機動戦艦ナデシコ

〜The alternative of dark prince〜








第二話 不安定な『真実』










電車の中、隣に座る少女は一言も喋らない。

あの後、少女のあとについて行き、電車に乗っているわけなのだが……。

気まずい。

苦手だなぁ、こういうの。何か話さなきゃ。


「ねえ、どこに連れて行くつもりなの?」

「百聞は一見に如かずです」


……会話が。

嫌われてるのかな、俺。

ちなみに電車代くらいは自分で出した。それくらいの甲斐性はある。

ああ、情けない。










そこは、お寺だった。


「ここは……」

「こっちです」


勝手知ったる場所なのだろうか。少女は躊躇うことなくすたすたと歩いていってしまう。

目的地ははっきりしているようだ。

「あ、うん」


着いていくしかない、か。

本堂を通り過ぎて墓地へ……。











そこは小高い丘になっていた。


「ここです」


二つの墓の前で立ち止まる。


「ここですって、ただのお墓じゃ……っ!」


その墓に彫られている文字は……“御統家之墓”

その隣には……“天河家乃墓”

二つの墓標は寄り添うようにそこにある。

そして、そこにある三枚の写真。二つは女性、一つは男性が写っている。


「その女性はイネス・フレサンジュさん。もう一人は、ミスマル・ユリカさん。そし
て、……その男性がテンカワ……アキトさんです」


そこに写っているのは、自分のよく知った顔。

俺だ。

そこに写っているのは自分自身だ。最初はそう思った。

モノクロなので目と髪の色は分からない。が、それらを除けばほとんど自分と変わらない容姿をしている。

しかし、その男性は自分より少し歳が上のようだ。

……いや、違う。そうじゃない。

そうでなくとも俺と写真の中の人物が別人だということはすぐに分かる。

そう。……俺は、あんな風には笑えない。

あんな屈託のない笑顔、俺には……出来ない。


「……」

「知りませんか? 二年ほど前のシャトルの爆発事故」


説明する少女は強いて淡々と喋っているように聞こえる。

多分、気のせいじゃないのだろう。

少女は俺に背を向けているのでどんな顔をしているのかは分からない。が、説明する
少女は、とても辛そうだった。

痛々しくて見ていられなかった。


「……アキトさんとユリカさんは月へ旅行に行く途中……その事故に巻き込まれて…
…そして、そして……」


俺はそんな少女の姿に耐えられなくなった。


「もういいよ。もう、いいから」


しかし、少女は続ける。


「私は二人を見送ったんです。アキトさんとユリカさんは笑ってました。すぐ帰って
くるから、って。だから、だから、私も笑って見送ったんです。それなのに……私の
目の前でシャトルが……爆発して。私は……それを見ながら何も出来なかったんで
す。ただ見ているだけで……何も、何もできなかったんです」


溜め込んでいたものを吐き出すように少女は言った。

俯いて、肩を震わせて。

俺は後悔した。

俺は、こんな少女の姿を見るためにここまで来たんじゃない。こんな姿を見るくらい
なら、あの時呼び止めなければよかった。

……でも、それでもだ。それでも、それは間違いではないと、間違ったことなんか
じゃなかったのだと、俺の中の何かが訴えてくる。

何故だかは分からない。

そして、この子には何か、してあげなければいけないのだと。

たとえそれが、自分のエゴだったとしても……。

俯く少女を眺めながら俺はそんなことを考えていた。


「……ねえ」


少女がビクッと体を震わせ、俺の方を向いた。そして、ゆっくり顔を上げる。

泣いては、いない。

きっとこの子は泣かないのだろう。泣かなかったのだろう。

強い子だ。

その金色の瞳に見つめられ、不覚にも吸い込まれそうになった。


「俺は……」

「……」

「俺はね、本当は……」


そこまで言って迷う。

言っていいのだろうか? こんな不確かな状態で、不安定な状況で。彼女のこんな姿
を見たくないが故に、一時の感情に身を任せて、本当にいいのだろうか、と。

でも……。


「何……ですか?」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「…………良いバイト、紹介してくれないかな?」


俺は、本当のことを言えなかった。










そんな二人を眺める影がひとつ。


「ここまでは予定通りね。ふふ、あとは、あなた次第よ。アキくん?」


その影は笑っているようだったが、それは自嘲の笑みのように見える。


「こんなことをして……あなたはきっと許してはくれないでしょうね。でも、あなた
を、そして彼を救うためには……」


そこで影の周囲に異変が起きた。

正確にはその影が光に包まれたのだ。

そして、最後に言った言葉は……。





「ジャンプ」














<あとがき……か? これ>

こんにちは、時量師です。

第二話ですが、謎の少女、まだ名乗りません。きっと次は名乗る予定ですのでもうしばらくお待ち下さい。

アキトくんとユリカさん、何しに月へ旅行に行ったのでしょう。新婚旅行でないと良いなと思います。

アッキーことアキくん、何者でしょうね? 謎みどろです。

ところで、一人称って凄く難しいですよ。いや、三人称も難しいんですけどね

この話、全部アキくんの一人称にするつもりだったのですが、最後は三人称になってしまいました。これは僕の文章力のなさのせいです。それと全然コメディっ ぽくないですね。ごめんなさい。でも、これはこれでいいかなぁ、とか思っている怠惰な時量師です。

ひとつ質問なんですけど、アキトくんとユリカさん(とイネスさん)が死んだ(はずだった)のっていつなんですか? 僕は初心者でよく知らないので適当に誤 魔化してしまったんですけど、知っている人がいたら教えて下さい。

さあ、次回、アキくんはバイトを手にすることが出来るのか!? そして、彼らは登場するのか!? 次回もよろしくお願いします。

今回はルリさんと黒い鳩さんからどんな感想が頂けるかなぁ。楽しみです。どきどき。





感想

一日に二本…素晴らしい勢いです♪ 私は最近ファントムキングダムにはまっていて全然話が進みません(汗)

駄目作家の上に怠惰までつけないといけないとは…情け無いことこ の上ないですね…少しは時量師さんを見習いなさい!

