外伝その278『約束の場所へ』


――プリキュアも、2018年には仮面ライダーもびっくりの55人を超える数に膨れ上がっていた。のぞみはそうなった世界線の住人であったが、りんはそうでない世界の住人であるなど、微妙な差異がある。また、のぞみは『夢が現実という苦さに押しつぶされたも同然』の経緯を辿った世界の経験があるからか、戦いの日常になる事への抵抗感が薄く、はーちゃん(ことは)の事もあるからか、猛烈な勢いで戦っていた。現役当時からも考えられないほどの敢闘精神の旺盛さであり、好戦的だった錦の人格の影響が強く生じていた。小宇宙にも覚醒したため、動きが現役時代以上に良くなっていた。

「はぁっ!」

有象無象の兵士たちは一人が蹴りで吹っ飛ぶと、ボーリングのピンのように、連鎖的にまとめて吹っ飛ぶ。小宇宙に目覚めたおかげで、通常形態での戦闘力も強まり、銃弾は余裕で見切れるようになり、余裕を持って対応できるようになった。戦闘力は以前より明らかに向上している。そのため、ルージュは自分より基礎戦闘レベルの高いメロディにお守りを頼み込む。

「あの子のお守り、できる?」

「構わないぜ。つか、お前。声帯の妖精さん的意味じゃ親子の気がするような」

「それは少年ジャ○プ的意味で勘弁。貴方だって、サーフボード繋がりでドリームと縁あるでしょ」

「まーな。おまえに良いもん見せてやるぜ」

メロディは素体となったシャーリーや紅月カレンの要素が強いため、口調はカレンやシャーリーの中性的かつガサツなものだ。プリキュアとしての能力ではないが、輻射波動の広域放射を行う。手のひらを広げ、そこから輻射波動を広範囲に放射する。人間相手にはオーバーキルも良いところだ。

「悪いね、こっちもアンタらをいちいち相手取ってもいられねぇんだ。」

MVSをどこからか用意し、プリキュアの姿でナイトメアフレームまがいの戦闘を披露する。スイートプリキュアとしては音楽的センスも要求されていたはずだが、性格上、相方もいないからまどろっこしいとのことで、援護担当の青年のび太を苦笑いさせる。

「ルージュ、どう思う?あの姿」

「素直に紅蓮に乗ればいいんじゃ、あれ」

「君だって、螺旋丸撃ちそうなボイスだけど」

「それは勘弁して。弟が子供の頃に、それで散々に声真似ねだられた事思い出すから…」

「君んち、少年ジャ○プ読んでたんだね」

ルージュこと、りんは前世で弟が幼少の頃にねだられた事を思い出してげんなりしたようである。シャーリー(北条響/紅月カレン)は後者の血が戦闘では騒ぐようで、プリキュアの技は殆ど使っていない事について、のび太と言い合う。自分がとある人気アニメの主人公に声色が酷似しているということで、弟が喜んだのは苦労も多かったためか、あまり振り返りたくないようだ。

「弟が読んでたのよ、あれ。あたしはフットサル同好会とかやってたから、あまりTVとか漫画に興味なかったし、自分がプリキュアだったから、ヒーローモノには興味なかったのよ」

ルージュは赤裸々に語る。家業の花屋を自分は継いで、平凡ながらも幸せな一生であったが、兄弟姉妹の大病というイベントは経験している。のぞみとは26歳前後の頃が会った最後とも言う。のぞみがパルミエ王国に嫁入りしたためとも言い、のぞみとは別世界の住人であった事を示す。のぞみが転生後に自暴自棄な側面を持ってしまっていた事は知っており、のび太に『のぞみは純粋すぎたから、教師の現実に耐えられなかったと思う』とコメントしている。りんの世界と違い、大人の世界の理不尽さを嫌というほど経験したのぞみは、キュアドリームとしての自分を取り戻したいとする懐古願望を晩年期に強く持っていた。その願望が叶ったためか、一見して、往年の振る舞いに戻っているようだが、自分を戦いの場に置くことで、転生前の晩年期の有様を覆い隠そうと取れるような自暴自棄な戦い方であるのを幼馴染のルージュは見抜いていた。

