今、俺――兵藤一誠の目の前であり得ない出来事が起こった。いつも通り、自分の彼女であるアスナと一緒に下校していると、見知らぬ少女からいきなり告白されたんだ。
自分でいうのもなんだが、俺とアスナは仲睦まじい。それは駒王学園内だけでなく、学外にまで知れ渡る程だ。世間一般からいえば、俺とアスナはバカップルなんだろう。
そんなアスナLoveな俺にアスナがいる前で告白してくる猛者な少女がいるとは思いもしなかった。ってか、俺の霊感から察するに告白してきた美少女は人間じゃないんだけど。……取り敢えず―――
「悪いけど、俺には彼女がいるから。いくら彼女がハーレムを許容していても、誰彼構わず手を出すのはどうかと思うんだよね」
そう。俺の彼女――アスナはハーレムを許容するという、何とも心の広い女性なんだ。現在、俺に好意を寄せる女性はアスナを含めて7人いる。
そして、その内2人はバリバリ身内な黒歌と白音。残りの4人は『SAO』で知り合ったサチ、シリカ、リズベット、シノンだ。アスナ曰く―――
「英雄、色を好むって昔から言われているわよね。皆、イッセー君のこと本気で好きみたいだし、私も皆のことが親友として好きだから幸せになってほしいって気持ちがあるの。
それらのことを総合して皆と話し合った結果、ハーレムを許容することにしたわ。内心では面白くないけど」
とのことだ。いや、実際に現時点で相思相愛なのは俺×アスナだけなんだけどな。でも、他の皆から迫られたりするとドキドキする自分が居たりするんだ。ホント、俺って節操無さ過ぎかも。
そんなことを考えていると、人外美少女が告白してきた時とは打って変わった低い声で口を開いた。
「至高の存在である私が告白してあげたのに、断ってるんじゃないわよ!そんなにその女がいいなら、そいつ諸共死ね!!」
人外少女は背中から黒い翼を出し、飛翔したかと思えば光の槍の様なものを形成し、俺とアスナ目掛けて投げてきた。
俺は人外少女が翼を出した時点で竜闘気を纏い、彼女が飛翔して光の槍を形成し始めた時にはアスナを姫抱っこし、槍が投げられた時には着弾地点から10m程離れた場所まで跳んでいた。
「ふ〜ん。人間にしては中々の身体能力ね。でも、至高の堕天使である私から逃げられるかしら?」
わお!どうやら人外少女は堕天使だったみたいだ。そういえば昔、黒歌に世界には悪魔や天使、堕天使がいるって聞いたことがあるな。
ってか、神器持ちの俺だけを狙うなら分かるけど、一般人のアスナまで一緒に殺そうとするって、どんだけ非常識なんだよ。堕天使って奴は……。
明らかに巻き添え喰らっただけの一般人であるアスナは絶賛混乱中だ。だって―――
「え?何、これ?新手のドッキリ?カメラどこなの、イッセー君?」
アスナ、これはドッキリじゃなくて現実なんだ。ってか、俺達はドッキリ仕掛けられる様な有名人じゃ……。あれ?『SAO』の生還者で、『SAO』をクリアに導いた立役者、英雄と呼ばれた俺とその嫁であるアスナはある意味有名人か?
