば。」


シンジは溜め息をついてアスカに言う。


「またそんな風にカズヤさんに迷惑かけちゃ駄目だろ。」

「いーのよ、それよりファーストはどうしたのよ。」

「綾波?今日は都合が悪いんだってさ。」

「ふーん。」


その話題に興味を無くしたアスカはヒカリ達の輪に戻っていく。

インターホンが鳴りシンジがパタパタと小走りでドアを開けると大量のビール缶の入った袋を持ったカズヤが立っていた。


「よ、シンジ君遅れてすまんな。」

「そんな事無いですよ、リツコさん達もさっき来たとこですし、どうぞ上がってください。」

「じゃ、お邪魔しまーすと。」


リビングに歩いていくとアスカがブーブーと文句を行ってきた。


「おっそーい!なーにやってたのよ。」

「すまんすまん、ちょっとタバコを買いにな。それより飲み物は何がいい?」

「カズヤくーん、あたしはエビチュ〜。」

「あたしはオレンジジュース。」

「はいはい。」


アスカを軽く受け流し、持ってきた袋から注文されたジュースを探していると後ろから聞き覚えの無い声がかけられる。


「キミがリッちゃんの弟君かい?」


後ろ振り向くと不精髭に長めの髪を後ろで結った男が立っていた。


「そうですけど・・・・あなたは?」


男は人懐っこそうな笑顔で答える。


「俺かい?俺は加持リョウジ、ネルフの監査部をやってるんだ。ま、よろしくな。」

「どうも、赤木カズヤです。」


差し出された手を握り返すと加持は少し声を低くして問いかけてくる。




「キミは本当は何処から来たんだい、旧東京っていうのは嘘だろう?それに・・・・・キミのその不思議な力・・・・到底人が持てる力じゃ無いと思うんだが ね、その刺青が何か関係してるのかい?」



笑顔は崩さないが加持の目は好奇心に溢れていた。そして見ていた者以外知らない事実を聞いてくる。


「リッちゃんは教えてくれないし・・・・できればキミが直接教えてくれないかい?」

「・・・・・姉さんが教えないのなら俺からも言えませんね、それに・・・・・深読みのしすぎですよ。それに・・・・・これはただのタトゥーですよ、俺に特 別な力なんて有りませんし。」

「そう簡単には教えてもらえないか・・・・・ま、気が変わったら教えてくれよ。シンジ君、俺はそろそろ帰ることにするよ、葛城にはよろしく言っといてく れ。」


そう言い残して部屋を出て行くが立ち止まってカズヤに言う。



「ああ、そうだカズヤ君。最近上の街は何やら物騒な事が多いらしい・・・・・・気をつけてくれよ。」





















今日・・・・・新たな使徒が現れた。そいつは衛星軌道上から感情の見えない三つの目で静かに第三新東京、ネルフを見つめていた。体が爆発性の物体で構成さ れているらしく体の一部を切り離し隕石のように落下させてくる。一発目は外れたが徐々に誤差を修正し姉さんと葛城さんの見解ではここに本体ごと落ちて来る らしい。


「日本政府各省に通達ネルフ権限における特別宣言D−17を発令、半径50キロ以内の全市民は直ちに避難、松代にはマギのバックアップを頼んで。」

「ここを放棄するんですか?」

「いえ・・・・ただ、みんなで危ない橋を渡る必要はないわ。」


まったくだな、できればあいつ等にも戦うことなく避難してほしかったが・・・・・残念ながらそうもいかない、使徒を倒す事ができるのは同じ体でできたエ ヴァだけだそうだ。唯一の救いはプラグの中が一番安全ということ位か。

