あとがき

 お久しぶりの方はお久しぶりです。初めましての方は初めましてです。殺生石です。
 一応あとがきなので本作品を読まれている事前提で話を進めますのでご了承ください。
 まずはここまで読んでくれました事にありがとうございます。そしてごくごく少数の方にはごめんなさい。
 いきなりの謝罪になりましたが、その意味はかつて私が今は亡きにじファンでこの作品の系列を投稿していた事にあります。
 私はこの二次創作ssの原作となる『とある魔術の禁書目録』シリーズのライトノベル、その最初の最初、第一巻の再構成的な作品を投稿しておりました。題名は『偽約 とある魔術の禁書目録』です。舞台も今回直接的には出てこない科学の街、学園都市でした。そして話の内容も魔術ではなく科学が主でした。
 そう、今回私が発表した『偽約 とある魔術の禁書目録SS』とは全く違う内容です。にじファンが消える時に一応他の場所で移転して続けるという事は表記したんですが、もう一年以上前の話になります。現在はこうしてシルフェニア様にて公開させて頂いております。感謝の念に絶えません。
 一応でも何でもないのですが、作品としてはにじファンに投稿していた作品と関連性の高い、同じ世界観の作品となります。場所や時系列は随分変わっておりまして、具体的にはにじファン時代に投稿していたssの十年程前の、一月から二月にかけてのどこかの話が今回の話になります。
 どうしてにじファンに投稿していた作品からシルフェニア様に投稿しなかったのかというと、一つは私が読者だったらそのままの内容を読んでも目新しさがないと思ったからです。できる事なら読者の方々に少しでも多く楽しんでもらいたい、そういった思いから外伝作品の短編一本書き上げよう! と思い至りました。どこが短編なのかというぐらい長いんですけどね。
 もう一つは私が力不足を感じていたからという事があります。今でも精進しなければならない未熟な技量しか持っていませんが、その未熟さを成熟のところまで引き上げるには練習があるのみだと思いまして、この作品を習作として書いていました。それでも本編の内容にちゃんと絡むような重要な話になります。
 そんなこんなで一年以上かかってしまった、と。馬鹿です。
 といった事を長々と書いておいて何なのですが、ちょっとここからを読む方に注意です。私はここから直後の部分を原作『とある魔術の禁書目録』シリーズを知らない人でも原作のネタバレにならないように書きます。無論今回私が書いた作品に出てきている事は例外として出します。
 そしてそれが終わってから少しの空白後、原作『とある魔術の禁書目録』シリーズを全部知っている人向けの話を書きます。ネタバレ大全開ですので、原作のネタバレ見たくないという方は読まないように!
 では始めましょう。
 今回のテーマは『想いと言葉』、オカルトキーワードは……ローマ正教とか言いたいんですが、一応『生と死』という事にしておいてください。
 テーマについては一応随所にまんまを出している筈なので納得して頂けるとありがたいです。相手に伝えたい想いがある、そしてそれを言葉にして伝えていく。その重要性や、伝えたとしても上手くいかないもどかしさ、苦しさが出ていると思いたいです。でもこれって書いている内にそういう事にしておこう、と考えて後から強調していった感じです。それでいいのでしょうか。
 テーマに関しては、多様な人物がどう思っているのか、という事を分かりやすく強調するものですね。先程も書きましたが、今回の話もそういった想い、言葉による戦いや対立、葛藤だったりします。
 オカルトキーワードについては皆さんどう思うのか分かりませんが、基本的には宗教的な死生観を取り扱っていると受け取ってください。例えばテッラが口にした神聖の国とか、オーレンツが死んでも魔術的に生き返ったりとか、そういった部分です。死後の世界を肯定したり、逆に生き返る事も可能だという考え方もあったりと、宗教によってさまざまな部分です。オーレンツも(よみがえ)りにちょっと謎が残っていますけど、基本このオカルトキーワードに沿ったものです。ちょっとしたネタバレ? 私のssについてなんだから気にしない気にしない。
 あとは話の流れですかね。ビットリオと上条さんのダブル主人公にした筈なんですが、個人的にはあんまりうまくいっていない気がします。私にも課題がどっさりです。
 ビットリオの物語として見るならば、王道を目指しました。主人公のビットリオがヒロインである少女と一緒にいるのですが、ある日尊敬する助言者であるマタイに言葉を貰いつつも、最初の巨悪であるオーレンツが現れ平和をおびやかします。そこに戦友となる上条さんも現れ、共に巨悪に立ち向かい、ついに倒します。しかしヒロインが倒すべき真の巨悪であるテッラに連れ去られます。そしてそこで主人公は助言者や戦友との出会い、ヒロインへの愛を本当の意味で理解して、真の巨悪と戦って倒し、ヒロインを取り戻す、という感じです。陳腐にならないように頑張ったつもりですが、楽しん頂けたら幸いです。
 他にも上条さんの物語とかテッラの物語とか、いろいろな側面があるのでそこも楽しんで頂けたら、と願望持っています。
 それから一つ、今回の私の二次創作ssにおいてオリジナルキャラクター化はあり得ますが、オリジナルキャラクターはいません。原作に登場したり、存在を示唆されたキャラクターしかいません。
 という感じで、この後は原作を全部知っている人向けの話を展開するのでネタバレ回避したい方は最後の方の感謝の言葉まで飛んでください。







