魔法少女リリカルなのは
                  Accel  Knight

















プロローグ




新西暦と呼ばれる時代。
平和という安息の元で地球連邦は……いや世界そのものは緩やかに腐敗していった。
そして、地球外知的生命体との闘争を経てもその流れが止まる事はなかった。
地球連邦軍特殊任務実行部隊『シャドウミラー』。
それが俺達の部隊の名称。
俺達は腐敗していく世界を憂い、地球連邦政府に対して反旗を翻した。
闘争を日常とする世界を作り上げるためには、平和という名の腐敗を阻止できる。
俺達はそのきっかけを作るため、決起した。
世界を司る頭を潰せば、いや、その機能に損害を与えさえすれば、鬱屈していた者達が動き出し世界は混沌へと向かう。
だが、俺達の目論見はある者達によって打ち砕かれてしまった。
その結果、シャドウミラーは巻き返しを図るためにある計画の実行を余儀なくされた。
その名はプランEF。
エンドレスフロンティア。
目的は極めて近く、そして限りなく遠い世界への到達。
そして、俺にこれからとんでもない事が起こるという事は誰も知らない。
俺自身でさえも。














俺はラン・キタガワ。
特殊任務実行部隊『シャドウミラー』の中でもさらに特殊な部隊『ダブルアクセル』所属、隊長。
この部隊はシャドウミラーの中でも指揮官であるヴィンデル・マウザー、トップにいるレモン・ブロウニング、アクセル・アルマーの三人のみの指示で動く言わ ば、トップ直属の部隊である。
その部隊構成は通常の人間とは異なる素質・能力を持った人間ばかりである。
特殊任務を行うWシリーズが人造人間ならば、こちらは人間で構成された特殊任務部隊と言ったところだ。
余談だが、ネーミングを見てアクセル隊長の名前から取ったのかと誤解された事もある。
そんな俺達はレモン様の指示で別行動を取り、プランEFを実行するための基地、テスラ・ライヒ研究所に帰還したところであった。
俺は部隊長として、搬入作業に指示を出しているレモン様に報告に来ていた。

