外伝その230『フューチャーヒーロー』


――Gウィッチ達が戦う中、のび太は何をしているのかというと、鉄人28号FXを操り、戦っていたのである。実のところ、鉄人28号は平行世界の存在である『太陽の使者・鉄人28号』を除く正統な系譜としての事実上の後継機種が存在する。それが金田正太郎少年が長じ、結婚した後に妻の実家が財閥であったので、その後ろ盾で次世代鉄人の計画を起こした後、その集大成として完成した機体が鉄人28号FXである。超電導エネルギーで駆動し、伝統のリモコン操縦を引き継ぐ。もともとラジコンに憧れつつ、母の玉子の方針でラジコンが滅多に買えず(買ってもらえず)、買ってもジャイアンやスネ夫に壊されるか、取り上げられてきたのび太の夢の具現化でもあった。のび太はその操縦機『グリットランサー』で片手が塞がるため、連合軍司令部は艦娘大和を護衛に派遣し、合流していた――

『超電導コーススクリュー!』

28号FXは音声入力も併用しているため、かなりアバウトな命令でもその通りに動いてくれる。のび太は長じてからは裏世界に生きてきたが、こうした目立ちたがりの面もまだ残っていた。ある意味ではその点が子供時代の面影であり、純粋さが残っているといえる。

「大和さん、なんですか、その目」

「い、いえ。なんだか楽しそうで」

「そうですねぇ。Gウィッチの皆さんは僕みたいな子供っぽい面が中々表に出せない。出したら出したで、鬼の首を取ったように批判されますから、僕みたいな『友達』が必要なんですよ。僕も英霊の一つになれるだろうし。多分、アーチャーだけど」

「そうなると、大変ですね。私はちょっと複雑な事があって」

「宮里秀徳少将の?」

「知っていたんですか」

「子供の僕が調べていたんでね」

宮里秀徳少将。たいていの世界では、大和の艤装委員長を勤めている。彼を初代艦長と扱うのかについては諸説あるが、海軍の人事記録では『竣工前に艦長を仰せつかっている』。実際に海上公試を指揮している事から、海軍の記録では彼が初代艦長であるという。最も、艦娘大和が出現する際の実艦シルエットを目にしている事から、扶桑では対外的誤魔化しも兼ねて、彼が正式に初代艦長とされている。その彼は反G閥に属し、場合によれば、日本連邦はデューク東郷、あるいはのび太に排除の依頼を出す予定であるという。

「日本連邦評議会は、場合によれば僕かMr.東郷に依頼を出す方針です。貴方の初代艦長なんて、僕としては受けたくないんですがね」

「貴方も喉の薬を?」

「モクっぽいものを咥えないと、この欧州じゃ大人扱いされないんですよ」

青年のび太はこの時、28歳。既にノビスケも儲けており、家庭を築いている。父親と違い、タバコはそれほど吸わない。妻のしずかがタバコ嫌いなためだ。ただし、喉の薬は圭子の勧めもあり、咥える(のび太は童顔なので、30近くなった時でも、10代に間違えられる)事が増えていた。

「どうします?」

「このままヒスパニアに向かいましょう。FXの手に乗ってください」

のび太は大和をFXの手に乗せ、自分もそこに乗り、FXをヒスパニアへ向かわせた。鉄人28号FXは初代28号と違い、飛行ユニットが別機として開発されており、それとドッキングすることで飛行が可能となる。その状態でのび太は運用していた。FXはフォルムが時代相応のスタイリッシュになっているので、ずんぐりむっくりで、丸みを帯びたボディの初代28号との共通点は少ない。しょうがないが、作られた年代が初代28号は戦時中、FXは2000年代前半とされるからだ。ドラえもんが運用する、FXの時代に近代化された初代28号は初代アニメの主題歌の通りの活躍を見せている。鉄人はリモートコントロールなので、操縦者の間での駆け引きも重要なので、その点はのび太に適している。

「少将の事ですが、彼次第です。上層部は彼は代わりがいるので、排除の方向に傾いています。彼は距離を取っていると言っていますが、日本側は無慈悲ですからね」

のび太が言うように、日本は不満分子などには情け容赦ない処罰を与える事を良しとする風潮があり、エディタ・ノイマンに軍籍抹消までが検討されたのも日本の圧力によるものである。後の扶桑での不満分子の多くは銃殺刑の予定だったとの事だが、後に親達の助命嘆願で島流しに留められたが、大半は開戦時の攻撃で死亡してしまうのだ。

