第234話『GPM熊本戦編3 薄氷の撤退戦』
1999年5月5日
ペレグリン級にでたカオルは端末の現地日時を確かめると、
分裂体を残し衛星軌道付近にて監視中のルーロスへと渡る。
「マスター久しぶりぃ」
「5日ぶりか?」
「ぼくにとったら約2ヶ月ぶりだよう」
衛星軌道において地上の監視業務にあたらせていた。
「ねぇマスター、素人さんが多いでちゅが、わざわざ救助するんでちか?」
「もちろん。彼等は宝の山だよ。
人類最強種っていってもよいからね」
「へっ?彼等がでちか?」
「あ〜…そういえばお前は初世界だったよな」
「でちよ〜」
山口戦時はルーロスは出してない。
「マスター虚数空間にほったらかしおおいいでちから、
空間外のようちゅ記録するそうちつくったんでちが」
「へっ?」
「マスターの行動わかるでちよ」
どやがおするルーロス。
「そんなのつくったんか…」
「でち。でも最近でちからこの世界は初でち」
「あ〜…彼等は桜井大隊の面子とおんなじ世界なんだよね」
「あのでちか!…なら納得でち」
「さて…九州撤退戦がはじまるか…」
「マスターにほっとかれたこの2ヶ月強の期間みているでちが、やっぱり負け戦でちねぇ」
九州戦役では…
西暦1999年3月14日、空前規模の幻獣が出現する。
同月22日、阿蘇に空前規模の幻獣が出現。
同月30日、14日レベルの幻獣規模が出現。
翌4月2日、追加予備兵力を投入。
同月6日、中学生の卒業を早めて学兵として編入。
同月10日、絶望的な数の幻獣が出現。
同月16日九州総軍は熊本県内の幻獣一掃作戦を計画。
同月24日阿蘇等から大量の幻獣が熊本城目指し大挙して攻めてくる。
後に熊本城決戦と呼称される。
熊本城決戦は多大な被害を出したが、
熊本市内からの幻獣一掃に成功し、
更には阿蘇など重要な戦区からも幻獣が激減した。
同月25日九州総軍は多大な被害の補充に追加学兵の投入。
再編成をおこない始める。
熊本決戦生き残った学兵らに、自然休戦期への期待が囁かれ始める。
翌5月1日共生派によるテロで九州総軍司令部壊滅…
学兵指揮系統に異常をきたしていた。
また他にも人類側圧倒的優勢という状況下により、士気が低下して、それに伴い脱走兵が続出している。
皮肉なものである…
もう俺が戦わなくとも誰かがやってくれる…
もういいだろう、俺はやったんだ、やり遂げたんだ。あとは生きて帰りたい…
そんな気配が士気の低下を促していた。
ガンパレードマーチのゲーム上でいえば…5月1日時点ではAランクエンド相当である。
九州全土の幻獣の囮になった…
その為熊本要塞以外においても、九州全土を保持し続けていた。
間もなく自然休戦期がくる夏が見えてきて、
学兵達は戦闘が終わると油断していた。
だが…阿蘇特別戦区…
「幻獣側が盛り上がってきはじめたちね…」
ここ二、三日程阿蘇特別戦区では連日連夜の攻勢にさらされていた。
さらに鹿児島、宮崎が5日に何度目かの陥落し…
そして…5月6日、
薄氷の4日間の狼煙があがる。
まだ闇がかかっている朝方、突如として幻獣の大規模攻勢が始まった。
士気が緩んだこの情勢下及び指揮系統及び情報伝達は混乱したまま…
九州総軍は熊本要塞の維持確保を断念、
自衛軍の戦力温存、山口県までの撤退を決定する。
夏の自然休戦期はすぐそこ…
自然休戦期まで耐えれば本州は無事であり、
九州より撤退し、山口県での水際防衛を固め、
自然休戦期まで持たせる方向で決定した。
何故福岡県で対応しないか?だが…
この時期には福岡県は要塞化できておらず、
本州と熊本要塞を結ぶ連絡路、後方軍事地域にすぎない。
阿蘇を失うと、熊本市街地が包囲により失われ、
その為熊本要塞を放棄すると必然的に大分もおち、
門司の確保が難しくなり、補給の絶たれた福岡県内に取り残される事になる。
それよりか、一方方向化した方が耐えられるという事であり、
熊本要塞を…いや、全九州の放棄を総軍は決定した。
