機動戦艦ナデシコ
〜The alternative of dark prince〜
第九話 『最終兵器』は拳で語る
ずきん
ずきん
また……。
色々あったあの日から数日後の今日。
いきなり勝負を仕掛けられた。
「勝負です!」
ガチャ
「は?」
なんだ?
「アキさん、男同士一対一の勝負です!」
ガチョガチョ
「え?」
良く聞こえない。なんだか変なことを言っているような。
「だから、僕と勝負をして下さいと言っているんです!」
カチャカチャ
「んん?」
何言ってるんだろう? 悪いものでも食べたのだろうか。
「あぁ〜〜〜っ! もう! 勝負しろって言ってるんですよ! 決闘ですよ、決闘! 聞こえてるんですかっ!?」
ガチャガチャガチャ
「決闘って、誰が、誰と?」
「アキさんが、僕とです。他に誰がいますかっ!?」
ガチョガチョガチョ
あたりを見回してみる。
あ、パイロットの訓練生たち。
「探さなくていいです! 何きょろきょろしてんですか!? 僕とアキさんがですよ。闘うんです。戦闘です!」
カチャッカチャカチャカチャ
「へぇ〜。俺とハーリーくん(?)が戦闘かぁ。ふんふん。俺とハーリーくん(?)がねぇ………………えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「うわあああぁぁぁ! な、何ですか!? びっくりするじゃないですか!」
ガチャッ、ガチャガチャ
「ああ、ごめん。じゃなくて、いきなり何言い出すのさ。本気なの?」
むしろ正気なの?
「当たり前じゃないですか! 僕は真剣ですよ! さあ、アキさん勝負してください。こうして準備だってして来たんですから!」
ガチョッガチョッ
「…………」
改めてハーリーくんの格好をじっくり観察してみた。
……ハーリーくん? だよな。多分。
まず、そう、あれだ。剣道で使う面。そして、防弾チョッキ。手甲。軍手。柔道の帯(緑)。膝サポーター。すね当て。スパイク。さらに、右手に釘バット。左
手に鎖鎌。背中には……マシンガン。木刀。グレネードランチャー。しゃもじ。ビームライフル。腰には予備の弾。くない。ヨーヨー。その上、首には手榴弾が
ぶら下がっている。あ、懐からスタンガンとハリセンがはみ出してる。これだけのものどこで手に入れたんだろう。
さっきから奇妙な音がしていると思ったら、このせいか。
……ハーリーくん、どこに戦争吹っかけるつもりだい?
その前に俺、良くハーリーくんだって分かったな。
ハーリーくんは最終兵器と化していた。
「うん。分かった、分かったから」
間違いなく、君は最強だよ。ゲキ・ガンガーなんてメじゃないぜ。
そう、もはや君はハリ・ガン……。
「何を憐れみの眼で見てるんですか!? これで本気だって分かったでしょう? さあ、どこからでもかかって来て下さい!」
「いや、かかって来いったって。そもそも、何で俺なんかと勝負をしたいんだい?」
「それは〜……。もう! いいから早く来て下さい! そっちが来ないんだったらこっちから行きますよ!」
しまった。そう来るか。
助けを呼ぼうにも、さっきまでいた訓練生たちはいなくなっている。
わわっ。鎖鎌を振り回すのはやめてくれ。危ないから。って、なにグレネードランチャー構えてるんだよ。そんなのよく持てるね? じゃない! それはもう勝
負でなくて殺戮って言うんじゃ……。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってって! どうしたんだよハーリーくん! そんな急に!」
「問答無用ですっ! ……艦長と僕のために……死んで下さいっ!!」
「ま、待ってえええぇぇぇぇぇ!!」
俺はこんなところで死ぬのか? しかも、仲間にやられて。
やっぱり俺って不幸だたんだなぁ。次回からは新番組か? ああ、思考回路までおかしくなってきた。
ごめんね。ルリちゃん。約束(?)は守れそうにない……よ。
しかし……神は舞い降りた。
「よっす、アッキー。奇遇やな。こないだの飯美味かったで。また作ったってぇな」
……お前か。
「ん? どないしたん? そんな今にも殺されます〜っちゅう顔して」
いや、只今殺戮の真っ最中だったのだが。
「お〜い。アッキー。やっほ〜。聞こえとりますか〜? 死んでますか〜?」
「殺すな。聞こえてるよ。取り敢えず、助かった」
「お、生きとった。脅かすなや。ホンマに死んだかと思ったで」
「ああ、本当に死ぬところだった」
「ところで、アッキー」
「?」
「ソレ何?」
ジンの人差し指の先には……ソレが……。
そりゃ分からないよな。正体を知らなきゃ意味不明なハリボテだ。かなり物騒な。
ソレは突然の乱入者に動きが止まっている。まあ、それで俺は生き延びたわけなのだが。
「驚かずに聞けよ。ソレはハーリーくんだ」
「あ、なんやハリくんか。そんな暑苦しい格好して、寒がりなんか?」
「いえ、そんなことないですよ。ただ、ちょっと重いです」
「少しは驚けよ! ハーリーくんも足腰強すぎっ!」
思わず突っ込んでしまった。
こういうのってハーリーくんの役回りじゃなかったっけ?
