魔法少女リリカルなのはA's
               Accel of the Rebellion




















第7話 変化する関係と日常



そして事件の後、所変わってミッドチルダ。
そこでは、事態の把握に加え、なのはやフェイト達の治療が行われていた。
そして、病院の中でクロノとフェイトが廊下を歩いている。

「君の怪我も大したものでなくて良かった」

「クロノ、ごめんね。心配かけて」

「君となのは、ランで慣れた。もう気にするな」

すると、フェイトの顔が曇った。
ランの名前は余計だったと気づいたクロノだったが、一応聞いておく事にした。

「でも、よくラン相手にその怪我ですんだな。マキシマムで撃たれたんだろ?」

「うん……。でも、たぶん手加減してくれたから…大した怪我じゃなくて済んだんだと思う」

それは恐らく正解だろう。
フェイトはとこどどころに打ち身や裂傷を負ってはいたが、どれもひどいものではなかった。
マキシマムを喰らえば、普通はただじゃすまないと思うが、その結果がこれだとしたらその推測にも納得がいく。

「しかし、何で彼が……」

「わからない……。ただ、管理局に味方するなら、自分は敵だって……」

「そうか……」

依然として、ランが闇の書にどういった関わりを持ち、どんな理由で味方しているのかはわからないままであった。


























そして、クロノとフェイトはなのはのいる病室に向かった。
すると、彼女は既に起きていて、医師の診察を受け終わったところだった。

「ああ、ハラウオン執務官。ちょっとよろしいですか」

医師の言葉にクロノは頷くと、医師と一緒に出て行った。
部屋にはなのはとフェイトが残る。
だが、折角の再会だと言うのに部屋の空気は明るくはなく、暗いままだった。
しばらく口を開かなかった2人だが、ようやくなのはが先に口を開いた。

「フェイトちゃん……」

「なのは……」

2人が互いの名前を呼んだ事で場の空気が少しだけ和らぐ。

「あ、あの…ごめんね?折角の再会がこんなで。怪我大丈夫?」

咄嗟にフェイトは怪我が目立っている左手を後ろに隠した。
だが、ところどころ怪我しているのは変わらないので、正直意味がない。

「あ、ううん。こんなの…全然。それより…なのはが……。それに…ランの事も……」

「私も平気。……ラン君の事は…まだ信じられないけど。あのラン君がフェイトちゃんを攻撃するなんて……本当に大丈夫?」

「うん……」

だが、フェイトの表情は晴れない。
おそらくランの事となのはの事を二重で気にしているのだろう。
心配したなのははベッドから立とうとして、よろめいた。

「なのは!?」

気づいたフェイトが受け止める。
それで、なんとか立て直したなのはは苦笑いした。

「はは……。ごめんね、まだちょっとふらふら……」

言ってからなのははフェイトの顔を見て、もう一度先の時に言えなかった事を言う。

「あの時は助けてくれてありがとう、フェイトちゃん。それと、また会えて凄く嬉しいよ。ラン君の事は…信じられないけど、きっと何か訳があるんだと思う。 だから、また今度会った時に聞けばいいよ」

「うん……そうだね」

そして、なのはとフェイトはしばらく2人で抱き合っていた。

























その後、なのはとフェイトはクロノに案内されてある部屋に案内された。
そこは、レイジングハートとバルディッシュが置かれている部屋。
部屋に3人が入ると、そこではユーノが作業をしており、アルフはそれを見学するという形でいた。
そして、3人が入ってきた事に気づいたアルフがパアッと顔を輝かせる。

「なのは、フェイト!」

「ユーノ君、アルフさん!」

それでユーノも気づいたのか、一度作業を中断してなのはに近寄る。
対するなのはも近づいて2人と向き合った。
そこで、ユーノは安心したように頷き、アルフも心配していたのか、その瞳は揺れていた。
なのはは2人にまたちゃんと会えた事に喜びを感じていた。
そんな中、フェイトが自分の愛機が置かれた台座へと近づく。
待機状態で、ひどく傷ついたバルディッシュが目には映っている。

