ナルト君と一緒……

 私達は今、里の中にある第23演習場っていう場所に来ているんだけど……私の前には…ずっと憧れだったナルト君がいる!

「ヒナタぁ、この奥に巻物があるか調べて欲しいってばよ」

「ふぁっ、ふぁい!!い、今見てみるねっ」

 ふぁわわ…び、びっくりしたぁ……ナルト君の事を考えてたら、本人に話しかけられるんだもん…。へ、変な子って思われてないかな……。

 何で今私達が二人だけで(恥ずかしいっ)いるかっていうと、この演習が午後の授業を全部使ってこの森の中にある巻物を組になった二人で、取って戻って来るっていうものだったからなんだ。

 でも、ただ巻物を取って来るだけじゃないみたいで中庭で組を作った時に、イルカ先生に渡された番号付きの札と同じ番号の巻物を取ってこないと駄目っていうもので、いつもの演習より難しいものだったんだ。

 そして今私とナルト君は、自分達の6番って番号が書かれてある巻物を探している途中なんだ。

 あ、あとは…今日は私にとって今までで一番びっくりして、一番嬉しい日になっちゃったんだ。友達がいない私は中庭で一人イルカ先生を待っていたら、ナルト君が私に手を振ってくれたんだ。…いつも見ていたようなやんちゃな笑顔じゃなくて、優しくて、暖かい大人っぽい笑顔を浮かべてた……って何考えてるんだろう私っ!

≪白眼!≫

 日向一族。私の家に伝わる瞳術で、第二胸骨の真後ろ以外のほぼ全方向を見渡す視野、数百メートル先を見通す視力、物体の透視や幻術や瞳術による洗脳を見破る力があるんだって。この前お父様が言ってたから、本当の事だと思う……写輪眼っていう瞳術と同じようにチャクラの性質を色で見分けるだけじゃなくて個人レベルのチャクラの性質?さえも色の識別で見分ける事が可能なんだって。あと、体内でチャクラの流れる場所、経絡系?も見ることができるみたい。

 私には、遠くが良く見えて不思議な眼ってくらいしかまだ分からないけど、今はこの目があって本当に良かったって思う。だって……ナルト君の役に立てるんだもんっ!

「えっと…うん、木の枝に吊るされてるみたい。でも私達の番号かは…」

「巻物が有るってだけでも分かったんだから凄いってばよ。だから、そんなに落ち込むなってヒナタ!」

「う、うん。ありがとうナルト君」

「感謝すんのは俺の方だ。ヒナタと組めたからこんな簡単に巻物を見つけられたし、俺だけだったら絶対時間内に見つけられなかったと思う。ほら、俺って落ちこぼれだしな!」

「え、い、いや、そんなこと……」

 ナルト君が一緒だからなんて言えないよぉっ!!いつもの私は臆病で、実技の時も練習みたいに上手くいかないし、皆の脚を引っ張ってばっかり……今日はナルト君が傍にいてくれて、私を頼りにしてくれたから……だから頑張れるんだよナルト君……。それに、自分をそんな風に悪く言わないで?ナルト君が頑張ってるって事は私が知ってるから…。

 そんな事を考えて、ちらっと横にいるナルト君を見てみると私が巻物があるって言った森の奥を厳しい目で見ていた。ど、どうしたんだろ…こんなナルト君見たことない…。

「ナ、ナルト君?」

「ん?どうしたんだヒナタ?」

「な、なな何でもない、よ」

「アハハ。ヒナタ、お前ってば面白い奴だな」

 私の方に振り向いたナルト君は、さっき私が見たのが見間違いかっていうくらい、まぶしい笑顔を浮かべてた。あうう…ナルト君の顔がこんなに近いよぉ………。

 でも…お、面白いって……私、絶対変な子って思われたぁああああ!?!?

