外伝その256『イベリア半島攻防戦5』
――日本連邦軍結成後も色々な政治的抗争が多かった。ウィッチ閥での主導権争い。江藤は現地で散々に嫌味を言われまくれ、若松にもいびられていた。北郷が諌めたものの、江藤はこれまで自分がのけ者だったこと、若いと思ったら数百年生きていたという事実にショックを受け、ここ最近は酒びたりであった。階級もレイブンズに逆転された形になり、反G閥から『立身出世のために、盛った報告をお上にした』と謗られたこともあり、当時の真意を理解してくれないと落ち込み、酒びたりであった――
「これは駄目ね。相当の重症ね」
「なんとかならんか、加賀」
「無理ですね、提督。お上が自ら説明しないと、反G派は彼女を誹り続けるでしょう」
江藤の様子を見に来た欧州方面艦隊の高官である南雲忠一大将。この時の秘書艦は加賀である。赤城が休暇中であるので、その代理だ。
「儂自ら、お上に奏上するしかないか…」
「江藤参謀は暫く、マドリードの療養施設に入れないとならないでしょうね。私が手続きをしておきますので、山口提督に伝えるのは」
「山口くんも大変らしいがね。次期連合艦隊司令長官が内定して」
南雲忠一は史実と違い、空母機動部隊を率いたのは一時の事で、ここ最近は打撃艦隊の高官を歴任していて、操艦の上手さに定評を得ている。この時点では第二艦隊司令長官でもある。ここである事を思いつく。
「待て、加賀。野比のび太氏の邸宅に送ってしまえ。泥酔させている内にタイムマシンに乗せてしまうのだ」
「幸い、ちょうどそこにテキーラとジンがありますので、混ぜてしまいましょう。疲労で48時間は起きないでしょう」
なんともテキトーな策だが、野比家で療養させたほうが効果が出そうなので、加賀がテキトーに混ぜたカクテルをグイッと飲ませ、酔いを強めて気絶させる。その隙に愛宕と鳥海を呼び、共に江藤をタイムマシンへ運んでいった。ちなみに、南雲はこの時、未来世界から購入した指揮巡洋艦(イージス巡洋艦)に座乗していた。操艦を自分でしてしまう事などから、海自出向組を含めた艦長級からの評価は二分している。その指揮巡洋艦とは、イージスシステムなどを積み、艦隊指揮任務に適した巡洋艦級を扶桑が定義したカテゴリで、大淀の系譜に位置するとされる。これは本来、艦隊指揮用に量産予定の超甲巡が巡洋戦艦にされそうなので、その代替も兼ねたカテゴリである。これは日本の海自が『旗艦は指揮用でいいんです。自分の戦闘能力は二の次』と説明したところ、艦隊戦が当たり前に生起する時代に21世紀の軍事思想は適しないとの指摘があり、超甲巡の第二生産ロットの起工が遅延してしまった。しかし、日本の一般世論の『旗艦は先頭に立つべき』という自衛隊への批判もあって、超甲巡の量産は続く事になった。2019年前後当時、既に艦隊司令部が陸に揚がった海自だが、軍事に無関心な層から『艦隊司令部は前線で指揮を取れ』という時代遅れな批判を受けた。その事もあり、扶桑がライセンス生産する指揮巡洋艦には阿賀野型軽巡洋艦級の装甲が船体に施されているし、海自の派遣艦艇も応急処置的に簡易的な改装をされている。これは乙巡と万一、近接砲撃戦に陥った場合の生存率向上のためである。
「やれやれ。海自に砲撃戦や水雷戦を見せられたのが収穫だな、今回は」
「南雲提督、日本向けの記者会見のお時間ですぞ」
愚痴る南雲。日本にとっての戦艦同士の砲撃戦はお互いが視認できた日露戦争当時の認識のままであり、第二次世界大戦の際の20キロから30キロでの間接的砲撃戦を非現実的とマスコミは謗っていた。
「連中に説明するのは骨だぞ〜」
「仕方ありません。今どきの戦艦の砲撃戦は日露戦争より遥かに遠距離で行うものですからな」
「海自など、駆逐艦級の速射砲を20キロの距離で当ててくるというのに、一般人の認識は日露戦争から変わっておらんとは」
「軍事に無関心な民衆のいい見本ですよ。大和を前線で使い倒せというのは、我々からすれば、信じられない使用法なのですがね」