「メロディ、ドリームにこれを渡してくれ」

「それって、某太陽の勇者のフレイムソードじゃねーか!おい、のび太!どっから持ってきた!こんなの」

「ほんもの図鑑、アニメロボ/武器編から」

「お、おう…」

意匠から察するに、グレートバージョンのフレイムソードである。キュアメロディは呆れる。

「ごっこ遊び用(人間サイズ)だけど本物に匹敵する威力出るよ、これ。某魔神英雄伝の光龍剣や鳳龍剣も出しといたけど」

「チョイスがなんでそれなんだ?ここは動輪剣とか、バーニングファイヤーソードとか、竜牙剣だろ」

「90年代のカテゴリからランダムに選んだらそうなっちゃってさ。で、最初に目についたやつを出したんだけど」

「もうちょい年代広げろよ。剣狼とか、ダンガイソード(破邪の剣)とか、天空剣とか、ブライソードとかあんだろ」

「メロディ、マニアックだよ、それ」

「そっか?」

「うん。この世界は世ん中荒れ放題、ボヤボヤしてると後ろからバッサリだしね。どっちもどっちも…どっちもどっちも」

「バク○ンガーなんて、よい子わかんねーよ」

「烈風散華で有名でしょ、あれ」

「そりゃな」

「そんじゃま、Good Luck!」

「お前、西部劇好きだし、サス○イガー乗れって」

「考えとくよ、銀河疾風、ってか」

メロディは苦笑交じりにのび太のサムズアップを合図に駆け抜け、ドリームにフレイムソードを届ける。


「ドリーム、受け取れぇ!のび太からのプレゼントだっ!」

柄を握ってぶん投げ、ドリームの目の前に突き刺さる形で届けられる。

「うわわっ!?メロディ、もっと穏やかに渡してよ〜!」

「ゼータク言うな!とにかく引き抜け!あたしはこれだっ!」

キュアメロディは、のび太がものはついでに彼女に渡した『ドラゴンアーチェリー』を構え、跳躍しながら矢を番える。アーチェリーという割に構えは和弓で、某初代勇者ロボの二号ロボのそれの再現であるのが分かる。矢に雷のエネルギーが充填され、紫電の稲光が散る。

『サンダァァァ…アロー!!』

放たれた矢が雷となり、兵士を援護する形で進軍するM4シャーマン戦車とその後ろに控えるM36ジャクソン戦車駆逐車を貫く。メロディは元々、前世(北条響として)で弓道部のお助けもした経験があり、その関係で弓道も一定の心得がある。弓道に自信のある下原が聞いたら怒りそう(下原は学者の家系で珍しく、軍人になったために母親から弓道を仕込まれた)な話だ。

「え、メロディ。弓道出来たっけ?」

「前世で弓道部にもお助けで参加してて。そんな事より、戦車隊を混乱させっぞ!味方のロイヤルタイガー、もといケーニッヒ・ティーガーは運動戦無理な重戦車だからな」

「そだっけ?」

「そそ。あれは足回りが貧弱で、ドイツの技術供与でようやっと『巨体の割に』って感じで動けるようになった程度だ。防御力もコンカラーには見劣りすんけど、悪くない」

コンカラーはカタログスペックではティーガーUに劣る装甲厚だが、世代が違うためと、冶金技術の向上などのため、防御力は上回る。また、コンカラーと言っても、イギリスが考案していた『性能向上型』を前提にして製造されていたため、実質は『スーパーコンカラー』に等しい。ブリタニアが意気揚々と量産するのも頷ける『時代相応の水準』での高性能重戦車である。

