中忍試験を受ける教室は騒がしかった。それは、下忍達の話し声によってなのだが、その話している下忍というのが木ノ葉のルーキー…つまりは俺達だ。同じ木ノ葉の下忍だけじゃなく、他里の下忍達に睨まれているんだが…それくらいじゃこいつらは怯まない。
俺が教室に入って来た当初、話しかけてきたカブトだったがチャンスを潰されたからか、二人のお仲間のところに行って怪しい空気をこれでもか!と醸し出していた。
それを気付かれないように、横に座っているいのとヒナタの話に頷きながら横目で見る。ま、今から動く程馬鹿じゃないだろうし、ほっとくかな。視線を動かせば、砂の姉弟が我愛羅を刺激しないように、壁を背にして二人で話している。
我愛羅の奴可哀想だな……。よし、ちょっと話しかけに行って来るか。まだ、試験までちょっと時間あるみたいだし。
「悪り二人共。ちょっと行って来るってばよ」
「どこ行くのよナルト」
「ナルト君?」
「いいからいいから」
それから席を立ち、我愛羅達のいる方へ歩いていく。途中、いろんな里の下忍達に睨まれたけどそれを無視して、我愛羅のところに向かう。
我愛羅の席の周りは二席分ほど空いていた。それが我愛羅の人を近くに寄せ付けない、他人は信じない、といった感情のようなものに感じて俺は悲しくなった。
そして、俺がその空いている二席を過ぎた瞬間、我愛羅の砂が俺の目の前に展開した。うわッ、徹底してるなぁ…。
「………何の用だ…」
砂の隙間から我愛羅がこっちを見ているのに気付く。いつでも俺を殺せるように砂を俺の背後にも配置してんだろうな。ま、瞬身の術で回避すれば問題ないからこのままでいいか。
「いや、お前の席の周りだけ空いてるからさ。ちょっと気になっただけだ。俺はうずまきナルト、お前は?」
「………木ノ葉の忍びか。行け、それ以上近づけば……殺すぞ…」
「殺すってのは穏やかじゃないな…それに、俺だけ名前言うってのもなぁ……」
我愛羅の殺気が増したけど、こんくらい屁でもないから気にしない。後ろで、殺気に当てられた下忍達が一斉に身構えたみたいだけど、それも俺にとったら興味ないことだから放置。
「………我愛羅、砂の我愛羅だ。お前とは楽しい殺し合いが出来そうだ…」
「おいおい、殺し合うのかよ。ま、それは置いといて、その殺気しまえって。後ろの奴らってば気が気じゃないみたいだからよ。それから、そこの二人…」
我愛羅から視線を切り、俺にクナイと手裏剣を投げようとしていたテマリとカンクロウに右人差し指を向ける。
「俺はこいつに何もする気はねぇよ。ただ、挨拶に来ただけだってばよ。だから、そのクナイと手裏剣は仕舞えって。さもないと……」
さっきの我愛羅より重い殺気を二人に叩きつける。
「わ、わかった」
「わかったじゃん…」
ん。まぁこんなもんでいいか。っと、我愛羅の奴が俺の殺気に当てられて、おかしくなりそうだから今はこれ位にしとくかな。
「じゃ、我愛羅またな。お前とは殺し合いじゃなくて、本気の勝負がしたいってばよ」
最後にテマリとカンクロウにも「じゃあな〜」と言ってから、その場を離れる。他の下忍が俺の事をさっきとは違う意味で睨んでたみたいだけど、俺は今から始まる第一試験に向けて思考を切り替えていたので、全部無視しました。
▼ ▼ ▼ ▼
席に戻るといのやヒナタ、他の奴らに何しに行ったのか質問されたが、それをなんとか誤魔化していたら、黒板のところに大きなチャクラが集まっていくのに気付いた。
「静かにしやがれ!クソ野郎ども!!」
予想した黒板の前に白煙が巻き起こり、複数の人影が現れる。その複数の人影は、中忍の服で統一され額には木ノ葉の印が刻まれた額当てをつけていた。
また全員が同じ服装をしている中で、1人だけ黒いコートを羽織り、木の葉の額当てで頭全体を覆い隠し、顔には無数の切り傷をつけた男がいる。拷問のイビキ……すげぇ雰囲気でてるじゃん!
