-なのはとフェイトは様々な面々の影響を受けて、その後の戦いかたを変化させた一番の例であった。
なのはは師やスバルの影響で接近戦も好むようになっており、スバル版ディバインバスターを習得し、
さらに修理の際に組み込まれてしまった2つのフォームを扱うための特訓を行なっていた。
レイジングハートエクセリオン改(仮称)の改造フォームはバルディッシュ・アサルト用に用意されていた
予備フレームを地球連邦軍のOTMで半ば無理やり流用しての改造なので、バルディッシュ・アサルトを
思わせる変形機構となっている。剣形態の形状は西洋剣であるが、フェイトが使うザンバーのような
太めのものではなく、片手持ちの扱いやすいものだ。その他は
ゲッタートマホークに似た形状で、これは斧系武器を使っている竜馬から使い方を教わっていた。
欧州につく数日前、なのはは哨戒飛行で試しに本格的な実戦テスト(ハワイでは試験的に数度しか使っていないので)
を行なっていた。因みに今回の長機はアムロのZガンダム3号機、僚機は真ゲッターである。
「レイジングハート、あのフォームのテストいくよ」
`All right`
レイジングハートはそう返すとデバイスはカートリッジをロードし、新フォームへ変形する。
なのはの背丈からは大振りかと思われる
真ゲッターのゲッタートマホークやフェイトの動きを思いだし、振ってみる。
「えぇ〜いっ!!」
兵団兵士に向けて思い切り振り下ろし、刃の部分で両断する。重量が重いので、今の自分ではあまり多用出来ないだろう
なのははそうこのフォームへそう目星をつける。
-本で調べたけど……ハルバードは確かスイスかどこかで考えられて、銃が発達するまでは花形兵器だった時期もあるんだよね……。
確か長いのは5m超えたとか……。
ハルバードに関して仕入れた知識を頭の中で
扱いやすいとなのはは思う。
(まあ慣れればフェイトちゃんみたいにやれると思うけど……)
突っ込んで先端の槍部分で相手を突く。これは真ゲッターも「ゲッターランサー」という名でトマホークの刃を畳んだ状態で使用しているので、
そこからヒントを得た。
『いいぞ。だが、まだまだだぞ』
「厳しいですね」
『俺は斧系の武器をゲッター1の頃から使ってるからな。年季が違うぜ』
真ゲッター1の竜馬は斧系の武器の扱いは慣れていると豪語し、自身も真ゲッターを通し、手慣れた「斧さばき」を見せる。
ゲッターロボG以降の戦闘用ゲッターロボは初代に装備されていたものより武器として洗練された「両刃」のトマホークを使っているが、
形状の違いは竜馬にはどうでもいいようだ。
『手慣れたらトマホークブーメランを伝授してやらない事も無いが、テメエにはまだ早いな』
真ゲッターのゲッタートマホークをド派手に振り回し、敵を切り裂きながらのこの一言をいうが、やけに説得力はある。
トマホークブーメランは行うのに熟練を要する為にこの技を使えるのは、ゲッターロボ以外ではガンバスターくらいしかいない。
(フッ、アイツを思い出すぜ。この間のストナーサンシャインを撃つ瞬間に見えたあの特大ゲッターがもし本物なら……)
竜馬は今は宇宙にいるガンバスターのメインパイロット「タカヤ・ノリコ」と仲が良かった。
それ故、ハルバードを使うなのはに、ガンバスターで戦っていた時のノリコの姿がダブったらしく、
ふと、下手すれば一生会えない可能性もある、ノリコのことを一瞬思いだしたのだ。
あの計画は終わったもの、彼女は損傷したガンバスターでブラックホール爆弾を起爆させたため、本国では母艦のヱルトリウムへの帰還が危ぶまれている。
竜馬は1944年でストナーサンシャインを撃つ一瞬、ビジョンを見た。星系サイズの、真ゲッターの更なる進化系と思われる超弩級ゲッターの姿を。
もし、あれがあるのなら……と思っているのだ。
-そのゲッターロボが一体何なのか。この時の彼には分からない。それがゲッターロボの`皇帝`たる存在であり、竜馬達の行動である程度
`ある世界`とは生まれる目的に変化が生じた人類史上最大最強の超弩級スーパーロボット-であるとは……
-艦内で非番中のスバルはなのはが接近戦で戦果を上げている事に喜びを見せる。
