――地球連邦軍と鉄人兵団との戦争は最終局面を迎えていた。欧州方面軍と極東方面軍間の連絡を絶たれた鉄人兵団は残存兵力で欧州での決戦を挑んでいたが、各地で連邦軍に撃破され、今や風前の灯火であった。
――欧州方面軍 地下基地
「トォ!」
仮面ライダー1号の蹴りが炸裂し、ドラえもんに襲いかかろうとした兵士を破壊せしめる。グッドタイミングで通り抜けフープが開いたのだ。
「大丈夫か?」
「1号ライダーさん!」
「間に合ったようだな。ご苦労だったなストロンガー」
「ええ。ん?風見さん、変身してないっすね?」
「あいにく、逆ダブルタイフーンをしてからまだ二時間半しか経っていないんでな」
皮肉めいた答えで風見志郎は返す。風見志郎=仮面ライダーv3死の弱点に、『逆ダブルタイフーンを行ったら三時間は変身エネルギーの充填が必要となる』というものがある。このタイムラグをどう凌ぐというのが風見志郎の戦略的課題である。
「お、なんだ。魔女っ子もいるのか?」
「ストロンガー、それ古い定義だぞ。今は魔法少女がトレンドだ」
「どっちみちサ○ーちゃんやメ○ちゃんみたいなもんじゃないっすか!」
「あ、あはは……」
同じく駆けつけたなのはとフェイトは、ストロンガー達仮面ライダーの会話に思わず苦笑いする。しょうがないが、仮面ライダー達、それもストロンガーまでの七人が現役で活躍した1970年代前期はちょうどそれら魔女っ子アニメがちょうど人気があった時期である。なのは達から見ると、古典としか言いようがないタイトル郡がポンポン出るあたりはジェネレーションギャップを感じたようだ。
「さて、ここから攻撃開始だ。みんな行くぞ!」
「おう!」
1号の号令でヒーロー軍団が構える。顔ぶれは豪華無比。これで負けろという方が無理としか言いようがない布陣。ライダー1号らが先鋒な他は歴代スーパー戦隊らが主要な攻撃メンバーだ。なのは達はその支援を担当する。彼らに続いて、ドラえもんズが到着する。
「俺達もいるぜ!」
「みんな!」
「これでドラえもん全員集合であ〜る」
「今回は豪華なゲスト付きだぜ。派手に行こうぜ」
「ガオ!(おう!)」
(ねえエル・マタドーラ。なんで王ドラ、メロメロにならないのさ。いつもならこの辺で……)
(バカヤロ、自覚したらアイツ戦力にならねえだろ。非常時だから自覚してねえんだ)
(あ、そうか)
「本当、この世界はわからん……」
「箒さん」
「絵空事と思っていたヒーローやロボットは実在するわ、魔法を使える者がいるわ、超能力……頭が痛くなる」
頭を抱える箒。共に行動しつつも、次々に起きる出来事に翻弄されて知恵熱でも出しそうな様相の箒。のび太はそんな箒に助け舟を出す。
「ドラえもんが来るまで、ぼくもそういう感じでしたし、まぁ事実は小説よりも奇なりですよ」
「そういうものか?」
「バリア付きのパワードスーツ着込んでるあんたがいう台詞じゃないわよ、それ」
「美琴、私はお前より年上だぞ?もうちょっと言葉使いを……」
「残念、生年月日はあたしのほうが10年単位で早いのよね」
「な、何ぃ!?」
疲労から立ち直った美琴は箒に年齢の序列をドヤ顔で示す。確かにこの時点の年齢は見かけは箒のほうが上だが、生年月日で言えば美琴の方が年上であった。しかも10年単位である。これは2010年代前半で14歳である美琴と、21世紀に入って20年は過ぎている時代に10代の箒との差であった。ただ、戦力的に言えば、総じて箒は美琴から見ても、パワードスーツの粋を超えた力を持つために驚きに値するらしい。
「並半端な攻撃じゃびくともしないパワードスーツなんて、学園都市の上層部が欲しがるのは間違いない。だけど、もっとすごいのそこにいるしねえ」
「うむ……確かに」
スーパー戦隊のスーツも広義の意味ではパワードスーツに属する。見かけはジャージ素材にしか見えないのに、改造人間である仮面ライダーと遜色ない戦力を発揮する(例外はジャッカー電撃隊)のは箒も美琴もただただ唖然とするばかりであった。
「バルカンスティック!」
サンバルカンの武器はこのスティックである。様々な武器へ変形可能な機構が搭載されているが、これはデンジマンから齎された技術を当時の地球の技術と組み合わせた結果である。これをメンバーで最も活用したのが二代目バルイーグルである。日本刀へ変形させ、次々と敵を斬り捨てていく。その姿は箒に自らの追い求めていたモノを思い起こした。そう織斑一夏の背中である。
(あの姿こそ、私が追い求め続けてきたモノ……誰かを守れる存在。私はそうなりたい!)
