第020話 サイレントメビウス編05 カオル拘束中
いきなりAMPの留置施設に逮捕という形で閉じ込められたカオル…
本来の日本であれば…
逮捕状や現行犯逮捕でも、日時を告げ、何の容疑で逮捕すると告げ手錠をかける。
その時刻からの計算となるので重要な宣言だ。
暴れている場合が多い現行犯逮捕は、「逮捕ー!!」と叫びながら手錠をかけ、
改めて時計を見ながら「何々の容疑で何時何分逮捕する!!」と告げているのが多いだろう。
逮捕状の場合は取り調べ室まで任意同行して、持ち物を金属探知機で検査して全て出してから逮捕状を見せる。
現行犯逮捕の場合は、現場で連行に危険物はないかを軽く触って…特にポケット内に有無をしらべ、
連行後に取り調べ室で金属探知機で改めて所持品検査の流れになろう。
そして両方に共通するが、必ず逮捕後にまず黙秘権がある旨を告げる事。
取り調べの際にも必ず冒頭で、
「やってない事、話したくない事は無理に話さなくて結構です」を告げて、ちゃんと聞きましたの日時直筆サイン拇印を必要とするが……
逮捕時にカオルにはまだ告げられてないし、サインも求められてない。
また所持品検査もされる事なく、逮捕日時も宣言される事なくぶちこまれた形であった…
いわばこの様に権利をつげなければ現代法に沿うと、AMPが不当に監禁していともいえたが…
……
4月15日12:00過ぎ
「ふぁぁぁ」
「香津美、悪いな」
「妖魔は時を選んでほしいわね」
自宅で寝ていた香津美も緊急召集で呼び出されていてAMP実働班メンバーが重層室監視ルームに集結していた。
「シフトに関しては後程変更を告げるが…」
「にしても…本当にカテゴリー1か?人畜無害にもみえるが…」
「油断しちゃ駄目よ。擬態だったらいきなりパクってするんだから…」
「まぁ…そうだな」
改めてカテゴリー分けについてだが、
動物的思考のがカテゴリー3、人間の言葉を理解し使える程度がカテゴリー2、
人間的知能をもつのがカテゴリー1と前に説明したが、
防御面でもほぼ同様に分けられる。
……といっても物理的にも大きくなると当該にはならないが…
一番多いのが、
カテゴリー3の1m未満と1.5m未満で、
大きさ的にSSタイプ、Sタイプにわかれる。
カテゴリー3・SSタイプとSタイプは拳銃弾でも効くが、群れで襲ってくる事が多く、
言わば餓えた狼の10頭と拳銃もった一人と思ってよいだろう。
しかも狼は頭の病気におかされ撤退を知らないといった状態だ。
Mタイプ、1.5m以上〜2m未満は拳銃弾も効くが1発ではしななく、大体が10発位を要する。
2m以上〜3.5m未満はLタイプで拳銃弾では難しく、サブマシンガンが好ましい。
3.5m以上〜5m未満は2Lタイプで…5.54m使用のサブマシンガンでも難しく、それ以上の火器。
5m以上の3Lタイプも時たま出現し、もはや対戦車ミサイルを持ち出さなければならない。
4Lタイプとなるともはや軍用車載兵器の出番と言えよう。
それでもAMPメンバーであれば4Lタイプでも対応する。
カテゴリー2はMタイプ以上のサイズしかいない。
Mタイプでもサブマシンガンでは怯む程度しかなく、対戦車兵器…
Lタイプになってくると軍用兵器の出番だ。
妖魔戦争時にA-10が対カテゴリー2・Lタイプ以上に人類側は投入し、
1on1でA-10が勝つが、3体以上相対するとA-10の1機では絶望的というかんじであろう。
反対に3Lタイプ以上は存在がいまのところは確認とれてない。
カテゴリー1もMタイプ以上しか存在してなく…
肉体的防御面はカテゴリー2と同様といえるが、
魔術的な防御面からいうと人類側はほぼ絶望的といってよいだろう。
爆弾を集中的に継続してやっと…といってよい。
ただそれほど数が存在してないのが幸いだ。
元人間のガノッサとローザは肉体的防御面はカテゴリー3、拳銃で射殺可能だが、
常時障壁をはってる為にカテゴリー1相当といってよい。
一方…攻撃の面は…
カテゴリー3・SSタイプとSタイプは1匹1殺の枠をでない。
Mタイプは形状によりけり違うので分けは難しいが、1匹100人でも殺せるぞ…と位である。武器を持たない一般市民に対してだが…
Lタイプになると周囲の建物にも被害がおよぶ個体が出てくる場合がある。
2Lタイプになってくると魔術的遠距離攻撃をもつ個体が多くなり、
言わばファンタジー系で言えばドラゴンのブレスと言えばよいだろう。
3Lタイプ以上となるとその図体から機敏な動きは難しく、ブレス攻撃が主で、周囲のビルを倒壊させる威力だ。
カテゴリー2の方は…Mタイプから魔術的攻撃手段を持ち、ビルを倒壊させる威力な為に、
周囲50m程に甚大な被害を及ぼす。
カテゴリー1となると様々で周囲100mですめばよい方だ。
そしてこちらでの食についてだが…
いままで捕縛できたのはカテゴリー3のMタイプまでで、研究を行っていた。
カテゴリー3・SS〜Mタイプの一番の大好物は人間にはかわりないが、肉食として何でも食べ、
また腐肉も食している。
植物には全く食趣が出ないようで、サーモンマリネ等はサーモンのみとりわけて食した。
飢餓状態に陥ると同種であっても共食いを始め、また異界転移能力もある。
食物連鎖ピラミッドでかんがえると、カテゴリー3は邪界側での上位と考えられよう。
しかしカテゴリー2以上に関しては生きて捕縛もできてない為に全くわかってなく、
普段の邪界での普段の食事や生活などもそうだ。
こちら側で人間を補食し、また極上の餌と称しているいじょうはわかっているため、
生命活動で餌をとる必要があるのはAMP側も理解している。
邪界において食物連鎖をかんがえるとカテゴリー3を食すと想像はできるが…
その場合は共闘できる理由が不明でもあり、
邪界側での生態はそこんところが不明でもある。
カテゴリー3の生態研究の成果が重層室や霊的結界等で、
そしてカテゴリー1を逮捕できた金星で、妖魔研究が進むのも期待していよう…
……
(逮捕されちまったか…)
容疑は不明だが、逮捕されちまった以上…犯罪者側の立場で楽しむ事にしようと考えていた。
ネガティブにあれヤバイ、これやったら…と考えるよりかは楽ともいえ、
