――なのはとフェイトは動乱中、日本陸海軍機も使いこなした。そのうち、最初に乗り込んだのは、黒江が47戦隊から払い下げて来たキ44(二式単座戦闘機)だった。



――ある日

「いつもジェットを必ずしも使えるわけじゃねーだろ?念の為に、前にいた部隊からお下がりをもらってきたぜ」

「え〜と……それ、隼でしたっけ?」

「どこをどうしたら、こいつがキ43に見えるんだよ!コイツは44の鍾馗だっつーの……」

黒江は、自身がかつて愛機としていた『二式単座戦闘機』の知名度が低いことに落胆し、肩を落とす。なのはが真顔で言ったのが余計に効果抜群だったらしい。

「思い出した、もしかして、一部のマニアに人気の二式単座戦闘機ですか?プラモ作ったの高1の時だから、すっかり忘れてた」

「お、おう……。コイツは史実じゃ少数試作で終わった『キ44-V』だ。誉に載せ替えて、モデル寿命の延長を図ったが、早期に後継機のキ84が完成したから、結果として、うちらの世界でも少数配備に終わったモデルだ」

キ44は元来、大出力のエンジンに軽い胴体、小さい主翼を備えた機体である。『重戦闘機』への見識が定まっていなかった時勢故の試行錯誤だが、配備から数年経った頃、後継のキ84のテスト代わりも兼ねて試作され、少数が出回った性能向上型を与えた黒江。これで訓練を積んだなのはとフェイトは、より上位の機種である『四式戦闘機』、『五式戦闘機』、海軍機の『紫電改』、『烈風』も乗りこなし、なのはは最終的には烈風に乗り換え、フェイトも五式戦闘機に機種転換した。それらは予備機の一部を自分達の世界に持ち込んで、バニングス家の私設飛行場に秘匿していた。

――ある休暇中 なのはの地球

「偉いもん持ち込んでくれたわね、アンタ。実戦装備済みの日本軍機なんて」

「にゃはは……」

「紫電改、烈風、五式戦、四式戦、二式戦……マニアが見たら狂喜乱舞するわよ」

アリサ・バニングスは親友が持ち込んだ、旧日本軍機のラインナップに半分呆れていた。主に戦争中期から後期に活躍した戦闘機群だが、この世界では現存機が無いものも複数あり、特に実戦配備まで行かなかった悲劇の機体である『烈風』の実機があるのは信じられないといった感じであった。しかもフライアブルで。

「特に、コイツなんて表沙汰にできるの?少数が戦線に出回った紫電改はまだしも、試作段階で終わった上に、現存機が一機もないのよ?烈風は」

「だよねぇ。性能は紫電改より良いんだけどねぇ、コイツ」

F4Uコルセアや艦上攻撃機『流星』同様の逆ガル翼を持つ大柄の機体。全てが遅すぎた(F6Fどころか、F8Fやジェット機が現れる時勢にF6F級の性能しか無い、空母機動部隊がいなくなったのに、艦上戦闘機)と揶揄されるものの、機体の素性そのものは零戦の正統後継機に相応しい素直さを持つ烈風。扶桑皇国海軍はジェット機配備を進めたいが、現場から挙がった『ストップギャップの機体が必要だ』との声を鑑み、当初予定の通りに烈風は生産の運びとなった。(ただし、最終的にストライカー型は試作機が少数配備された段階でキャンセルされたために、戦闘機のみが戦線に出回った)なのはが保有する機体は、その過程で改良された機体の一つだ。

「エンジンはオリジナルなの?」

「その改良型。2400馬力に改良した『ハ43ル特』だって。艦戦がジェット機に移ってきてるから、戦爆扱いで配備してる機体だからね」

そう。レシプロ最高峰に近い烈風も、次世代航空機であるジェット機の前では、色褪せた存在である。そのため、扶桑皇国海軍は『戦闘爆撃機』扱いで配備しているのが現状だ。

「性能は史実より何割増しなの?」

「三割くらい。シーフューリーと互角だから。史実だと、せいぜい630キロ行くか行かないかだから」

アリサにそういうなのは。連邦が有償提供の一環で製作した『烈風』は、カタログスペック面で、英国最後のレシプロ戦闘機『シーフューリー』にほぼ総合的に比肩する水準の性能を誇る。(爆弾搭載力で上回る)。操縦系統は史実日本海軍式ではなく、総合的に、より優秀であった陸軍式になっている。

