魔法少女リリカルなのはA's
               Accel of the Rebellion




















第6話 裏切りのSKULL



俺はシグナム達を見つけた後、すぐにフェイトに攻撃を仕掛けようとしたシグナムの間に割って入った。
右手でフェイトのバルディッシュを掴み、シグナムの紫電一閃をエネルギーを纏った左手で白羽取りする。
そして、俺の姿を認めた2人は驚いているようだった。

「さて、事情を聞きたいんだが?ヴィータ」

驚く2人を無視して、見上げた先にいるバインドで拘束されたヴィータに俺は約束を破った理由を問う。
ヴィータは俺の言葉に気まずそうな態度を示した。

「そ、それは……」

言いにくそうだったので、この場はひとまず置いておくか。

俺はレヴァンテインとバルディッシュから手を放す。
シグナムもそれで紫電一閃を解く。

「で、何故シグナムとザフィーラまで便乗しているかも聞きたいんだが?」

「うっ!そ、それは……」

「…………」

俺が少し怒気を含んだ声で問うと、シグナムはこちらも気まずそうに答え、ザフィーラに至っては汗を垂らしながら、答えられずにいる。

ったく、どいつもこいつも……。

「とりあえず、説教は後だ。シグナム、ヴィータの拘束を解いてシャマルのところへ行け。こいつらの相手は俺とザフィーラでする。ザフィーラはそれでいい か?」

「ああ、問題ない」

だが、シグナムは不服そうだった。

「私もやつと戦ってみたいのだが……」

「便乗した罰だと思え。ここは俺が引き受ける」

「……わかった。こればかりは仕方ない」

そう言ってシグナムはヴィータの拘束を解き、彼女を抱えて一旦戦線を離脱した。
俺はすぐに左耳辺りに手を当てて、シャマルに渡していた通信機に通信を繋げる。

「聞こえるか?シャマル」

『ええ、聞こえるわ』

「今そっちにシグナムとヴィータを向かわせた。こっからは俺とザフィーラでやる」

『蒐集は?どうするの?』

俺は淡々と話を続ける。

「ここまでやってしまったからな……。もう手遅れだろ。……してしまった方がいいだろうな」

『……そうね。なら、私は準備を進めるから、そっちはお願いできる?』

「ああ、頼む」

そう言って、俺は左耳から手を放し、通信を切った。

フッ……俺はやっぱりひどい人間だな。

自分が淡々と蒐集を続行する言葉を口にしていた事に、自嘲気味に苦笑する。
だが、そんな態度は見せずに眼下にいる知り合いを見つめる。
それは、友達であったフェイト・テスタロッサだった。
























私は混乱の極みにあった。
ランがこうしてここに来てくれたまでは良かった。
助けに来てくれたのかと思った。
だけど、目の前のやり取りは何?
まるで、ランと彼女達が仲間のようなやり取り。
それにどこかにいる別人にも通信をしていたようだった。
どうして?彼が、彼女達の…仲間?

「どうして……ランが……」

思わず口に出てしまった言葉の先をこちらに視線を向けてきたランが答えた。

「それは、俺があいつらと行動を共にしているからだ。フェイト」

「っ!」

その言葉はランが実質犯罪を犯した彼らの仲間である事を示していた。
それによって混乱はある程度治まったが、今度は別の思いが私の心を占める。

どうして!?

「じゃあ、どうしてこんな事を!?なのはは民間人!軽犯罪じゃすまない罪だよ!?お願いだから、仲間だなんて嘘って言ってよ!」

普段の私にしては珍しく大声で叫んだ。

だって、信じたくなかったから。
ランが、自分を助けてくれた友達が、敵の…敵の仲間だなんて。

だが、当の本人は私の言葉を否定してくれなかった。

「嘘じゃない。俺はおまえが去ってから少し経った後、あいつらと知り合い、今までずっと行動を共にしてきた仲間だ」

「っ!」

「なのはにした事は俺の本意ではない。だが……フェイトが管理局に味方し、あいつらを犯罪者と言うのなら、俺はおまえと戦わなければならない」

「……本気で…そう言ってるの?」

あくまで冷静に言うランに私は悲しくなってきた。

だって、彼は友達で、頼れる人で、いい人のはず。
その彼と再会早々に戦わないといけないなんて……。

そして、そのランは少し間があってから、はっきりと答えた。

「……ああ」

ランは答えと同時にメモリを取り出した。
それは、フェイトが今まで見たことがない紫のメモリ。

【SKULL!】

ランがスイッチを押した直後、音声が鳴る。
SKULL?……骸骨?