どうせ自分の世界に戻れば前科無しの軍の最高権力者の身分でもある。
一般人を体験とはいえ犯罪者同様取り扱ったら絶対に問題は生じる為に、
実際に入らないとできない経験だ。
だが入った後は前科持ちに殆どなろう…
酔っぱらいで警察の保護室に入るケースもあるが、
一歩間違えれば急性アル中になるためおすすめはしない。
カオルの目には重層室内を見ているが、
全くっていいほど物はなんにもない。
ブタ箱にはトイレがあるって聞いたがそれすらもない。
周囲は半ドーム状の壁であり、ところどころマジックミラーがある。
強度的には…iPhone9で採用される噂の割れない超硬ガラスを使ってるのだろうか…
その向こうには監視カメラや監視室があるのだろう。
鉄格子すらなく、向こうの様子もわからない、なんにもない部屋で座り込むしかなかった…
……
『これから取り調べを始める。妖魔、名前あるか?』
壁に仕込んであるのだろうスピーカーから流れた。
「妖魔ではないですが…」
『…名前はあるか?』
「渚カオルです」
『なんの目的でこの警察署に来たのだ?』
「普通に来ちゃいけないのですか?
一般見学できる部分を見に来たのと、
展望食堂で食べれると記載してあったので24階にのぼってきたのですが…」
スピーカーから声が流れなくなった。
…………
『ー展望食堂で食べれると記載してあったので24階にのぼってきたのですが…』
「間違いないな?」
トークスイッチから離し問いかける。
「そうですね。記録ではその様な行動をとってます」
「なぁ、レビア。妖魔じゃなんじゃないの?」
「そんな事はないわ。妖力をあの者は放っているの」
「どう検知してるんだ?」
「このあいだ所長室に侵入してきた妖魔のローザがいたでしょ?」
「ああ…所長の妹さんだよな、元人間の」
「それまでは常時結界にて妖魔の侵入を防ぐだけになってて、妖魔は検知できなかったのよ。
常時結界はかなりの強度を持ち、理論上ではカテゴリー1でも侵入不可だったんだけど、
でもローザは常時結界を破って所長室に侵入してきた…
それで常時結界の強化は厳しいから、
妖魔の妖力を検知警戒するシステムに方針を変えたの。
勿論、この方針だと課長や所長や香津美も引っ掛かるけど、
個人特有の妖力というか魔力をパターン化して識別したのよ」
「それをあの者は放ってると…」
「そうね」
「ならさ、こちら側の魔の力を持つ者の可能性は?」
「それも否定はできないけど…」
3rd-ATを申請している為に超法規的措置になっているが、
AMPにとって重要なのは、
擬態した妖魔なのか?
魔の力をもった人類サイドの人間なのか?
魔の力をもった元人類サイドの邪界側人間なのか?
はたまたそれ以外なのか?
それを見極めない事にはカオルを出す事はできない。
拘束しても問題ないのか?というと…
例えば射殺した場合でも、
AMP的責任ではAMPの職員が3rd-AT事件において無抵抗な一般人を射殺してしまっても、
それが社会秩序を護る為なら合法の範囲である。
勿論報告書は必要にはなるが…
過去には5歳くらいの女の子が、妖魔化して殺人事件をおこし、
消滅させようと魔方陣に捉えた時に、妖魔が女の子に主導権をわたし、
その時に肝臓に寄生している妖魔がAMPと交渉していた。
その状態でも所長は妖魔の消滅=女の子殺害を命じた為に、
妖魔は肝臓に完全に同化し、スキャン上完全に人間の身体になった…
だがAMPとしては少女の中の妖魔が活動再開の懸念があり、殺害を命じ、グラビトンのブラックホールの彼方へと少女は消えた。
香津美にはその覚悟はなく、キディが行い、香津美は後遺症に悩まされた…という事案があった。
その他の部署でもテロの人質となった一般人を、犯人ごと全員射殺、救助者0であっても部署責任者は報告書を作成し、
射殺した警官は怒られるのみですむ。
これが機動警察に来る前の井沢望の属したE-SWATでの実績だ。
おかしいと思うかもしれないが、約2千人の観光客がTokyoで命を失う超犯罪都市国家Tokyoの今の現状でもある。
人質が居るからといって犯人射殺を躊躇う様では殉職し、犯人は逃亡、
そしてまた再び重大犯罪がおこる…
そういった環境である。
スポンサーである企業はとにかく平和を求める為、いいように法律を変えて…
なのでAMPがカオルを拘束しつづけても法的に問題は無いとはいえる。
「人間サイドであれば正当な記録はある筈だし、また人間サイドでも犯罪者の可能性はある。
身分がわからないと判断できないな」
……
『渚カオルさん、IDカードをお持ちですか?』
両手首のワイヤーは切られてないが、繋がったワイヤーは取られている。
なので身体の拘束的にはフリーであった。
ポケットの中から取引につかった電子マネー入りIDを出すと、
『そちらではなく、身分証明入りの個人IDカードです』
「あ〜…ないんですよ…」
『はぁ?無いわけ無いだろ』
「すんません…」
『マイナンバーは言えます?』
「マイナンバー?なんですか?」
『個人識別番号ですが…』
「わかりません」
『え〜と…住所は言えますか?』
「住所ですか…住所はないので…」
……
「身元不明か…これは邪界側の者で確定の様だな」
「あとは元々邪界側か、元人類側か…妖魔の擬態なのかですね…」
「いずれわかるだろう。猫をいれたら空腹で正体をわかるかもしれん。
猫が居なくなったら擬態であろう…」
……
4月16日
昨日、期待していた飯がいつまでたってもでなく、飯を訴えたら……
期待して飯をまっていると…
アームに乗せられてきたのは鍋であった。
(おっ、鍋料理かぁ…まぁでも火傷をしないように冷ましてるんだろうな…)
留置場や拘置所等は自殺対策は徹底してるのを聞く。
特に逮捕させられて人生を悲観している人がロープ等で首をみずから絞めたり、
舌を噛みきって自殺したりなど聞く。
なので24時間監視の目が刑務所より従事している。
そんななか熱い鍋等自殺にもってこいだろう。
熱い汁を自ら浴びて…
な、事で汁物全般は冷たいと聞く…
触ってみると…若干暖かく火傷しないくらいに冷めてるのかなと、アームから床に鍋をおろし…
「みぃ〜」
(ん?)