連合艦隊の幕僚達は大和型の運用機会を『移動司令部』と見込んでいたためもあり、そんなにないだろうと見込んでいたが、実際には紀伊型の陳腐化もあり、嘘ののように走り回させ、遂には大和型に対抗可能な船まで出てきてしまった。1939年当時は『パナマとかキールがあるから、机上の空論だ』とさえ井上成美が言っていた大和型に対抗可能な船の時代がやってきてしまい、遂には超大和型戦艦になった。連合艦隊の航空閥からしたら『嘘だろ』な大艦巨砲主義的展開であった。一時は110号艦、111号艦は空母に転用予定であったのが覆るほどの大艦巨砲主義だ。しかも、大和型の存在を知ったチャーチルが怒髪天を衝いて、戦艦を増やした事も各国の疑心暗鬼を招いての建艦狂想曲となった。ガリアもアルザスまでを実行済みであったし、ロマーニャとヴェネツィアはお互いにリットリオ級を作り、ロマーニャは更にインペロを用意予定であった。ブリタニアは史実であったはずの多くの軽空母の代わりに、7隻もの新戦艦を用意してしまい、イギリスの失笑を買ってはいたが、賞賛もされた。早晩に陳腐化するコロッサス級航空母艦やマジェスティック級航空母艦などを作るよりも、七隻の超大型戦艦で威信を保つのは賢明とされたからだ。空母計画そのものは場繋ぎの『ジブラルタル級航空母艦』が更に大型のCVA-01級に統合され、アルビオン級として数年後に具現化する。ブリタニアの海軍人口比率的に、戦艦七隻に加え、大型正規空母を機動部隊として運用可能なのかには大いに疑問が出されたが、ブリタニアはファラウェイランドがコモンウェルスから離脱しない内に各地のコモンウェルスから水兵を集めまくる事で強引に解決する。また、資金は旧式戦艦と空母を各地のコモンウェルスに売り払い、なんとかCVA-01級が四隻、新戦艦が10隻を運用できるだけの人的資源を確保する。ブリタニアは斜陽であったはずが、オラーシャの分裂で生き永らえたため、イギリス病への罹患をどうにか免れた。しかし、イギリスでは戦艦部隊の従軍を『最後のご奉公』と捉えていたが、日本連邦軍の誇る大和型の群れを見て、維持を決めているほど、戦艦部隊は肩身が狭い。日本は日本で、長門型以前の艦艇が現役と想いきや、呉が襲撃されたのを契機に、第一線戦艦を大和型以降の新戦艦に切り替えていたので、財務官僚が腰を抜かしている。日本の横槍による人手不足は23世紀のオートマチック化でも補いきれず、戦艦部隊は最盛期の8割に稼働率は低下している。しかし、兵器の更新が促されたため、第一線戦艦は46cm砲と51cm、更には56cmと世界最高峰の質を誇る。しかし、総合的に見れば、護衛艦艇が最低でも21世紀の水準の防空力を得たことは飛躍であり、攻撃/爆撃ウィッチにバスターウィッチへの転科が促される事になる。この飛躍的防空力強化が海軍ウィッチのクーデターを促すこととなるが、日本からの指摘に嫌気が指していた扶桑海軍艦政本部が23世紀の技術で船をどんどん改造したり、新造させたのは事実だ。大和型などは21世紀が見た時、腰を抜かした程の大改造が施され、主砲も遂には60口径化されている。元が史実と大差ない姿であったのが嘘のような大改造であり、対空砲はパルスレーザーになり、元煙突部は偽装されたVLSである。装甲の硬化テクタイト板と超合金ニューZの複合空間装甲は21世紀型のどんな核兵器でも破壊不能である。
「出し惜しみして後が無くなってから、やぶれかぶれで出撃させて死なせるよりは、使い倒して廃艦にしたほうがいいのだろう。その用途を見越して、23世紀の宇宙戦艦と同等の装甲にしてもらったのだ。たとえ核魚雷だろうと、撃沈はできんよ」
「あの坊ノ岬沖海戦は正気の沙汰ではありませんよ」
「神がかり参謀君はそれで大和嬢に恨まれているからな。多摩がいなければ、精神病院行きさ」
神参謀は艦娘大和にかなり恨まれていることは部内では周知の事実であり、多摩が諌めければ、彼はノイローゼで入院していただろう。日本からも退役させろと圧力がかかっているが、当時の連合艦隊に彼ほどの奇抜な発想の者はおらず、普段はほんわか気味の大和が本気で下衆と罵る彼を生き永らえさせた。(大和もかなり子供じみた恨み節を吐いており、長門に叱責されている)
「艦に乗せずに暫くは赤レンガでシミュレーターさせていろと御達しだ。大和嬢も長門に叱責されたと言うからな」
「長門も大変ですな」