箒は彼らの背中に、自分が追い求める理想像を見出し、ようやく結論を見出したようだ。彼女らを守るかのように、歴代のヒーロー達が各々の技を見せる。
『ライダー投げぇ!!』
二号ライダーのお得意技であるライダー投げが炸裂する。これは柔道の応用であるが、二号の柔道技に持ち前のパワーが合わさって、必殺技となる。続けて仮面ライダーXが魅せる。
『ライドル脳天割りぃ!』
Xライダーはお得意の棒術であるが、決定打を与える際には脳天かち割るのが彼の真骨頂である。Xライダーはライドルを主にホイップ、スティックの二形態で用いるが、スティック形態ではパワー型改造人間でも折れない強度を持つライドルを生かして、脳天割りをやるのが彼の戦法である。これは過去にライバルであったアポロガイストに使用し、有効性を示している。(ちなみに、この脳天割り、後に黒江、智子、圭子の三羽烏や、なのはと箒に影響を与える事になる)
『ギャウウウウ!』
アマゾンライダーは野性的雄叫びとともに、腕のアームカッターをフルに用いた手刀で兵士を斬りまくる。オイルが血のように弾け飛ぴ、部品が当たりに散乱しまくるその光景は気分のいいものではないが、野性味溢れる戦いぶりである。
『99の技の一つ!スカイフライングソーサー!!』
スカイライダーは空中で大回転し、そのままキックを食らわす。ストロンガーのドリルキックとよく似た技であるが、威力は多少落ちる。これは回転力と超電子エネルギーがあるかないかの違いである。
「トゥ!!」
仮面ライダースーパー1は赤心少林拳の極意をここぞとばかりに披露する。老師が健在ならば師範を襲名できたであろう、その拳技はこの時代の最強と謳われしガンダムファイター達と比較しても遜色ないものであった。肘鉄、正拳突き、ハイキックを流れるように披露し、ウィッチ達の賞賛を浴びる。
「すげえ、拳法って初めて見たぜ……あれがカラテって奴か?」
「いや、あれは中国拳法だよ」
「中国ぅ?なんだそりゃ」
「その昔、ユーラシア大陸東部で栄えた文明だよ。扶桑文化の原型を作った文明としか、私達の時代だと知られてないからマイナーなんだけどね」
「へえ」
――ハルトマンの言う通り、中国が明代に完全に絶えたという、ある意味IFな歴史を辿った世界においては、アジアの大国といえば『扶桑皇国』だが、近世までは『明朝』が君臨していた。明朝は彼女らの世界では対怪異戦争で疲弊し、暗君が君主であった事も重なって、いち早く亡命した皇族や官吏達の一族を除き怪異に完膚なきまでに敗北、李氏朝鮮ものとも滅ぼされた。明の皇族達はその後、国家再興を諦め、扶桑皇国に同化していったために、1940年代には血族としては残っているが、扶桑の一華族として日本名を名乗っているために『中国人』というアイデンティティはとうの昔に喪失している。これは中国に関する文献が、ネウロイによる国土占領に伴う土壌汚染で現地に置き去りになったままな事、扶桑には貿易で入手していた分しか現存しないことで、人々の記憶から『中国』の記憶が薄れたためだ。ハルトマンが知っていたのは、未来世界で調べたためだ。
「なるほどねぇ。おいハルトマン、弾!」
「ドラえもん、弾ちょうだい!」
「その弾は品切れ!これを使って!AK-47〜!」
ドラえもんは意外な事にロシアの誇るアサルトライフルもカバーしていた。のび太が銃器使いである故、全世界の小銃を取り揃えていたのが伺える。形式は後期生産型に属する『AKM』タイプだ。銃剣もご丁寧に取り付けてある。マガジンと一緒に手渡し、それを受け取ったウィッチ達はヒーロー達を支援する。
「これが自動小銃か……三八式や九九式とは桁違いだぜ!」
