(もう夕暮れ……夜になったら、もっと見つけずらくなるってのに!)
舌打ちを一つ打つとアンコは探索に戻る。今は立ち止まっている時間すら惜しいのだ。
(早く見つけないと……あの死体を発見してもう三日。どこにいるのよ……大蛇丸ッ!!)
アンコの顔には疲労の色がにじみ出ていた。目の下にはハッキリとした隈が出来ており、頬は少し痩けていた。予選開始一日目の面影はそこには一つもない。
最低限の食料しか口にしておらず、休憩も碌に取っていない体は既に限界を超えていた。
(草隠れの下忍達は『消写顔の術』で顔の皮を剥がされていた。あんな術を未だに好んで使う奴……そんなイカれた頭をしている奴は私が知る限り一人しかいない。けど……何で今更アイツが木ノ葉に…)
だが、アンコは自分のその体を酷使し続ける。特別上忍となったアンコでも三日間フルに動けば体が限界を迎えるのも仕方のない事だった。大胆な言動や行動をする場の空気が読めない性格のアンコがここまで必死になる理由。
それはこの事件の犯人、大蛇丸が過去アンコの担当上忍だったからに他ならない。いや、その事だけではここまで必死にはならない。アンコは大蛇丸に心の底から心酔していたのだ。それが術になのか人柄になのかは分からないが……。
そんなアンコを担当上忍である大蛇丸は、木ノ葉の里を抜ける際に『捨てたのだ』。そう…まるで子どもが飽きた玩具をその辺に捨てるかのように……。アンコはそのせいでしばらくの間、誰も信じる事が出来なくなり三年程暗部で一人任務をこなしていた。
だが、そんなアンコもある人によって助けられ、今は暗部を辞め特別上忍として里のために日々任務に勤しんでいる。そんな日々を送っていたアンコの前に、自分を捨てた大蛇丸が現れたであろう証拠が出てきた。これを黙って暗部に任す事などアンコには出来なかった。
その為に必死になって大蛇丸を探しているのだが未だ遭遇できていない。アンコははじめ大蛇丸は絶対に自分の前に現れると思っていた。だが、その思いは勘違いだったとでもいうように、二日経った今も出会えていなかった。
(まぁいいわ。木ノ葉に何をしに戻って来たのかは知らないけど……ここで私がケジメをつけてやるッ!!)
口からはその強い思いとは裏腹に、限界を向かえている体が悲鳴を上げているのか荒い息が出てくる。アンコはそんな自分の体を無視して死の森を駆け抜けて行く。と、そんな時アンコの目の端にキラリと陽が沈もうとしているにも関わらず、まだ残り少ない光で輝きを放つ金髪が入って来た。
(あれは……ッシ!)
アンコはその金髪が目に入った瞬間足を止め、一瞬考えたと思ったその時には既にその金色の光に向かって駆けて行ったのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
グルルル……。へぇ〜この森、こんな大きい虎まで居んのか。俺は今5mはあるかっていう大きな虎と対峙していた。何でこんな事になっているかというと、話は二時間前に遡る事になる。
俺達第七班の三人は、朝ご飯を囲っていた六人と別れて行動を開始していた。というのも、天と地両方の巻物を揃えているのが俺達第七班だけである事。そして二つの班は、これから自分達の持っていない片方の巻物を奪いに向かう為だ。
俺達から巻物を奪う事をチラっとでも考えたのか、ネジが俺とサスケに意味深な視線を送っていたが、それはテンテンとリーの二人によって駄目と言われてしまい、結局はこの場にいない他の奴らから奪う事にしたようだった。
テンテンの私達に巻物ちょうだい発言も冗談だったようで、「こんな事で金髪君に貸してる借りをなくしたくないもんね♪」とウィンク付きで笑っていた。それに対して脱力したのは、いのやサスケ、サクラといった本気で信じた面々のみ。俺は「あらら…」と肩を竦めて返したけどな。
それからテンテンが俺の事を金髪君と呼んでいることに関してだが、金髪君は金髪君だよ〜それに名前で呼んで貰いたいなら、私をその気にされてみてねぇ〜だそうだ。それに何とも言えない表情でいた俺だが、いのがそれに激昂して少々めんどくさかったな。