 はい、原作を知っている皆さんにとってみればさぞ疑問符飛び交う話だったろうなと思っております。上条さんが魔術使ってたりビットリオが主人公化したりオーレンツなんて知らない人が多すぎるところから持って来ておいてとんでもないやつになったり……自分でもこんな二次創作見たら書いた人の発想に驚きますね。良い意味か悪い意味かは内容次第です。
 ではでは、原作とは結構乖離しています。というのも、今回の話が原作の十年程前だからです。十年という歳月は長いような短いような、微妙な時間です。ゆえにアレンジをせざるを得ない部分とそうでなくともいい部分がごちゃまぜですね。例えばマタイ=リースが主席枢機卿という設定は独自のものです。他にはあれですね、少女とか少女とか少女とか。あの子オリジナルキャラクターじゃねえかと言われても仕方ありませんが、一応原作に存在を示唆されたキャラクターなので。それから上条さんもある程度そういうふうになってます。具体的には両親と少女へのダブルスタンダードな対応とかです。最大級は魔術師化ですが。
 とまあこれくらいにして、上条さんがなぜ魔術師として登場しているのかについてと共に、私がこの『偽約 とある魔術の禁書目録』というssを書いた理由をいくつか話します。
 まず私がこのssを書きたいと思った理由の一つに、一番重要な点として『とある魔術の禁書目録』シリーズを愛していて大好きだから、という事があります。あまり褒められるべきかどうか確定できませんが、ファンとしての愛情表現の一つなんですよ。
 ここが重要です。私は二次創作するのだったらあくまで愛がそこにないといけないと思っています。無論これを押し付ける気はありませんし、元々二次創作という建前真っ黒現状グレーゾーンな事柄を行っている側の意見なのであまり強く言いません。
 ですが、私はやるからには愛情がないといけないと私自身に制約をかけています。そして私にはその愛情があると思っているので『とある魔術の禁書目録』シリーズの二次創作をしています。
 私の中でだけ適用する話ですが、二次創作で何よりも大事な動機は愛情だと思っています。それを忘れたらたぶん二次創作としては真っ当とは思えなくなるでしょう。無論私が私に対して思うだけです。
 二つ目には自己供給の面があります。自惚れととってください、私は私の書いたssを自分自身で楽しんでいます。そう、私は私が読んで楽しめるssが読みたかったのです。具体的にどういう事かと言いますと、一般に知られていないキャラクターや設定を使ったssを読みたかったんです。しかし私の調べ方が悪い事もあるのでしょうが、私の大好きなオーレンツが出てくるようなssは今のところありません。原作ドラマCDや原作『偽典・超電磁砲』などのキャラクターがちゃんと出てくるssも稀です。
 私はそういったキャラクターの出てくるssを読みたいと思いました。ゆえにこんなふうにオーレンツが大活躍するという謎のssができ上がりました。
 そして三つ目です。これもある意味二つ目の理由と被ります。それは全てのキャラクターを助けたい、という事です。
 何も全くそういうssが他にないわけではありません。例えば妹達(シスターズ)を一号から助ける話は結構あると思います。
 でも、例えば原作の本編の五年前、ブリュンヒルド=エイクトベルが所属していた小さな魔術結社が他の五大北欧神話系魔術結社によって壊滅させられる事を防ぐようなssは、やはり私の探し方が悪いのかもしれませんがありませんでした。例えばショッピングセンター上層部を助ける話もありませんし、白鰐部隊(ホワイトアリゲーター)を全員救う話も知りません。
 私は全員を助けるssを読みたい、また書きたいと猛烈に求めました。外伝とか本編とか関係なく、主要もモブも構わずに、全員助けるようなssです。
 そして作られたのが『偽約 とある魔術の禁書目録』です。さまざまな場所から幅広く要素を集めつつ、再構成して全員を助けていくお話。それが私のssです。実はそのためにキャラクターを配置したり登場させたり強化したりしています。
 そのため私の二次創作ssの原作は『とある魔術の禁書目録』シリーズです。シリーズなんです。本編とか外伝とかじゃなく、ひっくるめて全てです。そこまでやりたかったんです。