放棄を決定したは良いが、民間人の避難も大切である。
しかし…九州と本州は海を隔てている。
九州と四国は海を隔てている…
つまり船、または海にかかった交通路である、関門橋、関門トンネル、国営鉄道の新関門トンネルの4つしかない。
航空路は燃料不足気味な日本にとっては使えない手段であった。
兵器を有する軍隊撤退するのに…4日間は最低限遅延撤退の必要性があった。
九州総軍は、元々捨て駒であった学兵達へ防衛命令を連発し、自衛軍の撤退が急がせた。
一見遅滞戦闘だが、学兵は見捨てられたも同然であり、
学兵の中でも使える極々一部の虎の子たる精鋭が、
撤退命令を先に受けとっていた。
その内の…使える一部であった5121小隊は、本土行き命令を拒否し、
この九州撤退戦で大活躍をみせる事になる…
……
発 九州総軍司令部 宛 第5324小隊
担当地域にて至急防衛展開し、合流
第12臨時守備中隊を編成、以後別命あるまで同地点にて防御せよ。
そういった命令が発令された。
「ふむ…総員起こし!」
寮にいた人員を多目的結晶にて起こしあげ、
緊急召集をかけ集合を急がせていた。
続々と学兵達がウォードレス着用しあつまり始めてくる。
出動待機命令がかかっている為、直ぐに車両も暖気運転にはいる。
「これより我が小隊は防衛待機命令により、出動する。各員乗車!」
12:00
担当地域は熊本市街地、いつもの通り…いや楽な戦いであろう…と思われていた。
だが、阿蘇方面が陥落していた。
総軍提供の戦略画面では、阿蘇特別戦区及び阿蘇戦区の放棄撤退が成功し、
縮小しつつあったと表示されている。
民間人には大攻勢が予想されるとの事で、
いち早く避難勧告が出され、
熊本から本州へと先に移動する事となる。
15:00
陣地構築を終えた部隊を傍目に、14時あたりから総軍より撤退命令を受けた学兵達が、
続々と鹿児島本線の列車に乗車し、
人の気配が次第に消えていく…
拠点防衛を準備した学兵達が改めて受けとった命令が、
熊本市街地要塞にて、大攻勢に対し別命あるまで防御し、要塞を支えよ…
との命令が下された。
学兵達はあるものはビルを拠点とし、
あるものは車両を拠点とし防衛体制をとった。
ビルはヒトバウン以外の小型幻獣が昇りにくい…3階以上だと殆どのぼって来ない。
よって拠点に最適であり、それを彼らは経験と学んでいた。
だから此処まで生き残れたのである。
熊本市街地はビルが多い…最適な阻止陣地になるであろう。
ミノタウルスや生体ミサイル持ちである、
ゴルゴーンやきたかぜゾンビの強襲、スキュラ等に注意すれば良い。
ビルに篭る以上、対策武器を携帯しないで篭りはしない。
ビルは陣地補強対策が済まされたのが優先的に選ばれ、
待ち構えていた…
夜中…
夜は猫神様が護っていた…
熊本には猫神様がいた。
ただし数は少ない。
夜に関しては幻獣は光学視認に頼っているが為、中型種以上は味方であるゴブを暗闇の中で踏み潰すが為に、
余程の光源がない限り日の光で活動をしていた。
つまり朝日で活動開始、暗闇になると活動を停止し身を休めるだ。
だが最小単位といえるゴブやヒトバウン…彼らはどうだろうか…
踏み潰すものもなし、個体数が特にゴブは多く、個性…夜行性活動をするのも居よう。
その為に夜間監視用として歩兵用フルフェイスウォードレスには、
夜間視認装置…ナイトビジョンが実装はされていた。
僅かな光源を必要とするが100m、200mはクリアに視認はできるが、視界は40度〜60度あたりと少し狭い。
軍用には性能悪いんではないかと思うかも知れないが、トマホークでゴーグル部分を叩かれてもけして壊れない、
ミノパンチでヘルメット部分ごと潰れるまで機能的には壊れない強固さがある。
量産品で全ての歩兵用ウォードレスについている機能でもあるが為に、それ以上良くはコストがかかりすぎる、生産性が落ちる面もあろう。
ヘルメット、ゴーグル無しで活動すれば良い?
