連合艦隊が帰還したのは、地球艦隊の帰還した2日半後の事である。傷ついた姿でありながらも、艦隊は毅然とした様子で各母港に帰り着いた。
大決戦に勝利した連合艦隊の凱旋に、テレビ中継で見ていた市民達は声を上げた。先日にSUS人による有り得ぬ“演説”をまざまざと見せつけられたものだ。
その不安を、帰還して来た艦隊によって、ある程度は吹き飛ばしてくれたようである。

『皆さん、ご覧ください! 連合艦隊です、連合艦隊の凱旋です!』

予め待機していたらしい放送局のリポーター達が、こぞって帰還して来た艦隊をクローズアップし、やや大げさに声を上げる。
 その放送を、聖王教会の面々は様々な眼差しで眺めやっていた。避難してきた人々の大半は凱旋に歓び、安堵するというのが占めている。
だが浮かない顔をする者も少なくはない。艦隊は帰って来たが、帰りを待ち望んでいた人が帰って来なかった、という事も十分にあり得る話だった。
戦争は傷痕しか残さない。勝利しても、敗北しても、本当に余程の事が無い限り、死者は必ず出るのだ。ここに居る避難民の中には、そんな犠牲者の家族で会ったり親友であったり、と心への傷が大きく残された。
 沈痛な思いでいる人に対して、教会のシスター達も彼らを励まそうと奔走した。セインやディード、オットーらもだ。
方や執務室ではカリムとヴェロッサ、ユーノの3人が、その大げさな報道を何も言わずに眺めやっている。とりわけカリムの胸中は、誠に複雑な思いであった。
勝利した事自体は大変に喜ばしいものだと言える。しかし、現実は酔い痴れる程に甘いものではない。それは今、この教会内にいる市民達の反応にあるからだ。

(勝利とは、何でしょうか)

自問自答するカリム。戦争における勝利の裏には、必ず犠牲となった者達がいる。それが多くても、少なくても、そういった犠牲者達の土台が築かれている。
肉親や近しい友人を失った者達からすれば、勝利の報告を聞いても素直に喜べないものである。犠牲のない勝利など、偶像に過ぎないのではないか……。

(いけない、何を考えているのかしら、私は)

1人ネガティブな自分に気付き、首を振る。勝利のために命を落とした者がいれば、それに報いれるような事をしなければならない。
それこそ、生き残った者達の、死んでいった者達への慰めになるかもしれない、と彼女は思う。忘れる事なく、より良き暮らしを作り上げていこう。
 複雑な表情を作る彼女に対して、ヴェロッサが声をかけた。何処かしら冴えないように彼は思えたからだ。

「どうかしたのかい?」
「え?」
「何か複雑な表情をしているけど……思い違いだったら済まないが」

長年の付き合いがある彼には、隠せないわね。いや、今の私の様子は誰にでも分かるだろう。カリムは苦笑しながら、先程まで考えていた事を明かした。
勝利とは何か、犠牲無き勝利は理想主義でしかないものか、生き残った者達は死者に対して何をもって報いるべきなのだろうか。2人は黙して聞き入った後、ヴェロッサが口を開く。

「犠牲無き勝利、平和とは、管理局が今もなお目指してきた目標だ。100%とはいかないが、現に犠牲者を極最小限に抑えて治安を維持してきた。ただ、これからの先を考える場合は、遥かに難しくなるものだろうね」
「僕も同感だね。この先、SUSや地球世界のような国家と接触しないとも限らない」

ヴェロッサの言う通り、質量兵器を常時使用する世界とは違い、非殺傷設定を可能とした魔法なればこそ、死者を極最小限にして勝利を得る事が出来たものである。
それこそが管理局が魔法を推進する最大の理由と言っても過言ではない。外世界からすれば甘い考えだと言われるような論理と技術が実現していたのだ。
 だが、そんな理想主義も、SUSの介入によって挫折を余儀なくされてしまった。そして防衛軍にしても、犠牲無き平和は甘い理想主義に見えただろうか。
さらには魔法を推進していた事が仇となり、圧倒的科学技術差によって管理局は今までにない犠牲者数を出してしまったのだ。
この先、こうした科学技術の進んだ世界が新しく現れた事を考えた場合、管理局が嫌がおうにも体質を変化させる必要がある。
局内部には、そうした考えが広がりつつある、と聞かれる。かつてレジアスが提言していた、質量兵器の導入計画がこうした事で進むとは、何とも皮肉な事か。

「質量兵器を如何にして運用するか、全ては扱う人間次第……。それと、生き残った者には、死者の分も生きてゆく事が、報いる最大の方法ではないのかな、カリム」

 一通り言い終わるのを待ってから、カリムは信頼する秘書に目線を向けた。

「そうね……。ありがとう、ヴェロッサ」
「礼を言われるような事でもないだろう? なぁ、ユーノ」
「確かにね。心配されるのは分かるけど、それは皆同じじゃないのかな。貴女だけが抱える事じゃない、みんなで考えていくべきだと思うよ」

