「ここ数ヶ月の間に第三新東京市内に侵入した者を辿った結果、その多くが一つの名前を最後に元に辿りつけなくなっています。」
「ファントムか・・・・」
「ゲヒルン開設の時以来だな・・・・その名を聞いたのは。」
「ファントムとはいったいなんなのですか?」
「赤木博士・・・・君は疑問に思ったことは無いかね?人類補完計画・・・・そのためにネルフの先進組織であるゲヒルンが作られた・・・・・確かにゼーレは
裏では力を持った組織だ・・・・・・だがゼーレだけで本当にこんな計画が実行できると思うかね?」
「それは・・・・」
「不可能だよ、いかにゼーレが強大だろうとそれはヨーロッパでの話、全世界に影響力を及ぼそうなど到底出来ない・・・・・そこで出てくるのがファントム
だ、同一の思想を持ちながら不確定な形の組織『ファントム』・・・・この組織が在ったからこそのネルフなのだよ、元よりこの計画自体もファントムが老人達
に持ちかけたという話もあるがね。」
「そんな・・・・そんな話は今まで・・・・」
「聞いた事が無い・・・・かね?奴等はその名の示すとおりファントム・・・・・亡霊なのだよ。構成員の数、支部の数、トップが誰なのかさえ分らない、もし
かしたら君の隣人がファントムの構成員かもしれない・・・・亡霊の名の示すとおり奴等には影や足跡がないのだよ。」
「そんな組織が・・・・・・」
「やっかいだな碇・・・・・奴等が出てきたとなるとこちらの手札は殆ど知られてるとみて間違いないな。」
「まだ・・・・今は動くときではない。奴等が此方の手札を知っているなら新しいカードを作ればいい。所詮・・・人では神には勝てんさ。」
「S2機関とダミープラグか・・・・・・そうだな・・・・赤木博士、今は監視のみに限定しておいてくれ。」
「分りました。・・・・・・・」
「赤木博士・・・・・レイの調子はどうだね?」
「問題ありません、ダミーシステムの調整も遅れはありません。」
その答えに満足したようにゲンドウは組んだ腕の下で口を歪めて笑う。
「そうか・・・・レイに食事に行こうと伝えておいてくれ。」
「・・・・・・・・分りました。」
私はもう・・・・計画を支えるだけの科学者としてしか見てもらえないのね。
なのに・・・・・・レイは・・・・・!・・・・
嫉妬していると言うの?作りモノに・・・・・・あの女の紛い物に。
「・・・・・・・・・・・」
「まだ何かあるかね?」
「い、いえなんでもありません・・・・・失礼します。」
そう言ってリツコは指令室を後にする。
「本当の私をあの子がみたら、きっと軽蔑するわね。」
偽りの家族であるはずの青年の姿を頭に浮かべる。
そう、最初から分っていた事・・・・いつかは私のやった事に気がつく時が。
コツコツと足音だけが響く。
リツコが退室したのを見計らって冬月が口を開く。
「赤木博士か・・・・彼女は随分あの少年に入れ込んでいるようだが、大丈夫かね?」
組んだ腕をほどき、椅子に寄りかかりながらゲンドウが答える。
「あの男の出現で心変わりしたとしても、もう遅いさ・・・・・ダミープラグ・・・・・あれに手を染めた時点で彼女はこちら側の人間だ。一度こちら側に来た
らもはや向こう側には戻る事は出来んよ。」
ニヤリ、と口を歪めて笑い席を立つ。
「ダミープラグ・・・・・悪魔の業だな。この世に神が居るとすれば我々は裁かれるだろうな。」
ゲンドウは窓際まで歩いていき外に広がる風景を見下ろす。
「・・・・冬月・・・・神は存在してはいない。だからこそ作り出すのだよ・・・・・我々の手で。」
両手を力強く握りながら窓の外を見る、果たしてその視点の先に在ったのは今は無き妻の姿か、それとも・・・・・・
修羅から人へ〜第五話〜
『探しモノ、見つけモノ』
「あれ〜?シンちゃんお出汁変えた?」
夕食の準備を終えてキッチンから鍋を持ってシンジが出てくる。
「わかります?カツオ出汁ですよ、リツコさんのお土産です。」
出汁を変えたことに気付いたのが嬉しいのか嬉々としてミサトに答える。
「へ〜リツコの・・・」
と言って再び味噌汁をすすり始める。
ドタドタドタッ!シャ!