「どっちもどっちじゃなかった?」

「ケーニッヒは足回りが最悪レベルなんだよ。コンカラーは改良でどん亀でも無くなってるから、カールスラント真っ青だぜ」

重戦車は基本的に重く、鈍いため、機動戦闘には用いられない傾向があった。防御力で壁になるが、火力で火消しになるかの二択である。カールスラント自慢の長砲身アハトアハトも、120ミリや105ミリ砲が出回る時代では見劣りする。そのため、この出撃は新世代戦闘車両の前に落ちぶれつつあるカールスラント重戦車の最後の意地ともいうべきものであった。ケーニッヒティーガーは長射程を売りにしているため、アウトレンジ攻撃を始める。88ミリ砲弾が飛び、M4シャーマンが大破していくが、数が多いためにへこたれない。カールスラント戦車は日本の有償供与で照準器周りが強化されたため、以前より命中率も良くなり、2000m先のM4を一撃で沈黙させる。カールスラントの戦車戦術として、アウトレンジは常套手段とされていたが、皮肉にも、この戦闘が自分自身で有効性を示した初の事例だった(今まではバダンの手で証明されてきたため)。日本の民需技術がカールスラントの手で軍需に転用された例でもあり、旧式とされたティーガー系重戦車の延命手段に用いられた。これはドイツからのレオパルト2戦車の供与が遅延の見込みであり、なおかつレーヴェ戦車の開発が行き詰まりつつあったためだ。その場繋ぎがこの延命策であり、次期戦車砲を見込まれていた『10.5cm Kw.K L/70』の開発が遅れていた故であった。世の中は既にブリタニアの105ミリ砲が扶桑に採用され、自由リベリオンも採用の見込みであるなど、スタンダードとしての地位を確立しつつあった時代。独自規格にドイツが疑義を呈した事も要因であった。

「あ!なんかこう、デブッチョなのが前に出てきた!」

「ジャンボだ!完成してやがったのか、デブッチョの壁役」

ドリームとメロディの前に、M4の装甲強化タイプが颯爽登場した。M4A3E2という型式番号で知られる『ジャンボ』の俗称を持つ車両だ。装甲は152ミリと凄まじく、アハトアハトも正面であれば余裕で弾き返す。規格統一にこだわる地上軍管理本部の意向もあり、史実ではあまり出回っていなかったことでも有名だ。

「ティーガー隊、メタボなのが出てきた!こいつに正面からの攻撃は効かねぇぞ、足回りを狙え!M4は足回りが弱点だ!」

「ハルダウンされる前に早く!されたら、至近距離でバズーカを打ち込むしか方法が!」

装甲厚が150ミリを超える同車両はプリキュアの打撃攻撃にも耐えうる。二人が焦ったのは、ハルダウンや昼飯の角度を取られれば、アハトアハトでは撃破することが難しくなるからだ。

「邪魔な兵士はあたしらが始末する!ティーガー隊はなんとかして、デブッチョを足止めしろ!」

「特科に連絡して黙らせます?」

「特科の連中はこの間の戦闘で持ち込んだのを撃ち尽くしてるから、補給待ち!」

自衛隊特科はその有効性を示していたが、イリヤと美遊の援護で張り切って『レッツパーリィ』してしまい、持ち込んだ弾薬を消費し尽くす失態を起こし、黒江に叱責されているところであった。

「至近弾でも良い!サスが弾けりゃマトモに走らなくなるぞ!」

メロディの通信を受けた、勇敢なケーニッヒティーガーの一団がジャンボ――これからの前線での俗称はデブッチョ――を狙い撃つ。この通信を傍受したアメリカ陸軍が助太刀に入り、M777 155mm榴弾砲の精密誘導砲弾での精密射撃で援護してくれた。21世紀当時の最新兵器で二次大戦の戦車を狙い撃つという贅沢な運用であった。さすがのジャンボも艦砲と同口径の砲弾による狙撃は堪らず、壁役として出てきた10両が全て破壊、あるいは爆風で横転させられていった。

