外伝その158『ウィッチ世界の混乱』


――ガリアは怪異に金属資源を長年の間吸われていた事で解放後の国家運営に多大な支障を来たし、軍の再建は愚か、パリの復興すら覚束ない有様で、無事だったルーブルの所蔵品は皆、キングス・ユニオンや日本連邦が修復の名目で持っていってしまい、ド・ゴールはまさに前途多難であった。ガリア軍はもダイ・アナザー・デイで殆どいいところ無しで、ペリーヌが頑張っている以外は、ダイ・アナザー・デイでも『ベンチウォーマー』扱いを受けていた。ド・ゴールは大いに悔しがったが、ジャンヌとアストルフォに『貴方(君)は過激な愛国主義者の軍人であって、大統領の器じゃない』と政治手腕を自国の英霊に酷評されるという仕打ちを受けた。ド・ゴールはノーブルウィッチーズの者達には、次女の不幸な境遇を同情の道具に使う事で信頼を得た。だが、今回は黒田とハインリーケ(アルトリア)には、次女を自分の味方を得るための道具にしたとして嫌われている。だが、次女のアンヌには罪は無いので、黒田とアルトリアは、ドゴールの次女『アンヌ』の治療を取引材料に用いる事で今回の作戦での補給物資のルートを確保していた。ド・ゴールは当時の仏の軍人としては傑出した人物であるが、政治手腕は無能で、アイゼンハワーにも『あれは政治家ではないよ』と酷評されている。しかし、それでもフィリップ・ペタンよりは遥かにマシな人材であった――


―ー戦場――

「本当、君はナポレオンになれるほどに人気もないし、政治家としては微妙だよ」

視察に表れたシャルル・ド・ゴールを前にして、アストルフォは酷評する。しかしながら、ドゴールは当時はまだ壮年期で、若めである。そのため、ド・ゴールはいい年して泣いてしまう。

「泣かないでよ〜。一応、軍の将軍でしょー?」

「そ、それはそうだが…」

「見てごらん。この状況。戦況はけして楽じゃない。君の指揮してるガリア軍の出る幕があると思うかい?」

「そ、それは……」

「君の軍事的素養は認めるけど、ペタンよりは時代に即してるのは認めるけど、政治的な野望は身の丈に合わないよ?」

「しかし……」

「だってもヘチマもないよ。だいたいね、怪異に勝てないのに、我が偉大なる国ってフレーズを入れるのかい?いくらなんでもドン引きだね、ボクは」

アストルフォは一国の国家元首であるド・ゴールにこの口の利き方である。自国の英霊で、ローランの親友という何気に凄いポジションなので、さしものド・ゴールもタジタジだ。生前に道化としての側面もあったので、ド・ゴールを諌めるのにはうってつけの人材であった。ジャンヌでは、権威の前では一歩引いてしまうので、こういう時はアストルフォの出番だった。

「今、前線支えてる日本連邦だって、できるまでが大変だったんだからね?20年近くもかかったんだし」

「20年?」

「向こうでの話さ。できるまでに首相が何人も代わってるし、世論が割れたからね」

アストルフォがいうように、日本連邦はできるまでに、ほぼ20年の歳月をかけている。交渉開始時は森政権、できた時は第二次安倍政権である。これは日本側の世論が覇権国家に見える扶桑との連邦に反対する事が予想されたため、自衛隊に連邦への賛成論を定着させるため、黒江達を自衛隊に送り込むことから始めたからだ。黒江達はシンパを自衛隊に作り、扶桑との連邦に肯定的な風潮を作り出すための工作をさせる忍者のような役目も負っており、学園都市の2010年代初頭の戦争行為は、黒江には渡りに船であったのだ。普通に留学視察もあるが、日本政府が期待したのは、裏の役目であった。黒江はその思惑通りに防大で優秀な成績を納め、源田の口添えで空自へ行き、2012年を超えた辺りで統括官に内定し、将補の地位にあった。2000年代後半には訴訟の嵐であったし、留学生と扱われている故に肩たたきも出来ないと悟った革新政権は冷遇したが、ブルーインパルスには行っていた。そんな黒江達の努力は、年を追うごとの基地祭で、途中からは調も参加してのライブを大規模に行ったりしての盛況ぶりで表れた。基地祭でのライブは2000年代後半、黒江と赤松が主導して始めたが、ある時に調が『自分も参加する!』と言い出したため、2010年代のある時期から参加している。これには、成人したのび太の後押しもあった。そして、2016年度についに条約施行に至り、軍を含めた諸制度は2017年度から始動している。本格的な動きは2018年度からなので、自衛隊にシンパを作り、連邦軍としての行動に肯定的な自衛官を多くする行動がほぼ20年の活動で実を結んだのだ。