猫の声が聴こえた様な…
(まさかね…)
「みぃ〜」
カオルの視線は目の前の土鍋に…
鍋蓋をあけると…
ねこが鍋の中にいた…
「か、かわええ〜」
思わず…
「ぐつぐつ鍋なべ、ぐつぐつ鍋なべ、
ぐつぐつ猫なべ、ぐつぐつ猫なべ♪」
と勝手に歌詞をつけて歌い出す。
それにあわせて中身がみゃ〜んと合いの手をいれてくる。
カオルは日本人でもあり、韓国の生煮込み猫なべのナビタンや、
猫汁のミョタンとして食するわけでもない。
漢方医学の薬湯として服用するらしい…
民間的な医学がまだまだ伝わる家庭的伝統という…
しばらくモフモフ遊んでると飯をくってないのに気がつき訴え…
カオルは使徒の為に少々の絶食では死にはしないが、
ムショ飯には興味もっていた。
普通では食べれず網走の元刑務所程度で食べられるのみだ。
後は半官半民の山口県美称市の刑務所で数量限定で食べられるのみ…
すると…
緑色のペーストが入った器と、黄土色のペーストが入った器がアームにのった盆にのせられ出てきた。
緑色のペーストは予想裏切らずミックスサラダのミキサーで砕いたような味が…
黄土色のペーストは…スパイシーなターメリック?的な味が…
黄土色のペーストはうまいが、もっと固形物を!と訴えると夜はそれで我慢してくれ、
量が少ないと訴えると満足するまでの分がペーストでだされた。
16日の朝食からまともなのを出すからと説明…
横をみると美味しそうに太郎がねこまんま擬きを食べている。
ねこまんま本来ならご飯に鰹節をたっぷりかけ味噌汁と…生卵をかけるものもいるが…
猫の食いつきは異常でジャスティスかもしれんが、実は腎臓病になる食事だった。
猫は炭水化物を消化する能力が、人よりも、そして犬よりもまたさらに低く、
炭水化物に塩分過剰になる食事だそうだ。
なのでねこまんまは人間用の食べ方といえよう。
なので擬きのご飯は豆腐を崩したもので、かなりがっついている。
鰹節は減塩タイプをつかっていると思えた。
そっちがうまそう…食べてみたいなと思うがかわいそうだし…
……
「ところで、太郎はどうするんです?」
食事を二人?ともおえたので問いかけると、
『太郎?』
「この子の事です」
『ああ、……土鍋にいれて返してください』
「みゃ〜ん」
大人しくカオルの手で土鍋に収まりアームにのせられ…
寝具は用意してないそうだ…空調を効かすから床に寝てくれと、
監視のために照明が消えない状態で無理矢理寝る。
……
身体バキバキの16日の朝食は…お粥とあげパンがアームにのせられてでた。
まともなの!と不満を訴えるが、食べてみろと言われ食べると…
(あっ、タイのジョークか…)
ある程度まともな朝食で満足する。
ジョーク…日本のお粥と違い、ミキサーで砕いたお米をつかったトロットロの粥であり、米が煮崩れているのをさす。
基本味がしっかりとついていて、今回のジョークはパクチー、生姜、唐辛子たっぷりで辛めに味付けされていた。
そこにナンプラーの小瓶がついて…
味付けされてないのはプレーンジョークと呼ばれて、屋台の薬味で味付けだ。
実はと切りだれて朝食の手配に間に合わず今回は夜勤者の手作りとの事らしい。
うまかったですと素直に告げた。
トイレを訴えるとおまるがアームに掴まれ出された。
多分みられてるが躊躇なくズボンとパンツをおろす。
躊躇なくできるのは転生前にバイトでしていたコンサートスタッフの仕事柄、人前での着替えで恥は棄てていて、
また露天風呂ですっぽんポーンするのが開放的で好きだったのもある。
特に尻焼温泉がお気に入りだった。
尻焼温泉は高い道路から丸見えで、温泉宿の真ん中を通る川の底から源泉が涌き出て、
川を塞き止めて川の水で温度を調整している約50m四方くらいの大開放の温泉だ。
四方から視線を隠す衝立もなく、脱衣場もなく、女性は水着でないと絶対に入れない様な温泉で、
なので男女ともほぼ水着着用。
大体が車のなかに貴重品をおいて、キーを防水ケースにいれて手元に持つかっこうだろう。
地元民用ともいえる源泉かけ流し浴槽、屋根付きだが水着着用禁止と女性には難易度が高い浴槽もある。
行き方は吾妻線の長野草津口駅から292号、途中494号に入って北上、脇を流れる白砂川が褐色に染まった岩が見え始めたら間もなくで、
花敷温泉から55号に入る。
川の温泉繋がりで、西には川湯温泉もある。
和歌山県の中央部分、田辺市本宮町の大塔川沿いにある温泉地で、川原を掘れは温泉が湧くという。
そして仙人風呂はの大塔川の水流が少ない毎年12月〜2月の3カ月間だけ開催される期間限定の巨大な無料露天風呂でこちらも大開放的だ。
ブルドーザーで掘削して湯船をつくる。
食われるのはいやだが、見られて減るもんでないといった考えだろう。
用をたすとペーパーは別袋に入れるよう指示され、
おまるはアームに掴まれ回収された。
……
(いつ逮捕解かれるのかな?)