と、朝早くにそんなこんなありつつも六人と別れて移動していた俺達は、早々に今日の拠点を決めて茸やら野草をサクラに取って来るように言って、俺とサスケはその場に残って修行を開始したってわけだ。修行を開始して早々に、サスケが昨日と同じところでブレーキし、それを見守り続けるというのが三十分も続いた頃、俺はそれに飽きてしまった。
俺はサスケにその辺を偵察してくるから真面目に修行してろと言い残して、サスケの返事を待たずにその場から移動した。そして現在、俺は目の前にいる大きな虎と対峙する事になったというわけだ。
「なぁ…お前ってここいらのボスか?」
グルルルル……。
ま、人の言葉を理解できる訳ないよな。でも、見れば見るほどデカいよなぁ。地球の虎の大きさ無視し過ぎでしょ。まぁ、こんなのより大きい動物はこれから先ゴロゴロ出てくるんだけどね。
「俺をご飯にしようとしてるとこ悪いんだけど、俺ってば凄く不味いぞ。そらぁもぅとびっきりの不味さだ。だから、俺に構わずご飯探しに行けって」
そう言って左の方を指し示すが、虎は相変わらず牙を剥き出して唸り続けている。はぁ…しょうがないか。
腰掛けていた巨木の根を蹴って目の前で唸っていた虎の鼻頭を右足で蹴り飛ばした。ギャン!と叫んで、虎は鼻頭を前足で掻き毟り始める。
「これで分かったろ?お前じゃ俺には勝てねぇし、ご飯にすんにも俺じゃ小さすぎるだろ?」
グルル……。
懲りずに牙を剥き出して唸ってくる虎に溜息を一つ吐いた後、ギンッと殺気を放ってやる。そこでやっと俺が自分よりも強く、危険な存在だと理解したんだろう。虎は尻尾を振って逃げ出した。
虎が見えなくなるまで見送っていたところに、シュタっと上の方から誰かが降りて来た。…って何でアンタがこんなとこにいんだよ。
「いやぁ〜あんたって強かったのね」
「偶々ですよ、偶々。ってか、どうしてアンコさんがここに?」
アンコさんの顔…やつれてんな。あれから三日しか経ってないってのに、何があったんだ?
「……あんたには関係ないわ。それより、こんな所で油を売ってるってことは、巻物は両方揃ったのかしら」
あらら。何か不機嫌にさせちまったな。…もしかして、大蛇丸を探してんのか?アンコさんがここまで必死になるなんて、大蛇丸関係しか思いつかねぇしな。
「えぇ。ちょっと前に揃いました。でも中央の塔へはギリギリまで向かいませんけどね」
「あら随分早いわね。でも…どうして?」
「終了時間いっぱいまで修行しようかと思いまして。五日間っていう時間をどう使うか。そういうのも、この試験は見てるんじゃないですか?」
……うん。大蛇丸の事は言わないでおこう。ただの下忍が大蛇丸を撃退したなんて信じてくれるわけねぇもんな。アンコさんだって探しても見つからなかったら、諦めて塔に戻るだろうし。
「へぇ……イビキの言ってた通り、アンタ面白いわね。……試験管の私が贔屓しちゃ駄目なんだろうけど、アンタは絶対に中忍になりなさい。そしたら、私が可愛がってあげるから♪」
「アハハ…頑張ります」
「照れるな照れるな。それじゃ、私はもう行くわ。頑張んなさい」
そう言って俺の頭を乱暴に撫でた後、アンコさんは背を向けた。母さんにちょっとだけ性格似てるかも…。
「あぁ、そうそう。もし変態に会う事があったら、形振り構わず逃げなさい。約束ね♪」
最後にそう言ってニッコリ笑い、アンコさんは枝に飛び乗って森の中に消えて行った。…やべぇ。今の最後の笑顔、真面目にやべぇ。頭がクラっとするくらい色気感じたわ。
紅先生と言いアンコさんと言い、性格さえ良かったら里の奴ら放っておかないだろうな。ま、紅先生の場合アスマがゲッチュしちゃうんだけどさ。
駆けて行くアンコさんの背中を見送りながらそんな事を考えた後、俺は拠点に戻る事にした。アンコさんに応援されたんだ。サスケの修行を完了させて、皆の度肝を抜かせてやろうかね。
そして拠点に戻った俺を待っていたのは、「が、頑張ってね」「あ、あぁ…」となぜかラブコメっている桃黒二人だった。……えっと、お前らいつそんなに進んだの?