「本で見たけど、日本海軍ってさ、なんでトリガーをスロットルにつけてたのよ」

「史実だと、『トリガーを引くときに、操縦桿を動かしちゃうから』って理由だったんだ。ところが、ベテランが消耗し尽くした時に裏目に出て、遂には現地改造で操縦桿にトリガーをつける部隊まで出る始末だったんだ。扶桑の場合は、ジェットへ更新する都合上、スロットルにトリガーをつけると、パイロットの誤操作でエンジンがストールして落ちる可能性が分かったから、慌てて慣例を撤回した感じ」


「どこも結局、事故で死者でも出ない限り、慣例を破れないって事ね」

「そういうこと」

「なんか幻滅するわね、それ」

「大きい組織なんて、国家運営でも、民間運営でもそうだけど、長く続くと成功経験に固執して、冒険を避けたがる傾向になるんだよ。大抵の場合の日本海軍がそれさ。日露の日本海海戦と、ゼロ戦の成功に固執した結果があれだから」

「なんか、どこの時空でも同じ結果ってのは、薄気味悪いわね」

「極稀に、太平洋戦争を休戦に持ち込めた世界があるけど、前提条件に『電子技術で欧米と同等、早期に烈風か紫電改で艦載機を更新でき、海上護衛戦に勝ち、高々度迎撃機が1943年中に間に合うか』だもの。大抵の場合は無理だよ」

そう。戦前日本の国力でそれを実現させるには、不可能なハードルが多い。『太平洋戦争で勝利できる』世界の希少性がそれを物語っている。

「でしょうねぇ……」


「扶桑は太平洋戦争が起こらなかった世界かつ、資源供給地があるから、烈風や紫電改を急速に配備できた。その点じゃ稀有な世界だよ。コイツを飛ばしたら、どういう反応するかな?」

「烈風なら大丈夫じゃない?戦争に間に合わなかったから、知名度も低いし、何よりもゼロ戦の後継機は紫電改なんて認識なんだし、あのゲームしてないかぎりはわからないでしょ?」

「だよねぇ」

――なのはもアリサも、近頃、日本で流行している某軍艦の擬人化ゲームをプレイしていた。なのはに至っては、旧軍提督と知り合いな都合上、先行登録までした程だ。そのため、アリサは話題についていけるのだ。

「それにしても……あんた、防大に行くんですって?」

「うん。対外的に高卒でブラブラするわけにもいかないし、翠屋の後を継ぐわけじゃなくなったから、連邦軍の指令もあって、防大に入学することにしたんだ」

「そうなると、階級はどうなるのよ?いくら連邦軍で中尉だからって、自衛隊でいきなりそれ相当になるわけじゃないのよ?」

「連邦政府がどうにかして、早期に高い方の階級で釣り合い取らせるそうな。入隊しちゃえば圧力かけられるから。連邦政府は一応、国連の後継的位置だから」


――地球連邦は形式上、国際連合が発展して政治的権限を持ったような準備組織が始まりである。星間国家への再編後も、国連の後身である歴史である故、旧国家群より権限が上であるという理屈で、旧国家群を統制している。特に日本は国連を篤く信仰していたという歴史がある故、『国際連合の権威』に弱い。これは戦前に国際連盟を脱退したトラウマの反動からだ。

「なるほどね。でも、こんな大仰な機銃フル装備なんて、飛ばせないわよ」

「この世界で飛ばすときは、ダミーに変えるさ。それと近々、フェイトちゃんが面白い世界発見したから、潜入捜査するっていうからっていうから、持ってきたんだ。」

「最近、あんたが読んでる『紫電改のマキ』とかいう漫画でしょ?そこに潜入すんの?ん?もう19でしょう?フェイト」

「外見は17だから、編入生って形でごまかすって。それと、最近は空戦に出てないから、ウォーミングアップも兼ねて行くそうな」

「最近は書類仕事でもしてんの?」

「数年後に宇宙刑事ギャバンとかがいる星に留学する事が決まってさ。その事前勉強で忙しいんだ。それで腕が鈍るーとか言ってるから、上が休暇も兼ねて、そこに送りこむみたい」

「ふーん。で、あんたは防大行きと」

「そそ。ちょうど空自の戦闘機乗りの性別制限が無くなったからね」


――この時期、航空自衛隊は人手不足と、政権の政治的な思惑とが絡み合って、兵科の性別制限を完全に撤廃していた。なので、なのはは空自に入隊するつもりなのだ。パイロット資格は米国で取得済みであるのと、連邦軍の軍籍がある故、必然的に空自での進路は明るい。