「実艦の退役を見届けたが、大和がかなり精神的に幼いからな。引退は当分先になりそうだと言っとった」
南雲は浮きドックで整備を受ける連合艦隊第一戦隊に視線を移して言う。それは大和の幼さがたいていの世界の短い艦歴に由来するのかと思いを馳せ、副官も同意した。
――1940年代前半の建艦狂想曲で造られし戦艦の主砲は大和を除くと、40cmから38cm砲であったのは、造兵廠の限界もあっての仕様であった。扶桑はカールスラントから輸入していた工作機械を用い、46cm砲製造技術を得た。他国との共通性より、怪異用の攻撃力を選んだのだが、その選択は艦隊戦が生起する時代では正解であった。21世紀日本からは色々と揶揄され、『グランドフリートと連合艦隊の全てを合わせても、太平洋艦隊一つ、全滅させられないさ』と揶揄されている。浮きドックで整備を受ける連合艦隊艦艇はどれも個艦性能では、当時の平均的な戦艦より圧倒的に優越するものだが、日本は太平洋戦争の史実の記録から、個艦性能の優越よりも、システム化を志向しており、個艦戦闘力では悲観的である。特にドック入りの都合で、大和型が二隻、超大和型も三隻ではまるで足りないとし、工事を急がせてでもいいから、もう三隻くらい出せと言っている。いくら扶桑が地球連邦軍の後援を受けていようが、超大和型戦艦を更に完成させる事など、不可能に近い。(ドラえもんの能率向上薬を用いても、完成間近である美濃を間に合わすので精一杯であった)その次善策である主砲換装も一手間であり、海戦は双方の都合もあり、小康状態であった。しかし、陸と空では激しい攻防線がもう三週間近く経っても継続しており、しかもまだ前哨戦に入る分類の戦であった――
――さて、黒江も圭子も不在の501。その間の統率は智子の役目のはずだが、智子はノロウイルスで寝込んでおり、第三席の席次にあたる赤松が指揮を担当していた。ミーナも赤松が指揮したほうが適当と判断したためだ。なお、ノロウイルスを提供したと地球連邦軍側(列車運行担当部門)も大騒ぎであり、犯人探しが行われていたりする――
――智子の部屋――
「お嬢〜、生きとるか」
「まっつぁん、もうあたし死にそう…」
「一週間は養生せい。ボウズと小僧は平気だったんだがなぁ」
「あの子達と一緒にしないでくださいよ……あたしは元々、胃が弱いんですよ」
「そういう問題か?あとで宮藤に薬を運ばせる。報告の書類は置いとくぞ」
「お願いしまぁ……」
赤松は智子を見舞った足で、報告にあった錦のG化を抜き打ちで確認するため、朝の早い時間に外に出る。案の定、コソコソと隊舎から離れたところまで行こうとする錦の姿を見かけ、後をつける。錦は元の姿に戻っていたが、今のところはプリキュア・メタモルフォーゼを介する形で前世の姿に戻るようだ。隊舎から離れた場所に行き、辺りをキョロキョロと見回してから、プリキュア・メタモルフォーゼをし、キュアドリームになる。どうやら、先日のハルトマンの飛天御剣流と牙突に衝撃を受けたらしい。
「本当にプリキュアなんだ、錦さん…」
「なんだ、娘っ子。お前もつけていたのか」
「大先生こそ。話は芳佳さんから聞きましたから」
調と鉢合わせした赤松。ドリームは二人に見られている事を知らないため、『メロディじゃないけど、あんな剣技を見せつけられたくらいでびびってたら、プリキュア、いや、女がすたるもん!とっくーん開始ー!』と口に出している。シャーリーが聞いたら「うおおおお!それはあたしの台詞だぁー!」と叫んでいるのは間違いない。面白く思った赤松は顔を見せ、『おい、そこの富くじ娘!朝練に付き合え!』と声をかける。
「わ、わっ!大先輩と……調ちゃん!?ま、まさか、今の聞いて……」
「はい」
「どわぁ〜!は、恥ずかしい〜!つか、なんですか富くじって!」
「お前、富くじ買ったことないのか」
「小鷹お姉ちゃん、そういうの興味なかったんですよ。私も前世でたま〜にサマージ○ンボとか買ってた程度で。…って、なんですか富くじ娘って」
「ほれ、お前が今言っとったように、日本で春先に売ってたじゃろ?」
「ど、ドリームだけど違うーっ!」
