赤木カズヤに関する観察報告


ネルフ本部最深部に突如出現、進入経路は不明。その後、諜報部の鎮圧部隊と対峙するも部隊は壊滅。


隊員に目立った外傷は無く死因は不明、なお生存が確認された者も確認されたが精神の著しい崩壊が見られ詳細は不明。


その後、突然意識を失い本部で保護、その際の身体検査では肉体の大半は人間の構成物質と変わらないが一部の部位に未知の物質が検出されたが詳細は不明。


その後、司令権限により二尉待遇でチルドレンのボディーガードに着任。


ネルフへの進入者によってチルドレンを拉致されそうになるも、同、赤木カズヤによって撃退、首謀者達は死亡。4人は強い衝撃による打撲が原因だが残りの一 人は強力な火炎によって焼死したと思われるが詳細は不明。


司令、副指令が南極へ出向中に衛星軌道上に使徒出現。


同時刻、赤木カズヤに不審な動きあり。


ファントムのサマナーらしき人物と交戦。


生身でありながら高レベルの悪魔を撃退するだけに留まらず、各種の魔法を使う模様。


その後サマナーは逃走、使徒はチルドレンによって殲滅。


この情報から赤木カズヤはサマナー、又は悪魔そのものである確立が高いと思われる。


よって本部防衛プログラム、コード666に基づきサモンシステム[F#t$UN*%HI]を起動。






・・・・・可決。


・・・・・可決。


・・・・・可決



他者のMAGIに対する強制的なアクセスを確認サモンシステムを中断・・・




・・・・・不能。


[SUMMON]



同時刻セントラルドグマ最下層、赤いLCLの泉に人間より遥かに巨大な扉がそびえるその前で、湖面に音も無く光の線で魔法陣が書かれる。


その魔法陣から多数の剣が生えていき、同時に人ではない異形の者が這い出てくる。



「オ・オ・・オオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・・」



異形の者は何かを呼ぶように叫ぶ。

その叫びに導かれるかのように腹の出た子供のような鬼が赤い泉より這い出てくる。

それらを気にすることなく異形はただ上を向き呼び続ける



「オオオオオオオォォォォォォ・・・・・・」















修羅から人へ〜第四話〜


『業魔殿へようこそ』














[赤木カズヤ 様]



そう書かれた封筒を破くと「ホテル業魔殿」と書かれたチケットが一枚だけ出てくる。

ダイレクトメールというわけでもなく、新手の嫌がらせかとも思ったがそのチケットをポケットの中に入れ今日もネルフ本部に向かう。


思いっきり照りつける夏の太陽に目を細めながら本部に歩いていく。

今の日本には驚く事に四季と言う物が無いらしくて一年を通して夏日らしい、春に咲くはずの花は咲かず、冬に30度を越すような一年だ、当然雪が降るまでも 無くシンジ君やアスカは見たことも無いようだ。

何でもセカンドインパクト?という大質量の隕石が南極に落ちた所為で地球の地軸そのものがずれてしまったということなんだとさ。

今まで暑いのも寒いのもうんざりだったが暑いのだけになると相当うぜぇな・・・・・なんとなく現代人の貧弱さを実感した。

大いに汗をかきつつ工事の手が入っている公園に差し掛かったところで立ち止まる。

悪魔に削られたコンクリートや俺が壊したいろんな物が転がっている。



「フィネガンとか言ったっけ?」



生身で悪魔を召喚した殺し屋風の男、この世界に紛れ込んだ俺の事や悪魔の存在を知っていた。

それに・・・・



「クズノハ・・・・だっけか?」



奴の口振りからすると敵対組織ってとこか?

敵対するって事はそいつ等も当たり前のように悪魔を召喚するんだろうなぁ。

そもそも何で俺は殺されそうになってんだよ、あんな髭野郎に恨まれる筋合いなんかねえぞ。

でも・・・また会おうとか言ってやがったからな、あの手のタイプはしつこそうだからきっとまた来るんだろう・・・・・前より強い悪魔を引き連れて。

加持の野郎もちょっと締め上げないとな・・・・・・あいつは絶対なんか知ってやがるぞ・・・・・



はぁ・・・・・・



「だりぃ・・・・」



思わず口に出して呟きつつ太陽を見上げる。

・・・・・・・今日も暑いな。










〜ネルフ本部内〜



カズヤがリツコの執務室に入っていくとそこにはキーボードを凄い速さで叩いているリツコとコーヒー片手にそれを眺めているミサトが居た。



「どうも、おはようございます。」

「朝の挨拶をする時間じゃないと思うんだけどなー、お姉さんは。」



ジト目でミサトがそれに答える。



「俺の仕事はチルドレンしだいッスからね。」

「あの子達は学校に行ってるし、あたしなんて朝早くから出勤してるのよ、リツコ〜この子にもなんか仕事増やしてあげてよ。」



ミサトの小言を聞き流しながらカズヤは

(あー、なんかアスカがそのままでかくなった感じだなぁ)