……いや、例え有名人だったとしても、こんな悪趣味なドッキリ仕掛けるTV局は存在しない。理由は簡単。光の槍が着弾した所に拳大の穴が空いているから。直撃喰らったら普通の人間は死ぬから。
心の内で突っ込みを入れつつ、俺はアスナを地面に降ろすと『十戒の聖石剣』だけを形成し、堕天使に向けて構える。
「あら、それは聖剣?ってことは、あなたの神器は『聖剣創造』だったのね。そこそこにレアな神器だわ。これなら焦らず、もう少し時間をかけて攻略すれば良かったかしら?そうすれば『聖剣創造』を摘出できたのに、ね!!」
堕天使はそう言い終えると、新たに形成した光の槍を俺目掛けて投げてきた。俺は『十戒の聖石剣』の形状を第四の剣・『封印の剣』へと変え、光の槍を斬り裂き霧散させた。
堕天使は自分の作った光の槍があっさりと霧散したことに驚いたのか、それとも『十戒の聖石剣』の形状が変わったことに驚いたのか、驚愕しながら口を開いた。
「わ、私の槍が消された?何よ、それ!?さっきと形状が変わってるじゃない!『聖剣創造』はそんな能力じゃない筈よ!!」
「ああ。確かにこれは普通の『聖剣創造』じゃない。『聖剣創造』の亜禁手、『十戒の聖石剣』だ。お前の槍を斬り裂いたのは『十戒の聖石剣』の能力の1つ。実剣では斬れないものを斬り裂く剣だ」
「ば、禁手ですって?『聖剣創造』の禁じ手にまで至っているというの!?」
空中で後ずさるという表現をしていいのだろうか?取り敢えず、堕天使は顔を蒼くさせながら後退した。そして、俺は反撃に移る為、『十戒の聖石剣』の通常形態である第一の剣・『鋼鉄の剣』へと形状を戻し、いつでも踏み込める体勢をとった。
すると、俺と堕天使の間にいきなり魔法陣が展開し、俺のイメージカラー(?)である紅色の発光を起こしながら魔法陣の中心から人が出てきた。現れたのは駒王学園四大お姉様の1人、リアス・グレモリー先輩だ。
「御機嫌よう、堕天使さん。この町で悪さをするなんて、ここをグレモリー家の縄張りと知っての狼藉かしら?」
「グレモリー……。まさか、こんなにも早く元72柱であるグレモリー家の者が直々に出てくるなんて、予想外だわ」
「こんな日も沈みきってない時間帯に管理地内で結界を張られたら、どんな間抜けだって気付くわ。あなた、馬鹿なの?それとも私を馬鹿にしているの?」
うおっ!グレモリー先輩は登場早々にキレかけてるよ。だって、超不機嫌そうな顔で掌に紅と黒が入り混じった暗黒物質的なもの形成しているし。ってか、いつの間にかグレモリー先輩以外にも2人増えている!!?
一言も発してないから気付かなかったけど、駒王学園四大お姉様最後の1人、姫島朱乃先輩と泣き黒子がチャームポイントと言われている高等部2年の清純派アイドル、木場祐子じゃないか。
あれ?この面子って確か活動内容が謎とされている駒王学園オカルト研究部のメンバーでは?……うん、間違いないな。変態2人組がオカ研には巨乳美少女が集まっているとか言っていたし。
遠目とはいえ、前に会った時から思っていたけど、オカ研メンバーはやっぱり人間じゃなかったんだな。一応、霊感でもそう感じていたし。その上、今そこの堕天使が元72柱とか言ったし。72柱って悪魔の72柱だよな、絶対に。
「禁手化した神器所持者に、グレモリー家次期当主とその眷属。相手にするには分が悪過ぎるわ。という訳で今日の所は撤退させて貰うわね」
堕天使はそう言い終えると、その場から飛び去って行った。って、一方的に襲っといて俺やアスナに詫びの1つも無しか!
「一方的に襲っといて不利になったら逃走って、そうは問屋が卸すかよ!」
俺はそう言いながら『十戒の聖石剣』の柄を握る手に力を入れ、大きく振りかぶりながら連携技を放つ。
「爆・速連携!『シルファードライブ』!!」
俺は第2の剣・『爆発の剣』と第3の剣・『音速の剣』の連携技である12発の音速爆弾を堕天使が飛んで行った方向へと放った。そして、技を放ってから数秒後に小さな爆発音が聞こえたことから、連携技は堕天使に着弾したみたいだ。
ただ、着弾音の小ささからかなり離れた所で着弾したっぽいな。まぁ、確認に行くつもりもないけど。取り敢えず、憂さ晴らしはできたんで良しとしよう。
少しは気分が晴れたこともあり、俺は未だ茫然状態のアスナの手を取って何食わぬ顔でその場から去ろうとした。すると―――
「待ちなさい!……あなた、一体何者なの?あなたが持っているのは聖剣よね?教会の関係者なのかしら?」
おっと。この場から立ち去ることしか考えてなかったせいか、『十戒の聖石剣』を消し忘れていた。このまま結界の外に出ていたら銃刀法違反で捕まっていたな。そういう意味では話しかけてくれたことには感謝だけど、それにしても質問ばっかりってのはどうよ?