▼ ▼ ▼ ▼

 俺が森の奥を見ていたらヒナタがオドオドした声で話しかけてきた。さっきまで普通に話してたと思ったのに、俺ってヒナタに怖がられてるのか?いやいやいや、そんな筈ないって。俺はドジで落ちこぼれって設定をきちんと守っているし、現にここまで来る時に…。

『落ちこぼれが日向のお姫様と一緒?はっ、ふざけんなっての』

『ヒナタさん可哀想』

『俺がヒナタちゃんと一緒だったら守ってやんのによ』

『でも、日向さんとナルトってある意味お似合いかもよ』

『どうして?』

『ほら、あの子っていつも演習とかになると…』

『ああ〜確かにねぇ』

 等々、陰口ではない悪口が聞こえてたからな。あいつら…俺が実力隠してるって事直ぐにでもバラしてやろうかっ!!ってか俺の事だけじゃなく、ヒナタの事まで馬鹿にしやがった。…後でヒナタの事言ってた奴は絞めよう。それに、あいつらの言葉じゃないけどヒナタと組めて嬉しかったし、お似合いってのは褒め言葉にしか聞こえねぇしな。まぁ、負け犬の遠吠えって事でよしとくか…。

 って、今はそれどころじゃなかったな。

『ナルト、この気配は…』

 ん?九尾も気付いたか。こりゃ、木ノ葉の里の忍じゃないな。数は……8人か。というか、木ノ葉の暗部は何やってんだよ!職務怠慢だってのっ!

『ナルト気を付けるんだってばね』

『クシナ、言葉づかい。ナルト、お前は強いけど気を緩めちゃ駄目だ。今は実力を隠さなきゃならないんだろ?』

 うん。父さん、母さん。俺、気を付けるよ。九尾も危なくなったら助けてくれな。

『フン、お前に死なれてはわしも死んでしまうから仕方なく、このわしの力で助けてやってもいいぞ…』

 ハハハ、ほんと素直じゃないってばよ。

「ヒナタ、それじゃ行ってみっか」

「うん、分かった」

 もし、俺達に攻撃をしてきたらその時は……ヒナタの事は絶対に守ってやるってばよっ!!

▼ ▼ ▼ ▼

「ねぇ、シカマルちゃんと聞いてる?何で私じゃなくて、ヒナタなのよっ!あの子絶対にナルトの事狙ってるわっ!他の子達はうちはを狙ってるみたいだけど、ヒナタだけは私みたいにナルトを好きみたい…。くそぉ!ナルトがカッコいいって事に気付いてるのは私だけだと思ってたのにっ!!」

「へぇへぇ、そうだな」

 めんどくせぇ……いのと一緒になると、こうなるから嫌なんだよ…。俺はなりたくねぇって念を送ってたってのに、何だっていのと一緒にすんだよイルカ先生…。いのだってナルトと一緒になりたいって思ってたみたいだし、はぁ〜〜まじめんどくせぇ…。チョウジの野郎は、知らねぇ女子と一緒になってたし……。はぁ…だりぃ〜。

「あぁもうっ!こうなったらナルトを探すわよシカマルっ!」

「…あのよぉ、いの。今あいつを探して何になんだよ?まぁ、お前がナルトをヒナタに取られてしまうってハラハラしてんのは分かるけどよ…」

「そ、そんな事思ってないわよ!私はただあいつらが巻物を取れなかったら可哀想だと思って、手伝ってやろうかなぁって思っただけよ!!」

「ああ、はいはい。まぁそれも良いと思うが、ちょっとは考えてみろって。ナルト達より早く巻物を見付けて、演習場の前で待ってればどうなる?」

「???」

「はぁ…ナルトには褒められるし、ヒナタより一歩も二歩もリード出来る。それにな…ナルトに頭撫でられるの小さい時から好きだったろお前?」

「なななッ!……何であんたがその事知ってんのよっ!」

 いのの顔がトマトみてぇに真っ赤になった。これは、もう少し踏み込んだ事言ったら殴られる合図だ。いのを無視して歩き出す。…てかよ、そんなの俺だけじゃなくて皆知ってるっての。知らねぇのなんてナルト本人くらいだ。

「はぁ…めんどくせぇ」

 でも、あいつらより早く巻物取ってくんのも大変なんだよなぁ…。何たってあっちには日向のお姫様がいるんだからよ。…ナルト、これ終わったらなんか奢れよ…勿論チョウジにな。

「し、シカマル、あんた顔怖いわよ……」

「………」

▼ ▼ ▼ ▼

 シカマル達がそんな話をしているとは露も知らずに、俺とヒナタは巻物が吊るしてある木の前へと来ていた。

「こ、ここまで来るのに他の子達に会わなかったね」

「そうだな。ラッキーだってばよっ」

 他の奴らと会わなかったのは、ここら一帯に人避けの幻術が掛けてあるからだ。それに、こいつら……。

「な、ナルト君。私があれ取ってくるね」
(ナルト君、何か考えてる…ここは私が取ってきて上げた方がいいよね?)

