午前、11時30分、キラとシャルは学園郊外をドライブしていた。
「キラって車の運転も出来るんだ?」
キラは運転しながら答える。
「ウン、国際免許を習得したからね」
そう言いながらキラは軽快なアクセルワークで道を進む。
キラとシャルが市街地の立体駐車場に車を止め、歩きながらキラはシャルに言う。
「先ずはご飯から行こうか? お腹すいてるでしょ?」
キラの提案にシャルは嬉しそうに頷きながらキラの腕を取り、引っ張る。
「さっき、車の中でタウン誌を見ていて行ってみたい所があるんだ。行こ!」
そう言いながらシャルはキラの腕を引っ張る。
アスランとラウラはアスランの車でドライブを楽しんでいた。
「しかし、お前が車を運転できるとは知らなかったぞ?」
ラウラの言葉にアスランは運転しながら答えた。
「ああ、その気になればジャンボ機やヘリの運転も出来る」
そう言いながらアスランはラウラに語りかける。
「どうだ、たまにはこういうのも悪くは無いだろ?」
アスランの言葉にラウラは戸惑いながら答える。
「悪いな、余りこういうのは経験が無い。来る日も来る日も訓練に明け暮れていたからな……」
ラウラの言葉にアスランは内心苦い顔をする。
(こんな少女に戦闘訓練を施すなんて……多分、ラウラはこの年の少女にある物を教えられずに育ったんだろうな……友達と遊び、恋の話題に華を咲かせる事も無い。あるのは唯、強さを追い求める事だけか……)
アスランは思考を切り上げるとラウラに提案する。
「ラウラ、町に行かない?」
「町に?」
アスランの提案にラウラが問いかける。
「ああ、君、学園の制服ぐらいしか持っていないだろ? だから、服を買いに行くのさ」
「服、か……?」
アスランの提案に戸惑うラウラ。
なおも続けるアスラン。
「レディーにお洒落は必需品だ」
アスランはラウラの外面的な所から徐々に少女らしく引き戻そうとした。
正直、ラウラは可愛い。しかし、自身が発する剣呑な空気と絶対零度の視線が他者を遠ざけている。
そこでアスランは少しでも女の子らしい事をさせてやろうと言う意図で提案したのだ。
「任せる」
ラウラはそう言うと窓の方を向き過ぎ去る景色を眺めた。
キラとシャルはカフェレストランのオープン席で向かい合って食事をしていた。
「ここのプレーンオムレツおいしいね。セットメニューで比較的安いし」
キラの言葉にシャルは頷きながら答える。
「ウン、このオムレツも本場に近いし」
キラとシャルは一通り食事を終わらせた後、キラはコーヒーをシャルは紅茶を楽しみながら会話する。
「次はウィンドーショッピングでもする?」
キラの提案にシャルは嬉しそうに頷く。
「ウン、ここのお店とか余り知らないから見てみたかったんだ」
「決まりだね」
そう言いキラとシャルは店を出た。
アスランとラウラはショッピングモールをブラブラしながら女性用の服を扱っているショップに入る。
「いらっしゃいませ」
店員が愛想良く挨拶をするとアスランとラウラに語りかけてくる。
「本日はどの様な物をお求めでしょう?」
アスランは店員の言葉にラウラを前に出しながら答える。
「ああ、彼女の服を見繕ってくれ」
その言葉に店員はラウラを頭からつま先を見た後、頷いて答える。
「かしこまりました」
そう言うと店員はラグジーガールの服をラウラの前に差し出す。
「チェックと裏毛の重ね着風のトップスですがどうです?」
ラウラはソレをマジマジと見ながら固まる。
「試着してきたらどうだ?」
その言葉にハッとするラウラ。
「……解った」
そう言うと試着室で服を試着するラウラ。
暫くしてラウラが試着室から出てくるとトップスとスカートを穿いたラウラが現れる。
アスランはすかさず誉める。
「可愛いよ、ラウラ」
そのアスランの言葉に顔を赤く染めるラウラ。
「そ、そうか? 余りこういうのは来た事が無いんだ。変でなければいいが……」
そう言うと店員は次の服を持ってきた。
「同じメーカーですけど、ベルト付のツイルベアワンピースです」
ラウラはソレを受け取るとまた試着室で着替えを開始した。
暫くしてラウラが試着室のカーテンを開く。
其処には黒のロングTシャツの上にブラウンのベルト付のツイルベアワンピースを着たラウラがいた。
「お似合いですよ。それにお客様はロングヘアーですからツインテールにしたら可愛く見せられますね。ストレートだと大人な感じを演出できますよ」
店員の言葉にアスランも頷くと財布からカードを取り出し、会計を済ませた。
「すまないがコレを着ていく値札は取ってくれ」
アスランそう言うと次にラウラの靴を見繕う。
ヒールタイプのショートブーツを購入するとラウラはソレを履いて鏡を見る。
「……コレが……私……」
ラウラはジッと鏡を見ながら違う姿の自分を見つめた。
ラウラの姿を見たアスランはラウラに近づき語り掛ける。
「どうだ? 女の子らしい服装を着た感想は?」
その言葉にラウラは頬を赤らめながら答える。
「足元がスースーする」
その言葉にアスランは何とか笑い出しそうな自分を堪えて語りかける。
「まあ、慣れだろう」
そういい店を出る2人だった。
土日が終わり、1週間が過ぎ、いよいよトーナメント当日。
キラ、アスラン、一夏、シャルはISスーツに着替え終わり、更衣室のモニターを眺めていた。
「しっかし、凄い人だな……」
一夏はモニター越しにいる来賓を眺めながら言う。
「3年はスカウト、2年は今までの訓練の成果を発表する場だからね」
シャルもそう言いながらモニターを見つめる。
其処には各国の政治家や軍事高官、ISを扱う部署の高官が熱い視線を注いでいた。
「ISを保有するイコール強大な軍事力を持つと同義語だからな。幾らアラスカ条約で軍事目的の使用を禁止していても軍事力としての抑止力は働いているんだろう」
アスランの言葉にキラは頷く。
「ISは兵器としてみたら破格の戦闘能力だからね。しかも機体数は限られている。ソレこそ有能な人材を乗せて国家の力とするのは自明の理だね」
キラの言葉を聞いて苦い顔をする一夏。
「まるで戦争目的で国家が管理しているみたいな言い方だな」
一夏の言葉にキラはさも当然と答える。
「国家は奇麗事では回らないよ。国民には見えないように汚い事を平然とやる。アラスカ条約の裏では軍事力としての研究がなされている。ラウラのISがいい例だよ」
その言葉にアスランは内心苦い顔をする。
「あ、対戦表がでたよ」
その言葉に話を切り上げ、モニターを見る。
「俺は……アスランの所か」
一夏の言葉にアスランは頷く。
「ああ、いい試合をしよう」
そう言うとアスランは一夏に握手を求めた。
「ああ、負ける気は更々無いぜ!」
そう言い、アスランの握手を返す一夏。
「僕達のチームはセシリアと鈴か……」
キラはそう言うとモニターを凝視する。
「キラ、頑張ろう!!」
シャルの言葉に頷くキラ。
戦いのゴングは鳴り響こうとしていた。
あとがき
シャル&ラウラデート編です。
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