「待たせたな、『中忍選抜第一の試験』試験官の森乃イビキだ」
イビキの厳しい眼光を受けた下忍が震えている。いのとヒナタに至っては俺の腕をそれぞれ抱き込むようにしてる。何これ、役得ですか?
「……では、これから中忍選抜第一の試験を始める。志願書を順に提出し、変わりに…」
席替えで使うような箱を指さすイビキ。
「この箱の中に座席番号の書かれた紙があるからそれを一枚引き、その番号の席に着け。番号はお前達が座っている机の右上にあるのがそれだ。その後、筆記試験の用紙を配る」
席替えかぁ……ま、なんとかなるだろ。いざとなったらサクラの答案見ればいいんだし。
「テスト……席替え……シカマルぅ〜僕ヤバいよ〜〜〜!!」
「チョウジ、いざとなったら……カンニングしろ。俺が許す」
おいそこ、何小さい声でそんな事言ってんだよ。てか、シカマルは影真似の術あんだから、チョウジ操って答え書けばいいだろ?
「は…はは、俺はテストなんて余裕だぜ!な、赤丸」
「………お前が馬鹿な事はもう俺もヒナタも分かっている。そんな見栄を張るな」
うわぁ……シノってば何気に酷いのな。キバもそんなこと言われたくなかったら、勉強すればいいのによ。
「ナルト……席離れちゃうかもね…」
「ま、それは仕方ないんじゃね?いのは頭いいからきっと大丈夫だ。もちろんヒナタもな」
「あ、ありがとうナルト君」
「ふ、フンッ分かってるじゃないの」
いのとヒナタの頭を撫でてやりながらそう言ってやると、頬を赤くする二人。シカマルはそんないのを見て、仕方ない奴だなみたいな笑みを浮かべて、キバに至ってはヒナタのその様子を見て歯ぎしりしていた。
「筆記試験なんて私には余裕ね。サスケ君は勿論出来ると思う。けど……」
「何だよサクラ」
「ナルト、あんたはヤバくなったらカンニングでも何でもして切り抜けなさい。私達は三人で中忍になるんだからね!」
「あぁ〜はいはい」
分かってるってのデコ介。それよりも…サスケお前だよ。俺がサクラに言われてる時に、お前が一瞬喉を鳴らしたの見てたんだからな。
「ま、何はともあれ一緒に中忍になろうぜ。もちろん全員で!」
おうっと力強く、声を出す木の葉のルーキー9人。
と、そんな事を言ってたら俺らの番が来て一人ずつ箱から紙を引いていき、バラバラに座って行く。
俺もガサゴソと箱の中を掻きまわして一枚引きぬく。そして、番号は15……席の番号と照らし合わせながら歩いていると、その番号と同じ席を見つけ席に座っていると、隣にテマリが座った。
「ッよ、また会ったな。お隣同士、頑張ろうぜ」
「フン、話しかけてくんじゃないよ。木ノ葉の「うずまきナルトだ。木ノ葉の下忍なんて他人行儀な感じ、止めねえか?」……変な奴だなお前」
「良く言われるってば」と、言って笑うとテマリは、はぁっと溜息を一つだして「テマリだ…名前は教えたけど、慣れ合いはしないよ」と、右手の甲に顎を乗せて、睨みながら口を開いた。
そして、テマリが右隣なら左隣は……「やっほ〜♪」と手を小さく振って、ニコッていう感じの笑みを浮かべたテンテンがいた。
「さっきはごめんねぇ。ウチの男ども血気盛んだからさぁ〜。でも、こっちが負けたみたいだし、これでおあいこってことで」
「いいですよ。こっちもリーさんでしたっけ?あの人の事怪我させてないか心配でしたし、先輩の感じから言うと大したことないみたいで良かったです」
「先輩……君いい子だね。私テンテン、よろしくね。そっちの砂の女(ひと)もよろしくぅ〜」
「フンッ……」
テンテンってこんなキャラだっけか??それに、こんな序盤からテマリとも話すなんて……ま、いいか。一次試験を切り抜けなきゃ何も始まらないしな。