「ほれ、そう拗ねるな。お前に戦の基本というモノを仕込んじゃると言っとるんじゃ。こう見えても、ワシは孔雀座の白銀聖闘士じゃ」
「え、大先輩もなんですか?」
「その証拠を見せてやろう!」
赤松は自室から孔雀座の白銀聖衣を呼び出し、纏う。白銀聖闘士というと、噛ませ犬のイメージが強いが、失われし祭壇星座に次ぐ実力者を代々、輩出する重要な女性聖闘士用の星座。赤松はその男らしさもそうだが、時代の趨勢的に仮面の着用が個人の裁量に任されている時代に聖闘士となったので、つけてはいない。そのことからも、シャイナと魔鈴よりは新参である。(黒江と智子は黄金なので、当初は特例であった)
「孔雀座、パーヴォの貞子!」
「大先生、プリキュア相手に白銀聖衣は大人気ないんじゃ」
「お前だって、聖衣持ちになる予定じゃろうが」
「う、それ言われるとなぁ」
苦笑いの調。正式な叙任はこの時点ではなされていないからだが、それでも、普段の服装でライトニングプラズマを放てるくらいには力を出せる。試しに、赤松はマッハ3くらいの流星拳を放つ。黄金聖闘士に比肩する実力者である彼女にとって、流星拳は肩慣らしだ。その衝撃がキュアドリームを驚愕させる。
「わっ!音が後から響いてる!?」
「音はクリーンヒットでは、鈍い音になるがな」
「ええ。私も元の世界の仲間にそう言いました。師匠の技能受け継いでるんで」
「いいか、まず正拳突きの打ち込みを朝に200回はしろ。次に足刀の特訓を300はしろ。基礎的だが、これで威力は変わる」
「足刀?」
「手刀の足版じゃ。ボウズがちっこい頃にもやらせたことじゃ」
赤松はまず、プリキュアの力に頼り気味なドリームを基礎からやり直させることにし、この日から調の朝練に加えさせた。数日後には話を聞きつけた芳佳(キュアハッピー)、シャーリー(キュアメロディ)も加わった。また、智子も体調が良くなると加わり、黒江達が帰還する日には、ちょっとした日常風景になっていた。
――黒江達が帰還した日――
「へえ。まっつぁん、ガキどもにそんなのやらせてんの?」
「そうじゃ。ボウズもするか?」
「ここんとこデスクワークで訛ってるし、演舞とかしたいから、頼むよ」
「あたしも交渉で体が訛ってるから、ガキどもの様子を見るがてらに加わるぜ」
「お、昨日はお嬢がいいとこ見せたぞい」
「智子がどんな?」
「ブレイズ・エクスキューションでプリキュア・シューティングスターを無効化しおったわ。富くじ娘のやつ、泣きそうじゃったわい」
光属性の攻撃を炎属性で無効化するのは珍しい。オーロラエクスキューションの逆ベクトル技を使い、光と一体化したキュアドリームを弾き返したのである。その光景を録画していた赤松。智子が追い打ちで鳳翼天翔も撃っている。これには苦笑いだ。
「単に、炎で弾いてねぇな。あいつ、シューティングスターのエネルギーと共振させた小宇宙で貫通を防いだな」
『今まで、どんな敵にぶつかっても、シューティングスターが弾かれたことはなかったのに…!?どうして、どうしてなんですか、先輩ぃ!』
『要は小宇宙よ』
音声がここで入る。智子も忘れられがちだが、水瓶座の黄金聖闘士であるのだ。プリキュアシューティングスターのエネルギーを解析し、対応策を見出すのは難しくはない。そのため、ドリームは個人での最大技を破られた衝撃で半べそをかいていた。
『圭子みたいに、シャインスパークの領域まで技を強くしなさい。あれなら、あたしらでもダメージ軽減が精一杯よ』
『シャイン……スパーク…』
『元々はゲッターロボGが改装で積んだ試験的な武器だったけど、ゲッター最大最強の技にのし上がった技。あなたなら、クラッシュイントルードでもいいかしら?圭子はシャインスパークを選んだけど』
『あの、なんですか、その、クラッシュイントルードって』
『あとで綾香の部屋のDVDでも見なさい。あの子には許可取ってあるから』
『私はシンフォギアを変形させて、何日か前にやった事あるんですけど、仲間がずるいとか言いまして…』
「たしかに、あのガキの技の強化には、あれがいいかもな。見栄えもいいし、シャインスパークみてぇに体力つかわないし」
「あたしもシャインスパークは滅多にやんねぇしな。ストナーのほうが気軽に撃てるし」