皮膚を溶かす強酸にもある程度耐え、破砕された鉄片等から護る…跳弾も飛び交う近接戦闘にいつなるかもしれないのに…
まぁ勿論特注品というか改造により、光源要らずや更に視認性はあがりはする。
猫神様にもどるが、人類が組織抵抗していたが為に数が多い夜行性ゴブにも対抗できていた。
様は強集団の中に突っ込んでいく形だ。
だが組織的抵抗が止むと…
数多いゴブに手が回らなくなり……
線であった阻止線から間引かれると点になる。
猫神様が駆けつけても線にはならない…
山となり谷となりそして谷が横に広がり円となる。
円となれば補給が必要な人類は消耗し、やがて消え去るわけだ。
そうならないために基本阻止戦線では見落としを避けるために強烈な光源によって監視を助け、
そしてそれにゴブらが引き寄せられていく…
組織的抵抗が止み、山と谷がかなり生まれているさなか、
谷にあたる市街地要塞へとゴブらが足を進めていく…
尚敬高校は元は女子高であり、戦車兵の学校であったが99年3月終わりには、後方支援高へと変わった。
理由としてはまず戦車兵の資格には16日必要であり、
生徒達は動員時の選択に戦車兵半々、あとは整備兵及び後方支援を選択したものであり、
ほぼ希望通りに技能訓練習得に励み、各科兵となった。
だが出陣後に戦車兵を選択した者の損耗が激しく、99年3月末にはほぼいなくなった。
となると補充すべきであったが、総軍は再編を選択、
戦車兵が居なくなれば整備兵は他校へと転校し残るは後方支援兵のみであり、
間借りしている第62戦車兵学校であった第5121小隊の活躍で、
尚敬高校は後方支援専門高へとかわった。
だがその為に装備は劣悪、二人に一人の割合でしか武装はない。
熊本要塞にいた学兵は全ての者が命令をうけて最前線に投入されたり、撤退命令をうけたわけではない。
5月7日の時点でも、尚敬高校内では…
「会長、先生方は?」
「八品先生は出張、後藤先生は休暇、橘先生は…」
会長と呼ばれた福森 栄子17歳が答える。
尚敬高校は7日にもかなりの学兵が普段着で登校していた。
普段、交通誘導や鉄道警備にローテーションで従事しているが、
急遽差し換えとなって生徒達が揃っていた。
ただし、近づく砲音から不安がってはいたが、勝手な判断で避難する事もできない。
敵前逃亡罪にあたり死刑やラボ送りになり、それが学兵という14歳〜17歳迄の兵士でる。
だが命令を受ければその限りではない。
九州総軍または学校内では先生の許可を受ければ命令が受けた形だ。
福森は九州総軍に上申したが待機命令だけであり、また返答の遅さから、
学校の教師から許可を貰おうとしていた。
だが…
校長室には出張中の札が掲げられており、
職員室内の出勤を示すボードには病気休養、出張中等がかかれていて、
ほとんどの教師が校内に居ない状態であった。
ボードによれば僅かながら2名の教師がいる筈だがまだみつかってなかった。
「会長、事務の先生見つけたよ。校門前に」
「わかったわ」
生徒会室から駆け出し校門に向かうと、
(トラック?)