「あんたの腕なら、飛行教導郡のパイロットだって圧倒して余るくらいできるじゃない。女性自衛官は客寄せパンダみたいなところあるけどさ」

「うん。まぁ、自衛官は公務員意識あるから、完全な職業軍人よりは楽な仕事だよ。死ぬことも事故以外はないしね。実戦経験がある身から見りゃ、お笑いだけど」

――そう。なのはは飛行時間がこの時点で1300時間(年間150時間ほど)を超えていた。実戦の空を飛んできたので、『訓練に励んでいる故、先進国中でも高練度とされる空自の隊員』を圧倒できる自信があるし、自負もあった。地球連邦軍最高の実戦部隊であるロンド・ベルの一員である誇りも関係している。(ロンド・ベルは練度が異常なので、教導部隊よりも練度が高い)

「言うわねぇ」

この時のアリサ・バニングスとの会話は数年後、なのはが三尉として、航空自衛官に任官された後に現実化し、航空自衛隊最高とされる飛行教導郡のパイロットを逆に圧倒してしまい、教導郡の面目丸つぶれ(空自教導郡は米軍トップガンを圧倒する腕前あり)な状況になってしまい、空自部内で大問題となってしまう。(飛行教導郡隊長が政治的責任を取らされ、異動させられたらしい)その後に、なのはが『実戦経験豊富、おまけに時空管理局の教導隊員である』事が判明した際、『勝てるわけ無いだろ、あんなバケモン』、『マジでキ◯ガイ機動取りやがる……なんだあのアマァ!?』、『悪魔だ……俺らのチ◯ポを取りに来たんだ……』と教導郡パイロットが心底震え上がるほどに評判が立っていたため、24の時に移籍が打診されたが、当人はブルーインパルス志望であったために、そちらに異動したため、教導群への移籍はブルーインパルスの任期終了後にずれ込んだとの事。










――動乱はなのはらがちょくちょく休暇を取っている間、小康状態であったものの、連邦軍を介して、機動六課は続々と兵器を受領していた。


――トリビューン 格納庫

「本当、MSの博物館になってきたなぁ」

「ZZ、Z、ネロ系、Sガンダム……アナハイム系ガンダムやなぁ」

なのはがいない間に、Sガンダムが『アナハイムの善意』で提供されていた。Ex-S状態で組まれており、それで固定されている。そのためにネロの数は減らされていた。

「なのはちゃん、帰ったら喜ぶで。Sに乗りたがってたし」

「しかし、主はやて。Sガンダムの搭乗資格、ややこしいですよ。宇宙船操艦資格もある程度必要なようです」

「ああ、ディープストライカーでややこしいんやろ。Ex-S使う分には問題ないで。ディープストライカーにしなけりゃええ話やし」

シグナムと会話をするはやて。Sガンダムはなのはへのプレゼントになるだろうが、なのはが保有する操縦ライセンスでは、Ex-Sが限界で、ディープストライカーは乗れないのを知っているから、Ex-S状態で固定するのだと。

「なのはの事だ。宇宙船操艦ライセンス取りたがりますよ?」

「手は打っといた。なのはちゃんの部屋に合宿のパンプ置いといたで。帰ったら申し込むやろ」

「しかし、ZZはどうするので?」

「なのはちゃんが決めることやろ?まだ数回しか乗ってへんし、上からはデバイスによる無人制御が出来ないかって話も来てるし」

「抜け穴を探っているので?」

「そうや。管理局の規則だと『質量兵器は禁止』やろ?そこに触れないようにするには、MSの動力源を魔力炉に変えたら?なんてあるけど、今の魔力炉の出力じゃ、第4世代MSのハイパワーを再現できへん。艦艇用でも、とても7000kwには届かないし」

そう。時空管理局の保有する魔力炉は連邦の核融合炉より、全体的にパワーや起動レスポンスの速さで劣る。更に連邦はミノフスキードライブや波動エンジンなどの強力な機関を要するので、時空管理局の艦艇は相対的に見劣りし、利点が『亜空間航行可能』な程度しか存在しない。それを活用しようにも、艦砲の類が殆ど有視界射程という、軍艦としては近世の帆船か、前弩級戦艦並でしかない弱点が利点を相殺してしまっている。