俺が戻って来た事にいち早く気付いたサスケは照れ隠しなのか、利き手ではない右手の方にチャクラを集め出し、サクラは顔を真っ赤にさせて俺に文句を言ってきた。
第七班は今日も平和だぁねぇ。
▼ ▼ ▼ ▼
ナルトと別れたアンコは再び大蛇丸を探して、死の森を駆け抜けていた。
(こんなにも探して見つからないって事は……既に狙いのモノが手に入ったか、それとも何か問題が起きたかのか……!?)
木の枝を飛び移っていたアンコの足が急に止まると、医療忍者が好んで使うメス状の忍具を袖から四本滑らせて取り出し、それを指に挟んで構えた。
(…アンタはもう手配書レベルSの超危険人物。…だから私がここであんたを命に代えても死止めて見せる。それがあんたから全てを教わった…あんたの元部下だった……)
後ろを振り向いて、手に持ったメスを後ろにいるだろうソイツに突きつける。
「私の役目よね。大ちま…る!?」
だが、そんなアンコの決意も目の前にいる大蛇丸を見れば揺らいでしまうのだった。
「フフ……そうね。今の私相手なら、あんたでも出来るかもしれないわね…」
(こいつ…ボロボロじゃない…)
アンコの大蛇丸を見て抱いた感想は決して間違いではない。包帯を体中に巻いているのか、顔も片目と口以外は包帯で覆われ、手は指も包帯でぐるぐる巻きになっている。更に、服には血が滲み、所々破れてもいたのだ。
伝説の三忍と謳われていた嘗ての自分の担当上忍。そんな人物がボロボロの姿で自分の前に現れたら、アンコのようになってしまうのも仕方のない事だろう。
だが、大蛇丸の鋭い殺気は少しも失われていなかった。それに気付いたアンコは気持ちを切り替えて、再度メスをその手に構え大蛇丸と対峙する。
「………あんたがどうしてそこまでボロボロなのか知らないけど、私は油断も慢心もしないわ。確実にあんたを殺す!!」
手に持ったメスを大蛇丸に向かって投げようと投擲動作に入ったアンコ。だが、それは大蛇丸の口から飛び出た長い舌によって阻まれてしまう。
10mは離れていた相互の距離は、大蛇丸の舌によって零に縮められた。
大蛇丸の舌が目前に迫った瞬間、一度は真上に跳ぶ事で回避したアンコだが、大蛇丸の舌は触手のようにアンコを追い、仕舞いにはメスを持っていた手をその舌によって絡め取られてしまった。
その衝撃でメスを落としてしまったがアンコはこれがチャンスだと思い、手に巻きついている舌を掴んで、自由な方の片手で印を結びチャクラを練る。
≪潜影蛇手!!≫
「あら。私が教えた術、まだ使ってくれていたのね。でも、あんたは木ノ葉の特別上忍なんだから、私の術を使ってたら駄目じゃない。…それに、私に私の術が効くと思うの?」
アンコの袖から口寄せされた無数の蛇が、大蛇丸の舌を伝って突き進む。そして、大蛇丸に噛みついた蛇を力任せに自分の方に引っ張った。
振り回す遠心力によってアンコの後ろにあった木の幹に大蛇丸は叩きつけられる。そして、そんな大蛇丸に向かってアンコは枝の上を駆けて行く。
駆ける途中、無数に口寄せした蛇を袖の中へと掃除機のコードを回収するように戻す。また、再び袖からメスを滑らせて指で掴むと、駆けた勢いそのままに枝を蹴って真上に跳んだ。
