はぴねす!
〜Magic & Fairy Tale〜
Tale1 バレンタインイヴ
幼馴染からの呼び出し



   ピリリリリ ピリリリリ ピリリリリ


   「う、う〜ん。うっせ〜。」



   少々うるさいの音が彼の耳の側で金切り声を上げる。

   眠い目をこすりながら、手を出し、つかんだものそれは携帯電話だった。



   「う〜、この着信はアイツか。このまま無視するのもいいが……。

    アイツのことだからたとえでなくてもずっと鳴らし続けるんだろうなぁ……。」



   はぁ、と盛大にため息を吐きながら、

   覚悟を決めて通話ボタンを押した。

   そして聞こえてきたのはかわいらしい乙女の声。



   「ゆうま、出るのおっそ〜いっ!」



   「せっかく出てやったってのに、その言い草はないだろよ。」



   「それになぁに!?声ガラガラじゃない!!

    もしかして、いままで寝てたって言うの!!?

    もうお昼回ってるのよ!!!!?」



   どんどんと鬼気迫る感覚で電話の主は

   声を荒げる。それをやっかみそうに

   顔をしかめながら、雄真は答えを返す。



   「昨日はいろいろあって寝てないんだよ。

    それに今日は日曜日だぞ!!?

    夜まで・・・・・・いや、いっそ朝まで寝る!!!」



   雄真流休日の正しい過ごし方を熱弁するが、

   それは電話口の声でハバッサリと切り捨てられた。



   「だぁめ!!そんなのはあたしが許しません!!!

    というわけで、2時にいつものオブジェ前ね♪待ってるから。」



   「はあ!?ちょ、ちょっと待て!!

    なぜにいきなりそうなる!!?

    っていうか俺の主張は無視か!?」



   抗弁さえ受け付けない電話の向こう側は

   それはいつものことというように少し甘えた声を出す。



   「あったありまえでしょお?

    そんな主張が通るほど世の中甘くないわよ♪

    というわけだからぁ、いいでしょお。ちょっと付き合ってよ〜。」



   「おいおいおい、勘弁してくれよ。

    俺はまだ惰眠を貪りたいんだ。

    こんなときのハチだろ!?ハチ誘えよ〜。」



   ハチというのは彼らの親友兼腐れ縁、本名高溝八輔という。

   一言で言えばバカ、としか言いようがない。

   濃いキャラではあるが、いつもこの電話の主

   渡良瀬準にいじられている、不幸な戦士ともいえる。

   ルックスはいけるほうだが、性格のほうで品位を落としている。



   渡良瀬準。電話口のかわいらしい声と、

   かわいらしい魅力、妖艶さを持ち合わせたオトコのコである。

   もう一度復唱する。彼はオ・ト・コ・ノ・コなのだ。

   初めて会った人は確実にかつ間違いなく、

   女の子といえば女の子で通るだろう。

   そんな女の子のようなオトコノコなのだ。



   そして、電話を受けた主人公小日向雄真。

   ルックス性格とも良好。彼の師匠の指導もあって、

   人当たりもよく、成績、運動神経、その他もろもろ

   ほぼそつなくこなす優秀な人材だ。

   料理もできるが、彼の義妹、すもも、

   そして義母に当たる音羽にほぼ独占状態。

   唯一できるのは二人が出払ったときくらいであろう。

   雄真が幼い頃、彼の父親と音羽が再婚した。

   産みの母親は生きているが、仕事で手が離せないと聞かされている。

   もちろん雄真はそこらへんは理解しているものの

   母の顔がどうであったか、もうほとんど覚えていなかった。



   準、ハチ、雄真は幼い頃からの付き合いで、小中高、同じ学び舎を共にし、

   遊ぶにしてもなんにしても、ほとんど彼らは共に行動していた。

   そんな彼らだが、今日に限って、ハチには電話がつながらないらしい。







   「そのハチにつかまんないのよ〜。

    何か用でもあるのかしらね〜。

    というわけで〜、お願いだからさ〜、ね?」



   本人が目の前にいたなら、確実に上目遣いで方目をつぶって、

   ペロッと舌を出して両手を合わせたお茶目な姿を披露していたことだろう。

   そんな想像は露ともしない我らが雄真だが、

   せっかくの親友の頼み、聞かないわけにはいかなかった。



   「はあ、まったくしょうがないな〜。

    え〜と、2時だって?」



   まだ少し寝ぼけ眼だが、ぐぐっと背伸びして、少しぼやけた視界で時計に目をやる。

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   この間実に数秒、彼は時間が止まっていた。

   最初は見間違いと思ったのだろう。

   眉間に指を当て、ゆっくりマッサージする。

   しかし、何度時計を見ても、その時刻は1時を回りすでに半刻が経過していた。



   「今度こそちょっと待て!!!

