――マジンカイザーとデビルマジンガーの対決は激烈を極めた。技がぶつかり合うだけで地面は裂け、風が唸った。スーパーロボ同士の対決は破壊を齎すモノであるのが分かる。マジンカイザーは依然としてZモードである。これは神モードを全開にすれば、地球消滅は間違いないからである。その様子を遥か上空から眺めている人物がいた。八神はやてである。彼女は当時、時空管理局地上本部付の一尉となっており、帰国前に戦線を観察していた。それがいきなりマジンカイザーの戦いに遭遇したのだ。
『ルストトルネード!!』
マジンカイザーを駆る兜甲児の叫びが木霊する。魔神皇帝の名に相応しい威容のマジンカイザーが地形を変えていく様は魔法でもそうやすやすと起こせない事を平然とやってのけるのは、改めてスーパーロボットの破壊力を認識する。
(現実にスーパーロボットがあるとこうなるんやな……しかも胸の紋章はまだ『Z』なところ見ると通常モードやな。Zやグレートとケタ違いの破壊力……すごいわぁ)
はやては自分の地球でゲームをプレイした時のマジンカイザーのステータスを思い出す。武器・装甲共にZとグレートを一段上回るステータスであった。それは的中していたのだ。機体デザインは概ねOVA版らしく、関節部の塗装が金色である。武装はゲーム版のそれとOVAの折衷で、肩に剣を収容しているようだ。
(武器はゲーム版とOVA版の折衷……カイザーノヴァ撃てると見たほうが良さそうや)
『トールハンマーブレイカー!!』
(ん!?なんでそれ撃てんのや!!カイザーはカイザーでもドクロ野郎の方の技やろ!?)
意表を突いたのがこの技。マジンカイザーがカイザーブレードを天に掲げて、雷槌を招来、ブレードを媒介にサンダーブレイク同様に武器として放ったのだ。はやてのいた世界では、その技はオリジナルのマジンカイザーの技では無く、スピンオフ作品の主人公機が放っていたので、オリジナルのマジンカイザーが放つのに驚いたのだ。
『ぬおおおおおおっ!?』
デビルマジンガー、いやドクターヘルはさすがにこれには堪えたらしく、ようやく片膝をつく。これはサンダーブレイクのおよそ20倍の電気エネルギーをぶつけられたからだ。ドクターヘルはマジンカイザーを生物的にしたようなその新たな肉体を通してもダメージがかなりに伸ぼることに驚愕する。
『どうだドクターヘル!トールハンマーブレイカーの味は!』
『ぬぬ……おのれちょこざいな…!』
デビルマジンガーはさすがに装甲に傷を負ったようで、所々に焦げ跡がついていた。これでデビルマジンガーは装甲面ではカイザーと同レベルとはいい難い事が判明した。同時にカイザーとて、デビルマジンガーにはZモードではパワー面で不利であるのも判明した。
「ん?あれはグレートマジンガー……かなりやられとる。超合金ニューZも破壊できる敵ってわけか……」
はやては散策で、装甲に大きな傷を負って剣を頼りに片膝をついているグレートマジンガーも発見した。グレートマジンガーは損傷が大きいようで、戦闘行動不能のようだ。調査任務上、傍観者に撤するしかないはやては心苦しい。しかしここまで同じモノが実際に稼働しているというのも、ある意味では怖さも感じる。全くアニメ通りでもないスペックを持つのがマジンカイザーで判明した以上、グレートマジンガーもアニメと違うスペックであるのは目に見えるからだ。
――まぁ、スーパーロボットにゃスペックなんて戦力を図る目安に過ぎんやけど。
はやてはそう独りごちると、その場を離れて本来の任務に戻っていった。この時に垣間見たマジンガーの力を後に報告書で『鉄の魔神』と称した。それが正しいことは後のミッドチルダ動乱で証明される事になる。
――ロンド・ベルに配属されていたスーパーロボットの内、メカトピア戦争中に修理が間に合ったのは『破邪大星ダンガイオー』のみであった。これは残ったコックピットブロックからドラえもんのひみつ道具で復元に成功し、そこから地球の技術と規格部品で改造したので、戦線復帰が延びてしまったのだ。彼らダンガイオーチームは女性陣の格好があまりにもアレなおかげで、写真を見たウィッチ勢やなのは達から酷評されていたりする。彼らは無事にロンド・ベルに合流。現在は真ゲッターロボ共々、『ザンダクロス狩り』に駆り出されていた。
『クロスファイッ!!ダ・ン・ガ・イ・オーォォォ!』
合体時の掛け声は基本的にリーダーであるミア・アリスの担当である。彼女は地球の日本人であると判明はしているが、他メンバーは皆、異星人である。弱点に超能力が駆動系のパワーに直結していた故、疲労するとダンガイオーのパワーも下がるという点で、疲労したところを素のスペックで上回る、ギル・バーグのギル・ギアに強襲され、相打ちで大破した。修復後は補助動力装置を追加、学園都市の技術で超能力のエネルギーへの変換を効率良くする改良が施され、戦闘行動可能時間などの基礎スペックが上昇している。姿は以前のままだが、装甲材質強度やフレーム強度はその比でない。
『ダンガイオー、見ッ参!』
と、メインパイロットのロール・クランの叫びが木霊する。彼は二重人格であり、この熱い姿こそが本来の彼である。その理由はロンド・ベルの仲間は既に承知しており、敢えて言及しない姿勢を見せている。それはウィッチ勢にも通達されている。メカトピア戦争ではこの決戦が初陣であるダンガイオーだが、その技の冴えは往年と同様であった。
『ブーストナックル!』