なんて考えていた・・・・・ちなみに今は11時半を少し過ぎた辺りだ。



「ところで今日は何しに来たの?」



ちょっと休憩、と言う感じでいすを二人の方へ向け直す。



「ああ、そうだった。『業魔殿』て知ってる?」

「業魔殿?あのちょっと前にできたって言う高級ホテル?」

「あそこのホテルは全ての物価が高いのよねぇ。」

「多分そこだと思う、どこにあるのそれ?」

「横浜よ。」

「なーにー、デートにでも使うつもり?止めときなさいよ自分が悲しくなるわよ、特に財布が。」



カズヤはポケットから封筒を取り出してリツコ達に見せる。



「なにこれ!ハイクラスのディナーチケットじゃない!」

「誰にかは分かんないけど招待されてるんだよね。」

「あたしだって食べた事無いのにー!」

「だいじょぶなの?どこの誰かも分らないのに。」

「まぁ、だいじょぶだとは思うけど・・・・」

「あなたがそう言うなら大丈夫ね・・・・・夜からシンクロテストだからそれまでに帰ってくればいいわよ。」



全然心配してないといった感じで再びモニターにいすを向けなおす。



「お土産は中華街の飲茶セットお願いね。」

「あ、私はこのブランドのワインとシューマイおねがいね〜。」

「はいはい・・・・・じゃ、ちょっと行ってきます。」



やれやれといった感じで執務室を出て横浜に向かう。

横浜かー、何回かしか行った事が無いけどやっぱ変わってんのかな?ランドマークタワーから大量のミサイルが出てきたり、中華街の門にに巨大なレーダーが設 置されてたりして・・・・・・・・やだな、それ。










〜横浜駅〜


変わってねー!2003年から全然変わってねー!強いて変わってるトコあげるならデパートに「駅弁祭り2015!」なんて緊張感の無い垂れ幕がかかってる 位かな?なんか見知った町があると安心するなー。

しかし・・・・・第三新東京に人が居ないと思ってたが・・・・・・ここに居たのか。なんとなくこっちの方が首都っぽくない?

なんで第三はあんなに人が少ないんだよ?アクセスが悪いから?税金が高い?使徒が攻めてくるからか?・・・・・・そーいえばなんで使徒が攻めてくんだ?人 類の敵って言うくらいだからゴジ○みたいに首都を攻撃するとか。いや、他の国にもっとでかい首都はあるよな・・・・・・わかんねぇ、帰ったら聞いてみる か。

いろいろ散策しながら業魔殿を探す、相変わらず刺すような視線が気になるけど。業魔殿、業魔殿、っと。・・・・・ん、この肉まん美味いな。







通行人になんとか道を聞いて港まで来たんだけど・・・・・船じゃん。

世界一周いけそうな超でかい船じゃん。でかいなー、船の癖に周りの建物より頭一個分でかいぞ。

いつまでもそうしてる訳にもいかず、やや緊張しながら門をくぐる。

うおーーーー!すげー!超でかいシャンデリアだ!映画でしか見たことねー。

ロビーは高級そうな赤いカーペットがしかれて天井は吹き抜けにされてて船とは思えない広さを感じられる。



・・・・・しっかし・・・・・ここに居る客層は・・・・・セレブっぽい女の人、政治家っぽい集団、そして・・・・・いかにも悪人柄の集団、ヤの付く人?

おれが目立たないのは・・・・・同じ人種だと思われてんのかよ。・・・・・この前まで普通の高校生だったのにな・・・・・なんか悲しい。


ちょっとした事に一喜一憂していると、人が行き来するロビーの奥からメイドの服を着たショートカットの女性がこちらに歩いてくる。

何気なく見ていて奇妙な事に気づいた、彼女の周りだけ歪んでいるような・・・・女性が見えていないように歩く人たちが無意識のうちに彼女を避けている様 な・・・・・メイドが客を避けさせる、奇妙な光景だ。

