第019話 サイレントメビウス編04 Titanic incident -chapter 3- 決着 そして…


「キディ!!」

妖魔の拳がキディに命中し吹っ飛ばされ壁に打ち付けられる。

「いけませんね、香津美お嬢様…この石像は破壊させませんよ」

「現れたわね妖魔!!」
「気をつけて!カテゴリー1よ!!」
「グロスポリナー!ブレードフォーム!」

香津美の掛け声で頭蓋骨から剣へとかわる。

「ルイズさん、手前の倉庫に下がって!!」

20cm程の冷気を逃さないための分厚い壁があり、無防備よりかはまだましだろうと由貴から声がでる。

「っういってえな…不意討ちとはやるじゃねえかよ」
若干粗悪鉄製の船殻にはキディの身体にそったへこみがついてるが、
叩きつけられたキディは無事な様であった。さすがアーマーコート。

「グラビトンは使用禁止よ!香津美も魔法は撃たないで!
妖魔もこの狭い場所では魔力は使えない筈だから!」

「ほう…わかってらっしゃる…私もこのタイタニックの崩壊は望みませんからね」

「皆さん、柱6本の内、中央の4本の柱には特に気をつけて下さい!
この区画、強度的には不足している筈です!その4本の柱1本でも失うと崩落の恐れがあります!」

この区画の広さは第14区画の最下層甲板の為に少々狭い。
船首側が18.9m横幅あるも、船尾側は13.5mの横幅、奥行きは15.4m程だ。

本来であれば30cm厚の隔壁か両脇から約7mのところから、船尾側に柱を巻き込んでハッチ終わりまで、
ハッチ周囲も30cm厚で断熱も兼ねて囲われ、船尾側は60cm厚の壁がハッチから放水壁O迄延びている。
その厚さのある壁がいっさいないのだ…
柱は45cmの円柱鉄製、恐らく妖魔の攻撃で切れ、またキディの一撃で曲がるとおもわれる。
戦闘的制約がかなりありえるといえた。

妖魔の容姿は両腕の他に中腕と言うべきだろう…爪…いや刀と言うべき中腕と、
おんなじような後腕…つまり6腕ある状態だ。
脚は2本。
しゃべる機能はあるようだ。

「お前の狙いはなんなの!」

「私の狙いですか?…いいでしょう。ガノッサを超える力を得るためです」

「ガノッサを超える力を…?」

「愛する者を求める力が溢れてて…その力が増幅し石像を通じて私に与えてくれます」

「その石像はなんなのよ!?」

「これですか?私が力の大半を使い時空をこえて過去に飛ばした部下のなれはてですよ…
私自身も力の回復に1年強の時間がかかりました…
その間はカテゴリー3とあなた方が称している者以下でしたので生きた心地がしませんでしたよ…」

「何故このタイタニック号なの?解放しなさいよ!」

「それはできませんね…満月が天にのぼる頃にこの船は沈没する。
その生者を求める望みが私を更に強化させてくれるのですから!!」

「つまりそれまでにお前を倒さなければならないって事だな…」

「倒せますかな?お嬢様の魔法も使わずに……」

「やってみなきゃわからないわね!!いくわよ!!」

香津美がグロスポリナーを右に振りかぶって前進しながら横から殴りつける!
体重と遠心力をかけた一撃だが、
妖魔の左中腕、後腕合わせた爪で受け止める。
受け止められた衝撃で踏ん張りながら反動を消す香津美、
「香津美さん!!」

後ろから那魅の攻撃が来るので右側に避けると若水が投擲される。

瓶が割れじゅわっと若水が煙をあげるが、さほど効いた様子はなく、
そこに殴りかかろうとしていたキディの右ストレートパンチを若干後ろにずらされるも左手のひらで受け止めきり、
キディに右手裏拳ぎみにパンチで反撃、

「グッ」

叩きつけられはしないもののかなりの距離吹っ飛ばされた。

「こいつ、つええぞ!!」

動体視力と反射神経がかなりよく、強靭な身体をもっていよう。

ボクサーは構えてればガードができるが構えてなければかわすしかなく、くらう確率がたかい。
顔面…つまり視覚の正面からくるから拳でパンチをガードする様に動き、
肘でボディーをガードする。
見てから構えるのでは遅いともいえる。

それをボディ近辺に決まる筈だったパンチをノーガードからジャストミートで手のひらで受けとめ、
かつあのコンクリート破壊女のパンチをノーダメージで受けとめたのである。

「の様ね!!」

ジェネレーターがうなりをあげ、ブラスター弾がレビアから放たれるが、

「かわされた?!いえ、よまれたか…」

銃器の欠点として正面から弾が出るため軌道が読みやすい…
ただ、そうはいっても弾発射前に行動したら射手の腕で命中させられる。
発射後にかわす驚異的な動体視力と反射能力をもつのだろう。

由貴もブラスター3発放つが…

「少しは当たってよ!!」

すべてかわされた。

「痛いのは嫌ですから」

ごくごく当たり前の理由で避けているようであった。

……

妖魔は闘牛士の様にかわし続け、妖魔のいたぶる様な攻撃がキディに当たり続けていっこうに倒せる気配がない。
直線的な攻撃はかわされ、結界はるのも阻害され続け約30分…