「で、自衛隊内部に組織細胞作って、連邦体制に肯定的な自衛官を地道に増やしていったんだよ。かなりの時間をかけてね」

アストルフォの言う通り、日本人の意識を変えないと無理と、日本側から要請があったので、日本連邦は当初は10年単位でのタイムスケジュールでの結成だった。だが、途中での政権交代に加え、国民の反発を鎮めるための説明期間が長めに取られた結果、19年もの歳月をかけたのだ。当初よりも10年は長くなってしまったが、とりあえずの目的は果たした。

「日本人はこういう根気のあるタイムスケジュール立てられるけど、ガリアじゃ無理だろー?別の時代の援助があるわけでもないし、戦間期の設計の兵器で加速度的に進歩してる兵器に立ち向かえると思うー?」

アストルフォの忠告で自国の軍備再建計画の再考に至るド・ゴールだが、結局、早期再建派と穏健派の音頭を取れず、軍のまともな再建すらままならぬ内に、太平洋での戦争は終わっていき、ガリアはその存在感を急速に無くしてゆく事になる。ド・ゴールが同位体の傍若無人さに恐れをなし、ウィッチ世界の彼は大人しめにはなったものの、アルジェリアやインドシナの利権は国として手放したくないため、やはり日本連邦と激突し、超大国化した日本連邦の前に無残な敗北を喫する事になるのだった。

「確かに」

「これ、君の同位体の評伝。色々と複雑だけどさ、これ見て身の振り方を考え直すべきだね」

史実でのド・ゴール自身を後世から見ての評伝を、『本人』に伝説の英霊が手渡す構図はなんともシュールであった。だが、相手が国家元首級であると、相手が誰でも動じないアストルフォの方が何かと都合がいい。この時に自身を見つめ直したド・ゴールだが、国家的な欲求である植民地の維持だけは国家の意思でやらざるを得なくなり、日本連邦にその意思を木っ端微塵に打ち砕かれるのを見届け、良くも悪くも劇的な人生を送った同位体とは違い、国家元首としては、『ペタンよりは遥かにマシだが、ナポレオンに比せられるような英雄ではない』とされる程度の凡庸な国家元首の域を出ないが、その代わりに『失政』とされる物は、周りに押されて行ったに過ぎないとされるなど、幾分か施政者としては救われた行く末を辿る事になる。ペリーヌ/モードレッドのガリアへの尽力もあり、外政よりも内政で優秀とされ、同位体のような華々しい経歴の人生ではないが、同位体がどこかで望んだ『穏やかな老後』を紆余曲折を経て、なんとか送れたのだった。



「ボクは戦えはするけど、宝具が戦闘向きじゃないしねー。それと、伝言。ジャンヌは君の思ってるような聖女とはちょっと違ってきてるから、伝説での色眼鏡で見ないでくれって言って来てるよ」

それはジャンヌが、アストルフォに託した伝言である。ルナマリアの現代っ子成分が多分に作用し、現代っ子な思考が増えているので、性格は生前と変わっている。生前の通りというのは期待しないでくれという趣旨だ。

「転生というものは、そういう事だと理解している。君とて、生前は女装男子だったろう?」

「精神は生前のままだから、オナベみたいなもんさー。体は女の子になってるから、ローランにこれで言い寄れるようになったけどね。おかげで日本の広報に引っ張りだこさ」

アストルフォは飄々とした振る舞いだが、生前が男性だった事を全く感じさせない女性らしい仕草も持つため、転生後はすっかり女子枠である。さっそく日本連邦のCMに引っ張りだこらしく、戦よりもそっちのほうの仕事が入ってしまった事には苦笑いだ。モードレッドは生前に円卓の騎士であったので、ガリアからはお声がかからず、戦いながら憤慨している。(アルトリアも祖国のキングス・ユニオンよりも、日本連邦で広報の仕事が入った事は困っている)