ユーノがにこやかな笑みを浮かべながら言う。そうだ、これは自分だけが抱える問題ではない。目の前にいる2人にとっても、管理局員全て、管理世界全てに共通する問題だ。
多くの世界や人間がいる中で結論を出すのは難しい。難しいのだが、解決に向けて動かないよりは全然よいものだろう。
 そこまで考えた時、カリムの執務室に入室する者がいた。秘書のシャッハ・ヌエラであった。

「失礼します、騎士カリム」
「構いません。どうしました?」
「連合艦隊の到着が確認されました。明日、14時から本局第2拠点にて、招集会議を行うとの事です」
「分かりました。それまでに支度をしておきましょう」

本来ならミッドチルダから離れる事は殆どない。しかし、地上本部を始めとする施設は今だに完全修理されておらず、止む無く無事な第2拠点に設けられている大会議室にて、会議を執り行う事になったのである。

「私はこれにて失礼いたしますが、何か御入用なものはございませんか? よろしければお持ちいたしますが」
「えぇ。それじゃ、お茶を淹れてくれるかしら」
「はい。直ちに……」

一礼したシャッハは一端部屋を退室した。閉まるのを確認すると、カリムは窓辺に歩み寄り、そこから見える外の景色を眺めた。
戦争をしていたとは思えぬ晴天ぶりだ。彼女ら聖王教会の大聖堂は、奇跡的にと言うべきか、SUSの侵攻対象とは成り得なかった。
守備部隊の一部面々も、半ば拍子抜けしていたものである。だが隊長のリンツは、敵の侵攻が無く自らが遊兵となった結果に何も口を開く事は無かった。
 SUSもがむしゃらに突っ込んで来る程に、愚かではなかったのだろう。彼は憮然とした表情でそう言い放ったものだ。
確かに聖王教会大聖堂は、渓谷の中に建つ建築物であり、戦車が列を組んで侵入するには、あまりにもリスクの高すぎる地形であった。
結局、SUSの戦車部隊の殆どが古野間少将指揮する連合戦車部隊に振り向けられ、残る彼らは教会内で敵の来襲に備えるままで、終戦を迎えたのである。

「それにしても、ここが戦場にならなかったのは、大いに喜ぶべき事だね」
「えぇ。市民の方々は無論、防衛軍にも怪我人が出なかったのですからね」

 そう言ったのは当教会シスターのセインである。彼女の安堵の言葉に、ディードが同意した。さらにディードの傍に立つオットーも頷いて同意の意を示す。
もしSUSが攻めて来たとすれば、こちらは無傷とはいかなかっただろう。SUSが守備部隊を無視して、背後の教会に砲撃でも加えようものなら避難民に被害が出た筈だ。
それを避けられたのだから、十分に喜ぶに値する結果だった。目の前では、彼女らが聖王と呼ぶ、ヴィヴィオとその友人達の無事な姿が見える。

「けどさ、あたし達がやってきた事と比べて、今回の戦争ってのは……」
「止めましょう、比べるのは」

俯きに話すセインを、ディードが差し止めた。彼女らは自分らの行ってきた過ちを理解している。死傷者も出した、普通なら許されざる犯罪なのだ。
 だが、今回の戦争を通して、いかに自分らのやろうとした事の小さい事か。いや、ディードの言う通り、これは比べてよいものではない。
数で死者を比べてはならないのだ。セインも更生されてシスターとなった身、姉妹に止められて言葉を飲み込んだ。

「……そうだね、ゴメン、変なこと言って」
「気にする事ないよ。私らはその過ちの分以上に、貢献すればいいんだから」

先ほどまで物静かだったオットーが言った。ディードに比べて表情の豊かさは乏しいものの、その物言いは柔らかさを感じさせるものだった。





 次元空間に夜はない。だが、時間帯は既に19時を回っている。局員達は交代時間で入れ替わり、働き詰めだったものは食事を取るなり、睡眠を取るなりして身体を休める。
地球防衛軍の面々は、艦隊がドッグに入港中という事もあり、忙しそうでもなく、余裕のある時間を過ごしていた。逆に忙しいのは、技術班や管理局の整備士達だ。
傷ついた艦の修理に余念がなく、忙しく動き回る彼らの働きは、まさに陰の功労者たるに相応しいものだろう。
 また、負傷者の手当てを行う医療部の面々も、暇はない。本会戦で発生した重軽症者は軽く見積もっても2万人を超えていた。
〈トレーダー〉と第2拠点双方の医療部は直ぐに溢れかえってしまったのである。しかし、到着までに適切な処置を施していたおかげもあり、対応に手間取る様子もなかった。
数時間後、医療局内部の慌ただしい雰囲気は元に静けさに戻り僅かに歩く職員以外人気は無い。重傷者の殆どが、適切な処理で病院の床に着けたのである。
  その第2拠点のドック区画周辺で、一人歩く男性がいた。コレムである。後から来た連合艦隊より2日早く到着していた彼は、主な事務を早々に片づけ、暇を作っていた。
艦内にて待機し続けるのも悪くはないと思ったものの、艦外に出て歩き回ってみるのも悪くはないだろう。そんな事を考えながら、彼は第2拠点に再び足を付けたのである。
以前にここを訪れたのは、決戦前夜の事であった。大きなフロアに集まって、連合軍将兵達が勝利を誓い合ったのだ。今や懐かしくも思える。
 コレムはドックのフロアを歩き、停泊している艦艇群を眺めやった。その殆どが管理局の艦船――次元航行艦であった。