「バルディッシュ……ごめんね。私の力不足で」

「破損状況は?」

「正直、あんまり良くない。今は自動修復をかけてるけど、基礎構造の修復が済んだら一度再起動をかけて部品交換とかしないと」

ユーノの言葉にクロノは残念そうな顔をした。
というか、なのはのレイジングハートはともかく、フェイトのバルディッシュはランがあえて狙って破損させたのだ。
敵になってしまったとはいえ、さすがにフェイト自身を完全に叩き潰す事はなるべく避けたい。
そんなランの心情があの時、フェイトを無力化させる事として選んだのが、武器破壊だった。
だからこそ、フェイトのバルディッシュはあそこまでの損傷を負ってしまった訳である。
もちろん、その事はラン本人しか知りえない事であり、その当人達はその事に気づく事すらなかった。
そして、そのフェイトのバルディッシュを大破させたのが、ランという事を思い出しクロノは呟く。

「しかし、まさか彼が敵に味方し、フェイトを攻撃するとは……」

「それについてはどうなってるんだい?」

クロノの呟きにユーノがそう質問した。
ランも一時とはいえ、民間協力者。
魔法は使えないとはいえ、あれだけの力を持った人間だ。
無対処という事はさすがにないだろうと思ったのだろう。

「それについては、今はわからないとしか……。何を以って彼があいつらに味方するのか、そして彼らの事情を知っているのか、知らないのかは本人しかわから ない。だけど、すぐに調査するつもりで動く。それは間違いないだろう」

「そっか……」

ユーノが気を落としたような声で答える。
無理もない。
彼もランとはそれなりの付き合いだったのだ。
今でも彼が裏切ったという事実を心のどこかで受け入れられずにいるのだろう。

「ねぇ、そういえばさぁ。あの連中の魔法って変じゃなかった?」

すると、アルフが尻尾を振りながら思い出したように言った。
それを聞いてクロノが答えるために口を開く。

「あれは、たぶんベルカ式だ」

「ベルカ式?」

知らないのだろう。
アルフがオウム返しに聞き返した。

「その昔、ミッドと魔法勢力を2分した魔法体系だよ」

そこで、ユーノが解説し、それをクロノが引き継ぐ。

「遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法で優れた術者は“騎士”と呼ばれる」

「騎士……?」

フェイトの言葉にユーノは頷いた。

「最大の特徴はデバイスに組み込まれたカートリッジシステムって呼ばれる武装」

「儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る。危険で物騒な代物だな……」

「なるほどね……」

確かにそれならなのはが敗れたのも、レイジングハートが損傷したのも頷ける。
ランに至っては、前から実力の程は伺い知っていたが、それ並の威力を持つ攻撃を持っているという事だった。

「……いっぱい頑張ってくれてありがとね、レイジングハート。今はゆっくり休んでてね」

台座の上で自己修復をかけているレイジングハートを見つめながら、なのははそうレイジングハートに労いの言葉をかけた。
すると、そこでクロノが2人に声をかけた。

「フェイト、そろそろ面接の時間だ」

「うん」

「なのは、君もちょっといいか?」

「え……?」

面接に心当たりのないなのはは首を傾げたが、別に断る理由もないので、クロノとフェイトに付いて行った。

























広い応接室に1人の老人が窓の外を眺めて立っている。
青い管理局の制服を身に付けている。
時空管理局顧問官ギル・グレアム。
それが彼の肩書きであり、名前だった。
白髪が混じった髪をオールバックにし、もみあげと顎髭が繋がり、口ひげまで蓄えたその風貌はどこか貫禄のある威厳を窺わせる。
すると、応接室の扉が開いた。
入ってきたのは、クロノと連れてこられたフェイトとなのは。
面接はこの人とだった。

「失礼します」

「クロノ、久しぶりだな」

「ご無沙汰しています」

挨拶を済ませると、グレアムはクロノ達を座るように手で促す。
既にテーブルの上には人数分の紅茶が用意されていた。
窓側の方の席にグレアムが座り、その向かい側にフェイトとなのはが座る。
クロノは両方の間を取り持つように両者の間に立っている。
というか、フェイトは緊張しているのか、体が強張っているように見えた。
それを察したのか、グレアムは柔らかい口調で話し始める。

「保護観察といっても、まあ形だけだよ。リンディ提督から先の事件や君の人柄についても聞かされたしね。とても優しい子だと」

「あ、ありがとうございます……」

グレアムの言葉にフェイトは顔をわずかに赤くしてそう応えた。
そして、その後グレアムは机に置かれていたファイルに目を通し始めた。
どうやらフェイトだけでなく、なのはの面接も兼ねていたようである。
少しして、グレアムが口を開いた。