カオル側は平和日本での逮捕の流れを考えていた。
(まぁ…準現行犯逮捕による留置なんだろうな…となると…)
留置とは、刑事訴訟法において、犯罪が疑われている者を拘束し引き継ぎ身柄を拘束する事をさしている。
犯罪を疑われている者の逃亡や証拠隠滅を防ぐ事を目的としている。
カオルはこの世界では身分がない。なので一旦釈放してしまうと、逃亡成功してしまうためにAMPは逮捕し留置したのだと思っていた。
(と…なると…18日午後にはには釈放か…または何かしらのアクションはあるとおもうが…)
留置勾留の時間について説明するが、
まず留置は、警察官が逮捕した場合、取り調べは逮捕後48時間以内に終えて、
検察官に引き継ぐか、釈放するかを決めなければならない。
検察官に引き継ぎ、24時間以内に裁判官に勾留請求、起訴するか、釈放するかを決めなければならない。
そして、検察官が勾留請求をした場合には、裁判所に行って裁判官と面談する必要があり、
裁判官から逮捕の理由となった容疑について簡単な質問、勾留質問を受ける。
その場で当該人物が、証拠を隠したり、逃亡したりするおそれがないと判断すれば、
留置で終わり、勾留が決定されないため、在宅での取り調べになる流れとなる。
釈放は不起訴ではなく、あくまでも在宅事件か不起訴かの境目という感じだ。
軽微な犯罪…たとえば、
喧嘩で罪を認めてます、相手との弁護士を介しての示談交渉に入ります、
相手に近寄りません、わたしはどこの誰々です。
といった場合は釈放後に在宅起訴か、示談交渉で不起訴になる場合が多い。
在宅起訴の場合は自宅から裁判所に通う形だ。
罪を否認しつづけると取り調べする必要があり、勾留が決定されるケースが多い。
勾留が決定すると、
最初の勾留期間は10日間。しかしその後、勾留を継続したまま捜査を続ける必要性がある場合は、
更に10日間延長され、合計20日間勾留されることがある。
事件の種類によっては、最長15日間延長され、勾留は合計25日間に及ぶこともある。
検察官は、勾留期間中に、警察官が集めた証拠などを検討し、事件を起訴するか、被疑者を不起訴、起訴猶予、処分保留で釈放するかを判断する。
事件が起訴された場合は、被疑者段階の勾留は自動的に被告人勾留へと切り替わり、
そのため基本的には保釈が認められない限り、
判決が出て裁判が終了するまで勾留が継続することになる。
基本的に勾留される期間は、2ヶ月月間、満了した場合、
必要性があれば1ヶ月ごとに更新される。
それで留置場と拘置所どっちに入るのかというと、
警察による留置段階では留置場、
検察官取り調べ起訴前期間中は留置場か拘置所、
起訴後には拘置所に入ることになり、
今のカオルは重層室、留置場に入っている段階とカオルは思っていた。
逮捕されたのが15日昼前、72時間後が18日昼前ということだ。
なを、リアルで単独で逮捕された場合…
逮捕後勾留請求が認められるまでの約72時間迄、外部に一切の連絡がとれなくなる。
勾留決定して裁判所から逮捕された者が選んだ任意の1箇所だけに連絡がいく形だ。
つまり会社等も無断欠勤の突然失踪したと思われる事になる。
そんな馬鹿なと思うかもしれないが、所持品検査して携帯は保管箱で、出せない状態、
警察からは連絡する義務はない。できないと宣言される。
なので弁護士の出番になる。軽い犯罪では国選弁護士はつかず、料金はかかってしまう。
たが当番弁護士と初回無料相談をする権利は誰にでもあり、それを警察が阻害すると、重大な権利侵害になる。
なのでどんな場合でも弁護士に初回無料相談を求められたら、その日の当番弁護士を警察は逮捕された者の代わりに呼ばなければならず、
相談後に依頼人の為に代理で外部と連絡とれる私選弁護士となる。
警察の為に動く弁護士じゃないかと思うかもしれないが、弁護士は依頼人の為に動く弁護士であり、
偶々その接点が当番…というだけであるので安心といえる。
……
16日の昼飯がアームにのせられて出された。
(むぅ?)