「……変身」

ランがレフトスロットを立ててジョーカーメモリを抜き、ライトスロットにスカルメモリを挿し、右に倒した。

【SKULL!】

そして、ランはゲシュペンスト・ジョーカーからゲシュペンスト・スカルに変身した。
その姿は、まるで骸骨を模したロボット。
胸は肋骨のようなデザインが入り、頭部も骸骨らしきデザインと共に、バイザーも解除され、その中にあったツインアイが覗いている。
その姿に私は恐怖を覚えた。

「さぁ、来い。フェイト。でないと、おまえはなのはを守れないぞ」

「!」

そうだ。
何を躊躇っているんだ。
私が戦わなければ、なのはに危険が及ぶ。
それだけは避けなければならない。
今のなのははレイジングハートも損傷し、戦う力を持っていないのだ。
なのはは、私が守らなければならない。
ランに理由を聞くのは、勝ってからでいい。

「……勝ったら、話を聞かせて」

「勝てるものならな」

「……あなたを逮捕します」

「やってみろ」

私の搾り出すような声にランがそう答えた瞬間、私は飛び出した。
バルディッシュを構え、ハーケンフォームにしながら切りかかる。
だが、ランはエネルギーを纏った右手でハーケンを白羽取りした。

「!!」

「行くぜ」

その瞬間、私はバルディッシュを振り払われ、ランの拳によって一気に下へと叩きつけられた。
























一方、遠く離れた建物の上で治療されていたなのはとその処置をしていたユーノもその様子を見ていた。
フェイトは既に建物を貫通して下へと叩きつけられている。

「フェイトちゃん……!」

「どうして、ランが……」

2人も混乱を隠しきれないでいる様子だった。
当然だ。
なのはとユーノはランと一番関わりを持つ人物だったからだ。
だが、迷っている場合ではない。
このままではフェイトが危ない。

「とにかく、助けなきゃ」

ユーノはすぐに詠唱を開始した。
それに合わせ、なのはの足元に緑色の魔法陣が展開される。
ユーノは詠唱を続ける。
すると、なのはを覆うように半球状に結界が展開された。
少々驚いているなのはに、ユーノが説明する。

「回復と防御の結界魔法。なのははここから絶対に出ないでね」

頷くなのは。
ユーノはそれを確認すると、すぐに飛んで行った。
なのはは心配そうに見上げる。

(ラン君……どうして、あの子達と…?)

なのはもランが襲い掛かってきた子の味方をしている事に混乱しているのであった。

























そして、フェイトが叩きつけられたであろう建物の中に入ったユーノはすぐにフェイトを見つけた。
その上には彼女が貫通してきたであろう穴が空いている。

「大丈夫?フェイト」

「うん……ありがとう、ユーノ」

どうやらまだフェイトは大丈夫そうだった。

「でも、どうしてランが……」

「わからない。ただ、私が管理局の味方をするなら、自分は敵だって……」

悲しそうな顔でフェイトは言った。
その言葉にユーノの顔も曇る。
だが、そこでフェイトが立ち上がる。

「ユーノ、この結界内部から全員転送、いける?」

それでユーノも今は気にしている場合ではないとわかり、答える。

「うん、アルフと協力できればなんとか……」

それでフェイトは充分だと思った。
とにかく、現状から脱出するのが先決である。

「私が前に出るからその間にやってみてくれる?」

「わかった」

と、そこでこの場にいないはずの声が聞こえた。

「で、揃って呑気に脱出の相談か?」

「「っ!」」

フェイトとユーノが背後を振り向くと、そこにはゲシュペンスト・スカルのランがいた。

「いつの間に……!」

「何、フェイトが貫通した穴からついさっき飛んできたところだ。気づかなかったか?」

「……くっ」

フェイトがバルディッシュを構える。
ちなみにフェイトがランが飛んできたのに気づかなかったのも無理はない。
スカルのメモリは全メモリの中で最もレーダーや感知器官に探知されにくい。
その存在の希薄さゆえに。
だから、フェイトやユーノが気づかなかったのも無理はなかったのだ。