「喰らえぇえええええええ!!!」
メスを握っていた両手を交差させて投擲する。そして、交差させた腕で頭を守るようにし、体を丸めて衝撃に備える状態を作る。
それはなぜか。アンコに投擲されたメスを良く見れば、持ち手の所に紙のようなモノが巻きつけてある。投擲されたメスは標的の大蛇丸へと狙い違わず突き刺さり、それと同時に爆発を起こした。
ただの爆発ではない。計八本のメスに巻かれた起爆札による爆発なのだ。それは大蛇丸が背にする巨木をも破壊するのには十分な威力だった。
「ッチ…これであんたが殺せるんなら、簡単なんだけどね……」
「ええ、ホントそうよね」
アンコが瞬身の術で移動した枝の上には、今の爆発を全く喰らっていないと分かる大蛇丸が巨木を背にして腕を組んで笑っていた。
大蛇丸が居たであろう爆発の中心には、太い巨木が中ほどから折れている様子があるだけ。大蛇丸がどうやってあの状態からアンコのいるこの木の枝に移動したのかは分からないが、現に大蛇丸はあの爆発を回避しアンコを嘲笑うかのように笑い続けている。
アンコはそれを見て唇を噛み、再度突撃を仕掛けようとするが…。
「だから無駄だって言ってるでしょ。はッ!」
「あ…ぐぐ……」
大蛇丸が印を組んだ片手にチャクラを練り込むと、アンコは苦しげな声を出して首を手で押さえて片膝を着いてしまう。
「ぐっ…い、今更…何をしに来た!!」
「久しぶりの再会だと言うのに…えらく冷たいわねぇ」
包帯で覆われていない片目は眼光鋭くアンコを見やる。その眼に宿る光がどす黒く濁っているとアンコは感じた。
「フンッま、まさか、火影様を暗殺でもしに来たっての?」
首筋を押さえて苦しそうな声を出すアンコに大蛇丸は肩を竦めて否定する。
「フフ、いいえ。その為にはまだ部下が足りなくて、ね。……里の優秀そうなのにツバ付けとこうと思って来たんだけど…この通りよ」
「ぐっ……うっ…!!」
大蛇丸が一歩近づくごとに苦しげな声をアンコは上げる。また、それに合わせて体が前のめりに倒れて行く。
「一昨日なんだけど、あんたにやったそれと同じ呪印をあの子にプレゼントしてこようとしたら……フフフ、私とした事が油断してこうよ。全くあんな優秀に育ってるとは思いもしなかったわ」
アンコの首筋にそれまでなかった呪印が浮かび上がって来る。
「へぇ……ぐっ…あ、あんたをそんなにしちゃう奴が下忍の中にいるなんて、ね……」
「そうなのよ。その子のせいで昨日一日回復に使っちゃったし。でも、おかげであの子を欲しくなっちゃったのよねぇ。どんな手を使っても…ね」
そう言って大蛇丸はアンコの目線と自分の目線が合うようにしゃがみ、アンコの顎を掴み自分と目を合わせる為にアンコの顔を上げた。
「そんな事、私がさせないわ……絶対に!あぐっ…」
「もしかして嫉妬しちゃった?あんたの事は捨てちゃったしねぇ……。私が欲しいのは『うちはサスケ君』。それから『うずまきナルト君』の二人よ」
(うちは……写輪眼か!!それに…うずまき……ッ!まさか!?)