メニューは食パン3枚…
マーガリン・ジャム合わせて3種類、
とパックジュースがでた。
トーストにかけてなく冷たい状態だ。
「ちょっと!まともなの?これがですかぁぁぁ?」
『無料配給ではそれしかでない』
警察に捕まると飯は税金で賄われて被疑者は支払わなくてよい。
特に現行犯逮捕等、財布を持ってない場合もあるだろう…
有料だったら食事がないって事で餓死を強要する事になる。
なのでその点は平等だ。ただしなるだけ費用を抑えようとして昼はほぼ全国的に食パンだ。
それはサイレントメビウス世界の警察でもの企業の費用で賄われるのはかわりないのだろう。
『あっ、すまない追加メニューの話をするのわすれてた』
「追加メニュー?」
『昼食に関してだが、有料でプラスメニューをとるシステムがある』
「あ、じゃあ払いますからー」
『受付は前日迄の扱いだ…』
警察では自費弁済と言われるシステムで追加メニューの形だ。
それでは不満がでるものもいて、で追加メニューの自弁というシステムがある。
だが前日注文らしく…そこは実際に逮捕された場合に聞いてほしい。
「……今日は食パン3枚だけですか?」
『そうなる』
「はう……何とかなりませんか?さっき忘れてたと言いましたよね?」
暫くスピーカーから流れない…
「足りないです〜はらへったぁぁぁ」
少し厚い食パンは170kcalなので3枚で一応510kcalはある。ジャム等ついて600kcalってとこだろう。
吉野家の牛丼並盛りは636kcal、掛け蕎麦は約360kcalで、一応蕎麦よりカロリーはある。
蕎麦はGl値が低く満腹感がなかなか感じないが、蕎麦汁でかなり腹は持つ。
愚痴ってると食パンが追加出ててきて、メニューも渡されてきた。
メニューには…カレーライス・カツどん・焼肉弁当・中華弁当、
焼きそば・ポテトサラダ・ほうれん草おひたし、
メロンパン・アンパン、
野菜ジュース・牛乳が書かれている。
値段は10Cr〜40Crで手頃、日本円物価で100円〜400円相当…
『00分署ではその内容だな』
「00分署では…って他の署は違うのです?」
『どの署にどの業者が入るかはその裁量で違う。
00分署では食堂にはいっている業者からの出前の形をとっている。
食事が署にある場合は大概食事からとるらしいぞ』
「成る程…」
食パンで腹を満たし…
……
レビアは電脳世界にてカオルの記録がないかを探し、
取り調べとしては血液検査等が入った。
夕食の時間…
まともな飯を希望してカオルがまってると…
「こんばんわぁ〜」
「はっ?」
二重扉から若い女性が入ってきた。
「あの…すみません…どういう事ですか?」
『イ・キョンヒム死刑囚と今日は同居してほしい』
「えっ?!死刑囚!!」
『恐がらなくて良いぞ、麻薬密輸でなので殺しとかではない』
「あっ、そうなんですか…でも麻薬密輸程度で?」
『それは当たり前だろう3キロの密輸だからな…常識だろう…?』
平和日本やリアル日本では麻薬関連の罪での死刑はない。
刑事訴訟法、つまり警察が逮捕し、検事が告訴する罪の中には制定されてない。
刑事訴訟法外の薬事4法にて罪とされている。
海外の密輸団からみれば軽すぎと言うことで手を出す始末である。
膨大な覚醒剤売却益を取り上げる事はできず、
最高刑無期懲役または最高1000万円程度の罰金を払えば良いからだ。
麻薬関連で無期懲役が決まるケースは…あまりなく、
膨大な金額を手にする為に模範的になろう…
一方、麻薬関連の罪で重いのは最高刑が死刑と制定され死刑が執行されてるのは、中国、マレーシア、イラン、サウジアラビア、ベトナム、インドネシア等だ。
2015年10月、2009年にマレーシアの国際空港に、覚せい剤3.5kgを密輸したとして、
日本人女性が逮捕され、裁判が行われていたが、10月15日に上告が棄却され、死刑判決が確定した。
3.5kg密輸で死刑なのは、マレーシアでは麻薬所持の有罪判決が死刑と制定されている為だ。
一審から頼まれて荷物を運んだだけだと、無罪を主張したが…
流石に同ルートを6回往復して、
頼まれた中身を知らないとは通用しないの判断らしい。
また5月には、インドネシアで麻薬を密輸したとして日本人男性に、終身刑が言い渡された。
更には6月中国で麻薬密輸の罪で日本人の死刑が執行された。
ある意味常識だが…他人から荷物預かりません、お土産も必ず中身を確認してから…
特に善人の日本人が狙われやすいのは、空港チェックイン時に、
他人から「すみません、無料預け分オーバーしたので、このバック預かってほしいんですが…」
謝礼はらうからといって預かってチェックインしたら中身は麻薬です。
サイレントメビウスの世界では死刑となっているようであった。
「あの〜、それで夕飯は…?」
死なないがムショ飯に期待してるため。
『ああ、今待て…』
殺風景な重層室の中にやっと折りたたみ式の椅子机が入って、そこに食事を乗せられるようになった…
それまではただ床に座ってだったので嬉しい事である。
だされたのは…トレーに、ごはんとおかず2種と汁物…
死刑囚の夕飯はうまそうに見える。麦飯だ。
「旨そうですね〜」
「そうでもないですよ。薄味なので調味料が欠かせないんですよ。他には…」
刺身などの生ものは食中毒の危険や予算の都合上なく、一食55crが予算。
サラダの類は頻繁に出るけれど、キュウリもキャベツも、すべて茹でてあり、
生野菜はない。
炭水化物に偏ったメニューで、明らかにタンパク質が足りない。
ビタミンB、ビタミンCも不足は明らか。
また自分弁済のシステムが拘置所にはあるが、拘置所の自弁弁当はまずいので、調味料と缶詰にあてているとの事。
レパートリーが多くないのが残念だが、管理栄養士がいて栄養バランスも考えられたあたたかい食事。
味も一部を除き酷いわけじゃない。
拘置所の食事は刑務所の懲役囚が労役の形で食事を作り、提供しているとの事。
味が酷いのは焼き魚、アジやサンマはまだ普通の味だが、ブリやカジキは酷い。
ハシが通らないほどカチカチな焼き具合であり、
口中の水分がなくなるパサパサ具合で、
噛んでも噛んでも、生臭さしかなく味やあぶらがゼロという。
通常養殖物は運動不足の為に脂ギトギト…いわば脂がのっている。
カロリー計算して落とすために脂を低火で焼き、徹底的に落としていてパサパサになる。
そのままでは食事ではなく噛んで飲み込む作業なので高いが自弁のマヨネーズの出番という。
「焼き魚に関しては留置場時代が美味しかったですね」
他に牛肉が豚肉より不味いという…
理由は上記通りカロリー落としのために低火焼きすぎといえ…