「モードレッドがCMに出たいとか言ってるんだけど、どーにかできない?」

「うーむ。モードレッド卿は生前の経緯が経緯だ。騎士道精神の残る欧州では好かれんよ。それに口の利き方がガラが悪いからな。まぁ、キングス・ユニオンではそれなりに人気だ」

ド・ゴールの言う通り、モードレッドは円卓の騎士の崩壊を招いた人物であるので、騎士道精神の残る欧州では、どうにも人気はない。アルトリアはアーサー王という虚像が大きくなりすぎ、その本人でさえも予想だにしなかったほど影響も大きいのだ。

「チャーチル卿は『私は無限に存在しうる平行世界のアーサーの一人、貴殿方の過去に於いての偉人たるアーサー王とは、事実上の別人と考えていただきたい』と言うようにアドバイスしたそうだ」

「まー、それが一番無難だね。あのおじいちゃん、キングス・ユニオンになったおかげで、政権の首の皮一枚で繋がったーとかタブロイド紙に書かれたよ」

「仕方がない。大和以上の戦艦を空母より多く作ろうとするからだ」

大和型に対抗できる戦艦を作ろうとしている一番の国はリベリオンでも、バダン(ナチス残党)でも、ガリアでも、ロマーニャでもなく、実はキングス・ユニオンである。キングス・ユニオンは戦艦の稼働率はともかく、質が低いのだ。『ヤマトショック』以後の時代では、ライオン級も『見劣りする』のだ。そのため、大和のスペック判明後は本来、空母にかけるべき予算も注ぎ込んで、『セント・ジョージ』、『クイーンエリザベスU』の両艦級を計画し、作っている。しかし、日本連邦では、大和に輪をかけて強力な戦艦が続々と登場している。敷島では61cm砲が検討されている始末だ。これはキングス・ユニオンには通達されているので、この日の海軍関係者の会合では、このような会話が飛び交っていた。(実際は60口径56cm砲で落ち着いたが、本当に俎上に載せられた)

「君たち、頭可笑しいのではないか?61cm砲など、列車砲の口径だよ」

「それは日本向けの偽装プランですよ。61cmになると、投射重量が23世紀の技術でも落ちるので、56cm60口径で落ち着きました」

「なぜ、わざわざそんな事を」

「日本は新型戦艦には当時最新最強の主砲を添える習性がありまして。それに反する長砲身化は本気と取られないんですよ、先方に」

扶桑の造船官はブリタニアの海軍関係者に愚痴る。日本は新型戦艦に『完成時の世界最大最強』を求めるため、砲の長砲身化の利点を理解できない者が政治家や官僚に多い。長砲身化で砲身命数が短くなる事が嫌われていた事、交戦距離の延伸で初速が高くても意味はないと考えていた海自関係者も多い。その為、重量増加を嫌う日本では、砲弾の新開発で威力アップよりも大口径砲を作る方が相対的重量低下になるという論調が罷り通っている。

「今の56cmが実体弾での限界ですよ。それを超える威力など、メガ粒子砲かショックカノン、パルサーカノンが必要ですよ」

地球連邦軍も一年戦争で、ペガサス級に51cm実体弾砲を積んだが、それが実用上の限界に近いと悟っている。後継にあたるラー・カイラムなどはメガ粒子砲の出力をアップさせて、従来艦以上の攻撃力を持っている。彼がそう形容したように、地球連邦軍はメガ粒子砲とフェザー砲に変わる艦砲として、ショックカノンを作り、その理論改良型のプラズマショックカノンを経て、パルサーカノンに至る。パルサーカノンは30世紀の頃、一級戦闘艦に積まれた『宇宙最強の砲』である。ロンド・ベルには、その理論がキャプテンハーロックやGヤマトを通して伝わっている。プラズマショックカノンが通じないイルミダスに対抗すべく、その時代のトチローが作り出し、改良された型がアースフリートに普及している。そのデータと工作機械をロンド・ベルにGヤマトはもたらしたのである。最も、30世紀ではドレッドノートの高級モデルに積まれている普及モデルであるが。それでも、その700年前の23世紀では無敵の砲だ。当たり前だが、イルミダスに対抗する為に開発されし砲なので、それ以前の敵はどんな敵でも防げない。セイレーン連邦(地球連邦から分裂した国家)でも、だ。当然、23世紀のコンピュータでは戦艦のメインフレームでも能力不足に陥るので、アナライザー型の補助演算でようやくである。これは23世紀最高の演算能力を持つナデシコ級でも同様だ。その為、30世紀のコンピュータと23世紀のコンピュータには、21世紀のスーパーコンピュータとアポロ計画のコンピュータ並とも言われる能力差があると言えよう。その為、23世紀のコンピュータでパルサーカノンを扱うため、初春飾利に出張してもらい、30世紀のコンピュータとの格差を埋めるために一工夫してもらうのだった。ドラえもんも艦のメインフレーム増設などに協力し、ロンド・ベルの主力艦にパルサーカノン用の演算室が増設されたとか。