(局員達はどう感じたものかな、戦争と言うものを)

しばし眺めつつも、彼はそんなことを思った。地球の戦艦程に分厚い装甲を持たず、兵装関係も大きく劣る次元航行艦で戦ってきた、局員達の恐怖感は半端ではなかった筈だ。
それは、20年以上前の地球防衛軍宇宙艦隊にも言えた事だった。ビーム系統の攻撃を跳ね返され、装甲もガミラスに対して貧弱で、機動力も劣っていた。
勝てない事を知りつつも戦場に出なければならないというのは、将兵達にとってどれだけ不安にさせられるものであろうか。

(管理局もいずれは、我々の様な戦闘艦を造ることになるだろう。でなければ、ここまで血を流してきた意味がない)

 多くの血を流して得た勝利に見合うだけの、今後の対応と発展が望ましい。それも、魔法文明ばかりに捕われない、科学と魔法の両立した体制である。
管理局も数多くの世界を管理下に置いている。それだけに、質量兵器といったジレンマを取り除くのは簡単な事ではない。
このジレンマを取り除かれる事を、今の局員達に期待するしかないだろう。小さくため息をつくコレムだったが、そこで彼の名を呼ぶ女性が現れた。

「ん……ハラオウン一尉じゃないか」
「お元気そうで、何よりです、大佐」
「君こそ、元気そうで安心したよ」

それは出撃前に会ったのを最後に、顔を合わせていなかったフェイトだった。特に怪我をした様子もなく、コレムとしても喜ぶべきものであった。

(ん、無事と言えば……)

 コレムは、彼女は以前に心配事を言っていたのを思い出した。それは、彼女が2〜3年ほど前に引き取ったという、2人の子供の事に関してである。
引受人になったフェイトの話によれば、その子供は11歳か12歳程の、少年少女だという話だ。どちらも訳あって親がいないらしく、フェイトに保護されたのだとか。
どちらも年少ながらも魔導師であり、かの機動6課にも参加していた。解散後は、2人揃って自然保護に関する部隊に入り、楽しく活動していたの言う。
それが本戦争の影響で、活動先の管理世界との連絡が取れずじまいになってしまい、フェイトも普段はこうして平然としているが、内心はかなり心配している。
 万が一の事も考えられるが、コレムは取り敢えず尋ねてみる事にした。

「ハラオウン一尉、君のお子さんらの確認は、取れたのかい?」
「え? あ、はい。先程、義母から連絡がありました!」

一瞬はポカンとした表情も、瞬く間に破顔して嬉しそうなものへと一変した。これで確定だな、2人のお子さんは無事でいる。これほど分かり易い反応はないと、コレムは感じた。

「通信が遮断されていただけで、特に攻撃を受けた訳でもなかったとの事です」
「そうか。良かったじゃないか、2人が無事で」

はい! と心底から嬉しそうなフェイトの返事。彼女は本当に、2人の子供を溺愛しているというのが強く感じられる。悪く言えば過保護というものだろうか。
それと、どうやらSUSは資源惑星や管理局武装隊の駐在する惑星を中心に狙い、戦略的意味のない自然惑星等は通信の遮断だけを行っていたようだ。

「2人は、一度こちらへ戻って来るとの話ですので、機会がありましたら、大佐に紹介しますね」
「楽しみにしているよ……それと、連れがいるんじゃなかったのかい?」
「はい。はやて達とそこに……て、あれ?」

 そう、フェイトは先程まで、はやて、なのはらと共に移動中だった。その途中でコレムを見かけ、フェイトは少しだけ待ってもらう様に言っていた筈なのだが……。
振り返る先には誰も居ず、ポカンとした通路があるのみ。自分を置いて行ったのか、と不満顔になるがタイミング良く、はやてからの念話が入る。

(ちょっと、はやて。なんで居なくなるの? 少し挨拶するだけだって言ったでしょ)
(なぁに、気にせんでえぇ〜よ、フェイトちゃん。本当は、コレム大佐目当てだったんやろ?)

目当てと言われて、思わず頬を赤く染めるフェイト。それは思い切り誤解を招く発言じゃない! と念話で訴えるが、したたかな狸はケロリとしていた。

(何言ってるんや〜? 大佐と話す時のフェイトちゃん、マルセフ提督の時よりも生き生きしてるでぇ。それは、つ・ま・り?)

