――歴代ヒーローらの活躍は鉄人兵団を急激に窮地に陥らせた。ドラえもんズとヒーロー達の共同戦線は兵団を見事に蹴散らし、基地の奥深くへ進撃していく。
「ひらり」
エル・マタドーラのひらりマントはドラえもんの持つそれより高品質である。そのため、ドラえもんの持つそれがキャパシティオーバーで捌き切れない量の攻撃も捌くことが可能だ。兵団の兵士が放つ膨大な量のレーザーガンの一斉射撃を軽く受け流す。
「俺様の手にかかりゃ、ざっとこんなもんよ!ドラえもん、空気砲の用意はどうだ?」
「今、のび太くんやウィッチの皆さんに渡した。一発の威力はたかが知れてるけど、複数を一斉に撃てば迫撃砲くらいの威力はあるからね」
「よし、防御は俺に任せろ。お前たちはヒーローの皆さんの側面援護だ!」
「Ok!」
ドラえもんはウィッチの皆とのび太に空気砲を改めて手渡す。ドラ・ザ・キッドも使う最新モデルで、フロントサイトが備えられている。(ドラえもんはバーゲン品を買い込むことも多いので、世代的に旧型を持っている事が多い。大冒険で使用したのはコーヤコーヤ星で使用したのが最初。この時はレッドカラーの旧モデルである)
「ねえ、ドラえもん。空気砲ってことは、圧縮空気を撃ちだすんだよね?だったらあたしの魔法が攻撃の補助に使えるはずだよ」
「そうかハルトマン、お前の固有魔法は(疾風』(シュトゥルム)だったな!」
「よし、んじゃお願いします!」
――そう。ハルトマンの固有魔法『疾風』は攻撃系に分類され、手の平から繰り出せば敵の装甲を深く抉る事も可能だ。今回は空気砲の原理に気づき、その補助に用いた。のほほんとしているようで、意外に聡明な面を持つ彼女ならばの指摘だった。ドラえもんも右腕に空気砲を装着し、皆で一斉射撃をする。ドラ・ザ・キッドが号令役となる。
「いいかみんな、行くぞ!いっせーのー……」
『ドッカ〜ーン!!』
空気砲が圧縮空気を撃ちだす瞬間、ハルトマンが固有魔法を発動させ、空気砲のエネルギーを増幅する。複数の空気砲が撃ちだす圧縮空気の衝撃波は破壊力にして、迫撃砲に匹敵する。それを更に増幅したのだから、威力はもう艦砲レベルに達した。一発で周囲の空気を震わせ、音の壁を超えた衝撃波で兵士を吹き飛ばし、ついにはあちらこちらへ叩きつけた。これにはドラえもんも驚く。
「嘘ぉぉ〜〜……まさかここまで威力が上がるなんて」
「あたしも驚きだよ。まさかこんな事になるなんて」
「よし、第二波行くぞー!」
数回ほどの斉射で一気に道は開けた。仮面ライダー一号を先頭に、全員が突撃を敢行する。すると、狼狽える兵士たちが一斉に下がり、一人の『男』を迎え入れた。指揮官であるシャールが姿を見せたのだ。指揮官型の特徴であるマントを翻しつつも、兵士との外見上の差異が少ない事から、中級指揮官である事が分かる。(因みに最高指揮官は金色かつ、昆虫の意匠を持つ。これはドラえもんらの記憶から明らかになっており、メカトピア星が元は昆虫の天下であったのが伺えた)。シャールには自爆が至上指令として下されていたはずだが、それを無視して、敢えて太時代的な事を行ったのだ。
「私は鉄人兵団スイス方面軍司令、シャール。野比のび太くん。私は君に決闘を申し渡す」
「決闘?」
「そうだ。私は元は下級貴族の出でな。この戦争に負ければ貴族階級は完全に廃止され、高級軍人は戦犯として裁かれ、私の一族の名誉は地に落ちるだろう……。だが、ここで死ねば名誉ある軍人のまま後世に語り継がれる。家族の名誉のためにも、戦犯になるわけにはいかんのだよ。受けてくれるね?」
「……いいでしょう。でも、なんで僕と?他にも相応しい相手がいくらでもいるのに?」
「銃にはいささか自信があってね。それにハワイでの君の噂は聞き及んでいる。我が人生最期の相手に相応しいと考えたのだ」