それに白い肌と赤い瞳がやたら印象に残る。



「赤木カズヤ様ですね。」

「はっ、はい!」



いつの間にか俺の前まで来ていた女性が淡々とした口調で話しかけてくる、上の空だった俺は思わずどもってしまう。



「お待ちしておりました、業魔殿へようこそいらっしゃいました。私のことはメアリとお呼び下さい」


感情のこもっていないような口調で挨拶をして踵を反して再び奥に歩き出そうとする。


「お連れ様はすでにお待ちになっています、私の後について来てください。」


そして遅くも無く早くも無く決して人を不快にさせない速度で歩き出す。

慌ててそれについていく。

なんとなくレイに似てるような・・・・・・気のせいかな?悪魔独特の魔力みたいな物も感じられないし・・・・・

そんな事を考えているうちに一つの部屋の前で止まる。

メアリは軽くノックしドアを開け、ドアの脇に控えて俺が入るのを待っている。


「どうぞお入り下さい。」


緊張しながら室内に入っていくと、豪華な部屋の窓の前にスーツ姿の女性が立って外を眺めている。

細めのスーツをスラッと着こなし、長い髪をアップで纏めた姿で不思議な雰囲気を持った女性だ。

女性はゆっくり振り向いて俺に声をかける。



「赤木カズヤさんですね、どうぞおかけ下さい。」



女性が座るのに続くようにしてテーブルを挟んで座る。



「申し遅れました、私はマダム銀子。クズノハの統括役を務めております。」

「クズノハ・・・・ですか。」

(一つ聞いておく・・・・・貴様はクズノハの手の者か?)


あの時あの襲って来た奴が言ってたのか・・・・



「フィネガンと言う男を知っていますね?」

「ええ・・・まぁ。」

「フィネガンはファントムソサエティのサマナーと言う事はご存知でしたか?」

「いえ・・・・ファントムとかサマナーって何なんですか?」



俺は女性の話に乗るように質問する。


「いいでしょう、ではそこから話しましょうか。悪魔と言う存在は知っていますよね。」


その問いに俺は頷く・・・・・だって悪魔だし。

女性は「よろしい。」と、頷くとメアリに紅茶を入れるようにと言う。

メアリが紅茶を注ぎマダムと俺の前に差し出すと再びマダムが口を開く。



「悪魔は古来より常に人と同じ時間を歩んで来ました。人の世を光の世界とするならば、闇の領域は悪魔の世界と言う様に、常に表裏一体となって。・・・・・ 世界で起きている天変地異などの現象の多くに悪魔達は係わっています。普通の人では気付く事はありませんが神官や特別な力を持った人間はそのことに気付 き、恐怖し対抗策を考えました、それが「召喚の儀」なのです。」



闇の領域・・・・・悪魔の世界・・・ね。



「召喚の儀は呪術に長けた者達のみが使えるものでしたが、20世紀に入りコンピューターが発達すると共に一つのプログラムが世に出回りました、・・・・・ 「悪魔召喚プログラム」複雑な呪詛を数値化し自動制御にすることによって誰でも悪魔を使役する事ができるプログラムです。・・・・誰が何の目的で作ったの かは分りません、このプログラムを使い悪魔を使役する者がサマナーです。」



マダムは一息つく様に紅茶を口に含む。

なるほど、だからフィネガンは生身のまま悪魔が召喚できたのか・・・・・あの腕のコンピュータの中にそのプログラムが組み込まれてたって訳か。



「悪魔を使役する者達は最初は一つの組織でした、悪魔の脅威から人々を護る事を目的とした。しかし人というのは「力」を手に入れると変わってしまうもので す。召喚術を手に入れた人々の一部は自分達が他の人間より優れていると思い込み、新しい秩序を作り出そうと考えたのです。その末裔がファントムソサエティ なのです。そんなファントムの抑止力として旧体制の組織から再編成された組織が我々クズノハです。・・・・・分りましたか?」

「ええ、だいたいは。」

「ファントムはここ最近、第三新東京市を中心に活発に活動を行っています。・・・・・調べてみるとファントムがこの地に来たのは十五年前・・・・・『セカ ンドインパクト』・・・・・あの忌まわしき災害の後・・・・・そう・・・・・あなたの所属しているネルフとも深い関係にあるのかもしれません。」


ネルフが・・・・・それならなぜ俺を狙う?

理由が分らん・・・・・それに、ネルフなんて組織になんのためにかかわる?