バスルームの方から大きな足音が聞こえたかと思うとカーテンが開かれてバスタオル一枚のアスカが顔を出す。
「あっつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
よほど熱かったのか爪先が少し赤くなっている。
「ごめん。」
うっかりしていたのか本当に申し訳なさそうに謝る。
しかし、アスカの怒りはそんなものでは収まらないらしく続けて怒鳴る。
「うぅ〜!そうやってすぐ謝って!本当に悪いと思ってるの!?」
ミサトはミサトで『うゎ〜またはじまっちゃった、夜なのにうるさいわね〜』と横目で見ながらまだ味噌汁をすすっている。
「うん・・・・」
「シンジってなんだか条件反射的に謝ってる気がするのよね!人に叱られないようにさ!!」
「ゴメン・・・・」
「ほ〜ら〜!内罰的過ぎるのよ!!根本的に!」
いつのまにかビールを飲んでいるミサトが『そろそろ助けてあげようかな』と口を出す。
「ま〜ま〜それもシンちゃんの生き方なんだからさ〜。」
待ってましたとばかりにミサトに怒りの矛先を向ける。
「彼の生き方を容認するなんて甘い!ミサトは最近シンジに甘すぎるわよ!!」
「そ〜お?」
「大体、加持さんとよりが戻ったからって自分の幸せ押し付けないでよね!」
「加持なんかとはなんでもないわよ〜。」
と少し方向がずれた会話をしている中に三人とは違う声が響く。
「あの〜お説教中申し訳ないんですが〜」
「何よ!まだアタシの話は終わってな・ぃ・・ゎょ?」
振り向きざまに発言者に怒鳴ろうとしたアスカの動きが止まる。
「ここは俺の家だったと記憶してるんですけど・・・・・」
「住所も間違いなくカズヤ様のお宅です。」
アスカの視線の先には申し訳なさそうに立っているカズヤと、普段のメイド服と違いハイネックのシャツとロングスカートのメアリが立っている。
「カズヤく〜んお帰りなさ〜い」
ミサトがビールを片手に手を振る、シンジも鍋をおいてカズヤ達を迎える。
「あ、カズヤさんお帰りなさい。」
「はぁ・・・・で、なんで?」
「そ〜れがね、エアコンと水周りが一緒に壊れちゃってリツコに相談したら『一日くらいカズヤに泊めてもらえばいいじゃない』って言われたからお言葉に甘え
ちゃったってわけ。リツコに聞いてなかった?」
「・・・・な、なにも聞いてませんけど・・・・・どうやってここに入ったんです?」
「ふっふっふ、ジャーン!」
自分の口で擬音を付けつつテーブルに置いてあったカードキーをカズヤに突きつける。
「このマスターキーで開けたのよん、私ってばカズヤ君の上官でしょ管理人に言ったらすぐ出してくれたわよ。」
こ、この街にはプライバシーって言葉は無いのか?それともこの人限定か?頼むよ姉さん・・・・
「ま、まぁ事情は分りましたけど・・・・・・・・・そこの石像はなにやってるんです?」
「「石像?」」
ミサト達がカズヤの指差す方向を見ると、同じくカズヤを指差したまま固まっているアスカが居る。
「アスカ・・・・・なにやってんの?」
「な、な、な、な、な」
ミサトが話しかけるとアスカは壊れたように言葉を発する。
「な?」
カズヤが言い返すと今まで固まっていたのが嘘のようなダッシュでバスルームに駆け込みカーテンを閉める。
「何がしたいんだ・・・・・あれは?」
「恥ずかしがっているのではないでしょうか、何分お年頃の女性ですし。」
「はぁ、そんなもんかね?」
カーテンから首だけ出してアスカが大声でカズヤに抗議する。
「なんでアンタがいんのよーーーー!今日は本部に泊まりじゃなかったの!!」
「思ったより仕事が早く終わったんで帰ってきたんですけど・・・・・」
「なんでチャイム鳴らさないのよ!!」
「いやー自分の家だし・・・・・」
「まーまー、いーじゃない見せたって。減るもんじゃ無いでしょうに。」
「減るわよ!!」
ミサトのおかげで余計ヒートアップしたアスカに冷静にメアリが進言する。
「アスカ様・・・あまりそのようなお姿のままで居られるのもどうかと、風邪を引くかもしれませんし・・・」
「・・・・・フンッ!」
アスカは静かになって、勢い良くカーテンを閉めてドスドスと足音を立ててバスルームに向かう。
やっと終わったかといった表情でシンジに話しかける。
「で、アスカは何やってたんだ?」
「ええ、何でもお湯が熱いとかって・・・・あ」
説明してる途中でシンジが問題の根本的な問題が残っている事に気付く。
『あっつーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!』
「はぁ〜・・・・」
まだ終わらないのか、と思わず溜め息をつく。
タバコを吸うために深夜のベランダに出たカズヤ。
メアリがいると喫煙者は肩身が狭いなぁ・・・・・まぁそのおかげで部屋とかきれいになったんだけどな。
メアリが来てからというもの、メイドと言う職業の所為か部屋を散らかしたり、室内でタバコを吸うと直にメアリがやってきてくどいお説教が始まる。
この前も部屋でゴロゴロしながらタバコを吸っていると珍しくノックなしにメアリが入ってきて、