――シャールは何で、上からの指令を無視して、地球人から見ても、古風な銃での決闘を選んだんだろう。この時の僕にはわからなかった……。メカトピアでは奴隷制は無くなって、旧支配階級の多くは没落してると、『前の時にリルルから聞いた』って、しずかちゃんは言ってた。彼の家も共和制になった時代で冷遇された旧支配階級の家なんだろうな。僕は応えた。ギラーミンと戦った時もそうだけど、男と男の決闘に応えるのが『礼儀』だと僕は思った。だから受けた。
後に青年期を迎えた頃に、こう手記を残したのび太。西武開拓時代を目の当たりにしている彼は、シャールの真意こそ図り兼ねていたが、本能的に決闘を引き受けたのが分かる。のび太はシャールの銃がレーザーガンであることに気づき、ヒーロー達に銃を貸してと頼み込む。するとロボライダーがボルティックシューターを手渡す。
「子供には大振りだが、これを渡すよ」
「ロボライダーさん、これは……?」
「ボルティックシューター。俺の使う銃さ。無反動だから子供でも撃てる。ただ、子供の手では取り回しづらいのが難点だけどね」
「俺達が見届け人だ。君は存分にやってくれ」
「ロボライダーさん、一号さん……ありがとうございます!」
「君と彼の決闘は俺達が邪魔させん。安心して君は決闘するんだ」
最後にスペードエースがのび太の肩を叩いて激励する。憧れの対象として、のび太が普段見ている、ヒーロ―達からの激励にのび太は勇気を奮い立たせ、決闘を挑んだ。
――決闘は古風なコイントスでコインが落ちた瞬間に振り返って撃ちあうという手法が取られた。ドラえもんがコイントス役を志願し、コインを用意する。この古風ぶりに思わずシャーリーはこう呟く。
「まるでOK牧場の決闘だな……」と。
「地球の命運かかってますけどね……」
「……のび太の射撃の腕はどうなんだ、キッド?」
「あいつは射撃の名手だぜ?こんなところでくたばりゃしねーよ。まだ俺との勝負ついてねーんだからよ」
不安げな箒にキッドはこう言った。自身との勝負をつける前にのび太が負けるはずはないと。この時ののび太の目は臆病ささえ垣間見せる普段の目ではなく、戦う男の目であった。それは箒に幼なじみの織斑一夏を想起させた。一同の見守る中、のび太は決闘の場に立った。
――対峙する両者。一方は鉄人兵団方面軍司令、一方は類稀な才能を有するとはいえ、ただの小学五年の子供である。不釣り合いにさえ思える。だが、のび太はこういう局面に強さを見せる。非常事態に場慣れした小学生というのもなんとも変だが、過去の実績がのび太の自信に繋がっていた。
「だ、大丈夫なのか、のび太」
「なあに、負けるもんか。任せて下さい」
箒からの言葉にサムズアップで応えるのび太。ボルティックシューターを片手に、早打ちによる決闘に挑んだ。
(やはりこいつは只者ではないな……場慣れしている)
(敵はロボットだ。一撃で勝負をつけるしかないな……!)
長期戦を不利と悟り、一撃で決着をつける事を決意するのび太。『長年の歴戦の勘』がのび太の普段は0点な頭脳の潜在能力を最大限発揮させた。シャールが『只者』でないと見抜いたのも無理はない。ドラえもんがコインをチャリンと弾き、地面に落ちた瞬間、両者は銃を撃ちあった。『バシュッ』とレーザー特有の発砲音が響く。交錯する両者の射線。それが収まった後、のび太が片膝をつき、蹌踉めく。ヒーロー達含めた女性陣からは悲鳴が上がるが、次の瞬間。シャールの体にはボルティックシューターが貫いた穴が開き、内部回路のショートによる火花が散り、潤滑油が吹き出していた。のび太は皮膚をレーザーがかすった痛みで膝をついたが、軽傷だった。ここにのび太は勝利したのだ。
「見事だ……のび太君……」
「あなた達はなんで死ぬ事を選べるんですか…?軍人だからですか?」
「いや、そういう次元の話ではないよ……誰もが命の張り場所というのはある……私はそれが……今だっただけの話さ……私は戦場で死ぬことで家族の名誉を守った……だけさ。上の連中の狂言は実行させ…る…な」
それが彼の最期の言葉だった。『上の連中の狂言』というのに気がついたのはウィッチ勢であった。
「まずい!ここの地下にはフォールド爆弾がある、それを起爆されればTHE ENDだ!!」
