「な、ナナは悪くありませんよ?」
「悪くないと本気で思ってるなら、こっちを見て話せ」
最初に転送ゲートを起動したのは、予想通り菜々だったようだ。
文香が体調を崩し、化粧室へ案内しようとしたそうなのだが、間違えて転送ゲートのある部屋へ飛び込んでしまったらしい。
「どうやったらトイレと転送ゲートを間違えるんだ……」
「ナナを方向音痴みたいに言うのやめてくれません? あのビルの構造が複雑すぎるんですよ!?」
侵入者除けに作ってあるんだから当然だろう?
特にレッスンルームのあるフロアは最新の機材も置いているため、通路も入り組んだ作りをしていた。
でも、それにしたってピンポイントで罠のある部屋ではなく転送ゲートを引き当てるなんて、どんな確率だ。
本来そこはビルに侵入者があった際、うちのメイド部隊を送り込むために用意された緊急用の出入り口だった。
幾重にもカモフラージュを施し、普通の人間には感知できないどころか、意識的に避けるように認識阻害まで施しているのだ。
それを一体どうやって……もしかして、こいつも美星や西南と同じような才能≠持っているのか?
林檎の件といい、妙な偶然を引き当てる星の下に生まれてきたとしか思えない確率の偏りだ。
本人のためにも、今度ちゃんと調べた方がいいかもしれん。
「で、次はお前だが……」
「にゃはは……ごめんねー。まさか、こんなことになるなんて志希ちゃんも予想外と言うか……」
菜々の匂いを察知した志希が廊下に落ちていた『うさ耳のカチューシャ』を見つけ、偶然に転送ゲートを起動してしまったようだ。
ありすとフレデリカは、それに巻き込まれた格好らしい。こいつもこいつで人間離れした嗅覚にも程がある。
いろいろとツッコミどころ満載の話だが、一部始終を記録した監視カメラの映像を確認したので嘘はないだろう。
怪我がなくてよかったと本来であれば喜ぶところなのだが、状況を顧みると素直に喜ぶことが出来ない。
フレデリカの他に、ありすと文香。一気に三人もの人間に秘密を知られてしまったのだ。この先の対応を考えると、頭が痛かった。
しかし知られてしまった以上、事情を説明しないわけにもいかず、俺は三人に秘密を打ち明けることにした。
驚いた様子で話に聞き入る三人。そして――
「宇宙人ですか……俄には信じがたい話ですが、志希さんと菜々さんはご存じだったんですよね?」
「にゃはは……」
「えっと、まあ……」
ありすの問いに、少し困った様子で曖昧な答えを返す志希と菜々。
彼女たちを巻き込んでしまったこと、秘密を漏らしてしまったことに若干の負い目を感じているのだろう。
「では、菜々さんがよく口にしていた『ウサミン星人』というのも、ただのキャラ付けではなかったんですね。ごめんなさい。疑ったりして……」
ありすの謝罪に『ぐっ』と胸を押さえ蹲る菜々。まあ、こんな風に誤解されたら良心が痛みもするか。
今更、嘘だとも言えず、どんどん深みに嵌まっていく様が哀れというか……自業自得なのだが。
「俺たちのことは理解してもらえたと思うが、どうする?」
記憶を消して元の生活に戻るか? 俺たちの仲間になり、協力者として秘密を共有するか?
