コードギアス反逆のルルーシュR2
Double Rebellion
TURN-17 第二次トウキョウ決戦(前編)
超合集国決議第一号『日本解放』の要請を受け、黒の騎士団は神聖ブリタニア帝国の植民地『エリア11』に対し、上陸作戦を展開する。
キュウシュウ沿岸に陣取るナイトオブワン『ビスマルク・ヴァルトシュタイン』に対し、総司令『黎星刻』が率いる主力部隊が激突。
それを陽動として、黒の騎士団の別動部隊がトウキョウ租界に向けて進撃を開始した。
ライも事前にその指示と報を受け、キュウシュウからトウキョウ租界に向かう。
しかし、待ち受けるシュナイゼル軍に大量破壊兵器『フレイヤ』がある事は、この時点ではゼロを始め、黒の騎士団側は誰一人として知る由もなかった。
「黒の騎士団斑鳩艦隊に告げる。ゲフィオンディスターバーによって、トウキョウ租界のライフライン、通信網、そして第五世代以前のナイトメアは機能を停止
した。敵の戦力は半減している。各主要施設を叩き、トウキョウ租界の戦闘継続能力を奪い取れ!シュナイゼル率いる主力部隊が到着するまでが勝負となる。ナ
ナリー総督を抑えれば、我が軍の勝利だ!」
トウキョウ租界にいるルルーシュ=ゼロが率いている兵はあくまでも奇襲部隊であって、そう数は多くなかった。
現在のところ、ゲフィオンディスターバーによって敵戦力を削ることに成功しているが、シュナイゼルはすぐに原因がゲフィオンディスターバーである事に気づ
き、装置の解除作業を指揮下の部隊に命じてくるだろう。
租界の防衛ラインが蘇ってしまえば、もはやルルーシュ=ゼロに勝ち目など一ミリも残っていなかった。
つまり、租界を蘇生させられる前に決着をつけるしかないのだ。
続いてルルーシュ=ゼロは各部隊に指示を出す。
「藤堂!お前と斬月は卜部と仙波を率いて、敵旗艦アヴァロンの左翼後方に回り込め。朝比奈、千葉には政庁の制空権を抑えさせろ。なお、地上部隊が総督の身
柄を確保するまでは、絶対に政庁に攻撃を仕掛けるな!」
『承知』
「扇!南!斑鳩艦隊は敵がゲフィオンディスターバーを破壊するのを可能な限り遅らせろ。おそらく敵艦隊は地上へ工作部隊の派遣を狙ってくる。弾幕を張りつ
つ、敵の動きを阻害しろ。同時に租界周辺の防衛ラインの破壊。沈黙している砲台は今のうちに全て叩き潰せ!」
『あ、ああ』
『任せろ』
「それから」
しかし、ルルーシュが矢継ぎ早に指示を出そうとした、その瞬間であった。
蜃気楼のレーダーにランスロットの反応と映像が映ると同時に通信にも強制的な割り込みがかけられた。
流れたのは、よく聞き覚えのある声だった。
『聞こえるか、ゼロ。戦闘を停止しろ。こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば、四千万リータ以上の被害をもたらす。その前に』
「お前の言う事など信じられるか!!ジェレミア!」
ルルーシュはスザクの警告を途中で黙らせると、ジェレミアに指示を飛ばす。
その瞬間、ジェレミアが操るサザーランド・ジークがランスロットに襲い掛かった。
ランスロットは突発的なサザーランド・ジークの体当たりをブレイズルミナスのシールドで受け止める。
サザーランド・ジークにランスロットをまかせると、ルルーシュは次にすべき事を行動に移す。
ルルーシュは通信を繋げる前に襟元に手をかける。
「ギルフォード」
通信を繋げた相手、ギルバート・G・P・ギルフォードは戸惑っていた。
しかし、ルルーシュを見た瞬間にギアスがかけられている証、目に赤色の光が宿る。
「ジェレミアに加勢し、枢木スザクを討て!」
『しかし、姫様。枢木は……』
「説明している時間はない。非常時だ。私を信じて戦ってくれないか」
『イエス・ユア・ハイネス!』
「すまぬ。ギルフォード」
そう言うルルーシュの顔は無表情だった。
ランスロットに向かって一直線に飛んでいくヴィンセントを見送る。
ランスロットへの攻撃が激しくなる中、ルルーシュも蜃気楼の拡散相転移砲を撃つ事で攻撃に加わる。
これもかわしていくランスロットだったが、蜃気楼の攻撃に気を取られていたせいで、横合いからのサザーランド・ジークの電磁パルスに捕らわれる。
それも原因だったが、妙な事にランスロットの機動性は以前のものよりさらに落ちている。