「なのは君は日本人なんだね。懐かしいな、日本の風景は」

グレアムが思い出を語るように言った。
その言葉でなのはが驚いたように「えっ」と声を挙げる。

「私も君と同じ世界の出身だよ。後、ここに書かれているランという少年も同じだね。ちなみに私はイギリス人だ」

その言葉で、なのはの顔が曇った。
フェイトも同様である。
どうやらランの名前が出た事を気にしているらしい。
それをグレアムは察したのかしていないのか、再びファイルに目を通しながら話を続ける。

「それで……そのランという少年だが、彼は君達の?」

「はい……友達です」

なのはがグレアムの質問にそう答え、フェイトも頷く。
そこでグレアムが顎に手を当てた。

「ふむ……。だが、彼は君達ではなく敵に味方している」

「はい。どういった理由で味方しているのかはわかりませんが、少なくともフェイトに危害を加えたのは事実です」

「…………」

クロノの言葉に、なのはとフェイトはさらに表情を曇らせ、グレアムは考えるようにファイルを見つめている。
そして、少ししてグレアムが再び口を開いた。

「私も詳しい事は聞かされていないが、リンディ提督からは話は聞かされていた。魔法を行使できないにも関わらず、とてつもない力を持った少年だと」

「はい。現に彼は魔法を一切使わず、僕やフェイトを圧倒しました」

「あ、あの……」

と、そこでなのはがおずおずと手を挙げた。
グレアムはそこでなのはに視線を移す。

「何だい?なのは君」

「……ラン君はどうなるんですか?」

その問いはフェイトもしたかったようで、興味を示した。
目が真剣そのものである。
グレアムは少し考えると、答え始める。

「彼がどういった事情で協力しているのかは知らないが、少なくともこれまでの魔導士襲撃事件と各次元世界で起きている魔法生物に関連する事件に関わってい るのは間違いない。おそらく逮捕、拘束という形になるだろうね」

「そう…ですか……」

想定したとおりの返事になのはとフェイトは俯く。
だが、グレアムはそこで表情を柔らかいものに変えた。

「しかし、彼もまだ少年だ。もしかすると、利用されているという事もあるかもしれない。そういった何か訳アリの場合なら私がなんとかしてみよう。君達も友 達が牢に入れられるのは耐えられないだろう?」

それで、なのは達の顔が上がった。
少しばかりできた希望に明るさが戻っている。

「は、はい!あの…その時は、よろしくお願いします!」

そう言ってなのはは深く礼をした。
フェイトも同じように頭を下げる。
それをグレアムは笑顔で宥めると、持っていたファイルをテーブルの上に置いた。
そして、フェイトに目を向ける。

「フェイト君、君はなのは君の友達なんだね」

「は、はい」

フェイトは頷いた。

「約束してほしい事は1つ。友達や信頼してくれる人の事は決して裏切ってはいけない」

そこには先ほどまでの穏やかな表情はなく、厳格な雰囲気で話すグレアム。
これぞ紛れもなく歴戦の勇士というに相応しい威厳だろう。
グレアムは続ける。

「どんな形にしろ、裏切ってしまえば彼のように君達を悲しませるような事になる。だから、それだけはしないでほしい。もし、それができるなら私は君の行動 について何も制限しない事を約束する。…できるかね?」

「はい。必ず」

フェイトは即答で、その言葉には確かな強い意志が宿っていた。

「うん、いい返事だ」

それでグレアムも笑顔になり、満足したようだった。
こうして面接は終わり、なのはとフェイトは応接室を出たのであった。
そして、クロノは部屋を出る際、グレアムに闇の書の捜索担当になった事を告げ、少し話をすると部屋を出て行ったのだった。



























一方、同時刻八神家。
そこで、蒐集から帰宅した俺とヴォルケンズははやてと一緒にテレビを見ていた。
ただ、シグナムは新聞を読んでおり、シャマルはお風呂の準備をしているのでここにはいない。
しばらく俺達はテレビを楽しんでいたが、シャマルが声をかけてきた。