それにしても、ちょっと重いだけだって、君の筋肉はどうなってるんだ?
「つまらん。二十点」
厳しい評価を貰った。
「アッキー、まだまだやな。そんなんじゃ天下はとれんよ」
これを狙ってやがったなこいつ。俺は別に芸人になるつもりはないぞ。
「ジンさん、邪魔しないで下さい。今僕たちは決闘してるんです!」
「決闘? アッキー、それどういうこと?」
「ああ、それがだな……」
俺はハーリーくんが俺と戦いたがっていることを端的に説明した。
思えばそれは少し安易過ぎたのかもしれない。いや、絶対にそうだ。
「ふんふん。なるほどなぁ。ハリくん、そういうわけでそういうわけちゅうことか」
「な、何がです?」
「いや、何でも。よっしゃ! ここは僕に任せておくがいい。ばっちりアッキーと戦わしたる」
「本当ですか!?」
「なあ、ジン。俺はなんだかもの凄く嫌な予感がするぞ」
「何のことかなぁ〜? ほんだら僕は準備して来るから、一時間後にあの道場な」
「はいっ! お願いします!」
「待てって、おいっ!」
行ってしまった。
ハーリーくんは俄然やる気だし、何故こんなことになっちまったんだろう。
俺は根本に戻って聞くことにした。
「ねえ、ハーリーくん。俺と戦ってどうするつもり?」
「あ、肝心なことを忘れてました。アキさん、僕が勝ったら艦長の護衛をやめて下さい」
「? どうして?」
「どうしてもヘチマもへったくれもありません! だいたいアキさんはコックもパイロットもあるんだから良いじゃないですか!? 僕が勝ったら護衛をやめて
もらいますからね!」
ハーリーくんは文字通りテコでも動きそうにない。
はぁ、仕方がないか。勝てばいいんだろうし。
「分かった。それで良いよ。でも、俺が勝ったらどうするんだい?」
「その時は腹踊りでも何でもしてあげますよ。じゃあ、僕は先に行ってます。逃げないで下さいよ?」
……逃げたいよ。
ハーリーくんはいろんなものをガチャガチャ鳴らせながら去って行った。
腹踊り、やってくれるのかな?
一時間後。
予感は当たっていた。
『さあ〜突然やってまいりました! 何でも科学するこの時代、それでもまだ拳で語り合うあっつい男たちがいるぅ! 新たな世紀、世紀の対決! これを見逃
す手はないぞおおぉぉぉぉ! 司会は私、ご存知タカスギ・サブロウタ! そしてっ!』
『解説のホシノ・ルリです』
「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
『解説のホシノさん? ど〜ですか、この雰囲気は?』
『ウルサイです』
「「「「「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
『あっははははは! 気を取り直していきましょう! 実は対決する二人の男、何を隠そう我々ナデシコのクルー同士なのですっ! 解説のホシノさん? 我々
はどちらを応援するべきでしょう?』
『私、帰っても良いですか?』
「「「「「ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?????」」」」」
……何故に、何故に? 何故こんなことに。
俺はソイツの姿を探した。
「まいどーまいどー! あ、テンガ・アキ三口ですね? まいどっ! はいはい。ちょっと待ってぇな。こっちはマキビ・ハリ五口? はい、どーも!」
……貴様。それが目的か。
またえらく増徴しやがってからに。人を見世物にするんじゃねえ。
「ふはははは! 良く来たな! 逃げずにいたことは褒めてやろう!」
「誰だっ!?」
振り向くと……ヤツがいた。
大げさにもマントなんて被っているけど、大きさから考えておそらくハーリーくんだろう。
ていうか、ハーリーくん。キャラが、性格が変わってるよ。
『早速ですが、熱い戦いを見せてくれるであろうその二人を紹介いたしましょう!』
うわ、もう逃げられなくなってる。畜生、やるしかないのか。
『あ〜かコーナー。ポンドはとばして、自称『最年少美少女艦長の弟子兼弟』! 必殺技は『ハーリー・ダッシュ』! 思い人を取られたその無念! 晴らして
見せよう宿敵の! 夢にまで見た屍で! マ―――キビ―――ハリ―――!!』
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
「今日こそ貴様を倒し、私は愛を手に入れるっ!」
「えと、あの、ハーリーくん? 落ち着こう。話せば分かる」
「違う! 今の私はハーリーなどではない! 今の私は、そう、ハリ・ガンガー……ハリ・ガンガー7(セブン)だっ!」
そう叫んでハーリーくんは、ばさっ! とマントを脱ぎ捨てた。
「ハリ・ガンガー7っ!?」
つ、強そうだ。さっきよりも武器の数が二倍くらいに増えてるし。
って、あれ? 何で武器なんか持ってるの?
