下忍認定試験から2週間くらい経ったある日、俺達第七班は火影のじいさんの部屋にいた。
「あぁ!私の可愛いトラちゃんっ!死ぬ程心配したのよぉ〜〜」
よぉ〜〜と妙に甲高い声を出しているのは、つい今しがた終わった任務の依頼人であり、火の国の大名の妻、マダム・しじみその人だ。マダムは『迷子』になっていたペットとの再会に『熱い』抱擁を交わしているのだけど…。
ニャアアアアアアアアアアッ!!!
右耳にピンクのリボンを着けた猫『トラ』は、御主人様の抱擁に滝のような涙を流し、悲鳴のような鳴き声を上げた。……ご愁傷様、これも依頼だ。ネコ許してくれ。
「ねぇ、ナルト。あれって……」
「……何も言ってやるな」
サクラ。俺達はあいつの自由を…短い幸せを…奪っちまったんだ。いくら任務で仕方ないとはいえ、な。……目から汗が出て来て困る。
「…ご苦労じゃったな。さて、第七班の次の任務は…」
そんな時、ふと火影のじいさんと目が合い、笑みを浮かべて俺を見てきた。この人は、俺の事を孫の木ノ葉丸と同じ位に可愛がってくれる、とっても優しい人なんだが……如何せん、それが行き過ぎるせいで、今のような場所でもお構い無しに接してくる。俺はその度に苦笑を浮かべてしまうんだけどな。
「ん〜……老中様の子どものお守に、畑仕事の手伝い、忍具の手入れと、それから……」
火影のじいさんの隣にいるイルカ先生が、俺達が次に受けるだろう任務を次々と上げていく。それを聞いてゲンナリとするのは俺だけじゃなく、同じ下忍のサスケとサクラも顔に、またそんなの?といった表情を浮かべる。
任務に文句とか言っちゃ駄目なんだろうけどさ、正直もっとマシな任務を受けたい。……駄目元で聞いてみるか。
「……火影様ぁ、他の任務ってないですか?俺ってば、CとかBの任務したいんですけど……駄目?」
自分の力を試すのって任務の時しかないから、もうちょっと歯応えがある任務がやりたい。頼むよ、じいさん。
じいさんは俺の言葉を聞いて困ったような顔になり、隣のイルカ先生に顔を向けた。今更だけど、イルカ先生ってばアカデミーの先生とココを両立してんだなぁ。中忍の中でも、結構事務的な仕事多いんだよなぁイルカ先生ってば。実力そこまで高くないのかな?
俺がそんな事を考えていたら、イルカ先生が立ち上がった。やべ、気付かれた?
「ナルトッ、お前はまだ新米なんだぞ!ちゃんと下済みを積まなきゃいけないんだッ。サクラ、サスケお前達も聞いておけよ。そもそも下忍の間は……」
イルカ先生の言う事は尤もだと思う。でもさ、上忍の強さを超えちゃった俺がそんな任務やってても、これ以上強くなれるとは思えないんだよ。だから……。
「イルカ先生。俺ってばもっと、もっと強くなりたいんだ。イルカ先生の言いたい事は分かってる。でも、この気持ちに嘘は付けないし、半端な気持ちで言ってる訳じゃないんだ。だから、お願いします!」
イルカ先生の目を真っ直ぐ見て頼み込む。数十秒見つめ合う俺とイルカ先生だったけど、イルカ先生が仕方ない奴だなって感じで苦笑を浮かべて、火影のじいさんに顔を向けた。ごめんイルカ先生、我儘言ってさ。それでも俺さ、強くなりたいんだ。死なせたくない奴らが俺にも出来たし、そいつらを守るために。
「う〜む……」
「……火影様。こいつの思いは真剣なモノです。生半可な気持ちで言ってる訳じゃないですよ。それに、そろそろこいつらにも上の任務を受けさせようと思ってましたし、丁度良いと思いますよ」
カカシぃ〜あんたってば良い人だったんだな。これからは遅刻魔なんてちょっとしか言わないから。
「…カカシがそう言うならば、考えてみようかの」
「ありがとうだってばよ、じいさん!」
「こらっ火影様に失礼でしょっ!」と、言ってくるサクラ。俺はそれを無視して、ニシシッと笑ってじいさんを見る。じいさんは「困った奴じゃ」と言って笑ってる。あはは、ごめんだってばよ、じいさん。
「おっほん。では、お前達にはCランク任務をやって貰う……ある人物の護衛だ」
「護衛?それって結構偉い人だったりするかも!」
「………」
サクラ、何でお前は護衛って聞いて偉い奴だと断定すんだよ。あとサスケ、お前は興味あるのに興味ないふりすんじゃねぇ。目がキョどってるぞ。でも、Cランク任務で護衛の任務って何か引っかかるなぁ。
「そう慌てるでない、今から紹介する。……入って来て貰えますかな?」
んで、じいさんの言葉を聞いて部屋に入って来たのは、片手に酒瓶を持った老人。って、アンタかっ!!