「人にものを聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀なんじゃないッスか、先輩?」
「……私はリアス・グレモリー。この町の管理を任されている最上級悪魔、グレモリー家の次期当主よ」
「私は姫島朱乃と言います。リアス・グレモリーの眷属悪魔ですわ。そして、こちらが―――」
姫島先輩によってオカ研最後のメンバーである木場に自己紹介が促された。が、木場は一向に自己紹介する気配がない。ってか、俺が持っている『十戒の聖石剣』を凝視している。
「ユウ?どうしたの、ユウ?ユウ!」
「え?あっ、はい。どうしたんですか、部長?」
「それはこっちの台詞よ。どうしたの、ユウ?あなたが自己紹介する番よ」
「えっと…、すみません。私は木場祐子。朱乃さんと同じくグレモリー眷属の悪魔です」
はい。予想通り、オカ研は全員人外でした。ってか、悪魔でした。取り敢えず、自己紹介されたことだし、こっちも自己紹介しとくか。
「俺は兵藤一誠。駒王学園2年の神器持ちなSAO生還者組。こっちは俺の彼女の結城明日奈。SAO生還者組の一般人です」
「知っているわ。学園でも有名なバカップルだもの。それにしても、英雄と呼ばれている兵藤君が神器所持者だったなんてね。あと、結城さんが一般人?」
「……?一般人ですが、何か?」
「結城さんからも神器の波動を感じられるのだけど」
え?マジですか?アスナも神器所持者?アハハハハ、……冗談じゃなかったら笑えない事実なんですけど。
「兎に角、詳しい話を聞きたいわ。私達について来てくれるかしら?」
「悪いけど、こっちには絶賛混乱中の姫がいるんでね。説明云々はできれば明日にして欲しいな」
「……分かったわ。明日の放課後、ユウを使いに出すから、オカルト研究部の部室まで来て頂戴」
「了解」
俺がそう言うと、グレモリー先輩は姫島先輩や木場と共に魔法陣を展開して去って行った。それと同時に結界が壊れ始めたんで、俺も『十戒の聖石剣』を消し、呆然としたアスナの手を握った。
「アスナ」
「い、イッセー君?あ、あれ?グレモリーさん達はどうしたの?それにさっきの―――」
「俺の知ってることで良かったら全部教えるよ。ただ、長い話になるから俺の家でしよう」
俺がそう言うと、アスナは頷いて俺の家までついて来てくれた。そして、俺は自分の知っていることを黒歌や白音を交えて全てアスナに話した。
古今東西に存在する神仏、悪魔、天使、堕天使、妖怪のこと。黒歌と白音のこと。神器のこと。あと、前世やエターナルでのことも話した。すると―――
「辛かったよね。苦しかったよね。でも、もう大丈夫だよ。私は守られるだけじゃない。イッセー君を守る側にもなるから」
俺を自分の胸に抱き寄せながら告げてくれたアスナの言葉に、俺は救われた気がした。アインクラッドでもそうだったけど、アスナは自然体で俺の心を救ってくれる。本当、俺には勿体ない位に良い女性だ。
堕天使に襲われた翌日。俺は特に気負うこともなく、いつも通りアスナと黒歌、白音と一緒に登校し、学園での授業態度を変えることもなく、いつも通り過ごした。
違う点があるとすれば、昼休みにリズとサチを含む月夜の黒猫団のギルドメンバー、シノン、シリカとも一緒に昼飯を食ったこと位か?このことに変態2人組のコメントは―――
「「このリア充が!お前なんか爆発しちまえ。ってか、いつかヤンデレに刺されちまえ!!」」
いや、ヤンデレじゃなくて堕天使だけど、つい先日光の槍で刺し殺されかけたぞ。よかったな松田、元浜。お前らの願いは一応1日前に叶えられている。抵抗したことで死なずに済んだけど。
あと、月夜の黒猫団のギルドメンバーは、サチ以外全員男で男女比率は5:7になっていたから、別に昼食ハーレムとかじゃなかったぞ。まぁ、交友関係に恵まれている自覚はあるから、リア充については認めるけど。