それを見ていたいのと、ヒナタがゴゴゴっと変なオーラを体から出していたのに俺はこの時気付いていなかった。
▼ ▼ ▼ ▼
中忍の試験官から問題と答えが一緒になっている答案用紙が配られる。前世の癖で答案用紙を裏のまま放置していると…。
「答案用紙はまだ裏のままだ。そして、俺の言う事を良く聞け」
少し短めのチョークを手に持って、イビキが黒板を突く。何か生徒指導の先生思い出すなぁ。
「この第一の試験には、大切なルールってもんがいくつかある。黒板に書いて説明してやるが、質問は一切受け付けんからそのつもりでよーく聞いておけ」
ルール?何だそれ?とかいろいろ小さな声で、そこかしこから声がする。いいから黙って聞いてろよ。今からそれを説明されるんだからよ。
「第一のルール。まず、お前らには最初から各自10点ずつ持ち点が与えられている」
イビキが黒板に向かって書きなぐりながら話す。その一声で小さな声は止み、下忍達は黒板を見ながらイビキの言葉の一つ一つを聞き逃さないように目と耳に神経を集中させていく。
「試験内容は全部で10問、配点は問題格1点ずつ。そして、この試験は減点式となっている」
つまり、その10点をそのまま維持するためには、問題を全問正解させなきゃ駄目ってことか…。原作と同じなのか?細部まで覚えてねぇから確信は持てねぇな。
「つまり問題を10問正解すれば、持ち点は10点そのままだ。しかし、問題で3問間違えれば持ち点の10点から3点が引かれ、7点と言う持ち点になる訳だ。これが第一のルールだ」
0点になったら即退場、さようならってことか。エグい試験内容だこと。
「第二のルールだが………この筆記試験はチーム戦。受験申し込みを受け付けた3人1組の合計点数で合否を判断する。つまり、合計持ち点30点をどれだけ減らさずに試験を終われるか、チーム単位で競って貰うってことだ」
ドカッ!後ろの方からそんな音が聞こえた。チャクラの感じだとこれはサクラだな。イビキの言った試験内容を聞いて、心底驚いたってとこだろう。
「ちょ、ちょっと待って!持ち点減点方式の意味ってのも分かんないけど、チームの合計点ってどーいう事よ!!」
と、思ってたら後ろからサクラの声が聞こえた。こいつの行動って簡単に予想つくんだよなぁ。カカシに言ってこういうところを直してもらうかね。
「うるせぇ!お前らに質問する権利はないんだよ!これにはちゃんと理由がある、黙って聞いてろ!」
「う…」
「分かったら『肝心の』第三のルールだ。試験途中で妙な行為……つまり『カンニング及び、それに順ずる行為を行った』と此処にいる監視員たちに見なされた者は、その行為『1回につき、持ち点から2点ずつ減点させて貰う』…」
ふ〜ん……てかこの試験って原作と同じか?原作でもこんなくだりがあったような気がしてきた。結局のところ『無様なカンニング』じゃなければいいんだよな。
「そうだ!つまり、この試験中に持ち点をすっかり無くして退場する奴も出るってことだ」
イビキがルールを説明している間に、監視員って事になってる中忍達が俺達を取り囲むようにして椅子に座る。
「いつでもチェックしてやるぜ」
そんな事を言う中忍は、ここに来る前にリーを殴っていた奴だ。指でトントンとメモ帳を叩いている。やっぱりあいつムカつくな……。何より俺達より上の立場ってのに胡坐かいてる感じが気にくわねぇ。
「無様にカンニングなど行った者は自滅して行くものと心得て貰おうか。仮にも中忍を目指す者、忍びなら忍びらしく……だ」
口元を意味ありげに歪ませ、イビキは笑みを浮かべる。ムカつく言葉の節々に、俺らを試しているのが分かる。でも、俺ってばカカシよりイビキの方が性格的には好きだな。いい呑み友達になれそうじゃね?