「ユーノ、私がなんとかランを抑えるから、その間にお願い」

「……わかった」

2人でそう示し合わせた後、フェイトがランに飛び込んだ。

「はあぁぁ!!」

友達であったランとフェイトの戦いが今始まる。



























建物を突き破った俺とフェイトは激しい攻防を続けていた。
俺の拳がフェイトのバルディッシュに激突し、衝撃で互いに離れる。

「くっ!」

「Photon Lancer」

フェイトの周囲に4つの魔力球が生まれる。

「…………」

だが、俺はまだ動かない。
フェイトのフォトンランサーは直線型の射撃魔法。
無理に動く必要はない。

「撃ち抜け!ファイア!」

フェイトがバルディッシュを振るうと同時に黄色い魔力弾が迫る。
俺はそれを見て、腰溜めに構えると吼えた。

「ガァ!!」

胸の機構、骸骨の模様が動き、開いたかと思うと、そこから骸骨状のエネルギーが飛び出した。
それが全てフォトンランサーを吹き飛ばす。

「!!?」

「その程度で当たると思ったか?」

さらに胸の機構を起動。
骸骨の模様が動き、そこから1つの銃が出現する。
スカルマグナム。
ゲシュペンスト・スカルのメイン武器の1つだ。
それを俺は右手で取り、そのままフェイトに向けて発射した。

「!」

フェイトは発射された弾丸を避ける。
だが、次の瞬間、俺はフェイトの目前まで迫った。

「はっ!?」

「遅い!」

「Defencer」

咄嗟にバルディッシュが障壁を展開する。
だが、俺にはそんなその場しのぎの壁は通用しない。
そのまま押し込んで壁を叩き割り、フェイトのバルディッシュに拳を浴びせる。
瞬間、バルディッシュの本体に亀裂が走った。

「つぅ……!」

「はああ!!」

そのまま俺はさらに押し込み、フェイトを吹き飛ばす。
吹き飛ばされたフェイトはそのままビルに激突する。

「フェイトちゃん!」

なのはから声が挙がる。
だが、俺は構わず立ち上がろうとするフェイトに追撃する。
振りかぶった左の拳を接近した勢いの慣性のままに振り下ろしたが、フェイトは寸前で横に飛んで回避した。
寸前までフェイトのいたビルの壁面が拳撃で砕ける。

「どうした?なんとかしないと、このまま終わるぞ」

「……誰が!」

「……フッ、いい気合だ」

思わず俺はフェイトの意地を見て笑ってしまう。
だが、これでいい。
これで後先悩まずに戦える。
俺は再びフェイトと同時に飛び上がって、激しい空中戦へと移行した。


























今私、高町なのははフェイトちゃん達が激しく戦う様子を見ていた。
フェイトちゃんの相手はあのラン君。
アルフさんは青い狼の人と戦ってたけど、つい先ほど吹っ飛ばされてしまった。
そして、このままじゃフェイトちゃんが落とされちゃう。
少なくとも、ラン君は私やフェイトちゃんよりも圧倒的に強い。
私は……!

「助けなきゃ……!…っ!」

動こうとして、左肩に痛みが走る。
でも、なんとか助けにいきたい。
例え相手がラン君で勝てないとしても、放っておくなんてできない。
なんとか前に歩いて結界の最前部にまで行く。

「私が…皆を助けなきゃ…!」

「Master」

その時、レイジングハートから声をかけられた。

「Shooting mode Exprodlation」

すると、レイジングハートから大きな翼が発せられた。
まるで、私の意思に応えるかのように。

「レイジングハート……?」

「Let's shooting, Starlight breaker」

レイジングハートが私に「スターライトブレイカーを撃て」と言っている。
それは無茶だと思った。

「そんな……。無理だよ、そんな状態じゃあ」

「I'll be shot」

私はレイジングハートのぼろぼろである状態を心配するが、レイジングハートは「撃てます」と言い張る。
しかし、撃てばレイジングハートはただではすまない。

「あんな負担のかかる魔法…レイジングハートが壊れちゃうよ!」

「I believe master」

だが、レイジングハートは「私はマスターを信じます」と言い、私の思いに応えようとしてくれている。

「Trust me, my master」

レイジングハートがさらに促してくる。
ここまで言われて、私は何も言えなくなった。
自然と涙がこぼれる。

「レイジングハートが私を信じてくれるなら、私も信じるよ」

私はそう決めて、スターライト・ブレイカーの準備に入る。
そして、念話の仲間の皆に接続。

「(フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん。私が結界を壊すから、タイミングを合わせて転送を!)」