予想だにしてない長期戦で、由貴、レビアのブラスターの弾は使いきり、キディと香津美から回収したカートリッジを使用中、
那魅は使用を躊躇している護身刀、虎の白刀以外の攻撃用の手段を使いきっていた。

「香津美!!構わねえ!全力でやつをぶちのめせ!!
タイタニックに乗ってるのは死ぬ運命の者ばかりたからな!」

一瞬躊躇するも…

「ええ!」

「木星の精霊ヒスマエルよ!炎のワシー」

「おっと…香津美お嬢様、詠唱をやめていただきたい。この船に乗船する者ごと消滅……よいのですかな?」

「何がよいだ!元々死人だろ!?」

「このタイタニック号の乗客を殺す事は、囚われている魂を消滅させるのと同意」

「はあっ!?」

「輪廻に2度と魂がのりませんよ」

「そんな馬鹿な事があるか!」

「わたくしめも力をえる手段はなくなりますが…それでよろしければどうぞ香津美お嬢様…
本気を出して、お嬢様の意志でタイタニックを破壊して下さい」

呪文を中断していた香津美から魔力が消える。
さすがに死後の父や母の影響が度々感じられ、死後の世界を否定は出来ないのだろう。

「じゃあ…どうすりゃあ良いんだ!!くそはええしよ」

AMPの攻撃はことごとく闘牛士の様にかわされている。
当たったといえたのが若水だけで、
防いだのが魔力のってないグロスポリナー、キディの近接攻撃であった。

「フッフッフッ」

「あの〜…妖魔さん狙わずとも、石像狙えば良いのでは?」

ルイズからの一言…
石像は動けない。原因を破壊すればよいのがいつの間にかに対妖魔戦になっていた。

「あっ!!そうか、そうだよなぁ!!」

「そうね」

「ムッ!させはしない!!」

「キディ!横から回り込んで!」

「おうよ!」

「那魅、護身刀の神力でいけそう?」

「やってみなければ…わかりません。魔の力で硬いというではなく、物理的に硬い様ですので」

武術家みたく、刀で石をきる修行などはしてない…

「レビア、何か壊せる物は?」

「ないわ!」

妖魔にはエキスパートでも、物理的破壊にたいしてはキディ頼みであった面が露見していた…

「なら私たちは、キディのサポートね」

「ええ」

キディが柱の外側を周回しはじめ、妖魔が石像破壊を妨害する流れとなった。

柱の間は長さ10ヤード、横7ヤードと…
サッカーゴール幅より狭く、PKポイントより短い。
ゴール幅は8ヤードあり、PKマークは12ヤードの距離だ。
サッカーわからない方はJRの車体をあげるが、幅は車両2つ分強あるが、長さに関しては半分辺りと思ってもらいたい。
それでその周囲には天井を支えている柱が4本入っている。

そんな狭いエリアで妖魔が石像の回りを回り始めると、
その巨体で石像引っ掛け倒してしまう、また柱を引っ掛けてしまいかねなく、
キディの速力が勝る。

更には…
「那魅、結界お願い!封印をかけるわ」

「了解です、香津美さん」

グロスポリナーを置き、手加減するのだろう…
手加減ならば構造材を破壊はしない…筈。

「金星の守護神アフロディテ、
エメラルドの輝きをもって我が声に応えよ!!」

床面からエメラルドが隆起し、結界にとらわれ僅な瞬間に脚が止まった妖魔をエメラルドで包み込む。

「キディ!今よ!」

外側を走って機会伺っていたキディが床面をけって柱の内側に走り…

エメラルドに皹が入り割れ、妖魔がなんとか体当たりをかまして、キディを弾け跳ばして間にあった。

石像狙ってレビアと由貴からブラスター弾が4発撃ち込まれるが、
「グフッ」
妖魔が身体をはって受け止める。
「当たった?!」

「石像を射撃で狙えば!!」

「外さね〜なら石像の頭付近をグラビトンでも!」

一気に形勢が石像を守らなければならなくなり、不利を悟った妖魔が右手のひらに光球を発生させる。

「うそ!」

「離れろ!」
タイタニックごとキディの始末を決めたのだろう…天井崩落を狙ってる様子で光球…純魔力魔法を放ち轟音を発し白煙…埃で視界がさえぎられる。

「みんな、無事!!?」

「ああ!」

「天井は崩落…してないわね」

「げふげふ…あのくそ妖魔!!」

視界がひらけると妖魔と石像がない。

「どこいった?!」

「本気が出せるように船外へと避難させて貰います!!あと少しの時を稼げば、この世界はガノッサではなく私のものです!!」

声が聞こえた方向へと駆け寄ってみると、冷凍貨物室に繋がるハッチの、
天井の板、甲板にかかっている防水シートと板を魔法で吹き飛ばし、
上空へと石像を持っていった様であった。