「なんだぁ?超ガキばっかじゃね〜かよ。特に、そこの一番ちっこい超アホ面。お前それ本当に忍者かぁ!?」
「一番ちっこい超アホ面……」
それって誰の……左右にいる下忍二人を見ると、俺が一番小さい事が発覚。んで、あのおっさんが俺を見ている事から、「一番ちっこい超アホ面」ってもしかしなくても俺の事を言っていると思われ……。ッ!
「はははは……おっさん、それって俺の事か?」
苦笑いをしているとサクラが俺の耳に口を近づけてきた。おい、俺はお前とそんな関係になった覚えはねぇぞ!
「我慢しなさいよ、ナルト。あんたの背も伸びるわよ。……多分ね」
五月蝿ぇよっ!気にしてんだよこっちはっ!変な気遣いしてくれんな!!と、俺がサクラに一人キレているとおっさんがカカシと話しているのに気付いた。
「わしは橋作りの超名人、タズナというもんじゃ。わしが国に帰って橋を完成させるまでの間、命を賭けて超護衛してもらう!」
はぁ……思ってた以上に、このおっさんの護衛って大変そうだな。でもまぁ、白と桃地を実際に見る事が出来んならいいかな。けど、白ってホントに可愛いんだろうか……今から楽しみだな。
「直ぐに出発するそうだ。荷造りが終わり次第、任務開始だ」
こうして、俺たちは波の国へと向かう事になった。新術開発やりながら行こうかな、途中暇だし。
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集合時間に30分も遅れて来たカカシに愚痴を言うのも、今では見慣れた光景。そして、里と外を隔てる『あ』『ん』と書かれた門を開けて、俺は初めてとなる里外への一歩を踏み出した。
「よし、行くか」
「何で、あんたが仕切ってんのよ。サスケ君が言うなら分かるのに。ねぇ〜サスケ君」
…悪かったな、デコ女。だけどな、サスケ君サスケ君言ってるお前に言われたくはないぞ。
「……フンッ」
サスケぇ〜照れてないでお前も何か言えよっ!あぁ〜もう、マジでこの班疲れる…。
「おい!本当にこんなガキらで大丈夫なのかよぉ!」
おっさんが文句を言うのも仕方ねぇかな。殺伐とした雰囲気を予想してたら、こんなダレた雰囲気だもんなぁ。命を狙われる立場としては、もう少しシャキっとして欲しいって思うのは当然か。
「ハハ…上忍の私がついてます、そう心配は要りませんよ」
カカシ、遅れてきたあんたがそれを言っても説得力ないぞ。ほら、タズナのおっさんってば胡散臭そうにしてるし。そして、何を思ったのかサクラが読めない空気を無理に読もうとしておっさんに話しかけやがった。
「ねぇ、タズナさん……タズナさんの国って『波の国』でしょ?」
「…それがどうした」
不機嫌な声を出すおっさん。サクラぁ〜と俺はデコ介をジト目で見るが、サクラは気付かずにタズナに向けていた顔をカカシに向ける。おっさんの機嫌を悪くしたのに気付いたんだろうな。サクラはカカシを話に巻き込んだ。
「ねぇ、カカシ先生……その国にも忍者っているの?」