これは俗に言うロケットパンチだが、武器名がそれらしいカタカナ英語になっているのが特徴である。問題点はこの部位にコックピットがあるという重大な設計的過失があることで、この位置に乗るランバ・ノムは度々愚痴をこぼしていたりする。
『おい、それは治んなかったのかよロール』
『根本的設計の問題だからどうにもならなかった。ランバにはすまないが、我慢してもらうしかないさ』
有人ロケットパンチにはダンガイオーチームも呆れているが、根本的な設計の都合故、地球の技術陣には直せなかったらしく、ロールは竜馬に溢す。さすがに有人ロケットパンチにはゲッターチームも同情しているのが伺える。
『ゲッターブラストキャノン!』
真ゲッター1は手持ちの火器を生成し、撃つ。このブラストキャノンは敷島博士がゲッターレーザーキャノンの小型改良型火器として、プログラムに組み込んだもので、自己生成可能な真ゲッターならばの芸当だ。出力は膨大な真ゲッター炉の出力に裏打ちされ、ゲッターGのビーム以上である。竜馬は最近は手持ち火器を二丁拳銃で扱うことを好むようになり、ブラストキャノンも当然ながら二丁拳銃である。
『うおおおおおおおおらあああああ!』
ブラストキャノンを乱射しながらザンダクロス軍団を蜂の巣にしていく真ゲッター1。格闘戦に傾倒していると思われがちな流竜馬だが、乱戦では射撃武器もそれなりに用いるあたり、ゲッターチームのリーダーとしての責務を果たしていると言える。はやてはこの戦闘も調査していた。今度はシャーペンと書類、望遠鏡を完備してである。
「うっひょ〜真ゲッター1!それに破邪大星ダンガイオーやん!!これも要チェックや……って何しとるんや私……仕事とはいえ、まるでス○ダンの陵南のチェック小僧やん……」
言ってて自分で恥ずかしくなったはやて。バリアジャケットから帽子を除き、髪も多少後ろ髪が伸びている姿はそれまでより大人びて見える。奇しくもそれは本来の歴史でのもっと後の時代の姿を先取りしたかのようだった。因みに、彼女の任務はこの時期には最重要事項であるスーパーロボットの調査になっていた。惑星を容易く滅亡させかねない超兵器を保有しているという点が管理局右派から槍玉に上げられたからで、地球人であるはやてとしてはバカバカしい任務であると言える。書類に特記事項を空中で記していく姿は、ある意味ではシュールであった。傍観者に徹するのが自分の任務で、地球連邦軍には通達されているとは言え、幼少期から憧れてきた錚々たるスーパーロボットの『実物』を目の当たりにしながら傍観するしかないというのが残念である。
(なのはちゃんは連邦軍に入っとるし、フェイトちゃんもここで『地球人』としてのアイデンティティを形成するのは目に見えとる。まぁ私もミッドチルダには同化しないつもりやけど、あの二人は『存在を必要としてくれる何か』に入れこんじゃう性質があるけど、お師匠さんが地球人で良かった……)
はやては実のところ、時空管理局に籍を置く一方で、数多くのロボアニメを見てきた影響もあり、官僚体制が確立された管理局には入れ込んでいない。籍を置いているのはヴォルケンリッターの過去の所業の贖罪のためであると言っていい。地球人としてのアイデンティティを失いたくない彼女は少なくとも高校までは地球に住み続けると決意している。これは思想的にミッドチルダに完全に同化してしまう事を恐れていたからで、なのはも通信で地球人としてのアイデンティティを失うことで、家族との距離を広げるのを恐れている旨を伝えていた。
(なのはちゃんは家族との距離を相当に意識しとる。連邦軍に入ったことで死線を掻い潜っていく自分と、これまで通りに平和に暮らしとる家族との差を意識し始めたんやろ……それに管理局員は公務員と言い訳立つけど、連邦軍はれっきとした正規軍やし……士郎さんが知ったら怒ると思うで)
――なのはは青年期に至るまでの8年を通して、自分が平穏に生きることを望んでいた両親に、『軍に入隊した』事をなんて報告すればいいのかと悩んでいく事になる。はやての懸念は両親の思いとは真逆の人生を歩む事になったなのはの前途であった。この懸念は彼女らが20歳を迎え、成人した年になのはは両親に打ち明けることで晴れる。その時には士郎からきっついビンタを貰っての叱責が待っていたとの事で、『お父さんに本気でビンタされたのはあれが初めてだった』と後に述懐する。その時になのはの姉の高町美由希は『父さんがビンタの後に何かしようとしたら私が止めるつもりだった』となのはに話し、剣の素養では一家一である姉(美由希は剣の腕ではなのはは勿論、恭也をも一部凌ぎ、鍛え上げたフェイトは愚かシグナムとも対等に渡り合える腕を誇る)に対し、思わず苦笑したという。
――そんなこんなでスーパーロボットのデータ収集を続けるはやて。そんな内に遂にダンガイオーの最大必殺技を目撃する。
『みんなの命、俺が預かる!!』
『任せたぜ』
『いいわ』
『頼むわ、ロール』
『サイキック斬でいく……!サァッァイキッックウェェェイブッ!!』
ダンガイオーが最大技の態勢に入る。腕を突き出し、念動波の波動を発する。波動は複数のザンダクロスを持ち上げ、バリアで包むかのように拘束する。この応用で敵をこのまま圧殺も可能だが、それは消耗が大きいので、修復後はできるだけサイキック斬を使用するようにしている。この流れはダンガイオーの必勝パターンであり、はやては思わず拳を握りしめてガッツポーズを取ってしまう。頭のなかで劇中BGMが再生されたらしく、ご機嫌だ。
(いよっしゃあぁぁ!これで勝利確定、必勝パターンや!!まさかダンガイオーのサイキック斬の実物拝めるなんて……生きてて良かった〜〜!!)