『カズヤ様・・・・・またそのような格好でタバコなどを・・・・・・いいですかタバコと言うものは吸っている人間には心地よいものかもしれませんが周りに
いる人間が一概にそうとは限りませんよ、まずタバコを吸うときには周りの方々の了承を取るなど大人としての自覚をするべきだと私は思いますが・・・・第
一、タバコの匂いという物はなかなか取れないのですよ、このカーペットや壁紙にどれだけのヤニが着いている事か・・・・・・それを掃除する私の労力も考え
て頂かないと・・・・・・大体カズヤ様の部屋は汚すぎますもっと一人前の大人としての自覚を持っていただかないと・・・・』などなど
正直驚いた。
メアリがあんなに喋るとは思わなかった、タバコ・・・・いや、掃除の事になると潔癖症だと言わんばかりに良く喋る、口答えなどしようものなら更に2時間ぐ
らいお説教が伸びる。
更にたちが悪いのはテンポが変わらない口調とあの子供みたいな真っ直ぐな目で見られると罪悪感に蝕まれて来る・・・・・・・
まぁなんとなく違った感じのメアリが見れて面白いんだけどね。
なんて事を考えながら肺まで吸い込んだ煙を『フゥー』と吐き出す。
夜はいいねぇあの地面を照りつける太陽もないし涼しくていいなーと思いながら煙で輪っかを作っていると窓が開く音がしてアスカが顔を出す。
「あんたなにやってんの?」
「我が家ではとある事情からこの場所で、しかもこの時間しか喫煙できんのだよ。」
「はぁ?また訳の分んない事を・・・・ところでさ、なんか飲む?」
「飲む。」
それを聞くとアスカはキッチンに行って冷蔵庫を開けている。
むぅ、奴に遠慮と言う文字は無いのか?一応俺の家だぞ・・・・・
コップを二つ持ってアスカが帰ってくる。
「はい、麦茶でいいわよね。」
「烏龍茶の方が好きなんだけどな・・・・」
「じゃ、飲まなくていいわよ。」
「ゴメンナサイ、ゼヒソノ麦茶ヲ。」
はい、とコップを手渡される。
「そういえばいつもみたいに髪の毛を縛ってないな?」
「当たり前でしょ、寝るときは髪の毛解くでしょフツー。」
そんなもんなのかねぇ?
髪を下ろしたアスカはいつものように活発なイメージとは逆、どちらかと言えば物静かな感じがする。
黙っていれば美人なんだけどねぇ、損な奴。
「なに、その人を哀れむような目は?」
「べーつにー。で、何しに来たんだ?」
アスカは麦茶を飲むのを止めて溜め息をつく。
「はぁ・・・・アンタ無駄な事にはよく気がつくわねぇ。」
褒めてるのか?少しムカつくんだが・・・・・
「実はさー・・・・・なんか最近シンクロ率が伸びないのよねぇ・・・・ううん、エヴァに乗ってても前みたいに熱くなれないのよね・・シンジに抜かれても
『あ、負けちゃった』位でさ・・・エヴァってアタシのなんなのよ、って感じ・・・・」
「驚いた・・・・アスカがそんな事を言うとは・・・・・明日はN2爆雷でも振ってくるんじゃないか?」
「はぁ・・・・人が真面目に言ってるのに。」
「冗談だよ、いいんじゃないそれで。」
「どこがいいのよ、アンタ真面目に考えてる?」
ムッとした顔でこっちを睨んでくる。
「いやいや真面目にさ・・・・今までが悩まなすぎたんだろ。自分の今の立場とかこれからの事とかいろいろ有るだろ?・・・・別にエヴァに乗るだけの人間
じゃ無いだろいろいろ考えてみればって意味。」
「ふーん、前にも同じような事聞いたわね。」
「あの時よりは成長したんじゃない?」
「ま、ね・・・・。」
アスカは少し考えるような顔をしてカズヤの方に向き直る。
「明日さ、買い物付き合ってよ。」
「買い物?何買うんだ?」
「香水・・・・かな、ラベンダー以外の。」
「ラベンダー以外?」
カズヤが不思議そうに訊ねると少し嫌そうな顔をして、
「嫌いになったのよ・・・・・・じゃ、そーゆー事でよろしく。」
それだけ言ってベランダから逃げるように出て行く。
なんかラベンダーで嫌な事でもあったのか?
まぁあんまり立ち入ってほしくなさそうだしな。
「しっかし・・・・」
妹とか弟ってこんな感じなのかね、あの三人を見てると気になって仕方ないな。
不安ってゆうか、もどかしいってゆうか。
自分のお節介さに戸惑いながら再び新しいタバコに火をつける。
〜Kazuya〜
うむ、今日も晴天!そして暑い!
昨日のアスカとの約束どうり第三新東京駅周辺のショッピングモールに来ているのだが、俺は立ちすくんでいた。
目の前にはこちらを睨み・・・・・いや、もはやガンを飛ばしてきているアスカが立っている。
いったい何が不満なのだろう?
「どうした?」
訳が分らないので聞いてみると米神をピクピクさせながら。
「はぁ?あんた何考えてんの?」
まったく持って訳が分らん?
「昨日買い物行くって約束したからちゃんと来たじゃん。」
アスカはブルブル震えながら俺の後ろを指差す。
「なんであいつ等までいんのよ!」
アスカの指の先には例によって『あはは・・・』って感じに頭をかいているシンジ君といつもの本を読んでいるレイがいる、当然だ俺が呼んだからな。
ちなみに今日はメアリは業魔殿に里帰りしているからいない。
「出かけるんだし大勢の方が楽しくなるだろ。」
そう言うとアスカは後ろを向いて何らやブツブツ言いフーっと深呼吸をしている。
気分でも悪いんだろうか?