「浅川先生!すみません浅川先生!」
今にも乗ろうとしていた事務の先生が動き一旦止めて此方に顔をむけてきた。
顔を一瞥するとまた乗ろうとし始め、
「先生!ちょっと待って下さい!!」
ズボンを掴むと観念したかの様に路上へと足を下ろして姿勢を正した。
だが福森は息を整えていてその表情を見てなかった。
「先生…過去の熊本城攻防戦の様に市街地での殲滅戦が行われるのですよね?
安全をきして全校学兵の疎開を許可してもらいたいのですが」
浅川先生は答えない。
「浅川先生?……熊本城攻防戦時と同様に全校学兵の疎開させてもらいたいのですが…」
答えない浅川先生に変わり、車内にいた英語の教師の高山先生が顔をだしながら、
「ええ、そうですね。明日早朝、疎開の為の輸送ヘリがきます。
グランドに集合していてください」
「この護衛隊列での収容は?」
「残念ながら全ての学兵を収容する事ができません。徒歩行軍になりかねません」
「…そうですね」
「きたかぜ1改が明日此処に二十…機でしたよね?
20機派遣されてきます。それで尚敬高校の学兵の疎開を行います」
「明日何時になります?」
「えっと…明日0740ですね」
「了解しました。明日0740、疎開の為にグランドに全校学兵集合させます」
「よろしい。あと注意点ですが、武装はできるだけしないように。
重量オーバーになりますので」
「了解しました」
「さっ、浅川先生」
トラックの荷台に引き上げられる浅川先生、
荷台に座ると、合図をうけた護衛車列はエンジン音を響かせ発車していった。
「皆にしらせなきゃ」
先生を信じ、明日には撤退のための輸送ヘリがくる事を…
……
大量発生した幻獣達、
それには空中族と呼ばれるものも勿論いて、
それらは制空権ない空を悠々と飛んでいた。
なにしろ人間側の兵器である航空機は膨大なジェット燃料を消費する。
それが今は北海道にある人工燃料工場から産出されるわずかな量しかない。
車両用にはまだ大量に出せるが、航空燃料用には更にオクタン価を高めなければならない凝縮作業が求められた。
それが航空機の出動ができなくなる要因であり、制空権が存在しなくなる結果でもった。
熊本城決戦で使い切って今は燃料補充中である。
それに対し幻獣側は燃料を必要としない、
空中要塞スキュラ、きたかぜゾンビ等がいる。
空中要塞スキュラ、 再度説明をいれるがこの頃は新種と定義されてる時期で、
内部に飛空船の様に比重の低い気体を発生させ、
空中に浮かび地上にいる人類側兵器を、
遠距離から生体レーザーで狙撃してくる厄介な幻獣だ。
きたかぜゾンビ…これは自衛軍のヘリコプターきたかぜに寄生した日本特有の新型幻獣である。
自分でローターを回し空力で空中に浮かぶ…
つまり燃料いらずで機体元があれば、寄生しちゃう厄介な幻獣の一種である。
防ぐてだては墜落しない、または放棄の際に粉砕するだけ…
だが粉砕する余力や時間がなかろう。
そういった遺棄された、
または墜落したのに寄生する。
中国大陸派遣や仁川や八代で大量に墜落したきたかぜ等に寄生していると判断できてた。
そしてそれらは人類側の地形に頼った阻止線なんぞ無視し、
単独で後方に突っ込んでいく…
勿論、阻止線でもかなり落とされてはいるが、
人類側が配置していたが撤退し、防衛されなくなった山等を越えて…
7日午後4時
九州自動車道を北上するトラック隊がいた。
このトラック隊は撤退する学兵と自衛軍を乗せていた。
総数32両の集団で携行火器を持ち撤退する。
何度も言うが無駄にできる兵器はない…
トラック隊の護衛にはトラックに対空機銃をとりつけた車両、73式対空トラックが4両、
他に95式高機動車機銃付2両、士魂号L型2両の編成で、
この部隊はまだミノやゴルに遭遇してなく、浸透してきたゴブやきたかぜゾンビを撃退しながらの撤退行であった。
初出の73式対空トラック、高機動車についてだが…まず対空話からいれよう。