選ぶのは彼女たちだ。強引に記憶を消したり、協力を無理強いするつもりはない。誰にも話さないと約束してくれるなら、このまま解放したっていいのだ。こうしたケースは前例がないわけではなく、過去の一件もあって現在では対応マニュアルが設けられている。彼女たちが自分の意思で宇宙に上がりたいと言うのなら俺は協力するだろう。
というか、このケースをマニュアルに当て嵌めるなら協力せざるを得ないというのが正しい。基本的に自分たちから正体を明かすことはないが、もしバレたら出来る限りの選択肢を用意し、その後の責任を持つというのが恒星間移動技術を持たない初期文明惑星に関わる者の鉄則だからだ。
「誰にも話すつもりはありませんよ?」
「そうですね。言ったところで、こんな話を信じてもらえるとは思えませんし……」
ありすと文香は順に各々の考えを口にする。しかし彼女たちの言い分にも一理あった。
何も知らない人間に今の話をしたとしても失笑を買うだけだ。
とはいえ、余り公言されても困るのだが、彼女たちの身の安全にも関わるだけに、そこは言い含めておくべきだろう。
何もないとは思うが、しばらく密かに監視と護衛も付けておくか。また水穂に叱られそうだな……。
「フンフンフフーン♪」
「……何やってるんだ?」
珍しく話の輪に入って来ないフレデリカを不思議に感じ、隅っこで何かをやっている彼女に声を掛ける。
上機嫌な様子で鼻歌を口ずさむフレデリカの様子に、嫌な予感を覚えて眉をひそめた。
「これ見て見て〜。おもしろいの見つけちゃったー」
そしてフレデリカが何か丸いものを両手で頭上に掲げるのを見て、俺は頬を引き攣った。
何かを訴えるように俺を見詰めてくる、ぷよぷよとマシュマロのように柔らかそうな見た目のそれは――
銀河に名を轟かせる軍事国家『樹雷』の力の象徴。
――皇家の樹の生体端末だった。
◆
樹雷には『皇家の船』と呼ばれる凄い力をもった宇宙船が存在する。第三世代より古いものになると、一隻で大艦隊を殲滅させられるほどの力を持つ、まさに宇宙最強の船と言っていい。世代が若くなるほど力は弱くなるのだが、第四世代でも海賊船程度なら百や二百集まろうと一網打尽できるほどの戦闘力を持つ宇宙船だ。
そのコアユニット――力の源となっているのが、いま俺の頭の上でプルプルと震えている『皇家の樹』だった。
ま、正確には第四世代の〈皇家の樹〉の生体端末なのだが……守蛇怪・零式のなかに固定された亜空間には、こいつらが無数に生息している。本来であれば第三世代以上の樹でなければ明確な意思を持たないのだが、第四世代の皇家の樹を覚醒させ、第三世代に近付けるという実験が過去に行われたことがある。その成功例が林檎の契約した第四世代の皇家の樹『穂野火』なのだが、その後の実験では上手く行かず、一時計画は凍結されていたのだ。
だが、俺に鬼姫から一つのプランが提示された。
それが、まだ契約者のいない若い〈皇家の樹〉を、俺の船で預かると言う話だ。
そんなことが〈皇家の樹〉の覚醒に繋がるのかと俺は半信半疑だったのだが、実際その効果は出て来ているらしい。
その一体が、さっきフレデリカに捕まっていたこいつだ。
「こっちか?」
俺の問いに身体を震わせて応える第四世代の〈皇家の樹〉の端末。契約者でもない俺が名前を付ける訳にはいかないので、便宜上『皇家の樹』と呼ばせてもらうが、こいつがフレデリカに捕まっていたのは俺に用があったからだ。
というのも、普段こいつらが縄張りにしている森の中に、迷い込んだ人間がいるらしい。
普通なら何をバカな……と一笑するところだが、零式に確認を取ってもらったところ笑えない事態になっていた。
レッスンルームから美嘉の姿が消えていたのだ。そして俺の利用した転送ゲートを何者かが起動させた形跡が発見された。
となれば、答えは一つしかない。
「……美嘉、無事でいろよ」
次から次へと、今日は厄日かもしれないと溜め息が漏れそうになる。
しかし俺の不注意が招いたことだ。菜々を叱り付けはしたが、彼女に任せた俺にも責任はある。
志希のことも彼女の悪癖を知っていながら放置し、注意を怠った俺の責任がないとは言えないだろう。
せめて、勝手に歩き回ると危険なことを全員に注意しておくべきだったと今は反省していた。
◆
アタシ――城ヶ崎美嘉が太老さんと出会ったのは、いまから丁度一年前のことだ。
891プロダクションのオーナー。正木商会の代表。志希ちゃんも認める天才科学者。
そんなに凄い人だと知らなかったアタシは、初めて太老さんを見た時、変な人だと思った。
でも、見た感じアタシとそう歳の変わらないような男の人が公園で子供たちと一緒に遊んでたんだよ?
