機動戦艦ナデシコ
〜The alternative of dark prince〜
第三話 嵐の前の『質疑応答』
……何だってこんな所に?
ソレを見て、そう思った。
高さ5メートルはあろう分厚い壁。さらにその上には有刺鉄線。監視カメラ多数。無骨としか表現の仕様のない恐らく入り口であろうその扉には、負けず劣らず
無骨な門番。あとドーベルマンがいれば完璧だ。……何がだ?
もしかしたらここは刑務所で昼間のことの責任を取らされるのかそうなのか? と思ったが、どうやらここは軍事施設のようだった。
「どうかしましたか?」
そんな俺を不審に思ったのか少女が聞いてきた。
「あ、ああ。ここって」
「ええ、連合軍の基地ですけど……。ああ、そういえばこちらの自己紹介がまだでしたね。」
思い出したように少女は言う。
そうだ、俺は名前さえ聞いていない。しかし、こんな少女と軍の施設との関係性なんて想像つかないのだけれど。
「私は、地球連合宇宙軍第四艦隊所属試験戦艦ナデシコB艦長ホシノ・ルリ少佐です」
「はぁ?」
つい変な声を上げてしまった。
なんだって? 連合宇宙軍? それも少佐で戦艦の艦長? こんな、俺とそう歳は変わらない少女が。
「何か変ですか?」
「どうして君みたいな女の子が……っ!」
あ、地雷踏んだかな。
多分怒っているのだろう。ゴゴゴゴゴなんて効果音が聞こえてきそうだ。
ああ、禍々しいオーラが……。後ろにいるのは誰?
「あ、いや、ごめん。そんなつもりじゃ。ただ、どうしてかなって」
必死に弁解する俺。
あぁ、格好悪い。
「別に良いですよ。そういうの慣れてますから。ただ……」
「ただ?」
「私、女の子じゃなくて少女です」
「……」
こだわりでもあるのだろうか?
しかし、聞いてはならないポイントなのだろうな、と本能的に悟った。
「それで、えっとルリちゃん」
「っ」
あ、何だかまた顔をしかめられてしまった。
「どうかした?」
「……いえ、別に」
変なの。何か気に障るようなこと言ったかな、俺。
「ルリちゃん、どうして俺をこんな所へ?」
ずっと思っていた疑問を口にした。
軍に入れ、とでも言うのだろうか? 確かにバイトを紹介してくれとは言ったけど、軍に入るのはなぁ。それはバイトじゃないよな。
いや、しかし、どうしても職を見つけなければ。
「助けていただいたお礼に取り敢えずの寝場所を提供しようと思ったのですが、迷惑でしたか? その様子だと、職どころか住む場所もないって感じですけど」
「くっ」
ルリちゃんは俺に冷めた視線を送っている。正確には俺を通り越して俺の背中のソレを見ている。
うぅ、そんな眼で俺をみないでくれ。すごく痛いよ。視線と言葉に棘があるよ。
やっぱり怒ってるよね、これは。
ていうか、ルリちゃん何気に、いや、かなり毒舌?
「それは……助かるけど」
「それに、聞きたいことも色々ありますし、ね」
「聞きたいこと?」
「さ、行きましょうか」
「あ、うん」
それ以上は追求を許さないといった雰囲気だった。
毒を食らわば皿まで、か。どっちにしろ俺はルリちゃんに従うほかないみたいだ。
ルリちゃんは顔パスで、一緒にいる俺も特に何も言われなかった。
ルリちゃんって有名人? もしくは偉い人?
門をくぐるとき、門番の人から殺意のようなものを感じたが、全力で気付かないふりをした。何だったんだ?
案内されたのは安っぽいホテルのような部屋だった。多分宿舎なのだろう。
どこから出したのか、ルリちゃんが座布団を用意してくれた。
向かい合って座る。何となく正座になってしまうところが座布団の神秘だ。
「ここは私の部屋です」
……いいのかなぁ、と思っていると、「私の部屋、と言っても私の部屋はもうナデシコにありますから使ってませんけど」だ、そうだ。
「それに」とルリちゃんは続けた。
「ここなら誰にも聞かれません」
「?」
「これからする話はあまり他の人に聞かせるわけにはいきませんので」
「話ってバイトの話じゃないの?」
そういえば、さっき聞きたいことがあるとか言ってたっけ。
俺はバイトの話をするためにここまで来たのだが、ルリちゃんはそれだけではなかったらしい。
「ええ。ですが、その前に私の質問に答えてほしいんです。バイトの口と寝場所を提供をする代わりだと思って下さい。どうしても答えたくないと仰るなら、追
求はしませんが」
何だろう? 俺に聞きたいことなんてあるのか?
もしかして、あのテンカワ・アキトなる人物のことだろうか?