・・・・・まだまだ俺の知らない事が多いな・・・・

ん?・・・・・この手の事情に詳しくて・・・・・一番話しそうな奴・・・・・一人居たなぁ・・・・・

ついでだ、それも喋ってもらうか・・・・・



「単刀直入に言います・・・・・我々クズノハは・・・・・赤木カズヤさんあなたをクズノハにスカウトしに来たのです。」

「スカウトですか・・・・・なぜ俺なんですか?」

「言ってはなんですが・・・・・・あなたの存在は野に放して置いては危険すぎるのです。フィネガンと言う男はファントムでも指折りのサマナー・・・・・そ れを体一つで対等に渡り合えるあなたは我々クズノハにとっても脅威なのです・・・・・分っていただけますか?」



クズノハか・・・・そこに居た方が俺にとってもいいことなんだろうな・・・・・・だけど、俺はあいつ等の護衛だ・・・・・あいつ等が少しでも戦わないよう にするのが俺の仕事だよな。

まだこの世界に来て時間はたってないけど、大切な人ができた。

意地っ張りでわがままだけど不器用な心遣いができるアスカ。

常に人を意識して弱気だけど細かな事に気が付くシンジ君。

無口で普段なにを考えているか分らないけど実はいろんな事に興味津々のレイ。

ずぼらでガサツだけどみんなを元気付ける事のできる葛城さん。

俺に新しい絆を与えてくれた大切な人、リツコ姉さん。



俺は二度と道を誤らない・・・・・・もう二度と仲間を死なせない!俺は供に生きる道を選ぶ。



「申し訳ありません・・・・・俺は、クズノハには行けません。」

「・・・・・理由を・・・・聞かせていただけますか?」

「俺には護るべき人達が居ます・・・・・その人達は常に戦っていて、いつ死ぬとも分りません・・・・・俺はその人たちのために少しでも障害を減らした い・・・・・大切な人のために。」

「・・・・・そう・・・・ですか。・・・・・私達が心配する事では無かったようですね。あなたは強大な力を持っても驕る事無く真っ直ぐな心を持ってい る。」



マダムは席を立って出口に向かって行くがドアの前で止まって振り返らずに俺に言う。



「そういえば・・・・・遥か昔・・・・・人の心を持ちながら悪魔の力を使う者「人修羅」と呼ばれる方々が居たそうです。我々クズノハを光とするならばファ ントムは闇、その方達は光と闇そのどちらにも組せず、その姿は常に孤高に在ったと言われています。・・・・・もしかしたら貴方は「人修羅」なのかもしれま せんね・・・・・」



マダムはそう言い残して出て行く。

人修羅か・・・・・俺のほかにも居たんだな。

その人達はこの力で何かを成したんだろうか?それとも普通に死んでいったんだろうか?

俺はあいつ等を護れるのかな・・・・・

そんな事を考えながら部屋を出ると表でメアリが待っていた。



「カズヤ様、マダムからこの船の船長に会ってみると良いとの言伝ですが。」

「船長?なんで船長に会うんだ?」

「船長のヴィクトル様は悪魔研究の第一人者であり、現代の錬金術師とも言われる方ですからいろいろ参考になるだろうとの事です。」

「へぇ、どこに居るんだ。その船長は。」



メアリは「こちらに・・・・」と言って歩き出す。


高級な船室がある上層部から誰も人がいない階段部へと歩いていき「お待ちください」と言って階段の脇の壁に手を当てる。

すると今まで上に向かっていた階段が下にスライドして下に向かう階段が出来上がる。

忍者屋敷のような仕掛けに驚いている俺を尻目にメアリは階段を下りていく。

俺も追うようにして後を追う。

一段一段下に行くにつれて空気が冷えていくような感じがする。

しばらく階段を下りると船の中とは思えない巨大な球状の空間が現れる。

下にたまる不思議な光る水、それに照らされた上を金網の床が張ってあり、その中心部辺りに船長帽をかぶりマントをつけた男が立っている。



「業魔殿へヨーソロー、失われた業をその身に宿す人の子よ。」


「マガタマの事を知っているのか!?」


「もちろんだ。私が悪魔研究を行う過程で幾つか先人の資料があった、マガタマ、宝珠、オーパーツ、様々な名や形を持っているがその内の幾つかに原初の神の 力の一部が宿されているものらしい。」


「そんなシロモノだったのかよ・・・・・」


「しかし・・・・・体に宿した者を見たのは私も初めてだ。耐性が無ければマガタマに全ての生気を吸われて死に至るのだぞ。」




ゲッ!マジかよ!・・・・・良かったー耐性があって。



「ここでは悪魔合体を主に行う。お主はサマナーでは無いがマダムの紹介もある、私もお主個人に興味があるから特別にこの部屋へ入る許可を与えよう。」


へー、ここでも悪魔合体ができるんだ。もしかしたら前の世界にも俺が知らなかっただけでサマナーがいたのかな。


「時にお主・・・・・悪魔の体に人の魂を宿す存在だな。」

「自覚は無いけど・・・・・多分。・・・・・なんで?」

「ふむ、交換条件とはいかないが・・・・・メアリをしばらく預かってもらえないだろうか?」


は!?このおっさんなにほざいてやがる!?