「ま、ま〜いいわ。じゃあさっさと行きましょう。」
という訳でもないらしい。
〜Asuka〜
あたしは暑い中、目の前の男を睨み付けていた。
昨日コイツと買い物に行く約束をして第三新東京駅で待ち合わせた。
約束どおりコイツは来た・・・・・・おまけを二つも持って。
「よ、時間どうりだな。」
確かに時間どうり。
アタシはこみ上げてくる怒りを抑えながら二人がいる理由を聞いてみる。
奴曰く『遊びに行くには大勢の方がいい』らしい。
その答えにアタシは盛大にキレそうになるが奴に背を向ける。
何なのよコイツは!普通アタシみたいな女のコが誘ったら二人でって事でしょ!?
コイツの頭の中は小学生かっての!・・・・・はっ!
落ち着け私、気分を落ち着けるのよ、深呼吸して・・・・フー。
アスカ貴女は大人よ、こんなバカで使徒と力比べ出来そうなサルに怒鳴ったらあなたも同レベルよ。
落ち着いて、落ち着いて・・・・・フー。
フ、フフン。シンジとファーストが居る位些細なことよ。な、なーんの問題も無いわ。
「じゃあさっさと行きましょう。」
そう言ってモールの方に歩き始める。
〜Kazuya〜
アスカは調子を取り戻したように歩きながらいろいろな物を見ている。
それと同時に俺の手荷物もどんどん増えていく。
洋服、バッグ、アクセサリー、日用雑貨、その他。
それとは逆に俺の財布からはすごい勢いで福沢さんがいなくなっていく、高校生の時のバイトとは比べ物にならない位稼いでいるはずなのだが、すでに紙幣を入
れる部分は空白になって、残されたのはプライスレスのカードだけだ。
なぜだ・・・・なぜこんな事に・・・・奴は悪魔か・・・・・あ、悪魔は俺か・・・・
「綾波、今日も制服なんだ。」
「ええ、私・・・服これだけだから。」
レイは本から顔を上げずに答える、いつも読んでるけど何の本だ?
「じゃあさ・・・今日は綾波の服を買おうよ。」
「別にいらない・・・・必要じゃないもの。」
シンジ君の提案を顔を上げずにバッサリ切る。
「駄目だよ制服だけじゃ、いつも着てると皺になっちゃうよ。それに家じゃ下着のままだろ?」
「必要ならそうするわ。」
「必要だよ、だから買おう。」
シンジ君の説得に応じたのか、本を閉じてシンジ君の方に向きなおる。
ちょっと待て・・・・なんでシンジ君がレイの下着を知ってるんだ?それってそーゆうコト?いつの間にか大人になってたんだねぇ。
「これなんかどうかな?綾波は肌が白いから黒っぽい服似合うよ。」
「そぅ?よく・・・分らない。」
「じゃあこれは?」
「良く分らないわ。」
「うーん・・・・これならいいんじゃない?」
「知らない」
シンジ君とレイは・・・・・あっちはあっちで独特の空間を形成しているように見える
一見カップルの普通の会話に聞こえるが・・・・・どうよ?
稀に見る積極的なシンジ君だがレイのほうはまったく関心が無いようだ、最後の方なんか飽きて別の方向を見てるから会話が噛み合ってないぞ。
シンジ君・・・・・それでいいのか?見てるこっちが悲しくなってくるぞ。
ん?サイレン・・・・・また使徒が来たのか?
重苦しいサイレンが鳴りはじめた直後に俺の携帯に緊急コールが入る。
俺は直に携帯を取り出して通話ボタンを押す。
「はい、赤木です。・・・何かあったんですか?」
『カズヤ君、私よ。使徒が出たわ、シンジ君達も一緒?』
「ええ、一緒です。」
『至急本部まで来て頂戴・・・・・できるだけ急いでね。街の直近くまで来てるわ。』
「了解です、至急向かいます。」
携帯を切って辺りを見回す。
周りの店は次々と閉まっていき、歩いていた人々は指定のシェルターに向かっている。
空には・・・・・・・・・・・パンダカラーのスイカ?