そこは致し方ないかと…
重作業についてる懲役囚は1日2620kcal、これはA食と呼ばれ、
軽作業がB食2320kcal、
死刑囚と労務につかない懲役囚はC食、2220kcal。
無料提供分のカロリーに関しては徹底的に管理され、同メニューでカロリー調整する為に、
おかずは必然的に低カロリーで、脂を落としをせざるえないという。
松屋のポークカレー並が763kcalで、3食2289kcal…
他にジュース類で一気に2600kcal超えるので、
囚人の徹底カロリー管理がわかる話だ。
因みに並カップラーメン3食だけなら1200kcalあたりでダイエットには丁度良いが…
留置場の予算は1食30Cr〜40Crと刑務所より低く、その為に昼がパン食で予算を抑え、夕食に浮いた予算を当てている話だ。
夕も1食40Crでもかなり貧相になるらしい…
00分署は1日120Cr計算で、レストランでつくられる為に飯は暖かいが他の署で外部委託…
仕出し弁当の形をとる署は1日1回の仕入れで冷たい飯らしい。
(そういえば…)
1Cr=10円で計算でき、仕出し弁当が500円、ワンコインだと…
一般オフィス系の仕出し弁当でギリギリとも言えよう。
かつ昼しか基本提供出来なく、容器は使い捨てでなく、回収の形だ。
おんなじメニューを大量生産しコストを下げて11時頃に配達に向かい、午後に容器回収に回る。
企業が終業後の夕方5時以降用の夜弁や、始業前の朝9時以前の朝弁やるところは少ない。
夜になると、工場側が大量生産出来ず、容器は回収せずに昼メニューと一緒だと予算が200円程高くなるところが殆どで、
ロケ弁や会議弁になると1000円〜が多くなる。
メニューがかわらない定型メニューのおにぎり弁350円位を大量注文して1万円以上〜で、指定時間に配達が殆どだ。
それだったら早朝でもやってるところはやるし、
目安として10万円以上なら営業時間外でも対応するところはやる。
だが常時留置場に100人捕まってる訳でもないし、その日によって人数は違う。
なので低予算の1日1回配達の冷たい容器回収の仕出し弁当なのだろう…
食べ終わり食器が下げられると…
寝具がアームにのせられて入ってくる。
流石に床で寝るのはきついと思っていた。
少し離れた箇所に死刑囚が布団を敷いたので就寝。
4月17日
起床後寝具をかたずけて朝食がアームで配膳。
死刑囚は麦飯、金時豆とマグロフレークがそれぞれ小皿にのせられ、
玉ねぎときりふの味噌汁がついている。
こちらは白米にどんぶり味噌汁、
納豆とお新香だ。
「00分署はご飯の待遇は良いですね〜
私の捕まった署なんか、3食外注弁当なので作りおきで…温かくも無かったですよ」
そう言えば白米は湯気がたってほこほこだ。
「そちらもですね」
「多分急いで運ばれて来たんだと思いますよ〜。
受刑者や死刑囚はメニューは刑務所、拘置所ごと統一しなければならない法律があったとかで…」
味付けは少し濃く満足で、豚肉も入っていた。
朝食を食べた後、死刑囚は出ていった。
……
「さて…重層室にとらえている彼、渚カオルだが…
まずは確認事項で妖魔の擬態ではないのは異存はないな?」
全員が頷く。
極上の餌の人間が隣にいて我慢できる妖魔はいない。
死刑囚は司法取引で減刑され釈放の手続きに入った。
「残るは邪界側の住民の人間型か、元々人間界側の人物で邪界側へと参加したものだが…」
「課長、私の調査の結果ですが…
まず彼の行動記録、監視カメラの映像の精査になりますが、
2026年4月13日以前の記録、映像に一切ありません」
「おいおい…とうなると…」
「次に血液検査の結果ですが、ご覧ください」
「げ、おたまじゃくし?」
「いえ…あれでしょ…」
「……言えません」
「わたしはこのおたまじゃくし擬きを妖魔球と名付けました。
知っての通り人間の血液は、血漿成分…液体と、血球成分にわかれ、
血球成分は大まかに赤血球、白血球、血小板から構成されてます」
別の画像を出す。
「こちらは所長、香津美の血液成分ですが、妖魔球はありません。
つまり邪界の人間型や元人間の邪界の住民は、妖魔球により空間転移能力をもつと考えられます」
「ローザやガノッサの血に妖魔球が流れてるのか…」
「なぁレビア、カテゴリー3の血液には妖魔球はあるんか?」
「カテゴリー3クラスには妖魔球は見つかってないわ。
カテゴリー2の死骸にもいまのところは見つかってないわね。
生体組織内にあると思うわ」
「この妖魔球と通常の人間の血液混ぜるとどうなる?」
「そこはまだ検証をおこなってませんが、血液中の比率からして侵食すると思われます」
「人間の妖魔化か…」
「他にもこちらをご覧ください」
カオルが採取の為に注射針を刺されている映像だ。
「この針を抜く瞬間をご覧ください」
抜いたときに脱脂綿で刺し口を押さえ、注射後の止血絆を貼る瞬間で映像を止め、
「この様に傷、出血がありません」
「はぁ?」
「肉体再生能力?」
「おそらくは肉体超再生能力でしょう。
血管から注射針抜く瞬間に再生し内出血なし、
肌から針が抜けた瞬間に再生してかと思われます」
「老化知らずになるのか…?」
「あと、記録を調べていて問題箇所が見つかりました」
「問題箇所とは?」
「彼は4月13日に古物商に現れて売却益を新しい取引用IDカードを入手してそこに入れます。
そのIDカードで服飾店で買い物、
リニアチューブにのり、トレイン、タクシーで乗り継ぎますが、タクシーを降りた箇所は…」
「えっ!?」
「香津美んちの前?」
「嘘、霊的隠蔽効いてないの?」
人間寝ている間は無防備になりがちであり、実際に香津美の自宅へと妖魔がさらいに来たこともあった。
00分署レベルであればかなりの強度の霊的防御結界を常時はれるが、
各個人宅では難しい…
そこでとられたのが霊的隠蔽と弱結界の組合せ。
特に霊的隠蔽で妖魔が魔力を見失い自宅内の安全は護られていた。
「いや、香津美の居なかった時間の為、霊的隠蔽が効いてないわけではないようね。
考えられるのは何だかの手段で香津美の自宅住所を知り、真っ直ぐに向かった…」
「じゃあ…そこのところをきっちり問い詰めなきゃな」
「ええ…」
「案外、香津美んちの自宅に侵入済で、下着あさりしてたりして…」
「やめてよ!!」
「可能性はあるぞ」
……
前日の昼が食パンだけであったカオル、
待ちに待った自費弁済の食事付きで出されてきた。
主食は食パンで変わらない。
追加でメニューがつく形になる。
頼んだメニューは焼肉弁当と日替わりスープで、50cr…
白米はついてなく追加で10crになる。