さっそく撃ってみてご満悦の西沢。扶桑軍はこの時期(1944年7月末)、ボルトアクション式の九九式小銃をようやく配備完了したばかり。ここ最近の事態の急変で自動小銃が求められているが、まだ形になっていない。ボルトアクション式の弾込めの煩雑さが嘘のような楽さが嬉しいようだ。(西沢も新兵時代に扶桑海事変を経験しており、そこで小銃の使い勝手の悪さにぶーたれた一人である)こうして、未来世界でアサルトライフルの使い勝手に惚れた者達が扶桑における自動小銃開発の推進に一役買い、わずか一年後には試作品の完成にこぎつけるのである。これは地球連邦軍が元になるモノを提供したのもあるが、冷遇されていた自動小銃開発班が皮肉にも戦況の悪化で陽の目を見たのであった。そんな間にもヒーロー軍団の勢いは増す。仮面ライダーZXがマイクロチェーンと電磁ナイフのコンボを見せれば、RXがロボライダーへ変身し、その圧倒的な防御力と攻撃力で兵団を蹂躙する一方で、忍者戦隊カクレンジャーが忍術(と呼ぶには語弊があるか?)を見せる。
「隠流・満月斬り!!」
かの有名な円月殺法を想起させる必殺技を見せるニンジャレッド。忍者刀である故、通常の太刀に比べるとほぼ直刀かつ、長さが短い。彼らは刀を背負っているが、それは20世紀頃のステレオタイプに則ったものであり、先祖らは殆どは腰に指していたらしい。カクレンジャーのそれは先祖が使っていたものを受け継いだもので、切れ味は装甲で身を包む西洋型甲冑を一撃で装着者ごと両断可能という破格のもの。
「忍者刀の実物……初めて見た。太刀のように反ってないんですね」
「ああ。忍者ってのは例えると、今で言うスパイや特殊工作員みたいな役割担ってたからね。なるべく隠密任務に向くように色々と工夫されてるんだ。道具にもなるしね。ただし普通の武士が持つ刀より切れ味悪いから、通常は戦闘を避けるのが定石だった。まっ、俺達のカクレマルはそんなのお構いなしだけど」
箒に解説している間にも敵を倒していくニンジャレッド。ニンジャレッドらの持つ忍者刀『カクレマル』はカクレンジャーになる素養があるものにしか扱えないが、気合いで切れ味を保つ事が可能なのだ。そのため科学で造られた他戦隊の剣にも劣らないし、数百年前の忍者刀でありながらもなおも強力なのだ。彼らの活躍で兵団が一分ごとに100体の割合で蹴散らされていくが、尚も兵団の数は圧倒的であり、中世ヨーロッパや日本の戦国期よろしく、100万は下らないだろう。激戦と言っていい火線が飛び交う中、なんだかんだでV3こと風見志郎の変身可能時間がやってきた。1号が促し、風見はそれに応え、一定のポーズを取る。その瞬間、風が巻き起こり、そのエネルギーが出現したダブルタイフーンに集中する。同時に風見志郎の改造人間としてのスイッチが入り、体の原子炉とダブルタイフーンの作動音が響く。
『ムゥン!!変身……v3ァ!!』
時代がかった大仰な掛け声だが、これも彼ら仮面ライダー達の儀式である。これは怪人が人間体を取る時と怪人体へ変異する際の動作を、たとえナノマシンによる変身機能が失われても、ポーズを取ることで動作可能にするためのスイッチ代わりでもあり、元は仮面ライダー2号の時点で仮面ライダー型改造人間に備わった機能でもあった。これは仮面ライダー型改造人間独自の機構で、平和的に改造されたスーパー1以外のほぼ全ての仮面ライダー共通の能力である。
――これが箒にとって、初めての『仮面ライダーの変身』を目の当たりにした瞬間だった。光が走った直後、風見志郎の姿はそこには無く、代わりに赤い仮面と、日本のマフラーを身につけし『戦士』がそこには立っていた。『いかにも』という風格が充分のヒーローとしか言いようのない『男』であった。
『仮面ライダーV3、ただいま見参!』
お馴染みのファイティングポーズをバッチリ決めて見得を切るV3。目立つところでわざわざ変身するところといい、風見志郎は生来の目立ちがり屋と言える。本郷や一文字が改造時点で武術の達人であったのに対し、風見は器械体操中心の才能の持ち主であった。城南大学の記録によれば、『マットの白い豹』と謳われたほど将来を嘱望されていたとされる。しかし家族を皆殺しにされ、自身も仮面ライダー3号となった事で、その夢は叶わずじまい。以後は仮面ライダー3号としての道を選んで修羅として生きた。仮面ライダー達が多くなるに従い、彼にもリーダーシップが期待された。X以降のライダー達を『次席』として指揮する機会も多く、現在では全ヒーローでも、ダブルライダーに次ぐ地位である。(ビッグワンと同格である)
「行くぞ!」
V3はデルザー軍団に後れを取った鬱憤晴らしとばかりに戦闘を開始。熟練された格闘技を見せる。
「トイヤ!」