午後の授業もいつも通り終了し、そして放課後。俺の教室にアスナと黒歌、白音が集まり、木場が現れるのを待っていた。すると―――
「ごめんね。待たせちゃったかな?」
「いや。そんなに待ってない」
「それじゃあ、行こっか?」
「その前に、アスナ以外に身内を2人程連れて行きたいんだけど、いいか?」
「え?えっと……」
「大丈夫だ。2人ともそっちの事情は知ってる」
「………分かった。いいよ」
「それじゃあ、行こうか」
俺がそう言うと、木場を先頭に俺、アスナ、黒歌、白音は旧校舎に存在するオカルト研究部へと向かった。教室を出る際、変態2人組に―――
「あ、あれは高等部2年のアイドル、木場祐子!?相変わらず、いいオッパイをしている」
「ああ。しかし、何故だ!?何故、イッセーと恋人の待ち合わせみたいな会話を!!?」
「くそっ!イッセーの奴、結城先輩という恋人に黒歌嬢、白音ちゃん、篠崎先輩、斉藤さん、朝田さん、綾野さんがいながら木場祐子にまで手を出すのか!?」
「奴はハーレムでも形成するつもりか!?こうなったらプランGを発動せざるを得ない」
「プランG!?本気なのか、元浜!!?」
という会話が聞こえてきた。取り敢えず、変な噂を流すとかそういった類だと思うから、そういった噂が流れ始めたら2人をボコろう。変態2人組以外にもオカ研部室に向かう道程で―――
「あれって、2年で有名なハーレム先輩だよね?」
「もしかして、木場さんも手籠めにしたのかな?」
「兵藤先輩、優しいしカッコいいから私も手籠めにされた〜い」
といった会話が、主に女子から1年2年拘らず聞こえてきた。そうですか、俺は学園で認知されるハーレム野郎ですか。だが、敢えて言わせてもらおう。現時点で俺はアスナ以外に手を一切出してない。
旧校舎に着くまでの間、「羞恥プレイツアーかよ!」と突っ込みを入れたくなる思いをさせられた。が、旧校舎に着いた途端、一気にそういったものとは無縁になれた。
あとで聞いた話なんだが、旧校舎には一般人が入って来られない様に認識阻害の魔法が掛けられているそうだ。
木場はオカ研部室の前に着くと、部室の扉を2回ノックした。最近はノックせずに入室する非常識な奴が多いから感心したね。木場がノックを終えると、部室内から「入って頂戴」という声が聞こえてきた。
部室に入ると、そこには黒魔術に使用しそうな道具の数々と、今にもサバトでも行いそうな魔法陣が床に書かれていたりした。俺は前世の経験から引くことはなかったが、妖怪である黒歌と白音が軽く引いていた。アスナに至ってはドン引きだ。
そんな怪しい部室の奥にアンティークっぽいソファーがいくつかあり、その内の1つにグレモリー先輩が座っていた。俺とアスナ、黒歌、白音はグレモリー先輩に促され、ロングソファーに腰掛ける。すると、グレモリー先輩が口を開いた。
「改めて自己紹介をしましょうか。私はリアス・グレモリー。冥界の最上級悪魔であるグレモリー家の次期当主で、オカルト研究部の部長よ」
「ご丁寧にどうも。俺は兵藤一誠。神器を所持してる以外はどこにでも居そうで居ないゲーマー兼ゲームクリエイターです」
「私は高等部3年の結城明日奈。イッセー君の彼女です」
「私は高等部3年の兵藤黒歌にゃ。見ての通り、妖怪の猫又でイッセーとは義理の姉弟にゃ。義理って所が重要にゃ」
「私は高等部1年の兵藤白音です。黒歌姉様と同じ猫又で姉妹です。兄様とは義理の兄妹になります。義理という所が重要です」
「黒歌、白音。義理を強調しなくていいから」
「はーい、にゃ」
「分かりました」
なんとも軽いやり取りをする俺と黒歌、白音。一方、俺の身内である2人が妖怪だとは思ってなかったオカ研メンバーは固まっていた。そしてオカ研メンバーの硬直が解けた後、聞かれるより先に俺達の今までの経緯を話した。