しかも変な道具で跳んだり跳ねたりして、凄い注目を集めていた。みりあちゃんに見つからなければ、目が合う前に逃げてたと思う。
あ、みりあちゃんって言うのは『赤城みりあ』ちゃんと言って同じ事務所に所属するアイドルで、時々アタシよりもしっかりしてるところがあるんじゃないかって思わせられる小学生の女の子。そんな子が太老さんと一緒に公園で遊んでいるのを偶然見かけて、気付けばアタシも輪の中に入って遊んでいた。
不思議な人だと思った。やっていることは子供ぽいのに言葉の節々がどこか大人びていて、みりあちゃんや子供たちを見守る眼差しは凄く優しげで――
だからかもしれない。会ったばかり。知らない人なのに、思わず悩みを打ち明けてしまったのは……。
その頃のアタシは仕事で少し嫌なことがあって、妹に八つ当たりしちゃって……結構落ち込んでたんだよね。
そんなアタシに太老さんは――
「考え方を変えてみたらどうだ?」
「え?」
「仕事だから嫌なことでも頑張らないといけない。確かにそれは間違っていないけど、最初から嫌だと思ってやるより楽しんでやった方が気持ちが良いだろ?」
「仕事を……楽しんでやる?」
「ああ、なんにでもチャレンジしてみる気持ちでやってみればいい。そうすれば、また違った自分が見えてくるかもしれない」
そう言って太老さんは公園で走り回る子供たちを見ながら、こう言った。
「凄いだろ、子供って――。元気一杯で好奇心の塊みたいなところがあって。でも、あの子達を見てると思うんだ。俺も頑張らないとなって」
あの時の太老さんの言葉が頭から離れない。
仕事だから仕方ないと諦めていたアタシに、太老さんはそう言って微笑みながら頭を撫でてくれた。
子供扱いされているみたいで少し恥ずかしかったけど、嫌な気はまったくしなかった。
頭を撫でられた時に感じたあの大きな手の温もりを、きっとアタシは一生忘れないだろう。
だからアタシは――
◆
「冷たッ!」
ピチョンという音と共に頬に冷たい何かが触れ、アタシは飛び起きる。
ぼーっとした頭で上を見上げると、天井から水の雫がしたたり落ちていた。
薄暗い部屋の中から周囲に目を向けると、出口と思しき明かりが目に入った。
そして――
「……え? ここ何処?」
外にでて、アタシは呆然とする。
さっきまで891の事務所だと思っていた場所は、見上げんばかりの巨大な樹の幹の中だった。
周りもそうだ。見たこともない巨大な植物が生い茂る森の中。さっきまで891の事務所にいたはずなのに……。
「なんで? アタシさっきまで……」
それどころか、ここが日本とは思えない。いや、現実のことかどうかさえもわからない。
こんな大きな樹や植物なんて、アタシは見たこともなければ聞いたこともない。
勿論アタシが知らないだけと言う可能性はあるが、余りに現実感のない光景が目の前には広がっていた。
「こういう時って、どうするんだっけ……」
さすがに森の中で遭難した経験なんてない。
川島さんが前に『秘湯巡りの旅』という番組の収録で、山で遭難しかけたと言う話をしていたのを聞いたことがあるくらいだ。
まずは水と食料を確保する? いや、火を起こすんだっけ? ううん。闇雲に動くよりは救助を待つ方が――
どうしたらいいかわからず混乱していると、背後に物音を感じてアタシは振り返った。
「嘘……でしょ?」
視線の先、そこにいたのは巨大な猪だった。いや、大きいなんて単純な言葉では言い表せない。
小さなトラックほどの大きさがある巨大な猪。あんなのに襲われたら人間なんて一溜まりもないだろう。
ノシノシと足音を立て、ゆっくりと近づいてくる猪を見て、アタシは腰が抜けてその場にへたれ込む。
「やだ……」
逃げなきゃ――そう思っていても足が動かない。それは初めて体験した死の恐怖だった。
走馬燈のように頭を過ぎるのはアイドル仲間やプロデューサーの姿。そして家族の顔や『お姉ちゃん』と甘えてくる妹の顔。
こんなところで死にたくない。アタシにはまだ夢が――やり残したことが、やりたいことが、たくさんあるのに!