「ちっ、追うぞ」

石像を破壊しなければタイタニック号は妖魔の糧となる…船員階段へと追っていく面々。

「あの冷凍貨物室のハッチは、後部甲板のハッチになります!
Eデッキにきたら船尾側の3等後部階段からあがって出れます!」

「わかった!」

『課長、ポリススピナーを2台、ルイズさんを退避させます。私と由貴がバックアップに入ります』

カテゴリー1が本気になる以上、傍に居るのは危険と判断するレビア。

『了解した、遠隔操作にて進入したデッキにつけよう』

「ルイズさん、私と一緒に」

「わかりました」

「先生ありがとよ。後は上空からあたいたちの戦いを見ていてくれ」

「はい」

Eデッキにてそのまま船員階段をのぼるルイズと由貴、レビア。
香津美、キディ、那魅はEデッキ通路を船尾側にかけていく。

『船体を盾にしてデッキに接近すれば妖魔は攻撃しない筈です』

『了解だ』

『そちらから妖魔の様子は…』

『まだ結界の外だから…今、ドローンが入った…』

皆にわかるように通信で伝わる。

『妖魔は石像を自ら形成した巨大な氷原の中に今、沈めている最中だ』

『その氷原って…』

『1km四方はありそうだな』

『つまり…妖魔を先に倒すしか…なくなったって事ね』

『無視して、ほじくるのは無理みたいですね』

『妖魔にとっての糧となるタイタニック号を背にすれば本気攻撃は無いでしょうけど、
避けると魂が消滅ですね』

『タイタニック号に被害がでるのは避けなければなりませんね』

階段をCデッキに上がり、扉を出て後部凸甲板にでる香津美達、

右舷側に妖魔が作った巨大な氷原が見えていた。

どうやって渡るかを相談していると…

「これで来いってことね」

氷原への道がタイタニック号へと延ばされて…
香津美らは伝って氷原へと渡ってく。

……

AMPのブーツはヒールがあるが走れる素材で作られている。
ただしだ…接地面積が少ないと必然的にこけやすくなる。そして氷だ…滑る滑る。
500m程だが滑る氷の道を慎重に渡りきると…

「おまちしていましたよ。香津美お嬢様」

30分程かかって氷原の表面は土で滑らない様にすっかり舞台が整えられていた。

幅10mの氷の道で制服ブーツのヒールで何回か滑っていた為に整えてくれたのだろう。
今宵の最高の時を転んだために…
等妖魔も興が冷めると考えてくれたのだろう。

「あっちの方角にタイタニックがあるからあっちにはぶっぱなさないでいいんだよな?」
タイタニックは北の方に位置していた。
「そうです」

「じゃ、第2ラウンド開始と行くか!!」

いうなりグラビトンを背後から抜きぶちかますキディ、反射神経でかわす妖魔。
かわしたグラビトン弾が後方の大地に命中したのだろう、空気の流入が始まる。

「太陽神ヘリオスよその御力我に与えたまえ!」
詠唱となえ切りかかる香津美だが、妖魔は大きくかわす。
香津美は大振りをかわされて、たたら踏む。

「世を守護する四聖獣よ…我に力を、そして我と共に闘え…」
那魅の祝詞とともに抜かれた護身刀からの刀波をかわす妖魔。

「グラビトンだけでも喰らえよ!妖魔」

「いや…痛いではないですか…」

「様式美でくらうもんだろ!?」

「貴女みたく、わたくしめの身体は強靭でないので、申し訳ないですねぇ…」

確かにブラスターでも痛がっていて、若水は効かないが…のクラスの防御力程度と香津美らは見当つけていた。

「では」
妖魔の右手に光球が発生、光球を那魅に向かって投げる。
那魅はかわせないと思ったのか霊符を選択。

光球は那魅のはった障壁にぶつかり、
「くううぅぅぅ」
盛大な放電を障壁に発生させる。
汗が出てくる程集中し…霊符が青い炎をあげ燃え尽きると同時に光球による放電はやむ。

「ほう、初級魔法程度ならそちらのお嬢さんは防ぎますか…これは面白い」

「闇雲家をなめないでほしいですね」

「ソルとマルスのー」

「おっと、させません!!」

妖魔から光弾が投擲、

「精霊、ソラルと…と、つ!!」

香津美が詠唱を止め障壁をはり、魔法を阻止する。

「さすがに香津美お嬢様の魔法はかわせる自信がありませんからね」

「詠唱を妨害かよ…」

「さすがカテゴリー1ね…一筋縄ではいかないわ」

以前カテゴリー1のカーヴァも詠唱阻止を試みたが、香津美の魔法を受けた後であり、
間に合わず、双方とも発動、相殺して香津美の威力が勝った形であった。

「香津美、詠唱要らないや発動早いのないか?」

「魔力付与のしか発動早いのないわ。攻撃用無詠唱ってマスターしてないし…」

「なら手数で攻めて、詠唱阻止させない方針しかないか…」

「みたいですね…」


「ぐっっっ!!」

いきなり妖魔の身体の一部がぶっ飛び、直ぐに修復し始めるがダメージを与えた。

シームルグに乗船するレビアからの対物ライフルによる一撃。

30×214mmの弾を使う対物ライフル、
音速の5倍の速度を出すために、反動が半端なく、シームルグに半固定、銃身が衝撃でぶれ連発はできないが、
ボルトアクションによる一撃必中のしろもろだ。

警戒してない方向からの一撃、超音速でさすがにかわせなかったのだろう。

ただし、超音速の性能を出すために祀印が刻まれたグラビトンの通常弾ではなく、
純粋な火薬弾なため効力は薄い。

怯んだ隙に那魅が霊符による結界を展開、直ぐ祝詞をあげる間もなく破られるが、
シームルグから結界兵器が放たれ、
那魅の結界に向けて放たれた対物ライフルを避けようとした為に、
シームルグの結界に捕まった妖魔、
それを見た香津美は即座に詠唱しはじめる。