スキュラ、きたかぜゾンビの空属に対して熊本戦において学兵らは、
砲塔の仰角をあげた士魂号L型が有効射程内に強襲し攻撃する…
あとはウォードレス兵によるレーザーライフルや、
携行式40mm高射機関砲、ロケットポッド、
後は高価なミサイルキャリアしか学兵にとって有効手だてはない。
あとは士魂号だが…稼動台数少なく除外しておこう。
それとは別にボフォースの発展型の陣地式40mm高射機関砲があり、ウォードレス兵が運用しても壊れないよう、
取っ手やペダル等が強化され、4輪ね車輪がつき基本牽引式の対地攻撃可能な高射機関砲だ。
最新型の照準器がつけられ、
移動にはウォードレス兵でも踏ん張れば可能であるが、
陣地設置型の迎撃タイプの機関砲で、
射撃には車輪を浮かし脚部固定しなければ、
射撃威力であらぬ方向へと本体が動いてしまう。
12kmの高度及び距離が有効射程距離だ。
ウォードレス兵で抑える事も可能だが、射撃精度はおち、
またせっかく運用に2名ですむところを複数名つける事になる。
最近ではスキュラやきたかぜゾンビの防衛迎撃等定点迎撃にはおおいに使われ有効活用されたが、
機動攻撃等移動をともなう攻勢には使いにくかった。
最近では…とだが、長い間対空相手ではなく、
陣地迎撃型対地機関砲として使われていた。
40mm砲の威力でミノタウルスやゴルゴーンの肉体に弾幕を直撃させ、
消滅させてしまう威力でありそのような利用がとられていた。
本来でない利用がとられたがベストセラー化し、
大量に元の40mmボフォースは生産されていた。
それのライセンス改良版であった。
自衛軍にしたって同様なもんであり対空車両は長らくなかった。
現場及び上層部から攻撃中に撃てる対空砲…対空戦車がもとめられた。
だが日本が人類相手に戦争を行っていた第二次大戦当時、
対空戦車の開発は行われてたが、試作止まりで終戦。
その後世界各地での幻獣騒ぎで対空戦車開発は立ち消えしてしまい…
ながらく日本にはなかった。
海外で空属であるスキュラやヘリ寄生型ゾンビ族の出現が最近までなかったのもいえよう。
現在のこっているアメリカでも未だに第二次大戦当時の対空車両以降、
開発はしばらくストップしていて、M15A1ハーフトラックの改良型がまだ現役であった。
自衛軍技術研究本部は八代大敗時に、開発中の95式対空戦闘車以外に、
新たに出現したゾンビヘリ対策、特に陸上輸送隊の護衛できる車両が求められた。
輸送トラックに追従できる高速走行可能、
舗装道路を壊すことのない装輪式、
走行中に射撃可能、
ミサイルでなく機銃をつかった兵器である事…
弾幕をはれる事…
以上の条件みたした対空射撃可能な対空車両の早急な配備を求められ、
急遽現用の40mm高射機関砲を載せたトラックも試作されたが、
走行中の射撃は威力がありすぎて横転事故があり、
移動砲台としてしか利用はできないと判断された。
安定した舗装道路上で60kmまでの直線走行ならどの角度でも射撃可能だが、
不安定な未舗装路、また高速走行時、旋回時に転倒する事もあった。
基本戦場近くまで舗装道路は続くが、ゴルゴーンのミサイルや、
こちら側の砲撃で舗装道路が荒れてるケースもある…
護衛任務には使えないだろう…
そこで代案として急座凌ぎに生産されたのが試験に使われた73式軍用大型トラックの荷台に、
動体保存してある旧軍の96式25mm高角機関銃の構造を、現代技術で最新型に改良し、
25mm単装対空機関砲をのせた改造トラック。
旧軍の96式25mm高角機銃はフランスのオチキス社の25mm機関砲をもとに、
製造権を買い取りつくられた代物だが、有効射程3km、実質的射程1.5kmと、
当時劣っていた技術、粗悪な鉄鋼、火薬の影響で第二次大戦当時は威力を発揮しなかった。
初期では有効だっただろうが飛躍的に高まる飛行技術に、