その途端、ボン、とフェイトの頬がリンゴの様に染まった。幸いな事に念話中はコレムに背中を見せていたため、気付かれはしなかったが。
はやてめ、つい昨日あたりまで寝込んでいたくせに……! 以前まで戦争のために奮闘していた時とは打って変わり、フェイトを茶化すはやての笑顔が見えた気がした。
 傍にいるであろう、もう1人の親友に念話を行ってみるが、その頼みの綱でさえ、はやての周到な根回しによって切られていた。

(その……ごめんね?)
(なのは……貴女も!)

某歴史人物の如く、裏切られたような気分になるフェイト。そこで思わずため息を吐いてしまうが、コレムはそれに気が付く。
これでは本当に、私がコレム大佐に好意を抱いているみたいではないか。いや、好意は抱いているのだ。それが恋愛上の行為まで発展していないだけの事。
深く考えていく内に果たしてそうか、とまた逆に考え始める。最初こそ軽く知り合った程度だが、あの一件以来、何かと親しげに話す事も多くなった。
 となると、自分は彼をどういう目線で見ているのか……。あれやこれやと言い訳がましい自問自答を、コンピューター顔負けの速さで繰り返した。
それも数秒だけで、コレムから声を掛けられて中断された。

「どうかしたのかい?」
「いえ、その……」
(出会いは大切にせぇへんと、いかんでぇ?)

追撃する狸の念話に、フェイトは反撃の気力すら無くなっていた。それでも半ば無理矢理とはいえ、親友達が気を遣ってくれたのだ。
せっかくの機会でもあるだろうし、フェイトはコレムに向き直ってぎこちなくも、はにかみながらも尋ねた。

「あの……大佐は、今お暇ですか?」
「ん? あぁ、今は特に予定は、無いが……敷いて言うなら、貴官らの乗っていた〈アースラU〉とやらを見に行こうかと思っていたが」
「そうですか……」

 目の前の女性が何を言いたいのか、大まかではあるが彼は理解した。少しばかり、共に時間を過ごそうと言うのだろう。だが理解内容を見る限り、微妙にずれているが……。
断るのも非礼なれば、と上官のマルセフ譲りの対応で、彼はフェイトの誘いを断る事なく紳士的に受け入れた。

「ま、せっかくのお誘いだから、そちらを優先させてもらおう。それに、限られた時間を有意義に過ごしたいからね」

限られた、と言う言葉を聞くと彼女の胸中には、残念な思いが陰りを差した。そうだ、この戦争が終れば地球防衛軍と連合国艦隊は元の世界へ帰る事になるのだ。
不思議とそんな気持ちになる裏側には、やはり特別な思いでも根付いているのだろうか。もしそうだとして、お互いは違う次元に住む人間だ。
それっきりになる可能性もあるのだから、あまり深く想わない方が賢明ではあるのだろうが、簡単に割り切れるようなものでもなかった。

「ありがとうございます。ですが、よろしければ〈アースラU〉をご案内しますよ?」
「いいのかい、ハラオウン一尉」
「はい。それと……ハラオウンと呼ばれると、義兄と義母と混同されて分かりづらくなりますから、名前で呼んで頂いても結構ですよ」

今更な気もすると思うが、やはり同じ名前で呼ばれてしまうとどちらを呼んだのか分からなくなる。今までは階級で呼び分けをしていたようなものだった。
コレムの方も、名前で呼んでほしいと言われて小さく頷いた。あまり名前で呼ぶのもの軽々しいと思い、今まではハラオウンと呼び続けてきたが、その必要も無くなったようだ。

「では、案内をお願いするよ、フェイト一尉」
「はい」

 〈アースラU〉のドックへと向かう2人の後ろ姿を、こっそりと見守る6人分の目があった。フェイトをコレムと2人きりにさせた張本人――はやてを始めとして、シグナム、ヴィータ、なのは、スバル、ティアナ、そしてユニゾンデバイスのリィンフォースUとアギトである。

「フェイトちゃん、何だかんだ言ってるけど、中々いい感じやないか」
「……はやてちゃん」
「主はやて、ご自重ください」

彼女の行動に溜め息を漏らすのは、なのはである。続いてシグナムも、主の行動に釘を刺そうと忠告する。が、それも『糠に釘』というものだ。
先日まで熱で寝込んでいたとは思えない元気ぶりだ。以前までの真面目な姿は何処へやら、今の彼女は悪戯好きの子狸そのものである。
 もしも彼女に狸の尻尾が生えていたならば、今頃は興味津々といった呈で尻尾をユラユラと揺らしているに違いない。
2人の姿が完全に見えなくなると、はやては興味尽きぬ笑みを浮かべながらも、皆に向き直った。