「はやてちゃん、お風呂の支度できましたよ」

「うん、ありがとう」

「ヴィータちゃんも一緒に入っちゃいなさいね」

「は〜い」

それぞれシャマルの言葉に応える。
すると、俺にも声がかかってくる。

「ラン君はどうする?」

少し考えると、シャマルの方に振り向いて応える。

「俺ははやて達の後でいいよ。先に入ってな」

そう言うと、隣にいたはやてが口を挟んでくる。

「そんな事言わんでも、うちらと一緒に入ったらええやん」

その言葉に俺は噴いた。
飲み物を飲んでいれば、間違いなく噴出していただろう。

「ぶっ!……で、できるか!俺とはやては男子と女子なんだぞ!?加えてシャマルやヴィータがいる中で入れるか!」

すると、はやては急に涙目になってしまう。

「そんなにうちと入るの嫌なん……?前は一緒に入ってくれてたのに……(泣)」

と上目遣いで訴えられてしまうと俺の心に罪悪感が湧いてくる。
至極最もな正論を言ったはずなのに。
というか、この世界の少女には羞恥心というものがないんだろうか。

「い、いや……そういう訳じゃなくて…だな。その……」

はやてから顔をそらして、俺はどう言ったらいいか悩む。

だって、あんな上目遣いの涙目で迫られたら断るに断れなくなってしまうだろ!
それが無意識でなら尚更だ!

と、思いっきり困っていた俺を見ていたシグナムがしばらくして助け舟を出してくれた。

「その辺りでいいでしょう、主。キタガワも困っています。それに、キタガワの言う事も最も。また今度にしてはいかがでしょうか?」

「まあ……シグナムがそう言うなら……。じゃあ、ラン君。また今度一緒に入ってな」

と言って、はやてはシャマルに抱っこされていくと、ヴィータと共に浴室に入って行った。
だが……。

「今度入る事は決定なのね……」

と、俺は愕然とするしかなかった。
思いっきり床に手をついてorzのポーズである。

シグナム、フォローしてくれたのは嬉しいんだが、するならするで最後までちゃんとしてくれ……。

そして、しばらくすると、シグナムが俺に声をかけてきた。

「そういえば、キタガワ。おまえ、怪我とかはないのか?」

「あ?別にねえけど」

「そうか……。なら、いいんだ」

どうやら俺の心配をしてくれたらしい。

つーか、心配するなら蒐集直後にしてもらいたかったね。

「ま、俺は頑丈だからそこは心配しなくていい。今のあいつらならまず俺の装甲に攻撃を届かせる事すら難しいだろうからな」

「フッ……頼もしい事だ」

俺はシグナムが笑うのを見て、笑った。
この日常もやはり悪くない。
そう俺は思い、またいつものように夜が更けていった。























その後、俺たちは先日の蒐集について、話し合いを持つ事にした。
無論内容は何故ヴィータが約束を破ったのか。
予想がつくとはいえ、これはきちんと話しておく必要があると思ったからだ。
ちなみにはやては既に寝かせてあり、時間的にも今は深夜だ。

「さて、説明してもらおうか。ヴィータ。なんで約束を破ったんだ?」

「……それは」

対するヴィータは顔を伏せたままで、言い出す様子はなかった。
俺はため息をつくと、口を開く。

「俺は別に俺とした約束をおまえが破った事に対して怒ってる訳じゃないんだ」

「え?」

ヴィータが意外そうな表情をして顔を上げた。
どうやら俺が怒っているのは、単純に俺とした約束をヴィータ自身が破った事に対してだと思っていたらしい。
だが、俺としては別にそれは事態をできるだけ明るみになるのを遅らせるためであって、それほど重要な意味を成さない。
ただ、俺のした約束にはその前にヴィータがはやてとした大事な約束があった。

「人に迷惑をかけない。俺はおまえがはやてとした約束を破った事に対して怒っているんだ」

「!」

俺の言葉でヴィータも思い出したようだ。
はやてが一番念を押していた事だ。
俺が怒っているのは、その事だった。

「だ、だって……早くしないと…はやてが……」

俺はため息を再度つく。

「それで、おまえがはやてとの信頼を自分で潰してどうする……。いいか、はやてを救うという志は結構だ。だが、だからと言って、はやてとの約束を破ってい いという理由にはならない」

すると、ここでシグナムが止めにきた。

「キタガワ、もうその辺にしておけ。確かにおまえの言う事は正しい。だが、他人に構っていられる状況ではないという事くらい、わかってくれ」

だが、俺はシグナムの言い分を許さなかった。

「俺には、その言い分こそはやてとの約束を破るための言い訳にしか聞こえないな」

「っ!!」

俺の鋭い視線と言葉に当てられたシグナムがたじろぐ。
だが、俺はここでまたため息をつく。
今日は本当にため息をつくのが多い。

「だが、既にやるとこまでやってしまったからな……。これに関しては俺も同罪。だから、今回の事はこれ以上は追及しないでおく」

その言葉でヴォルケンズがほっとした。
俺はその様子に苦笑せざるを得なかったかったが、俺もあの状況では後戻りできないと判断し徹底的にまでやったのだからこれ以上追及する資格はないのだ。
ただ、念押しはしておく事にする。