「噂になってます。エディタ・ノイマン大佐の軍籍剥奪か抹消まで検討されたって」

「山本提督によれば、本当です。文化財をなんだと思っているんだと紛糾して、日本側は一兵卒までの降格での不名誉除隊まで提案したと」

「一方的な」

「日本はハーグ条約を大義名分に責めてます。カーチス・ルメイ中将なんて、言うことに事欠いて、バットで殴られて病院行きですよ」

「可哀想に。彼自身の罪じゃないのに」

「日本人なんてのは、叩くものが見つかると、対象の社会的抹殺まで行くことが多いですからね。卑しい国民性が見え隠れしてるんですよ」

のび太は成人し、裏世界で生きるようになると、日本人が持つ『特異な大衆心理』を卑しいとさえ形容するようになったが、環境省でもミスがあれば、現在の部門責任者の首が飛ぶことを指して、『揚げ足取りを行う』日本人の負の気質に嫌悪感を見せる。例えば、カールスラント空軍のエディタ・ノイマンは大佐という立場、文化財よりも怪異撃滅を優先する姿勢で作戦を提案しただけで、前職をその場で解任された。そこからのメディア・スクラムで重い精神病に罹患したというのは連合軍参謀の多くを萎縮させ、ウィッチの現場の反発を強めた。結果としては、のび太に日本に危険視された佐官級ウィッチの排除の依頼まで舞い込み、実際に数人を始末していることを見せしめとしているが、日本の強権的な一方的な取り決めは反発を招いている。扶桑で現存していた名古屋城を取り壊して、司令部用地に当てようと提案した参謀はその場で不名誉除隊(後に恩赦で普通除隊扱いへ緩和)に処せられ、仙台城付近に東北方面司令部を移転させる検討作業も中止させられていた。また、広島城に置かれていた書類は全て撤去させられるなど、文化財保護法が扶桑に適応された故の混乱も大きく、特に、ウィッチ世界で存在していない『ユネスコ』の条項に囚われる必要性が議論され、反G派はそれを攻めどころとするも、日本側は文化財保護に懐疑的な者たちを2.26事件同様の扱いで処理しようとしているなど、のび太が多忙になりそうな案件が多い。1954年ハーグ条約の適応は日本連邦が旗振り役になったものの、この時期はカールスラントを中心に反対論が根強かった。その反対論の中心であった扶桑内部のクーデターが情け容赦なく鎮圧されるのを契機に各国の懐疑論は叩き潰されていくが、それはその国の誇りとなるモノがどこにでもあることが欧州諸国に啓蒙されたためであろうし、万一、反乱に失敗すると、それまでの全てを失い、国際的に重犯罪者の烙印を押されるのを恐れた事もあるだろう。

「日本やアメリカの都合でエタヒニンのように叩かれて、軍歴に傷がつくのに反発してる軍人は大勢います。エディタ・ノイマン大佐は提案しただけで前職解任、降格、数ヶ月の飛行禁止、故郷での評判ガタ落ちですからね」

「日本は戦争で国宝の多くが失われたから、同位国に国宝をないがしろにさせないようにしたいんだろうが、見せしめに軍部の人員を懲戒処分するのはやりすぎですよ。僕から見ても異常だ」

のび太から見ても、軍部への懲戒処分の数は扶桑が連合軍の事実上の盟主となったのを勘案したとしても異常に増えている。特にエディタ・ノイマンの処分はウィッチ兵科大佐という立場を考えたとしても、重すぎる。階級降格と飛行禁止はまだいいが、前職からの解任からの申し開きすら許されない形式的な軍法会議は明らかに『銃殺刑』が前提にあったのが丸分かりである。法務省が『内政干渉にあたるような要求はイカン。法に則った処分の要求に留めないと、此方に干渉される切っ掛けになる』と釘を刺した事や、第一報に憤慨したマルセイユの署名運動やカールスラント皇帝、ドラえもんやのび太の擁護と口添えもあり、ノイマンの銃殺刑だけは避けられたが、僻地への左遷は如何にも東洋的な処分であった。このあからさまな見せしめは日本人と気質の違う扶桑人からの反発を招くのだ。しかしながら、ノイマンの発言はドイツ領邦連邦にとっても都合の悪い発言であることから、口封じが図られたのも事実だ。さらに言えば、ハルトマンは歯に衣着せぬ発言から、ドイツ領邦連邦では持て余され気味であり、かと言って、同位体が人格者であったバルクホルンに感情的なところが存在する事から、消去法でグンドュラ・ラルが次期カールスラント空軍総監に選ばれた理由だ。