「さぁて、2人はそっとしておいて、ウチらは一端官舎に戻ろうか」
「はい」

てっきり後を着けるのではないのかと心配していたシグナムと、安堵の溜め息を吐くなのは。周りのスバルやティアナなど彼女らも苦笑いしながらも同行した。





 フェイトに案内され、コレムは〈アースラU〉の停泊するドックに辿りついた。純白と気色とした艦体に、所々が青くラインが引かれている。
戦闘での損傷は見受けられないようで、無傷なままである事が窺えた。改めて見る新型の次元航行艦を、コレムは数秒ほど眺める。
基は〈SX〉級の2番艦として建造が進められていたが、この戦争で急遽変更を余儀なくされた。建造中という事もあって、無理やりだが改装できたと言う。
三角柱型の艦体はのっぺりとしていて無駄がない。艦体上部と下部には、半格納型の〈デバイス〉用格納庫が4つづつ見られる。ここから飛び立つのである。

「間近で眺める機会がなかったが、こうして近くで見ると綺麗だな、管理局の船は」
「そうですか? 御世辞でも嬉しいですよ」

 決してお世辞ではない。個性や重厚な感じは感じられはしないものの、純白な塗装や無駄のない形からは、ある種の誇りを感じさせるものであった。
管理局の設計思想ならでは、という事だろう。防衛軍の戦闘艦を武人の誇りと見立てるならば、管理局の船は貴族の誇りとでも言うべきか。

「よろしければ、中も見ていきますか?」
「大丈夫なのかい、入っても」
「えぇ。私が同行していれば問題はありません。それに、大佐の事は、大半の人が知っていますから」

それ程に私の顔は知られているものなのだろうか、と疑問に思う節があったものの、フェイトに便乗するような形で〈アースラU〉へと乗艦する事になった。
タラップを上がり、入口まで歩くまでの間にも、彼は〈アースラU〉の全体を見渡した。〈春蘭〉級である〈三笠〉より上回る大きさだ。
これが後に戦闘艦として造られた時は、相当な戦力となり得るだろう。それまでの時間が、どれほど必要になるかはわからないが。
 艦内へと入ったコレムは、まず居住区を案内される。主な行先は艦橋と格納庫及び〈デバイス〉だが、その道中で見れるものを見ておこうと思ったらしい。
途中で何名かの局員とすれ違う。その度に敬礼されるコレムは、返礼として敬礼する。が、局員は突然の来客に驚く者が大半の様だった。

「フェイト一尉、本当に乗艦しても問題はなかったのかな?」
「はい。義兄には伝えてありますから」
(いつの間に……そうか、念話というやつか)

口に出さずに意志疎通できるとは、便利な能力だな、と呟いてみる。〈アースラU〉は、その巨体故に余裕のある居住区設計がなされていた。
長期航行に備えた、局員のための施設を完備している。〈ブルーノア〉級や〈春蘭〉級などは、その巨体と人員の少なさから、それなりの居住区設備は整っている。
 しかし、次元航行艦の乗組員数は防衛軍のさらに下を実現している。それが、同じ艦艇の大きさでありながらも、居住区設備の質が違う原因なのである。

「少数人数による、艦の運用か……我が防衛軍も、それをより強いられるかな」
「え?」
「君も知っているだろう、地球の現状を」

地球はディンギル戦役から17年の猶予を与えられた結果、人口は順調に増加してきた。ガミラス戦役前の総人口に比べれば30%も満たないものだが、それでも地球総人口は凡そ16億人近い数にまで反映していたのである。
残念ながらこの戦争による影響で、5億人を超える死者を出してしまった。これは必然的な人材不足を招くのは目に見えており、防衛軍のこれからはさらなる無人化が望まれる。
それを考えると、管理局のごく少数による艦船運用システムは魅力的に見えるのだ。とはいえ、無人化の進み過ぎた場合のデメリットと言うのも重々承知している。

「この戦争で、地球は民間人5億人もの死者を出した。その被害者の内、私は3億人近い民間人を救えなかった……我ながら、情けない話さ」

 何時の間にか歩みを止めたコレムは、俯き加減かつ絞り込むような声で言った。やや前を歩いていたフェイトも、歩みを止めて振り返り、彼を見た。
既に過ぎた事とはいえ、その事実は消える事は無い。彼の手も、少しだが震えているのがフェイトにも分かった。
だがここにマルセフがいたならば、彼の悔やみの呟きを緩和させていたであろう。何故ならば、コレムは一介の艦艇指揮官に過ぎないからだ。
全軍の指揮はマルセフの手に委ねられていた。コレムが何を言おうとも、彼だけの責任ではない。マルセフも己の失態と責任は十分に受け入れているつもりである。
 故に、どう責任逃れをしようとは思っていないのだ。自虐的になるコレムを見て、フェイトは思った。

(……この人は、まだ、苦しんでいる)

次の瞬間には、彼女は行動に出ていた。対するコレムは、右腕に違和感を感じた。袖を掴まれているようだ、と思った瞬間にフェイトの声がすぐ右から聞こえた。

「大佐」
「ぇ、あ、フェイト……一尉?」

彼の右袖と二の腕あたりを添えるように掴んでいたのはフェイトその人である。そのまま、コレムの右腕に軽く寄り添い、頭を彼の右肩に預ける格好になっていた。
端から見れば、関係の良い男女――敷いては恋人同士に見えるだろう。だが彼女自身は、その様な恋物語を演じるつもりで寄り添ったわけではない。
  急な彼女の行動に、声がうわずるコレムに、彼女は静かな口調で語りかけた。