こりゃぁ・・・・急いだ方がいいな。
〜Asuka〜
フフン、いい気分だわ。
私の後ろでは大量の荷物を抱えているカズヤが付いて来る。
それもそのはずアタシが気に入った物を片っ端から買わせているからだ。
あいつも何と無く自分が悪い事をしたんだろうと思ってるんだろう、嫌な顔をしつつも買ってくれる。
まぁ何が悪いのかに気付いてないところがムカつくが、その辺はこのアスカ様の寛大な心で許してやる事にしよう。
当のアイツはさっきから財布を見て溜め息をついている。
シンジ達は・・・・・・・・・・・・・・なにやら不毛なやり取りをしているようだ。
途中なにやら不穏な事を聞いた気もするが・・・まぁ、いいわ。
そんな事よりも当初の目的の香水を買わないとね・・・・・・罰も十分に与えたしそれでいいかな。
そう考えてショーウィンドウの商品を物色していると何時も聞きなれた警報が鳴り始める。
嫌な予感がするわ・・・・・そう思った直後にカズヤの携帯が鳴り始める。
「了解です、至急向かいます」
話が終わったらしく携帯を切ってこっちに歩いてくる。
どうやら予感じゃなく確定のようだ。
「アスカ使途が出現したから買い物は終わりだ。」
そう言いながら後ろの空を指差す。
モノクロの不思議な模様をしたボールが飛んでいる。
あんないつもにまして訳の分らないものにアタシの至福の時間が邪魔されたのかと思うと収まっていた怒りが沸々とこみ上げてくる。
どうやらストレス解消の標的はカズヤからあの球体に変わったようだ。
葛城さんの後ろ、姉さんの隣、発令所での俺の定位置となったそこからモニター越しに浮かぶ使徒を見る。
しかし・・・なんであんな形よ。
姉さんに聞くところによると使徒は全部で単体の物体らしい、前の形状で学んだ事を次に生かすことで総合的に優れたモノになるらしいのだが・・・・・・
「何を生かせばあんな形になるんだ?」
「さぁ?私に聞かれても困るわ、もしかしたらどこかのアドバルーンが飛んできたのかもしれないわよ。」
「なるほど・・・・」
そんなくだらない会話をしていると肩を震わせていた葛城さんが怒鳴る
「あんた達バカな事言ってるんじゃないわよ!あんなの使徒以外考えられないでしょ。リツコまで一緒になってなにやってるのよ。」
まったく、と言う感じでモニターを睨みつけて指示を出し始める。
「みんな、聞こえる?今回の使徒は微弱なATフィールドが検出された以外は一切分ってないわ慎重に行動して。」
葛城さんが皆を引き締めるように声をかけるとEVAから通信が入る。
『ミサト・・・・・オフェンスはアタシにやらせて。』
何時もはうるさい声で通信を入れてくるアスカが今回は不気味なほど落ち着いている・・・・顔は無表情で・・・・・
「ア、アスカ、落ち着いて!な、なにがあったのか知らないけどとりあえず落ち着きなさい!」
葛城さんの対応から見るとどうやらアスカは怒ってるらしい。
『十分落ち着いてるわよミサト・・・・これ以上ないくらいにね。』
何があったか知らないが相当ご立腹のようだ、良く見ると肩が小刻みに震えている。
「と、とりあえず駄目よ!シンクロ率順に先行はシンジ君、アスカとレイはバックアップよ。」
『わ、分りました。』
『了解。』
今のアスカに先行を任せるのは危険だと判断した葛城さんはシンジ君を先行にするらしい。
白羽の矢が当たった当の本人は「マジでっ!?」と言う感じでビクビクしている、心なしか初号機も弐号機の様子をうかがっている様に見える。
レイは何を考えているのか落ち着き払っている。
『チッ。』
そんな声を残してアスカ達からの通信は切れる。
「あなたあの娘に何かしたの?」
「いや・・・全然心当たりが無い・・・・多分。」
無いよなぁ・・・買い物の時はあんなに怒ってなかったし。
この時・・・もっと慎重になるべきだったろうと・・・数分後、俺達は思い知る事になる・・・・・
「影の方が本体だったとはね・・・・」
「どういうことだ?あの影の先はどこに?」
球状の使徒の影を取り囲むようにして作られた仮設司令部で姉さんと広がっている黒い影を見つめる。
「ATフィールドを外に向けるのではなく内向きにすることであの極薄の体の中にディラックの海という名のもう一つの空間を作り出しているのよ・・・・・多
分シンジ君もそこに・・・・」
「初号機を呼び戻す方法はあるのか?」
「一応ね・・・・・2機のEVAでATフィールドを中和した後、現存する全てのN2爆雷をあの影に投下してこちらの空間と一時的に繋げて初号機を救出する
わ・・・・・」
「そんなことして初号機は大丈夫なのか?」
姉さんは少し考えたように黙って再び口を開く。
「初号機は無事よ・・・・初号機は・・・・」
「パイロットの事は分らない、か・・・・・・それも指令の判断?」
「・・・・・ええ。」
しばらく重苦しい沈黙が続く。
「・・・・・なぁ、あれ体に悪いと思う?」
「何を言っているの・・・・・・!・まさか貴方あの中に入る気!?」
驚いたように姉さんは俺を見る、まぁ実際驚いてるんだろう。
俺だって普通の時じゃ絶対行きたくない。
「でもさ・・・・・目の前で知り合いがどうにかなるかもって時にじっとしてるのもあれじゃん?・・・・・幸い丈夫な体を持ってる事だし。」
「正気なの!・・・・無事に帰ってこれる保障なんてどこにも無いのよ!」
珍しく姉さんが声を荒げる。
「まぁ、今までもこんな感じだったし・・・・大丈夫でしょ。」
そう言って仮設のテントを出て行こうとする。
「12時間・・・・・・12時間以内に帰ってきなさい。空爆を延ばせるのはそれまでよ。」
「はは・・・・ありがとう。」
「・・・・・気をつけなさい。」
姉さんと別れて使徒の影に一番近いビルを上っていく。
初号機か・・・・指令は実の息子よりも初号機の確保を優先した・・・・・何のため?