蓋を開けてみると焼肉がキャベツの上にのっていて余分なタレをキャベツが吸っている。
味もタレでしっかりついている。
ゆでモヤシとホウレン草のおひたしがついていた。
普通なら蓋あたりが水蒸気でべちゃべちゃになるがそうはなってなく、
仕出しした署内食堂の技術なのだろうか…
スープはプラスチックぽいカップに蓋が栓になっていて、
回しあけるとしっかりと野菜スープの匂いがあがる。
うまい…
(やっぱり自弁で正解か…)
それとも00分署自体が特殊な例なのか…
明日も追加注文しておくかの気にはなる。
うまい昼食後に…
『これから取り調べをはじめる』
スピーカーから音声が流れてきた。
『渚カオル…だったな?13日は何処にいた?』
「へっ?13日…?」
『今月、4月13日だ。証拠は上がってるんだぞ、証拠は』
(えっと…たしか…)
『タクシーで何の用事で降りたんだ?』
(げっ)
「え、え〜と…友達に会いに…」
『ほう、その友達の氏名、IDナンバー、住所、連絡先は言えるかね?』
「……」
存在しない友達は言える筈がない。
『13日から15日まで何処に居たんだ?
13日にタクシーで降りた箇所から何処にも移動した痕跡が、
監視カメラなどにもないが…何処に居たんだ?』
「……」
流石に香津美の家に居ましたとは言えない。
『00分署まで来たルートは?』
「……」
それも幻影をかけて飛行して来たとは言えない。
『公共交通機関使えば、映像が残る…わかりきっている話だよな?
何を使って来たのだ?』
「え、えっと…徒歩で…」
『ほう?先の家からここまで徒歩でカメラに映らないルートがあるのか?
このTokyoで、そのようなルートあるなら教えてほしいもんだ。どんなルートを通った?』
「……」
『歩いてきたとなると何時間かけて歩いてきたんだ?歩く馬鹿何処にいるんだ?』
「……」
『先のに戻るが、何故住所をドライバーロボットに素直に言えたのかね?』
「……」
電脳世界でハッキングして調べましたなんて言えない。
個人情報でかなりの機密性があり、むやみやたらにアクセスできるようなもんでもない。
『目的はなんだったんだ?AMP隊員の自宅へと向かった目的は!
そのくらいさっさとゲロすれば楽だぞ!』
「……」
言えない…
『さあ、答えー』
『ブゥーイブゥーイ3rd-AT、3rd-AT』
スピーカーから被せられる様に監視室内の警報音が流れる。
『ちっ!!いいとこだったのにな…今日の取り調べは終了だ』
……
ヤバいところを問われたが、事件発生でバレずにすみ、うやむやになった。
明日には釈放の筈…法律には勝てないだろう…
(しかし何故ばれたんだ?)
映像が残っている…と言われた。
考えられるのはタクシーロボットだけだ。
だがその手前は…一般的にわからないだろう。
気になったのでねっころがり、
カメラに映らない背面からひそかに同化しネットワークへと侵入する。
……
会議の映像が残っていたので見てわかった事であるが…
(あちゃ〜…IDカードからわかったのか…)
ポケットから出した取引用IDカード…
硬貨紙幣等存在しない世の中なので、カードに記録されている電子マネーを使用せざるえなかった。
それを調べるには膨大な取引ログがあるが、ピンポイントで探し当てたのだろう…
そして監視映像…犯罪都市Tokyoはメイン道路には隙間なく監視カメラが備わっていて、その数約50万基。
裏通りは備わってないものの、メインが囲っている為に必然的に監視カメラを横切る形になる。
映らないで移動には下層のヘブンズホール内移動するしかなく、上層の00分署へは必ずメイン道路を使用せざるえない…
つまり必ず映るって事になる。
それが映ってないのは不自然とも言えた。
また公共交通機関…
鉄道警備隊という、グール等反政府組織に配慮して独自の警察権をもった鉄道会社運営の私的警備隊だが、
そちらにもレビアはアクセスし証拠映像を抜き出してる。
他にもタクシー会社の記録も同様手段で抜き出してる。
外に出たらIDカード情報を書き換えねば…と思い…
(あ〜血液に妖魔球ね…)
使徒の血液といえるカオル。
赤血球は酸素を運ぶが宇宙空間において役に立たない。
その為に力を願ったカオルに神が転生として形成としたのだろう。
少なくとも宇宙空間で生身で無事な人間は居ない。
大帝国のマウマウ族や、はっきりいってドラゴンボールの世界であろう…
研究試料としてされては不具合が生じる。
後にそこの部分のみ処理をしなければと思い…
(あと…妖力の波長ね…)
個人パターンで僅かに違うらしい…
AMP側での検知したパターンを覚え…
……
夕飯がだされた。
スピーカーから聞こえたのは知らない男性の声、留置担当官なのだろう…
カレーライスで、食堂のこだわりか具材にジャガ芋と人参をゴロっと大きめにはいっている。
鶏肉もおおきく中に旨みがしみこみうまめだ。
1日寝かせたような味わいがでていて、これで1食45cr予算なら安いといえよう。
外食なら75crでも良さげかもしれない。
本来なら風呂の日らしい。
一般収監なら牢屋の外にだされ、留置担当官付き添いのもとシャワーをあびるが、
妖魔の疑いのカオルは重層室の外には出せなく、
代わりにドライシャンプー、ドライボディーソープ、
あとタオルと湯が入った洗面器が出された。
使徒の為に新陳代謝せず垢が出ることもないが…使用し、
寝具が搬入され就寝。
……
4月18日
逮捕されてから既に3泊、間もなく72時間になろうとしている。
朝飯は白米、けんちん汁、海苔、漬け物がでた。
やはり無料食は必要カロリーを白米やパンで補うのはかわりないなぁ…と思いつつ…
食後釈放か、検察官の人が来るか…と思っていたら…
『取り調べを始める』
「すんません、警察の方が取り調べするのはわかりますが、検察官に引き継ぐんですよね?」
『検察官にだ?妖魔が検察官必要とするのかよ?』
「えっと…弁護士は?黙秘権は?」
『つかないよ。通常の法的逮捕でもねえんだし、黙秘権も存在しない』
(そういえば…)
改めて逮捕された時だが、
黙秘権と弁護士を呼ぶ権利などについて説明され、それを聞きましたという内容の紙に署名捺印をする…それはなかった。
AMPが弁護士を呼ぶのを妨害して、重大な権利侵害してると言えるが、それは平和日本での法律の範囲内であり、
サイレントメビウス世界のAD2026年の法律ではない…
「となると…勾留決定なんですか?」
『確かに私らに勾留決定の裁判権はあるが、勾留ではなくまだ留置段階といえるな』
「留置段階で72時間そろそろ経ちますが、
いつまでここに閉じ込められつづけるんですか?」
『なんでそんなこと知ってんだ?