「レモン様、ダブルアクセル部隊。ただ今帰還致しました」

俺の声で気付いたレモン様が妖艶な笑みをたたえて振り返る。

「あら、戻ったのね。ご苦労様、ラン」

「いえ」

俺は礼をした後、搬入作業の様子を見て呟く。

「いよいよ、ですか」

「ええ、これから私達の再起を図るための作戦『プランEF』が始まるの。あなた達にはこれからもっと活躍してもらわなければならないわ。期待しているわ ね」

「成功したら……ですが」

俺がそう釘を刺すと、レモン様は笑った。

「ふふ、そうね。最もな意見よ。リュケイオスの起動が上手くいけばの話になるわ。それに例え上手くいっても、向こうに着けるかという問題もある」

「賭け……ですか」

「そうね。だけど、それしかないのも事実よ。わかってくれる?」

「はい」

「それで戻ってくれたところ早速で悪いんだけど、転移するまでの準備を急いでくれるかしら。あなた達は第二陣に転移させたいから。それに……」

「敵……ですね」

俺の言葉にレモン様はまた微笑んだ。

「ふふ、そう。あなたそういうところはアクセル同様鋭いわね。……とにかく、敵が来るまでに全艦を転移させたいから。異常に鼻が利く狼さん達が来る前に… ね」

レモン様の言葉に思い当たる物があった。

「ベーオウルフ……」

「そういえば、あなたも狼さんとは交戦経験があったわね。しかも、同種の機体で」

言われて俺は過去にベーオウルフと戦った時の事を思い出した。
俺はあの時の光景を思い出して苦笑した。

「ええ、まあ。かなり強かったですよ。アクセルさんが執着するのもわかります」

「でも、向こう側は違う。わかってるわね?」

「は。では、そろそろ準備しなければならないので、失礼させてもらいます」

俺は一礼をしてその場を立ち去る。
しかし、途中で言い止められる。

「あ、そうそう。ラン」

「は?」

俺は振り返る。

「作戦が上手くいったら今度お茶にでもしましょうか?」

微笑んで言うレモン様に俺は。

「謹んでお受け致します」

そう言って、今度こそその場を立ち去った。
ちなみに断らなかった理由は、あんな美人の誘いを断るわけないだろ!って事だ。


















その後、俺は母艦である『アーク・スマッシャー』に戻った。
戻った格納庫で、ある音声が俺を出迎える。

『お帰りなさいませ。マスター』

その声と共に俺の横に出た画像。
そこにはツインテールの緑髪の少女が映っていた。
と言っても、彼女はこの艦の制御と同時に量子型演算コンピューターである。
画像は開発者のイメージにすぎない。
ちなみにその開発者は俺の親父だ。
このコンピュータの名前はエイダ。
まあ、俺も気に入っているから文句はない。

「ああ、今戻った。レモン様から何か追加で指示があったか?」

『はい。隊長以外のマカさんとネリカさんに別艦への搭乗命令が出ています』

「……ま、別行動だから当然か」

そうぼやくと、格納庫で整備している紫のショートヘアーの少女が俺に向かって叫んできた。

「ええ〜!?私そんなの聞いてないよ〜!?」

「いや、聞いとけよそこは!つーか、そのための整備なんじゃないの!?」

俺が思わず突っ込みを入れたのは先ほどエイダが言ったネリカだ。
ダブルアクセルの隊員であり、俺の部下にあたる。
搭乗機はプラネリオン。
刀での接近戦を考慮したアーマードモジュール。
少数しか生産されていないアーマードモジュールの中でもさらに特異な機体である。
開発者はこれまた俺の親父だ。
もちろん彼女にも他人とは違う能力が備わっている。
まあ、普段は明るくてよく喋るが、戦闘になると冷静沈着な頼れる隊員だ。
どこか抜けたところはどちらでも変わらないが。

「だって、転移するからランが準備しとけって言うから……」

少しシュンとなった彼女に俺は苦笑する。

「まあ、そうだな。だが、命令なら仕方ねぇよ。とにかく、準備だけはしておいてくれ」

「は〜い」

そう言うと、彼女は再び整備に戻った。
ちなみにこの艦での整備は基本人ではなく、サポートロボやコンピューターで行っている。
人の手が必要なところは各自理解しているので、それで済ませているのだ。
本当はこの艦にあまり人を乗せたくないのと、秘密を知られたくないからというのがある。
すると、今度はもう一人の隊員が俺に近寄ってきた。

「ラン、準備終わりました」

俺が振り向いた先にいたのは、黒髪のツインテールの少女。
黒いTシャツに黒い短パン、その上から黒いコートを羽織っている。
彼女は隊員のマカ。
搭乗機はシュヴァルツリッター。
あのゲシュペンストの最新機で、未だに作られていない物を俺の親父がマカ専用に一足先に作っておいた代物である。
つまり、俺の親父はゲシュペンストの開発にも1枚噛んでいたという事だ。
そして、この機体は機動性と射撃に特化している。
もちろんその彼女にも特異な能力がある。
そして、彼女は基本色白で華奢なので、そういう格好をされるとどうしても目が……太腿に…。