「そうよ。あの九尾の坊や…強くなったってもんじゃないわよ。実力で言えば既にこの里でも上に行くんじゃないかしら?私をこんなにしたのもナルト君だしね」
アンコの顔に驚愕のそれが浮かぶ。九尾を体に封印された子どもがいる事は知っていた。だが、その子どもがこの試験を受けているなんて露ほども知らなかったし、その子が大蛇丸をこんなにしたなんて事は到底アンコには信じられなかった。
大蛇丸の話が本当だとすると、九尾の子どもは自分よりも強いって事になる。そして、そんな子が大蛇丸の手に渡ったら……。
「そんな事絶対に私がさせない!!ぐっ…」
「フフフ…本当にいつまでも変わらないわね、あんたは。でもね、あんたも分かってるでしょ?」
大蛇丸はアンコの頬をその長い舌で舐め上げる。アンコは平気そうな顔をしているが内心舐められた部分を直ぐにでも拭いたくて仕方なかった。
「私が本当に欲しいモノを手に入れない事なんてなかった事を…ね」
そう言ってアンコの顎を掴んでいた手を離し、大蛇丸は膝をついたアンコに背を向ける。
「あぁ、そうそう。言い忘れてたわ。くれぐれもこの試験…中断させないでね」
アンコに背を向けたまま言葉を続ける大蛇丸。アンコはそれを睨みつけることしか出来なかった。
「ウチの里からも三人程お世話になってるの。私も楽しませて貰うわ。……もし、私の楽しみを奪うような事があれば…木ノ葉の里は終わりだと思いなさい」
最後にアンコに振り返った大蛇丸の眼には本気が窺える。アンコはそれを理解したが、首筋の呪印のせいで意識が朦朧として来ていた。
大蛇丸はアンコのその様子を見て一度クスっと笑った後、白煙と共に姿を消した。
(ほ…火影様に…つ…たえ……)
アンコの意識はそこで途切れた。
▼ ▼ ▼ ▼
アンコからの要請を受け、暗部より何人かが死の森の中を駆け回っていた。草隠れの下忍の顔を奪い、草隠れの忍びとして中忍試験に潜入している大蛇丸を目標に…。
そして、それは火影こと猿飛ヒルゼンも同様だった。ヒルゼンは、中央の搭へ向かう傍ら護衛に付いている暗部の者達と一緒に死の森の中を螺旋を描くように移動していた。
「火影様。中忍試験の試験管より、搭に到着した下忍が3組になったと連絡が来ました。もしかしたら、その中に…」
「…いや、その3組の中にはいないじゃろう。おそらく、到着者が増えて来た頃を見計らって来るじゃろう。出来れば、その前に阻止したいが…」
ヒルゼンの考えは半分当たっていた。大蛇丸は予想外のダメージを受けた事により、カブトからの治療とそれに伴う回復する時間を取らなくてはならなくなったからだ。
大蛇丸の当初の計画では、五日間という時間はサスケに呪印を植え付けた後、サスケがどのようにそれを扱うのかを観察する時間だったのだ。
それが自分の体を癒す時間に向けなくてはならなくなった。大蛇丸にとっても予想していない事だった。
ヒルゼンは勿論、暗部の者達もそれを知る由はない。ただただ、大蛇丸をこの五日の内に見つけ処理するべく、動くだけなのだ。
「アンコからもあれから連絡がないのも気に掛かる。…アンコが大蛇丸に接触出来たのか、それを確かめる為にも一刻も早く見つけるのじゃ!」
「「はッ!」」
ヒルゼンからの支持を他の者に伝える為、護衛の一人が瞬身の術を使ってその場から去る。それを見送り、ヒルゼン達もまた探索に戻る事になる。
(奴の狙いが何なのか…。わしの命なら既に現れていなければおかしい。それにこの第二の試験中に動いたのも気に掛かる。参加している下忍達の中に奴の目標がいるというのが一番可能性が高い)
ヒルゼンは死の森の中を駆けながら、思考を続ける。火のマークを中心にした笠の奥、ヒルゼンの目は細く鋭い。
(雲に霧、岩に砂。それから木ノ葉。五大里の誰かなのだろうが、この試験に参加している者の中で稀有な能力の持ち主は……砂の我愛羅と木ノ葉の日向。それに…うちは、か)
本来、他里から中忍試験を受けに来る下忍は稀有な能力の持ち主はいないのが通例。幾ら停戦しているとは言っても、他里に自らの里の秘を出すなど馬鹿な真似はしない。
(日向の者はネジとヒナタ。うちははサスケを残すのみ。三人の誰かなら……サスケじゃろうな。奴なら間違いなくサスケを狙ってくる。サスケのおる班には…ナルトがおるな)
うずまきナルト。ヒルゼンにとって、孫の木ノ葉丸と同じく自分の孫のような存在。そして、四代目火影の忘れ形見。それら二つよりもナルトを知っている者達は次の事が有名だ。
『九尾の化け物』
四代目火影が封印した九尾を宿した存在。それがうずまきナルトだ。
(サスケは勿論じゃが、ナルトが狙われては四代目に顔向け出来んからな)
「スピードを上げる。ちゃんと付いてくるのじゃぞ」
「はッ!」
ヒルゼンは更にスピードを上げて、死の森の中を駆けて行く。
あとがき
最後の部分をちょい変えました。にじファンの時よりはよくなったと思います。それでは、また次回の更新で。
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