「ただし、今後はちゃんとはやてとした約束はちゃんと守れよ。主に従う騎士がころころと約束を破っては話にならない」

「ああ、心得ている」

シグナムが代表して答えたので、俺はこの話は一旦終わりにする事にする。

「……話を変えるが、それでやっかいな奴らに目を付けられたな」

「時空管理局だな」

「ああ」

「そういえば、ラン君は魔法に関わる機会があったって言ってたけど、もしかして……」

「……ま、お察しの通りだな。俺は管理局と一応接点はある」

「「「「!」」」」

その言葉で一気に空気が張り詰めた。
俺を敵かと疑い始めているんだろう。
だが、それは見当違いだ。

「そう構えるな。一応って言っただろ。だいたい俺自身管理局ははっきり言って嫌いなんだ。接点があったのは、友人が魔法使いになってしまってそれを手伝っ ている内に接触して、一時協力した。それだけだ」

俺の言葉で少し空気が緩んだ。

「ではおまえは管理局の差し金ではないのだな?」

「当然だ。つーか、そんな事で利用されるならむしろあっちを利用してる」

その言葉にシグナムは表情を引きつらせた。
俺の言葉が冗談に聞こえないからだろう。
それぐらいの付き合いはしているのだ。
と、そこでシャマルが何かに気づいた様子を見せた。

「待って。それじゃあ、友人の魔法使いって……!」

「そうだ。おまえらが蒐集した女の子。まあ、高町なのはって言うんだが、あいつがきっかけ」

「「「「!!」」」」

それでさらに驚くヴォルケンズ。
まあ、無理もないか。
俺の友人を襲ったのだから。

「その……すまねえ!!」

「?」

すると、ヴィータが全力で謝ってきた。
何故謝るのか俺にはわからない。

「おまえの友人だって知らなくて……蒐集までしちまって……!」

ああ、そういう事か。
要するにヴィータは俺の友人を襲ってそのまま蒐集した事に対して謝っているらしい。
さらに言うならば、それで俺が怒っていると誤解しているのかもしれない。

「別にいい。蒐集に協力した時点でいつか敵対する事は目に見えてたからな。それに、俺は詳しい事を話していなかったし、ヴィータも知らなかったんだ。その 事に関しては謝る必要はねえよ」

「……でも」

「いいから。その事はもう言うな。俺がいいって言ってるんだ。気にするな」

「……うん、わかった」

「だが、おまえは友人と敵対して辛くないのか?我々に協力してくれるのは心強いが」

今度はシグナムが聞いてきた。
まあ、その手の質問も当然だろう。
俺は本心のまま答える。

「……辛くないと言ったら嘘になるだろうな。あいつとは友達だし、相手にしてた金髪の少女、フェイトって言うんだが、そいつも友達だからな。ただ、俺は自 分の信念を曲げるくらいなら敵対する事を選ぶ」

「それでおまえがより辛くなるとしてもか?」

俺は頷いた。

「ああ。俺は自分の信念は曲げない。……それだけはしてはいけないんだ」

「……強いのだな、おまえは」

思いつめた表情で言った俺に何かを感じたのかシグナムがそう零した。
そんなシグナムの言葉に俺は苦笑した。

「強くなんかねえよ。ここまで中身がボロカスの人間はそうはいないさ。ただ、俺の生きてきた世界は例え昨日は友達でも、次の日は敵だったという事が多かっ ただけで、俺がそれに慣れてしまっただけさ」

「……そうか」

シグナムが少々悲しそうに応えた。
ま、これ以上この話を続ける意味はないだろう。
ここは俺自身の問題だ。
別にヴォルケンズが気にかける必要はない。

「とにかく、今後は警戒を強めるしかないだろうな。俺も学校はしばらく休みだな」

「いいの?」

シャマルが心配して聞いてきたが、俺は頷いた。

「ああ。だいたいその友人が同じクラスにいるんだ。気まずい以前に、俺がおまえらの関係者だって気づいている以上必ず事情を聞きにくるか、捕らえに来る。 それはさすがにまずいだろ」