「大勢の人々を護れなかった、その悔しいという気持ちは、私にも分かります。ですが、その全てを貴方1人が背負う事はありません」
「……」
「私もかつて、本当の母を助ける事が出来なかった。それだけじゃない、執務官として飛び回っていた中でも、救おうにも救えなかった子供がいました」

その声は優しくもあり、悲しさも混じっていた。大好きだった母――プレシア。認められたい、笑顔が見たい、どんな仕打ちを受けても決して離れようとはしなかった。
また、執務官と言う立場に立って、幾度も次元世界を往来しては、違法魔導師の逮捕や違法研究を行う団体の摘発をしてきた。
事件の中で、実験台にされて命を失った幼い子供が居たと言う例は少なくない。保存液に浮かぶ子供の姿は、見るだけも痛々しいものである。
  フェイトは、守れなかった人の数は違えど、その気持ちは大いに分かるつもりであった。

「それに、マルセフ提督も言っていましたよ。大佐は責任を感じているが、それは大佐だけの事じゃない。私も同じだと……」

彼は、マルセフ司令が何時の間にそのような事を言ったのか、等とは彼女の前では言わなかった。なお彼女は寄り添う形で、コレムに語りかける。

「大佐は、防衛軍は、その悔しさを今回の戦いで十分に発揮されました。現に、どれ程の人々が救われたと思われますか? ミッドチルダだけじゃない、多くの管理世界に住む、数十億……数百億という数の人々守って頂いたのです。ですから……」

自分を追い詰めるのは、止めてください。その言葉を聞き終えた時、コレムの心中には悔やみの感情は完全に無くなっていた。
 彼女の言う様な事は、自分でも理解していた筈である。それを再度、今になって掘り返すのはよそう。そんな事では、この先になって地球を護れる筈がないじゃないか。
一息だけ、肺の空気を吐く。それは己を落ち着けるためであり、気持ちを切り替えるためのものであった。

「どうしてこうも、暗い話をしてしまったのかな。君に不快な思いをさせる訳じゃなかったんだ、済まない」

落ち着いた様子を確認すると、フェイトはそっと彼の袖から手を放した。コレムも彼女の方に向き直る。優しさを感じさせる、いつもの笑みが見えた。

「いえ、気にしないでください。さ、行きましょう」
「あぁ、それじゃぁ、頼むよ」

気を取り直して、案内を再開する2人。だが、フェイトは案内する途中で、自分がさりげなくした行動を思い返して、再び頬を赤らめた。
抱きしめるとはいかないまでも、寄り添うような行動に出てしまったのだ。同性ならまだしも、相手は異性であるコレム。しかも防衛軍軍人だ。
大それた事をしてしまったなぁ、等と心の中が呟き続ける彼女の様子は、残念ながらコレムは気づけなかった。
 そして、その一部始終を陰ながら偶然に見ていたとある1人の金髪美女には、とうとう気づかないままだった。

(あらあら、コレム大佐とはそうでもないとか言っていたけど……やるじゃない)

そう呟いてクスリと笑うのは、シャマルその人である。何だかんだでフェイトちゃんも乙女、コレム大佐の事を好いているのは確実よねぇ……。
後日、それをネタにされてフェイトが多少茶化されるのは、もう少し後の事であった。





 一夜が明け、連合軍の司令官達は第2拠点へと続々集合しつつあった。元々ここにいた者は別として、離れた位置にいた面々は開始時間14時よりも1時間は早く来ていた。
集まったのは主に上級指揮官である。管理局からは伝説の三提督を始めとして、〈海〉からはレーニッツ、リンディ、レティら他、司令代理のアルゴン・レグシア少将、機動部隊司令のクロノ、参謀のはやて、なのは、フェイトらもオブサーバーとして参加していた。
〈陸〉からはマッカーシー、フーバーが中心となり、ローメル、ビットマンら数名の部隊指揮官、また、カリム・グラシアもオブサーバー扱いで参加している。
 地球防衛軍からはマルセフ、コレム、古代、東郷、南部、北野、劉など、分艦隊司令までが参加。またミッドチルダ地上戦で総指揮を執った古野間、副官キャンベルも参加した。