    2時っつったらあと30分しかないじゃないか!!!

    お前は俺に世界記録にでも挑戦しろっていうのか!!!?」



   「あはは〜、実はあたしはもう既にそこに向かっているわけでして、

    あと15分くらいでついちゃうからヨロシク〜♪」



   「それはお前の都合だろうが!!!」



   思わずツッコまずにはいられなかった。

   約束したはいいが、目的地までは、最低でも20分ほどはかかる。

   しかも寝起きで、準備もしないといけないわけで、確実に2時は回ってしまう計算だ。



   「ええ〜、いぃじゃなぁ〜い。お願い。

    それにほら、あたしと雄真のなかじゃな〜い?

    来てくれたら何かサービスするからさぁ。ね?」



   某翼を生やした第一ドールのような妖艶な声を雄真に浴びせかける。

   しかもサービスというオマケつきだ。

   彼のお願い姿の想像、言葉遣い、そして若人の想像を湧きたてるフレーズの

   三連コンボには大いにダメージが入ったようで、精神的にぐらついているようだ。



   「で、電話口でそんな声出すな!!

    思わずその気になりかけただろが!!!」



   「あらぁ、いいじゃなぁい、べつに。ね♪雄真♪」



   すでにスイッチが入っているのか、彼の行動はどんどんエスカレートしていく。

   雄真が押しに弱いとわかっていての行動であろう。

   さすがに幼馴染だけあって彼の扱い方は十二分に承知しているようだ。



   「・・・・・・お前今、投げキッスとかしていないよな?」



   「うん。した♪」



   「はぁ〜、やめんか・・・・・・それ。」



   長年の付き合いからということもあるが、準の行動はいささか過激なものが多い。

   彼の行動にはもう付き合うのに疲れたのか、ため息をもらし、ツッこむ気力もないようだった。



   「・・・・・・雄真?・・・・・・あのね。」



   「なんだよ?急にあらたまって・・・・・・。」



   少し心配そうな声色で、声をかける準。

   雄真も、彼の急激な感情の変化に戸惑いを隠せなかった。

   しかし、電話越しの小悪魔はある行動に出た。



 チュ♪




   その瞬間雄まの周りの空間が砕けて崩れ落ちるような感覚が広がった。

   そんな空気を露とも知らない準は携帯の向こう側で無邪気に笑っていた。



   「あはははは。あれ?雄真、怒った?」



   「・・・・・・スマン準、お前のとった行動で、

    せっかく付き合おうと思っていた俺の心が崩壊した。

    というわけで、俺は惰眠を貪ることにする。」



   「あああ、うそウソ嘘。冗談、冗談だってば。

    あ〜ん、ねぇ、雄真ぁ。お願いだからさぁ。」



   一気に機嫌を損ねた雄真を再度炊きつけようと奮闘する準。

   しかし、電話越しの彼は頑として動こうとしない。

   よって彼は最終手段にうって出ることにした。



   「いいわ。そっちがその気ならこっちもその気!