(いやあ嬉しいなぁ〜……なのはさんを`引きずりこんだ`けど……こうなったら色々と。ぐ、ぐふふ〜)
スバルは子供時代のなのはと出会った事で、なのはを色々といじくり回す(魔改造)事を計画し、実行していた。
智子の教育もあって、
近接格闘戦へ
興味を持ったのを良い事に、手を回しておいた。竜馬には自身の`父`の`先祖`(スバルの父、ゲンヤ・ナカジマは、
日本人の先祖を持つ`日系人`である)の故郷である日本の「空手」を、獣戦機隊の司馬亮からも拳法の手ほどきを一緒に受けている。
その過程で自分流にアレンジしたディバインバスターをなのはに伝授し、今では合体技を繰り出せるまでになった。
「ずいぶん嬉しそうじゃねーか」
「忍さん」
獣戦機隊のリーダーの藤原忍が話しかけてきた。ちなみに彼はジュドー・アーシタと声が似ているが、見分けやすい。
「荒いほうが忍、明るいほうがジュドー」というふうに、分かりやすい特徴があるからだ。
「お前、色々と企んでるな?」
「え、そうですか?」
「顔がにやけてるぜ。まっ、お前ら見てると色々とおもしれえからいいけど」
「今日はどうしたんです?非番ですか」
「ああ。ダンクーガが定期オーバーホールで、休養を兼ねてここ2、3日は非番なんだよ」
ダンクーガは強力なスーパーロボットであるが、搭乗者に負担を強いる機体であり、休養が必須となる。
(今は合流していないが、ダンガイオーにもその傾向がある)
そのためブライトは部隊内の出撃ローテーションに気を使っているのだ。
そのためスーパーロボットの中では比較的容易に連戦可能なゲッターやマジンガー系などが重宝されているのだ。
(現在、マジンガーは別行動だが)
「へえ。大変なんですね」
「まーな。お前と似たようなスタイルといえば、アイツらを思い出すぜ。俺らから見ても暑苦しかったからな……」
「ああ、例の`ガンダムファイター`の皆さん?」
「そうそう。今じゃドモンの奴は所帯持ちだしなぁ。あの熱い告白はギネスに載ってるし」
忍はシャッフル同盟の筆頭格とも言えるドモン・カッシュの事を回想する。デビルガンダムを打ち倒す際のレイン・ミカムラへの告白は伝説級
の逸話であり、今でもその当時からのメンバーの間で語り草となっている。
忍のもとに送られてきたレインからの年賀状だと「去年(2199年)の夏頃から修行に出て帰らない」と書いてあった。
ゴッドガンダムを持ちだして修行しているのだろうが、それはそれである方面を悩ませているだろう。
「そうそう今度ドモンの奴に会ったら紹介してやんよ。ゴッドフィンガーとか教えてくれるかもな」
「ありがとうございます!あの技、使ってみたいんですよ〜!」
-爆熱ゴッドフィンガー。ゴッドガンダムの必殺技であり、流派東方不敗の技に含まれるようになった。
元々、シャイニングフィンガー自体が流派東方不敗の技であるので、それの発展系であるゴッドフィンガーが含まれても何ら不思議でもない。
スバルは記録映像でゴッドガンダムの活躍を目にしており、そこで爆熱ゴッドフィンガーを目にする機会があった。
生身での戦闘力も人間の比ではない(!)ドモン・カッシュがモビルトレースシステムで繰り出すという点に惹れ、
その技を教えてほしいのだと忍は目星をつけた。
-さて、欧州に集結する部隊、特にレビル将軍の座乗する陸戦艇にはロンド・ベルへの補給物資として、あるガンダムが積まれていた。
その名は「Ex-Sガンダム」。かつて、ペズンの反乱で名を馳せた
ただしオリジナル仕様ではなく、同機の特徴であった「ALICE」はもはや再現不能なのでバイオコンピュータで代用している。
機体もギアナ高地でZ系の可能性追求のためにテストベッドとして用いられていた試作2号機(Sガンダムは全部で4機が製造されている)
を実戦型に再改装、改めて新造されたEx-Sへの強化パーツをつけた仕様だ。より発展したジェネレーターと装甲材が用いられた結果、
オリジナルよりは幾分かの軽量化がなされ、推進力もオリジナルより強化された。
見かけはゴツいが、開発系統はZガンダムの正当発展系に属するその機体はZの流麗なフォルムを受け継いでいる。
塗装は青を基調とするスプリンター迷彩である。
格納庫にいたフェイトはそこでこのガンダムを目にした。
