-さて、ドラえもん達は仮面ライダー1号の導きで無事にダンケルクの街を抜け、ラー・カイラムへ合流に成功。
その知らせを受けたブライトはラー・カイラムに港の物資を積み込みまくっての上で、なんとか港から出港に成功した。
「なんとか発進に成功したようですね」
仮面ライダー1号、いや本郷猛はブライトに言う。ブライトも同意する。
「あなたのおかげですよ、1号ライダー……いえ本郷さん。あの子達を助けてくださってありがとうございます」
「お安いご用ですよ、ブライト大佐」
本郷は微笑み、ブライトと握手し合う。本郷はこの間にも他のライダーと連絡を取り、各地域に点在する部隊の撤退を
支援していた。そういうところは抜け目がない。
「ロリアンに海軍と宇宙軍艦艇の補給拠点があるので我が隊はそこへ向かいます。そこで待機せよとの指令が通達されています」
「わかりました」
仮面ライダー1号=本郷猛は直ぐに後輩たちにこの情報を脳波で伝え、戦線を再構築。V3がそれを主導する形で行われ、
それはX以降のライダー達にも伝えられた。
本郷は窓から通常艦橋に写る景色に必ずしも明るいとも言えない前途を想い、今の地球圏を憂いた。
それはブライトも同じ思いだった。
「ふう。またみんなに伝えないと」
帰還するなり親友テレカで連絡を取るドラえもん。それを見かけた黒子はのび太に聞いてみた。
「ドラえもんさんは何をやっていますの?」
「ああ、ドラえもんがとっておきの道具で仲間に連絡取ってるんですよ。2125年の」
「そういえばあの方、2125年ではありふれたロボットでしたわね。それなのにすごい経験していますし……」
ここのところ、美琴や初春と共に艦内待機組な黒子は暇潰しに美琴に付き合う形でドラえもん達の武勇伝(要は過去の大冒険)を聞いていた。
タイムテレビも使っての話に美琴と初春は目を輝せていたが
、黒子は驚天動地といったところであった。
白亜紀後期の地球で恐竜ハンターとのび太が可愛がっていた首長竜(ピー助)を巡ってのチェイス、
のび太が射撃を自らの特技として確立させてから初めて銃を使い、西部劇さながらのガンアクション、
アフリカの魔境で犬の王国(これには黒子は?であった。元来、犬というのは狼を家畜化したり、独自の進化を遂げた事で生まれた動物であるからだ。
もっとも犬の直接の祖先がホモ・サピエンス(現生人類)同様の進化を遂げたのなら`犬`と言えるが)の軍事政権を打倒し、
王家の復興に一役買ったり、宇宙の小人の星でレジスタンス運動に協力したり……(これに魔界での冒険が含まれていないのは、
ドラとのび太以外は魔界での冒険を`経験`していないからである)とても小学生とは思えない濃厚な人生経験をしている。
4人に時々、中学生である自分たち以上に大人びた側面が顔を覗かせるのもこれら冒険のためだろうか。
「ぼく達はドラえもんのおかげでいろいろと`生きるか死ぬか`な経験してますから。
さすがにドラえもんが`いっぺんでも君等を危険に晒したことがあるか`って言った時は`!?`な気持ちでしたけど」
「あの方らしいですわね……」
のび太もドラえもんには時々呆れるところもあると言い、ため息をつく。それに黒子は同情したくなった。
大真面目に`本来`の、のび太達との年齢差を考えてみると、自分らの時代(2010年代頃)にはのび太達は成人し、
就職していてもおかしくない年代に達しているので、ある意味では自分たちの方が年下である。そのあたりは
不思議なめぐり合わせである。のび太曰く「2020年代頃のぼくには息子の`ノビスケ`がいて、
その時にちょうど小学生位です」との事なので、2010年代ではちょうど大学〜就職期を迎えているということになる。
のび太によれば「高校生からのぼくは奮起して、一浪でしずかちゃんと同じレベルの大学に補欠合格。その後……。