ついてけなくなっていったといえる。
また15発箱型弾装を用いている為に射撃維持が困難であり、
射撃指揮に用いていた95式射撃指揮装置は測定に時間がかかっていた。
更に連装・3連装では二人が左右の旋回と上下の照準を行わなければならなく、
高速でせまる敵機についてけなくなり、1人で操作する単装の方が追従性はよかった代物だ。
問題がある96式高角機銃だが、給弾方式及び射撃管制システムを現用40mm高射砲を参照に改良、
また機銃そのものを現代技術でつくりなおした結果…
有効射程7kmと距離が飛躍的にアップし、間に合わせの形であるがトラックに搭載、
73式対空トラックが生まれた。
勿論対人類航空兵器に対しては距離がなく非力であろう…
だが想定している相手は脆い空属であった。
73式対空トラックの高射機銃砲はアナログ式で、
最低運転手と機銃員2名必要とし、更に弾薬管理兼給弾手3名の方が好ましかった。
95式高機動車はアメリカのハンヴィーのライセンス版で、ほぼリアルの高機、ジャパニーズハマーだ。
ロールバーに銃架を取り付け機銃が撃てるタイプが護衛にあたっていた。
小型幻獣の掃討にはやはり発射弾数が必要であり、弾を車内に搭載できる高機動車は重要ともいえよう…
……
護衛され輸送トラック隊は北へ北へと車列を進めていた。
現状…菊池市も陥落、山鹿市も幻獣側に落ちつつあり、
そこを戦力を救出し吸収した5121及び、聖獣達が奮戦していた為…塞がれず、
九州自動車道はまだ人類側といえよう。
この自動車道や鹿児島本線が完全に幻獣勢力下に陥ると、
熊本からの撤退手段がもはやない状態だ。
自動車道にはそこらかしこで車両が破壊され、遺体も見受けられていた。
まだ大破車両が少ない時期に高速移動できたかぜゾンビの銃撃を受けたのだろう…
学兵らがのったバスに士魂号Lが突っ込み炎上した後や、トラック炎上後等肉が焼けた臭いがあたりを漂う。
大破炎上車両で塞がれていた場合は、先頭の戦車で除去しながらの撤退であった。
救助、遺体収容する余裕はない。
除去しながらの為スピードは出ていなく、警戒しながらの撤退であったが…
「敵襲!!」
叫び声があがる。阿蘇方面より黒い点が…
「きたかぜゾンビ!数20以上!!」
その声に気がついた、
虎の子の73式対空トラック4両が、迫りくる黒点に向け自動車道を降り爆走する。
その他対空攻撃できる機銃付きの車両もその砲を黒点にむけられる。
「てぇー!」
火線があがる。
命中し、結合部分をつらぬかれたきたかぜゾンビが落ちる。
だが、きたかぜゾンビ40匹の襲撃に対し…
火線が足りなかった…
今までならきたかぜゾンビは多くても8匹あたりで編隊をくんでいた。
よって対空トラック1小隊と護衛の編成で軽被害にてすんでいた。
次々と襲い掛かる生体20mm機関砲、いち早く対空攻撃できる車両が始末されると…
民生用輸送トラックの列が次々とつらぬかれ、もはや走って逃げ惑う兵士達しかいなくなった…
40匹に対して火力出せるのは8両、善戦はしたが…
残ったのがきたかぜゾンビ16匹であり、兵士達をしつこく追い立てていた…
5月7日23:00
熊本市街地要塞南側の外殻陣地にて地上阻止線展開していた学兵は、
幻獣側圧倒的圧力により車両の武器補給が追いつかず、
火力が落ちたあたりから崩れ始めた。
外殻陣地は完全放棄、市街地ビル要塞へと撤退し始める…
外殻阻止陣地が放棄により、市街地に向かう流れと、
更に迂回して北へと向かう流れがでる。
市街地へと幻獣は流れていく…
市街地北ではビルがあればビルだが、そうそうにない箇所もあり、
塹壕陣地が多くなっていた。
事実上死守命令出された幾多もの部隊が、
熊本からの撤退連絡線及び、
主要経路を護って阻止戦を行う事になる。
もう連絡線を移動する自衛軍は…いない。
……
熊本市街地に残された学兵への救援は来なかった…