「メアリは私が研究する「人」という存在の最終課題なのだ・・・・・人工の体に人工の魂を定着する事には成功したのだが、なぜが魂の成長が一定で止まって しまったのだ。・・・・『ココロ』・・・・と言うモノが未発達な状態で・・・・・お前はマガタマを体に有せる特殊な魂の持ち主だ、良くも悪くもメアリに影 響を与えてくれるだろう。・・・・・」


やっぱりメアリって普通の人じゃ無かったんだ。



「い、いや!でも!メアリの意見も聞いたほうが・・・・・」

「カズヤ様よろしくお願いいたします。」



メアリはいつの間にか小振りのトランクをもって立っている。



「ファントムのサマナーに狙われているらしいな。」



なんでそんな事知ってんだよ、裏家業は情報が命ってか?



「そういえばファントムのサマナーが刺青男の情報を知りたがっていたな・・・・・どうかね?」



脅しか!?脅してんのか!?

ほとんど逃げ道無いじゃねえかよ!・・・・・このクソオヤジ!!



「・・・・・はぁ、わかったよ。俺はどうすればいいんだよ。」



俺の答えに満足したのかヴィクトルは。



「特に何をする必要は無い、近くにいるだけでメアリの魂にに影響があるはずだ。」

「ふーん。じゃ、またくるよ。」

「行って参ります、ヴィクトル様。」

「ああ・・・・・娘をよろしく頼む。」

そんなに心配なら自分の手元に置いとけよ・・・・・なんて言えたらいいなぁ

はぁーーーーーーーーーーーーーー。なんて説明しよう。









〜第三新東京市〜



い、胃がきつい・・・・・電車に乗る事がこんなに辛い事だったとは・・・・・いかに人間が内面を見ないかが良く分った・・・・・だ、だれか優しさを下さ い・・・・・く、車でも買おうかなぁ・・・・・



「どうしました?お顔の色が優れませんが。」

「・・・・・な、なんでもないよ、大丈夫。・・・・・多分。」



心配するメアリに笑顔で返す。

・・・・・多分君の所為だよ。こんどから外出るときは服を変えようね・・・・・頼むから。

少々擦り切れた精神を安定させながら本部に向かう。



「ネルフ本部へ向かうのですか?」

「そうだよー・・・・・?、メアリにネルフの事話したっけ?。」

「いえ、業魔殿でカズヤ様の情報を調べておきました。あそこには情報の売買を生業とする方もいらっしゃいますから。」



こ、個人情報の保護は?・・・・・



「ところで第三新東京市はいつもこんなに人が居ないのですか?」

「いや・・・・・そんな事は無いけど・・・・・」



そういって周りを見回すと確かに人はいない・・・・・一人も。



「なんで?」

「カズヤ様あそこの掲示板に何か出てます。」

『緊急事態警報が発令されました。市民の皆さんは最寄のシェルターに避難して下さい。』



緊急事態?やばくねぇ?流石の俺でもこの前の隕石みたいのは死ぬと思うぞ。



「メアリ・・・・・近道使うから付いて来てくれ。」



この前停電したときにアスカが蹴り開けた扉が近くにある。

内側から鍵かかってるけど・・・・・その辺は本気で開ければ問題なく開錠。

少々暗い道を走っていく・・・・・たしかこっちだったと思うんだけどな・・・・・少し速めに走って、道を確認してた俺は、ふと、後ろを走っているはずのメ アリを見る、トランクを両手に抱えて呼吸を乱さずに俺のスピードに付いて来ている。