ちなみに、俺に関しては今生での経緯のみで、前世のことやエターナルのことに関しては話してない。霊能力者であることは話したけど。で、俺達の経緯に関して話し終えると、今度は神器の会話に移った。
「兵藤君―――イッセーと呼ばせて貰ってもいいかしら?」
「構いませんよ。俺、基本的に呼び捨てされること多いですし。敬称がつけられても「君」か「さん」なんで」
「そう。なら、イッセー。あなたの神器についてなんだけど。あなたの神器は『聖剣創造』?」
「ええ。一応はそれに分類されますね」
「一応?」
「俺の神器――『十戒の聖石剣』は『聖剣創造』が禁手化したものなんですが、通常の禁手とは異なってます。禁手化して以降、その状態を維持し続けてるんですよ。俺はこれを常時禁手型って呼んでます」
「常時禁手型……。聞いたことがないわね」
「多分、世界初じゃないですか?あと―――」
「まだ何かあるの?」
グレモリー先輩にそう言われ、俺は『赤龍帝の籠手』と『十戒の魔石剣』を展開した。
「『十戒の聖石剣』と同じ常時禁手型の『魔剣創造』、『十戒の魔石剣』と、現在13種しか存在しない神滅具の1つ、『赤龍帝の籠手』の所持者でもあります」
俺が実物を見せながらそう言うと、グレモリー先輩を含むオカ研メンバーは本日2度目の硬直に陥った。が、俺はそんなこと気にせずに話を続ける。
「ちなみに、3つとも先天的に所持してましたから。なんたって、初めて神器を発現させた時、3つとも現れましたし。
ってか、俺が思うに『十戒の聖石剣』と『十戒の魔石剣』も既に神滅具級だと思うんですよね。グレモリー先輩はどう思います?って、俺の話聞いてますか?」
「……えっ?あっ、ええ。聞いてるわ。でも、私は『十戒の聖石剣』と『十戒の魔石剣』という神器の能力を知らないから何とも言えないのだけど」
グレモリー先輩の言葉に俺は頷いた。確かに、能力を知らなかったら評価しようがないよな。という訳で、俺は『十戒の聖石剣』と『十戒の魔石剣』の能力を話した。すると―――
「た、確かに神滅具級と言えなくもないわね。というか、イッセー。あなたは人間としては規格外過ぎるわ。三大勢力で確認されている神滅具、『赤龍帝の籠手』を所持するだけでなく、未確認とはいえ神滅具級の禁手に至った『聖剣創造』と『魔剣創造』まで所持しているなんて」
「それ、黒歌と白音にも言われました」
「当然よ。そういえば、赤龍帝に関わると亜種の禁手に至ることが多いと聞いたことがあるわ。もしかしたら、あなたの『聖剣創造』と『魔剣創造』が常時禁手型になったのも『赤龍帝の籠手』のお蔭かもしれないわね」
なんと!『赤龍帝の籠手』にはそんな特典?ってか、効果?が付いていたのか。教えてくれないなんて水臭いにも程があるぞ、ドライグ!!そんな俺の心中など知らず、グレモリー先輩は会話を続ける。
「イッセーの神器については把握したわ。次は結城さん―――アスナって呼んでもいいかしら?」
「はい、構いません」
「そう。私のこともプライベートなら名前で呼んでもらっても構わないわ。話を戻すけど、今度はアスナの神器についてね」
「あっ。アスナはまだ神器を1回も発現させてないんで、何かは分かってませんよ」
「あら、そうなの?なら、ここで発現して貰いましょう」
グレモリー先輩はそう言うと、神器の発現のコツをアスナにアドバイスし始めた。
「まずは目を閉じて。そして、自分が最も強いと思う存在をイメージするの」
発現される神器が何か分からないということもあり、アスナは俺達が座っているソファーから少し離れた所に移動し、グレモリー先輩に言われるまま目を閉じて、アスナは自分にとって最強の存在をイメージする。
「イメージできたら、今度はその存在の模倣をしてみなさい。そうすれば、神器が発動するわ」
グレモリー先輩の言葉に対し、アスナは行動で返答した。アスナはまるで剣を持っているかの様な両手を軽く握る。これは二刀流だ。ここまでくればアスナにとっての最強が何か分かってしまう。