「いや、波の国に忍者はいないな。だけど、大抵の他の国には文化や風習こそ違うが、隠れ里が存在し、忍者がいる。その中でも『木ノ葉』『霧』『雲』『砂』『岩』は忍び大国とも呼ばれている。で、里の長が『影』の名を語れるのもその五カ国だけでね。その火影、水影、雷影、風影、土影のいわゆる五影は全世界各国何万の忍者の頂点に君臨する忍者達だ」
へへっ。俺の父さんもその影の名を継いだ最高の忍者だったんだ。俺は満面の笑みを浮かべる。同じ班の二人を見てみるとサスケは鼻を鳴らし、サクラは失礼な事考えてますって顔をして、「へー、火影様ってスゴイんだぁ!」と感嘆していた。顔と言葉が一致しないと怖いな。
「お前ら、火影様のこと疑ったろ?ナルトは嬉しそうだな」
「当然っ!そんな凄い人が俺の事育ててくれたんだって思ったら、嬉しくなったってばよ」
本当の事は言えない。俺が四代目の息子だっていうのは、秘密らしいからな。んで、カカシにバレていたサクラはびくりと身体を震わせる。馬鹿だなこいつ。
そして、やっぱりねとカカシは嘆息した。カカシも普段こんなだけど、やる時はやる奴だからなぁ。いつも戦闘モードならカッコいいって思うんだけど。
「ま、安心しろ!Cランクの任務で忍者対決なんてしやしないよ」
「じゃあ外国の忍者と接触する危険はないんだ。はぁ、良かったぁ」
「もちろんだよ、アハハハっ」
おっさんの表情がカカシとサクラの談笑を聞いて変わったのに気付く。俺はこれから起こる事を知ってるからだけど、サスケとカカシはおっさんの表情に気付いたみたいだ。サスケはちょっと違和感を感じただけで終わり、カカシは目を細める。これが、下忍と上忍の違いだな。
っと、さっそく来やがったか。延々と続く整備された土の道に水溜まりがあること自体はなんら不思議じゃない。でもさ、ここ数日雨なんて降ってないのに水溜りって……無理あるぞ。
そして、水溜まりからちょっと行ったところで、水溜まりから大きな鉤爪を付けた変な二人組が現れた。てか、お互いの鉤爪を鎖で繋ぐとか移動すんの大変だろうに……。そして、一番後ろにいたカカシがそいつらの最初の的になる。
「なにっ!?」
カカシが態とそんな醜態を見せたのは俺らの力を見るため。誰が標的なのか見定めるため。っていう二つの理由からなんだろうけど……。
でもまぁ、そんなもんはこいつら倒せばすぐ分かる事だし、新術の試し打ちさせてもらおっかな。そいつらがカカシの後ろを取る前に、片方の鉤爪野郎をドロップキックで後ろに吹き飛ばす。
「ッガハ!」
「ック!」
鎖で繋がってるからそうなるんだぞぉ〜。暗殺に来るならもう少し装備考えろよ〜。態勢を立て直される前に、ドロップキックを当てた奴の太ももにクナイを2本投擲する。勿論、風遁のチャクラでコーティングされたヤツな。
「グぁッ!!」
はい、一人行動不能。で、もう一人はっと横を向くと鎖を外してカカシ達のいる方に向かって疾駆していた。あ〜新術の試し打ちぃ〜〜ッ!