「メロディ、米軍が新型の精密誘導砲弾使ってるの?」

「米軍に自衛隊の精密射撃は真似出来ねーもん」

「高い弾使って大変だねー」

「自衛隊は訓練の賜物だけど、米軍は機械技術で強引にやっちまうのさ。だーからお高くつくんだよ」

米軍が発射した精密誘導砲弾のお値段は相当で、自衛隊より劣る練度を機械力でカバーしようとするあたり、後のアンドロメダの芽を感じさせていた。

「金で買える命なら買うってだけさ、リバティスピリッツ的にはな。そこが日本の大和魂と違う点だろうな」

『サンキュー、合衆国陸軍のみんな』

『ハハハ!スーパーガールの援護は俺たちに任せてくれー!』

米軍はこのノリだ。米軍は基本的にノリの良いあんちゃんやネーちゃんの集まりであり、日本がプリキュアの正規軍入りの是非でいちいち国会が紛糾するのに比べて、実に軽いノリだ。ちなみに先程の砲撃は30キロ先からのもので、この時代では艦砲しか出来ない芸当である。日本が訓練で取得させる精度を機械力で解決というあたり、後の61式戦車やジムのOS調整などに繋がるドクトリンである。この事からも、地球連邦軍は自衛隊の血を受け継ぎつつ、米軍の血もかなり濃いことがわかる。

『戦場の情報は得てるな?戦車駆逐車を優先して叩いてくれ。あと、いたらパーシングもだ』

『了解だ。高い買い物と議会が怒ってるから、ド派手にレッツパーリィだ。ロイヤルタイガーはどん亀だしな』

米軍による援護砲撃の火力投射はこのあと3分ほど続き、お高い誘導砲弾を用いた攻撃で敵戦闘部隊は出鼻を挫かれた。しかも誤差が20m以内と当時の砲術の常識を覆す高精度は米軍の最新兵器の面目躍如と言える戦果をもたらした。


「うわぁ…。すごぉーい…。敵の機甲部隊がカップ麺一個分の時間で散り散りに…」

「何百万ドルが一気に消えたってことでもあるぜ。誘導砲弾はお高いんだよ。21世紀前半のレートで68000ドルのはず」

「え〜!砲弾がそんなするのぉ!?」

「日本は買ってないぜ。普通の砲弾の時点でヒーヒー言うから、予算的に。それに練度が高いからな」

メロディは自衛隊の予算はけして潤沢とは言えない規模でありつつ、その尋常ではない練度を褒める。日本の軍隊は練度が高い場合、高確率で脅威となるからだ。

「ただ、日本って備蓄が雀の涙だって話でさ、黒江さん曰く、この間の会戦で普段の半年分は消費したとかなんとか…」

「え〜!?」

「仕方ないさ。自衛隊は訓練以外のやることは災害救助だ。左派からは『サ○ダーバードにしようぜ』なんて声までマジであるくらいに軽んじられてるが、いざ戦闘になったら帝国陸海軍の血が蘇るらしいぜ」

「そ、そう言えば、20代の時、見敵必殺が時代遅れとかなんとか宣う人見かけたっけ…」

「軍隊の真理だろ、あれ。まったく日本の左派は軍人を極道の鉄砲玉と同列視してんだから、始末が悪いぜ」

「溜まってるねぇ」

「アメリカ軍の軍人でのび太の世界じゃ通してきたから、連中が沖縄で不祥事起こすたびにあの街にいる活動家連中に嫌がらせされてさ。沖縄の米軍は質悪いって、黒江さんに聞いてさ」

「本当?」

「黒江さんが米軍の航空隊から聞いたんだそうな。曰く、沖縄はバカンスと思ってる連中の赴任地で、本土にエリートが配属されるそうな」

なんともいい難い事で、二人は思わずため息である。しかし、米軍極東最大の拠点は沖縄であり、米軍は沖縄を通るルートで次元ゲートを通り、兵力を送り込んできているのだ。その点も沖縄が軍事的要所である証明であり、扶桑の沖縄が軍事拠点化されつつある理由だ。

「こういっちゃなんだけど、日本の活動家連中は扶桑の現地のことを考えてねぇからな。原爆で吹き飛んだ中島地区、あそこ、扶桑じゃ健在だろ?再開発計画がポシャったんで、現地の住民から苦情入れられた団体も多いんだって」