「あ、待てヒナタ。まだっ」

「だ、大丈夫だよ。ナルト君はそこで待っていて」

 ヒナタが俺の制止を振り切り、巻物に手を伸ばした時だった。

「ククク…流石木ノ葉の里。平和ボケで暗部も使えなくなったか?」

「な、ナルト君っ!」

 ヒナタが一人の忍びに捕まってしまった。っち、あいつらの言葉に頷きたくはねぇけど本当のことだから頷くしかねぇ…じいさんに忠告でもしとくか?

「ヒナタを離せってばよっ」

 俺の言葉に笑いを洩らす忍び。額当てから察するに雲隠れの里の忍びだな。それもおそらく上忍。んで、他の隠れてる7人が中忍ってとこか……。

「日向の血継限界、白眼。ククク……これが6年前に失敗した小娘だとはな」

 俺達が子供だからっていくらなんでも油断しすぎじゃね?こいつ。ってか、こんな事件原作に合ったか?ヒナタが誘拐されかけたのって、こいつが言ってるみたいに6年前だった筈…その事件の時にヒザシとヒアシがどうのこうのあった様な気がするが、今は関係ない事だな。

「お前らヒナタをどうするつもりだっ!」

 さっきの言葉からして、ヒナタを誘拐して白眼を自分達の里のモノにするってのは予想出来るけど、一応俺って落ちこぼれ設定なんだよなぁ……。って、そんな事言ってる場合じゃないな。

「我らの狙いは白眼のみ。お前には悪いがここで死んでもらうぞ…」

「に、逃げてナルト君っ。わ、私は大丈夫だからっ」

 ヒナタ…やっぱりお前って優しくて、心が強いよな。中忍試験の時もネジに最後まで挑んでいったし、二期になってからも自分が死ぬって時にナルトに告白するし。ホント、いい女だよお前は。

「少し静かにしていてもらおうか」

 そう言ってヒナタの首に手刀を当て、気絶させた霧隠れの里の上忍。

「これで、静かになった。それじゃあ……不運を呪って死ねガキっ!」

 あいつの言葉で1人の中忍が俺の後ろに降り立った。クナイで首と体を切り離そうって事だろうが、俺にそれは甘いって…。丁度ヒナタを気絶させてくれたみたいだしッ!

 中忍が俺の首にクナイを刺した瞬間、そいつの体は下半身だけを残して後ろに倒れた。それを見ていたヒナタを抱えている上忍と隠れている6人の中忍の纏う気配が変わった。俺はそれに気付いて笑みを浮かべる。ハハハ、こんなに上手くいくとは思わなかったなぁ。

 俺の笑いに気付いたのか、俺が隠れている所(まぁ隠れていないけどな。木の枝に立ってただけだし)に、手裏剣とクナイを投げてきた。お、そんな数投げちゃっていいのか?忍具って確か高い筈だし、回収すんのもめんどくさいぞ?と、そんな場違いな事を考えながら瞬身の術でそれを回避し、さっきまで「俺」が立っていた場所に瞬身の術で移動した。

「……お前、一体何をした」

「ん?何って影分身に起爆札を持たせておいて、そこに倒れてる奴が影分身に何かした瞬間起爆するようにしただけだけど?てかさぁ、こんな簡単な罠に引っ掛かるなんて、こいつ本当に中忍だったの?」

 上半身が吹き飛んだ人だったモノに人差し指を向ける。ガキだと思って油断したのが悪いんだよって意味ともう馬鹿な真似はしない方がいいぞって意味の二つを込めて。

「………」

 やっと、俺を只のガキって思わなくなったみたいだな。…だけどさ。

「それじゃあ、まだまだ甘いっておじさん達」

 俺を囲うように出てきた中忍6人を日向の体術、「回天」を独自に改良した「斬転」によって切り刻む。

 手のひらにチャクラを留め、体を回転し360度の防御を可能にした日向宗家秘伝の「回天」。その「回天」を俺の「斬転」は手のひらに留めるチャクラを針のように伸ばし、近くにある物体を回転する事で斬り刻むことを目的とした攻撃技。

「ふぅ…」

 斬転を止めて周りを見てみると体を切り刻まれた中忍6人の姿がある。この技思いつきで作ったけど、使えねぇな…。これやってる間動けねぇし、近寄ってくるのをただ待つとか…でも、下忍の内は使えるか?うん。もう少し改良してから使うようにしよう。