俺が嘆いていると、もう一人の敵はサスケによって地に付された。サスケは俺に顔を向けて来て、所謂どや顔をしてくる。はいはい、凄い凄い。
「はぁ……予定とは違ったが…まぁ、良しとするか」
「サスケ君、素敵ッ!カッコいいっ!!大好きぃ!」
カカシは予定がズレたのを溜息で誤魔化し、サクラはサスケにラブコールを送ってる。カカシは、サクラの事が一番不安そうだな。
それに呆れながらも、足元で太ももを押さえて呻いている敵(ばか)を見て、引き摺って行くのめんどくせぇと感じている俺も大概だけどな…。
▼ ▼ ▼ ▼
「先生さっきと話が違うじゃないっ!忍者との接触はないって言ってたの私覚えてるんだからっ!」
サクラが隣にいるカカシに喚いているのを見ながら引き摺って行く。原作で知ってたけど、こいつら霧隠れの忍者だよな。……俺、霧隠れの忍者との遭遇率半端ない気がするんだけど……はぁ、今日の空は青いなぁ〜。軽い現実を逃避してみました。
「それは俺も聞きたくてね。……タズナさん」
「!何じゃっ」
カカシはおっさんの目をまっすぐ見て「ちょっとお話があります」反論は許さない、って意味を込めて口を開いた。
あれから数分後……道の両端で生い茂る木々の一本に、さっき俺達に襲いかかって来た敵を縛りつけて、カカシが尋問をしている。
まだ終わんねぇかなぁ……水遁のチャクラをいじりながらカカシの方に顔を向ける。水遁・螺旋丸指バージョンは全部の指に出来るようになり、チャクラコントロールはまず問題なくなった。それに合わせて水遁系の技も威力が上がり、今はオリジナル技を考えている最中だったりする。
「こいつらは霧隠れの中忍ってとこか、いかなる犠牲を払ってでも戦い続けることで知られる忍びだ」
サクラ、サスケはカカシの言葉に耳を傾けている。知らない事を知ろうとする事は良い事だぞ。うんうん。
「何故、我々の動きを見切れた?」
え……マジで言ってんの??それをマジで言ってるとしたらこいつら、馬鹿だな。うん、それしか言えないわ。
「数日雨も降っていない今日みたいな晴れの日に水溜まりなんて無いでしょ、普通」
サスケとサクラが、そう言えばって顔をした。おい、成績優秀者ども、今気付いた!みたいな顔すんの止めろ。馬鹿に見えるぞ。
「あんた、それ知ってて何でガキにやらせた?」
おっさんが疑問に思うのも仕方ないだろう。もし、俺達があっさりと敵に負けていたら、自分の命が危なかったんだからな。守るべき対象のおっさんを放置して、自分の部下に任せたカカシ。依頼人のおっさんからしたら面白くないし、不安に思う。でもな、おっさん…。
「私がその気になればこいつらくらい瞬殺できます。ですが、知る必要があったのですよ……こいつらのターゲットが誰であるのかをね」
「どういうことだ?」
「狙われているのはあなたなのか。それとも、我々忍びの内の誰かなのか、ということです」
そうなんだよ。あんたは只任務を依頼しただけかもしれないけど、こっちはきちんと依頼に沿ったランク付けを態々してるんだからさ。嘘はいけねぇんだよ。
「我々はあなたが忍びに狙われているなんて話は聞いていない。依頼内容はギャングや盗賊など、ただの武装集団からの護衛だった筈……。忍者が襲ってくるとなると、Bランク以上の任務だ。依頼は橋を作るまでの支援・護衛という名目だった筈です。…敵が忍者であるならば、迷わず高額なBランク任務に設定された筈。何か訳ありみたいですが、依頼で嘘をつかれると困ります。これだと我々の任務外ってことになりますね」
忍者にとって情報は命を左右する。それを意図的に隠すとか、これが里の奴ならフルぼっこは確実、悪けりゃ殺される。そのせいで命を落とすのが依頼人だけならいいよ、嘘ついてたんだから自業自得。でも、騙された揚句にこっちまで命を失くしたらたまったもんじゃない。それくらい、今回した事ってのは悪いって事なんだよ、おっさん。