「今一度見ると、堂々たるメンバーですかね、司令」
「そうだな副長。これで我が防衛軍や管理局が最盛期を迎えていた時ならば、より堂々としているだろう」

会議室に並ぶ顔ぶれに、コレムは感心した様子で言う。それに頷いたマルセフの言う通り、もし双方が最盛期ならばさらに印象的なものとなったに違いない。
魔法文明を主とする世界と、機械文明を主とする世界の指揮官達が集う事など、普通ならば有り得ないものなのだった。
それが可能としたのは、防衛軍の波動エンジンの暴走からなる事故転移とは、偶然の賜物と言えよう。もしこの事故が少しでも違ったものとなれば、管理局に今は無い。
 とはいえ、この場に姿を見せられない者もいる。それが、先日の会戦で殉職した次元航行部隊司令官だったオズヴェルト提督であった。
彼もまた、この激動の時代の中で、懸命に生き抜こうと防衛軍らと協力し合い、次元航行部隊の体質を変えようと奮闘した一人である。
これから先の時代も、管理局の変化に貢献してほしいと期待を背負っていただけに、彼を失ったダメージというのは決して小さなものではなかった。
また三ヶ国艦隊も同様に、中級指揮官の戦死が相次いで、以前いたであろう姿を見せていない。それだけでも、どれだけ辛い戦闘だったのかを物語っていた。
 会議室内部に全員が揃ったのは、開始時間の15分前だ。各自が席に着き、開始を待っていた。時計が予定の時刻を示すと、全員を代表してキールが発した。

「皆、揃ったようじゃな。会議を始める前に、まずは一言だけ、言わせてもらおう。此度の戦争、皆、よく帰って来てくれた。諸君らの健闘により、管理世界の安全と平和を獲得する事ができた。心から感謝を申し上げたい。本当に有難う」

しんとした会議室内に響くキールの感謝の言葉。

「だが同時に、多くの者の命を落とす結果ともなった。感謝と同時に、哀悼の意を表したい。簡易的ではあるが、この戦いで散って逝った将兵、民間人に対し黙祷を行う」
「……黙祷!」

号令を発したのはフィルスだ。瞬間、皆は目を閉じ、戦死した将兵及び犠牲になった民間人への弔意(ちょうい)を込めて、黙祷する。
その最中における、皆の想いは様々だ。部下を失った者がいれば、上官を失った者もいる、同僚を失った者もいる。彼らは亡き人の為に祈りを捧げるのだ。

「黙祷、止め!」

 凡そ1分の時間を経て、黙祷はフィルスの号令によって終わりを告げた。次はこの戦争における被害報告が提示される。
次元航行部隊は、他空間の拠点数や艦船数、人員数等の被害を考慮に入れた結果、全機能の内7割を失ってしまった。事実上の壊滅である。
それもそうだろう、拠点は総本山の本局を始めとして6個分の拠点を失った。艦船も1200隻以上を失い、残るのは270隻余り。〈海〉所属員も3万人を超す殉職者を出した。
陸上部隊も2万人以上の局員を失い、侵攻を受けた施設は尽くが破壊された。魔導師、非魔導師共に大きく疲弊したのは、誰にでも分かるものとなったのだ。

(これが……勝利の代償なのか)

 出席者の一人、クロノの右手に力がこもる。前代未聞の数字に、誰しもがクロノと同じような感想を持った。同時に、これからの再建は並みならぬ苦労が待ち受けているのだ。
組織改革と戦力再編にどれだけの時間を費やす事になるだろうか……。少なくとも、2年や3年では到底済まされる話ではない。
オブサーバーとして出席している、フェイト、なのはも、予想を覆す数字に唖然とした。デスクの下では、なのはの両手がフルフルと震えている。
戦争の過酷を、身を持って知ったとはいえ、まだまだ彼女も若く、そして戦争の経験は浅い。下手をしたら、自分も親友も、娘も、この数値の中に含まれたのだろか。
 それがもしもの可能性であったにせよ、彼女は“怖い”と言う感情が湧き上がった。失いたくない思いもあれば、当然の感情だろうか。
彼女の様子を察してか、フェイトの片手が添えられた。

(大丈夫、なのは?)
(ぅん……有難う)

心配してくれるフェイトも、心なしか沈痛な表情だった。取り乱す事はしないものの、彼女らは気持ちを落ち着けて、報告の内容に聞き入った。
次に各国の艦隊に対する被害報告だった。これら各艦隊は出撃前と比べて、3割から4割もの戦力を失ったとの事だ。
また戦死した将兵も、概算で1万6000人から1万7000人近くに昇る模様だ。因みに次元航行部隊と比べて人員消耗率が高いのは、1隻あたり30名から50名未満と言う少数運用型の次元航行艦とは違い、最小で90名から最大で120名の運用が普通だからである。
 そして、この被害でSUSの艦隊を打ち破れたのが、まずもって奇跡と言うべきなのだろうか。この場にいる大半の指揮官はそう思った。
被害報告が一通り済まされると、次に出されたのはSUSの今後の出方についてだった。古代が発言する。

「私は、天の川銀河に続き、次元空間ともSUSと対峙しました。2度の経験から言わせていただきますが、SUSは一時的な撤退を余儀なくされたに過ぎないでしょう」
「それでは奴らは、あの演説通りに何時かやってくる可能性と言うのは……」
「大いに有り得ます、マッカーシー閣下」