「おまけに管理局にゃ艦隊戦のノウハウがないんや。14世紀以前のイギリス以下や……いや、ローマ帝国以下かも」

管理局は前体制で培われていた軍事ノウハウを捨て去ったところが多かったため、正規軍隊に及ばなくなった。その差を埋めるには、正規軍隊化させ、司法部門と警察部門を分離させる必要があったため、武装隊が独立した『軍隊』となることになっている。

「仕方ありませんよ。質量兵器が悪とされて以来、それを活用した軍備ノウハウは失われています。今、残っているのは大まかなものだけですから、管理局が遅れを取るのは至極当然なことですよ」

シグナムは冷静だった。時空管理局は軍備ノウハウ面で言えば、地球連邦の足元にも及ばないと知っているからだ。地球は2000年も内輪で殺し合いを続けてきた星故に、軍事ノウハウは死ぬほどある。そこが管理局が緒戦で無残な大敗北を喫した原因なのだ。

「迎撃は64Fが担当しとるやろ?機材は何を?」

「Z三号機とZPlus、リゼルだそうで」


「あそこもゼータクやなあ」

「黒江中佐がアナハイムにツテがあるそうなので、破格の陣容です」

「Z系を大規模に運用するなんて、カラバやエゥーゴでも超エリートの証やったんやで?ったく、どこにそんなツテあるんや?」

半分は愚痴が入っていたが、黒江の人脈の広さには感服するはやて。その黒幕ぶりに舌を巻くのであった。









――戦場

放棄された旧市街地で繰り広げられるMS戦。バダンがネオ・ジオンから入手していた旧アクシズ政権時のMSと、64Fが入手したZ系MSとがぶつかり合う。

「落ちやがれ!」

黒江はトリガーを引き、Z三号機のビームライフルでガサCを落とす。Z系はドッグファイトには向かない設計だが、その辺はキ44搭乗経験がある黒江。一撃離脱で戦果を挙げる。

「ガサCなんて旧型もいいところなので、Zに喧嘩売るからだ。Zとやりあうんなら、バウでも持って来いってんだ」

Zガンダムは第3世代機中、最高レベルのポテンシャルを誇る。近代化後ではその傾向が強まり、ハンブラビやバウでもなければ互角に渡り合えないほどになった。

「ヒガシ、ハイメガランチャーでスナイパーを黙らせろ!」

「コイツの取り回し難しいのよ、ちょっち待って!」

圭子はZPlusのA1型に乗っていたが、手持ち武装はスナイパーであるのを反映してか、ハイメガランチャーである。ビルの屋上に陣取り、狙撃態勢を取る。ハイメガランチャーはジェネレーター内蔵のため、スマートガンよりも連射間隔が短い。だが、大振りなために地上での取り回しが難しい難点がある。圭子はランチャーにバイポッドを装着し、人間の狙撃銃と同様の態勢で撃つことで、地上戦での取り回しの解決を図っていた。

「よし!」

ハイメガランチャーは元々、宇宙空間での使用が想定で、スマートガンのように、地上で使うことはあまり考えられていない。(推進装置があるのはそのため)だが、その苦肉の策で、狙撃銃同様の構えで撃つ事を行っているのだ。(かつての対戦車ライフルのように)

「ハイメガランチャーはビーム兵器だから、撃つ時の反動が無くて助かる。これでやっと『カンが戻った』わ」

スナイパーを潰しながら、狙撃の精度が全盛期と同等に戻った事を喜ぶ圭子。元々、狙撃で鳴らしていたため、狙撃への自信を取り戻したのが窺える。

「ミノフスキー粒子で妨害頼むぞ?スナイパーはバレないのが肝心だからな」

圭子は狙撃の都合で動けないため、敵からの発見率を下げるため、隠蔽率やミノフスキー粒子でレーダーを妨害しながら、ワンショットキルを心がけていた。そのため、どこがどのMSの急所か、を覚え、そこを狙い撃つ事を自らに課している。

「へいへい。護衛は任せろ」

黒江は軽口を叩きつつも、仕事をこなす。なのは達と出会うことで、ウィッチとしての自らの限界に気づいた彼女らはウィッチとしての枠にとらわれない技能を身につけることで自らを高める方法を選んだ。これもその一環だった。