「しかし、日本は無茶な要求を公然とするのかね?」

バートラム・ラムゼー提督が言う。

「無知故の蛮勇、ですよ、閣下。日本は追い詰められた挙句に大和と武蔵を制空権なき戦場に向かわせた。そのトラウマが21世紀日本の色眼鏡になってるんですよ。普通は魚雷二本でお陀仏なんですがね、戦艦でも」

「彼らにそれを?」

「言葉は通じても思いは伝わらない、その程度は隔絶した相手なら何処にでも居るでしょう?特にブンヤ連中がそうです。リベット工法がダメだとか、砲弾前提の防御が、速度が遅い、舵が効かないとか。連中は我々を脆い船を作る馬鹿としか」

「それで23世紀に泣きついたのかね」

ジョン・トーヴィー提督も続く。

「だって、そうでしょう?連中の条件は魚雷の2、30本と100発の1.5トン爆弾、200発の40cm砲、しかも劣化ウラン弾に耐えろですよ?おまけに連中、戦艦の砲で戦車砲の装弾筒入り有翼徹甲弾が撃てると思ってる」

「それはいくらなんでも冗談ではないのかね?戦車砲と戦艦の主砲は構造が違う」

「戦車砲の貫通力が上がっているから、劣化ウラン弾基準の防弾は要求して然るべきだ、と。信じられませんが、連中は戦車砲で戦艦を撃つ事があると」

21世紀では装甲目標が戦車しかなく、砲のカタログスペックで貫通可能な装甲厚が大和の最重要装甲厚を超えているため、それに対応できる装甲を求めるのが当然と言うが、これは日本の官民の無知が原因だ。艦砲はそもそも戦車砲で撃つ砲弾は使えないのだ。戦車砲は滑腔砲、艦砲はライフリングがあるライフル砲であるからだ。大和の砲身命数が問題なのは、ライフリングが削れるからであるが、日本の官民の無知はもはや信じがたいものである。日本連邦の財政を握る財務省は事あるごとに軍事予算を削ろうとしており、それを黙らせるには、バイタルパートにジャパニウムから錬成される超合金Zの系譜を使うしかないのだが、ただの超合金Zでは弱いと難癖つけられるので、ゴッドZとニューZにしたのである。

「おかげでジャパニウム系の合金の高グレード版をふんだんに使う事に。至近距離でリトルボーイが炸裂しても無傷ですよ」

「ジャパニウム?」

「22世紀あたりで発見されている、マジンガー系列の力の根源になる鉱物です」

「どこに鉱脈が?」

「富士山の地下にあるのですが、大規模に採掘するには富士山を崩さないと無理なので、新エネルギーになり得なかったエネルギーです」

光子力は確かに魅力的なエネルギーであったが、取扱いを間違えるとメルトダウンからの暴走事故を招く(剣造夫妻の事故はこれが原因)事、大規模なジャパニウム採掘に富士山を切り開く事が必要などの悪条件により、新エネルギーにはなれなかった。更に、マジンガーZEROを倒すには、『光子力エネルギーで動くマジンガー』はカイザーであろうと不可能であるという重大な事実から、それ単独で使われることはなくなった『旧世代のエネルギー』扱いである。光子力の弱点は効率は良いが、瞬間的パワーが増幅されたゲッターエネルギーに劣るという点であり、弓教授が陽子エネルギーに傾倒した原因にもなった。甲児はというと、陽子エネルギーの制御難度から、グレンダイザーの光量子のほうを宇宙科学研究所で研究していた。光量子のほうが安定性もあり、グレンダイザーという実物もあるからだ。その光量子は後々の戦役での事件の結果、制御に目処が立ち、マジンガーZのレプリカに当たる二号機にその試作炉心が使われる事になる。