 そして、そのためにキャラクターが必要になりました。全てを助けてくれるような強力なキャラクターです。それが魔術も扱える上条さんです。高度な魔術と最先端の科学を操り、世界中の人々を助けるようなキャラクター、それが私のssで魔改造した上条さんなのです。助けるにあたってはチートキャラクターの俺tueeになると思っていたんですが、全然なってませんでした。むしろ苦戦ばかりです。
 では誰が今回の話で助けられたのかだけ、最後に話します。
 一人目はテッラです。テッラはもしもこのまま光の処刑の的に異教徒というだけで罪のない人々を殺していれば、いずれは後方のアックアなり誰かなりに殺されていたでしょう。粛清として、当然の報いとしてです。
 ですが、殺人を犯す前に止めてやって、ちゃんとした道に導いてやればそんな事は起こらないと思います。それを今回やったというわけです。テッラという人間を助ける、またテッラ自身が正しい道へと進んでいく、その序章が今回の話でした。そうともとれる、程度の話でもありますが。
 二人目、とは言い難いのですが、助ける事ができたのは原作でテッラに光の処刑の的として殺されてきた人々です。テッラが人殺しを行う事を未然に防げれば全員助かるわけで、テッラさんが今回十年程前という昔に出てきたのはその人々を全員助けるためでもあります。
 もしかするとそんなモブ以下の人々について助けなくとも、と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし私はそう思えませんでした。全員を助けたいのに、たかだか明確な描写がない程度で助けないのはどうしても片手落ちにしか思えなかったのです。だから助けました。モブ以下の背景にすらなっていない人々を、それでもどうにかこうにか助けました。
 と、いう事でそろそろ終わりにします。ここからは感謝の言葉を。
 といっても述べる人なんてほぼいません。流石にここで原作者の方への謝辞書くとダメだよという助言が来るかもしれないのでやめておきます。
 というわけで、ここまで読んで下さったあなたに感謝を述べたいと思います。
 ありがとうございました。これから更新はまたぐっと遅くなって、一年以上かかると思いますが、また読んで頂けると幸いです。もしかしたらその合間に原作ガイドブック『とある魔術の禁書目録ノ全テ』および『アニメとある魔術の禁書目録ノ全テ feat.とある科学の超電磁砲』に似た感じの、『偽約 とある魔術の禁書目録SS』の用語集的なものを作るかもしれません。
 今回のssは、妄想でライトノベル書籍化するならば表紙がビットリオとその腕の中にいる少女、裏に描かれる小道具はピョン子あるいはオーレンツのマヤ系魔術の四石柱です。妄想ですが、やっぱり原作ライトノベル準拠です。
 それでは、ここで筆というかキーを打つ手をやめにします。

 多分次は科学サイド                            殺生石







 暗い夜が明け、再び太陽が昇ろうとしている。小鳥がさえずり始め、かすかで温かい日差しを浴びた自然保護区は、あの魔術大戦の直後だというのに破壊された後はそれ程なかった。
 それは、そこに一点の汚れの如く座り込んでいる魔術師のおかげかもしれない。ダグザの棍棒もしまわれており、傷はない。しかしニャニャ・ブレムブの皮や雌獅子(めすじし)の皮、火鼠(ひねずみ)皮衣(かわごろも)などを複合させた変化霊装は破れていて、中身である幼い日本人の少年――上条当麻が見えている。生い茂る緑の草の上に散らばっている植物の一片一片には見向きもせず、ただただ項垂(うなだ)れて自身の座っている破れた変化霊装を見やる。
 無意識に、彼は言葉を口にする。
「俺は――」
 日本語。彼の母国語である。
 震える両の(てのひら)で、押し潰すように顔中を覆って、続ける。

「――俺は、一体何なんだ?」

 その問いに答えてくれる者はいなかった。
 ただ、太陽だけが何食わぬ顔で彼を見下ろそうと、昇っていった。



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