全長が50Mはあろうかという巨大マシーンが人間のように跳躍し、剣を構えて『斬る』態勢に入る。これは箒が見れば感動のあまり泣き出しそうなほどに美しく、雄々しい。はやてはアニメを知る故に、余計に感動が大きいのだ。塗装はスーパーロボットも兵器である故、相応に塗装が剥げて金属の地が見え隠れしている。『実物があればこんなものだろう』感が匂うダンガイオーと真ゲッターロボに、仕事を放棄して思わず見入ってしまう。
『サァッァイキッックざぁ―――んっ!!』
電光石火、破邪の剣の一撃でザンダクロスタイプは複数、まっ二つにされて破壊される。その勇姿に見とれてしまう。幸いミノフスキー粒子でレーダーがあまり効かないのと、高度を高くとっているのが幸いし、敵味方ともに気づかれていない。はやては報告書に改めて『この世界はミッドチルダを上回る力を持っている。友好関係の構築こそ急務であり、右派のいうような臨検・制圧など愚の骨頂である』と綴った。写真も忘れずに撮り、ファイルに挟む。こうしてはやては次の任地に向かう。場所はスイス。肝心要の仮面ライダーとスーパー戦隊がいる場所だ。彼らのデータはスーパーロボットやMSなどの兵器以上に上層部が知りたがるデータである。参戦するなと厳命されているが、なのはとフェイトがピンチであれば従わないつもりだ。
(ほな、スイスへ行こっか。なのはちゃんとフェイトちゃん、そこにいるっつーし)
――高度7000m。連邦軍に通告した上で、戦線の合間にある民間用空路を使ってスイスへ向かう。魔導師が空をとぶことは地球連邦軍には珍しいことでもなくなったらしく、他戦線に向かう輸送機や戦闘機のパイロットたちが敬礼してくる。これに敬礼し返し、礼儀をきちんと果たしつつ、スイスの軍事基地に降り立つ。最前線基地だ。そこは砲弾が定期的に降ってくるほどに近場らしく、挨拶しに入った管制塔で、基地司令官の懇願で『行き掛けの駄賃』として(公式記録には残されない)砲台を制圧する事になってしまった。ちょうど秘密戦隊ゴレンジャーが砲台のある駐屯地を制圧しに向かうのに便乗する形で、アオレンジャー=新命明の乗るバリドリーンに乗り込んだ。
『よし!ゴー!!』
鳥を思わせるバリドリーンが離陸する。キレンジャー=大岩大太がサブパイロットなので、はやての席はその横だ。スーパー戦隊の栄えある初代戦隊と何故か共に戦うことになったはやて。戦闘に入るのが前提なため、バリアジャケットは解除していない。
(秘密戦隊ゴレンジャー……よぉし、こうなったらやけくそや!暴れてやるでぇ〜!)
――ひょんな事で、秘密戦隊ゴレンジャーと共に極秘に戦線に参加したはやて。公式記録には残されなかったが、はやてにとっては貴重な『実戦経験』となった。これで疑問のいくつかを解決したはやては数年後に調査の最終報告をまとめる際にこう綴った。
――『観測指定世界から管理世界に移行させるべきでなく、むしろ共存共栄を模索するべきである』と――。
スーパーロボットの力と各種バケモノ殲滅機関の力もあり、地球連邦政府は言わうる砲艦外交で、管理局と共存共栄に成功する。23世紀、地球連邦は次元世界と銀河系世界の秩序を担う事になり、その文明を次なる領域へ進める事になる。同時にミッドチルダが地球圏のテロリズムの標的ともなる事の暗示でもあったが、地球連邦軍の軍事力が自らに向けられるのを恐れたミッドチルダ政府と時空管理局改革派の政策もあり、それらと引き換えに地球連邦の強力な科学を取り入れることで意識改革を選ぶ事になる。
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