「お前…いったい何者だ?こんなガキがいるとは、報告にはなかったぞっ!」

「俺?俺は忍者アカデミーの落ちこぼれ忍者だってばよ」

 っくぅ〜〜〜〜これ一度言ってみたかったんだよなぁ。目の前にいる雲隠れの上忍ってば目大きくしてるし。

「お前が落ちこぼれなら、大抵の奴は忍者を辞めなければならないな……」

 ま、そうだろうね。父さんと母さん、それから九尾っていう優秀な先生達に修行してもらったんだ。強くならなきゃ嘘でしょ。

「ヒナタを返してくれるなら、おじさんの事は見逃してあげてもいいけど…どうする?」

「フンッ、敵を見逃すなどお前がする訳がない。俺がこのガキを離した瞬間俺を殺しにくる、お前の眼がそう言っているからな」

 ありゃりゃ、気付かれてたかぁ。はぁ〜めんどくさいな。殺気の込め方ちゃんと学んでおこっと。

「じゃあ、どうすんの?俺ってばその子助けたいんだよね」

「…お前、俺の里に来ないか?お前程の腕があればすぐに上忍になれる。それに、このガキの事も助けてやる。俺が言えば上の奴らも言う事を聞くからな」

 取引?引き抜き?この世界にもあるんだなぁ……でもさぁ、俺ってばこの里出たくねぇんだよね。例えいじめられても、殴られても、無視されても……父さんと母さんがいるし、大事な友達もいるからな。

「俺は里抜けしないよ。それからヒナタは勝手に助けるから別にいいってばよ」

「そうか……ならば、このガキを殺して逃げるまでだっ!」

 いやいや、そんな事俺がさせる訳ないじゃん。ヒナタの首にクナイを振り下ろそうとする上忍に手裏剣を三枚程投げつけてそれを阻む。俺の投げた手裏剣を手に持つクナイで防いだ上忍は、ヒナタを投げ飛ばした。

「ヒナタっ!」

 ヒナタを空中で捕まえて地面に降りて体を確認してみると、ヒナタの白い体に紫の斑点が浮かび上がっているのに気付いた。

「これは……お前っ!!!」

「任務を達成出来ないのならば、その体に用はない。そして、無事に帰してやるほど我々雲隠れの忍びは甘くないという事だ」

 奴の言葉を聞く傍ら、ヒナタの状態を見る。荒い息、斑点、滝のような汗……こいつはシタムラサキかっ!

「お前ぇあの時にっ!」

 ヒナタを気絶させた時に針で刺していたんだ!

「ククク…シタムラサキの毒だ。こいつは遅行性だが、斑点が体中を覆ったら……分かるだろお前なら?」

「………」

 くそっ!!こいつらに気づいた時に殺していればこんな事には……早く解毒しないとヒナタがヤバいっ!!

「俺は悪いが退かせてもらう。お前はそのガキが死に行く様を見ているんだな。ククク……ハハハハッ」

 瞬身の術で消える上忍。あいつは絶対許さねぇ……ッ!

≪影分身の術!≫

 三体の影分身を瞬時に作り、あいつを殺してくるように言ってから俺はヒナタを見る。

「ヒナタ、絶対助けるからなっ!」

≪飛雷神の術!≫

 俺とヒナタはその場から消えるように移動した。同時に、幻術と結界を消しておいたので、この事件が火影のじいさんが知るのも時間の問題だろう。てか、後片付けくらい暗部にやらせてやるっ!!

▼ ▼ ▼ ▼

 うぅ…眩しい……。目蓋の上からの光が強くて私は目を覚ました。そして、最初に目に入ってきたのは白い天井。

「ここは……どこ?」

 寝ぼけた目を擦りながら上半身を起こし、ここがどこかを確認していると、私の寝ていたベットの上に伏せる形で寝ている人が目に入った。白い部屋に目立つ金色の髪、山吹色の服……そこまで考えて私はやっと覚醒した。

「ナルト君!?」

 そう。いつも見ていたから見間違える訳がない。何でナルト君が私の横に?でもナルト君も寝てる?私もさっきまで寝てたよね?……ッ!?わ、わわわ、わわわわッッ………。

 考えれば考えるだけ頭が、顔が、体が熱くなるけど考えるのをやめられない。だって、ナルト君がこんな近くで寝てるんだよっ!?夢だよっこれは夢だよっ!でも覚めて欲しくない……って何考えてるの私!?