だが、それはこちらにとって好都合だった。
「よし、作戦通りここでスザクを始末すれば、ナナリーを取り返す障害は……」
とルルーシュが言いかけた所でハッとしてすぐに操縦桿でもあるパネルを操作する。
絶対守護領域を前面に展開させた直後、大きいスラッシュハーケンがそれに激突した。
このハーケン。そして、接近してくる機体は……。
「トリスタン!ジノか!」
瞬く間に接近したトリスタンは変形すると、ランスロットを捕らえているサザーランド・ジークにトルバートで切りかかる。
サザーランド・ジークは仕方なく電磁パルスを解除して、トリスタンの攻撃を輻射障壁で受け止めた。
そこにトリスタンへヴィンセントが切りかかるが、トリスタンはトルバートを返す事で易々とその攻撃を受け止める。
ルルーシュは一旦彼らの相手をジェレミア達にまかせると、すぐにパネルに指を走らせる。
「この戦力……シュナイゼルめ。トウキョウ決戦を読んでいたのか」
表示される戦略図にそれが示されていた。
既にいくつもの航空艦がトウキョウ租界に浮かんでいる。
さらにそれと同時に現れているのはゲフィオンディスターバーに対抗できるフィルターを装備した、第七世代以降の敵ナイトメア達。
だが、この対応はありえない話ではなかった。
あの完璧が似合うほどの人物はいないのだから。
ルルーシュは地上部隊のロロに通信をつなげる。
「地上部隊!ロロ、聞こえるか!」
すぐに応答が返ってきた。
『うん。よく聞こえるよ、兄さん』
「今どの辺りだ?」
『今13階層はクリアしたよ』
「よし。だが、俺が到着するのはもう少し先になる。情報によれば、地下の階層にはカレンも捕らわれている。最優先目標はエリア11総督の身柄確保。そし
て、次にカレンの救出だ」
『分かってる。任せて』
「頼んだぞ、ロロ」
そう告げてからルルーシュは通信を切り、すっとその顔を冷たくした。
誰にも聞かれないコクピット内で小さく呟く。
「ナナリーさえ取り返せば、ロロ、お前は用済みなんだよ」
これは命を狙われたライとシャーリーへの償い。
まだ、このロロだけは生かしてある。
実際、ロロの持つギアス能力はこういうときには実に役に立つのだった。
しかし、それも今回までであった。
ずっとナナリーの居場所に弟面をして居座っていた偽者。
今度こそボロ雑巾のように捨ててやる。
この世界にお前の味方など、家族など1人もいない。
その現実を思い知らせ、そのちっぽけな心を砕いた後に……。
「安心して、兄さん」
手にしていたロケットの蓋をそっと閉じて、ロロ・ランペルージは呟いた。
カモフラージュとしてブリタニア軍の防護服を身に着けた彼の周囲には、同じものを着た指揮下の工作員数名と、さらに同じものを着て地面に転がったブリタニ
ア軍兵士の死体が大量にあった。
(ナナリーは必ず見つけ出して……殺してやるから)
「兄さんの家族は……僕だけでいい」
それが今の兄ルルーシュを守るたった一つの方法だと、この時彼は信じていた。
いや、彼はナナリーには嫉妬していたのだった。
戦闘は続いている。
ゲフィオンディスターバーによって地上の第五世代ナイトメア部隊がそこに参加できないため、主な戦場は空中だった。
フロートユニット、あるいは飛翔滑走翼を装備した、第七世代以降のナイトメア同士の激突。
数こそキュウシュウよりも多くないが、戦闘の激しさはこちらの方が上であった。
夜空にブリタニア、黒の騎士団双方のナイトメアが流星を描き、飛び交う砲火があちこちで火球を炸裂させている。
その中で蜃気楼を操るルルーシュはトリスタンに向けて相転移砲を放つ。
対するトリスタンもメギドハーケンを合体させてからハドロン砲を放つ。
両者の砲撃が真っ向からぶつかり、光を瞬かせる。
威力はほぼ同等でどちらにも損傷はなかった。
一方、こちらの防衛ラインに突撃をかけながら、この蜃気楼になんとか近づこうとしているランスロットがいた。
先刻に続いて、また蜃気楼の通信に割り込みがかけられる。
『答えてくれ、ゼロ!自分が原因で、この戦いを始めたのだとしたら……!』
「うぬぼれるな」
パイロットのスザクの言葉を遮り、ルルーシュは冷たく言い放つ。
「お前は親を、日本を裏切ってきた男だ。だから、友情すら裏切る。ただそれだけ……」