「どうして、日本人はこう…、なにか叩く対象を粗探しで探すんですか」

「大和さん。日本人は統合戦争を戦うまで、嫌われ症候群を患ってたんですよ?出る杭は打たれる。日本人の気質の変化は統合戦争の後まで待つ必要がある」

「ドラえもんさんの時代でも?」

「時空融合の影響で第一次日本連邦時代の記録が失われてたんで、緩和されてはいましたけどね」


日本人の持つ『大衆の弱者への優越感』を煽る記事が売れる心理はウィッチ世界の人間には理解しがたい。それは平行世界の記憶を持つ艦娘であろうと変わりないらしい。

「出る杭は打たれる?」

「織田信長が死んだ世界だと、徳川家が保守的な体制を作りました。その数百年は儒教的倫理観が支配してました。だから、制度が維新で近代化されても、すべてはそうならなかった」

大日本帝国は『外見は近代化しても、精神的には武士時代のままであるところが多かった』と後世では言われる。元々、日本列島は近代戦に必須な資源が少ないという地政学的リスクがあり、太平洋戦争で劣勢になった時に露呈している。精神主義に第一次世界大戦以降に中枢部に居座った世代がはまったのも無理からぬことだ。しかし、それとは比較にならぬ地下資源を抱え、基礎技術も当時の一線級と言えるはずの扶桑も似た傾向が多々見られる。大和型戦艦の増産に難色を示していた(これは空母閥の策動もあるが、紀伊の轟沈が決定打となって覆ったが)り、空母のコンパクト化(艦上機の大型化とジェット艦上機化で頓挫する)を目指していたり、史実と似た傾向が見られる。このように、日本人、ひいては大和民族全体には根本的な節約志向があるのがわかる。また、のび太が少年時代に周囲から落ちこぼれと常に見られていたように、社会の歯車になれない者を異物視する傾向は日本特有のもので、扶桑には概ねはない。しかしながら、レイブンズがそうされているように、嫉妬からのいじめをする傾向はあるが。

「……子供の頃のあなたみたいに?」

「ええ。僕はガキの頃、親父やお袋に成績不振を散々になじられましたからね。中学と高校も地を這う成績で、よくカミさんのいく大学に一浪で受かったもんですよ。補欠だけど。大学の卒業論文を出し終えた時、親父とお袋は泣き出しましてね。それからはお袋も憑き物が落ちたように穏やかになりました。嘘のように」

「そういえば、あなたのお母さん、教育ママの気が…」

「僕の父方のおばあさんが死んだせいでしょうね。僕の最初の理解者だった。お袋、おばあさんに嫉妬してた節があったと思うことがあるし」

大人になっても、亡き祖母への敬愛は健在であるのび太。母の玉子はスパルタで子供に接していたが、のび太が第一子(一人っ子だったが)かつ長男であるが故に、のび太に背負わせるものが大きすぎた感も否めないもので、その厳しい教育は誤解を生む事も多かった。それほど会う機会がない大和にも『教育ママ』と評されるほどだった。しかしながら、のび太の両親はのび太が『人並みの成績で大人になる』事だけが夢であり、のび太がしずかと同じ大学で4年卒業を成した事で憑き物が落ちた。玉子がのび太少年期の頃の教育ママぶりから脱却したのも、のび太が19歳を迎えた後である。のび太がむしろ官僚コースになり、出世はあまりないが、安定した収入が得られる事が確定することで玉子も憑き物が落ちたのだ。のび太は冒険などで英霊級の所業をした事もあり、死後は英霊の座に登る事が確定しているし、世界の時代時代(未来世界はドラえもんの世界と同一世界である)の特異点の一つである。