「そうね。依頼人との信頼関係すらまともに構築できないような任務は危ないわ。サスケくんはどう思う?」
「……依頼内容に嘘をついた事については不愉快だ。だが……」
サスケは嫌な笑みを浮かべた。お前それ恐いって。
「他国の忍びとの戦闘には興味がある」
ま、俺もその点については賛成だな。なんたって白に会えるし。
「ナルト、お前はどうだ?」
「ん?俺もお前に賛成かな。強い奴と戦えると思ったらワクワクしてくるし」
サスケと俺は笑みを浮かべる。こいつとは、なんだかんだいってそれなりに仲良くなってきた。2週間前の演習の時に実力を見せた事が原因かな?ま、仲良くなる事に関しては何も問題ない良いけど。てか、あのプライドの塊のサスケがなぁ…。良い意味で期待を裏切ってくれたわ。
「な、何二人だけで笑ってるのよっ!」
サクラ、お前うっさい。
「……先生さんよ、話したいことがある。依頼の内容についてじゃ」
俺達の会話を黙って聞いていたカカシは、おっさんに顔を向ける。
「あんたの言う通り、おそらくこの仕事はあんたらの任務外じゃろう。実はわしは超恐ろしい男に命を狙われている」
「超恐ろしい男……誰です?」
それまで、ふてぶてしい態度でいたおっさんが、心底怯えた表情を見せた。確かに桃地に狙われてるんならそうなるわな。俺だって修行しないで原作通りのナルトでいたらおしっこちびったと思うし。
「あんたらも名前くらいは聞いたことがあるじゃろう。海運会社の大富豪、ガトーという男だ!」
あれ?桃地じゃないの?てかそんな奴いたっけか?
「あのガトーカンパニーの!?世界有数の大金持ちと言われる……」
カカシ、そんな吃驚するほどの大物なのそいつ?俺ってば覚えてねぇんだけど…。
「そう……表向きは海運会社として活動しとるが、裏ではギャングや忍びを使い、麻薬や禁制品の密売、果ては企業や国の乗っ取りといった悪どい商売を生業としている男じゃ。一年ほど前じゃ、そんな奴が波の国に目をつけたのは。財力と暴力をタテに入り込んできた奴はあっという間に島の全ての海上交通・運搬を牛耳ってしまったのじゃ!島国国家の要である交通を独占し、今や富の全てを独占するガトー……そんなガトーが唯一恐れているのがかねてから建設中のあの橋の完成なのじゃ!」
「……なるほど。で、橋を作ってるおじさんが邪魔になったってわけね。っ!じゃあその忍者たちはガトーの手の者ってこと!?」
サクラ、吃驚するのはいいが、もう少し声のボリュームを下げてくれ。隣にいる俺とサスケの鼓膜はお前のせいでボロボロだ……。
「……波の国は超貧しい国での…大名ですら金を持ってない。勿論わしらにもそんな金は無い。高額なBランク以上の依頼をするような……な…」
それが、この依頼の嘘に繋がった、と。懐に金がないから依頼内容を少しでも下げて金を浮かす。ま、紐解けば簡単な事だな。
「まぁ、お前らが任務をやめればわしは確実に殺されるじゃろう。だが、なぁに、お前らが気にすることはない。わしが死んでも、10歳になる可愛い孫が一日中泣くだけじゃっ!」
おっさん、それ軽い脅しだよな。情に厚い忍びにしか効かない脅しだけど……あと、それを笑って言うとか、サクラが困ったような顔してるし、狙って言ってるとしか言えねぇな。
「あっ、それにわしの娘も木ノ葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!いや、なにお前らのせいじゃない!」
カカシ、あんたまでそんな顔すんなっての。俺とサスケ位だぞ平然としてんの。……仕方ねぇな一芝居打つか。
「そうだよな俺達のせいじゃない。あんたとあんたの国に力がなくて、金が無いってだけだ。それを何で俺達に押しつけるんだ?依頼内容にも嘘ついといて、よくそんな態度とれるな、おっさん」
「な、ナルト?」
サクラ、お前はちょっと黙ってろ。ちっとばかしムカついてんだよ俺は。