と言ったところで蜃気楼のコクピットに警告音が発せられた。
側面から急速に接近してくる敵ナイトメアがいる。
「ええい!」
とっさにルルーシュはパネルに指を走らせ、絶対守護領域を展開させる。
だが、相手のナイトメア、ナイトオブシックスの操るモルドレッドは、そんなシールドの両面から肩のパーツで蜃気楼の機体を挟み込んだ。
さらには、シュタルケハドロンのゼロ距離発射態勢。
砲身の内側で膨大な紅の輝きが花開く。
『あなたのシールドが上か、私のシュタルケハドロンが上か……』
アーニャが呟いた瞬間、シュタルケハドロンが火を噴いた。
戦艦すら一撃で粉砕する砲火が蜃気楼の展開したシールドに叩きつけられる。
しかも、一撃に止まらず、連撃を加えられる。
一直線に押し込まれながら、巨大な光を放ち、空を翔ける両機。
「こ、これは!いくら絶対守護領域でも……」
一方、斑鳩でもそれは捉えていた。
オペレーターの日向いちじくがすぐにそれを報告する。
「蜃気楼、通信不能!ナイトオブシックスと交戦状態に入ったようです!」
その時斑鳩が敵の砲火により、震動する。
「橋本隊への指示はどうしますか?」
「九重九厘の備えもありますが……」
「ああ、ええと……」
扇がもたついていると、そこに南がフォローへ回った。
「橋本への指示は俺に回せ!」
「杉山、ゼロの援軍として動ける部隊は?」
「それが……玉城しか……」
まずいという風に杉山が言うと、扇も苦しい表情となった。
しかし。
「待ってください!こちらへ向かわれているライ門外顧問から通信が入っています!」
「すぐに繋いでくれ」
日向の報告を聞くと、扇はすぐに指示を出す。
直後、画面にライの顔が映し出された。
『こちら、ライ。現在の戦況の報告をお願いします』
「ああ、俺が説明しよう。今はブリタニア軍の主力部隊と交戦中。地上部隊の作戦も順調に進んでいる。今は五分五分なんだが、一つまずい事が……」
『何ですか?』
「ゼロがナイトオブシックスと交戦状態に入ってしまって……通信不能になっているんだ」
『……そうですか』
扇の言葉を聞いて、ライは少し考える素振りを見せると、すぐに口を開いた。
『援軍として動ける部隊は?』
「それが玉城の部隊しかいなくて……」
『……わかりました。もう少しでそちらの戦場に到着するので、ゼロの援護へは僕が行きましょう』
「そうか、頼む!」
『ゼロの位置を教えてください。わからなければ、推定位置を絞れるだけ絞って送ってください。あ、それと念のため玉城さんの部隊にも援護に行くように伝え
てください』
「わかった、そうしよう」
『じゃあ僕は一旦これで』
言うと、ライからの通信は切れた。
「ライにゼロの現在位置を転送後、すぐに玉城の部隊に指示を」
「わかりました」
オペレーターの日向にそう告げると、扇もすぐさま次の作業に入った。
ライがトウキョウ租界に到着する頃にはゲフィオンディスターバーがかなりの数で破壊されつつあった。
各地で戦闘が続く中、ライは戦場に到着する寸前、崩月のエナジーフィラーを予備のエナジーフィラーに交換し、転送されたゼロの位置データを元にそこへ向
かっていた。
エナジーフィラーはまだ残量があったが、万全の状態で戦うにこっした事はなく、予備のエナジーフィラーの重量を減らすための交換でもあった。
そして、それからすぐにライはモルドレッドと交戦中の蜃気楼を発見した。
絶対守護領域で必死にシュタルケハドロンを防いでいる。
ライはルルーシュ=ゼロに通信を繋げる。
「ゼロ、そのまま絶対守護領域を最大出力で展開して」
『!ライか!?』
ライは驚きながら聞くゼロの返答はせずに刀『蒼月』を振るって、蒼破閃をモルドレッド向けて繰り出した。
モルドレッドはそれに気づき、蜃気楼への攻撃を中断し、離れる。
展開される絶対守護領域の前すれすれを崩月が放った斬撃破が通り過ぎる。
ライは攻撃がずれたもしものため、ゼロに先程の指示をしたのだった。
それにもしモルドレッドに見事当たったとしても、下手をすれば蜃気楼に被害が及ぶ可能性がある。
それも含めての指示だった。
そして、間合いの離れた両者の間にライは崩月を割り込ませる。
「すまない、遅くなった」
『いや、助かった。しかし、よくこの短期間にここに来れたな。俺の予測ではもう少しかかると思ってたんだが……』