「ってどこを見てるんですか」

「ぐはっ」

次の瞬間、思いっきり腹に蹴りを入れられた。
ナイス、キック。
じゃなくて痛い……。
なんとか俺は腹を抑えながら問う。

「もうできたのか?早いな。俺が指示を出してからまだ数分しか経ってねえぞ?」

「帰還する途中から既に整備はしていましたので」

とりあえずなんとか痛みから復活した俺は立つ。

「じゃあ、手荷物だけ纏めていつでも出られるようにしておいてくれ。俺はこれからブリッジに行くから」

「わかりました」

そう言うと、マカは立ち去って行った。
その後ろ姿を見ていた俺は呟く。

「なんだか素っ気なくない?」

『マスターがセクハラしたのが原因かと』

「え、そうなの!?俺セクハラしちゃったの!?いつものスキンシップのつもりだったのに!」

『その辺の自覚のないところがマスターですね……』

そんな感じでエイダと話しながら俺はブリッジに向かった。
ちなみに言っておこう。
俺以外の隊員は皆美少女である。


















ブリッジに着いた俺はどかっと艦長席に座った。
と言っても、ここには人一人いない。
全て艦の管制システムはエイダが制御している。
故に人員は必要ないのだ。

『マスター、良かったのですか?』

「ん?何が?」

『私の事です。私の真の機能を伝えなくて。そうすれば、あの時の決戦で……』

俺は今までに何度も言われた事に苦笑した。

「いいんだよ。俺はあの人達と違って勝つために戦ってる訳じゃないから。それに、これを知れば誰もが悪用したくなる。それだけは避けないといけないんだ よ。それがこの艦を託した俺の親父の意思であり、俺の意思だ」

『マスター……』

「暗い話はやめにしよう。それより、俺の機体の整備状況は?」

『既に終わっています。ネリカさんのも微調整だけですので』

つまり、先ほどネリカがしていたのは仕上げの段階だったって事だ。
すると、ちょうどいいタイミングにマカとネリカの2人が艦内通信をしてきた。
俺は艦長席にあった受話器を取る。

『ラン、準備完了しました』

『私も終わったよ〜!』

既に2人ともコクピットに入り、準備はできているようだ。

「じゃあハッチ開けるからそこから指定された艦に移ってくれ。また向こうで会おうな」

『うん!絶対だよ!』

ネリカの明るい声に俺も明るく答えた。

「おう!そうだ、無事向こうに行けたらデートしてくれよ」

『う〜ん……』

『…………』

2人は少し考えると。

『『ランのおごりなら』』

それに俺は苦笑せざるを得なかった。

「これは手厳しい。……ま、そういう事だ。じゃあな」

『うん!』

『はい……』

そう言って、通信を切った後、2人の乗った機体、ゲシュペンスト・プラネテとシュヴァルツリッターは艦を出てそれぞれの艦へと移って行った。

『寂しくなりますね』

「何、俺の道にあいつらを巻き込む必要なんかねえよ。むしろ、少し楽になった気分だからな」

それが嘘とわかりつつもエイダは口にはしなかった。
すると、今度はレモン様から通信が入る。

『準備はできたかしら?』

「ええ、先ほどマカ達は所定の艦へ移させました。いつでも大丈夫です」

『ならいいわ。第1陣の転移はなんとかできたからこのまま第2陣の転移に入るわ。艦を予定の位置へ移動させておいて』

「了解しました」

ランがそう言うと、通信は切れた。

「少し後ろが騒がしかったが、何かあったのか?」

『敵が近くまで来ているようです。こちらも急ぎましょう』

「わかった。エイダ、艦を所定の位置へ」

「了解しました」


















そして、転移位置まで艦を移動させた俺はブリッジでのんびりと佇んでいた。
今でもリュケイオスの転移シークエンスが進められている。

「なあ、エイダ」

『何でしょう?』

「もし、俺がこのまま異世界へ飛んだり、死んだりしたら付き合ってくれるか?」

『私は死んだらコンピューターですからマスターと同じ所には行けないでしょう。ですが、私は最後までマスターであるあなたと共にあります。それだけは変わ りません』

「そうか……ありがとう」

『転移シークエンス開始……転移まで10…9…8』

シークエンスが開始された。
もう後戻りはできない。

「さて、鬼が出るか邪が出るか……。行くとするか、並行世界という異世界へ…!」

『3…2…1…0!転移開始!』

こうして、俺は転移した。
しかし、それがとんでもない方向に転ぶ事はこの時俺自身予想もつかなかった。
























あとがき

え〜と、6周年記念作品として始めました。
リリカルなのはのこのクロスオーバー作品。
って言っても、この時点では全然リリカルなのは登場してないんですけどね(汗)。
とりあえず、主人公の所属はどこだったかという事について書かせてもらいました。
主人公はスパロボの世界の住人で、かなり特殊な人間です。
それは追々話していくとして、今回はこの作品について説明したいと思います。

