事後処理を終えて、断崖まで歩く千冬。
断崖の先には束が座りながら今回の映像を見ていた。
「しかし、白式には驚いたな〜でも、一番の驚きは4機のガンダムかな〜」
そう独り言を呟くように千冬に語りかける束。
尚も独白は続く。
「異世界からの住人にして異世界の兵器、モビルスーツ、通称MS、約18から20メートル平均のロボット。宇宙、地上、空、水中を問わず、ありとあらゆる場所での戦いが可能な事かな……更に異世界での人類は宇宙にスペースコロニーやプラントなんて言う宇宙に居住空間を作ってる。ちーちゃんからソレを聞いたときは、『頭可笑しくなった?』って聞きたくなったよ」
ソレを聞いた千冬はその言葉に気分を害した訳でもなく普通に質問をした。
「彼等と会ってみての結果は?」
その問いかけに夜空を見上げながら束は呟く。
「肌で実感できたかな……この世界の人類とは違うモノの見方をしてるのかな。私達が当たり前と見過ごす所を、あいつ等、まるで大切なモノを見るように見る時があったよ。ちーちゃんもそう感じない? あいつ等と今まで付き合ってみて」
千冬は考える。
キラやアスランがクラスの連中や一夏達を遠目に見ながら何処か懐かしむ様な悲しい目をしている所を。
一夏達に訓練を施す時、眉間に皺を寄せて何かを祈る様に、ソレを表に出さずに教えていた。
「確かに、達観はしているな……年齢は19歳と聞いているが、19歳であの目が出来る人間はそうはいない」
その言葉に束は予言を口ずさむ。
「何か……この世界に別の強い“何か”が介入してるみたいだね……近く、何かが、途轍もない何かが起こる気がする……」
その言葉に千冬は聞き返す。
「何か? とは?」
その言葉に月を見上げながら束は言う。
「解らない」
と。
不意に束は問いかける。
「ちーちゃん」
「何だ?」
束は以前、月を見上げながら千冬に問いかける。
その姿は何かを求めるように、また、何かを否定するように。
「この世界は楽しい?」
その問いかけに千冬は目を瞑りながら答える。
まるで自分の言葉をかみ締めるように
「まあ、ソコソコ、な」
「そっか……」
その言葉と共に束は断崖から消え失せた。
千冬は目を見開くと其処には冷たい月明かりに照らされた断崖の先だけだった。
千冬はため息を吐くと心の中で呟いた。
―――――自分から世界を否定しても面白く無かろうに―――――――
と。
クルーゼとクライシスはクルーザーに舞い戻り、自分に宛がわれた部屋にそれぞれ帰る。
クルーゼはサングラスを机の上に置き、皮製の椅子に座ると深々とため息を吐く。
「お前らしくないな、ラウ。何時もの余裕は何処へやった?」
その突然の問い掛けにクルーゼは鼻で笑いながら自嘲気味に語る。
「私とて超人でもなければ全知全能でも、ましてや神でもない。ソレは私自身がよく理解している事だよ、『エム』。いや、『織斑 マドカ』と言うべきかな?」
その問い掛けにエム、織斑 マドカと呼ばれた少女はクルーゼを睨み付けた。
「私を、『織斑 マドカ』と呼ぶな」
その言葉にクルーゼは愉快そうに笑う。
「クックック……ソレは失礼した。エム。だが、その気持ち、解らぬでもない。君は織斑 千冬の……」
クルーゼがその先を言おうとした時だった。
クルーゼの目の前にスターブレイカーの銃口が突きつけられる。
「それ以上言うな、殺すぞ」
絶対零度の目線でクルーゼを突き刺しながらスターブレイカーの銃口を向けるエム。
しかし、クルーゼは涼しそうに立ち上がりながら言い放つ。
「君ではどんなに頑張った所で私に傷一つつけられはせんよ。ミューゼルにすら勝てぬではな。何なら、3人がかりで挑んできたまえ。或いは、この身に届くやもしれんぞ? まあ、最も、確率は低いだろうがな」
そう言いわれ、エムは悔しそうに武装解除した。
事実、クルーゼが亡国機業に入る時、エムと揉めたのだ。
その時、彼を倒す為、エムは挑んだが、モノの1秒半で撃破されてしまうと言う結果をたたき出し、クルーゼは幹部会から実働部隊の隊長の一人として認識される様になる。
事実、アッサリ武装解除されたエムはクルーゼにこう言われた。