トランクを抱えて無表情に息も乱さず疾走するメイド・・・・・怖すぎ。なんか追われてる気分だ。

まぁ、メアリの凄さは分ったから先を急ごう・・・・・だって俺、最後の方の道知らないし。

あ、明かりが見えてきた。外に出れるならまあオッケーっしょ。









〜メインシャフト〜



明るい所に出られた俺達はメインシャフトに通じる脇道に出たらしく、その先は遥か下まで続く断崖絶壁になっている。

行き止まりだよ・・・・・なにもこんな所に出なくても良いのにな。



「よっと!」



少々途方にくれているとそこに何かが飛び降りてきた。



「あれ?加持さんじゃないッスか。」

「や、やあ・・・カズヤ君じゃないか。どうしたんだい?こんな所で、それに後ろの女性は誰だい?」

「道に迷ったんですよ、で、こっちは・・・」

「メアリと申します、どうぞよろしく。」

「あ、ああ。これまたカズヤ君・・・・・ずいぶんと特殊な・・・・・」

「い、言わないで下さい。加持さんこそどうしてここに?」

「お、俺も迷ったんだよ。この本部って広いだろ?」

「そうっすね、ハハハハハハ。」

「ハ、ハハハ。」



通路に渇いた笑いが響く。



「カズヤ様、今はそれ所では・・・・」

「そうだった、加持さん緊急事態だなんて何があったんですか?」

「ああ、なんでも本部に使徒が侵入したらしい。ここからでも見えるはずだ。」



行き止まりから上を見上げると閉じられた隔壁に大量の赤い点が点滅している。



「ウイルスのような使徒らしくて壁伝いにどんどん広がっているらしいな、EVAでの殲滅は無理、リッちゃんに秘策があるって事だけどな。」



流石にあれは俺じゃどうしようもないな・・・・・ん?



「どうしたんだい?」


・・・・・鳴いてる。これは・・・・・苦しみ?下の方からか。


「加持さん、俺行くトコできたんでメアリの事ちょっと頼みます。あ、帰ってきたら聞きたいことが有るんで、フィネガンの事とか。」

「なっ、なんの事かな?」

「あんまりしらばっくれてると・・・・・シメますよ。メアリ、加持さんが逃げないように見張っといてくれるか?」

「承知いたしました。・・・・・お気をつけて。」



メアリに片手を上げて返事をし、勢いをつけ飛び降りる。



「おいおい、大丈夫なのか?」



カズヤが飛び降りた後に残された二人に重い沈黙が降りる。



「お、俺もう行って良いかな?」

「申し訳ありません。カズヤ様がお戻りになるまでお待ちください。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か、会話が生まれない。



(カズヤ君、早く戻ってきてくれ。・・・・・俺の胃に穴が開く前に。)








セントラルドグマ最下層




ドォーーーーーンンンンン


「いたたたた。」


うーん、悪魔の体って便利だなー、多少の無茶は聞いてくれるからなぁ。


これでもう少し痛くなければいいんだけどな。


足の具合を確認しながら落下地点をみる。


あーあ、しっかりと俺の足型が・・・・・ま、急いでたってことで・・・・・

この辺は俺が流れ着いた場所に近いな。

叫びの近くなる方へ細い通路を歩いていき突き当たりの耐圧扉をゆっくり開ける。



ぎぎぎぃーーーーー



おいおい、どこのどいつだよこんなに魔力を充満させてるのは。


魔気に釣られてやって来たのかガキと呼ばれる小さな鬼の悪魔まで実体化している。



「ギギッ!・・・・ヒトシュラダ!コノマガツヒハ、オレタチノモノ!」

「ソウダ!・・・・オレタチノモノ!オマエニハヤラナイ!」



足元でガキがケンカ腰で口々に威圧している。

初めて見る人には恐怖をそそる光景かもしれないが、如何せんサイズが俺のひざ下までしかないから、見慣れた俺には全然怖くない。

足元でたむろしているガキ供を文字通り蹴散らしながら魔力の元へ向かう。

赤い湖に沿った道を中間まで進んだ辺りで足を止める。

視線の先にはアグラを掻いた状態で空中に浮かんでいる人型がいる。



「お前か?あの叫び声の正体は?」

「・・・・・・・・・」



異形は問いかけに答えずに俺の方に向かってくる。

良く見るとそいつの右腕は根元から欠けて、切断面から広がるように赤い斑点が点滅している。


あの斑点・・・・・さっきの使徒か!こいつ、使徒に寄生されてるのか!?



「たりない・・・・・足りない・・・・・タリナイ。」



召喚が不完全で実行された所為か、使徒に寄生されている所為か、俺を認識はできるものの言葉はまったく通じてない。



「マガツヒ・・・・・ソウル・・・・・ア・・カギ・・・カズヤ・・・・ショウ・・キョ・・・しょうきょ・・・・・消去・・消去消去消去消去消去消去消 去!」


そう叫び目を見開くと、奴の周りに6本の剣が現れる。

剣は両刃で一本一本が違う色で光っている。



「オオオォォォ・・・・・」



奴が片手で印を組むと剣達が剣先を俺に向けて高速で向かってくる。



「っ!いきなりかよ!」



俺は飛んでくる剣を小刻みにステップしてかわす。

錆び付いているような見た目とは裏腹に、鉄の床を楽々と切り裂いていく。



「マ、マジかよ!切れすぎだろうが!!」



剣は止まる事を知らないかのように、どんどん加速していく。


やばい!気を抜いたらすぐに串刺しにされる!悪いけど・・・・・最初から本気で行かせて貰う!!