この作品は、主にスーパーロボット大戦OGとリリカルなのはのクロスです。
まあ作風としては、仮面ライダー風スパロボとでも言いましょうか。
仮面ライダーは出ませんが、仮面ライダーみたいにパーソナルトルーパーに変身して戦うというものです。
ただ、遊戯王のカードも原作とは全く違う使い方をしますが、登場するので、クロスに含んでいます。
そのほかにも、色々と他の作品を元にしたネタはありますが、主にそのまま登場するのはこれらの作品なので、この3作品のクロスとさせてもらっています。
ちなみにこの作品は私が今投稿しているギアスとは違い、完全に趣味的であり、興味本位で書いています。
他のリリカル作品を見ていて、自分もやってみようかなという興味だけで始めています。
さらに、新しい表現の試みもしているので、表現がつたなかったり、おかしかったりする場合がありますが、そこはご了承ください。
まあ、はっきり言って、無茶くちゃする場合があるかもしれないので、グダグダ感がかなり出ますからそういうのが気に入らない人は遠慮してくださいね。
後、これは見ていてくれる読者の方々にお願いなのですが、リリカルなのはについては作者は完全にど素人と言っていい程、知らない事があります。
もし、リリカルなのはを知っている人で、ここがおかしいとか、武器とか世界観とか、色々とリリカルなのはの事を教えてくれると助かります。
とまあ、こういう感じで私個人の興味本位で始まるリリカルなのは Accel Knightですが、よろしくお願いします。
もちろん、ギアスがメインで書いているので、この作品はギアスが終わるまではサブ扱いになるでしょうから、ギアスを楽しみにしていてくれる読者の方々はご 心配なさらないでください。
ちゃんと書いていますので。
後、主人公やエイダの紹介などが本編ではほとんどないので、紹介としてあとがきの後に設定を載せておきますので、良ければご覧ください。

最後に、シルフェニア6周年おめでとうございます!
シルフェニアに投稿している作家の1人として、またシルフェニアの作品を読んでいる読者の1人としてとても嬉しく思います!
これからもサイト活動が続くように応援すると同時に、シルフェニアに投稿している作家の1人として頑張っていきたいと思います!
これからもこの私、ウォッカーをよろしくお願いします!
では、また次回で。


















主人公紹介

ラン・キタガワ(北川 乱)

赤髪、赤眼の青年で、年齢は20歳。
元のいた世界(スパロボOGの並行世界)では、シャドウミラーの中でもトップ直属の特殊任務部隊「ダブルアクセル隊」の隊長。
常人離れした身体能力を誇り、優れた体術、武器を扱う術を持つ。
性格は、前向きで明るい。
普段は任務ばかりで笑う事はあまりなくなってしまったが、戦争をしていない普通の生活ではよく笑顔でいる青年である。
ただし、めんどくさがりでもあるので、自分をよく知らない他人には、めんどくさがりのボケっとした青年としか思われない。
そして、無類の女好き。
戦闘時では、一転して冷静かつ知的になる。
それに加えて、口や物言いが悪くなるためこちらの場合ではガラが悪いように見られがち。
年はあまり変わらないものの、戦い方を教えてくれたアクセル・アルマーを尊敬している。
戦うための理由を大事にしており、それが彼の生きる理由となっている。
過去に起こったある事件により、たまに思いつめた表情や様子を見せる。








エイダ

ランの所有する戦艦『アーク・スマッシャー』のコアとして搭載されている量子型演算コンピューター。
アーク・スマッシャーの火器管制や艦の維持まで全てエイダが管理している。
加えて、全世界にネットワークを構築できる能力を持っており、その情報処理能力と予測能力は凄まじいものがある。
オーバーテクノロジーがかなり使用されており、現行では最高性能のコンピューターである。
開発者はランの父親の北川博士。
このコンピューターの画像イメージとして、使われているのは○音○クと類似した女の子らしい。
ちなみにこれは北川博士の趣味である。



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