「そして最後のルールだ。この試験終了時までに持ち点を全て失った者、及び、正解数0だった者の所属する班は……」
笑みを浮かべていたイビキが笑みを仕舞い、真剣な視線が全員に向けられる。それに唾を飲み込む奴、睨み返す奴と様々だが、俺は試すなら試してみろっていう小馬鹿にした笑みをイビキに向けた。
「3名全て道連れ不合格とする!!」
(なっっっ!!)
(何ですってぇぇえ!!)
サスケとサクラが驚愕を浮かべて、一斉に俺に顔を向けて来る気配がした。いやいや、お前ら俺を馬鹿にし過ぎだろ。それに、ここ3ヶ月でお前らは俺に勝てないって事まだ分かってないのかよ。はぁ…こいつら次の試験でお仕置きだな。
「試験時間は1時間だ……よし、始めろ!」
開始の合図と同時に鉛筆を走らせる下忍達。さてと1問目は……暗号文か?摩訶不思議な記号の羅列がそこにあり、それが意味するものは…………ごめん無理。全っ然分かりません。てことで、テンテンが天井にある鏡を使ってカンニングし出したので、俺もそれに便乗する事にします。
おお、余裕余裕。てか、テンテンが横にいてくれてラッキー。影分身と変化の術を応用してカンニングしようかなぁって考えてたけど、無駄なチャクラ使わなくていいなら、それに越したことはないからな。へぇ〜こうなってたのか。こんなの、アカデミー卒業したばっかの俺らに分かるわけなくね?
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ナルトが余裕でカンニングをしている頃、ナルトの事を心配していたサスケはというと…。
(フンッ…成る程な…)
余裕の笑みを浮かべる今年の下忍No.1ルーキーうちはサスケ。だが、その笑みの裏では…。
(こんなの…1問たりともわかんねぇ……)
そうなのだ。アカデミー時代ではそこそこ出来ていたサスケだが、下忍になってからは忍術、体術、幻術と戦闘技術を磨くのみで、座学には一度も手をつけていなかった。これは、サスケの復讐のために一秒でも強く!という気持ちから来ているのだが、今はそんなこと微塵も関係ない。
(1問目から9問目がちゃんとした問題で、尚且つ俺に理解不能な難問であるのは理解した。だが……)
『第10問』
この問題に限っては、試験開始後45分経過してから、出題されます。担当の質問を良く理解した上で、回答して下さい。
(この10問目は何なんだ!!)
手に持つ鉛筆を握り潰す気なのか、サスケの手に握られた鉛筆はピシピシと嫌な音を発し続ける。
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一方、余裕宣言をしていたサクラだが、問題自体はスラスラとはいかないが全て解いていき、今は3問目に取りかかろうとしていた。
(問題は難しいけど解けない程じゃない。でも、私だけが解けても意味がないのよ!ナルト〜お願いだから一問くらいは解いてよぉ!!)
サクラのこの願いは苦も無く、ナルトはテンテンの鏡を使ったカンニングを盗み見みしながら解くという事で解決していた。
(それに一体何チームが合格できるようになってるのかしら?知ってどうなるモノでもないけど……)
「あの〜これだけは教えて欲しいのですが…」
と、サクラが問題を解く傍らそんな事を考えていると、直ぐ近くの下忍が手を上げてイビキに質問をした。
「一体何チームが合格なんですか?」
そして、その質問は正にサクラが一番気になっていた事であり、その間サクラは問題から思考を移し、この質問に対するイビキの返答に意識を集中した。
「クク…」
だが、イビキから返って来たのは嘲笑を含んだ笑みのみ。サクラ他、この質問に聞き耳を立てていた者達は、この返答には疑問を持つと同時に怒りも持った。
「知ってどうなる訳でもないだろう。それともお前、失格にされたいのか?」
「す、すいません……」
イビキのその言葉で質問をした下忍は、渋々問題を解く作業に戻った。
(全51チーム中、もし合格が10チーム程度だとしたら……無理してでもかなりの点を保持しなきゃならない。なら、私は1問もミスは出来ない!)