「あそこ、日本じゃ平和公園だもんねぇ。保存したいって気持ちわかるけど、現地の住民にははた迷惑だしなぁ。中心市街だったんだから、当然、再開発が持ち上がるのになぁ」

「折衷で、京都みたいに条例作って、郊外に新市街を作る話に持っていったらしいけど、はた迷惑だって話」

「仙台は?」

「伊達の仙台城を取り壊して、軍の司令部を置く計画が立案者と責任者の更迭で駄目になったから、秋田に方面軍司令部を置くそうな」

「建設会社への補償は?」

「海沿いと地下の軍事開発に優先的に参加させることでどうにか収めた。名古屋城や安土城、小田原城、姫路城、大阪城以外は壊す予定だったから、日本の活動家連中は困惑だよ」

扶桑は織田、徳川、豊臣に縁があり、なおかつ大規模な城郭以外は再開発で壊す予定だったので、管轄省庁のそこそこ偉い役人と軍人の首が100人規模で飛ぶ粛清人事に怯える層が出てくるのである。それが後のクーデターが単なる『軍の内乱』で済まなくなる理由である。結局、扶桑は近世の城郭などを壊せなくなったりしたため、ジオフロントの研究や、その工事ができるドラえもんに多額の投資を行うことになる。

「で、揉め事は嫌だから、地下都市をドラえもんに頼んで建設するってわけ。南洋でテストして、本土は50年代にかかるけど、青函トンネルはドラえもんが通すって」

「え、あれって半世紀近くかかんなかった?」

「青函連絡船の悲劇で具体化して、土木工事技術の進歩を見ながら作っていったからな。20年はかかったはずだ。ドラえもんなら6時間もありゃ開通できると思うぜ」

「すごぉ〜い」

「ひみつ道具フル活用すりゃ、テラフォーミングも想いのままだそうだから、青函トンネルやパナマ運河なんて、お茶の子さいさいだろうさ」

ドラえもんの力であれば、パナマ運河や青函トンネルと言った人類史に名を馳せた難工事すら半日もあれば終わらせられる。このように、ドラえもんのいた22世紀前半期の科学文明の絶頂期にあった時代は『科学万能主義』の時代であったが、西洋諸国が宗教的・科学的意味合いで敵対意識を顕にし、日本へのリベンジを目論んだロシアに加担していった。それが忘れ去られた統合戦争の開戦理由で、文明の後退が目的であった事はある意味、元反統合同盟諸国のタブーである。23世紀でも、過激なスペースノイドの間では、ドラえもん時代の技術復興に反対する声が強い。ドラえもんのひみつ道具は学園都市の技術の末裔とも噂され、魔術的要素も含むことから、その後の時代ではタブー視された節がある。しかし、なんだかんだで残った技術も多く、光子エンジンは光子力反応炉へ発展し、反重力技術は宇宙戦艦の重力制御に応用されて残っている。目的は死人すら生き返らせられると謳われた医療技術や時間旅行技術の消失だが、その後の宇宙進出で医療技術は復興へ昔、時間旅行も戻り始めている。結局のところ、反統合同盟であった地域の人々は苦難の道を歩んできたため、自分達のエゴで当初の目的を忘却するほどの年月の大戦を繰り広げたが、得られたものは無く、国際連合常任理事国であった過去(ロシア)も意味のなさない肩書きに落ちている事から、惰性で続いた戦争と考えている。

「ただ、それで地域の格差がでかくなって、終わってしばらくした後のデラーズ・フリートの北米へのコロニー落としでティターンズが出来た事を考えりゃ、ロシアや中国はやりすぎたんだよ」

「つまり?」

「長く続いた戦争で、反統合同盟、あるいは日本を最後で裏切ったアメリカとかの地域は元から荒廃してた。そこにコロニー落としやられてみろ。統合戦争に関係ないフランスのパリは消えるわ、北米の穀倉地帯は壊滅するわ…」

「オーストラリアはまだ幸運なほう?」

「シドニーとキャンベラを合わせた面積が削り取られた以外はな。アデレードが残ってたから、そっちが栄えてるっていうし」

「23世紀って、地域の力関係どうなってんの?」

「ジオフロント技術を持ってた日本とイギリスが先進地域、オーストラリアは無人地帯出来たけど、そのかわりにアデレードが栄えるようになってる。アメリカは元都市部が荒廃してるから、軍事拠点化した」