上の街に出るために本部内を歩いていると休憩室でシンジ君達に会った。


「あ、カズヤさん。どこか行くんですか?」

「まぁ・・・な、君達はなにやってるんだ?」


アスカを中心に雑誌を見ながら話している。


「この戦いが終わったらミサトさんがステーキをご馳走してくれるって言うんですけど綾波が肉が嫌いらしくて、それで今相談してたんです。」

「なんだ、レイ肉が嫌いなのか?」


レイは静かに首を縦に振る。


「おかげで私が苦労してファーストも行けるとこ探してんのよ。」

「そうなのか、まぁ・・・頑張ってくれよ。これが終わったら俺も何か奢ってやるよ。」

「まかせときなさい。って、どこ行くのよあんた。」

「ちょっとやり残したお仕事を済ませにね。」

「あんた・・・・・・ま、気をつけなさいよ。」

「ははっ、君らもな。」


アスカの感が鋭いのか、俺の隠し事が下手なのか、アスカは「お仕事」って言葉に気付いたみたいだな。

ま、可愛い後輩を護るためだ・・・・・安いもんだろ。

アスカ達と別れ、上の街に出て約束の場所に向かう。



















展望台に向かう坂を上っていくとSPの服装に似た男が居る。しかし男の雰囲気はSPと言うよりは殺し屋に近いような感じだ。


「貴様が赤木カズヤか?・・・・なるほど、一般人とは言いがたい気配だな。一つ聞いておく・・・・・貴様はクズノハの手の者か?」

「クズノハ?そんなの知らねぇな。」

「違うのか?・・・・・まぁいい貴様には悪いがここで消えてもらう。」

「やなこった、てめぇが消えろ。」


男はジャケットを脱ぎ捨て腕の小型コンピューターを起動させる。

なんだ?・・・・・あの機械は?


「これが珍しいか?・・・・・ふふ、これの使い方を教えてやろう・・・・アーマーン!」


腕のパソコンを素早く操作し実行キーを押すと男の前に魔法陣が現れ光が収束していき形を取り始める、光が収まると同時に何かかがカズヤに向かって飛び掛っ てくる。


「な!?こいつは!!」


慌てて後ろに飛ぶと今までカズヤが立って居たところは硬いはずのコンクリートが剥がれて、多くの鎖に繋がれた巨大なワニのような怪物が鎮座していた。


「悪魔だと!?人間がなぜ召喚できる!!」

「ほう、あれを避けるか・・・・・だが次はどうだ?アーマーン奴を引き裂け!」



グルアアアァァァァァ



アーマーンと呼ばれた怪物は台地を揺るがす程の叫びを声上げ、信じられない速度でカズヤに向かってくる。


「くっ!馬鹿でかいくせになんてスピードしてやがる!」


カズヤはアーマーンの突撃を避けるように逃げ回るがアーマーンは辺りの物を破壊しながら再度カズヤに向かってくる。


「いい加減にしやがれ!このデカブツが!!」


そう叫び右手に力を集中してアーマーンに向き直る。


「ふん、諦めて喰われる気になったか?」

「冗談じゃねぇ!こんな所で死んでたまるかってんだよ!!食らいやがれ!ヒートウェイブ!!」


右手の力を一気に解放すると光り輝く魔力の剣が現れる、カズヤがそれを横なぎに振るうと高熱の波動でアーマーンが吹き飛ばされる。

アーマーンの体が光の粒へと戻り男の腕の機械に吸い込まれる。


「!!・・・・・サマナーでは無い様だが不思議な力を使うな。では・・・・俺も本気で行かせて貰おう!!サトゥルヌ!トナティウ!」


男が叫ぶと再び魔方陣が二つ現われる。一つ目から現れたのは四肢と長い髪の毛が炎でできた邪神、サトゥルヌスが現れる。もう一つの魔方陣からは太陽光のオ ブジェに乗った戦士、破壊神トナティウが現れる。