「ソルとマルスのー」

「うおおお」

「ルツァベルの名をしー」

結界を破壊し即座に光弾を放つ。

「を我が剣に…ちぃ!!」

詠唱を止め障壁をはる香津美。

「危ないとこでした…」

香津美の魔法が決まれば有利にたてたが…

「少し形勢不利ですね…そちらのお嬢さんには退場してもらいましょうか!!」

妖魔が呪詛を必要とする魔法を詠唱しはじめる。

「聖霊ザゼルよ!サターンの精霊よ!
悪しき力をその輝きで映し出せ
黒と灰の中より出でよ!!銀の燕よ!」

妖魔の魔法にあわせて香津美が詠唱し、
那魅に放たれた魔法を香津美の魔法が阻止、反射させる。

「どう?自分の魔法が反された感想は!!」

そこにシームルグからの結界が撃ち込まれ、
「とどめよ!
天空におわす精霊の中の精霊、月のシャドー、パルシュモス・ハー!」
更にはグラビトンが撃ち込まれ命中。拘束時間が延長する。
「我に銀の剣を、トールへの光をうつし
セレネとの契約を果たせ、はぁぁぁっ!!」

放たれた光の弾が妖魔へと撃ち込まれ…

「わ、わたしが世界の王に……」



………

妖魔は倒せたが…自然界の力で形成された分厚い氷原の中に未だ石像があり、
異界は保たれタイタニックが存在したままだった。

「さて…どうやって地下深い石像壊すんだ?」

「そうね…私にまかせて。ちょっぴりその場から離れてね」

香津美が…
「木星の精霊ヒスマエルよ!炎のワシを導き出せ!
サファイアの光と共にすべてを焼き尽くせ!!」

焔の塊が氷原に激突、水蒸気をあげて溶けていく…
露見した石像に対して…

「我が前方にラファエル、我が後方にガブリエル、我が右手にミカエル、我が左手にウリエル、
我が四囲に五芒星炎あげたり、光柱に六芒星輝きたり……
アテー・マルクト・ヴェイ・ゲブラー・ヴェイ・デドゥラー・ル・オーラム……
エイメン!!」

浄化の魔法を石像は受けて割れて現界から消えていく…

ボゥゥゥー

「タイタニックが…」

「沈んでいく…」

石像の力により維持されていた時間が崩壊していき、
タイタニックは船首側から海水が入っているのだろう…傾斜し始めた。

「きゃ!」

「足場が」

『脱出だ!乗艦いそげ!』

シームルグにAMP面々が乗り、離床…

『亡霊達の声が聴こえます…悲鳴に混ざってこれで私たちの114年も終わる…ありがとうと…』

『死を理解して、囚われていた事を思い出したの?』

『そのようです…旅立ちますと…』

異界の外へと離脱、
振り替えると、船首を異界の水面下に沈めたタイタニック、第1煙突が折れ、ライトが消える。
船尾側が水面から上がり…23度程の傾斜で3番煙突の前に亀裂が入り、
船体が大きく二つに裂けて、船尾側が自重で左傾斜気味に海面に落ちた。

船首側は更に下降しまだ繋がっていた二重底が船尾側を引っ張ってたが、ちぎれ、
裂けた船体から重く抵抗を受けにくいボイラーが船尾側船体から落下してく…
だが異界内で維持されてるのか…ある程度でとどまっている。
船首側も船首を下にしてとどまりながら第2煙突が剥がれる等している。

Tokyoには無い物であり…であろう。

『やはり北大西洋に運ばれるのですね…』


『えっ、嘘…垂直になってない?』

香津美が思わず呟く…映画では傾かずに垂直にそりたち、人がスクリューに落下していたが、その様な事はなく、
千切れた船尾側は左に傾斜したまま斜めに海中に沈んでいく。
『本来でしたら船は沈む時に横になるのです』

機関部部員が最期まで水平に保つよう注排水装置で保たせていた様だが、
電源が喪失した為に保てなくなり左傾斜が発生し、
浸水により沈んだ形だ。
映画では垂直にのボート生存者の証言を採用したが、船が沈む際は必ずってよいほど左舷や右舷に傾斜する。

タイタニックは海中に沈んでから垂直になり、船尾側が水や残っていた大気の抵抗をうけ内部破壊がおきる。
一気に加速して様々なものが剥がれていく…
駒まわしの様に回転、船尾が下になり剥離しながら螺旋を描き…

船首側は水平ぎみにしてたが何かに衝突した様に…

『多分海底に…ですが海底がないので…』

デッキ部分でおれて、更に上から押されるように船尾方向が曲がる。

『上方からの下降水流だと思われます』

船尾側も衝突し、内部構造が破壊されてたのでかなり千切れる。さらには押し付けられたように潰れる。

沈没後を再生してたかの様にいたが…タイタニックは上空へと上がり雲界の中へと消えていく…

北大西洋の海の底へと消えていくのだろう……

……

『ルイズさん』
ラリー署長からの通信が入る。

『今回はご協力して頂き、ありがとうございます』

「いえ、こちらこそ貴重な体験できて、研究資料も入手できて…助かりました」

『本来であれば記憶操作処置となるんですが、宣誓誓約書通りになりますので、改めて口頭で確認させていただきます。
AMPの存在、関連事項、妖魔の存在及び関連事項につきましては非公開、
情報漏洩した場合、国際規約で無裁判禁固50年の刑に処せられますのでご注意下さい』