「なるべく最短ルートを通ってきたからな。でも、君が無事で良かった」
ライは言ってから、軽口はそれくらいにしておく事にする。
もちろん今のは本音だが。
それに今は時間が惜しい。
「ゼロ、君は政庁に。ナイトオブシックスの相手は僕が引き受ける」
『……いいのか?』
ゼロ、いやルルーシュは確認するように言ってきた。
おそらく、恋人になったアーニャに剣を向けられるのかを聞いているのだろう。
そんなルルーシュにライは噴き出しかけたが、かろうじて微笑むだけに止めた。
「……ありがとう。でも、その心配は無用だ。前も言ったが、この戦いで公私混同はしない。それにこれは僕が黒の騎士団で戦っていく上で必ず予想できた
事だ。手加減や手心を加える事はしない。これは僕の戦士での上の鉄則だ。約束するよ」
『……わかった、頼む!』
ルルーシュ=ゼロはライの意志と決断を信じ、蜃気楼を政庁へ向けて飛翔させた。
モルドレッドはそれを追うかと思われたが、全く見向きもしなかった。
先程からずっと崩月を見ているだけだ。
「………」
そんなモルドレッドにライは刀を構える。
しかし、ライもそのまま動かなかった。
お互いそのままの状態で時が過ぎる。
すると、しばらくしたところでモルドレッドから崩月の通信に割り込みがかけられた。
『……ライ?』
「!」
モルドレッドのパイロットであるアーニャの言葉にライは驚愕した。
理論ではなく直感で悟ったアーニャにライは一瞬目を見開くが、すぐに表情を戻す。
長い沈黙の後、ライは映像をオープンにして口を開いた。
サブモニターにアーニャの姿が映る。
「……どうしてわかった?」
『ライが超合集国の式典会場で、黒の騎士団側として出ていたのは映像を見ててわかってたから。なら、ここにいるのも当然』
ちなみにその時の映像を見てスザクやジノだけでなく、アーニャも驚いたものだ。
「…なるほど。でも、僕がナイトメアを扱う人間じゃない場合もあったかもしれないよ?」
『ライがその機体に乗っている人みたいに強かったらって思っただけ。それに……なんとなくわかったから』
「……フッ、そうか。アーニャの希望も入ってたのか」
アーニャらしい推測にライは思わず笑ってしまう。
おそらくアーニャは学園に転入して、キューピットの日以来付き合っている内にライの行動の癖等を見ていたという事なのだろう。
『…でも、どうして?』
そんなライにアーニャはすぐに問いかけてきた。
もちろん、その内容は聞かずともわかっている。
何故ブリタニア人であるライが黒の騎士団にいるか、だ。
ライは見た目はブリタニア人なので、そう思われたのだろう。
だが、正確には半分正解で半分はずれだ。
「どうして?それはアーニャには関係ない事だよ」
言って、刀を再び構える。
言う必要はないと思ったライにアーニャはさらに言ってくる。
『……恋人』
「え?」
予想しなかった言葉にライは素っ頓狂な声を挙げる。
そんなライにアーニャは続ける。
『恋人に……隠し事はよくない』
そう言われてライは「……あー、なるほどね(苦笑)」と言った。
こんな戦場でそんな事を言われるとは思わなかった。
何故ならライとアーニャは今は敵同士なのだから。
まあ、以前彼女にラウンズや軍人になった訳を聞いたのだからここは筋は通っている。
その内容自体は他愛のないものだったのだが。
仕方ないか、と思ったライは口を開く。
「ゼロのためだよ。僕が黒の騎士団にいる理由はそれだけだ」
深くは言わない事にしたので、ライはそれだけ言った。
別にこれは本音だし、彼女に全てを語る必要はない。
『あんなトゲトゲ仮面の?』
(……トゲトゲねぇ(苦笑))
アーニャの率直な物言いにライはまたも苦笑する。
事実なのだから、否定しようもない。
「そうだ。ゼロの、親友のため。それ以外の理由なんてない。それにアーニャは僕をブリタニア人と思ってるみたいだから疑問に思ってるみたいだけど、それ
は半分間違いだ」
『間違い?』
アーニャが小首をかしげるのが、画面を通してわかる。
「……僕はブリタニア人と日本人のハーフなんだよ」
『……紅蓮のパイロットと同じ?』
「……そうだ」
『……私の恋人でいてくれてたのは何故?』
疑問が解消したのか、それともこれ以上言っても無駄だと思ったのかわからないが、アーニャは質問を変えてきた。