まぁ…そりゃあ…妖魔であるかぎりず〜っとともいえるな』
「期限がないですか…協力をするといっても?」
『協力か?…すこしまて…』
とはいったものの…
(逃亡か…こちらをばらすか…どちらが影響すくない?)
逃亡の選択も考えていた。
明らかに拘束時間は長期化する…
この世界に影響は与えて未来は変わるものの、オルタ4の世界が優先であり…
2030年終結する妖魔戦後、邪界とガイアと呼ばれる人間界は条約を結び、
2050年へと時代は進むのは理解してるが…
結局重層室からは出してもらえず…
昼食…
自弁の中華弁がでたがあんまり味わう気をせずに…
『明日の追加メニューの注文はいいのか?』
「食欲がないので…」
午後はなにも動きなく。
夕食…
『まったく手をつけてないが…』
「ハンガーストライキです」
『………』
断食がひどく衰弱してくると拘束して強制的に栄養点滴されてしまう。
留置場や拘置所、刑務所では生かして労務させ刑を償うこと、
また、刑を行政側で執行する事が重要で、
自らの意思で自殺させるのは認められてない。
なので問いかけてくるが衰弱している様でもないので様子見の判断が下ったのだろう。
夜…
身体全体はカメラに晒したまま、重層室の床面に密かに節している箇所のみ同化。
監視室内では看守が監視映像をみている…
センサーとカメラをハッキングし、映像は朝までループするように設定。
看守は気がつかない。
カオルの波長を登録し警報がならないように設定し、
またIDカードもネット側とカード情報書き換えて足がつかないようにし…
重層室を同化で脱走し、世界扉の楔を00分署の倉庫にて打ち込み、倉庫の回りのセンサーを支配下におき…
メインターゲットの彩狐由貴の自宅へと…
……
「ほう…同胞が囚われてると聞いてきたが…何者なんだ?」
カオルが00分署から壁ぬけし、飛行で離脱したのをガノッサとローザが目撃していた。
「人間兵器かしら?」
「イエローウェポンか…」
「人間が単独で空を飛ぶ…油断ならないわね…」
……
喫茶ラビリンス…
ビルの地下にある由貴の自宅兼店舗だ。
オーナーが店を開くならただにするとの好意で、
由貴が夢だった喫茶店を開いている。
店舗から奥の居住スペースへと入り…
「おとなしくして下さい!!」
(ばれてたか…)
部屋に同化で侵入すると、ブラスターの照準を此方に向けている寝間着姿の由貴がいた。
超能力で襲撃を予想したのだろう。
「皆には通報してます!
どうやって重層室から脱走できたかわかりませんが、おとなしく逮捕されてください!」
「あいにくそういうわけにはいきませんので…<加速><幻影>」
「えっ?」
彼女の目には急に消えた様に見えただろう。
「うっ…」
背後から睡眠薬を口元で嗅がせ、力抜けるように崩れ落ちる由貴を支える。
「本当はやりたくないが…」
虚数空間から吸血セットをだす。
香津美にした浸透セットとは違い、痕が少しの間残り、血を抜き取られたがわかってしまう。
左手背静脈をシャムシェルの能力…高周波ブレードに変形させた右人差し指で傷つけ、
血を採血器に血を吸いとらせる。
点滴に普通使う血管で、素人でも神経傷つけずに採血できそうなのはそこしかないと思う。
手首表側は細い静脈網で案外傷つけても出血がすくない。なので血が止まりやすく採血等には向かない静脈網だ。
更に注射等はやはり技術がいる為、腕の肘裏部は神経もあり容易にはいかない。
なので手背静脈血管を切りつけ、吸血セットで血をすいとる形をとった。
採血が終了し、止血ナノマシンを吹き付けて血止め。
血管から血が漏れ出さないのを確認してメモを残して…
「由貴!!無事か!!」
(げっ!!…もうきたのか)
喫茶スペースの方からキディの声が響く、合鍵かなんかで侵入したのだろう。
急いで壁に同化して抜け出し…
カオルと入れ替わる様に寝室の扉を乱暴にあけて入ってくるキディ。
由貴がベッドに倒れているのに気がつきいの一番に容態確認、無事なのを確認すると、
回りを見渡しメモに気がついていた…
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