・・・・使徒を殲滅するため・・・・・いや、それなら数少ないパイロットも救出するはず・・・・・なら理由はそれ以外?
EVAのパイロットは他にもいる?・・・・・それとも初号機を無くせない訳があるのか?
そんな事を考えているうちに屋上まで上りきる。
黒い空・・・黒い海・・・そしてとんでもなく高い飛び込み台・・・・・・・・・・・・・・・帰ってこれるかな俺。
上りきったところで下を見るが・・・・・なかなか高いな。
あんなコールタールみたいのにゆっくり飲み込まれるのはイヤだから飛び込もうとしたけど・・・・やだなー。
いつまでそうしてる訳にもいかないので意を決して飛び込む。
チャポン
そんな間抜けな音がした気がしたかと思うと刈り取られるかのように意識が途切れた。
カタカタカタカタカタカタカタ
いつから目が覚めていたのだろうか?
気付けば俺はふかふかした映画館のイスに座っていた。
周りを見回してみるが誰も居ない、古ぼけた壁と赤い座席の半世紀位前の映画館。
俺・・・は・・・・・・使徒の中に飛びこんだんだよな?・・・・・
しばらく辺りを見回していると突然照明が落ちる。
そしてスクリーンにセピア色の画面が映し出される、ところどころノイズが走り古い映像だと、何と無く印象付けられる。
カタカタカタカタカタカタカタ
画面に文字のような物が映し出されていく。
『人は誰しも少なからず悲しい事を経験していくものです。』
『普段はココロの奥底に閉ざされていても決して忘れる事の出来ないもの。』
『それは貴方の、誰かの歩んできた道のり。』
『これはそんな少年の物語。』
『貴方はこの少年の過去に何を見るのでしょうか。』
『囚われた過去』
そんな題名が終わったあと直に一人の少年が映し出される。
4、5歳位だろうか?半そで半ズボンの少年が泣いている。
『この少年の名は・・・・そうですね仮にA君としましょう。この物語はこのA君を中心に動き出していきます。』
場面は変わり今度は見覚えのある実験施設、多少違いはあるが見間違えようの無い・・・・ネルフ本部だ。
『A君の両親は科学者でした、この日は日々の研究の成果を息子に見せようと連れてこられたA君。ガラスの向こうには実験機に乗った母親がA君に笑いかけて
いました。誰もが実験の成功を確信していた事でしょう。』
施設の中を小さな子供が走り回っている、研究員達は叱る事も無く笑顔で眺めている。
ガラスの向こうにあるのは零号機に良く似ているEVA・・・・・それに乗った女性はモニター越しに子供に手を振っている。
心なしかレイに似ている気がする。
『誰もが成功を確信していた、彼女もそうなのでしょう・・・・・・・しかし運命は時に残酷なものです。』
突然女性を映していたモニターがブラックアウトする。
画面の中が騒がしくなり研究者達が叫んでいる。
男の子は騒ぎ出すわけでも泣き出すわけでもなく、ただ、目を大きく見開いている。
一人の研究員がガラスに手を突いて何かを叫ぶ。
(**!**!)
妻の名前だろうか、その叫びもむなしく女性は再度映し出されたモニターの中には映っていなかった。
『こうして少年は母親を目の前で失ってしまったのです。』
再び場面が変わり今度は駅のホームのようだ。
大きな荷物を持った子供と背の高い男と向かい合っている。
『失ったのは母親だけではありませんでした、A君の父親は妻が消えてしまったショックでA君一人を知り合いに預けて消えてしまいました。・・・・こうして
A君は父親も失ってしまったのです。』
画面が矢次に入れ替わり少年の成長が映し出される。
預けられた先で「家族」という輪の外での暮らし。
自転車泥棒で補導された時に出した父の名前、でも父は来てくれなかった。
誰にも必要とされない、誰も必要としない抜け殻のような生活。
『こうして流されるままに生きてきた少年の「時」はある手紙で再び動き出しました。』
ボストンバックを持った学生服の少年がこちらに背を向け駅に歩いて行く。
中学生位だろうか自分の良く知る少年の後姿に似ている。
「シンジ君・・・・か?」
『果たしてこのA君が歩む道にはどのような悲しみが待ち受けているのでしょうか・・・・それはA君自身にも分らないのでしょう。』
シンジ君の過去?・・・なぜ?
『それはココが人々の夢の交じり合う場所だからだよ。』
その聞き覚えのある声に、立ち上がって声の響いてきた方向を見る。
『そういえばこうして会うのは初めてだな。』
見覚えのあるそいつは俺とは逆の白い服、白い髪、そして金色の目をしていた。
『いい趣向だろう?・・・・・・・赤木カズヤ。』
そこには俺が立っていた。
「俺・・・・だと?」
『言っとくけど俺は夢じゃないぜ。』
夢じゃない・・・・・なら俺の目の前に居るこいつはなんだ?