桃色の髪をかき上げ、気合を入れ直すサクラ。
(サスケ君……ううん、サスケ君は大丈夫。だって、サスケ君だもん!問題はナルトよ!お願いだから、0点は勘弁してよ〜ナルト!)
サクラの視線がナルトに向けられ、ナルトは一瞬ビクッと体を震わせた。
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ナルトが余裕綽々でカンニングをしていたその頃、シカマルは監視をしている中忍を横目に見ながら、問題を解いていた。
(めんどくせぇ試験だな。それに、この人数で見張られてちゃカンニングなんて出来ねぇ。あのノートでチェックするんだろーが…。チョウジの野郎に早く影真似で答え書いてやらないとな。いのは……あいつの術はこういう時に役立つから大丈夫だろ)
不意に中忍の1人の鉛筆が動く。それを横目で捉えたシカマル。
(…誰かやられたな……チョウジ、頼むからまだカンニングはしないでくれよ)
その時チョウジは、(し、シカマルぅ〜〜〜)と、心の中で泣いていたりするのだが、右手には相変わらず食べかけの饅頭が握られていることからして、チョウジも大概大物だと言うことだろう。
▼ ▼ ▼ ▼
『無様にカンニングなど行った者は自滅して行くものと心得て貰おうか。仮にも中忍を目指す者、忍びなら忍びらしく…だ』
シノはイビキの言葉を頭の中で復唱する。
(フン、カンニング容認のテストか……。なら、俺は俺の蟲を使って答えを探るだけだ)
蟲を体中に飼っている油女一族は、一種類の蟲だけだが自在に操る事が出来る。それは、問題の答えを探るのも、任務の時に暗号の解を探るのも同じ事。
シノが放った蟲が、淀みなく鉛筆を動かす下忍の机に止まり、答えを見て行く。1問見たら、帰って来るように伝えた事で、直ぐにシノの所まで戻り、答えを知ったシノは答案に鉛筆を走らせる。
今年サスケに次ぐNo.2のシノだが、サスケよりも頭の回転が早いのはどういうことなのか。ナルトが力を抜いていた事に気付いていたのも、シノ自身もまた力を抜いていたからなのかもしてない。
▼ ▼ ▼ ▼
(赤丸、次の問題だ!)
ワンワンッ
(よしよし、いい子だ赤丸)
キバは何も考えることなく、カンニングを決行していた。アカデミー時代から赤丸を使ってカンニングをしていたキバだからこそ、直ぐに至った考えだった。
(絶対にナルトに勝ってやる!そしてヒナタに俺の事を!!!)
キバは、そんな事を考えながら赤丸と協力しながら問題を解いていくのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
(ちょっとヒナタ、どうする?この問題難しいんだけど…)
(い、いのちゃんも?私もちょっと難しいかも……でもでも、ちょっとは分かるんだよ)
こちらは、隣同士になったいのとヒナタ。ナルトがテマリとテンテンの二人と仲良さそうに話す様子にムカムカとしていた二人だったが、試験が始まるとシュンと静かになり、問題に向かっていたのだ。
だが、それも問題のレベルが自分達では到底理解できないものだと悟ると、ヒナタの出したチャクラ糸を通して、作戦会議のようなものをしていた。
(わ、私だってちょっとは分かるわよ!それより、私思うんだけど、なんかこれカンニングしなさいって言ってるように感じない?)
(えぇ!?だ、駄目だよ!あ、あの恐い人がカンニングしたら2点減点して行くって言ってたし、私恐くて出来ないよぅ……)
泣きそうな顔と声でいのにそう伝えるヒナタだが、伝える相手を間違えた。相手が男だったら、ヒナタのこの姿に負けて考え直しもしただろうが、相手は山中いの。アカデミー時代に男子をやっつけていた強い女の子だ。
(……あんた、その顔でナルトに迫ったりしてないでしょうね?)
(そ、そそそそ、そんな事してないよ!!)