そう思ったら、自然とあの人の名前を叫んでいた。
「太老さああああん!」
アタシにとってあの人は恩人で、尊敬できる憧れの大人だった。
いまでも思う。アタシがアタシらしさを失わず、いまもこうしてアイドルを頑張れているのは太老さんのお陰だ。
もうダメだと思った。死を覚悟して、ギュッと唇を噛み、目を瞑る。
でも――
(……あれ?)
覚悟していたのに何も起きない。不思議に思い、恐る恐る目を開けると、
「はあ……次から次へと、今日は本当に厄日だな」
どうどうと言いながら、巨大な猪の頭を撫でる太老さんの姿があった。
◆
「怖い目に遭わせちゃったな」
「い、いえ……助けて頂いて、ありがとうございました」
正直、美嘉が転送に巻き込まれたと聞いた時は焦ったが、無事だったようで安心した。
幸い、美嘉の転送したエリアは温厚な動物の多い場所だった。
あの猪にしても見た目は大きくて怖いが性格は大人しく、あれで意外と愛嬌があるんだよな。
たまにメイドたちに遊んでもらっているようで、美嘉の姿を見つけ、嬉しくなって彼女に近づいたようだ。
だから礼を言われると困るのだが、ここは素直に受け取っておくべきか?
「あ、あの! ありすちゃんたちは!?」
「彼女たちなら一足先に帰ってもらった。心配してたけど、落ち着くまでは一人になりたいだろうと思って」
自分が大変な目に遭ったと言うのに、真っ先に彼女たちの心配をする美嘉を見て、俺は苦笑する。
事情を知る志希たちならともかく、あの場には奏や周子もいた。さすがに自分から正体を明かすつもりはないので、美嘉は体調を崩したと言うことにして彼女たちには先に帰ってもらったと言う訳だ。
貸し一つですよと、ありすは言っていたが、落ち着いているように見えて一番動揺しているのは彼女だと言うことはわかっていた。
あとで彼女たちにはフォローを入れておくべきだろう。フレデリカは既に順応していたので問題ないと思うが……。
「奏たちは怒ってませんでした?」
「なんかよくわからんが『優しくしてやってください』とか『頑張れ』とか応援されたな」
「な……!? あ、あの二人……」
顔を真っ赤にして肩を震わせる美嘉を見て、まだ調子が悪いのかなと俺は心配する。
美嘉を巻き込んでしまったのは俺の責任だ。彼女の体力が回復するまで、優しく介抱≠キるのは当然だろう。
美嘉に怖い思いをさせたのは事実だ。本当なら責められてもおかしくないところを『頑張れ』と応援してくれる二人には感謝しているくらいだった。
とはいえ、まずは美嘉のことだろう。こうして巻き込んでしまった以上、彼女の疑問にはきちんと答えるべきだと考えていた。
「聞きたいことがあるなら答えるよ」
「ここは……それに太老さんは、その……」
やはり、そこが気になるよなと俺は頭を掻く。
勿論、今更嘘を吐く気も、誤魔化すつもりもない。
ただ、どう説明したものかと考え、ありすたちに話したのと同じ、ありのままを語ることにした。
「ここは俺の船〈守蛇怪・零式〉に固定された亜空間の中。そこに造られた人工惑星だ。で、俺は地球育ちの宇宙人。まあ、日本人の血も流れているので、厳密には少し違うんだけど」
「え? ここが船の中? それに宇宙人って?」
「困惑する気持ちはわからなくもないけど、取り敢えず落ち着いて」
そう言って、俺はよく冷えたジュースをコップに注ぎ、美嘉へ差し出す。
皇家の樹の実を搾った果汁100%の飲み物だ。
味は良く栄養満点。疲れた身体には一番の飲み物だと俺は思っている。