アスナが見えない二刀を振るった瞬間、軽く握っていた右手が光り出した。そして、光が治まった時にはアスナの右手には一振りのレイピアが握られていた。
そのレイピアは俺とアスナにとって見覚えのあるものだった。『SAO』の上層からアスナが愛用していたレイピア・『ランベントライト』だ。
『ランベントライト』の出現に驚いている俺とアスナを気にすることもなく、グレモリー先輩は繁々と『ランベントライト』を眺めながら口を開いた。
「これは聖剣ね。つまり、アスナの神器は『聖剣創造』ということになるわね」
Oh!アスナの神器は俺のと同じ『聖剣創造』ですか。なら、アドバイスとかできるかな。形状とか属性とかは自分のイメージ通りの物になるから、想像力が大切とか。
ってか、今思ったんだけど、『聖剣創造』と『魔剣創造』を持っていた俺って、普通ならアレができたんじゃないか?某伝奇ノベル型アドベンチャーゲームに登場した大禁呪。
そう。『無限の剣製』の再現ができた筈なんだ。これでもゲーマーだから、最初の世界でF○teをやったこと位はある。凛ルートのアーチャーとランサーは最高だった。あの漢気に惚れない男はいない筈だ。
それを思えば、俺の禁手が亜種であることが残念極まりない。いや、亜種の禁手でも構わないけど、どうせ至るなら『聖剣創造』と『魔剣創造』が統合されて、『無限の聖魔剣製』とかになれば良かったのに。
俺がそんなくだらないことを悶々と考えている間、グレモリー先輩達とのやり取りはアスナから黒歌、白音へと移行していた。
「黒歌と白音でいいかしら?名字だとイッセーと被るし。2人は神器を―――」
「別に構わないにゃ。あと、私達は神器持ちじゃないにゃ」
「ですが、仙術を扱うことができます。私達は猫又でも希少種の猫魈なので、一般的な猫又より能力値は高いですよ」
黒歌、白音との会話も終了し、俺達4人の大凡の能力値が判明した所でグレモリー先輩は顎に手を添え、何やら考え始めた。そして―――
「あなた達、私の眷属になる気はないかしら?」
「は?」
グレモリー先輩からの行き成りの申し出に、俺は思わず間抜けな返答をしてしまった。すると―――
「眷属よ。もっと簡単に言うと、悪魔にならないかってこと」
「……それ、なったら何か良いことあるんですか?」
「まず、寿命が1万年以上になるわね。それだけ長い時間好きな人と一緒にいられるわ」
グレモリー先輩の悪魔の囁きにアスナ、黒歌、白音は目を輝かせている。いや、確かに俺としてもアスナと1万年も一緒に過ごせるのは魅力的だけど……。グレモリー先輩による悪魔化特典の話はまだ続く。
「転生悪魔―――眷属のことなのだけど、最初は下級悪魔から始まるわ。でも、功績などを挙げれば出世することもできるの。上級悪魔以上になれば、冥界の悪魔社会で貴族の仲間入りを果たすことができるわ。
イッセーなら能力値もかなり高いし、戦闘経験もダントツだろうからすぐに出世できると思うの。貴族の仲間入りを果たせば、一夫多妻も夢じゃないわよ?」
人をハーレム志向であること前提に話進めるのは勘弁願いませんか?確かに、現状を考えるとハーレム化していますけど、俺が意図的にしている訳じゃないですから。
「あなた達にとって一番のメリットは悪魔の保護を受けられることかしら。神器所有者は悪魔や堕天使に狙われ易いのよ。この町はグレモリー家の管轄だから、他の悪魔が襲ってくることは無いけど、堕天使については何とも言えないわ。
堕天使は神器を集める為なら所有者の身内に危害を加えることもあるの。私の眷属になれば、あなた達の家族を保護することができるわ」
成程、確かにそう考えれば眷属になるのもメリットと言えないことはない。でも、最後のは脅しが入っている気がするんだけど、その点はどうなんだ?それに―――
「仮に眷属になるとして、どうすれば悪魔になるんですか?」