(……まぁいいわ。それは後で言うとして…さっきも言ったけど、無様なカンニングをしちゃ駄目、忍者は忍者らしく……これって術を応用して、答えを知っている相手から答えを盗むことを前提としてるんじゃない?)
(い、言われてみれば……でも…)
煮え切らないヒナタに、いのが発破をかける。
(そんな事言って、もしナルトと一緒に二次試験に進めなかったら……嫌でしょ?)
(それは嫌だよ!)
ニヤリ……そんな言葉似合う笑みを浮かべるいの。
(なら、やるしかないでしょ。あんたには白眼が、私にはこの『心転身の術』がある。ナルトと一緒に二次試験に行くわよ!!)
(う、うんっ!!)
≪白眼!≫
≪心転身の術!≫
二人は、こうして答案に答えを書いて行くのであった。
▼ ▼ ▼ ▼
そして視点はサスケに戻り、こちらも何かに気付いたようだ。
(ッ!?そうかそういう事か!チィ、何てこった……これはただの知力を見る筆記試験じゃない!)
やっと理解した顔になるサスケ。サクラと自分以外のルーキー達がカンニングを既に始めているのにも気付いていなかった奴とは思えないほど素早く写輪眼を発動させる。
(早く気付けナルト!このテストは……カンニング『公認』の偽装・隠蔽術を駆使した、『情報収集戦』を見る試験だ!)
サスケの鉛筆を握っている手に力が込められる。既にピシピシ言っていた鉛筆が、それに耐えられる筈もなく呆気なく折れる。それを無視して、予備の鉛筆を手に持つサスケ。何気にカッコ悪い奴である。
(『忍は裏の裏を読め』か……カカシ、あんたの言ってた意味がここで生きて来たぜ!)
(つまり試験官の本意は、カンニングをするなら『無様なカンニング』じゃなく、『立派な忍らしく』バレないようにすべしって事だ。そう考えれば『減点方式』という、この試験の異例さ。そして、『カンニング発覚1回につき、2点の減点で済む』と言う甘さ…言わば、0点まで4回の猶予がある事にも納得が行く)
それに気付いたのはおそらく、下から数えた方が早いサスケなのであった。
(要するに此処で試されるのは、如何に審査官とカンニングをされる者に気取られず、正確な答えを集める事が出来るか。気付けナルト!勘の良い奴はそろそろ動き始めるぞ!)
サスケは、やっと写輪眼で鉛筆を動かし続けている下忍の動きをコピーし、答えを答案に書いていくのであった。
▼ ▼ ▼ ▼
と、もう7問目か。テンテンが見つけた奴がどんぴしゃで当たりだったみたいでラッキーだったなホント。
それに他の奴らも動き出してるし、テマリは……あぁ〜さっき出て行ったカンクロウが戻って来る時に答えを渡す手筈になってんのか。おっと、そんな事考えてたらクナイが頭の上を通過していきやがった。
「うわぁ!」とそんな声が後ろでしたから、後ろの奴は下手なカンニングでもして、持ち点を無くしたんだな。まぁ、次の中忍試験頑張れぇ〜。
テストが始まって30分弱が経過した。問題も最後の10問目を残すだけになって、俺は肘をついて鼻と口の間に鉛筆を持っていき、ゆらゆらと揺らし始める。
45分まで待つのかぁ……ちょっと観察してみっかな。
サスケは……写輪眼を使って答えを書いてるみたいだな。サクラは言わずもがな、自力で解いてるみたいだ。こいつにカンニングなんて出来る術ないから、仕方ないか。
それからシカマルとチョウジはっと…うん。こっちも、シカマルが自力で解いて、チョウジがシカマルの影真似の術で操られてって感じか。ま、俺が最初予想してた事だし、当たり前か。
シノとキバもそれぞれ蟲と赤丸使ってるみたいだし、いのとヒナタは心転身と白眼かぁ。まぁ、余裕そうだな。それに、我愛羅も第三の目開眼させたみたいだし、うん。皆二次に行けるな。
それから、何人かが持ち点を0にされて退場して行った。そろそろ45分経つな…。
「よし、45分経ったな。それでは、これから第10問目の問題を伝える!」
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