「我が名は邪神サトゥルヌス、黒き太陽の下全てを焼き尽くそうぞ。」

「我に全てを捧げるのだ!貴様の血と肉、魂の全てを、破壊神トナティウに捧げよ!」


男が二人の神に命じる。


「やれ!サトゥルヌス!トナティウ!奴を消し去れ!」


その声に応じたトナティウが一瞬でカズヤに肉薄し手に持つ剣を振るう。


「我に全てを捧げよ!」


邪気が溢れた剣が驚くべきスピードで頭上に討ち付けられる。

カズヤはそれを避けることなく手に持った光の剣で受け止めるがあまりの重圧に体が沈む。


「くっ・・・・馬鹿力が・・・・加減を知らねぇのかよ!おらっ!ザンダイン!」


力を振り絞ってトナティウを弾き飛ばす、そして間髪入れずに強力な真空波の呪文を唱える。


「ガアアアアアァァァァァ!」


目に見えない空気の刃がトナティウの体に無数の切り傷が浮かぶ。

カズヤは止めを刺そうと光剣を振りかぶる。


「神に勝てると思うてか?マハラギダイン。」


サトゥルヌスの手から強大な炎の塊が雨のように降り注ぐ。

逃げ場のない攻撃にすぐさま防御するが炎は蝕むように体を焼いていく。


「くっ・・・」


火の玉が降り止むと同時に煙を引き裂き、剣を振り上げたトナティウが体の傷を気にすることなく突進してくる。


「我の体に傷をつけた報いを受けよ!べノンザッパー!!」


瘴気の刃がトナティウの剣から放たれる。

カズヤは再び光剣で防ごうとするが、火炎魔法によって弱まったそれは簡単に砕かれて肩を大きく切り裂かれる。


「がはっ!」


肩ひざを付いて堪えようとするカズヤにトナティウの追撃が迫る。


「死して我が糧となるがいい!」

「・・グッ・・調子に乗ってんじゃねぇー!!」


振りかぶられたトナティウの剣を無視して、力の限りただ殴り飛ばす。

サトゥルヌスの位置まで飛ばされたトナティウを見ながら自分に回復魔法をかける。


「ディアラマ・・・・痛ってーな・・・・今度はこっちの番だ!スク・カジャ!」


自身にスピード上昇の補助魔法をかけ獣のようなスピードで走り出す。


「なに!回復魔法に補助魔法まで・・・・多芸な奴だ!サトゥルヌ!迎撃だ!」

「遅せーよ!さっきの炎はきいたぜ!お返しだプフダイン!!」


魔法を放とうとするサトゥルヌスの懐に入り込み胴体に向かって氷結呪文を放つ。


「ガアアアァァァァァァ!!」


断末魔の叫び声を上げながら全身が氷で包まれていく。

完全に氷漬けになったサトゥルヌスに向かって手を振るうと体ごと氷が砕け、サトゥルヌは光になって男の腕に戻る。


「なんと・・・・・破壊神を退け、邪神を倒すとは。人にあって人であらず。まさに修羅の成せる業だな。」

「さて・・・・次は何を召喚する?」




ピーピーピー




男の腕のコンピューターが電子音を発する。


「ふむ、時間切れだ・・・・『リターン』、この場は預けるとしよう。」


男がコンピュータを操作するとトナティウも男の腕の機械に吸い込まれていく。


「てめぇみてーな奴をみすみす逃がすと思うか?」

「残念だがそうしてもらおう。」


男が言い終わると同時にけたたましい音が鳴り響く。




バババババババババババ!




「なっ!ヘリコプター!!」

「ふふ・・・・・そういう事だ、俺の名はフィネガンだ・・・・・この街が無くならなかったら、また会う事もあろう・・・・・小僧!生き残れよ、貴様を殺す のはこの俺だ!」


ヘリがローター音を響かせて遠ざかっていくのを見つめる。


「フィネガン・・・・・似神クラスの同時召喚とはな・・・・・やっかいな奴だな。」


ヘリが見えなくなると第三東京市全体が見渡せる所に歩いていき空を見上げる。


「・・・・・来たか。」


すさまじい重圧と共に赤い塊が雲を切り裂きながら降りてくる。

全てのものを恐怖させるような無機質な目がネルフ本部をはずすことなく見据えている。


「でかいな・・・・大きさだけなら創造神クラスか?」


それを追うように紫色の巨大な人影が土煙を上げながら疾走する。

少し遅れて赤と青の人影も落下地点に向かう。



「あれがエヴァンゲリオン。・・・・・あれには魂が在る。」


(どういうことだ?使徒と同じ体に魂・・・・・地下の奴とは違うのか?)