「ジャパニウム合金を示唆したところ、真顔でニホニウムの間違いか?と言われました」

「ジャパニウムは22世紀の発見だからな。それに格子欠陥の少ない構造という点でも、既存の金属を超えているしな」

超合金Zが何故、頑丈と言われたのか?それは結晶単位での格子欠陥が既存の金属よりも極めて少ない事から来ている。不完全版の合金Zはそれが通常の金属に近い規模で存在するため、通常の金属よりは頑丈程度の強度だった。ニューZは超合金Zを更に精錬する事で得られる合金であり、通常の工法で得られる合金としては、デザリアム戦役の前段階の当時でも最高級にあたる。強度強化では、もはや限界点に来ているので、その代わりに『溶解液への耐性強化』などが最近の光子力研究所と科学要塞研究所の研究テーマだ。デザリアム戦役前に地球へ襲来した『宇宙怪獣ギルギルガン』にニューZ、宇宙合金グレンが容易く溶かされ、捕食された戦訓もあり、最近はそれが研究テーマの感があった。ギルギルガン、その後に襲来した光波獣ピクドロンのいずれも、ベガ星のライバルであったダドダム星が送り込んだ尖兵であった。その二体の再来を恐れた。ピクドロンはグレンダイザーが偶々、天敵のような特性を持っていたので、容易かったが、ギルギルガンは強敵であった。その強化タイプを作り出すとの捨て台詞を吐いたダドダム星人の事もあり、三笠や播磨、敷島はその研究のいいテスト材料であった。

「グレートマジンガーの金属で改造しましたと言ったところ、防衛省が腰抜かしましてね。マジンガーZより強いあの?とか言いましてね。傑作でした」

「それもそうだろう。マジンガーZの時点で米軍の第七艦隊と同等の戦力価値があるというのに、その4倍の戦力を持つグレートマジンガーの名前が出たのだから」

トーヴィー提督はグレートマジンガーの戦力価値を装甲強度や戦術の自由度、武器の多さから4倍と見込んでいた。これは装甲強度(Zは超合金Zである当時のデータ)、武器の威力、馬力あたりのトルク差、機体反応速度の差などを加味してのかなり厳密な判定である。スーパーロボットは基本、人馬一体で扱われるが、その見方を排除した上での精査も必要であるとされ、ウィッチ世界などの判断基準にされている。提督が判断基準にしているのは、Gカイザーに進化させる直前に取られたグレートマジンガーの最終時スペック、一方、Zは最終時スペックは弓教授がゴッド製造のために秘匿しており、その前段階の際のデータが提供されている。そのため、グレートマジンガーに有利な判定になっているのは事実だ。量産グレートマジンガーの第二期タイプはこの時のグレートの稼働データを元に、科学要塞研究所が直接管理して製造している。(アニメが日本では、1970年代にZもグレートも放映されているため、かなりアバウトなところがあり、21世紀日本にはアニメ通りの受け取られ方をされたらしいが)