そうですね、私も掲載される事が面白くて、それだけ出書けていた時期があります…ほぼ一年前の事ですね…(汗)

でも、やっぱりアキトさんじゃない んでしょうか彼?

さあ、私には分らないですけど、可能性は五分五分ですね…まあ、先の事を予測するのはやめましょう。感想ですが、今回はテンカワ家の墓編ですね。

墓参りは月に一度必ず行っていまし た…一人で屋台を引いていた時も、ミナトさんにお世話になっていた時も、軍に入ってからも…

そういえば時量師さんその辺の事を聞きたがっているみたいだね…私の知っている限りでお答えしましょう。

そうですね、私…アキトさんの事が 好きだって気付いたのは多分アキトさんとユリカさんの結婚式の時なんじゃないかと思うんです。

多分その頃まで押し殺していた部分が噴出したんだね。

ですから、劇場版の二年前二人のハ ネムーンを見送る時は内心置いていかれるのが悲しかったです…そんな時にシャトルの爆発…私は二人に永遠に置いて行かれたと思いました…

ちょうど、火星の後継者が活発に活動し始めた頃、つまり誘拐事件が発生し始めた頃と言う訳だ…多分、ナデシコクルーに対する見せしめみたいな意味合いも あったんじゃないかな?

はい、多分そうです、誘拐事件の中 でも比較的最初に近い事件でしたから…ちょうど、誘拐事件が始まった直後と言った所ですね…

空白の三年と題されているセガサターンのソフトの内容を合わせると、TV〜劇場版までのアキト達の行動は、


・先ず、ナデシコが遺跡を外宇宙に向けて飛ばした後、サセボに寄港。

・その後軍に拘束される。

・その間にルリちゃんの引き取り先の事でユリカ嬢とミナト女史がもめる…結局ユリカ嬢がルリちゃんの保護者となる。

・アキトはエステバリスで破壊した連合宇宙軍の船や戦闘機の弁償を迫られる(アキトが正式なパイロットでなかった為保険が適用されなかった)プロスさんの 計らいでどうにか返済額を少なくしてもらう。

・アキト借金を返す為にも屋台を引いて、ひたすらラーメンを売る。時折日々平穏の手伝いをしていた事もあったとかなかったとか(不確定情報)。

・ユリカ嬢がコウイチロウ氏にアキトの経済力のなさを指摘され、腹を立てたユリカ嬢はルリちゃんを引き連れ、アキトのアパートに転がり込む。

・この後、暫くはアキトが屋台を引き、ユリカ嬢が接客と言う形を取っていた。

・しかし、ユリカ嬢は資金繰りの為に軍に戻り、屋台の手伝いをしにくくなった…その為、一緒に手伝いをしていたルリちゃんはアキトと二人きりになる機会が 増える。

・形としてはアキトが屋台を引き、ルリちゃんがチャルメラを吹くという形に落ち着いていたようだ。

・そして、アキトとコウイチロウ氏がラーメン勝負を行い、コウイチロウ氏はユリカ嬢を嫁にやる事を決意する。

・ゲキガンガー総集編の上映会、アキトはナデシコクルーにユリカ嬢と結婚する事を告げる。

・結婚式、ナデシコクルー総出で派手に行われたらしい。(不確定情報)

・そして、アキトとユリカ嬢のハネムーンへと出発するシャトルがホクシン達の襲撃により爆発…二人は火星の後継者の下へと…(イネスも同時期、但し少し 後)


ここまでが一年…結構イベントが多い…

残る二年に関しては、私中心で進行 します。もっとも、SSの加筆分との境界線が微妙なんですけど…


・先ず最初は私、アキトさん達がいつか帰ってくるんじゃないかと思って、帰って来ても困らないようにアキトさんのアパートに住み一人で屋台を引いてラーメ ンを作っていました。

・もっとも、最初は食べられた物じゃなかったですけど…これでも試行錯誤を繰り返して最後は食べられる程度の物にはなっていたんですよ。

・この時、たまたま木連や統合軍といったものに嫌気が差していたサブロウタさんと出会いました。

・当時はもう髪の毛を染めていましたね…TVの時期は一番熱血な人でしたが…(私は会ってませんけど)

・そして、ミナトさんに引き取られる事になります。学校にも行っていたとかいないとか…(不確定情報です)

・軍に入ったのは、ナデシコBが建造されるという話を聞いての事です。何か繋がりが欲しかったのかも知れません。

・しかし実際の所、ナデシコBはアキトさんが奪還された時に製造決定したのだそうですから、皮肉な話ですね。(不確定情報です)

・アキトさんはネルガルSSが火星の後継者の研究所から奪還、既にその頃は虫の息だったとか…

・アキトさんは復讐を決め、ネルガルのナデシコCプロジェクトが本格的に動き出します。

・ラピスと言う少女は、勘違いされがちですが、劇場版でネルガルの研究所で生まれたとはっきり言ってます。

・つまり、アキトさんはラピスを火星の後継者から奪還した訳ですが…もともとの責任はネルガルにあります。

・火星の後継者はヒサゴプランを前面に押し出し、統合軍の影に隠れる事で、宇宙軍の手出しできない形に存在しています。つまり、劇場版当初まで私は事件に ノータッチと言う事です。

・そしてアキトさんの復讐が始まります。


順が必ずあっているとはいえませんが、二年はこんな感じでした。


参考になったかどうだか判りませんが、今後も頑張ってくださいね〜♪



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