「何ぃ!?みんな、最深部に急ぐぞ!彼が死んだことで、半狂乱になった部下が起爆させかねん!」
「そ、そういうことあるんですか!?」
「昔からそういうことは戦場でよくある!ドラえもんくん、通り抜けフープは!?」
「さっきので在庫切れです!」
「ああもう肝心なときに!エル・マタドーラはありますか?!」
「俺ははねぇ!」
「吾輩が三個持っているである。じゃが、最深部に直行できるかは分からないぞの!?」
「ここは俺に任せてくれ!そこにある敵の端末からハッキングして最適なルートを探し当てる!」
「そんな事できるの!?異星人の端末よ!?ヘタすればプログラミング言語も違うって事があるんですよ!?」
「心配無用だ。ロボライダーになった俺にはハイパーリンク能力がある。使うのは始めてだけどね」
――焦る一同。だが、美琴の一言にロボライダーは自信満々に言ってのける。ロボライダーの能力を以てすれば、如何なるコンピュータも一瞬でハッキングできると。そしてロボライダーが端末の操作部に手をかざした瞬間。青い光が筋のように、ロボライダーの体を走る。端末の場面が激しく切り替わっていく。その間、わずか一秒もあるかないかであった。直に箒の赤椿に基地構造の詳細図が送られてきた。箒は直に投影式ディスプレイを開き、皆に見せる。
「凄い。一瞬でこんなデータまで取って、しかも地球のデータ規格に直して送れるなんて……。最深部はここから三つ先のブロックから通り抜けフープ使えば間に合います!」
「よし!みんな、行くぞ!!」
一同はシャール最後の置き土産である『フォールド爆弾』の起爆阻止へ向かう。仮面ライダー一号を先頭に、抵抗する敵兵を倒しながら突貫した。
――メカトピア 本星首都
「独裁政権を打ち倒せ!!」
「自由を我らの手に!!」
と、威勢のいい語句と共にレジスタンスとそれに共鳴した市民らが数十万単位で行進する。軍や秘密警察にそれを阻止する力はもはや無く、逆に共鳴した兵士たちが市民の味方になる始末であった。独裁者の牙城であるはずの首都でさえのこの惨状は、政権の終焉のカウントダウンが開始されたのと同義であり、捕虜となっていた地球連邦軍人らが軍事戦略を市民に講義し、リルルのカリスマ性で市民を統制するという組織構造だった。リルルが地球で独自に停戦条約調印に成功したというのも、戦争に疲れ果てた市民を鼓舞した。条約の発行には独裁政権の打倒が絶対条件であり、市民は平和を掴み取るために行動を起こし、首都の官邸へ行進する。中には軍兵士も含まれており、対応を問われた政権の施政者である『将軍』は親衛隊麾下の戦力を動員し、虐殺を敢行した。爆撃機による機銃掃射で道路を油と血の海に溢れさせる。だが、それは停戦の伝達のために派遣された地球連邦軍バトル級戦闘母艦が阻止し、官邸へ空間騎兵隊が雪崩れ込む。市民も後に続く。
「将軍を捕らえろ!!親衛隊さえ排除すればこちらの勝ちだ!!」
地球連邦軍・空間騎兵隊第一大隊長「古野間卓」はメカトピアの政変を補助せよという任を仰せつかり、メカトピア首都に堂々乗り込んだ。窓を突き破っての乱入に、敵の親衛隊の応戦は乱れ、統制が行き届かなくなっているのが伺えた。彼ら空間騎兵隊はドアと玄関をバズーカで派手に吹き飛ばし、市民を招き入れ、共に将軍を探す。
「目標はいたか!?」
「いえ!隈なく探してますが、何処にも」
「地下トンネルで空港まで行ったのでは?」
「地下トンネル?」
「私が父から聞いた話だと、共和制時代に軍部の反乱を恐れた時の大統領が、逃げ延びるために地下をトンネルを掘らせたと聞いてます!」
「よし、その地下トンネルの出入口を探せ!肖像画の裏、椅子のスイッチ、金庫のダイヤル、怪しいものは全て試せ!!」
古野間は部下と市民に地下トンネルの出入口を探させる。官邸内では市民&空間騎兵隊がAK-01小銃で親衛隊と撃ち合いを行なっているが、直に親衛隊を制圧できるだろう。
「地下トンネルを発見次第、第二小隊は目標を追跡、捕縛せよ!」