『おっとぉ、言い忘れましたが歳の差を考慮して、ハーリ……いえ、ハリ・ガンガー7には特別に武器の使用が認められます!』
「なにいっ!? ちょっと待て! そりゃいくらなんでもやりすぎ」
「往生際が悪いぞ! 大人しく私にやられるがいい!」
死ぬ。絶対死ぬ。
『続きまして、あ〜おコーナー。突然現れたナイト様! 今日も貴女を護ります! 昼はコックとパイロット! 何でも出来る憎いヤツ! いったいお前は誰な
んだ!? テ―――ンガ―――アキ―――!!』
「「「「「ぶうううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」」」」」
俺はブーイングなのかよ。うあ、いてっ、痛いって。
『気持ちはわかりますが、皆様ものを投げないで下さ〜い』
その人たちの額には『テンガ・アキ抹殺撲滅抹消暗殺委員会』の鉢巻が……。アンタたちか。
もしかして、少し進化してる?
『さあ! 会場の熱気も最高潮に達したところで、とっととおっ始めるとしましょう!!』
「待って待って待って! お願いだから待ってくれぇ!」
『いっきますよぉ! レディ―――――』
「腹をくくりたまえ」
「ああ、も〜どうにでもなれぇっ!」
『……はじめ』
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
『おおっ! これはっ! ……洒落になってませんねぇ』
『……』
『うわっ! あ〜れ〜は痛い』
『……』
『あっちゃあ〜。そこまでしますか』
『……』
『反撃か? 反撃か? あ〜駄目だぁ〜』
『……』
『絞まってます絞まってます! 落ちるか!? ……まだだぁ〜!』
『……』
『あああぁぁ〜! そいつはヤバいんじゃないのかぁ!?』
「「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
『……なむ……』
俺たちは知った。
意思疎通をするのに、拳に勝る言語はないのだと……。
こうして、俺はハーリーくんと分かり合うことが出来たんだ。
ただ、関西弁小僧がやたらと生き生きしていたのに、釈然としないものを感じたのも確かだった。
そのころ……。
「若いっていいわねぇ。いえ、三十路がなに? 女は三十からなのよ」
<あとがき……か? これ>
こんにちは、時量師です。
毎回感想を下さるクイック二式さん、本当にありがとうございます。時量師は今日も頑張ってますよ。
さて、第九話。正直疲れました。なにせ止まらないんです。自分でも何書いてるのか良く分からなくなっていました。出来上がって読み返してみると、何だこ
れ? って感じです。
ちょっと打っ飛んでますかね? 何がってそりゃあ色々と、です。シリアスなのが好きな人にはお勧めできませんね、これ。前回があれでしたから余計に……。
またジンくんを出してしまいました。時量師は彼のようなキャラクターが好きなのです。あしからず。
さあ、次回。『熱血少年ハリ・ガンガー7』。お楽しみに。
嘘です。
では、次回もよろしくお願いします。
感想
時量師さんサイコーです♪ 人間続けば続く物ですね、十本目まで連続して送ってくださるとは…
そうですね、畏敬の念をこめてこれ
から、「コンボマスター時量師」さんと呼びましょう。
それじゃ、本人が嫌がるって(汗)
見てみると今回はハーリー君の活躍
が目立つ回ですね。
彼は美味しいキャラだしね。笑いの要素を二つも持ってる。
何ですかそれは?
即ちハーリーダッシュとルリちゃんへの恋、もっとも原作では自覚してないけどね。
ちゃん? 何時までも進歩の無い…いい加減にしないと…更に私が進化しますよ?
すいません、ルリ様!
よろしい、次は無いと思いなさい。
はっはひ(汗)
しかし、何ですかゲキガンガーの真
似事ですか? 私ゲキガンガーにはちょっと煩いですよ。アキトさんにかなりつき合わされましたから…
まあまあ、ハリガンガー7面白いキャラじゃないかと思いますよ。ジンも上手く立ち回ってますしね。
今回も劇場版勢はオチ担当という感
じですね…結構出ていないはずの人間の出番が多い作品ですね。
そういった意味でも、面白い作品だと思うけどね。今回は笑いに走ったぶん良い感じに内容もほぐれていると思う。シリアスは無いけど(爆)
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
時
量師さんへの感
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