「(なのは……)」

「(なのは…大丈夫なのかい?)」

ユーノ君とアルフさんが心配そうにしている。
たぶんフェイトちゃんも言葉には出さずとも心配しているのだろう。
ちょっと自信過剰かなと思いつつ、そう思える自分がいる。

「(大丈夫、スターライト・ブレイカーで撃ちぬくから!)」

「レイジングハート!カウントお願い!」

「9」

レイジングハートがカウントを始める。

発射体勢にランが気づくが、フェイトに攻撃されて避けてしまう事で出鼻を挫かれる。
ユーノもランの足止めに入った。
アルフもザフィーラの足止めに専念する。

カウントがダウンしていくと共に、魔法陣に魔力が集まる。
だが、その途中でレイジングハートの音声がおかしくなる。

「レイジングハート、大丈夫?」

「No problem. Count Restart」

「3」

レイジングハートはぎりぎりな状態でも、問題ないと言ってくれた。
なら、私はちゃんとこれを成し遂げるだけ!

「2」

発射態勢になる。

「1」

撃つ。
そう思った瞬間だった。

「!!!」

私の体に衝撃が走った。
何かで貫かれる感覚。

「あ、あ、あぁ……!」

貫いていたのは、手だった。
何者かの手が自分の体から出ている。
何……これ?
すると、その手は一旦引っ込んだが、すぐにまた出てきた。
そこには、何か握られている。
ただ、そこで私が感じたのは、恐怖だった。



















「なのはー!」

フェイトはなのはの惨状を見て、彼女に向かおうとする。
だが、それによって生じた絶対的な隙。
それを俺は見逃さなかった。
スカルメモリを取り出し、スカルマグナムのマキシマムスロットにセットする。

【SKULL!MAXIMUM DRIVE!】

「っ!」

音声でフェイトが俺の攻撃態勢に気づいた。
俺は銃身を跳ね上げ、フェイトに銃口を向ける。

「バルディッシュ!」

「Round shield」

フェイトが障壁を張った。
俺は構わずに撃つ。

「スカル・パニッシャー」

引き金を引いた瞬間、大出力の砲撃がフェイトを襲った。
ラウンドシールドで一時的には防いだものの、防ぎきれずに残った砲撃の直撃を喰らい、吹き飛んだ。
使用したバルディッシュも既にぼろぼろだった。
落下していくフェイト。
それをランは目を細めて見つめていた。

「……フェイト、こんな俺を一生許さないでくれ」

その時、スターライト・ブレイカーが放たれた。
シャマルの蒐集にさらされているにも関わらず、なのはは発射したのだ。
大出力の魔法砲撃は天に向かっていき、見事にヴィータが展開していた封鎖結界を撃ち抜いた。

……潮時だな。

「シャマル、蒐集終了後、すぐに撤退するぞ。出来次第、転送を頼む」

『ええ、わかってるわ』

通信を終えた俺は、転送されるまでその場で事態の一部始終を見続けた。



























一方、アースラでは結界が破れた事でフェイト達がいる現場の映像が流れてきていた。
そこには、なのは達だけでなく、ヴォルケンズやランの姿も映し出された。
だが、状況が読み取れない。

「な、何これ!?どういう状況!?」

「これは……。あいつら……」

クロノには写る映像に心当たりのある者がいた。























そして、なのはのリンカーコアの蒐集が完了し、ヴォルケンズとランは多重転移で撤退した。
アースラでは、この転移足跡を捉える事はできなかったが、闇の書の認知には成功していた。
ここから、また運命が動き始める。





















あとがき


第7話でまとめてします。


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作家さんの感想は感想掲示板にどうぞ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.