「……それをここで言う必要はない」
『………』
ライがその質問に答えなかったため、アーニャは黙り込んでしまう。
だが、ライはそこでこう言った。
「でも、アーニャの事は好きだよ。これは僕の本心だ」
『……!』
ライの言葉にアーニャは顔を上げ、僅かに頬が赤くなった。
随分と正直になってきたアーニャにライは心の中で笑いつつも、表情はすぐに冷たいものになった。
「だが、僕の親友に危害を加え、邪魔するのなら手加減はしない」
ライは言って、それ以上アーニャが何も言わないとわかると、告げる。
「言う事はもうないみたいだな。なら、君を倒してゼロの所に行かせてもらう!」
直後、崩月がモルドレッド目掛けて刀を振りかぶりながら襲い掛かる。
モルドレッドが迎撃のミサイルを放つ。
しかし、崩月はそれをなんなくかわし、モルドレッドに刀を振るう。
モルドレッドはそれをブレイズルミナスで受け止めた。
しかし、じりじりとだが、モルドレッドのブレイズルミナスを崩月の刀が侵食していく。
「どうした?ここにいるのは君の恋人のライではなく、黒の騎士団のライだ。躊躇していると、死ぬよ」
ライはモルドレッドの様子を見て、冷たく言い放つ。
すると、アーニャもムキになったのかシールドの強度を高める。
その直後、ブレイズルミナスを侵食していた崩月の刀が止まる。
それにライはフッと笑うと、ブレイズルミナスを蹴って刀を引き、間合いを取る。
そこへモルドレッドがすかさずシュタルケハドロンを放つ。
だが、既にそれを予測していたライは横に飛んで回避する。
そのまま崩月はビル陰に隠れた。
モルドレッドはレーダーを頼りにシュタルケハドロンをビルに向けて放つ。
シュタルケハドロンはビルに丸い穴を易々と空けたが、そこに崩月はいなかったようだ。
『どこ?』
「こっちだ」
モルドレッドが周囲を見回して崩月を探していたところへ上から崩月が踊りかかる。
「月下閃」
モルドレッドがとっさに上方にシールド展開。
しかし、崩月の月下閃の威力は殺しきれずに地面に叩きつけられる。
モルドレッドが叩きつけられた所を中心に周囲に土煙が舞う。
ライはそこで追わずにその場で様子を見る。
すると、煙が若干晴れたところでモルドレッドがシュタルケハドロンを構える様子を垣間見た。
「!」
「これなら……」
アーニャが言葉を続け、トリガーを引こうとしたときだった。
「え?」
突如自分の視界がぐにゃりと歪んだ。
続いて襲い掛かってきた刺す様な頭痛。
自ら見る世界が反転するような感覚。
「ま、また…何か…」
そして、頭の中を飛び交う無数の奇妙なイメージ。
晴れた空。白い雲。
その下に緑に囲まれた城。離宮。
アリエスという名の……。
「こ、これって……」
黒い髪をした男の子と、それより小さいアッシュブロンドの髪の女の子。
女の子が羽のついた帽子を持って楽しそうに走り、男の子はそれを困ったように追いかける。
さらにその背後。
男の子に良く似た黒髪の女性。
青いドレスを着ていて、それでいて、眼差しは鋭く。
「まさか……」
『今はダメ』
意識がさらに反転し、その間際、ふとアーニャはそんな自分ではない誰かの言葉が体を貫いたように思えた。
ライはモルドレッドが砲撃してくると直感し、崩月に回避行動を取らせたが、それでもモルドレッドが動きを見せない事に眉を顰めた。
「何だ…?」
拡大して土煙の晴れた所にいるモルドレッドを見ると、モルドレッドはどうやら停止しているようだった。
いや、機体が停止しているというよりパイロットが動いていない。
(また、か…?)
前の時のようにいきなり動きを変えて襲い掛かってくるかと思い、身構えたが、少し様子を見てもそれすらなかった。
完全に止まっている。
「アーニャ?」
通信を割り込ませてみたが、アーニャは全く反応を見せなかった。
またも奇妙な事態だが、ライにとっては好都合だった。
「今のうちにルルーシュに合流しよう」
決断し、ライは政庁へ崩月を飛翔させた。
あとがき
今回のあとがきは後編でまとめてします。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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