マッカーシーの問いに対して、可能性のある事を発言する古代。経験者なればこその言葉であり、マルセフらよりも多い経験からして、その発言にも信憑性はある。
尊大と自ら自負するようなSUS人の発言と言い、幾多の次元世界を渡り歩く様な物言いと言い、完全に諦めるような連中ではさそうであった。

「いつ再来してくるかは、残念ながら想像する事すら難しいです。どれ程の超大国であるかも、把握しきれていないのですから」
「我らエトスも、かつて奴らに組みしたクチだ。だが、奴らは情報漏れを警戒してか、有力情報は入ってこなんだ……」

そう言ったのはガーウィックである。彼ら三ヶ国艦隊も、唯単にSUS要塞に居座っていた訳ではない。情報収集は怠らず実地していたのだ。
 とはいえ、それはSUS側の巧妙な情報隠蔽が上回った。SUSの高度な情報は手に入れる事が叶わなかったのである。

「SUSの拠点ともなれば、情報管理は一段と厳しいものでしょうから、それは致し方ないかと思う」
「まぁ確かに厳しかったんだが、せめてもの土産として手にしたかったがな」

レーニッツに対して、ゴルックは冗談を振り混ぜながらも悔しさを表した。SUSの本国のデータなり、戦況データなり、手には入れれば、管理局側としても大いに嬉しい筈だ。
地球防衛軍他、エトス、フリーデ、ベルデルの4か国は、この後は速やかに次元空間を立ち去る事になるものだから、ある不安も増大する。管理局単独での対策が必須となるのだ。

「せめて、奴らの本性が知れたら良かったのだが」

 そう呟いたのはズイーデルだ。SUSの真の姿は皆の知るところであるが、本国の情報が一番に欲しいところであると言いたいのだろう。
彼らはどういった経緯で、あのようなエネルギー生命体へと成り果てたのか。いや、元からかもしれないが、知りたい事は多々ある。
もはやこの次元空間から居なくなった相手の情報を得ようなど、叶う筈もないだろう。マルセフは心内でそう思った。

(……?)

 ふと、マルセフは違和感を感じた。口には言えないような、不思議な感覚が彼の五感を狂わす。いや、彼だけではない。この場にいる者全員が感じ取った違和感である。
遠近が歪み、色彩も虹色を帯びて(たわ)んでいく。突然の事でざわつき始める会議室内。

「何だ、これは」
(この感じは……覚えがあるぞ)

いち早く気づいたのは古代だった。そうだ、SUS人が正体を表した時の感覚と全く同じだ! 他の者もそれに気づいた時には、古代の不安は的中し具現化していた。
彼らの耳と脳に直接響くような独特のものが聞こえたのである。

『知りたくば、教えてやろう……ヒトよ』



〜〜あとがき〜〜

どうも、第3惑星人です。前回からまた時間が開きましたが、お待たせいたしました。
戦争が終わり、それぞれが戦争に対してどう感じているのか、自分なりに力不足ではありますが書いてみました。
それでもって、なぜだかコレムとフェイトという組み合わせが増えてきた……(頻繁と言うほどでもないですが)。
原作キャラはあまり出すつもりはない、て注意書きしたくせに、気が付けばリリカル側の主要キャラが殆ど出ているという事実。
特に八神 はやて&フェイト・T・ハラオウンの場面が多くなってきた気がする。そのうち注意書きも改めなきゃいかんと思う次第。

話は変わりまして、つい先日、名声優である納谷吾郎氏が永眠されました。謹んで、お悔やみ申し上げます。
ルパン三世の銭形警部及び宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長で知られ、その渋くもありカッコ良い声で多くのキャラや吹き替えを担当されました。
しかし、近年において、声の衰えは目立ち始めてしまい、ルパンTVSPの時も、納谷氏は無理をなさっているように思えました。
ご高齢という事もあり、喉の不調はどうしても避ける事が出来ないものと思います。そのせいか、「張りが無い」だとか「滑舌が悪い」だとか、叩かれた経緯もある様子。
ご本人も、『悔しいな』と呟かれたと聞きます。私も聞きにくいとは思うこそすれ納谷氏を叩こうだとかは思った事はありませんし、出演されるだけでも嬉しく思いました。

また、こうしたベテラン声優の後を継がれた声優の方々に対する評価も、きちんと下してほしいものです。
人間、全く同じ声を出す事は出来ないものです。それ故に、このキャラはこの人でなきゃダメだ、という考え方も分かります。
しかし、だからと言って跡を継いだ声優に対して、「似てない」だの「こいつじゃだめだ」だのと貶すのはどうかと思います。
特にルパン役だった山田氏の後を継いだ、栗田氏に対する評価は、決して正当なものとは思いません。私は十分に責務を果たしていると思います。
また、後を継がれた他の声優も、先代に敬意を払われてやっているのでしょうから、これくらいは温かい目で見守ってあげるべきではないのでしょうか?

……無駄話が長くなりました。兎も角、現役の方や若い声優の方々には、より一層、アニメ界を支えていってもらいたいです。



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