「そうね……」

「とにかくだ。今後の蒐集は警戒を強めて行う。それでいいな?」

「ああ」

「あたしもそれでいいぜ」

「そうね」

「心得ている」

ヴォルケンズの返事を聞き、承諾を得たところで、終わりにする事にする。

「じゃあ、話は以上で終わり。明日からは一層気をつけていこう」

こうして、話し合いは終わった。
俺の裏切りという事実に管理局やなのは達がどう動いてくるか。
それを気にしつつ、俺は部屋に戻って眠りについた。























一方、管理局側のリンディ達一行はアースラが定期メンテナンスで使えないため、なのはの家の近所のマンションに本部を置き、そこに引っ越してきていた。
そこで、フェイトは初めてアリサとすずかと対面。
その後翠屋で、リンディから聖祥の学生服を受け取っていた。
そして、マンションのモニターがたくさんある部屋でエイミィが整理をしていると、不意にモニターに光が灯り始めた。

「ん?」

それと同時にいくつかのデータらしきものが表示される。
すぐに誰からかの通信だと判断したエイミィは機器を操作して、通信回線を開く。

「はいはい、エイミィですけど?」

通信相手としてモニターに表示されたのは、眼鏡をかけた、いかにも科学者という風の女性だった。

『あ、エイミィ先輩。本局メンテナンススタッフのマリーです』

「あぁ、何?どうしたの?」

エイミィは自分の後輩であるマリーが通信相手だとわかると、くだけた口調で用件を問う。
実は彼女にはレイジングハートとバルディッシュの修理をまかせている。
それに関する事かもしれないと思ったのだ。

『先輩から預かっているインテリジェントデバイスなんですけど、何だか変なんです』

その言葉にエイミィはやはりとも思ったが、その変という言葉に何かあったのかと思い、思わず「え?」と返してしまった。

『部品交換と修理は終わったんですけど、エラーコードが消えなくって……』

「それって何系のエラーなの?」

エラーによっても種類はある。
部品が足りないまたは合わない、プログラムが違うなど系統によって対応するものが違うのだ。

『必要な部品が足りないって……。今データの一覧を』

そうして、エイミィの元にエラーに関するデータの一覧が送られてきた。

「あ、来た来た」

しかし、データに目を通したエイミィはすぐに驚く事になる。

「え?足りない部品って…これ?」

『ええ。これって何かの間違いですよね?』

そのデータの一覧にはこう書かれていた。

『エラーコードE203。必要な部品が不足しています。エラー解決のための部品、“CVK-792”を含むシステムを組み込んでください』

そこで、マリーが口を開く。

『二機ともこのメッセージのまま全然コマンドを受け付けないんです。それで困っちゃって……』

そして、聞いているエイミィはというと、その言葉を聞きながらレイジングハートとバルディッシュの意思を内心疑った。

(レイジングハート、バルディッシュ…本気なの?“CVK-792”…ベルカ式カートリッジシステム……!)

そう、厳密に言えば部品は足りている。
しかし、それでは足りないとレイジングハート、バルディッシュが判断したのだ。
自分達の持ち主の力に応えるために、守るために。
そして、自らが進化するために。
データに表示されている『お願いします』という文章、それこそが本来ではありえない、意思を持つ二つの武器が示した自分達の進化を促すメッセージだった。
今ここに、ヴォルケンリッターとランに対抗せんがための、1つの進化が始まろうとしている。





















あとがき


シルフェニアももう7周年!おめでとうございます!
これからもずっと応援していますので、管理人である黒い鳩さん、サイトに投稿している作家の皆さん頑張ってください。
そんな私はというと……皆さんお久しぶりです。
9月以来、つまり3ヵ月ぶりになるかと思います。
で、何をしていたかというと……大学の課題とか就活とかで大変でした。
もちろん今でもまだ大変なんですけど。
なので、早ければ半年、遅ければ1年ほど投稿が遅々とした物になると思います。
今までも充分遅々としたものだったんですけど(苦笑)
ですので、読者の皆さんは事情を理解した上で長い目で見て頂けるとありがたいです。

で、いつもなら内容の振り返りに入るところなのですが、あいにく書いてから放置の状態がずっと続いていたため、書くに書けない状況なので割愛します。
実は言うと、この作品既に30話辺りまで書き溜めている状況でして、既にそこから2ヶ月以上経っているため、私としてもどう思って書いたのか若干曖昧に なってしまっている訳なんです。
……え?なら早く投稿しろって?
暇があればいいんですけどね(苦笑)
先の通り投稿する暇すらないのが現状なので(汗)
という訳で今回は私の近況と活動状況の報告で、あとがきとしたいと思います。

では、皆さん寒い冬ですが、風邪をひかないように気をつけてください。
また投稿する機会にお会いしましょう。



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