スネ夫は大学卒業後に家業を継いで、より発展させた模様(スネ夫の代でファッション業にも手を出したと思われ、
2200年現在でも総合商社として存続している模様)。ジャイアンは意外にも歌手の夢を諦め、
大学あたりで経営学を修めたのか、実家から独立してスーパーマーケットを開業して儲けている。
(しかも2200年現在でも子孫が元気に経営しているのが確認された)
「ぼく達の子孫も一年戦争か何かの戦争で何人かは死んでるでしょう。それは覚悟してますよ。この時代の人たちはどこかかしらで
戦争に巻き込まれてますから」
「のび太さん、あなたは……」
のび太は自分たちの子孫とて決して戦乱とは無関係ではないことは悟っていた。子孫の内何人かは連邦軍に従軍しただろう。
特にジャイアン−剛田家−は戦国時代から武門に縁のある家系だ。一族の誰かが軍に入隊するのは容易に想像できる。
それはのび太の本心だった。黒子はそんなのび太の大人びた側面を垣間見た。
-欧州に急ぎ配備されていく新コスモタイガー。欧州空軍の損耗率の高さを憂いた軍上層部は比較的練度が高い部隊を各地から
転出させ、欧州へ集結させていった。それら通常戦闘機部隊は到着次第、使用機種を新コスモタイガーへ統一させていた。
「アレがこの時代の戦闘機か。鷲か鷹のようだな。レシプロ機を見慣れている身としてはジェット機はどうも、な。
性能がいいのは分かるが……」
「この時代の戦闘機はVFにしてもコスモタイガーにしても大気圏内外で両用可能な性能だから。
今回の一軒でストライカーの世代交代も急激に進んだし……まあしょうがないわよ」
この日、智子は合流したエリザベス・F・ビューリングと共に行動を共にしていた。
大尉昇進は決定されたもの、まだ内定段階なのでまだ中尉の階級章はつけたままである。
飛行場へ赴いたのはビューリングへ送られた「テンペスト」(かつて彼女が使用したハリケーンの2代後の発展型)の慣らし運転が目的である。
この戦闘脚は元々はタイフーンの次世代型として大量生産されるはずであった機体であったが、ジェット機の台頭により陳腐化してしまい、
タイフーンを代換するだけの量の生産は見送られた。だが、メーカー側の意地でエース級へ送られる機体としての配備機体に良いと
進言。その実証替わりにエース級ウィッチへ送られた。ビューリングもその内の一人だ。
「テンペストか……哀れだな。時代がジェットを持て囃すようになって、こいつらの世代は時代のあだ花になったのだから」
「そうね……ネウロイも強くなってるから、零式やキ43が新鋭機だった緒戦のような華々しい活躍はもう出来ないし。……かわいそうよね」
ビューリングはレシプロストライカーとして究極にまで発展したこの世代をあだ花と言った。実際、どの国もレシプロストライカーは
実戦で陳腐化してしまい、機種転換計画の変更を余儀なくされた。ただし零式と一式の陳腐化が顕著な扶桑に置いてはその限りではなく、
ジェットエンジンの開発と生産難航もあり、レシプロ最終世代といえる「紫電」(現在は改の開発スタート段階)、「烈風」、
「疾風」で取り敢えずの対処が行われているが……。
「奴らの機体は古くとも1950年代以降の機体なんだろう?よく生き残れるな、扶桑のウィッチは」
「その時代の機種は小回り効かない機種が多いのよ。だからそこが唯一の光明ってところ。でも、70年代以降の第4世代以降は意外に小回り効くから
私達には強敵なのよ。あたしの戦友もそれに苦労してるって言ってるわわ」
「こっちに来る時に講義を受けたが、ミーティアが子供の玩具に見えてしまうほどの流麗なフォルム、B-29をも超える搭載量……
化物だな」
「ストライクイーグルね……あれを使われたらこっちの重爆が形無しよ。だから扶桑の重爆部隊は自信喪失状態になっちゃって」
「だろうな。キ46……`呑龍`、後継の飛龍さえ、奴らにしてみれば児戯に等しいものな」