『世界の底でその心を悪魔にすることを否定しただろぅ・・・・・俺は悪魔になるはずだったお前自信だよ。』
「なんだと?」
『表のお前と裏の俺・・・・・あの時からお前と俺、2人で1人なんだよ。』
「・・・・・・・・」
『この世界はいいなぁ、あの世界よりもずっと楽しそうじゃないかよ』
そいつは両腕を広げながらスクリーンのある壇上へ上っていく。
そして大袈裟な動作で役者のように振り返る。
『そこで相談なんだがよ・・・・・そろそろ入れ替わろうぜ。』
「入れ替わってどうするつもりだ?」
そいつは何を言ってるんだと言うような顔で言う。
『はぁ?決まってるだろ嫌な物を壊しつくして、嫌な者を叩き潰す。あの赤い世界のルールだぜ?』
「答えは分ってるよな?」
『まぁね、伊達に赤木カズヤをやってねぇよ。』
頭をポリポリとかきながら溜め息をつく。
『でもこの後俺が何を言うか分るか?』
俺はそいつの口調に合わせるように言う。
「『じゃあ力ずくでやらせてもらうかな。』」
そいつは『はは、やっぱり俺だな。』と言って指を鳴らす。
今まで映画館だった周りの風景ががらりと変わる今まで何度も見慣れた「トウキョウ」の街並み、だが周りを見ても誰もいない、ただそこにあるだけの街。
「人がいないと変な感じだな。」
『どうよ、うってつけの場所だろ?』
そうだな、と思いながらあいつのほうを向く。
西部劇の決闘というのはこんなかんじかなぁと思う。
しばらくお互いを睨み続けていた二人の姿が同時に消え次の瞬間ちょうど中心で拳を合わせた状態で止まる。
ただ全速で走って全力で殴る、それだけの行為なのだが二人を中心に空間が震える。
道路は剥がれ、ビルのガラスが割れていく。
「人がいなくて良かったな、全力が出せるしな。」
『俺はいても構わないけどなっ!』
拳を合わせた状態から『カズヤ』は回し蹴りを放つと「カズヤ」は大きく横に飛ばされビルの中に突っ込む。
天井でも崩れて来たのだろう、ビルの入り口から土煙が舞い上がる。
その土煙を引き裂くように「カズヤ」が飛び出てきて疾走していく、常人の目ではとても捉えられないようなスピードで走り『カズヤ』を力任せに殴る。
「カズヤ」と同じようにビルの中に突っ込むが、しばらくすると『カズヤ』の方は土煙の中から歩いて出てくる。
『ははっ、やっぱ相手が自分だと全力出せるなぁ、お互い。』
まるでスポーツでもやっているかのように笑いそして空手の型を崩したようなのような構えをとる、それを見た「カズヤ」もニヤリと笑い左右非対称のまったく
同じ構えをとる。
そして示し合わせたかのように再び殴りかかるが今度はお互いに捌き合う。
二人の戦い方は単純、ただひたすら殴って蹴る・・・ただのケンカだ。
一般人のケンカならなんてことはないがこの二人の『一発』は人を殺すどころか消し飛ばすことすら出来る。
だがそれもただの殴りや蹴りだ、手足の長さは変わるはずも無く当たらなければパワーも何も無い。
魔法を使えばもっと戦略の幅も広がるのだろうが、二人は全く使おうとしない。
『楽しいなぁ!自分と殺り合うのがこんなに楽しいとは思わなかったぜ!』
喋っている最中も攻撃の手を休めない、おそらく休めればその隙を突かれてまた建物にダイブすることになるだろう。
「自分と殴り合って楽しいわけねえだろう!このイカレ野郎!」
そういいながらも自分はきっと笑っているのだろう。
それほどまでに楽しい、下手をすれば『自分』に殺されるかもしれない、そんなスリリングなゲームをやっているのだ。
魔法なんて無粋なモノを使わず純粋にもっとこのゲームを楽しみたい、それしか二人の頭の中には無かった。
持っているポテンシャルは全く同じ、一発顔に入れば一発腹に反すというように互いに一歩も引かない。
時間がたてばたつほど街並みは崩れていく、きれいだった街並みも今や戦時中のような有様になっている。
「カズヤ」がストレートを放てば『カズヤ』はその手を引き寄せ足を刈り地面に引き倒す、そして頭のある場所を踏み抜ぬく。
「カズヤ」は最初から踏みに来る事がわかっていたかのように勢い良く立ち上がって腹にミドルを放つが『カズヤ』も同じく知っていたかのように軽くいなす。
そんな事をどれだけ繰り返しただろうか。
全く勝負が着かないかのように見えた戦いだが、突然『カズヤ』の方から離れていく。
「・・・・・どうした?」
『残念ながら時間切れだ・・・・・制限時間内に倒せなかった俺の負けだわ。』
『あ〜あ。』と言ったジェスチャーをしながら自らの負けを告げる『カズヤ』
「なんだよ、随分あっさり引くじゃないか。」
『なんだ?気付いてないのか?もうすぐ11時間を回るぞ。』
11時間もうそんなに!?やべぇ・・・・忘れてたよ。