文香も身体が弱く体調を崩しやすいという話だったので、これを素にした栄養ドリンクをお土産に持たせていた。
「美味しい」
夢中で一気に飲み干し、そして満足げな笑みを浮かべる美嘉。
余程、咽が渇いていたのだろう。こういう反応をされると、さすがに罪悪感が込み上げてくる。
あの三人のことはともかく、美嘉の件は完全に俺の不注意が招いたことだしな。
いつもなら美嘉がいることに気付いたはずだ。でも今日は焦っていて注意を怠っていた。
せめて扉をロックしていれば、と今になると思うが、後悔先に立たずと言う奴だ。
「落ち着いた?」
「はい。まだ夢を見ているような感覚ですけど……」
無理もない。知り合いに『私は宇宙人です』などと言われても、普通は気が狂ったと思うだろう。
フレデリカの適応力が高すぎるだけで、ありすと文香も最初は困惑していた様子だったしな。
カリスマギャルというイメージで売っていることもあって、美嘉はこんな見た目だから誤解されがちだが根は純情で真面目な子だ。
その上、面倒見が良く放って置けない性格とあって、あのメンバーのなかでも一際苦労していることを俺は知っていた。
個性豊かな346のアイドルのなかでも貴重な常識人と言っていいだろう。それだけに困惑する気持ちも理解できなくはない。
だが、意外なことに美嘉から返ってきた反応は違っていた。
「でも正直どうだっていいんです。そんなことは――」
「え?」
「太老さんの正体がなんであれ、太老さんは二度も助けてくれた。それがアタシにとって一番大切なことなので」
「……二度?」
やっぱり覚えてませんよね、と苦笑する美嘉。彼女と初めてあったのは一年前のことだ。
リストラされた一家の大黒柱のように、公園で一人寂しくベンチに腰掛ける彼女を見つけ、みりあちゃんが声を掛けたのが切っ掛けだった。
それからの付き合いになるが、美嘉に感謝されるようなことをした記憶は俺にはない。
なんか偉そうなことを言った記憶は残ってるんだが、いま思うと、あんな恥ずかしいことよく言えたものだ。
イヤイヤ仕事するんじゃなく、なんにでもチャレンジする気持ちで楽しめばいいとか、そんな感じだったか?
まあ、そう思わないとやってられないと言うだけなんだよな。商会の仕事もそうだが、マッドや鬼姫の相手は……。
「心配しなくても誰にも言いません。二人だけの秘密にしておきます」
小さく舌をだし、そう言って笑顔を見せる美嘉。内緒にしてもらえるのなら、こちらとしても都合が良い。
彼女なら信用できる。菜々のように、うっかりと口を滑らすようなこともないだろう。
しかし一つだけ誤解を解いておかないといけないことがあった。
「そのことなんだけど……実はフレデリカたちにもバレちゃったんだよね。知らないのは奏ちゃんと周子ちゃんだけで、実は志希と菜々の二人は以前から知ってた」
「…………え?」
固まる美嘉。反応を待つ俺。
沈黙の時が流れ、段々と美嘉の顔が赤くなっていく。そして――
「あ、あああああ……さっきのなし! ノーカウントですから!」
「あ、うん」
顔を真っ赤にして動揺した様子で、やり直しを要求する美嘉。
そりゃ、自分以外にも秘密を知ってる人間が、こんなにいると知ったら普通は驚くよな。
しかも、それが知り合いとくれば尚更だ。必死な美嘉の姿を見て、やはり俺は妙な親近感を覚えるのだった。
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