 私がそんな風に一人でパニックになっていると、金色の頭がゆっくりと動き、体を伸ばしはじめた。

「ッ!?」

 それに、びっくりしてそれまで考えていた事が頭の中で爆発したようで、真っ白になってしまう。

「ふぁあぁ…お、ヒナタ目ぇ覚めたみたいだな」

 コクコク!

 とっさに頭を縦に振る。だって、寝起きの顔見られて恥ずかしいし、こんな近くにナルト君いるし、ナルト君も寝起きだし、それからそれからっ……。

「ヒナタ、顔真っ赤だけどまだ熱あるのか?…ちょっとごめんな」

「ひゃっ!?」

 ナルト君の顔がこんなに近くにっ!?

「う〜ん。…来た時よりは下がってるけど、まだちょっと高いな。ちょっと待ってろってばよ」

 ナルト君の顔が…ナルト君がナルト君が……。

「よし。これおでこに当てとけ。そしたら熱もきっと下がるってばよ」

 冷たくて気持ちいい…私のおでこにナルト君が氷と水の入った袋を当ててくれた。パニックになっていた頭もおかげで治ったみたい。

「あ、ありがとね」

「いいってばよ。それより、ごめんな。俺がいたのにヒナタをこんな事に…」

 私を見て辛そうな顔をするナルト君。私はやっと自分が病院のベットに寝ている事に気づいた。でも、どうして私は…。そうだっ!ナルト君の言葉で思い出した。

 午後の授業がサバイバル演習で、ナルト君と組になったんだ。そして目的の巻物がある所に行って、私が取ろうとしたら……他の里の忍びに私は捕まってしまって、気絶させられて……。ッ!?

「わ、私は大丈夫だよ。ナルト君は大丈夫だったの?怪我とかしてたら私…」

 ナルト君が怪我したんじゃないかって思っただけで、胸が苦しくなって、涙が出そうになった。

「だ、大丈夫だってばよっ。ほら、俺はどこも怪我してないぞ。だから、泣くなってヒナタ」

 ナルト君は慌てたようにいっぱい動いて、私に元気だっていう事を見せて安心させたいんだと思う。でも本当に良かったぁ…ナルト君が何ともなくて。クスクス、でも、そんなにうるさくしたら他の人に迷惑が掛かっちゃうよ。

「ナルト君に怪我がなくて本当に良かった。でも、誰が助けてくれたの?やっぱり先生?それとも、違う人?」

 私がそう言うと、ナルト君は困ったような顔になって頬を掻いた。

「それが、俺にも分からないんだってばよ。俺もあの忍者の仲間に気絶させられて、目を覚ましたらここのベットの上だったから」

 え?

「それじゃあ…」

「そ。だから誰が俺達を助けたか俺も分からない。なんか、ここの先生に聞いたら覆面つけた人が連れてきたって言ってたから、暗部じゃないかと思うんだけどな…」

 暗部の人が助けてくれたんだ…。でも、どうしてかな……。違う気がするのは。

「そうなんだ。なら、誰か分かったらお礼を言いに行こうね」

 もしかしたら、ナルト君が助けてくれたのかな?

「おう!」

 ううん。違うよね、だってナルト君は…。

「ん?どうしたってばよヒナタ」

「ううん。何でもないよ」

「そうか。ならいいってばよ」

 元気いっぱいに笑うナルト君を見ていると、私も元気になってくる。ナルト君は勉強が出来なくても、忍術が出来なくても、絶対にあきらめないでいつも最後は成功させる、かっこいい男の子。それで、それだけでいいんだ。

「あ、でも俺達って昨日の演習の成績どうなんだ?」

 あ……。

「ど、どう、なるのかな……」

 こんな事になってしまったんだし、きっと大丈夫だよね………。でも、ナルト君と一緒なら私は何だって大丈夫な気がする。

「補習だったら俺やばいってばよぉ。イルカ先生許してくれっかなぁ」

 うん、絶対に大丈夫。

▼ ▼ ▼ ▼

 あの後ちょっとだけヒナタと話をしていたら日向家当主、日向ヒアシが病室に入ってきた。それを見て俺はヒナタの病室を逃げるように飛び出した。んで、今はいつも修行してる森に向かってる。