「まぁ、おかげでラ級の新規建造を引き受ける大義名分は経ちました。ベース艦さえご用意してくだされば、後は地球連邦と我々が造ります」

扶桑の造船官はブリタニアの名だたる提督にそう約束した。ラ號の活躍に大いに悔しがっているチャーチルが議会さえ説得すれば、少ない頭金で新規にラ級を造船すると。扶桑は日本にラ號のメンテナンスを引き受けている事を示唆する事で、最終的に主導権を取ったことが彼の口から示された。ラ號は戦後日本が欲しくても手に入れられない代物である。『大日本帝国海軍の忘れ形見』。これだけで国連と野党がやかましいからだ。大日本帝国海軍が極秘裏に用意していた戦艦が現存するという事実。国連が接収しようとした事、また、23世紀には地球連邦軍の軍艦として表舞台に立つ事が伝えられ、21世紀日本政府は泣いた。そもそも、大日本帝国海軍の解体前、神宮寺八郎大佐麾下の轟天振武隊が船体部品と、信濃用の予備砲身と揚弾機を持ち出して完成させたのがラ號の始まりだ。また、神宮寺大佐は『大日本帝国最後の日本人』というべき気質であった事もあり、戦後日本には隠し通し続けた。21世紀日本人が存在を知る段階では既にあれこれの偽装後であり、野党も与党も国家としての接収を断念している。ラ號の大日本帝国海軍での艦級区分についての公式な区分は日本軍の資料の散逸で21世紀の段階では『不明』とされている。言い伝えでは大和型戦艦の五番艦、別の資料では改大和型戦艦一番艦、超大和型戦艦一番艦とされているためである。実際には『超大和型戦艦二番艦』であり、まほろばの姉妹艦であったが、まほろばもラ號も極秘扱いであったので、互いに認知はしておらず、お互いが大和型戦艦の四番目であるとする伝説が残ったとされる。だが、実際にはまほろばのみが間に合ったわけであり、米内光政や井上成美がその存在を葬ったともされる。『終戦派が邪魔な大和型を特攻させた』という伝説は実は、まほろばとラ號の事なのである。そのため、実際には米内光政も井上成美もまほろばと大和で米軍艦隊を倒すつもりであったのかもしれない。実際、当時の時点で、まほろばは三連装51cm砲を五基十五門備えており、艦隊決戦では間違いなく王者になれた。もし、坊ノ岬沖海戦の中心にいたのなら、米軍編隊も物の数ではなく、艦隊ごと葬れただろうと、羽黒妖の推測だ。しかし、大和沈没で反転し、本土決戦に使用される予定でであった。昭和天皇は新兵器が本土決戦で使用されることでの激しい自国民の流血を恐れ、吉田茂、米内光政などの提言に従い、無条件降伏を選んだ。だが、零部隊の事は本当に知らされておらず、死ぬ寸前にうわ言で東條や零部隊の隊員へ詫びる言葉を発したのである。21世紀でウィッチが表に出てきたのは、当時の隊員や軍関係者の証言と、東條の遺族が発見した、零部隊に纏わる手紙、昭和天皇の遺言などが日の目を見たからである。そのため、ウィッチは歴史上でずっと居たが、名古屋城や広島城消失でその全ての書物としての記録が失われたので、歴史から葬られたという重大な事実が判明。日本はパニックに陥った。ウィッチは日本にもいて、本土決戦で従軍させようとしていたという歴史的経緯を突きつけられ、左派が行ってきた扶桑ウィッチへの迫害を本格的に抑える事を決断した日本政府は、零部隊の生存している元隊員への扶桑行きの斡旋と軍人恩給の支払いを決定。これにより、大日本帝国の軍隊の雇用史は書き変わった事になり、ダイ・アナザー・デイで戦う陸軍航空ウィッチの少なからずは零部隊出身者の元日本陸軍軍人である。身分を問わず集められていたので、華族、士族、平民のいずれもおり、2010年代まで生存していた隊員は隊が稼働していた最盛期の七割ほどと、2010年代の視点でも長寿である。斡旋された際の家庭環境はバラバラで、老い果てて、介護疲れした子や孫に疎んじられ、日頃から鬱憤を溜めていた者、悠々自適な老後を過ごしていた者など、様々である。幸いにも、中枢になっていた士官級は全員が軒並み、陸上大会で高齢者記録を打ち立てたアスリートであったりしたので、勧誘は楽であった。黒江が多忙なのは、こうした斡旋での面接を担当していたからだ。黒江が扶桑陸軍の日本連邦としての制定前の旧・軍服を着たのは、この斡旋が最後の機会である。黒江が軍の佐官であると告げると、皆、喜んだという。(中には本人よりも家族に疎んじられ、門前払いされそうになり、自分は自衛官であると告げて、入った事もあるが)面接時は空自制服に扶桑軍人としてのセット一式を着用して行っている。面接終了後にサービスで披露することも多く、黒江は当人よりも家族の説得で骨を折った。家族のほうが納得しないケースが4割あり、その中の全てが家族が祖母(曾祖母)が軍人であった事を信じないところから始まるので、黒江はタイムふろしき持参で面接を行っている。また、老婆が若返った姿が孫、もしくはひ孫と背丈以外は瓜二つだったことに驚くのも当たり前であった。黒江は三式連絡ストライカーを持参しており、それで飛行してみせ、更にスカウトされた元隊員に履かせて飛行させ、家族を納得させる手法で零部隊の元隊員を東二号作戦の穴埋め要員に仕立て上げていた。これが黒江の労働時間がブラック企業顔負けの勢いになった理由である。