「あれ?こんなガンダムあったかなぁ?」
Sガンダムはフェイトには初めて目にするガンダムである。フェイトの第一印象は`ZガンダムにZZのエッセンスを振りかけたような`という
もので、なのはから送られてきた写真で見た、マッチョな印象があるZZよりは好印象であった(これはフェイト自身の戦法がZガンダムなどに近いためでもあった)。
元の世界で、はやてに無理矢理見させられたアニメには登場していないので首をかしげたのである。
「これはEx-Sガンダム。ZZの対抗馬だったガンダムよ」
「あなたは?」
「私はニナ・パープルトン。アナハイム・エレクトロニクス社のシステムエンジニアよ」
フェイトに話しかけてきた女性はニナ・パープルトン。かつてデラーズ紛争で用いられた「ガンダム試作一号機」と、
曰くつきの「ガンダム試作二号機」の開発に関わっていた経験を持つ女性で、現在はコウ・ウラキの恋人である。
コウとはデラーズ紛争最終局面で初恋の人であるアナベル・ガトーをかばった事が原因で疎遠になっていた
(ニナとしてはコウにガトーを殺すことで発生する罪悪感を味わって欲しくないという気持ちでコウに銃を向けたが、
コウはガトーを如何な手段でも倒したかったので、当時の心情的にニナの想いを察することは無理であった)
紛争後は全てを悟ったコウがニナを許す形で和解した。
コウ同様に、彼女も一時、ガンダム試作二号機に関わったという事実を重く見たアナハイムの上層部により閉職に甘んじてはいたが、
エゥーゴが台頭した時勢の頃にZ計画に参加する形で復権。今ではアナハイムガンダムの多くに関わっている。
Sガンダム計画にはEx-S関連システムの調整などの面で携わっているので、その調整などのために招聘されたのだ。
「アナハイム・エレクトロニクスの……。フェイト・T・ハラオウンです、よろしくお願いします。
ところでニナさん、このガンダムがZZの対抗馬だったって本当なんですか?」
「ええ。このSガンダムは元々、連邦がエゥーゴとティターンズに分かれてた時にZの後継機として計画していたの。
フラッグシップ機の座を巡ってZZと争ったのだけど、エゥーゴがZZを採用したから、
立場が危なかったんだけど、後の第一次ネオ・ジオン戦争に至る過程で教導団の青年将校が反乱を起こした時に連邦正規軍が採用したの。
操縦が容易な分、兵器としてはこちらのほうが完成度高いの」
ニナはSガンダムの方がZZよりは操縦が容易である点を指して、兵器としての完成度が高いと言った。それはあながち間違いではないが、
エゥーゴがZZを採用したのにはSガンダムの運用費がZZより遥かに高いという点も大きい。正規軍なら連邦政府の豊富な資金力で採用できるが、
組織力が減退した第一次ネオ・ジオン戦争時のエゥーゴの台所事情ではお涙頂戴という事情がある。
「これをロンド・ベルに引き渡すために運んでるのだけど、いざという時は動かせるようにしておかないと」
「いざという時?」
「インド洋には色々な組織の残党が潜んでいるって噂が流れてるの。それに備えてのことよ」
「大変なんですね。特にこういうガンダムって作業も長そうですし」
「ガンダムの中でも一番複雑怪奇な可変機だから特に長いの。変形機構のテストとか色々と……」
Sガンダムがエゥーゴに嫌われた要因の一つは整備に高度な技量がいること。その難易度はZはおろかZZをも超え、
更にはスーパーロボットのゲッターロボをも凌駕する。連邦軍はエゥーゴを取り込んだ後に制式採用はしたもの、
高度な技能を持つ整備兵の数の問題で表立っての投入を避けてきた。今回の投入にも疑問の声が多かったが、
レビル将軍の一派が「危急存亡の折にそんな贅沢言えるか!!」と一喝して持ちだし、半ば強引に承諾させた。
そのためアナハイム・エレクトロニクス社からS(Ιガンダム)ガンダムに精通するメカニックを呼び、整備を一任させている。
「だからνガンダム以降はシンプルになったの。これの反省でね」
「複雑怪奇すぎても困りますしね。アレじゃ立体パズルですよ」
Ex-Sガンダムの整備風景をフェイトは立体パズルと評した。実際そうだから困るのだ。ニナはSガンダムの設計陣に愚痴をこぼしたい気持ちだった。