「わかりました」

『今回のタイタニック号については公開しても大丈夫ですが、口裏あわせで…
亡霊船としてよみがえり、原因が時と共に取り除かれた為に再び海の底に戻った…がよいかと思われます』

「そうですね…自然に時と共に取り除かれたが良いですね。わかりました。
原因は不明で、2度と出てこない以上究明が出来ない…ですし」

『よろしくお願いします』

……

「ん〜おわったぁぁぁ〜」

「んじゃ、俺はメンテナンスチェックうけてくるわ」

「お疲れ、さて…今日の夜勤はシフト上はキディだったか…既に実働20時間は越えてるな」

「ですね…」

「明日の15日の日勤はレビアと、キディとわたしが担当するとして…
レビア」

「はい」

「0時まで当直頼めるか?」

「わかりました」

「由貴は、0時から1時半まで」

「了解です」

「那魅は1時半から3時まで」

「わかりました。シャワー借ります」

「香津美は3時から6時まで」

「仮眠入ります〜」

「私が6時からで…キディが8時から、レビアが遅出の10時から…
明日の夜勤から通常シフトに戻す。
明日の昼までには報告書を出しておいてくれ」

了解の唱和の後に各々装備の残弾確認、弾オーダーシート等を書き、
仮眠の準備等に入ってく…

弾の配給は無制限だが、各自が携行する弾薬は制限があるし、
個人ロッカーが弾だらけになる。

弾は1発1発はかなり軽いが…例えばアサルトライフルみたく弾数を撃ちまくる兵器の場合だと話が違ってくる。

例を上げると…アメリカ海兵隊の個人携行数は210発が基本で、足りないと思ったら、バンダリア…
弾入れポケットが4つ繋がり1つに30発、クリップホールドで弾が入った使い捨ての肩からかけられる袋…が支給される。
210発か300発の2パターンが戦闘時携行弾数だ。
それでNATO5.56mm弾1発は12g、30発で360g、
30発弾倉は120g+30発弾重量で480g。それが6本で3.36kgになる。

ボディアーマーの表側に弾倉を差し込むポケットがありそこに差し込む形だ。

そしてバンダリアは1.654kgで、330発だと5.31kgになる。
更に銃の重量が約3kg〜4kg、ヘルメット1.5kg、ボディアーマーが4kg、
それに水筒、非常食、ショベル、ガスマスク、手榴弾が加わり…重量がわかろう。
更に背嚢に予備弾や通常携行食糧等をいれ行軍し戦闘時には下ろす。

弾の携行数を増やす=重量を減らす為に過去に7.61×54mmから5.56×45mmNato弾へ口径が小さくなった。
確かに威力は下がるが、炸薬性能の上昇で対人では気にする程ではなくなったともいえよう。

AMPは警官だから警官をあげろ!!…になるがリアル日本は犯人側がサブマシンガンやアサルトライフルを持ってると想定してなく参考にはならない。アメリカを参考にすると…

警官が一般的に使う銃として9mmとライフル弾よりも口径が大きい弾がつかわれる。
威力的には勿論ライフル弾の方が上ではある。
アメリカでは当初は6発リボルバーと予備弾12発携帯の形であったが、
ベレッタが犯罪者側が使い始めたので、警官側もベレッタ切り替えてる。
マガジンに15発、予備マガジン2本を入れると計45発となる。

1997年のバンク・オブ・アメリカ、ノースハリウッド支店強盗事件の際に、
全身防弾服を着て、AKを撃ちまくる犯人に、ベレッタが役に立たず…M16で射殺して、
パトカー内にショットガンやアサルトライフルを装備する様になったが、常時携行とするとベレッタと弾45発だけといえる。
銃本体とマガジンが952g、弾が14gの45発で630g、予備マガジンが100gの2個で合計1.782kg、
腰の帯革…たいかくといってズボンベルト以外に上着に巻くベルトの事だが、
それにホルスターでつけられ挿しており、
更にテーザー…いくら警官でも不容易に銃で殺しては罪にとわれ、特に銃を持たない犯罪者射殺は世間を騒がせていた。
パスポートを出そうとした者を射殺してしまった…観光客は胸にパスポートに入れるな!はある意味常識であり、
基本警棒で逮捕していたが、ジャンキー等非常識な抵抗で怪我をしていた。
そこで採用されたのがテーザー、1発射出式スタンガンであった。

あとはフラッシュライト…暗い室内や夜間捜索時に活躍し、目潰し効果がある。
また叩いて警棒変わりになる。

ペッパースプレー…となってるが、唐辛子系の刺激物スプレーで、上記のテーザー使うまでもないが…警棒だけではの時に使う非常用らしい。

警棒、手錠2つが挿っている。
あとは無線機…

無線機以外のベルト含め約6kg強が常時すべて腰に加重がかかり、
アメリカの警官の一番の職業病は腰痛…
腰に重たいものを常時吊るすからでもある。
洒落でなくて…
署内に内勤する者も常時着用が義務づけられているのも理由だ。