「僕やカミさん達、ドラえもんの五人はいわば、死んだら英霊になれるし、綾香さん達がやり直している事もわかる特異点なんですよ。時代時代における。未来世界はドラえもんの時代も終わった後に時空融合と統合戦争、一年戦争を経てやってくる、23世紀以降の時代なのを知ったのも、僕たちが最初です。だけど、そんな事はお袋や親父とは関係ありませんからね。穏やかな老後を過ごしてもらいたいもんですよ」

のび太が特異点と言っても、のび助と玉子の生涯に何ら影響があるわけではない。のび太が28歳を迎えた時代には二人は老境に達する年齢で、のび助も定年退職間近である。元からのび太の裏稼業のことは知らされていない。のび太も言うつもりはない。それが裏稼業というものだ。

「あなたが裏稼業している事は?」

「子供の頃の冒険はバレましたけど、裏稼業は言う必要ありませんからね。そういうものでしょう?」

「確かに」

子供時代に冒険のことはバレていたらしい事をのび太は話し、大和も頷く。二人は調たちへ加勢すべく、ヒスパニアへ向かった。




――のび太の28歳時には、24歳、あるいは25歳時に儲けた嫡子のノビスケは幼年であり、当然ながら、静香はダイ・アナザー・デイには同行していない。予定に余裕のあったスネ夫と違い、家業を継がずに一から起業したジャイアン(剛田武)は『スーパー・ジャイアンズ』の経営がまだ軌道に乗っておらず、(軌道に乗るのは30代以後)多忙を極めていた。息子のヤサシの事もあったが、どうしてもスケジュールが開けられず、参加は見送った。だが、食料品の提供という形でダイ・アナザー・デイに貢献していた――


――ヒスパニア――

「ジャイアンくんからの物資だ。珍しいな」

「高校の時の友人に自衛官がいて、そのルートでねじ込んでもらったとか」

「よくできたなぁ」

調は戦闘態勢のままで待機していたのだが、下原と真美が持ってきたダンボール箱に起業後のジャイアンの店で使われているロゴがある事に気づいた。ジャイアンは小学校時代にガキ大将であったので、その後に自衛隊関係に就職した子分も多く、そのルートで『有志からの援助物資』枠で送って来たらしい。

「スネ夫くんから手紙預かってきたけど、ジャイアンくんらしいよ」

「あ、本当だ。いくつになっても、変わんないなぁ」

手紙には子供時代とさほど変わらない内容の文面で、最後にジャイアンらしい言葉で〆ている。ジャイアンは大人になり、妹のジャイ子も某少女漫画雑誌で『クリスチーネ剛田』としてデビューを飾っていた時代になると、以前のように冒険に参加することは困難になった。スネ夫のように、会社に代わりになり得る人物(実弟のスネツグ)がいないジャイアンは立場上、大人になると一番がらんじめになってしまったと言える。

「そういえば、ジャイアンくんって、自分で起業したんだよね?」

「大学は経営学部でしたから、意外な事に。実家が大型スーパーの開店で苦しくなってから、一念発起したんです。」

ジャイアンは青年期に入る頃、地域の再開発事業で大型スーパーができると、家の状況が変わったために一念発起し、大学は経営学を修め、自分でスーパーマーケットを起業した。調はその様子を見届けた一人であるため、感慨深いものがあるようだ。大人になると、少年時代にあった粗暴な面は鳴りを潜め、代わりに任侠的な面が出てきた。誠実な経営手腕と元々がガキ大将である故のリーダーシップとの相乗効果で意外に人心掌握が巧みになった。そのため、ダイ・アナザー・デイが行われている頃にあたる2010年代後半では、新進気鋭の起業家として名が売れ始めていた。因みに、伝言は『売れ残りで悪いが暫くはもつ、冷凍食品の半端が中心だが不味いものはないぞ、ウチの目利きは優秀だからな!』とのこと。よく見ると、手紙の字がやたら綺麗になっているが、これは高校時代部活の先輩にに直されたかららしい。


「奥さんが大人し目で、子供も温厚な性格ですから、ジャイアン君の性格が遺伝するのは孫の代以降かも」

ヤサシは温厚であるため、ジャイアンの性格(有事に任侠、普段は横暴で粗暴)が遺伝するのは、孫の代以降である。セワシの時代の末裔『ジャンボ』は往時のジャイアンに瓜二つであった事から、少なくとも、のび太の孫かひ孫は少なくとも、ジャイ子の孫かひ孫と結婚した事は確定している。