「私と契約して悪魔になってよ」とかいうノリは勘弁してほしいからな。こういうことは先に聞いておかないと。魂を宝石化して半ゾンビ化みたいなのはマジで止めてほしい。
俺の質問に対し、グレモリー先輩は懇切丁寧に説明してくれた。悪魔の駒っていうチェスの駒を模した道具を使うことで悪魔ではない他種族は悪魔に転生できるらしい。
また、各駒にはそれぞれ価値が存在し、その価値は人間界のチェスと同じそうだ。そして、各駒にはそれぞれ特性が存在する。
僧兵は魔力などの扱い。騎兵はスピード。城兵は強固な防御力と馬鹿げた破壊力。王妃は王以外全ての駒を統合した能力。歩兵は一番下っ端だが、敵陣に攻め込んだらプロモーションで王以外の駒に昇格することができ、能力値は未知数。王には特に能力はない。ただ、眷属の主である象徴の駒らしい。
取り敢えず、魂が宝石化するとかは無いっぽいな。ただ、太陽を含む光が苦手になるらしいが、その点は文珠で光・克・服ってすれば何とかなるだろ。ところで―――
「眷属になるとしても、俺が悪魔化するのに駒って足りるんですか?グレモリー先輩曰く、規格外な位俺ってハイスペックなんですよね?」
俺の台詞にその場にいる全員が固まってしまった。
あとがき(旧)
取り敢えず、原作突入。やりましたよ、私!!的なテンションの沙羅双樹です。
(というか、今回もルビ込みで1万字越え……。元々、私はそんなに書くキャラじゃないのに……。キリのいい所を見繕うのも中々難しいです)
それでは、まずは言い訳染みた解説をしたいと思います。
・アスナのハーレム容認思考について
ハーレム系SAO同人誌では、アスナはハーレム容認してるよね。D×Dは原作自身がハーレムものだし、この設定は頂き!!
以上です。
・アスナの神器について
アスナがグレモリー眷属化するとしたら、やっぱり前衛職かな?となると、やっぱりSAOで登場した『ランベントライト』を出したい!→『ランベントライト』って、聖剣か魔剣かでいうなら明らかに聖剣だよね?→アスナに『聖剣創造』を所持させよう!!
以上です。
・木場きゅんの女体化について
原作13巻の性転換話を読んだ私→木場っちのTSキターーー!!→もう、こりゃ二次創作で女体化させるっきゃない!!
以上です。
(木場ちゃんの容姿は原作13巻通りです。気になる人は買って読んで下さい)
え〜、ISSEI君のスペックを考えると、現時点では明らかに駒が足りないこと請け合いです。変異の駒を使わないと転生は不可能。しかし、リアス唯一の変異の駒は既にギャスパーに使われてます。
という訳で、次回も我らがISSEI君―――というか『太極文珠』が大活躍。
(ここまで言っちゃうと、大体の予想はつきますよね?)
グレモリー眷属強化計画必須スキル(アイテム?)の解禁(?)です。という訳で、次回もお楽しみに!!
あとがき(新)
今まで地味に忘れていましたが竜闘気を解放した際、竜の紋章はどうなっているか話していませんでした。描写こそしていませんが、竜の紋章はイッセーの左手の甲に浮かんでいたりします。
イッセーは基本的に竜闘気を使用する時は、一緒に『赤龍帝の籠手』を使う様にしているので、紋章が籠手に隠れる様になっています。
しかし、この第一話では『赤龍帝の籠手』を使用していないのに、レイナーレやアスナに指摘されていません。こちらの執筆能力不足が原因ですが、ご都合主義として納得する様にして下さい。(笑)
もしくは、アスナの場合は気が動転していて気付かなかった。レイナーレの場合は人間を見下しているので気にしなかった。グレモリー眷属は神器に気が向いて気付かなかった、とでも思って下さい。(笑)
あと、本作でサチの本名は斉藤千早ということになっています。姓と名の頭文字を合わせたのがアバター名という設定です。
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