さてAMPの面々が所持するブラスターにグラビトン、それに使用する弾数を増やせば増やすほど…重量が重くなる。
弾1発1発は軽くとも束にすればカートリッジでも重くなる。
身体に負担がかかるが、カテゴリー3でも基本は人間を軽く殺す事ができるため、
弾数が少なければ魔法的や物理的攻撃能力がないレビアが1番無防備になる、
一応各自共用分のブラスターカートリッジ等は持つ形で、
更に各自でブラスター、グラビトン、使用弾数を持つ。

キディがいるので重量面では問題ないというが、弾がふえると分厚くなり腕などの可動範囲の低下に繋がる。
彼女の場合は近接戦闘が売りなのでやはりそれなりの携行弾数の制限はある。

彼女らは腰のベルトに基本装備品は装着し、
まずはブラスター、グラビトンが背面腰に装着される。
グラビトンは前のマガジンが折り畳まれコンパクトだ。
他に右側に警棒、軽くて丈夫な素材が使われ100g、
他に前面にマガジンポーチが3つかかっていて、
ブラスターカートリッジはポーチに6つ入り、グラビトンカートリッジはポーチに2つ入るかたちだ。

その他バックパックとブーツサイドにポケットがあり、
制服ポケットにはマガジンは入れずにケーブルタイ、手帳等が入っている。

重量はブラスターが541g、グラビトンが915g、
マガジンやカートリッジはブラスター弾がシャワーブレットが25gの5発の20gで145g、
通常弾が10gの5発の20gで45g、

グラビトン弾は15gの70gで、295gと軽量化されており、

携行常時はマガジンでブラスター60発、グラビトン30発、
ブラスターに5発、グラビトンが15発入って、
65発の45発…
重量的には、1656g、1800g、100gの合計で4kg未満と辛うじて腰痛にはならないレベルだろう。

勿論香津美がグラビトン装備せずマガジンのみ等各々によっても違うが、携行装備はそんなもんだ。

兵隊装備ついでになるが…都市外妖魔は基本軍隊が対応している。
特に妖魔大戦時にはカテゴリー2相手にA-10が頻繁に出動し効果をあげていた。
それでもカテゴリー1相手になると、
大抵が1on1の遭遇戦になり、回避力で力不足ともいえていた。
頻繁に出なかった為に…ともいえる。

都市内では1発で建物崩壊する軍兵器火力はそうそう使えず、
銃器にて足止めし、とどめに対戦車ミサイルを撃ち込む戦法が推奨された。

機動警察は都市内での治安維持、テロ対策、反乱鎮圧目的として、
一般的体力の者を機械の力で強制的に精鋭兵士並に引き上げるコンセプトで開発された新規格装甲ハードスーツ採用された部隊で、
特に殉職率低下、重量による小火器の携行量が無視できる程になり、継戦能力が飛躍的にたかまった。
基本採用は12.7mm弾使用のアサルトライフル。
カテゴリー2には先の通り対戦車ミサイルの出番といえていた。

犯人側からみた機動警察のパワードスーツは、
何時も使っている5.56mm弾では効果無いため、対戦車ライフル高貫通力や、
爆発力で中の人を直接シェイクさせる手段が必要とも言えた。

…………

(まだ?)

タイタニック号が消えたと電脳世界では騒がれているのに、一向にもどってこない香津美を待ち続けるカオル…

13日の朝方からサイレントメビウスの世界にいるからそろそろ3日目に突入する。

(と、そうだ明確な時期は…どこら辺だろう?)

TV版の世界で、まず彩弧由貴が強化されてるのは確実であった。2025年の事件での出来事だ。
次にラムチェンがAMPに加入は2027年1月末の出来事で、2026年4月の時点なので未加入。

で、香津美が魔に堕ちるのが2029年で半年後AMP解体騒動がおきる。

問題になるのは一般的にTokyoジャック事件といわれるインフラ全滅事案、
そしてガノッサやローザとの接触した出来事である。
恐らくは接触後だとは思うきもするが…

インフラ全滅事案は、ステファン・マーベリック生誕祭に関連付けされているのでカオルが接続して調べてみると…

2025年7月1日、タンクトップの者がいる時期であった。

ローザ・ガノッサ接触事案はその後3rd-AT事件増加時期で…
2025年10月で、半袖の者が日中いる時期であった。

つまりTV版だと14話と15話の間の出来事といえていた。

(そういえば…総員退艦といえば…フェリーありあけもすごかったな)

近年では沈没までに時間があり、総員退艦した船、または総員退艦命令がでた船に、フェリーありあけがある。

マルエーフェリー所属のフェリーありあけ、2009年11月に三重県熊野市にて、強い追い波の状況下にて、瞬間的に強い波をうけた為に、
右舷側に25度の傾斜が発生し追い波の影響で左急旋回、40度まで傾斜し、固定してなかったコンテナが荷崩れを起こした。
30度から35度程度の傾斜で推移したために救助要請、沈没を避ける為に陸地へ左旋回し、
風を右舷から受ける事で25度まで回復するも徐々に傾斜てく。
この角度のまま及び荒天では救命筏を安全に出すこともできず、陸地に近づきヘリによる救助活動行われたが、
乗客全員と乗員14名吊り上げたところで傾斜角が40度超えヘリによる救助も断念、救命艇による脱出に切り替られ、
流出した燃料まみれになりながら、荒海に投げ出された乗員を救出し、死者は0であった。
後に90度に横転転覆し、艦は現場にて解体された。