剣が俺の脇を通り過ぎるのと同時に奴本体に魔法を撃つ。



「ジオダイン!!」



突き出した俺の手から幾本もの雷の魔法がほとばしる。

進路を塞ぐかのように一本の剣が俺と奴の間に割って入る、そして雷が剣に触れた瞬間、何事も無かったように電撃が消える。



「な!電撃耐性!?て、ことはあれ全部耐性あり!?」



赤、青、黄、緑、茶、白・・・・・・・・全属性!?

どうすりゃいい・・・・・魔法を使えばあの剣に全部消される。

だったら、狙うは・・・・・奴本体!!

ステップを止めて奴に向かって思いっきり走り出す。

奴を見据えて集中力を高めて行く、空を自由に飛びまわる剣達がスローモーションになる。


視界が狭まり・・・・・奴の動きが読める・・・・・行くぞ!!


湖の浅瀬を、水を巻き上げながら疾走するカズヤ。

悪魔の力で強化された俺の足には奴の剣は少し遅く感じる。

さぁ!これでどうだ!!

奴に向けて思いっきり拳を振り下ろす。

俺の拳が空気を打ち破るのが分る・・・・・獲った!!





キーーーーーーーーーーーーーーーン





奴に当たる瞬間、六角形の壁に阻まれる。



「うっそ!?これがATフィールド!?くっ!アギダイン!!」



素早く身を引き火炎魔法を放ち、奴の視界を塞ぐ。

マジかよ・・・・・あれだけの力で破れないのかよ・・・・・

あれがATフィールド、どうすりゃいい・・・・・どうすれば、あいつの守りを抜けられる?

この時、かなり動揺していた俺は壁際まで下がっている事に気付いていなかった。

視界を塞いだ事で少し安心していたカズヤに向けて、煙を引き裂いて数本の剣が飛来する。



「なにっ!・・・・おらぁ!グッ!!」



最初の一本を右手で弾くが、二本目、三本目が右腕と腹に突き刺さりそのまま壁に縫い付けられる。


「ガハッ!く、くそっこんな剣ごときに!」


ち、力が吸い取られる!ヤバイ・・・早くこれを!!
腹に刺さっていた剣を抜こうとしていた俺の前に剣を振りかぶった奴が現れる。


「ソ・・・ウル・・・・・ソウルが・足り・・な・い・・・・」


剣が俺に向かって振り下ろされる。


「クソッ!」


とっさに残った左手で奴の刃を防ごうとする、だがいつまでたっても剣は振り下ろされない。

不思議に思って奴を見上げると右肩を押さえて苦しんでいる。



「グゥルゥオォォォァァァァァァァ!!」



左肩に寄生している使徒が黄色、赤、緑に点滅したかと思うと、光を消していく。



「オオオォォォォォォォ・・・・・・」



その光を追うかのように悪魔の姿も次第に薄れていき、俺を拘束している剣と供に消えていく。



「ぐっ!・・・・・なんだ?ディアラマ。」



自分の体に回復魔法をかけて、奴の居たところに歩いていく。

あいつの居たところにはただひび割れた大振りのナイフが落ちている。



「?ナイフ・・・・・刃がボロボロだな。」



そのナイフは弱々しい光で点滅して、やがて何の反応も示さなくなる。

俺はそのナイフを手にとって眺める。

あいつの媒体か・・・・・ヴィクトルのおっさんに見せてみるか。

ボロボロのナイフを手に持って階段に向かう。

帰る時の事を考えてなかった・・・・・魔法で治ったけど体は完全じゃないし階段が長く見えるなぁ。

メアリも待ってるし、行くか!