いくつか自衛軍の撤退を助ける為に打撃戦隊が自主的派遣されていたが…
昨年の八代会戦の影響が此処でも響いた。
戦闘経験のない新兵同様の士官に恵まれ、その能力なさで…
せっかくの戦力がいかせずに全滅か潰走し、撤退していったのである…
わざわざ車道上で展開をせずに良いように空属の的になって擦り減らし、
気がついた時には…打撃能力が落ちて、
北に進む幻獣集団に蹴散らされる事となっていた。
……
8日 ==尚敬高校==
「会長、他校の学兵が集まってきています」
付近の学校から学兵らが尚敬高校へと、ウォードレス姿でぞくぞくと移動してきていた。
武装はしており武装は校庭内にて放棄され、ウォードレス姿から普段着き着替えている学兵らも見受けられる。
正式な命令を受けた、または口伝に撤退の為のヘリがくると伝わったのだろう。
輸送ヘリに対して明らかに人数オーバーし始め、
元の尚敬高校の生存学兵312名に加え、他校の学兵が現在200名程、なをもぼちぼちぼち少しずつ増えている。
なかには市街地戦を行った学兵もいたようで薄汚れたウォードレス姿もいる。
そうこうしているうちに…
「そろそろ時間よね。先にいってて。最後に日誌を書いたらいくわ」
「わかりました。会長。お早めに…」
(20機よね…?25名乗りだから…もう一回お願いしないと、全ての学兵が乗れないかしら…)
生徒会室で日誌を書いていたら、ヘリの音がグランドから聞こえた。
「迎えのヘリね…とりあえずあと少し…よし」
書き終えた福森は日誌を閉じるとグランドへ向かって無人になった廊下を走り裏玄関から…
「やぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴を上げた彼女が見た光景は、グランドに集まった学兵らになぶるように機銃掃射を浴びせているきたかぜゾンビの群れであった。
ヘリの音はきたかぜゾンビであり、自衛軍の迎えではない。
きたかぜゾンビの武装は20mm機関砲であり、生体砲弾をほぼ無限に吐き出す。
第二次世界大戦当時に敵戦闘機を攻撃するために使われた、今より威力の劣る砲弾でさえ、
人体に命中すると…命中箇所によるがほぼ即死、
四肢に命中ならその先の部分がなくなる。
更には現代レベルになると装甲の薄い車両…トラック等なら勿論、
戦車でさえも車種によるが、装甲が薄くなざらるえない天板装甲でなら、20mm機銃にて貫通可能。
対戦車なら大抵はミサイルで無被害になるが、機関砲はなっているきたかぜゾンビは武装が機関砲のみ。
だがそれで士魂号L型や61式の装甲位なら貫通可能であった。
74式も1発では無理だが集中すれば貫通大破する。
1対1で正対し距離があるなら61式等に武があるが、
奇襲受けたり数が多ければきたかぜゾンビに武がある。
そんな戦車も撃破する機関砲が無抵抗な学兵らに放たれていて…
砲弾が命中した学兵が次々と肉片を撒き散らし、切断されて倒れていく。
砲弾が右上腕の後ろ側、三頭筋あたりと骨を削いだのだろう…
今にも千切れそうな自身の右腕を左腕で抱え込み、
攻撃から生き延びたいとばかりに泣き叫び駆け出している女学兵に背後から銃撃があたり、
身体が撥ね飛ばされながら上下に千切れた。
朋美…福森の親友が校舎の方へと逃げる様にかけてくる。
機関砲弾が首のつけねに命中し、勢いで身体が倒れるも、頭部が離れて宙を飛ぶ。
声は発する事はもうできないが、口が切断されてもなを、助けてと動きをする。
だが、宙を飛んでいた頭部に砲弾が命中、とたんに赤い華を撒き散らす。
べチャリ
福森の顔に朋美だった赤い血を伴った眼球がぶつかり勢いでつぶれた。
校舎へと砲弾がつきささるが、分厚い強化コンクリートの壁が機関砲弾より福森をまもった……
「あはっ…あはははっっ」
そんな光景を見せつけられた福森は壊れてしまったのだろう。
腰から拳銃を取りだしヘルメット被ってない右側頭部へ銃口をつけると…
バン!