――この日を堺に政変が開始され、メカトピア戦争は一気に終局へ向かう。独裁政権が倒れ、旧共和派が政権を回復するのはこの三日後。同時に議会制民主主義国家への回帰を宣言し、新憲法を制定した。同時にレジスタンス市民をそのまま新たな軍隊に入隊させ、旧軍の将校の多くを排斥した。結果、メカトピア戦争は新政府の樹立と同時に『地球連邦とその庇護を受けた新政府対旧政府勢力の残党』へその様相を変えた。だが、新政府の停戦指令に従わない軍部隊はかなりに登った。地球派遣軍の構成将校の多くは新政府によって『戦犯』とされたのだから、当然だ。これが新政府の樹立後もメカトピアをしばし悩ませていく。
――ドラえもん達がシャールと決闘を行った時刻に樹立された新政府が即日で戦争の停戦指令を下し、公式にはこれが書類上での『メカトピア戦争』の停戦だとされている。実際はそれよりも数週間後に停戦しているので、後世ではそちらを終戦記念日として、双方が扱っている。メカトピア戦争は終結へ大きく動き出したのだ。だが、戦いそのものは続く。
――スイス
「よう。お二人さん、ずいぶん暴れてんじゃねえか」
「藤原達か。そっちは片付いたみてぇだな」
「へっ、あんなの俺達の手にかかりゃお茶の子さいさいだぜ。ここに敵の工作兵たちが集まってきてるってよ」
「お〜そりゃおもしれぇ。で、スーパー戦隊のメカが可勢にきたって?」
「そうだ。ゴーグルロボとグレートファイブがこちらへ向かってると初春ちゃんから連絡があった」
「そんで俺達はそれまでに暴れておこうってなったわけ」
「なうほど。お前ららしい選択だ」
「よし、行くぞ!あれがドクターヘルのマジンガーだって?」
「そうだ。脳みそでも入れたらしく、有機的動きをするぞ」
ダンクーガはカイザーよりも体格的に大きいため、先頭に立った。それにデビルマジンガーこと、ドクターヘルは笑う動作を見せる。
「ほう。久しぶりのよぉ、藤原の小僧ども」
「やいドクターヘルのクソジジイ!マジンガーの身体をもらったとかで年甲斐もなく喜びやがって!俺達がのしてやるから、覚悟しやがれ!」
「面白い。この地獄大元帥、まだまだ貴様ら小僧には遅れはとらんぞ」
デビルマジンガーはダンクーガを迎え撃つ。デビルの悪魔的風貌からは裏腹に、武道家的動きを見せて、司馬亮の操縦する接近戦時のダンクーガに対応してみせる。これには忍も亮も驚愕する。
「ドクターヘル、……貴様、空手の心得があるな…!?」
「若いころに大学で空手部にいたのでな。身体は変わっても、心技は変わらんということだ。そういえば貴様は中国拳法の心得があったな、司馬亮」
「そうだ。まさかこういう形で拳を交えるとはな」
「ふふ、昔取った杵柄がまさか役に立つとは…。世の中わからんな」
ダンクーガでの肉弾戦は亮の役目である。機体の追従性も相応のものになっているが、デビルマジンガーは亮の拳法に空手で対応して見せる。ドクターヘルは昔取った杵柄とばかりに空手の型を取ってみせる。亮もダンクーガを通して、中国拳法の構えを取る。ガンダムファイトを思わせるが、違うのはもっと大型のメカ、それも大陸レベルで地形を変えうる力を持つスーパーロボットで行っているのである。拳がぶつかるだけで空気が震え、衝撃波で地割れが発生する。とにかくスケールが大きい。ダブルマジンガーも加勢した故、スイスの地形が変わってしまったのはいうまでもない。この様子はラー・カイラムからでも観測され、初春飾利はブライトに「いいんですか?スイスの地形が変わってますよ?」と具申したが、ブライトは「藤原達の行くところ、もれなく地形が変わる。その程度で済むなら安いものだ」と、半分諦めの状態の返事が帰ってきたとのこと。スーパーロボットの運用には犠牲が付きまとう事がよく分かる一コマであある。
――メカトピア戦争は終戦に向かいつつあるが、まだ戦いそのものは続く。そのことを示すかのように、あちらこちらで戦火が上がる。それを止めるための戦いがこれから開始されようとしていた。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m