「しかし、ピンクの蝶が羽ばたいて突っ込んだら弾かれるって、ジェットマンのジェットフェニックスか、イカロスハーケンが弾かれた光景みたいだな」
「前史でジェットマンと会ってたな、ボウズは」
「うん。その時に記録は見ていたから、イカロスハーケンが弾かれた時の光景、覚えてたんだ。まさにそれだ。ぶつかって弾かれた時、蝶の羽ばたきが崩れるみたいな構図でエネルギーが拡散して、吹き飛ばされてる」
その時の明らかに動揺したドリームの表情は見ていて、ちょっと可哀想になるくらいのもので、見ていた他の二人も驚愕している。それほどに不敗を誇っていた技だったのがわかる。その場で立てないほどの動揺も、現役期間中はシューティングスターが『不敗』であったということへの信頼が強くあったからだろう。怪異相手でも、余裕で甲殻をコアごと貫くはずの技が弾かれ、あまつさえ無効化された。その衝撃は目にわかるほどの動揺を与え、ドリームの心を揺るがせた。その上で、技を強くするための指標を示す智子。
『貴方はプリキュアとしてのスペックに頼りすぎよ。まずは肉体の基礎的なスペックを引き上げる事を考えなさい』
「ぶはは、先輩風吹かせやがる」
「小僧、あまり笑ってやるな。お嬢もそれなりに考えておるのだ」
「へーい」
黒江の事をボウズ、圭子は小僧と呼ぶ赤松。圭子も赤松には頭が上がらないため、実質的にレイブンズの『保護者』的な役目を担っている。圭子も自身より目上であり、先輩の赤松の前では割合、大人しい。
『鳳翼!!てんしょ――ぉぉう!!』
「あいつ、いつの間に鳳翼天翔覚えてやがったんだ?一輝はそんなタマじゃねぇし、自己流か?」
「でもよ、ドリームの奴、これであたしらに敬服しただろ?不敗のシューティングスターをぶち破ったのは智子が初めてなはずだ」
「確かに、確認できるだけのアニメじゃ不敗だったしな、プリキュア・シューティングスター」
「儂の絢翼天舞翔、ボウズのエクスカリバーでも同様の結果になるだろう。そして、件の技は保護膜代わりのエネルギーさえ無効化すれば、こちらの攻撃は通ずる。だから、ある一定の技能の神闘士、海闘士、冥闘士には原理を見破られて通じんだろう。お嬢はそれを実践したのだ」
赤松とレイブンズはプリキュアシューティングスターの隠された弱点を見切っていた。それ故に、智子は『技を高い次元に進化させろ』という教えを説いたのだ。錦/のぞみは天姫が元々の任務がテストパイロット兼任だったため、本国とを定期的に行き交う事を利用し、精一杯に誤魔化すなどし、正体を隠しつつ、キュアドリームである事から、赤松に『富くじ娘』(扶桑では富くじという名前で宝くじが流通している。これは日本の1945年以前の記録と一致した)という渾名をつけられつつ、黒江と芳佳の秘蔵DVDからヒントを得て、プリキュア・シューティングスターをより高次元の技に昇華しつつ、プリキュア出身Gウィッチの筆頭格という自覚が芽生えていく。また、『初代』、『Splash Star』(二代目)に続く古参のプリキュアであり、初代に次ぐ『二年間戦った』という戦歴を持つ故の誇り、前世で愛していた者や、共に戦った仲間への遠き記憶への追憶を懐きつつ、自分よりも遥かに過酷な道を歩んでいる『栄光の7人ライダー』のことを智子や黒江から聞かされ、彼らに興味を抱くようになる。自分達プリキュアであったものにとって、初代プリキュアであるキュアブラックとキュアホワイトがそうであったように、栄光の七人ライダーは、より後発の仮面ライダーを含めたあらゆるヒーローの中でも精神的支柱とさえ謳われし存在。ドラえもんとのび太も敬意を払って接し、あのデューク東郷も一目置くほどである。また、のぞみも後発のプリキュアの雛形になったというメタ的な側面があることは転生を挟んだために自覚しているため、自分を仮面ライダーに例え、『仮面ライダーで言えば、仮面ライダーV3だもん、私のポジション!』と黒江と智子の前で言うに至る。しかし、のぞみの普段の天然な行いを、アニメという形で知っている二人に、めちゃくちゃ大笑いされたという。
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