回し蹴りである。掛け声は現役時とは違う独特の「トイヤ」を用いている。これはゴレンジャーの影響で、逆輸入のような形で1979年頃(スカイライダーの時代)に用い始めたもの。語感がいいためか継続して使用している。続いて、V3チョップ→蹴り上げで分隊長級を屠る。このように、ヒーロー達の熟練した技を次々に見せつけられてはウィッチ達も箒も美琴も、ドラえもんとのび太も一様に沈黙してしまう。ドラえもんズもこれには形無しである。
「はっ!?見とれていてどうする!?攻撃しないと!」
ハッとなった箒は慌てて行動を起こす。だが、乱戦ではギガストリーマーは使えない。威力がありすぎるのだ。敵味方が入り混じる乱戦では殲滅戦などで真価を発揮するギガストリーマーは不向きである。一端ビッグワンに返却し、自前の雨月と空裂を構えて突撃する。しかしこのような陸戦はISの不向きな所(元来が空戦+空間戦闘用である故)である。ビッグワンはチェンジドラゴンに護衛をつかせる。
「行くそ!」
「はいっ!」
チェンジドラゴンは武器である万能武器『チェンジソード』を剣と盾に変化させ、箒を守る態勢を取る。箒はIS越しでの陸戦は初めて故、チェンジドラゴンの後ろにつく。それは正解であった。戦闘機動を取れるほど広くはない故、うかつにスラスターを使うのは危険なのだ。そのため、積極的に脚部を使わざるを得なかった。(後に改修の際に脚部に大幅な改造が施された背景には、この時の戦闘データが原因である。後に箒が実戦慣れしてくると、束が積んでいた操縦支援システムが却って邪魔になってくるので、任意でのオンオフ制御機能が取り付けられた。)
「はああああっ!!」
雨月と空裂を同時に前に突き出し、レーザー照射モードを初めて使う。これはそもそも遠距離用ではなく、中距離での牽制用の機能なので威力はそれほどではない。数が圧倒的多数の状況では焼け石に水である。(これは兵団の数が束の想定をも遥かに超える多数であったせいもある)
「くっ、これでダメだと……数が多すぎるんだ…!」
「この状況では下手な武器は焼け石に水だ!剣戟に専念するんだ!」
「は、はいっ!!」
箒はチェンジドラゴンをカバーする形で戦闘を行った。剣戟の熟練者である彼の姿を見ることで、彼女は剣の腕を一歩進めるのである。相手はゾンビよろしく、雲霞の如く湧いて出るのだ。いくらでもいると言ってもいい。確かに相手には事欠かない。
「トレーニング人形と思うんだ。相手は作業用も駆り出している。数を減らすことだけを考えろ」
チェンジドラゴンの助言に頷くと、箒は雨月と空裂を二対の大太刀として運用、二刀流で対応する。しかし時々、刀の使い方を彼に注意されたとか。
――美琴はビッグワンからの提言もあり、スタミナ切れからの回復に専念した。護衛にエル・マタドーラと王ドラがついた。
「ここは俺達が盾になる。セニョリータは回復に専念してろ」
「なあに、あなたには指一本触れさせませんよ」
かっこいい台詞を吐く二人。しかし美琴は王ドラについてはある弱点がある事に気づく。それは彼は女性への免疫が0ということである。
(あれ?確か王ドラ君って異性を前にするとメロメロになっちゃうんじゃ……。非常時だから自覚がないのかなぁ。まっ、いいか)
「ホアタァ!!」
王ドラは実のところ、かつてカンフー映画の英雄であった『ブル○ス・リー』に憧れており、彼が映画で用いていた雄叫びなどを完コピし、更に彼に関する映像メディアを集めるほどの入れ込みようである。武器がヌンチャクなのも、『燃えよドラ○ン』での彼に憧れているからでもあった。それも可笑しいが。
「アチョ〜!」
ヌンチャクを振り回してカンフーアクションを見せる王ドラ。しかし、彼は足が絶望的に短いという難点がある。見栄えが悪いので、彼はそこを気にしている。
――こうして、戦闘を開始するドラえもんズとヒーロー軍団。メカトピア戦争はまさに最終局面を迎えていた。デビルマジンガーとマジンカイザー、地球連邦軍と鉄人兵団。大局的な後者、局地的な前者。2つの戦いは最高潮を迎えていた…。
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