『流石俺だな間抜けすぎるぞ。まぁ体を壊されたんじゃ流石に俺もたまんねぇからな、手伝ってやるよ。』
そう言って『カズヤ』が最初と同じように指を鳴らすと辺りの風景が霧のように四散していく。
街並みが少しずつ崩れて別の物に作り変わっていく。
器用な奴だ。
茶色のやや使い込まれたような長椅子、天井に有るのは雑音の酷い扇風機、何か懐かしさを感じさせる電車の中だ。
「おい・・・なんで電車なんだよ。」
『しらねぇよ!あそこに居るガキを探したらココに着いたんだよ。』
そう言われて隣の車両に目をやるとシンジ君が居る・・・・・・・・二人。
「おい・・・・・何で二人も居るんだよ、一人でいいんだよ。」
『さぁ?人間てのはそーゆーもんなんじゃないの?』
アスカがこの場にいたらきっとこう言っただろう「バカが増えた」と。
「そんなわけあるかよ・・・・・あ?・・・1人になってる。」
『用は済んだわけだ、そろそろ俺も消えるかな。』
「おう、悪いな手伝わせて。」
そう言うと『あいつ』は子供みたいに笑って。
『いいって事よ、後で俺がその体を貰うんだからな、自分の為ってやつだ。』
「一生言ってろ、バーカ。」
それっきり『俺達』は互いに後ろを向き歩いていく。
「『じゃ、またな。』」
全く同じタイミングで『俺達』はそう言って分かれた。
「さて、アイツも行った事だしさっさとココを出ないとな。」
そう呟いてシンジ君の座っているところまで近づく。
気付いてないのだろうか?シンジ君は俯いたままなにかを呟いている。
考えたらここはシンジ君の夢の中だった、どうしたものかと少し考えたが声をかけて見ることにする。
「シンジ君、帰ろう。」
その言葉を言った直後、周りの風景がひび割れて崩れていく。
夢が終わろうとしているのだろう、俺の姿は徐々に薄れてきている。
シンジ君も同じように消えて行こうとしている、ただ一つ違うのは今まで下げていた顔を上げようとしていた。
そして体が完全に消える直前、シンジ君の目が俺を捕らえた・・・・・・・気がした。
そこで俺の意識は途絶えた。
目を覚ました時、俺は病院のベッドの上にいた。
姉さんに聞いたのだが間も無く空爆が始まる所だったが初号機が暴走して使徒の体を引き裂いて出てきたのだそうだ。
俺は初号機の手の平で護られるようにして大の字で寝ていたらしい。
肝心のシンジ君はまだ目こそ覚めてないが体には何の異常もないらしい、因みに俺の体は骨が数本折れていた。
魔法で直そうかとも考えたがしばらくはこのベッドの上で怪我人を演じる事にした。
夢の中で見たシンジ君の過去、あれが事実ならシンジ君はなぜあれに乗っている?
母親を飲み込んだ事を知っているはずなのに・・・・・いや、忘れているのか?
違う、シンジ君が第三者として映っていた実験室の映像だけは違う。
あの時『アイツ』はこう言った。
『それはココが人々の夢の交じり合う場所だからだよ。』
あの場所にいたのは、俺と『アイツ』とシンジ君と・・・・・・・・・初号機。
初号機の記憶?あれに意思があるのか?
そういえばあれにはシンジ君の母親が溶けているんだったな、何か関係が有るんだろうか?
全く纏まりを見せない自分の思考に頭を振り窓を開ける。
そして壁にかけられているスーツからタバコを取り出し慣れた動作で火をつける。
肺に入った煙を一気に吐き出す。
頭がまどろむ感じが何とも心地よいが、何かとてつもなく重大なミスを犯しているような気がする。
「赤木さ〜ん、血圧測る時間ですよ〜。」
軽い音を立ててドアが開き、若いナースが銀色のカートを押しながら入ってくる。
笑顔で入ってきたナースの顔が俺の指先を見て綺麗な笑顔が「ヒクッ」と引き攣る。
「赤木さん!病院内は禁煙ですよ!常識で物事を考えて下さい!!」
・・・・・それか。
感想
SSSさん今回もいい味出してます♪
カズヤ君がディラックの海に飛び込むというのは面白い部分ですね〜
そして二人のカズヤ君の戦い、いい感じでした!
それに見逃してはいけないのはメアリ嬢! 性格が変わってしまうとは!
面白いですね〜
ちょっと待ってください! ヒロインのアスカさんを忘れてはいけません。
今回は、カズヤさんとデート…
に、なりそこなってしまったね(汗
でも、いい感じになっていたんです
から後一歩と言う所まではいってますよ。
アスカさん自身は自覚が薄そうではありますけど、明らかに…ですし…
それはそうだね、今までの傾向からいくと…
それはいってはいけない事です!
はははは(汗
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SSS
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