「それと、こちらへ黒江君からそちらへ伝言がある。『ブラック企業顔負けの労働時間になったから、金鵄勲章は一等にしろ』と」

トーヴィー提督は伝言を最後に伝えた。黒江の労働時間は労災保険が降りるレベルになっており、黒江が聖闘士でなければ過労死間違い無しのレベルだった。ドラえもんからマッドウォッチを借りていなければ、倒れていても不思議でない。二代目レイブンズを呼んでいてもこの労働時間なのは、日本側の東二号作戦の取り消しに纏わるパニックの尻ぬぐいのため、日本からスカウトしてきたり、参謀として働いたりしたからだ。

「彼女の労働時間はすでに100時間超えだよ?君らももっと抗議したまえよ。見ていて哀れになってくる」

黒江の労働時間は既に100時間超えになっており、いつ休んでいるのかと突っ込まれているレベルになっている。日本では過労死が問題になっているので、問題にするのは可能である。この時、防衛省背広組の尻ぬぐいに追われた黒江の労働時間は週当たり150時間を余裕で超えており、聖闘士でなければとうに過労死している。週の自由時間が20時間もない超絶ブラックぶりだったが、背広組の中には悪びれない声もあり、安倍シンゾーが事務次官を更迭することで、ようやく事の重大さを悟る始末だった。背広組は黒江に怒鳴られるわ、安倍シンゾーにトップを更迭される、扶桑軍将官に正気を疑われるなど、大失態であった。そのため、日本で検討されていた金鵄勲章や従軍記章の廃止(功労章は本来、従軍記章の代替として検討されていた)と、金鵄勲章の代替に瑞宝章を与える案はこの大失態で命運を絶たれたと言える。瑞宝章は金鵄勲章対象者のあまりの多さに愕然となった日本側が断念、功労章は海軍航空隊の反対論で先送りされる。しかし、空軍が撃墜王を前面に押し出したことへの対抗措置で結局は後追いで採用されるに至る。この時に海軍航空隊のウィッチが振りかざした、撃墜王を対外・国民向けにアピールしておきながら、部内で否定する海軍の風潮は空軍の登場とレイブンズの完全復活で息の根を止められた事になる。また、クーデター後に吹き荒れた海軍ウィッチ隊の粛清人事を経た後では、功労章さえ怪しいウィッチで大半が占められてしまった事で、空軍の海軍出身者で海軍に与えられるべき名誉の穴埋めを行わざるを得ない状況すら生じた。そのため、この1945年当時の古参・中堅ウィッチ相当世代は上と下に色々な理由で睨まれた結果、大半がMATに流れる事になる。そのため、軍隊のウィッチ平均年齢が一気に上昇する珍事が起こる。この珍事はMATに多くのウィッチが居場所を求めて駆け込んだ事で生じたので、扶桑だけの問題でもなかった。リーネは一時はMATへの移籍を本気で考えたが、それよりも芳佳への想いを選び、黒江達にあることを頼み込む事になる。

「彼女の事は日本側に伝えておきます、提督。それと貴方方からも圧力をお願い致します」

「うむ。見ていて可哀想になってくる。吉田公に言っておこう」

この会合の後、ブリタニア海軍提督達が吉田茂に伝えた事で、更に安倍シンゾーに話が行き、防衛事務系の更迭が立て続けに起こる事になる。安倍シンゾーが後任に添えた人員は黒江のシンパ達であり、黒江はこの人事で超過労働時間からようやく開放されたのだった。



――そして……。

「リーネ、本当にいいんだね?」

「私は逃げたくないんです。芳佳ちゃんは生まれ変わっても私と友達になってくれた。だから、私は芳佳ちゃんの想いに応えたいんです、黒田大尉」

「分かった。ライトニングゼータの腕にホバリングして。あたしがお前を『変身』させるから」

黒田は想いに応え、ライトニングZの腕にリーネをホバリングさせて、彼女を別の姿に変身させた。そしてさらにサイコフレームの力でZ神とチャネルさせ、G化を起こさせる。それは一瞬の出来事だった。リーネは一瞬で前史での一生を体験し、その最期の瞬間までを擬似体験する。