「それくらい、別に構わないけど。でも、言ったと思うけど俺、記憶喪失だから昔の事だったらちゃんと答えられないかもしれないよ? ……テンカワさんのこ
とも含めて」
「それは、まあ、いいんです。ではまず、その眼鏡を外して頂けますか? 度は入っていないですよね?」
あの時はフリーズしてたからもしかして気付いてないのかな、とは思っていたがばっちり見られていたようだ。
まぁ、ルリちゃんには一度見られてるしな。
「ああ」
かけていた眼鏡を外す。
ルリちゃんの言うとおり、これは伊達眼鏡だ。しかし、ただ度が入っていないだけではない。
「カラーコンタクトじゃ」
「いや、違うよ」
そりゃあ、コンタクトをして、且つ眼鏡をかけるような人はいない。俺だってそうだ。
「そうですか。その瞳……片方だけ、なんですか?」
ルリちゃんが言っているのは、俺の左目のことだろう。
俺の顔で最も変わった部分。
俺の左目は……ルリちゃんと同じ金色をしている。ちなみに、右目は鳶色。
「ああ、おかしいだろ? それで、隠すためにこの眼鏡をかけてたんだ。ちなみにこれは二代目」
そう、初代はあの時亡きものにされてしまった。
実はこの眼鏡、かけていると瞳の色が変わって見えるという優れ物なのだ。よって、結構値が張る。
「?」
ルリちゃんは気付いてなかったみたいだ。
まあ、今更弁償しろなんて言う気もないけど。それにルリちゃんが壊したわけでもない。
「では、次の質問ですけど、その髪とその瞳、テンガさん」
「あ、アキで良いよ」
「……ではアキさん。あなたもマシンチャイルドなんですか?」
マシンチャイルド。
多少の知識くらいはある。
遺伝子操作によって、人工的に知能指数を高くされ英才教育を受けた子供。体内にパイロットのとは違うナノマシンを埋め込まれていて、オペレート能力に特化
している。だったかな?
「うん、まあ一応は」
「かつてネルガルの研究施設で製造されていたんです。現在は非人道的ということで中止されているはずですけどね」
製造って言い方が何となく気に障る。
「ふうん。でも、何で俺が?」
「ええ、典型的なマシンチャイルドの特徴が、遺伝子操作による普通とは違った髪の色と金色の瞳なんです。そうじゃない人もいますけど」
俺がマシンチャイルドだって?
確かに俺の髪は銀髪だし瞳の片方は金色だ。しかし、そんな覚えは全く無い。
それに、チャイルドって歳でもないような気がする。
「ん? 普通じゃない髪の色に金色の瞳って。それに、さっきあなたもって、もしかして」
「ええ。私もそのマシンチャイルドです」
なるほど、ルリちゃんの年齢不相応の態度というか雰囲気にも何となく納得できた。
それで艦長なんてことが出来るわけか。
「あなたはどうなんですか?」
「んー、覚えてる限りにおいてそんな記憶は無いけど」
それに俺、あんまり頭良くないしな。
「そうですか。まぁ、それは調べれば分かることですからこれ以上は追求はしないでおきます。では、本題に……」
「入りましょうか?」という言葉は耳をつんざくような騒音に掻き消された。
<あとがき……か? これ>
こんにちは、時量師です。
まず、前回で「空白の三年間」を詳しく説明して下さった黒い鳩さん、そして、ルリさん。ありがとうございました。こんな新参者に優しくしてくれて、時量師
はもう感激です。どれくらい感激かというと、土下座だけではまだ足らず、わけも分からず踊りだすくらいに感激しています。ああ、言葉だけでは伝えきれない
のがもどかしい。
とても勉強になりました。重ねて御礼申し上げます。これからも頑張りますよ。
こほん。
さて、第三話にしてルリちゃんやっと自己紹介です。僕はうれしいです。いちいち大変そうですが……。
舌噛まないのかな?
アキくんは家なき子でした。本当に可哀想です。それと、メガネっ子の上に銀髪なんですね。どこかのSSと被ってるかもしれませんけど、そこは見逃してやっ
てください。
マシンチャイルドの説明、あんな感じで良いのでしょうか? 自信ないです。
調子に乗って、もひとつ質問があります。映画の中で、ルリちゃんとハーリーくんがお風呂のあとフルーツ牛乳飲んで一緒に寝ていた部屋はナデシコの中なので
しょうか? 確か初代ナデシコには大浴場があったので、そうではないかと思い込んでいるのですが。
次回はあの子とあの人が登場予定です。騒がしくなりますね。
うーん、なんか物足りない。僕も皆さんを見習ってゲストさん呼ぼうかなぁ。
では、よろしければ次回もお付き合いくださいませ。
感想
更に連続で投稿頂きました! 凄いです! 私は週一回でもひ〜ひ〜言っていただけではなく、最近は投稿できない状態が三週間目に突入しました(汗) 後数
日で〜光と闇に祝福を〜が上がりそうなんですけど…
そうですね、遅すぎです! 怠惰にも限度があります! 当然私中心のお話なん
でしょうね?