2013年に転生したカオルは知らないが、2014年セウォル号事件とよく比較される。
原因は違うが荷崩れで復元力なくし傾斜…
更には2012年のイタリアクルーズ客船転覆事故の勧告を受けての出来事だ。

他には最近だと2015年7月、三井商船のフェリーさんふらわあだいせつにて総員退艦命令がでた。

さんふらわあだいせつの運搬中トラックから出火、
初期消火の際に2等航海士が煙に巻き込まれ死亡してしまった。

迅速に乗客を救命筏にシューターで避難させ、
乗客は全員生存、乗員1名以外生存、死亡火災事故なのに98%の生還率になる。

さんふらわあだいせつは消火艇の注水では鎮火できなく、10日後…二酸化炭素注入で鎮火した。

ただそれでも出火元付近の激しい損傷だけに限定された為に修繕され、1月までには復帰するらしい。

国交省は初期消火段階で、車載トラックに直接注水できる消火設備が無かったのを問題にあげている。

まずは消火器での消火に失敗した…まぁ当たり前だろう。
2番目消火栓での消火に火元に届かず失敗した。
これは、ん?と思うが、
出火元がトラック冷凍機であり、密閉されたBOXであるが為出火原因に直接注水消火できなかった…という理由なら納得するだろう。
箱の外側にはかけられられるが火災起こっている箱の中には無理でもある。

そしてスプリンクラーも同様だ。

その後に消火艇が船外から消火しようとして海水かけても、
既に車のガソリンに引火している状態であり、
密閉度が高いトラックヤードの火元まで注水が届かなく消火は困難で…

地上であれば強行突入もかんがえられるが、爆発性の燃料を基本搭載している。
強行突入して万が一船ごと爆発したら…大惨事だ。

この火災の前はスプリンクラーで消火できない場合までは想定してなく、
ここは推測になるが、陸地の地下駐車場準拠の法改正になると思う。

例えば地下駐車場における車両火災で通常の水消火では鎮火は困難で、
何回か改定している消火設備の法律で対策はねっている。
泡消火設備で火災元を包み込み消火させる、ガス系消火設備で酸素を低下させ窒息させるやり方で、
初期消火段階での鎮火させる方針をとっている。

少し驚いた点は避難放送を疑い、客室ドアを叩かれて避難をした人がいる事だ。

外航船、航海が24時間以上の外国を結ぶ航路については出港前の避難訓練が2012年のクルーズ客船事故後に、
国際法に義務つけられた。

何かしら死亡重大事故がおこる都度に法改正されてく。
内航船…国内航路定期船や外航船でも24時間以内では義務つけられてなく、
その為日本から出港する国際フェリーは訓練が義務ではない。

なので疑うのも無理でもないが…

時系列から午後5時半ごろ火災発生で、案内所集合の放送が入る。
午後6時頃に二等航海士からの通信途絶で総員退艦を決める、
15分後に甲板に乗客がそろい、足元から爆発の振動が響くなか、午後6時20分に海面にシューター設置、
まずは子供連れ、老人と4階分の滑り台を滑るのに時間がかかる人を先行させるなか、
30分後に白煙が強くなり避難のスピードが早まり、
船長を除く総員退艦は午後7時40分頃だ。

救命筏の乗り心地はゴム製で最悪、嘔吐が続いたらしい。

一時間位で他船に救助されたという。

因みに救命ボートでなく救命筏や救命艇ってなに?な人もいるかもしれない。
まず救命ボートの定義はタイタニックの様なカッターボートで膨張式ゴムボートなどもある。サバイバルキットは装備で、
動力としてはオールや船外機で移動する。
180度天地反転には耐えられないタイプだ。

救命筏は膨張式のテントタイプの筏で、基本動力をもたない漂流式だ。
外航船は救命筏だけ搭載は認められてない。これも180度反転には耐えられはしない。

救命艇に救助する側がのるレスキューボートがありややこしくなるのでそれを救難艇、
ライフボート…遭難する側がのるのが救命艇とわけよう。
救命艇は内火艇としても扱えるタイプで、動力は勿論、更には180度天地反転にもスクリューある側が海底に重みでくるようなつくりだ。
ただ避難可能数はボートとは違いシートベルト固定の必要性があり減る。

内航船はスペースをとる救命ボートの定員数設置義務はなく、乗客乗員以上の救命筏と救命艇や救難艇等の支援内火艇類の設置義務つけられている。

さてなぜ1000人以上死者をだした洞爺丸事件をあげないというと、
同設計で建造しようにも改正に次ぐ改正で建造許可すらおりはしない。なので過去と言えよう。

因みにオーストリアの実業家が現代にタイタニック号クルーズ客船をと中国に2015年にタイタニックの設計図で建造を注文した。
だが基本北大西洋専門定期航路船の為にブリタニックの沈没原因の1つの冷房はオリンピック級にはなく…
また蒸気ボイラーも今の時代に?ともあり、安全面と駆動、航法や施設を現代風に設計し法律面でもなおしたもんであろう…

……

そう考えてると…15日の7時半頃にやっと香津美が戻ってきた。

疲れたのだろう…すぐにいびきをかく香津美から採取に成功し…

(楔をAMP本部に打ちに行くか…)

と00分署へと向かう。

……

(ここがAMPの00分署か…でっけー)

AMPの拠点で、妖魔側に堕ちた香津美…黒香津美と称するが、に乗っ取られる時期までは、
AMPは00分署に本拠地を構えていた。

00分署内に入ると…バチッ

(ん?)