「富嶽を陸軍でも採用すりゃいいのに、コンセプトが重複するキ91の開発を行ってる。ハッキリ言って上の連中はトーヘンボクよ」
「言うなぁトモコ」
そう。ジェット戦闘機の進化上、最も前世代との差が生じたのが第4世代機(1970年代登場)である。運動性能は前世代を凌ぎ、航続距離も長い。
高性能レーダーもついているとあれば、戦場では先手を打たれる。更に戦闘機なのにレシプロでの「超重爆」B-29を超える搭載量を持つ
F-15Eの存在はレシプロ戦術爆撃機部隊に衝撃を与えたが、特に扶桑陸軍飛行戦隊が顕著であった。海軍が富嶽を実用化に成功し、
今では連合軍のティターンズやネウロイに有効な戦略爆撃を行える数少ない爆撃機の一つとして名を馳せているという事実とは対照的に
陸軍は飛龍の量産に漕ぎ着けた段階に過ぎないのだから。智子はこの事実を知っていた。そして`扶桑海の巴御前`という自らの名声を
使って陸軍航空総監部の計画を調査し、`富嶽`と明らかにコンセプトの段階で重複するキ91の開発を起こっている事を知った。
キ91は用兵側の人間たる智子には「開発元の人間と資源、時間の無駄遣い」としか思えないのだ。
「それでもジェット戦略爆撃機には及ばない……。レシプロは消えていく`老兵`にすぎん……か。寂しいものだ」
ビューリングは新時代の技術といえるジェット/ロケットエンジンに押されて消えていくレシプロエンジンに寂しささえ覚えていた。
レシプロエンジン戦略爆撃機では最大最強のB-36(B-36はジェットエンジンを搭載はしたもの、レシプロ機に分類される)でさえも、
所詮、ジェット機には勝てないのだから。それは戦闘機(戦闘脚)でも同じ。
一撃離脱戦法を主としていた国のストライカーユニットは特にこの傾向が強く、開発中のものまでもが「旧式」の烙印を押されていった。
ティターンズ残党によるこの事象は、連合軍側には軍艦でいう「ドレッドノート」出現のショックと同義に受け取られ、
全構成国がジェットストライカーの開発の推進及び、レシプロストライカーユニットの整備計画の放棄、あるいは縮小という道を選ぶきっかけを
与えた。これは地球連邦側には歴史の`釣り合せ`と評されたという。
「……ズレまくったから話を戻そう。テンペストを使ってみる。見ていてくれ」
「OK」
智子はビューリングの言葉に従い、地上でテンペストの性能を推し量るように双眼鏡とウィッチ用無線を耳につける。
ビューリングは一気に離陸し、取り敢えず飛んでみる。無論、装備一式(メーカー推奨のHS.404など)を持っての飛行だ
「速度は……うん。いいな。タイフーンより速い」
ビューリングは「いらん子中隊」在籍末期にスピットファイアMK-Xからハリケーンの流れを汲むタイフーンに乗り換えた。
最も20歳を超えるまでのごく短時間にすぎないが……。その時に智子に刀が使えない場合の対策にグルカナイフの使い方を教えたとか……。
その時の記憶ではタイフーンの最高速は648 km程度と思ったので、2、30キロメーター上がっているだろう。
(あくまでも黒江のように数値として表せるものではない感覚で、だが)
「旋回半径は……まあいいだろう。上昇力は……タイフーンよりいいな」
「そりゃ一応後継機だからね」
と、個人的な感想を智子に言う。ただし航続距離は短いというから迎撃戦にはいいが、制空権確保には向かんな……」
テンペストは航続距離は短い。迎撃用として作られたから仕方のない事だ。最も現在の対兵団戦線は迎撃戦が主なので、
使用目的自体は時宜を得てはいるが。
「テストは良好だ。これなら実戦にすぐに出れる」
着陸し、テストとしては良好な結果が得られた事に喜ぶビューリング。服装は智子にも毎度おなじみのライダージャケットだ。
「そりゃ良かったわ」
「さて、未来戦闘機の実力とやらを拝見するとするか」