 だってよぉ、こんな子供にあの人ってば白眼で睨んでくるんだぜっ!それも早く出ていけと言わんばかりの表情付きでっ!ヒナタも怯えてたし、もう少しやりようがあんじゃねぇのって俺は思うけどね。実の子供に怯えられる父親ってどうよ。

 ヒナタが可哀想だ。つっても九尾が入ってる俺が、実の子の傍にいたら仕方ないか。日向家、うちは家の両家とも父さんは仲が良かったみたいだけど、他の奈良家、山中家、秋道家、犬塚家、油女家と違って俺を毛嫌いするようにしていたからな。

 まぁ、うちはに至ってはもうサスケ一人だけになってしまったけど。イタチがいるって?イタチはもう木ノ葉にいないから数えない。

 んで、日向は厳しい家だから里の人達というか、九尾に殺された人の親類とか恋人たちの事を考えて俺を避けるようになったんじゃないか、と俺は父さんと母さんから言われた。本当かなぁ?

 ま、俺はどっちでもいいけどな。俺、ヒアシの事嫌いだし。原作を読んでた時はこんなやつ人の親じゃない、とか思ってたし。だってさぁ、ヒナタの事をハナビと比べるし、なにより才能がないって決めつけてるし、ヒナタが弱気な性格になったのって絶対あの人のせいじゃん。

 だから、どっち道あの人に嫌われてようが、俺には関係ない。ヒナタが無事ならそれでいいんだ俺は。

 ん?あの雲隠れの上忍がどうなったかって?それは影分身達がすぐに追いついて、九尾のチャクラで出来た特性螺旋丸を喰らわせてそこらを巻き込んで殺っちまったみたいだ。、いろいろムカついてたし仕方ないよねぇ〜。後で暗部とかが調べたりするんだろうけど、俺がやったっていう証拠は出てこないだろうし、いいって事にする。

 そんな事を考えながら病院を出て歩いていると、向こうからツンツンに立てた黒髪に、全身黒で統一している子供がこっちに向かって歩いてくるのに気づいた。

「サスケ?何でこんな所に…」

 あいつの家はここらじゃない筈なんだけどな。

「………」

「おい、無視すんなよ。一緒のクラスじゃねぇかサスケ」

 俺は基本的に無視をされるのが嫌いだ。里の大人とかに無視されたりすんのは、まぁ、納得してねぇけど納得するしかないから仕方ねぇ。でも同期生、それも同じクラスの奴に無視されるのだけは嫌だ。馬鹿にされるのや、悪口言われるのはムカつくけど俺をちゃんと認識しているからいいんだ。でも、無視ってのは俺がいないように扱われるじゃん?だから嫌なんだ。

「…邪魔だよ、ドベ」

「へ!成績が良いと言う事や態度が違うってか?」

 何でサスケと言い合いしようとしてんだよ俺はっ!

「黙れ、俺に構うな」

「はい、そうですかって、言うわけねぇだろうが!」

 うわぁ…口が勝手に!ってそんな馬鹿な事はなく、子供相手に本気でキレてる俺って…。

「ふん。忠告はしたぞ」

 サスケはそう言うと道に落ちていた小石をリフティングし一度上に蹴り上げると同時に、俺に向かって蹴ってきた。くそ、ドベとか落ちこぼれっていう設定だから避けれねぇっ。こんなに遅く感じんのにッ!

「ぐはっ…」

 ぐはとか……顔面に当たった小石は跳ね返って、俺とサスケの中間の位置くらいに転がる。ってか、顔面狙うとかどんな鬼畜やろうだよっ!普通腹とかその他にもあんだろっ!おぉ怖っ…こいつ原作よりひでぇんじゃねぇか?

「…これで分かったろ。俺に構うな」

 サスケはそう言うと俺の横を通り過ぎ、どこかへ行ってしまった。ふぅ…こんな奴と仲良くなるとか、難しいだろ。

『大丈夫よ。だってあんたは私の息子だもん』

『そうだな。ナルトは頑張れば出来る子だ』

 あははは。サンキュー母さん父さん。

『…傷はわしが癒しておく』

 九尾もありがとな。…さてと、

「修行に行くってばよっ!」

 反動を付けて飛び起きる。すでに、サスケにやられた傷は癒え、俺の顔はいつものもの。そして、向かうは森。もっと強くなって、油断なんてしないようにならないとっ!



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