福森の左側頭部から貫通した弾が脳髄と共に飛び出し、
福森の体は横倒れた…
希望を見せられ大人に裏切られた…哀しい末路であった…
グランドから逃げ出せた者は居ない…
全員倒れている状態にもかかわらず、きたかぜゾンビは更に銃撃をくわえていた…
人が集まると幻獣が寄ってくる…
こうして大人に生け贄として残された学兵らは、
九州を脱する事なく…生きて本州の地を踏むことなく、
ほぼ無抵抗のまま虐殺されてしまった。
……
「最後の弾薬だ!」
「目隠しで撃っても当てられるのに!」
8日日中になると…
熊本市街地要塞陣地では、
もう武器の補給はなかった。既に弾切れしていてる部隊が殆どである。
6日深夜から戦線を突破し市内に押し寄せる小型幻獣に対しての阻止防衛戦をした結果…
40名前後の携行装弾数8000発を早々使いきりってしまい…
地下通路からの補給を受けとっていたが、
どっかの通路が落ちたのだろう…補給が滞り始めた。
地下通路からゴブリンが沸きはじめ、
学兵達は3階以上で迎撃する事になる。
そうして補給ができなくなり…
地上にあふれる幻獣を射殺し阻止したくとも、撃つ弾がない。
更に後方が落ちたのも影響していただろう。
段々と付近からも銃声の音がしなくなり…
市街地に残された者は篭るか絶望的な白兵戦のみになった。
大分道からや、佐賀方面から久留米、鳥栖へ向かっていた幻獣集団を5121が撃退し、
中途にある戦力を次々と撤退させ、
殿として太宰府から博多へ目指していたころ…
救援が届かなかった、南に約90kmの熊本市街地に取り残された学兵らは…凄惨をきわめた。
陸路は既に福岡県まで幻獣勢力下であり、
更にに車両という車両が破壊された学兵守備隊にとって、
福岡県への撤退は死ねと一緒である。
既に熊本市街地は幻獣に溢れ、幻獣勢力下にある。
ただもう篭っている状態であった。
この間の戦闘で弾薬等はもうない…
……
寸劇風後書き
作者「ガンパレ九州熊本戦、薄氷の撤退戦をおおくりしました〜」
ナギ大尉「九州撤退の途中ってわけね?」
作者「知っての通りこの後山口戦へと続くわけで……
全体的には逆にすればと思ったりもしますが、
大量の第六世代を救助がこの時期でないと無理で…」
ナギ大尉「それは致し方ないかもね。
ストーリーはある程度予測されちゃってるし…」
作者「まぁ…青森戦から山口戦への逆行も救助人数の目処という理由があります」
ナギ大尉「さて…ガンパレ九州熊本戦編もあと1話…九州より離脱、お楽しみにぃ…完結まであと?」
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