2人は飛行場内の管制室に足を運んだ。そこでは地上からの早期警戒管制が行われていた。ミノフスキー粒子とモビルスーツの登場で、
空戦におけるそういった機種は廃れたもの、地上からの管制・指揮に関してはミノフスキー粒子散布下でも探知可能な新型機器が登場した事で再興した。
「第27戦闘攻撃飛行隊へ。直ちに上方へ上昇されたし」
「第102戦闘攻撃飛行隊は敵航空団をそのまま攻撃されたし……」
様々な機器が置かれ、無線でのやり取りが飛び交っているのは正に戦場だ。このような指揮管制は扶桑では、
海軍の第343海軍航空隊(芳佳や菅野の現時点の原隊。史実では紫電改伝説を担ったとされる防空部隊)で試験的に導入されたにすぎない。
それと比べても遥かに洗練され、迅速なやり取りが行われている。
「穴拭中尉……いや、大尉と呼ぶべきかな?」
「いえ、まだ自分は昇進が内定したにすぎませんので中尉で結構であります」
「では中尉。これが現在の指揮管制だ。21世紀頃は主に空中で行なっていた事だが、
ミノフスキー粒子とモビルスーツのせいで地上から行わざるをえなくなってな……。今ではそれほど差はなくなったが、
動けないのは不便だよ」
「確かに……基地ではご不便でしょう」
「ガミラス……、白色彗星帝国も空中指揮管制の概念が無かったからこれまでは個人技で上手くいったが……今後はそうはいかんと儂は思う。
それなので上に早期警戒管制機の新規開発の再開を具申しているのだ」
「大変なんですね」
「ああ、個人的にミノフスキー粒子散布下でのAWACSを研究している。これが実を結べば……」
飛行場の指揮官は個人的な持論を展開する。「かつてAWACSと呼ばれたシステムの再興をしなければ今後の戦は立ち行かない」と。
機器の進歩でミノフスキー粒子散布下でも機能するシステムが実用化された事で、
一年戦争以前に使用されていた早期警戒機を改造した実験機がデータ収集を行っている。
結果如何では早期警戒機の新規開発再開も検討されている。これには度重なる戦乱によって類稀な飛行技能を持つエースやベテランが消耗し、
新兵の割合が増加していることへの危機感も関係しており、彼の具申は軍の政府への方便としても活用されている。
-今の地球連邦軍の航空部隊はミノフスキー粒子のせいもあって、個人技に頼っている面が多い。だが、もし強力な管制機を持つ帝国が
現れたら?
主に帝都や各惑星大気圏内防空を受け持つ空軍は白色彗星帝国との本土決戦以来、その危機感を抱いており、
強力な戦闘機とパイロットだけでは防空には足りないと結論。ちょうど白色彗星帝国との戦いでヤマトの航空隊の面々などの
優秀な人材が一挙に失われ、帝都防空の維持すら危ぶまれたのを契機にミノフスキー粒子のせいで廃れた早期警戒管制の概念を復活させる行動を
表立って開始。最終目的は空中管制の復活であるが、今はその前段階。宇宙軍や海軍を巻き込んで、その計画の主導権は今では優秀な人材の輩出が、
旧日本地域に比べて遅れがちとされている旧北米地域が握っていた。これは旧米国が凋落してからは久しぶりの光景であった。
−最も、軍需産業そのものは米国に本社があるアナハイム・エレクトロニクス社がモビルスーツ産業を半分独占しているので、米国の意地は生きているが。
2人が上空を見てみると……時々、米海軍の迷彩塗装に塗られたコスモタイガーUの勇姿(旧米国地域の部隊は、
旧米国軍時代からの塗装を独自に行っている)が見える。どうやらこの辺りは元米海軍部隊の担当のようだ。
「米国……か」
「いや……この世界はどこか違う事がわかるよ」
「確かに……ね」
ビューリングは今、自分がいる地が「極めて近く、限りなく遠い」世界である事を改めて認識したようだ。
リベリオンと米国、扶桑と日本、ブリタニアと大英帝国。歴史もどこかで分かれている。それは智子も同じ想いだ。
空を乱舞するコスモタイガーはそれを2人に暗示しているようだった。