「だいぶサマにはなったけど、まさか、機動兵器動かすなんて思わなかったわ」

上空で空戦をしている武子が言う。

「まぁ、私達が力を取り戻すのも本来はあり得なかった事だ。運命の巡り合わせに感謝しないといかんぜ」

「確かにね」

「それにしても、奴等はどこからMSを?」

「平行時空のアクシズでも手に入れたか、グラナダが一枚噛んだか?まぁいい。何が来ても、私達とロンド・ベルの敵じゃねーさ」

「そうね。とりあえず、こいつらは私達で返り討ちにするわよ!」

『了解!』

三羽烏を中心にした64Fは意気軒昂、バダンのMS隊を返り討ちにし、MS戦での華々しい初戦果を挙げた。帰還後、黒江はロンド・ベルでの同僚であるアムロに呼び出され、自分らの戦い方についてコメントをもらった。

「良い戦い方だが、上空援護の数が少ないな。上空援護のZPlusの数をあと数機増やすと、エアカバーの確実性が増す。カラバにいた時に指揮下に置いていた事があるんだが、制空戦闘用のD型を君のところに回すように、アナハイムに言っとこう。カルフォルニアベースにも配備機が残ってないか問い合わせるよ。あそこが試験場だったからな」

「ありがとうっす。でも、よく要求通りますね?」

「フォン・ブラウンとグラナダは営業先が違うから、お互いに何してるか感知していない。フォン・ブラウンは連邦向けに兵器を卸してるが、グラナダが高性能機を作れば、フォン・ブラウンがガンダムタイプを造るという感じでイタチごっこなのさ。特に最近はサザビーがνに負けた事で、グラナダはお冠だって聞く」

「何でです?」

「あそこはジオンの工廠だったんだよ、昔。だから、ジオンの工廠だって自負が残ってるし、ネオ・ジオンに兵器を卸す。アナハイムも工場は独立採算制にしてるから、同じ会社でも、フォン・ブラウンとグラナダはライバル同士なのさ」

「なるほど」


――アムロの言う通り、グラナダ工場は総力を挙げてナイチンゲールを造り上げ、νガンダムへ雪辱を果たそうとしたが、フォン・ブラウン工場は。HI-νガンダムとユニコーンガンダムを造り出した。どちらが勝つか。それはまだわからない



――その頃、フェイトは。

「さて、面白いところに出くわしたな。五式戦での肩慣らしに丁度いい」

フェイトは休暇も兼ねて、とある世界に調査に赴いた。当人は19歳どころか、20歳に差し掛かっているのだが、外見上は17歳ほどであるため、現地の高校に編入生という形で潜入したのだが、そこは学校同士で大戦機の空戦が行われている世界で、『ガールズ&パンツァーの世界』との共通点を見いだせる世界。なのはが最近、愛読し始めた漫画の世界であった。


「敵機発見、突撃ス!」

フェイトは五式戦を突撃させる。飛行64戦隊のノーズアートが描かれ、旧軍迷彩をばっちり再現した五式戦闘機は、その正面からのシルエットから、フォッケウルフと取られられる事もあるが、飛燕と共通点が多いことから、日本機であると、相手側が認識したのはすぐだった。

「なっ、日本機だと!?あれは飛燕……いや、五式戦!?」

米軍の使用していたP-40に乗る相手方は、フェイトが駆る五式戦に驚愕する。五式戦は紫電改よりも現存数が希少なためか、市井にはあまり出回っていないからだ。


「五式戦!?どこのどいつだが知らないけど、落とされたいの!?退きなさい!」

P-40とドッグファイトを行っている零戦二一型に乗る少女が無線でそう呼びかけるが、フェイトはお構いなしに突っ込むと同時に、こう返した。

「悪いが、そのつもりは毛頭ないんでね!」

と。金星六二型ル(排気タービン搭載)を唸らせ、ドッグファイトを行っているP-40、スピットファイアの編隊、単機の紫電改、零戦二一型との間に割って入る形で介入した。年甲斐もなく編入先の高校の制服に身を包むフェイトは鍛えたその空戦の腕を見せる。

「あんたいったい何者!?」

「自己紹介しておこう。今日からそちらの学校に編入することになった者だ。私の名前は――」

任務とは言え、都合、二度目の高校生活となるフェイト。零戦に乗る少女の問いに不敵な笑みと共に答えるその姿は、強者感バッチリ。旧軍のノーズアートとそのままのラウンデルも、その雰囲気を醸しだす一助となっていた。今回は自分の得意分野なためか、妙に張り切っていたのは言うまでもない。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.