なにかなったようだが…気にせずに中に入ってく…

…………


けたましい警報がAMPオフィスルーム内を響かせる。

「なんだ!この警報は!」

「少しお待ちください…署内に妖魔です!」

「おいおい…昨日に続けてかよ…」

「場所は!」

「1階正面エントランスです!」

「なにぃ!??」「おいおい…やべぇ〜だろ…」

「映像は出せるか?」

「出せます」

一瞬凄惨な場面を想像して映像を見たが、至って平和なエントランス風景にほっとしつつ…
「何処に妖魔が?」

「この人型です」

「こいつがか…元人間か?」

AMPの面々は既にローザに接触、磯崎はガノッサを知っている。
またラリー署長も半分は妖魔で人間サイドなのもしってる為に疑うことはなかった。

「……タイプは?」

「カテゴリー1クラスと計測されてます」

「メンバー非常召集、機動警察もスタンバイさせろ。署内職員来庁者に緊急避難指示を…
だが悟らせるな。エントランスは使わずに非常口から避難させろ。来庁者には臨時清掃で案内だ」

「1階エントランス内の職員、来庁者には?」

「ヤツが移動しない限りだせないな…」


…………


エレベーターに乗り、一般人が入れる最上階の24階の展望食堂フロアに出た。

『そこの妖魔止まれ!!』

(え〜と…)

『そこの妖魔止まらんか!!』

(確か…)

『とまれっといってるだろ!!人に擬態しているのわかってるんだ!!』

「へっ?」

『振り向いたそこの妖魔!!お前だお前!!』

「えっ…えっと〜……すみません!!何かの間違い」

『動くな!!』

「は、はい」

『いいか?!動くなよ…』

「はい」

(どうしよう…)

カオルは考えていた…
まず犯罪者に間違えられてるのは間違いない…

『両手を上げてゆっくりとこちらに身体をむけろ』

「は、はい…」

このまま拘束されるのは好ましくない…がここで能力を使って逃げ出せば間違いなく逃走原因でこの世界に影響を与える…

ゆっくりと身体を向けながら考えている。

『向いたな…両手を頭の後ろに組め』

更には銃口がこちらを向いている。
射撃によりATフィールドが発生し可視される恐れがあるって事だ。
いくらなんでも見慣れない空中シールドと他人から見られたら、
妖魔の新能力か?と研究重視されかねない…

『………』

とりあえず拘束され、無実を訴えるしかない…と決め…

「ちょっと…大人しく指示に従ってるじゃないの…どうするのよ」

「変化しないケース初めてだからな…」

「空間跳躍する気配は?」

「いや…ないわね…」

「あの〜〜」

『そのまま大人しくしていろ!!』

「……で、どうするの?」

「拘束する?」

「しかないわね…」

「わたしがいくよ」

機動警察やAMPの面々の射線を避けて横の方からキディが回りこんでくる。

『拘束具をかけにいくから大人しくしてろ!』

「よ〜し、よ〜し…大人しくしてろよ…」

「抵抗しませんので、痛くはしないでください」

「たっく…カテゴリー1かよ…ほんとに、期待はずれだぜ…」

「あの…妖魔じゃないんで…」

「それは後。まずは右腕をゆっくり腰の後に下ろしな」

「えっと…こうです?」

「そうそう…ゆっくりだ…で、次に左腕をだ……わかってんじゃねえかよ」

「刑事物映画やドラマを見てましたので…」

カオルはおとなしく左腕を下げていき、
右手首に金属製結束ケーブルが絞められてく。
左手首にも同様、最後のしめで両ケーブルの輪を結束ケーブルで繋がれた…

一瞬、人生転生含めて25年…逮捕されるなんて悪いことしたかな…と心をよぎった。

「よ〜し、拘束できたぞ」

「キディ、重層室に連行して」

草冠の重曹ではない。しかばねの重層だ。AMPが捕縛した妖魔が逃亡できないように物理的、魔力的、霊的シールドが張られていて、
外部から開けない限り逃走は不可能と自信もっていえる隔離監禁…いわゆる牢屋であった。

カオルはドナドナ状態で機動警察隊員の銃口がむけられたまま連行されてく。

重層室に入れられるカオル。
入れられるまで機動警察隊員は緊張したままであった。

機動警察のなかでもAMP支援に00分署に配属される隊員の殉職率は抜き出ていた。
理由としたらAMPがグラビトン技術等対抗できる手段を組織としては提供はしないからともいえ…

それには理由もある。
AMP不要論抑止のためでもある。

なら機動警察が00分署配属要らないじゃないかともいえるが、
サブマシンガンクラスでなら、カテゴリー3クラスの中型種に対応でき、
弾数で妖魔を圧倒する時にはひつようでもある。

カテゴリー2クラスには嫌がらせ、カテゴリー1には…肉壁程度にはなり…

「ご苦労だった」

機動警察面々に労い解散してもらい…

「さて…これからどうするか…」

予想だにしてなかったカテゴリー1の確保に戸惑うAMP面々であった……



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