「俺はこんな任務で命を張る事はしたくねぇ。何より…会った事も聞いた事もない娘や孫に恨まれるだと?はッ、上等だ。恨まれてやるよ。けどな、それで俺の大切な奴らに手ぇ出したら容赦しねぇ。俺はあんたの娘と孫って奴を必ず……殺す」
芝居って言っても、本音が入ってるから効いたみたいだ。おっさんだけじゃなく、皆俺の空気に呑まれている。ま、ちょっと殺気も込めたからなぁ。
「ナルト、少し言い過ぎだ」
カカシぃ……お前も少しは冷徹になれって。情に絆(ほだ)されるばっかりが良い忍びって訳じゃねぇ筈だぞ。
「言い過ぎ、か。でもさカカシ先生、こんな依頼で死ぬ事になったら先生は納得すんの?しないよな、絶対。ま、先生の事だから割り切ってしまうんだろうけどさ。だけど、俺達は絶対に納得何てしない。なぁ、サスケ。お前もそうだろ?」
サスケに振ったのには訳がある。サスケが一番ここで死ぬなんて許す訳がない理由を持っているからだ。
「………そうだな。俺には絶対にやり遂げなくてはならないものがある。それが出来なくなるくらいなら、こんな依頼破棄して里に帰って修行していた方がいいに決まっている」
「だよな。サクラだって死にたくねぇだろ?こんな、ふざけた態度の奴の頼みで死ぬなんて、まっぴらごめんだっての」
「わ、私だって死にたくないけど……でも…」
「ナルト、俺は自分の力を試したい。だが、それも自分の命があってのものだ。……俺はお前の意見に賛成する」
「サクラ、お前は?」
「私は……」
おいおいおいおい……カカシは何も言ってこない事から俺の意図に気付いてる筈だ。んで、サスケは俺の意図に気付いてくれて、芝居に乗ってくれてんのに……お前は何で気付かないんだよ!デコ介!!本当にくの一で座学トップだったのかッ!?
俺が内心サクラにイライラしていると、それまで黙っていたおっさんが口を開いた。
「………確かに、わしの態度が悪かった。すまん。訂正させてくれ、この通りだっ!」
膝を折り、地に額を擦りつける。所謂『orz 土下座』をしたおっさん。そうだよ、人にモノを頼む時にはそれ相応の態度ってモノがあるからな。それも、一回俺達に嘘ついてるんだから、これ位普通だろ。
「わしを、わしの家族を、わしの国を、助けてはくれないだろうか。頼む………」
「ナルト、もうそれ位でいいだろ。タズナさんも頭を上げてください」
お前がしめるのかよ、カカシ……。まぁ、こんくらいが妥当だからいいけどよ…。
「はぁ……わかったってばよ。おっさんも悪かったな」
「何、わしが悪かったんじゃ。お前さんは一つも悪くはないわい」
お、わかってんじゃん。そうそう、これからは変にふてぶてしい態度は取らない事だおっさん。
「では、私達も乗りかかった船ですし、国に帰るまではお送りしますよ。護衛も兼ねてね。それから、念のために応援を呼んでおきますので、安心してください」
サクラはやっと重苦しい空気から解放されて一息入れ、サスケと俺は苦笑を浮かべて肩をすくめた。
「ありがとう……恩にきるわい」
よっし、次は桃地との戦闘だ!楽しみだなぁ。でも、応援って誰呼ぶんだ?
あとがき
そげキングさんメールでの感想ありがとうございます。
にじファンから追い掛けてきてくださるとは。ありがとうございます。更新頑張りますね。
zeroさんメールでの感想ありありがとうございます。
応援してくれるとのこと。本当にありがたいです!亀更新ですけど、頑張ります!
涼蘭さんメールでの感想ありがとうございます。
物語に引き込まれたとのことですが、こんな作品にそこまでの評価をいただけるとは本当にありがとうございます!
短期留学中との事ですので、言葉が通じない事で何かと大変だと思います。この作品を読んで元気になっていただけるなら、私も嬉しい限りです。
勉強ともに頑張ってください!
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m