いや、残念ながら12話はそれほど出番ないよ。
なぜです? このサイトは私のファ
ンが8割を超えると言うのに! 作家陣も、雪夜さん、神威さん、時量師さんとそろってますし!
いや、地球の面々も久しぶりに出さないと、皆さん忘れているのではないかと…。
そんなだから、サモン3より人気が
低いんです! もう少し考えなさい!
まあ、まあ、感想なんだし、感想の方にいきましょう。というか、これ私の日記みたいになってませんか?
まあ、毎日ですからね…やっぱり、
時量師さんは凄いですね、このナマケモノに毎日書かせるとは…
ははは…それで、感想ですが、アキ君はマシンチャイルドのようなナノマシンを埋め込まれていると言う事ですね、片目だけ金色の目というのは、変わってま
す。
いわゆるオッドアイというものです
ね、両目をIFS強化体質に合わせていないと言うことでしょうか? まあ、実験の突然変異なのでしょうね。
ついでに質問されている所に答えますと、マシンチャイルド計画…ムックを持っていない私には実際にあったのか分りかねます。SSオリジナルの可能性も…
TVや劇場版では、IFS強化体質
と言っています。ムックの設定は全ての設定がアニメと一致しない場合も考えるなら、存在には否定的ですね。
で、TV版のナデシコを見ると、人類学研究所と呼ばれるところでは、遺伝子改造で記憶力を操作した子供を作り出す事にしていました。
その理由は、宇宙開発を行う人類は余計な感情や、余計な知識を持たなければより理想的な存在として外宇宙への移住を行えると言うものです。
エゴですね、知識が多少増えた所で
宇宙では何の役にも立ちません、精々故障箇所を発見した時に必要な物が分るとか、その程度に過ぎません。
所が実はそうでもない、感情の制御と言うのは、外宇宙への移住を考えた際には重要だったりする。
恐怖や焦りといった感情は容易に艦内の争いに発展しかねないし、冷たい方程式を突き詰めていけば、誰が生き残るとか気にせず長い期間の航行が可能だ。
イヤな論理ですね、でも確かガン○
ムWでも、似たような事を言ってましたね昔…
まあ、その辺は兎も角、ルリちゃんは最初はそういう超人類として生まれてきたんだ…だけど、計画は途中で頓挫…恐らくはスポンサーが下りたんだろうね。
まあ、荒唐無稽な話ですしね…そも
そも、今すぐ人類を外宇宙に移住させる必要は無い訳ですし。
それに目をつけたのがネルガルだった訳だ、超人類の計画内で恐らくは最も優秀だったルリちゃんを使ってマン・マシン・インターフェースともいえる、IFS
強化体質の実験を行ったんだ。
良い迷惑です。でもお陰でアキトさ
んに会えたんですから良し悪しですね。
そうそう、ここで重要なのは、IFS強化体質になる前からルリちゃんは銀髪、金目だったという事と、人類学研究所の他の子にはそういう子はいなかったと言
う事。
それって重要なんですか?
かなりね、ラピスっているでしょ?
はい、あの子は私の英語名ラピス・
ラズリ(瑠璃石)というフルネームでしたよね確か…
私の作品内でも一応名前はアキトが付けたことになっているけど…ラピス・ラズリってコードネームだと考えた方が自然なんだよ。
つまり、あの子は私と同じ遺伝子の
配列だと言うのですか?
恐らくは、クローンの類じゃないかな? 結構ダークだけど、可能性は高い。ルリちゃんに気をよくしたネルガルが作ったって言うね…
だから、ハーリー君は黒髪でしょう?
…確かにそうですね…ふう、酷い設
定です…でも、あくまでその可能性が高いというだけですよね?
その通り、100%ではない、後逆に良い知らせもあるよ。
何です?
ルリちゃんは新人類として作られたんだ、それも外宇宙への移住を目的として、だから、ハーリー君やラピスは無理でも、ルリちゃんには子供を
作れる可能性が高い。
そうなんですか!? やっぱり、アキトさんの子供でサッカーチームを作ると言う私の夢はかなうんですね!!
いや、それもどうかと思うけど…(汗)
嬉しくてダンスでも踊りたい所ですが、アキトさんがいませんので質問の続きを。
ははは…お風呂とフルーツ牛乳でしたっけ。
あの部屋は軍の仕官宿舎です。
ナデシコBにあるかどうかは分りませんが、あの時はナデシコBは寄港してドック入り中、つまり、誰もいませんし、電力も落とされています。
それに、オモイカネはナデシコCに
移植されている最中ですから、ナデシコBはまさにもぬけの殻です。
そんな訳で、質問の答えになっていたでしょうか?
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
時
量師さんへの感
想はこちらの方に。
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