「不思議だねえ」

「のび太くん曰く、石器時代からの縁だそうで」

のび太、ジャイアン、スネ夫の三すくみの関係は石器時代からで、明治末期に生きていた曽祖父の代以降はクラスのマドンナが三人に絡む事も増えてきた。のび太の代で遂に結婚に至る。(因みに、のび太の『雪山のロマンス』は些か情けない話である)しかし、23世紀までなんだかんだで三家とも絶えないところは強運である。

「で、ジャイアンくんのスーパーマーケットは代替わりしたら全国に支店がある百貨店規模になったとか?」

「すごいね」

ジャイアンのスーパーマーケットのその後から、ジャイアンの一族は代々、経営手腕が一定の水準で備わっている事がわかる。

「私と定子はこれを厨房に持っていくよ。レーションばかりってのも飽きるしね」

真美はレーションに飽きたという兵士や将校のために食事を作るらしい。調もそれについていき、料理を作る事になった。実際、この時代にはリベリオン製レーションが仕入れていた数の大きさから流通しているが、飽きたという事も出ている。そのために本格的に料理することが求められていた。この時代の扶桑人は史実よりは洋食を食にする機会があるが、一般大衆には贅沢な食事と見做されていた。軍隊の入隊理由が食事である者も多数いる。また、扶桑は将校や下士官は食事代が自費だったが、日本連邦化で制度が自衛隊式になったために給与に含まれるようになった関係もあり、将校用の食堂が基地や駐屯地に設けられた。空母で言うところのダーティワード・ルームに相当する。これは日本の市民団体からの強いクレームが有ったため、ダイ・アナザー・デイでの日本連邦軍直轄の基地と駐屯地には結局、普通のワードルームに当たる正装限定の食堂は作られず、防衛省のクレームへの萎縮もあり、ダーティ・ワードルーム相当の食堂のみにされた事も作用しており、三人はF-15の甲冑形態を着たままで厨房に行く。この正装限定の食堂がないという点で他国軍将校から強い抗議があったが、実質的に日本連邦が連合軍の実権を握っているがために、意見が通らない(要は市民団体のクレームを避けるため)他国軍に取っての困惑もあったのは事実だ。日本連邦軍は将校と下士官以下で食堂を区別すると、市民団体からクレームが飛び、その後に野党が与党と防衛省を叩きに来るため、身分で食堂の区別は明確にはされなくなっていた。特に目につきやすい空軍や陸軍の食堂では顕著であり、正装を使用する機会は減っていく。これもクレームがもたらした弊害と言えた。将校(候補生含む)専用食堂があるだけでもマシなほうなのだ。(他国軍への配慮)日本連邦軍は黎明期にはこうしたクレーム(戦時中に贅沢させたのに負けたから、兵隊などは白米でいいとするクレームまであった)と戦う必要もあり、色々と生活面の苦労と数的主力が扶桑軍であることからの自衛官達の苦労も大きく、今後の課題であった。特に自衛官達は戦闘面であまり貢献できず、裏方で圧倒的多数の扶桑軍隊をサポートせねばならない故の参謀任務の受諾の負担が大きく、黒江に連合艦隊参謀の任が行ってしまった理由だった。扶桑はこの時、将がいても、参謀の数が足りないという人事的粛清の弊害がモロに生じ、黒江があちらこちら引っ張られて、いたずらに労働時間だけが増える有様になった。圭子は今回の転生後は参謀の任が担える性格ではなくなっていたし、智子はそもそも不向きである。黒江に負担が行くのも当然だった。また、地球連邦軍が参謀級の再教育をしている最中に事態が起こったため、黒江はGウィッチでなければ、肉体の限界にとうに到達していると同情されている。それ故に、元の容姿に戻さないことが黙認されている。黒江は今回の作戦で試算される慰労金はレイブンズの三人で最高額であり、日本基準で億に届く。叙爵とセットな上、給金もプラスされるので、とんでもない金額になり、金鵄勲章も高位間違いなしだ。レイブンズはその功で間違いなく叙勲されるが、反発する中堅層との血生臭い争いが確定することでもあった。それは扶桑の広報戦略史上最大の汚点であったという。



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