「ニューヨークとかワシントン?」

「そそ。あそこはスラム街になってて、治安が悪いから、軍人もめったに近づかないそうな」

「嘘ぉ〜!」

23世紀の北米大陸東海岸はすっかり荒廃し、アメリカ合衆国の中枢を担っていた地域であっても、見るに耐えない有様である事は、ドリームにはショックなようだった。春日野うらら(キュアレモネード)と再会できたら、話の種にしようとしていたのが分かる。昔年のアメリカの繁栄を気分でも味わいたければ、ネオアメリカコロニーに行かなくてはならない。何気にショッキングである。

「敵はとりあえず、今ので怖気づいたみたいだな」

「この光景、他のプリキュアのみんなが見たらどう思うんだろう」

「理想論言っていられないご時世だしな。仮面ライダーが次元世界を股にかけた『ライダー大戦』をおっ始めてるんだ、あたしらもオールスターズの集合を急がねえと不味い。はーちゃんがショックで落ち込んで、みらいとリコは倒されてんだ。その報いを、奴らには味わせてやる」

「他のみんなは大丈夫かな、メロディ」

「ZEROが魔法つかいプリキュアから滅ぼしにかかったって事は、その年代から消しにかかったことだ。危ないのはプリンセスプリキュアやハピネスチャージだ。ZEROの力なら、衛星軌道からのブレストファイヤー一発で地球を焼けるからな。竹井さんがみなみだったから、一人は確保出来たけど、他がいるかどうか」

「なんで、なぎささんとほのかさんから手をつけないの、連中は」

「いくらマジンガーZEROでも、因果の因だけは消せない。あたし達はなぎささんとほのかさんから派生した存在だから、ZEROの予測を超える必要がある。セブンセンシズの力はそのためのモノだ。黒江さんは『神を超え、悪魔も倒す』ってよく言ってるけど、セブンセンシズは生死を超えて目覚めるパワーであって、神のレベルに立ち向かうにゃ必要な技能だ」

「でも、はーちゃんは」

「はーちゃんは大地母神であって、戦いを司る神じゃない。それに、はーちゃんは神になって日が浅い。ZEROに負けちゃうのは仕方がないさ。ZEROは元々、マジンガーZだったんだ。神にも悪魔にもなれる機械が、人の頭脳を排除して行き着いた先だ。だったら、それの予測を超えるもので対抗するしかないんだ」

「そうさ。そのためには強くならないとな」

「ガイちゃん」

「お前らは初代プリキュアの魂から生まれた。プリキュアを継ぐための存在として。なら、それに恥じない強さを持て。ZEROの奴に素で対抗できんのは初代だけだろう。あいつの理屈で言うならな。なら、生前の自分達を超えろ。殴られて傷ついても、人は強くなれるからな」

ガイちゃんは実質的にプリキュア達より目上の立場であるのと、精神的に落ち着いた面ができたためか、戦士として老成したところを見せた。黒江とは前史以来の付き合いであるので、その関係もある。また、彼女も光子力の力を行使できる(初代ガイキングの大空魔竜の動力に光子力が含まれているため)ので、その気になれば、マジンガーの大技を使える。

「何も、光子力はクロガネ頭の専売特許じゃないしな。その証拠を見せてやる」

「な、そのポーズは!?」

『闇を切り裂け、サンダーブレーク!!』

ガイちゃんのお披露目は二人のプリキュアのど肝を抜いた。最近は裏方で動いていたため、ここらで一発お見舞いしたかったらしい。機械獣を蹴散らす指先からの稲光。メロディはグレートマジンガーを知っているため、それがオーバーラップしたのを物語る顔だった。

「お、お前…なんでグレートの技を!」

「あたしだって、名前にグレートがついてんだぞ?あのガキに出来て、あたしに撃てない道理はないさ。ZEROが恐れる『大神ゼウス』の権能の証たる雷をな」

ガイちゃんの微笑み。ツッコミ役に回るキュアメロディ。何が何だかわからないが、そのかっこよさに惚れ込むキュアドリーム。ガイちゃんの強者の余裕さえ感じさせる姿に、一種の憧れを抱くのであった。皆との約束の場所へ至るために。それは生きることが戦いである転生者の宿命でもある。



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