『強者の慈悲だ。有難く矜持したまえ』
と。
クライシスは今回の事を思い返しながら低く笑う。
その姿に報告をしに来たオータムは不気味そうに問う。
「ケッ、思い出し笑いか? 気持ち悪り……」
その言葉にクライシスは笑いを堪えながら言う。
「いやはや、久しぶりに血湧き肉踊る戦いだった。まあ、相手が完全ではなかったし此方も威力偵察が目的であったから不完全燃焼の感は否めんが」
オータムは先の戦いを思い出し嫌になりながら言う。
「オイオイ、あれでか?」
その問い掛けに勿論と言いたげに答える。
「理解したであろう? 我等、“戦人”と貴公等、“童”との違いが如何なる存在か?」
オータムはクライシスの言葉に内心キレそうになる。
自分とてプロの端くれ、ソレを童と称されては堪らない。
だが、この目の前にいる侍かぶれは自分達より軍人であり戦士であり本物の戦場を知る現人鬼であり死人。
人でありながら人を捨てたバケモノ。
クルーゼも同じ事を言っていた。
冷静に戦場を把握し、戦略を構築し、戦術を想像し、目的達成の為ならば文字通り手段を選ばない人間。
自分達以上に冷酷で非情で、徹底したリアリズムを重んじるプロフェッショナル。
それでありながらこの男達の目はどす黒く、地獄の業火に似た輝きを放っている。
自分の経験からこの2人の様な男と出会った事は無い。
正直、スコールからすれば異端な男達なのだろう。
自分も並みの人生を歩んできた訳ではない。
冷たい貧民街の底辺で食うや食わずで生きてきた。
大抵の犯罪に手を染め生きてきた。
そんな中でもこの2人は異常だった。
(こいつ等、一体、どんな生き方すればあんなドス黒い眼が出来んだよ?)
オータムがそう思っているとラフトはオータムに質問してきた。
「例の件は処理したのか?」
突然の問い掛けにオータムは答える。
「あ? ああ、テメー等の事は上がもみ消した。だからテメー等の事は表に出ない」
「それは上々の至りだ」
キラとアスランは今回のガンダム襲撃にさいし、ラウ・ル・クルーゼとラフト・クライシスを指名手配すべく、インターポールに働きかけた。
「駄目だ、何処も取り合わない……福音の事は関心事なのにガンダムタイプ2機については全く感心を示さない」
アスランのその言葉にキラは各国のコンピューターをハッキングして調べたがガンダムタイプのことについての記録は抹消されていた事に気分を重くした。
「コッチも駄目だね。データが完全に消されている。IS管理委員会刑事部は元より、アメリカはFBI、CIA、NSA、DIA全ての機関からの情報が消えている。各国にも当たってみたけどロシアのFSB、GRUにもイギリスのSISやDISにも無かった。日本の内調や公安調査庁、国際情報統括官組織や情報本部にもデータは無かった」
その言葉にアスランは天を仰いだ。
「痛いな、先手を取られた……情報戦で先手を取られるのは不味い。少なくとも此方は手札を数枚オープンにしている」
アスランのぼやきにキラは自分の考えを述べた。
「アスラン、敵はクルーゼとクライシスだ。2人を相手に形振り構っていられないよ」
その言葉にアスランも頷く。
「解っている。何を企むにしても此方も準備をしておきたい。計画を徐々に早めるか」
その言葉にキラはため息を吐く。
「ヤッパリ、こうなったか……『信念』の創造と『エインヘルヤル』の体現と『熾天使』の降臨を急がないと」
「『エインヘルヤル』は?」
その言葉にキラはため息を吐きながら答えた。
「何とか1つ。今の資金力じゃあどうしようもないよ。それに篠ノ之 束が作った『ワルキューレ』とは別物だから手間取る」
その言葉に道のりは遠そうだとアスランは思った。
「幾らジャスティスやフリーダムのコアのデータを参考にしてるとは言っても時間が掛かるか……」
キラ達は夜空を見上げながら今後の展望が見えない事に不安を抱くのだった。
あとがき
しかし、オリキャラとの絡みは難しいです……
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