    来てくれなかったら、明日本気で告白しちゃうから!」



   「な、なにぃ!?」



   この一言は雄真にとっては最大の禁忌であった。

   いつになっても準の最終手段はこれであるが、

   雄真に至っては何年経っても、これに対抗できる手段がなかった。

   かといって、本気でこれに対応したら、準が喜ぶ上に、腐女子たちも悦ぶ。

   ちなみに雄真×準のカップリングモデルで

   実際に同人誌を販売している女の子たちがいるくらい、

   彼らの学年で準、雄真はかなり有名だ。

   まあ、ハチはオマケくらいで知られているだろう。



   「バリバリの手作りチョコを徹夜で仕込んでぇ、

    クラスのみんながいる前で、雄真に告白するの♪

    晴れてベストカップル誕生の瞬間をクラスの前のみんなが目撃するの♪」



   「俺、明日は病欠の予定だから。」



   「だ〜いじょ〜ぶ。雄真が休んでも、

    あたしは何日でもまっててあげるから♪」



   こうなるともう手が付けられない。

   あとはもう詰め将棋。

   どんなにがんばっても雄真に勝ち目はなかった。



   「お前は俺にひきこもりでもさせたいのか?」



   「じゃあ、今日付き合ってよ〜。おねがい〜。」



   「・・・・・・はあぁ〜、わかった、わかりました。

    煮るなり焼くなり、好きにしてください。

    どこぞの地獄にでも叩き込んでくれ。」



   こうして雄真の敗北が決定した。

   というか、彼が電話に出た時点で敗北は必須であったといっていい。

   準が有無を言わさず最終手段に訴え出ればの話ではあるが・・・・・・。



   「ほんと?うれし〜!!じゃ、待ってるからね♪」



   「いつか必ず脅迫で訴えてやる。」



   「何のことかしら?聞こえないわね〜♪」



   彼のささやかな反撃は電話越しの大敵にはお茶目でしかない。

   まさに負け犬の遠吠えであった。



   「いっとくが、2時は確実に回るからな。

    遅れても、文句は言うなよ。」



   そういう彼が時計を見ると、長針はすでに8の字をさしている。

   このまま、着替えもせずに、ダッシュでオブジェ前までいけば間に合うが、

   いかんせん彼は寝起きの状態だ。これから予想される戦場で、空腹は命に関わる。



   「はいは〜い。それじゃ、後でね♪」



   そういって、電話は切れた。

   最後はウインクでもしそうな勢いだったが、

   投げキッスよりかは幾分マシであろう。



   「はあぁ、なんか、出かける前からものすごい脱力感だ。」



   「だらしないですねぇ、マスターは。」



   ふと、彼の頭上、いや、頭の付近からかわいらしい声が響いた。

   彼の頭からひょっこりと顔を出したのは、

   いつか見たジュゼやマーサのような精霊の姿そのものであった。


TO BE CONTINUED


    なかがきという名の座談会
   (シルフェニア出張Ver)

ひ、ヒドイ目にあった・・・・・・

あ、おかえりなさ〜い
大丈夫でした?

なんとかな・・・・・・説得には成功したが・・・・・・

どんな裏取引があったのか
早速知りたいことなんですけど・・・・・・

そんなの教える気もないが
お前はシルフェニアでははじめてなんだから
読者の皆さんに挨拶しておきなさい

あ、それもそうですね♪
こんにちは、はじめまして
今回から座談会に参加する
渡良瀬準です、ヨロシク〜♪

はい、よくできました
さて、いきなり次回の話になるのだが・・・・・・

それもいいんですけど、
あたしのセリフって、“♪”マーク
多くないですか?

それは気にするな
変換でハートマークが出てこなかったから
“♪”マークで代用しているに過ぎん

えッ!!?てことは今回“♪”マークのところは
全部もともとハートマークのセリフだったの!!!?

全部が全部ではないが
まぁ、八割はそうだな

なんでハートマークがはいってないんですか!!
そうすればもっと雄真への愛情表現が
飛躍的にアップするというのに!!!

なに物騒な話をしているんだ・・・・・・

おお、主人公の雄真くんではないか
こんなところでどうしたんだね

どうしたもこうしたも、
ここに呼んだのはあんたじゃないか・・・・・・

あ、そういえばここに来いって
手紙を出した気がするな

自分のとった行動くらい
きちんと把握しておいてくれよ

それよりも雄真
まずは自己紹介からでしょう?

そういえばそうだな。
えっと、主人公の小日向雄真です、ヨロシク

なんか味気ないのぉ・・・・・・

そうね、もっとインパクトあるのを
期待していたのに・・・・・・

お前たちはおれに何を求めているんだ・・・・・・

何って決まってるじゃない

お前をからかって遊ぶためだが?

俺、帰って寝ていいか?

あああああ、ウソうそ嘘鷽、冗談だってば、冗談

ちょっとからかうだけでも
放送事故を覚悟せねばならんのか・・・・・・

だったら余計なことしないでくれ・・・・・・

はぁ、一体こんなキャラに
誰がしたんだか・・・・・・

あんたでしょ?

はい、その通りでございます・・・・・・

でも、ワイルドな雄真も
カッコよくて惚れちゃいそう・・・・・・

やっぱり今俺帰っていいか?
いまここで!!!
これ以上は危険すぎる!!!

まあまあ、そろそろお開きだから
もうちょっとゆっくりしていきなって

あんた絶対楽しんでいるだろう!!

いや、そんなことはない
さて、次回のお話だが・・・・・・

ついに雄真の妹が出てくるのね!?

すももがでてくるのか・・・・・・

どうした?テンション下げて
なんか彼女にわることでもしたんか?

いや、隠し事しているのが
すこし心苦しいだけだ・・・・・・

ま、本編のほうではみんなに
雄真の強さはわからないことにしているからな

魔力のほうも完全に抑えてあるしね

というわけで、今回はこれでお開きといたしま〜す

次回のゲストはすももちゃんだよ♪

さてと、帰って寝るとするか・・・・・・

ばいば〜い♪

某月某日
瑞穂坂学園校門前より実況中継



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