エヴァは落下点に着くと両手を広げ、向かい討つかのように使徒を睨む。




キーーーーーーーーーン




そんな音がしたかと思うと初号機と使徒との間に光の壁が現れ使徒が押し返される。

そこに追いついた弐号機と零号機が攻撃に加わる。



(それに紫の奴と他の二機・・・・・何か違う。)



零号機がナイフで使徒と初号機、双方のフィールドを切り裂き弐号機が巨大な目にナイフを突き立てると使徒の体は生気を失ったように崩れ落ちて大爆発を起こ す。



「これが・・・・・原初の神々の戦い・・・・しかし」

(紫の奴のあの禍々しい殺気は何だ・・・・・シンジ君の心だとでもいうのか?)



自分で考えた事に首を振り階段を下りる、山の向こうでは三機のエヴァが夕日を背にして天を仰ぐように佇んでいた。





















本部に戻ってみると相も変わらず慌ただしかった。

なんでも使徒を倒したのはいいが、爆発してくれたおかげで上の街が大変な事になってるんだそうだ。

ま、そーゆう所では俺は部外者なので邪魔をしないように休憩室でタバコに火をつける、ま、仕事も終わったことだしな一応。


「よ、お疲れさん・・・・・怪我は無かったか?」


いつの間にか隣でへたってるアスカに声をかける。


「唇切った・・・・・あんたは?」

「そりゃ大変だ、俺はこの通り。」


とぼろぼろになった服を見せる。


「・・・・・なんでそんなにぼろぼろなのに傷一つ無いのよ。」

「そりゃ痛いから魔法で治した。」


そういうとジト目で睨まれた。


「・・・・・ずるい。」

「いーんだよ、俺は悪魔なんだから。ジュースでも飲むか?奢るぞ?」

「そんなんじゃ済まされないわよ。」

「はいはい・・・・・で?」

「飲む、なんでもいいわ。」



休憩室に備え付けられている自販機でコーヒーを買って戻ってみるとアスカはプラグスーツのままベンチに座って壁を枕に眠り込んでいた。


「ははっ、・・・・お疲れさん。」


俺はアスカの隣に座って起きるのを待っていたが、いいかげん今日は俺も疲れた。


しかし・・・・・エヴァンゲリオンか・・・・・使徒と同じ体を持ちながら魂を持つ存在・・・・・アスカ達にしか乗れないってのもその辺の事情が絡んでそう だな・・・・・・はぁ・・・・ねみぃ・・・・・・・・・・・



結局二人とも大分寝込んでしまって、翌日葛城さんと姉さんに怒られた。





感想

SSSさん修羅から人への新作登場!

どうやらこの世界にはデビルサマナーが居るみたいですね。

でも、カズヤ君今の所戦闘より私生活の方がピンチ?(爆)

でも、使途を身見て大きさだけなら創造神クラスとか言ってましたね? という事はもしかして、倒せると言う事なんじゃないでしょうか?


そうなるだろうね、ATフィールドをどうやって突破するのかは分らないけど、まあ使徒は所詮天使だし、女神転生ではありふれた存在ともいえるね。

まあ、そういうことは置いておくと しても、アスカさんは随分と接近してきてますね?

カップリングがあるならそれかな〜と今は見えるけど…

結局は先になってみないと分らない ということですね?

まあ、そういうことですな。でも赤木博士もなにやらアプローチしているみたいだし。今後波乱の可能性も…


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