その後、疲労が激しい俺は、なぜか脂汗を流している加持さんに後日の約束を取り付け(壁を殴りつけて脅しながら)メアリと供に家に帰った。










〜コンフォート「カズヤ宅」〜




「カ・・・ヤ・・ま・・・・・・カズ・・・様・・・・・カズヤ様、起きてください。」

「う、あ・・・ああ、メアリか。」



寝ちまったのか・・・・・かなり疲れてたからな、もしかしたらあの剣にかなりの魔力を吸われていたのかもな。


「カズヤ様、お客様です。」


さっきから悪戯のようにけたたましくインターホンが鳴り響いている。


「ん、わかった。・・・・・メアリ、コーヒー入れといてくれる?」

「承知いたしました。」


そう言って玄関のドアを開けると怒り心頭!って感じのアスカと葛城さん、おどおどしたシンジ君、無反応のレイ、笑っている姉さん、勢ぞろいでそこにいた。



「あんたなんで家に居るのよ!護衛はどうしたのよ護衛は!!」

「そうよ!アスカの言うとおりよ!」



おー、怒ってる怒ってる。

しかし葛城さんとアスカは似てるなー、ここは例の物で・・・・



「うーん。あ、葛城さん頼まれてたワイン買って来ましたよ、ちょっと高かったですけど。」



そう言って玄関に置いてあった袋からワインを出して葛城さんに見せる。



「え!うそっヴィンテージじゃないこれ!やっだ〜カズヤ君大好き〜」


そう言いながら俺に腕を絡めてくる。


「ふっ・・・・・勝ったな。」

「ひ、卑怯よ!ミサトも買収されるんじゃない!!」

「な〜に言ってるの〜あたしは最初からカズヤ君の味方よ〜」

「おっ、そういえばアスカにもお土産があるんだ。」


そう言ってメアリに選んでもらったピアスを渡す。


「う、嬉しくなんか・・・・・ないわよ!」


あからさまに照れた顔で騒ぐ。


「あ、シンジ君とレイにもな。」



シンジ君にはチョーカー、レイにはブレスレットを渡す。



「ところでどうしてここに?・・・・・文句をいいに?」

「ちがうわよ!・・・あ、あんたの歓迎会がまだだったから、き、今日開いてあげようって事になったのよ!」

「そっか・・・・じゃ、どうぞ上がってくださいませ。」



みんなが行った後で姉さんが俺に話しかけてくる。



「セントラルドグマに行ったそうね・・・・どうかしたの?」

「ああ、悪魔が居たよ・・・・・使徒に寄生された。」

「使徒に?興味深いわ。EVAの素体に寄生したのは見たけど悪魔にまでとはね、それで?」

「かなりヤバイとこだったけど使徒が消えた途端に消えた。姉さんが使徒を倒してくれたんだろ。ありがとう。」



結果的にそうなっただけよ、と少し笑う。



「そういえば・・・・・加持君から聞いたんだけどメイド服の彼女はどうしたの?」




加持・・・・・・・・・・・・シメる。



「い、家の中にいるよ。それからお手伝いさんという事以外に他意はゴザイマセン、ハイ。」


家の奥からかなり大きな叫び声が聞こえる。


「あ、あ、あ、アンタ誰よーーーーーーーーーーーーー!!!!」

「はじめまして、メアリともうします。」



き、近所迷惑だよアスカ・・・・・・

なんか毎回損してるなぁ・・・・・と、思いながら声の主達に説明するために中にはいって行く。




カズヤが部屋に入った後、リツコは一人今日の出来事に思い耽る。


いったいどういうことかしら・・・・・セントラルドグマはネルフの最下層・・・・・いくら本部内が混乱していたとはいえ誰にも知られずに進入する事は不可 能のはず・・・・・ならカズヤが見た『アクマ』は最初からそこにいた?

マギの一番奥に隠されるように取り付けられていたブロックに刻まれた『ファントム』という刻印・・・・・母さん・・・・・あなたはいったいなに を・・・・・




思考の海に沈みかけた頭を振りなかなかに賑やかな室内に入っていく。



いいわね・・・・あの子は・・・・・なにがあっても前に進める・・・・・・そのシンプルな強さがうらやましいわ。



感想

SSSさんが新しい作品を出してくださりました! 関係ないけど明日はようやく新しいエアコンの工事に来てくれます(汗)

まあ、それは兎も角、デビルサマナーとソウルハッカーズにでてくる。HOTEL業魔殿が登場ですね♪

聞いたところによると、マダム銀子は実は男だとか!(爆)

使途もでてきましたね…悪魔を乗っ取って現れる天使というのも凄い気がします(汗)


でも、不思議な事を言っていたねソウルが足りないだっけ…使徒にそういうのが必要なのか…気になるね。

使途が言ったのか悪魔が言ったのか ということですね? しかし、流石ATフィールド、殆どの攻撃をはじくみたいですね。

個人的に、人間大の攻撃でATフィールドが破られるというのはあまり考えられないね…

そうでしょうか? その辺りは難しい所ですね…


それは兎も角、メアリ登場によってメイ度も上昇、ヒロインの数も増えてパワーUPだね♪

はあ、駄作家の関心事なんてそんな ものですか…


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