『魂の響きを繋げ!ライトニングZ!!』

黒田の叫びと共に、リーネはGウィッチ化を完了する。更に容姿がリネット・ビショップのものではなくなっていた。見かけが10代前半の白い肌の美少女に変わり、黒髪にリボンと、元のリネットとしての特徴が殆ど消えている。

「なるへそ。お前の魂魄、どっちかの一部はこいつだったのか。美遊・エーデルフェルト……」

黒田が口にしたその名は、黒江がのび太の家で読んでいたコミックやアニメに登場する人物の名だった。のび太は調やなのは、静香の影響で魔法少女ものは好きであり、その関係で黒江と黒田もコミックを読んだり、ブルーレイを見ていたのだ。

「……大尉、なんなりとご命令を」

「声のトーン変わったなー、お前。まぁいいや。力を与えよう」

黒田はこうして、リーネをサイコフレームで任意にG化させ、更に美遊・エーデルフェルトという人物に変身させた。のび太が後で知り、『グッジョブ!』と大喜びであったので、その勢いで黒田はサーシャと喧嘩別れし、気落ちするサーニャも巻き込むのである。その際に、リーネ/美遊がアルトリアの力を借り、アルトリアが王位についていた時の蒼き騎士服と甲冑を纏い、エクスカリバーを使用する。それを見たレイブンズに『お前、色々やり過ぎだ!』とダメ出しされるも、なんだかんだで悪ノリし、リーネとサーニャにあるステッキを手渡し、二人に変身した姿で魔法少女をしてみるように唆す事になる。なんだかんだでレイブンズもエディータ・ロスマンを『矢島風子』に変身させて、『紫電改のマキ』世界に行かせて、ストレス発散をさせていたからだろう。そして、ロスマンはすっかりスケバンになって北島雷奈になりきっていた川内(艦娘)と共に鍾馗二型を駆ってそのままの姿で帰還してくる。ロスマンとしての名声から開放され、石神女子でスケバン女子高校生をしていたことがよほど楽しかったのか、そのまま空中戦に飛び込んで戦果を挙げる芸当を見せる。その時に偶然、同じ空にいた伯爵はスケバンキャラになりきっているロスマンに大笑いであった。しかも、当時はリベリオンで使用されている耐Gスーツもつけずに、学ランとセーラー服姿で空中戦を行ってみせたのだ。これに伯爵は腹が捩れるほど爆笑。戦線の義勇兵パイロットは『ヤンキーのねーちゃんが44でメンチ切って、敵をぶっ飛ばしてるがアレは友軍で良いのか?』と問い合わせるほど戸惑ったが、付近の管制塔にいたラルが『ウチの部下だ。理由ありでな。学ランなのはお愛嬌だ』と応えて、混乱を鎮めたという。

『手前らに恨み辛みはございませんが、これも浮世の義理とくらぁ〜♪』

これである。元がカールスラント人である原型がまるでない。更に、メッサーシュミットにはない横方面の格闘への対応力があるキ44は元々がメッサーシュミットを愛機にしていたロスマンにはいい塩梅であった。正式生産型の二型以降の仕様なので、12.7ミリ銃は4門備えている。更に炸裂弾であるマ弾を装填しているので、ウィッチ世界のF4F程度であれば容易に撃墜できる。また、F6F相手でも速度面は互角であり、ロスマンの熟練の戦技もあり、次々と敵は撃墜されていく。

「これなら、高島平やダ・ヴィンチのほうがまだ手応えあるでぇ。お前もそう思うじゃろ、雷神?」

「やれやれ。風神がそれでいいのなら、私も付き合うよ」

なんだかんだ言って、付き合いがいい川内。川内も変身は解かないで空戦を敢行、敵機を食い荒らしている。本職は水雷戦隊なのだが、パイロットとしても腕がいいらしい。二人のキ44の国籍マークに『日の丸の上にイの文字』があった事から、パーソナルマークが許されたエースパイロットと敵機は混乱。艦隊宛に『ミートボールに何か文字が書かれてる!絶対エースだ、気をつけろ!!』と警告電を発する。単に石神女子からそのまま持ち込んだだけであるのだが、敵機に衝撃を与える効果を発揮。ロスマンは矢島風子としての姿で作戦を戦っていく事になり、祖国の同僚達に別の意味で心配されたという。



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